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特許7331111ウレタンアリル化合物、モノマー組成物、成形体、歯科材料用組成物、及び歯科材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ウレタンアリル化合物、モノマー組成物、成形体、歯科材料用組成物、及び歯科材料
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/20 20060101AFI20230815BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230815BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 6/90 20200101ALI20230815BHJP
   A61K 6/30 20200101ALI20230815BHJP
   A61K 6/62 20200101ALI20230815BHJP
   A61K 6/893 20200101ALI20230815BHJP
【FI】
C07C271/20 CSP
C08G18/48 066
C08F299/06
A61K6/90
A61K6/30
A61K6/62
A61K6/893
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021539297
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2020030607
(87)【国際公開番号】W WO2021029406
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019148911
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019199162
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 直志
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-277309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0123642(US,A1)
【文献】国際公開第2009/010423(WO,A1)
【文献】特開昭62-149608(JP,A)
【文献】Dental Materials,2015年,31(11), P.1255-1262
【文献】Dental Materials,2015年,31(3),P.244-261
【文献】Dental Materials,2013年,29(7),P.777-787
【文献】Journal of Applied Polymer Science,2014年,131(13),P.40402/1-40402/11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 271/
C08G 18/
C08F 299/
A61K 6/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン結合とアリルオキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有するウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(Y)であって、
下記一般式(Y1)で表される化合物であり、
分子量が200~1500である、
ウレタンアリル化合物。
【化1】

(式(Y1)中、R1Yは、イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からM+N個のイソ(チオ)ネート基を除いた残基である。
2Yは、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
3Yは、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)からn個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
4Yは、水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であり、Mは1~3の整数であり、Nは1~3の整数であり、M+Nは2~4の整数である。
前記イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)は、2価の連結基に2個のイソ(チオ)シアネート基が結合した化合物であり、
前記2価の連結基は、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~8のアリーレン基、-C(=O)-、-SO -、-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す)、又は、これらの組み合わせからなる基であり、
前記アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)は、B価の連結基に1個のヒドロキシ基及びB-1個のアリルオキシ基を有する化合物であり、
前記B価の連結基は、炭素数1~20のアルカンからB個の水素原子を除いた基、炭素数6~18のアレーンからB個の水素原子を除いた基、これらの基に-C(=O)-、-SO -、-NR-(ただし、前記Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す)が1個以上結合した基、又は、これらの組み合わせからなる基であり、
前記Bは、2~4であり、
前記アルコール化合物(C)は、C価の連結基に1個のヒドロキシ基及びC-1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、
C価の連結基は、
炭素数が1~50の直鎖状若しくは分岐状であるアルキレン基
炭素数が1~50の直鎖状若しくは分岐状であるアルケニレン基、
炭素数が1~50の直鎖状若しくは分岐状であるアルキニレン基、
炭素数が3~50のシクロアルキレン基、
炭素数が3~50のシクロアルケニレン基、
炭素数が3~50のシクロアルキニレン基、
炭素数が3~50のアリーレン基、又は、
炭素数が1~50であるオキシアルキレン基であり、
前記Cは、2~4である。)
【請求項2】
前記イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、m-キシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物、及び、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)が、下記化合物(B-1)、化合物(B-2)、及び化合物(B-3)からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載のウレタンアリル化合物。
【化2】
【請求項3】
ウレタン結合とアリルオキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有するウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(Y)であって、
下記一般式(Y1)で表される化合物であり、
分子量が200~1500である、
ウレタンアリル化合物。
【化3】

