IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベーの特許一覧

<>
  • 特許-陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置 図1
  • 特許-陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置 図2a-2b
  • 特許-陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置 図3
  • 特許-陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
A61M27/00
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021186587
(22)【出願日】2021-11-16
(62)【分割の表示】P 2019522434の分割
【原出願日】2017-10-24
(65)【公開番号】P2022024076
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】16198139.4
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】カリアンネ ニルソン
(72)【発明者】
【氏名】アライン ルークス
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0184931(US,A1)
【文献】特表2013-514871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0004534(US,A1)
【文献】特表2012-517875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置(1)であって、
前記コネクタ装置(1)は、
コネクタハウジング(2)と
前記コネクタハウジング(2)に接続された流体出口(3)と
空気供給口(4)と
空気フィルタ(5)と
連結手段(6)と、を具備し、
前記流体出口(3)は、陰圧源(23)に接続されるように構成され、
前記コネクタ装置(1)は、前記連結手段(6)によって創傷側アセンブリ(19)の創傷側コネクタ(25)に係合するように構成され、
前記創傷側アセンブリ(19)は、流体排出導管(21)と空気供給導管(22)とを具備し、
前記流体排出導管(21)と前記空気供給導管(22)のそれぞれの一部が前記創傷側コネクタ(25)に接続され、
前記コネクタ装置(1)は、前記コネクタ装置(1)が前記創傷側コネクタ(25)に係合するときに、前記流体排出導管(21)が前記流体出口(3)に流体接続され、前記空気供給導管(22)が前記空気供給口(4)に流体接続され、その結果、前記コネクタ装置(1)の周囲の空気が前記空気フィルタ(5)及び前記空気供給口(4)を介して前記空気供給導管(22)に供給することができるようになっており、
前記コネクタ装置(1)は、前記空気供給口(4)と空気入口開口部(17)とを具備する空気供給導管(33)を具備し、前記空気供給導管(33)は、前記コネクタハウジング(2)と一体的な部分であり、
前記コネクタハウジング(2)は、コネクタハウジング装置側(2a)とコネクタハウジング連結側(2b)とを有し、前記コネクタハウジング装置側(2a)は前記コネクタハウジング連結側(2b)の反対側に位置決めされ、
前記コネクタ装置(1)は、前記コネクタハウジング連結側(2b)で前記創傷側コネクタ(25)に接続されるように構成され、
前記空気フィルタ(5)は、空気が前記空気フィルタ(5)を通って流れることができるように配置された空気入口開口部(17)を備える空気フィルタハウジング(16)の内部に配置され、前記空気入口開口部(17)は、前記コネクタハウジング装置側(2a)に設けられており、
前記空気フィルタハウジング(16)は、前記コネクタハウジング(2)の一体的な部分として配置され、
前記空気フィルタ(5)は、120mmHgの圧力で10ml/分から70ml/分の間の空気漏れを提供することを特徴とする、コネクタ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関する。さらに具体的には、本開示は、陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置に関する。さらに、本開示は、コネクタ装置を創傷側アセンブリに接続する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの種類の創傷は、いわゆる陰圧創傷療法(negative pressure wound therapy、陰圧閉鎖療法)によって有利に治療される。陰圧創傷治療の分野では、陰圧が比較的長時間創傷に付加され、そのような創傷治療を用いることによって治癒過程が促進され得ることが認識されている。