(式(Y1)中、R1Yは、イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からM+N個のイソ(チオ)ネート基を除いた残基である。
2Yは、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
3Yは、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)からn個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
4Yは、水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であり、Mは1~3の整数であり、Nは1~3の整数であり、M+Nは2~4の整数である。
前記イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、m-キシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物、及び、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)が、下記化合物(B-1)、化合物(B-2)、及び化合物(B-3)からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種である。)
【化4】
【請求項4】
前記イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)と、
前記アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)と、
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)と、
の反応生成物である、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のウレタンアリル化合物。
【請求項5】
ウレタン結合とアリルオキシ基とを有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を含まないウレタンアリル化合物(X)であって、
下記一般式(X1)で表される化合物であり、
分子量が200~1500である、
ウレタンアリル化合物。
【化5】

(式(X1)中、R1Xは、イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からn個のイソ(チオ)シアネート基を除いた残基であり、R2Xは、m個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を除いた残基であり、R3Xは、酸素原子又は硫黄原子である。nは2以上の整数であり、mは1以上の整数である。
前記イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、
m-キシリレンジイソシアネート、
2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、又は、
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物
である。
前記m 個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)は、B価の連結基に1個のヒドロキシ基及びB-1個のアリルオキシ基を有する化合物であり、
前記B価の連結基は、炭素数1~20のアルカンからB個の水素原子を除いた基、炭素数6~18のアレーンからB個の水素原子を除いた基、これらの基に-C(=O)-、-SO -、-NR-(ただし、前記Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す)が1個以上結合した基、又は、これらの組み合わせからなる基であり、
前記Bは、2~4である。
【請求項6】
前記 個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)が、下記化合物(B-1)、化合物(B-2)、及び化合物(B-3)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のウレタンアリル化合物。
【化6】
【請求項7】
ウレタン結合とアリルオキシ基とを有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を含まないウレタンアリル化合物(X)であって、
下記一般式(X1)で表される化合物であり、
分子量が200~1500である、
ウレタンアリル化合物。
【化7】

(式(X1)中、R1Xは、イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からn個のイソ(チオ)シアネート基を除いた残基であり、R2Xは、m個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を除いた残基であり、R3Xは、酸素原子又は硫黄原子である。nは2以上の整数であり、mは1以上の整数である。
前記イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、
m-キシリレンジイソシアネート、
2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、又は、
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物
である
前記m 個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)が、下記化合物(B-1)、化合物(B-2)、及び化合物(B-3)からなる群より選択される少なくとも1種である。)
【化8】
【請求項8】
前記イソ(チオ)シアネート基を 有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)と、
前記 個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)と、
の反応生成物である、
請求項5~請求項7のいずれか1項に記載のウレタンアリル化合物。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のウレタンアリル化合物と、(メタ)アクリレート化合物(D)と、を含むモノマー組成物。
【請求項10】
歯科用であるモノマー組成物であって、請求項1~請求項のいずれか1項に記載のウレタンアリル化合物を含むモノマー組成物。
【請求項11】
歯科用であるモノマー組成物であって、ウレタンアリル化合物を含むモノマー組成物であり、
前記ウレタンアリル化合物が、
ウレタン結合とアリルオキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有するウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(Y)であって、
下記一般式(Y1)で表される化合物であり、
分子量が200~1500である、
ウレタンアリル化合物。
【化9】

(式(Y1)中、R1Yは、イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からM+N個のイソ(チオ)ネート基を除いた残基である。
2Yは、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