【0003】
この目的のために、創傷カバー部材と、創傷の上に配置されるように構成される下層創傷充填材とを概ね含む陰圧創傷治療システムが使用され得る。このシステムはさらに、創傷カバー部材に取り付けられた吸引インターフェースを介して創傷部位と流体連通する真空ポンプなどの陰圧源と、(少なくとも1つの)流体導管を備える流体連通アセンブリと、を概ね備える。陰圧源はさらに、流体連通アセンブリを介して創傷部位から除去された創傷滲出液を収集するキャニスタを概ね備える。
【0004】
陰圧源を流体連通アセンブリと都合よく組み立てるために、陰圧源にはこのほか、端部、例えば、陰圧源に接続された部分より遠位の端部に連結手段を備える(少なくとも1つの)流体導管を設けてもよい。これは、嵌合手段などの対応する連結手段を介して、流体連通アセンブリの(少なくとも1つの)流体導管の端部との連結接続、例えば、吸引インターフェースに接続された(少なくとも1つの)流体導管の部分より遠位の端部との連結接続を可能にする。
【0005】
陰圧創傷治療システムは概ね、単一の導管装置と複数の導管装置の2つのカテゴリーに分けることができる。単一の導管装置は、吸引インターフェース、ひいては創傷部位に陰圧を提供する単一の吸引導管を備える。この単一の導管はこのほか、創傷滲出液を創傷部位から陰圧源へと排出し移送する。陰圧源は通常ポンプであり、滲出液を集めるキャニスタも備える。複数の導管装置は、吸引導管からの創傷滲出液の洗い流し及び排出を実施するために、空気などの気体を吸引インターフェースに供給する1つの導管をさらに備え、この気体流はポンプから循環する空気であってもよい。
【0006】
陰圧創傷治療システムでは、原則として、キャニスタ内部の圧力と創傷部位の圧力との間には、重力によって導入される静圧差が常にある。これは、陰圧創傷治療装置と創傷部位との間の高低差と、吸引導管内に存在することの多い滲出液の液柱とによるものである。静圧の変化、減少又は増加に関する問題は、液柱現象によるものであり、陰圧源キャニスタの圧力と比較した場合、創傷部位にて正確なレベルの陰圧を提供する能力に影響を及ぼすことがある。この問題は、創傷部位の圧力に望ましくない結果をもたらす可能性がある。可能性のある結果の1つには、滲出液の滞留が挙げられる。この滞留は次には創傷カバーの剥離による漏れのほか、周囲の皮膚の浸軟さえも引き起こす可能性がある。
【0007】
例えば、患者がシャワーを浴びる必要がある場合、あるいはMRI又はX線などの特定の検査を受ける必要がある場合には、着衣及び吸引インターフェースが依然として所定の位置にある状態で導管を迅速に取り外すことも必要である。さらに、創傷部位の近傍の敏感肌にて非軟質要素によって引き起こされる可能性がある跡を避ける必要が依然としてある。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的の1つは、柔軟で安全で便利なシステムを用いて創傷部位に正確なレベルの陰圧を提供することを可能にする陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置を提供することである。
【0009】
本開示のこの目的をはじめとする目的は、添付の特許請求の範囲によるコネクタ装置によって達成し得る。
【0010】
このように、本開示は陰圧創傷治療システム用のコネクタ装置に関する。コネクタ装置は、コネクタハウジングと、コネクタハウジングに接続された流体出口と、空気供給口と、空気フィルタと、連結手段とを備える。流体出口は陰圧源に接続されるように構成される。コネクタ装置は、連結手段によって創傷側アセンブリの創傷側コネクタと係合するように構成される。創傷側アセンブリは、流体排出導管及び空気供給導管を備える。流体排出導管及び空気供給導管のそれぞれの一部が創傷側コネクタに接続される。コネクタ装置は、コネクタ装置が創傷側コネクタと係合したときに、流体排出導管が流体出口に流体接続され、空気供給導管が空気供給口に流体接続され、その結果、コネクタ装置の周囲の空気を、空気供給口及び空気フィルタを介して空気供給導管に供給することができるようになっている。