3Yは、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)からn個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
4Yは、水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であり、Mは1~3の整数であり、Nは1~3の整数であり、M+Nは2~4の整数である。)
【請求項12】
歯科用であるモノマー組成物であって、ウレタンアリル化合物を含むモノマー組成物であり、
前記ウレタンアリル化合物が、
ウレタン結合とアリルオキシ基とを有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を含まないウレタンアリル化合物(X)であって、
下記一般式(X1)で表される化合物であり、
分子量が200~1500である、
ウレタンアリル化合物。
【化10】

(式(X1)中、R1Xは、イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からn個のイソ(チオ)シアネート基を除いた残基であり、R2Xは、m個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を除いた残基であり、R3Xは、酸素原子又は硫黄原子である。nは2以上の整数であり、mは1以上の整数である。
前記イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、
m-キシリレンジイソシアネート、
2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、又は、
2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物
である。
【請求項13】
歯科用であるモノマー組成物であって、
ウレタンアリル化合物を含み、
前記ウレタンアリル化合物が、ウレタン結合とアリルオキシ基とを有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を含まないウレタンアリル化合物(X)であって、下記一般式(X1)で表される化合物であり、分子量が200~1500である、
モノマー組成物。
【化11】

(式(X1)中、R1Xは、イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からn個のイソ(チオ)シアネート基を除いた残基であり、R2Xは、m個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を除いた残基であり、R3Xは、酸素原子又は硫黄原子である。nは2以上の整数であり、mは1以上の整数である。
前記イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。)
【請求項14】
請求項~請求項13のいずれか1項に記載のモノマー組成物の硬化物である成形体。
【請求項15】
請求項~請求項13のいずれか1項に記載のモノマー組成物と、重合開始剤と、を含む歯科材料用組成物。
【請求項16】
フィラーをさらに含む請求項15に記載の歯科材料用組成物。
【請求項17】
請求項15又は請求項16に記載の歯科材料用組成物の硬化物である歯科材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウレタンアリル化合物、モノマー組成物、成形体、歯科材料用組成物、及び歯科材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリレート化合物、アリル化合物に代表される重合性単量体は、良好な硬化性、透明性等の特性を利用して、塗料、印刷製版、光学材料、歯科材料等のさまざまな分野で広く使用されている。
【0003】
重合性単量体は、中でも、歯科材料の分野においては、天然歯牙の齲蝕、破折等の修復に用いられる歯科用コンポジットレジンなどの歯科修復材料、歯科用コンポジットレジンと歯牙とを接着させるために用いられる種々の歯科用接着剤、さらには人工歯、義歯床材料等に幅広く用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ジアリルフタレートプレポリマー、ジアリルフタレートモノマーおよび重合開始剤を含有するクラウンおよびブリッジ用組成物が開示されている。
【0005】
特許文献1:特開昭62-149608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているようなジアリルフタレートモノマーを用いて硬化物を形成した場合、破断強度、破断エネルギー等の機械的強度に改善の余地がある。
【0007】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、破断強度及び破断エネルギーに優れる硬化物を形成可能であるウレタンアリル化合物、これを含むモノマー組成物、このモノマー組成物の硬化物である成形体、このモノマー組成物を含む歯科材料用組成物、及びこの歯科材料用組成物の硬化物である歯科材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
<1> ウレタン結合と、アリルオキシ基とを有するウレタンアリル化合物。
<2> (メタ)アクリロイルオキシ基を含まないウレタンアリル化合物(X)、又は、(メタ)アクリロイル基を含むウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(Y)である<1>に記載のウレタンアリル化合物。
<3> 前記ウレタンアリル化合物(X)が、イソ(チオ)シアネート基を2個以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)と、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)との反応生成物であり、前記ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(Y)が、イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)と、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)と、の反応生成物である<2>に記載のウレタンアリル化合物。
<4> 前記イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、m-キシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物、及び、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種を含む<3>に記載のウレタンアリル化合物。
<5> 前記アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)は、下記化合物(B-1)、化合物(B-2)及び化合物(B-3)からなる群より選択される少なくとも1種である<3>又は<4>に記載のウレタンアリル化合物。
【化1】

<6> 前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む<3>~<5>のいずれか1つに記載のウレタンアリル化合物。
<7> 下記一般式(X1)又は下記一般式(Y1)で表される化合物である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のウレタンアリル化合物。
【化2】

(式(X1)中、R1Xは、イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からn個のイソ(チオ)シアネート基を除いた残基であり、R2Xは、m個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を除いた残基であり、R3Xは、酸素原子又は硫黄原子である。nは2以上の整数であり、mは1以上の整数である。)
式(Y1)中、R1Yは、イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からM+N個のイソ(チオ)ネート基を除いた残基である。
2Yは、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
3Yは、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)からn個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
4Yは、水素原子又はメチル基である。nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であり、Mは1~3の整数であり、Nは1~3の整数であり、M+Nは2~4の整数である。)
<8> 分子量が200~1500である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のウレタンアリル化合物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載のウレタンアリル化合物と、(メタ)アクリレート化合物(D)と、を含むモノマー組成物。
<10> 歯科用である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のウレタンアリル化合物を含むモノマー組成物。
<11> <9>又は<10>に記載のモノマー組成物の硬化物である成形体。
<12> <9>又は<10>に記載のモノマー組成物と、重合開始剤と、を含む歯科材料用組成物。
<13> フィラーをさらに含む<12>に記載の歯科材料用組成物。
<14> <12>又は<13>に記載の歯科材料用組成物の硬化物である歯科材料。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、破断強度及び破断エネルギーに優れる硬化物を形成可能であるウレタンアリル化合物、これを含むモノマー組成物、このモノマー組成物の硬化物である成形体、このモノマー組成物を含む歯科材料用組成物、及びこの歯科材料用組成物の硬化物である歯科材料を提供できる。
前記ウレタンアリル化合物は、ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施例1Aで得たウレタンアリル化合物(A-1)のIRスペクトルである。
図2A】実施例2Aで得たウレタンアリル化合物(A-2)のIRスペクトルである。
図3A】実施例3Aで得たウレタンアリル化合物(A-3)のIRスペクトルである。
図4A】実施例4Aで得たウレタンアリル化合物(A-4)のIRスペクトルである。
図5A】実施例5Aで得たウレタンアリル化合物(A-5)のIRスペクトルである。
図6A】実施例6Aで得たウレタンアリル化合物(A-6)のIRスペクトルである。
図7A】実施例7Aで得たウレタンアリル化合物(A-7)のIRスペクトルである。
図8A】実施例8Aで得たウレタンアリル化合物(A-8)のIRスペクトルである。
図9A】実施例9Aで得たウレタンアリル化合物(A-9)のIRスペクトルである。
図10A】実施例10Aで得たウレタンアリル化合物(A-10)のIRスペクトルである。
図11A】実施例11Aで得たウレタンアリル化合物(A-11)のIRスペクトルである。
図1B】実施例1Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-1)のIRスペクトルである。
図2B】実施例2Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-2)のIRスペクトルである。
図3B】実施例3Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-3)のIRスペクトルである。
図4B】実施例4Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-4)のIRスペクトルである。
図5B】実施例5Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-5)のIRスペクトルである。
図6B】実施例6Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-6)のIRスペクトルである。
図7B】実施例7Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-7)のIRスペクトルである。
図8B】実施例8Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-8)のIRスペクトルである。
図9B】実施例9Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-9)のIRスペクトルである。
図10B】実施例10Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-10)のIRスペクトルである。
図11B】実施例11Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-11)のIRスペクトルである。
図12B】実施例12Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-12)のIRスペクトルである。
図13B】実施例13Bで得たウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-13)のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
本開示において、「イソ(チオ)シアネート」とはイソシアネート又はイソチオシアネートを意味する。
本開示において、「ウレタン結合」は、例えば、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基と、アルコール化合物(B)のヒドロキシ基とが反応することで形成される結合、及び、イソチオシアネート化合物(A)のイソチオシアネート基と、アルコール化合物(B)のヒドロキシ基とが反応することで形成される結合を包含する。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
[ウレタンアリル化合物]
本開示のウレタンアリル化合物は、ウレタン結合と、アリルオキシ基とを有する。本開示のウレタンアリル化合物は、破断強度及び破断エネルギーに優れる硬化物を形成可能である。アリルオキシ基は(メタ)アクリロイル基よりも重合性が高いために硬化物中における反応率が高く、硬化物が強固な構造となること、及び、ウレタンアリル化合物はウレタン結合を有することを理由として硬化物の破断強度及び破断エネルギーが向上すると推測される。
さらに、本開示のウレタンアリル化合物は、重合収縮率の小さい硬化物を形成可能である。
【0014】
本開示のウレタンアリル化合物において、ウレタン結合の数及びアリルオキシ基の数は特に限定されない。例えば、ウレタン結合の数は、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。アリルオキシ基の数は、2~9であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。