【0011】
本明細書でのフィルタとは、空気が通過し得るが周囲の空気から粒子、細菌及び胞子などの要素を捕獲する多孔質材料などの材料を意味する。フィルタは、円筒形、長方形又は正方形の多孔質材料構成要素などの三次元多孔質材料構成要素であってもよい。例えば、多孔質材料は焼結プラスチックであってもよく、焼結プラスチック材料を通る空気流は、材料の孔径(孔隙率)を適合させることによって制御することができる。
【0012】
コネクタハウジングには、コネクタ装置に連結されたときに周囲空気が創傷側アセンブリの空気供給導管に流入することを可能にし、それによって流体排出導管に洗い流し機能を提供する空気供給口が貫通して設けられる。
【0013】
コネクタ装置が、空気を空気フィルタ及び空気供給口を介して供給することを可能にするという事実は、制御された連続的な方法で周囲空気がコネクタハウジングに流入し、例えば、粒子及び有害である可能性のある細菌を捕獲することを確実なものにする。
【0014】
創傷側アセンブリは、創傷カバー材料に取り付けられるか取り付け可能である吸引インターフェースに接続可能であり得る。流体排出導管は、創傷カバー材料に設けられた開口部と、創傷カバー材料に取り付けられた吸引インターフェースとを通して、創傷から流体を排出するように構成される。空気供給導管は、吸引インターフェースの少なくとも一部を通って流体排出導管内に空気を供給して流体排出導管を洗い流すように構成される。
【0015】
このため、コネクタ装置は、中間モジュールとしての創傷側アセンブリに、創傷部位から一定の距離をおいて取り付けられるように意図されている。これは、モジュール、即ち、創傷側アセンブリ及びコネクタ装置の組み立て又は分解が創傷部位から離れたところで実施されるという点で有利であることがわかっており、これは患者と、コネクタ装置の組み立て及び/又は分解を実施する人との両者にとってさらに便利なものである。さらに、患者の皮膚にコネクタが跡をつけるリスクが軽減される。吸引インターフェースから離れたところでモジュールの組み立て又は分解を実施することはこのほか、感染の危険性の減少と、他の方法で創傷に害を及ぼす危険性の減少の点で安全性を増大させる。
【0016】
必要に応じて、コネクタ装置は、空気供給口と空気入口開口部とを備える空気供給導管を備える。空気供給導管は、コネクタハウジングと一体的な部分である。
【0017】
必要に応じて、空気フィルタは空気供給導管及びコネクタハウジング内に完全に一体化される。
【0018】
必要に応じて、空気フィルタは、空気が空気フィルタを通って流れることを可能にする空気入口開口部を備える空気フィルタハウジング内に設けられる。必要に応じて、空気フィルタハウジングには、十分な空気流を確保するために少なくとも2つ又は少なくとも3つの空気入口開口部が設けられる。
【0019】
空気フィルタハウジングは、コネクタハウジングと一体の部分又は別個の区画として設けることができる。
【0020】
空気供給導管がコネクタハウジングと一体の部分であるという事実、あるいは空気フィルタが空気フィルタハウジング内に設けられているという事実は、システムのモジュール性及び本発明によるコネクタ装置にとって特に有利である。コネクタ装置は、患者と陰圧源との間にて一定の距離をあけて位置決めされ、これにより周囲に露出されるように意図された中間モジュールである。例えば、本開示の実施形態では、コネクタ装置は、創傷側コネクタから少なくとも5cm、例えば10cmの距離に位置決めされる。例えば、コネクタ装置は、創傷側コネクタから5~20cmの間の距離に位置決めされてもよい。本開示の実施形態では、コネクタ装置は、患者と陰圧源から比較的等しい距離をあけて位置決めされ、これは典型的には創傷側コネクタから約60~80cmであり得る。別個の部品又は保護されていない空気フィルタがどこかに引っかかったり、邪魔になったりするリスクが、このタイプのコネクタ装置にとって特に重要であることがわかっている。
【0021】
創傷部位から離れてコネクタに配置された空気フィルタは、固定のために空気フィルタ上に意図せずに貼付されるか、跡がつくことを避けるために空気フィルタの下に貼付される創傷カバーフィルム又は接着テープによる閉塞のリスクを少なくする。
【0022】
必要に応じて、コネクタハウジングは、コネクタハウジング装置側とコネクタハウジング連結側とを有する。ここで、コネクタ装置は、コネクタハウジング連結側にて創傷側コネクタに接続されるように構成される。空気入口開口部はコネクタハウジング装置側に設けられる。
【0023】
必要に応じて、流体出口もコネクタハウジング装置側に設けられる。