【0015】
前述のウレタンアリル化合物は、イソ(チオ)シアネート基を2個以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)(以下、「イソ(チオ)シアネート化合物(A)」とも称する。)と、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)(以下、「アルコール化合物(B)」とも称する。)との反応生成物であることが好ましく、より詳細には、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基と、アルコール化合物(B)のヒドロキシ基とが反応してなるウレタン結合を有する反応生成物であることがより好ましく、イソ(チオ)シアネート化合物(A)の全てのイソ(チオ)シアネート基が、アルコール化合物(B)のヒドロキシ基と反応してなる2個以上のウレタン結合を有する反応生成物であることがさらに好ましい。
【0016】
本開示のウレタンアリル化合物は、下記一般式(X1)で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
【化3】


【0018】
式(X1)中、R1Xは、イソ(チオ)シアネート基をn個有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からn個のイソ(チオ)シアネート基を除いた残基であり、R2Xは、m個のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を除いた残基であり、R3Xは、酸素原子又は硫黄原子である。nは2以上の整数であり、mは1以上の整数である。
複数存在するR2X及びR3Xはそれぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。
1Xがイソシアネート基をn個有するイソシアネート化合物(A)からn個のイソシアネート基を除いた残基である場合、R3Xは酸素原子であり、R1Xがイソチオシアネート基をn個有するイソチオシアネート化合物(A)からn個のイソチオシアネート基を除いた残基である場合、R3Xは硫黄原子である。
【0019】
は、1~3であることが好ましく、ウレタンアリル化合物を用いて硬化物としたときの破断エネルギーにより優れ、重合収縮率がより小さい点から、2又は3であることがより好ましい。
は、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0020】
以下、本開示のウレタンアリル化合物の製造に用い得る、イソ(チオ)シアネート基を2個以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)及びアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)、並びに、これらの反応条件について説明する。
【0021】
(イソ(チオ)シアネート化合物(A))
イソ(チオ)シアネート化合物(A)は、イソ(チオ)シアネート基を2個以上有する化合物であり、好ましくはA価の連結基にA個のイソ(チオ)シアネート基が結合した化合物である。ここで、Aは、2以上の整数であり、2~4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0022】
Aが2である場合、2価の連結基としては、特に限定されず、例えば、アルキレン基、アリーレン基、-C(=O)-、-SO-、-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、これらの組み合わせからなる基等が挙げられる。2価の連結基としては、中でもアルキレン基、アリーレン基及びこれらの組合せが好ましい。
【0023】
アルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状又はこれらの組合せのいずれであってもよい。環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アルキレン基が環状である場合、アルキレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。直鎖又は分岐のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、tert-ペンチレン基等が挙げられる。環状のアルキレン基としては、例えば、ノルボルナン構造を有する基、イソホロン構造を有する基が挙げられる。
【0024】
アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。アリーレン基としては、具体的には、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、2以上の芳香環が縮合した2価の縮合多環芳香環基等が挙げられる。
【0025】
上述の式(1)において、Rは、イソ(チオ)シアネート化合物(A)から全てのイソ(チオ)ネート基を除いた残基から選択される一つの置換基であってもよく、複数存在するRは、いずれもイソ(チオ)シアネート化合物(A)から全てのイソ(チオ)ネート基を除いた残基から選択される一つの置換基であることが好ましい。
【0026】
イソシアネート化合物(A)としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートシクロへキシル)メタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4‘-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物(A)としては、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
【0027】
イソチオシアネート化合物(A)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、リジンジイソチオシアネートメチルエステル、リジントリイソチオシアネート、m-キシリレンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアネートメチル)スルフィド、ビス(イソチオシアネートエチル)スルフィド、ビス(イソチオシアネートエチル)ジスルフィド等の脂肪族ポリイソチオシアネート化合物;イソホロンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、メチルシクロヘキサンジイソチオシアネート、2,5-ビス(イソチオシアネートメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソチオシアネートメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、3,8-ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン、3,9-ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン、4,8-ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン、4,9-ビス(イソチオシアネートメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソチオシアネート化合物;トリレンジイソチオシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソチオシアネート、ジフェニルジスルフィド-4,4-ジイソチオシアネート等の芳香族ポリイソチオシアネート化合物;2,5-ジイソチオシアネートチオフェン、2,5-ビス(イソチオシアネートメチル)チオフェン、2,5-イソチオシアネートテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソチオシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソチオシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソチオシアネート1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソチオシアネートメチル)-1,4-ジチアン、4,5-ジイソチオシアネート1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソチオシアネートメチル)-1,3-ジチオラン等の含硫複素環ポリイソチオシアネート化合物;などが挙げられる。イソチオシアネート化合物(A)としては、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
前記イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)が、m-キシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物、及び、イソホロンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、
m-キシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物、及び、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0029】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)は、下記化合物(A-1)~化合物(A-5)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
【化4】
【0031】
(アルコール化合物(B))
アルコール化合物(B)は、アリルオキシ基を有するアルコール化合物である。アルコール化合物(B)としては、好ましくは、B価の連結基に1個のヒドロキシ基及びB-1個のアリルオキシ基を有する化合物である。ここで、Bは、2以上の整数であり、2~4であることが好ましく、ウレタンアリル化合物を用いて硬化物としたときの破断エネルギーにより優れ、重合収縮率がより小さい点から、2~4であることがより好ましく、3又は4であることがさらに好ましい。
【0032】
B価の連結基としては、特に限定されず、例えば、アルカンからB個の水素原子を除いた基、アレーンからB個の水素原子を除いた基、これらの基に-C(=O)-、-SO-、-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表し、水素原子が好ましい)等が1個以上結合した基、前述の基の組み合わせからなる基などが挙げられる。アルカンからB個の水素原子を除いた基は、炭化水素基の一部が-C(=O)-、-SO-、-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表し、水素原子が好ましい)等に置換されていてもよい。B価の連結基としては、中でもアルカンからB個の水素原子を除いた基が好ましい。
【0033】
アルカンの炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。アルカンは、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルカンは、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。環状のアルカンは、単環、多環のいずれであってもよい。アルカンとしては、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、2-メチルプロパン、ヘプタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパン等が挙げられる。
【0034】
アレーンの炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。アレーンとしては、具体的には、ベンゼン、2以上の芳香環が縮合した縮合多環芳香族化合物等が挙げられる。
【0035】
上述の式(1)において、Rはそれぞれ独立に、アルコール化合物(B)から全てのアリルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基から選択される一つの置換基であってもよく、複数存在するRは、いずれもアルコール化合物(B)から全てのアリルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基から選択される一つの置換基であることが好ましい。
【0036】
アルコール化合物(B)は、特に限定されず、エチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。
アルコール化合物(B)は、一種を用いてもよく、二種を組み合わせてもよい。
【0037】
アルコール化合物(B)は、下記化合物(B-1)、化合物(B-2)及び化合物(B-3)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
【化5】

【0039】
本開示のウレタンアリル化合物は、分子量が、200~1500であることが好ましく、300~1000であることがより好ましく、350~800であることが更に好ましい。
【0040】
(ウレタンアリル化合物の製造方法)
以下、本開示のウレタンアリル化合物の製造方法について説明する。本開示のウレタンアリル化合物の製造方法は、イソ(チオ)シアネート化合物(A)と、アルコール化合物(B)とを反応させる工程を含むことが好ましい。
【0041】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)と、アルコール化合物(B)とを反応させる場合、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基のモル数(α)に対するアルコール化合物(B)のヒドロキシ基のモル数(β)の比率(β/α)は、0.5~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましく、約1.0であることがさらに好ましい。
【0042】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)及びアルコール化合物(B)の反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば、公知の溶媒を用いることができ、例えば、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、パークレン等のハロゲン系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の極性溶媒が挙げられる。
これらの溶媒は一種単独で用いてもよく、または二種以上を併用してもよい。