【0024】
必要に応じて、コネクタハウジング装置側は、コネクタハウジング連結側とは反対側に位置決めされる。
【0025】
コネクタ装置は、陰圧源から延びる導管を介して創傷側アセンブリと陰圧源とを相互接続する別個の部品として設けられてもよい。コネクタ装置はこのほか、陰圧源から延びるか陰圧源に接続するように構成される(少なくとも1つの)流体導管の端部に設けられてもよい。
【0026】
コネクタ装置が別個の部品として供給される場合、即ち、コネクタ装置に接続される導管がない場合、コネクタ装置を、陰圧源側コネクタに接続された流体排出導管を備える陰圧源側アセンブリと接続するためにコネクタハウジング装置側に装置側連結手段を設けてもよい。
【0027】
空気入口開口部がコネクタハウジング装置側に設けられているという事実は、空気入口開口部が、コネクタハウジングの側面に設けられているため、使用中にベッドのような表面部に配置されたときに上方向又は下方向を向くコネクタハウジングの一部に設けられていないことを意味する。これは、空気入口開口部を閉塞するリスクを低減する。流体出口と同じ側に設けられる空気入口開口部と密着する利点には、突出部に近接することにより空気入口開口部を閉塞するリスクをさらに軽減することが挙げられる。
【0028】
必要に応じて、コネクタハウジング装置側は、コネクタハウジング連結側とは反対側に位置決めされてもよい。
【0029】
必要に応じて、空気入口開口部は流体出口から半径方向に一定の距離をあけて配置される。
【0030】
上記の利点に加えて、コネクタハウジング装置側、ひいては空気入口開口部がコネクタハウジング連結側とは反対側に設けられているという事実は、流体及び空気の流路が一直線状になることを確実なものにし、空気入口開口部が閉塞するリスクを最小限に抑える。空気入口開口部が流体出口から半径方向に一定の距離をあけて配置されることはこのほか、空気入口開口部の閉塞のリスクとコネクタ装置にて突出部分が邪魔になる可能性を最小にする。
【0031】
必要に応じて、空気フィルタは、空気フィルタがコネクタハウジングの外側に最大2cm突出するように、あるいは空気フィルタがコネクタハウジングの外側に最大1cm突出するように、あるいは空気フィルタがコネクタハウジングの外側に最大0.5cm突出するように、コネクタハウジング内に少なくとも部分的に配置される。
【0032】
必要に応じて、流体導管が流体出口に接続される。必要に応じて、コネクタ装置に接続される側とは反対側の部分である流体導管の一部が、陰圧源側コネクタに接続されるように構成された連結手段を備える装置側コネクタに接続される。
【0033】
必要に応じて、空気フィルタは、120mmHgの圧力で0.5~70ml/分の間、あるいは120mmHgの圧力で1~40ml/分の間の空気漏れを提供する。
【0034】
必要に応じて、空気フィルタは、120mmHgの圧力で10ml/分から70ml/分の間、あるいは120mmHgの圧力で15ml/分から55ml/分の間の空気漏れを提供する。
【0035】
空気漏れ率が高くなると、ポンプはいっそう激しく作動する必要があり、ひいては騒音及びバッテリ消費に悪影響を及ぼす可能性がある。このほか、創傷部位にて治療圧力を制御した状態に維持することはさらに困難になる。空気漏れ率が低下すると、効率的な滲出液排出を達成することは困難である。このため、このようなさまざまなパラメータ間の適切なバランスを見つけることが重要である。
【0036】
本開示の実施形態では、空気フィルタは、約1~5ml/分、例えば約1.5~2.5ml/分、例えば約2ml/分の空気漏れを提供するように有利に構成されてもよく、それによって騒音及びバッテリ消費を低減させる。空気漏れ率が約1~5ml/分の範囲であれば、比較的小さいポンプ、例えば、最大約1.0リットル/分の吸引能力(例えば、0.1~1.0リットル/分、例えば0.5リットル/分の吸引能力)及び比較的限られた電池容量を有するポンプが使用されている場合、特に有利であり得る。
【0037】
本開示の実施形態では、特に、1.0リットル/分を上回る吸引能力、例えば、1.5~5リットル/分の吸引能力を有するポンプが使用される場合、空気フィルタは、10~30ml/分、例えば、15~25ml/分、例えば約20ml/分の空気漏れを提供するように構成されてもよい。
【0038】
連続的かつ制御された空気の流入は、関連する陰圧の全数値で明確に定義された空気流の生成を可能にし、液柱現象の問題を最小限に抑える。このため、本開示によるコネクタ装置は、取り扱いが簡単であり、管理があまり必要ではない、改善された安全な陰圧創傷治療を提供する。