【0043】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)及びアルコール化合物(B)を反応させる際には、反応速度向上の点から、触媒を添加してもよい。触媒としては、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基と、アルコール化合物(B)のヒドロキシ基との反応を加速させる公知の触媒を使用できる。触媒としては、例えば、ウレタン化触媒を添加することが好ましい。
【0044】
ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、オクタン酸錫等の有機錫化合物、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトナトジルコニウム、アセチルアセトナト鉄、アセチルアセトナトゲルマニウム等の錫以外のその他の有機金属化合物、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7-トリメチル-1-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N,N,N’,N’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラ(3-ジメチルアミノプロピル)-メタンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール等のアミン化合物及びそれらの塩、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン化合物などが挙げられる。これらの中でも、少量にて反応が好適に進行し、イソ(チオ)シアネート化合物(A)に対して選択性が高い、ジブチル錫ジラウレート及びオクタン酸錫が好ましい。
【0045】
ウレタン化触媒の使用量としては、イソ(チオ)シアネート化合物(A)及びアルコール化合物(B)の合計に対して、0.001質量%~0.1質量%であってもよく、0.01質量%~0.1質量%であってもよい。
【0046】
反応温度は、特に制限されず、通常20℃~120℃、好ましくは30℃~100℃の範囲である。
【0047】
反応時間は、反応温度等の条件に依存するため特に限定されず、通常、数分から数10時間である。反応の終点の確認方法としては、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による分析等が挙げられる。
【0048】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)及びアルコール化合物(B)を反応させる際には、アルコール化合物(B)におけるアリルオキシ基の重合反応を抑制する点から、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては、特に限定されず、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン(HQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、フェノチアジン(PTZ)等が挙げられる。
【0049】
重合禁止剤の使用量としては、イソ(チオ)シアネート化合物(A)及びアルコール化合物(B)の合計に対して、0.001質量%~0.5質量%であってもよく、0.002質量%~0.3質量%であってもよく、0.005質量%~0.3質量%であってもよい。
【0050】
[モノマー組成物]
本開示のモノマー組成物は、本開示のウレタンアリル化合物を含む。また、本開示のモノマー組成物は、歯科用であってもよく、本開示のウレタンアリル化合物以外の(メタ)アクリレート化合物(D)を含んでいてもよい。
【0051】
(メタ)アクリレート化合物(D)としては、例えば、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス〔4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(ウレタンジメタクリレート:UDMA)等が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物(D)は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。例えば、モノマー組成物の粘度を低く調整するために、トリエチレングリコールジメタクリレート等の粘度調整用モノマーを用い、高い機械強度を得るためにさらにウレタンジメタクリレートを併用してもよい。粘度調整用モノマーとウレタンジメタクリレートとを併用する場合、粘度調整用モノマーとウレタンジメタクリレートとを1:0.8~1.2の質量比で用いてもよい。
【0052】
モノマー組成物における、ウレタンアリル化合物の含有量としては、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、10質量%~50質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
また、モノマー組成物における、(メタ)アクリレート化合物(D)の含有量としては、10質量%~95質量%であることが好ましく、30質量%~90質量%であることがより好ましく、50~90質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
[成形体]
本開示の成形体は、本開示のモノマー組成物の硬化物である。例えば、ウレタンアリル化合物を含むモノマー組成物、好ましくはウレタンアリル化合物及び(メタ)アクリレート化合物(D)を含むモノマー組成物を硬化させることにより、破断強度及び破断エネルギーに優れた硬化物を得ることができる。
【0055】
[歯科材料用組成物]
本開示の歯科材料用組成物は、本開示のモノマー組成物及び重合開始剤を含み、好ましくはフィラーをさらに含む。この歯科材料用組成物は、常温重合性、熱重合性、又は光重合性を有し、例えば歯科修復材料として好ましく使用することができる。本開示では、光重合により高い重合度を得られることから、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0056】
モノマー組成物の配合量は、歯科材料用組成物100質量%に対して、20質量%~80質量%が好ましく、20質量%~50質量%がより好ましい。
【0057】
重合開始剤としては、歯科分野で用いられる一般的な重合開始剤を使用することができ、歯科材料用組成物に含まれるウレタンアリル化合物、(メタ)アクリレート化合物(D)等の重合性化合物の重合性と重合条件を考慮して選択される。
【0058】
常温重合を行う場合には、重合開始剤としては、例えば、酸化剤及び還元剤を組み合わせたレドックス系の重合開始剤が好ましい。レドックス系の重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤が別々に包装された形態をとり、使用する直前に両者を混合すればよい。
【0059】
酸化剤としては、特に限定されず、例えば、ジアシルパーオキサイド類(ベンゾイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(t-ブチルパーオキシベンゾエート等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジクミルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等)、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類等の有機過酸化物(t-ブチルハイドロパーオキサイド等)が挙げられる。