【0039】
必要に応じて、コネクタ装置連結手段は、創傷側コネクタとスナップ式、ねじ式、ルアーロック式又は差し込み式に係合するように構成される。必要に応じて、コネクタ装置連結手段は、創傷側コネクタと解放スナップ式、ねじ式又は差し込み式の係合を形成するように構成される。
【0040】
本開示の第2の態様は分岐コネクタ装置に関する。分岐コネクタ装置は分岐導管を備え、分岐導管は第1及び少なくとも第2の分岐部を順に備える。分岐コネクタ装置は本開示の第1の態様によるコネクタ装置をさらに備え、第1の分岐部はコネクタ装置の流体出口に接続される。
【0041】
必要に応じて、コネクタ装置に接続された導管の側とは反対側の部分である第2の分岐部の一部が、陰圧源側コネクタに接続されるように構成された連結手段を備える装置側コネクタに接続される。
【0042】
必要に応じて、分岐コネクタ装置は、第2のコネクタハウジングと、連結手段と、第2のコネクタハウジングに接続された第2の流体出口とを備える第2のコネクタ装置を備え、第2の分岐部は第2の流体出口に接続される。
【0043】
分岐コネクタ装置が、連結手段を備える第2のコネクタ装置を備えるという事実は、空気供給及び洗い流し機能を(少なくとも1つの)流体排出導管に提供しながら、2つ以上の流体連通アセンブリへの容易な接続を可能にする。
【0044】
第2のコネクタ装置は、例えば、第2の連結手段によって、吸引インターフェースに接続されて吸引インターフェースを通して流体を排出するように構成された流体排出導管を備える第2の創傷側アセンブリに接続されてもよい。
【0045】
そのような分岐コネクタ装置は、さらに大きな創傷又は複数の創傷の簡略な治療を可能にする。
【0046】
必要に応じて、第2のコネクタ装置は第2の空気供給口を備える。
【0047】
そのような分岐コネクタ装置は、2つの創傷流体連通アセンブリを介して1つの単一陰圧源を少なくとも2つの創傷部位に接続することを可能にする。この2つの創傷流体連通アセンブリは、それぞれが流体排出導管と空気供給導管とを備え、それぞれが吸引インターフェースに接続可能であり、各創傷部位に正確なレベルの陰圧を提供することを確実なものにする。
【0048】
分岐コネクタ装置の能力は、1つの単一陰圧源のみを必要とし、各陰圧源からの陰圧を調整して創傷の大きさに応じた正確なレベルにすることを常に必要とすることなく、各創傷部位にて正確なレベルの陰圧を維持するためのものである。この能力は、取扱いが簡単で、管理をあまり必要としない改善された確実な創傷治療をもたらす。
【0049】
必要に応じて、第2の導管が第2の空気供給口に接続される。
【0050】
必要に応じて、第2の導管及び分岐導管は、例えば、流体出口と、本開示の第1の態様によるコネクタ装置などの空気フィルタを備える空気供給口とを備える別のコネクタ装置と連結接続するための端部に連結手段を備える。これにより、第2の導管に接続されていても第2の空気供給口への周囲空気の供給を確実にしながら、陰圧源への流体流路が提供される。
【0051】
必要に応じて、第2のコネクタ装置は、本開示の第1の態様によるコネクタ装置である。
【0052】
必要に応じて、分岐コネクタ装置はY型コネクタ装置である。
【0053】
必要に応じて、分岐導管は、第3のコネクタ装置の第3の流体出口に接続された第3の分岐部を備える。
【0054】
本開示の第3の態様は、本開示の第1の態様によるコネクタ装置を提供するステップと、
コネクタ装置を、流体排出導管と空気供給導管とを備える創傷側アセンブリに接続するステップであって、コネクタハウジングを介して、流体排出導管を第1の流体出口にさらに接続し、空気供給導管を空気供給口にさらに接続することによって実施されるステップと、含む方法に関する。
【0055】
必要に応じて、この方法は、流体出口及び流体排出導管を介して陰圧を吸引インターフェースに付加するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0056】
特定の特徴及び利点をはじめとする本開示のさまざまな態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面から容易に理解されよう。
図1】陰圧創傷治療システムの一実施形態を示す図。
図2a】コネクタ装置の一実施形態の斜視図。
図2b図2aによるコネクタ装置の断面図。
図3】Y型コネクタ装置及び例示的な接続部品の一実施形態の斜視図。
図4】分岐コネクタ装置の一実施形態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、陰圧創傷治療システム18を示す。陰圧創傷治療システム18の目的は、創傷9の領域にて陰圧を得ることである。
【0058】
図1に示す陰圧創傷治療システムは、図1では真空ポンプの形態である陰圧源23を備える。図1による陰圧創傷治療システム18は、創傷9を覆って取り付けられた創傷カバー部材24と、陰圧創傷治療システムによる治療対象である創傷の上又は内部に配置される発泡体又はガーゼなどの創傷充填材27と、を備える。
【0059】
創傷カバー部材24は、創傷を囲む皮膚に取り付けられるよう概ね構成される。あくまでも例として、創傷カバー部材24は創傷カバーフィルムを備えることができる。創傷カバー部材24は、接着剤によって皮膚に取り付けることができることが好ましい。使用可能な接着剤の例としては、アクリル接着剤及び/又はシリコーンゲル接着剤が挙げられるが、このような接着剤に限定されるものではない。
【0060】
さらに、図1に示す陰圧創傷治療システムは、吸引インターフェース20と、創傷側アセンブリ19と、を備える。この創傷側アセンブリは、陰圧源23に含まれるキャニスタへ吸引インターフェース20を通って空気及び創傷滲出液などの流体を排出するように構成される流体排出導管21と、吸引インターフェース20の少なくとも一部を通って流体排出導管21内に直接空気を供給するように構成された空気供給導管22と、を備える。
【0061】
図1は、陰圧創傷治療システム18が、コネクタハウジング2と、コネクタハウジング2に接続された流体出口3とを備えるコネクタ装置1を備えることをさらに示す。図1では、流体出口3は、例えば創傷滲出液を収集するためのキャニスタを備える陰圧源23に接続された流体導管7に接続される。陰圧創傷治療システム18内の流体の方向は、図1にて点線の矢印で示される。コネクタハウジング2は、吸引インターフェース20への空気漏れを制御するために、空気供給口4及び空気フィルタ5をさらに備える。陰圧創傷治療システム18内の空気流の方向は、図1に実線の矢印で示される。空気フィルタ5は、多孔質構造体を通って空気が流れる/漏れることを可能にしながら、粒子を濾過及び捕捉する多孔質材料であってもよい。空気フィルタ5は、例えば、円筒形、正方形又は長方形の多孔質材料であってもよい。空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、120mmHgの圧力で10ml/分から70ml/分の間、あるいは120mmHgの圧力で15ml/分から55ml/分の間であってもよい。
【0062】
本開示の実施形態では、空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、120mmHgの圧力で0.5ml/分から70ml/分の間、あるいは120mmHgの圧力で1ml/分から40ml/分の間であってもよい。例えば、空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、約1~5ml/分の間であってもよい。例えば、空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、約15~25ml/分の間であってもよい。
【0063】
図1では、空気フィルタ5は、空気フィルタハウジング16内に設けられる。この空気フィルタハウジングは、少なくとも1つの空気入口開口部17を備え、ここでは3つの開口部を備えた状態で図示され、コネクタハウジング2と一体の延伸部分である。しかし、空気フィルタハウジング16はこのほか、例えばコネクタハウジング2に直接接続された別個の部品として設けられてもよい。
【0064】
コネクタハウジング2は、流体排出導管21を流体出口3に流体接続し、空気供給導管22を空気供給口4に流体接続するための連結手段6を備える。
【0065】
陰圧創傷治療システムでは、原則として、キャニスタ内部の圧力と創傷部位の圧力との間には、重力によって導入される静圧差が常にある。これは、陰圧源23と創傷9との高低差によるものである。流体排出導管21及び流体導管7の内側の滲出液の量は、管の向きに応じて、キャニスタの内部の圧力と比較して、創傷部位の圧力を増減させるか、創傷部位の圧力に影響を及ぼさないことがある。空気量を導入する目的は、重力によって生じる静圧差にもかかわらず、創傷領域と真空ポンプに関連して設けられたキャニスタとの間で、流体排出導管21及び流体導管7での目詰まり、あるいは流体排出導管21及び流体導管7からの滲出液の移動を防止して、その結果、創傷部位での正確な圧力レベルを確保することによって、滲出液の移送が確実になるようにすることである。
【0066】
図2a及び図2bは、本開示によるコネクタ装置1の一実施形態を示す。図2bは、図2aによるコネクタ装置の断面図である。コネクタ装置1は、陰圧源23に接続可能な流体導管7に接続された流体出口3を備える。流体出口は、陰圧源23への流体接続のために、流体導管7を受容して保持する把持手段のような連結手段を備えた延伸本体部分の形態であってもよい。流体導管7は、コネクタ装置に接続された側とは反対側で、陰圧源側コネクタに接続されるように構成される連結手段を備える装置側コネクタに接続されてもよい。創傷側アセンブリ19は、コネクタ装置連結手段6と継手接続するための創傷側アセンブリ連結手段15を備える。継手接続の非限定的な例には、スナップ式、ねじ式、ルアーロック式及び差し込み式接続が挙げられる。
【0067】
コネクタ装置1の断面図を示す図2bに明確に示すように、コネクタ装置1は、空気供給口4と空気入口開口部17とを備える空気供給導管33を備えてもよい。さらに、図2bに示すように、空気供給導管33はコネクタハウジング2と一体の部分であり、空気フィルタ5を収容するか、空気フィルタハウジング16に接続されてもよい。空気供給導管33は空気供給導管22に接続されるよう構成されてもよい。流体出口3は流体排出導管21に堅固に接続されてもよい。
【0068】
図3は、本開示による分岐コネクタ装置10、さらに具体的にはY型コネクタ装置100を示す。図3に示すY型コネクタ装置100は、コネクタハウジング2と、コネクタハウジング2に接続された流体出口3とを備える第1のコネクタ装置1を備える。Y型コネクタ装置100は、第1及び第2の分岐部11、12を備える分岐導管14をさらに備え、流体出口3は第1の分岐部11に直接接続される。
【0069】
Y型コネクタ装置100及び流体連通アセンブリ内の流体の方向は、図3に点線の矢印で示される。コネクタハウジング2は、空気供給導管22を介した空気漏れを制御するために空気供給口4及び空気フィルタ5をさらに備える。Y型コネクタ装置100及び流体連通アセンブリ内の空気の方向は、図3に実線の矢印で示される。空気フィルタ5は、多孔質構造体を通って空気が流れる/漏れることを可能にしながら、粒子を濾過及び捕捉する多孔質材料であってもよい。空気フィルタ5は三次元多孔質材料であってもよい。空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、120mmHgの圧力で0.5ml/分~70ml/分の間であってもよい。例えば、空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、120mmHgの圧力で10ml/分から70ml/分の間、120mmHgの圧力で15ml/分から55ml/分の間、120mmHgの圧力で1ml/分から40ml/分、あるいは約1ml/分から5ml/分の間又は約15~25ml/分の間であってもよい。
【0070】
好ましくは、空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、空気供給導管22を介して空気の連続的な流れが確保されると同時に、陰圧源23の不必要な作業負荷を低減し、それによって騒音と、陰圧源23からのバッテリ消費とを最小にするように構成される。例えば、陰圧源23が最大約1L/分の吸引容量を有する場合、空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、好ましくは、120mmHgの圧力で約1~5ml/分の間になるように構成されてもよい。例えば、陰圧源23が最大約5L/分の吸引容量を有する場合、空気フィルタ5によって提供される空気漏れは、好ましくは、120mmHgの圧力で約15~55ml/分の間、例えば120mmHgの圧力で約15ml/分から25ml/分の間であるように構成されてもよい。
【0071】
図3では、空気フィルタ5は、コネクタハウジング2と一体の延伸部分であって3つの開口部17を備えた空気フィルタハウジング16内に設けられる。しかし、空気フィルタハウジング16はこのほか、例えば、コネクタハウジング2に直接接続される個別の部品として提供されてもよい。
【0072】
コネクタハウジング2は、流体排出導管21を流体出口3に流体接続し、空気供給導管22を空気供給口4に流体接続するための連結手段6を備える。図3では、コネクタ装置1は、コネクタハウジング連結側2bで創傷側アセンブリ21に接続されるように構成され、空気供給口は、コネクタハウジング連結側2bの反対側に位置決めされるコネクタハウジング装置側2aに設けられる。
【0073】
陰圧創傷治療システムでは、原則として、キャニスタの内側の圧力と創傷の圧力との間には重力によって導入される静圧差が常にある。これは、陰圧創傷治療システム18′とさまざまな創傷9との間の高低差と、滲出液が導管に存在することが多いという事実とによる。流体排出導管21及び流体導管7の内側の滲出液の液柱は、管の向きに応じて、キャニスタの内部の圧力と比較して、創傷部位の圧力を増減させるか、創傷部位の圧力に影響を及ぼさないことがある。空気量を導入する目的は、重力によって導入される静圧差にもかかわらず、創傷領域と真空ポンプに関連して設けられたキャニスタとの間で滲出液の移送が確実に実施され、その結果、創傷部位に適正な圧力を確保することである。これは、2つ以上の流体連通アセンブリに接続可能であるため、1つのみの陰圧源を使用して2つ以上の創傷部位で治療を実施することができる創傷治療システムにとってさらに重大な問題である。
【0074】
創傷側アセンブリ19は、コネクタ装置連結手段6と継手接続するための創傷側アセンブリ連結手段15を備える。継手接続の非限定的な例はスナップ式接続である。
【0075】
図3によるY型コネクタ装置100は、第2のコネクタハウジング2′と第2の流体出口3′とを有する第2のコネクタ装置1′をさらに備え、第2の分岐部12は第2の流体出口3′に接続される。第2のコネクタ装置1′は、第2のコネクタハウジング2′に接続された第2の空気供給口4′をさらに備える。図3では、第2の導管8が第2の空気供給口4′に接続される。しかし、第2のコネクタ装置1′の空気供給口の構成が、図1及び図2に示す第1のコネクタ装置1の吸気供給口の構成と同一であることも考えられる。
【0076】
第2のコネクタハウジング2′は、第2の流体排出導管21′を第2の流体出口3′に流体接続し、第2の空気供給口4′に第2の空気供給導管22′を流体接続するための第2の連結手段6′をさらに備える。第2のコネクタ装置1′は、第2のコネクタハウジング連結側2b′にて第2の創傷側アセンブリ19′の第2の創傷側コネクタ25′に係合するか、これとは別に、本開示によるY型コネクタ装置100のような分岐コネクタ装置10と係合するように構成される。
【0077】
分岐導管14の端部は、コネクタ装置1′′′に継手接続するための連結手段26を備える装置側コネクタを備える。コネクタ装置1′′′は、コネクタ装置1と同一のコネクタ装置、Y型コネクタ装置100などの分岐コネクタ装置10であってもよい。コネクタ装置はいずれも、分岐導管14の端部を介して第1及び第2の分岐部11、12と流体連通するための流体出口と、第2のコネクタ装置2′の空気供給口3′に第2の導管8を介して空気を供給する空気供給口と、を備える。連結手段26を備える装置側コネクタが、創傷滲出液を受容するキャニスタを備える陰圧源23に通じる流体排出導管に接続された陰圧源側コネクタに連結されることももちろん考えられる。
【0078】
図4は、さらに分岐したコネクタ装置10を示す。図4に示す分岐コネクタ装置10は、連結手段6と、コネクタハウジング2に接続された流体出口3とを備えるコネクタハウジング2を備える第1のコネクタ装置1を備える。分岐コネクタ装置10は、第1、第2及び第3の分岐部11、12、13を備える分岐導管14′をさらに備え、流体出口3は第1の分岐部11に直接接続される。
【0079】
分岐コネクタ装置10は、第2のコネクタハウジング2′と第2の流体出口3′とを有する第2のコネクタ装置1′をさらに備え、第2の分岐部12は第2の流体出口3′に接続される。第2コネクタ装置1′は、第2のコネクタハウジング2′に接続された第2の空気供給口4′をさらに備える。第3のコネクタハウジング2″及び第3の流体出口3″を有する第3のコネクタ装置1″は、第3の流体出口3″を介して第3の分岐部13に接続される。第3のコネクタ装置1″は、第3のコネクタハウジング2″に接続された第3の空気供給口4″をさらに備える。
【0080】
第1、第2及び第3のコネクタ装置1、1′、1″のそれぞれは、空気フィルタハウジング16、16′、16″内に設けられた空気フィルタ5、5′、5″をさらに備える。
【0081】
図3及び図4に示すように、本開示による分岐コネクタ装置に特有の利点には、各コネクタ装置を介して接続された各流体連通アセンブリに空気が流入することが可能になり、1つの陰圧源しか使用されていない場合でも各流体連通アセンブリの洗い流しが確実になることが挙げられる。
図1
図2a-2b】
図3
図4