【0060】
また、還元剤としては、特に限定されず、通常第三級アミン(N,N-ジメチルアニリン等)が用いられる。
【0061】
これら有機過酸化物/アミン系の他には、クメンヒドロパーオキサイド/チオ尿素系、アスコルビン酸/Cu2+塩系、有機過酸化物/アミン/スルフィン酸(又はその塩)系等のレドックス系重合開始剤を用いることができる。また、重合開始剤として、トリブチルボラン、有機スルフィン酸等も好適に用いられる。
【0062】
加熱による熱重合を行う場合には、過酸化物、アゾ系化合物等の重合開始剤が好ましい。
過酸化物としては特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等が挙げられる。アゾ系化合物としては特に限定されず、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0063】
可視光線照射による光重合を行う場合には、α-ジケトン/第3級アミン、α-ジケトン/アルデヒド、α-ジケトン/メルカプタン等のレドックス系開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、α-ジケトン/還元剤、ケタール/還元剤、チオキサントン/還元剤等が挙げられる。
α-ジケトンとしては、例えば、カンファーキノン等が挙げられる。
ケタールとしては、例えば、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
チオキサントンとしては、例えば、2-クロロチオキサントン等が挙げられる。
還元剤としては、例えば、第三級アミン(ミヒラ-ケトン等)、アルデヒド類(シトロネラール等);チオール基を有する化合物(2-メルカプトベンゾオキサゾール等);などを挙げることができる。これらのレドックス系に有機過酸化物を添加したα-ジケトン/有機過酸化物/還元剤等の系も好適に用いられる。
【0064】
紫外線照射による光重合を行う場合には、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール等の光重合開始剤が好ましい。また、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類の光重合開始剤も好適に用いられる。
【0065】
(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類としては、アシルフォスフィンオキサイド類(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等)、ビスアシルフォスフィンオキサイド類(ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等)等が挙げられる。
これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類の光重合開始剤は、単独で使用、又は各種アミン類、アルデヒド類、メルカプタン類、スルフィン酸塩等の還元剤と併用してもよい。これら(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類の光重合開始剤は、上記可視光線の光重合開始剤とも併用してもよい。
【0066】
重合開始剤については、例えば、国際公開第2019/107323号、国際公開第2020/040141号等を参照して使用してもよい。
【0067】
上記重合開始剤は一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。重合開始剤の配合量は、歯科材料用組成物100質量%に対して、0.01質量%~20質量%が好ましく、0.1質量%~5質量%がより好ましい。
【0068】
フィラーは、歯科分野で用いられる一般的なフィラーを使用することができる。フィラーは、通常、有機フィラーと無機フィラーに大別される。
有機フィラーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体等の微粉末が挙げられる。
【0069】
無機フィラーとしては、例えば、各種ガラス類(二酸化珪素を主成分とし、必要に応じ、重金属、ホウ素、アルミニウム等の酸化物を含有する)、各種セラミック類、珪藻土、カオリン、粘土鉱物(モンモリロナイト等)、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、フッ化カルシウム、フッ化イッテルビウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイトなどの微粉末が挙げられる。このような無機フィラーの具体例としては、例えば、バリウムボロシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、ランタンガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、ボロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。
【0070】
フィラーについては、例えば、国際公開第2019/107323号、国際公開第2020/040141号等を参照して使用してもよい。
【0071】
これらのフィラーは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。フィラーの配合量は、歯科材料用組成物(例えばコンポジットレジンペースト)の操作性(粘稠度)、その硬化物の機械的物性等を考慮して適宜決定すればよく、歯科材料用組成物中に含まれるフィラー以外の全成分100質量部に対して、10質量部~2000質量部が好ましく、50質量部~1000質量部がより好ましく、100質量部~600質量部がさらに好ましい。
【0072】
本開示の歯科材料用組成物は、本開示のモノマー組成物、重合開始剤、及びフィラー以外の成分を、目的に応じて適宜含んでもよい。例えば、保存安定性を向上させるための前述した重合禁止剤を含んでもよい。また、色調を調整するために、公知の顔料、染料等の色素を含んでいてもよい。さらに、硬化物の強度を向上させるために、公知のファイバー等の補強材を含んでもよい。また、本開示の歯科材料用組成物は、殺菌剤、消毒剤、安定化剤、保存剤などの添加剤を本開示の効果を奏する限り必要に応じて含有してもよい。
【0073】
本開示の歯科材料用組成物は、前述の重合開始剤の重合方式にて適切な条件で硬化することができる。例えば、可視光照射による光重合開始剤を含有している本開示の歯科材料用組成物の場合は、歯科材料用組成物を所定の形状に加工したのち、公知の光照射装置を用いて所定の時間可視光を照射することにより、所望の硬化物を得ることができる。照射強度、照射強度等の条件は、歯科材料用組成物の硬化性に合わせて適切に変更することができる。また、可視光をはじめとした、光照射により硬化した硬化物を、さらに適切な条件で熱処理をすることにより、硬化物の機械的物性を向上させてもよい。
【0074】
以上のようにして得られる本開示の歯科材料用組成物の硬化物は、歯科材料として好適に用いることができる。
本開示の歯科材料用組成物の使用方法は、歯科材料の使用法として一般に知られているものであれば、特に制限されない。例えば、本開示の歯科材料用組成物を齲蝕窩洞充填用コンポジットレジンとして使用する場合は、口腔内の窩洞に歯科材料用組成物を充填した後、公知の光照射装置を用いて光硬化させることにより、目的を達成できる。また、歯冠用コンポジットレジンとして使用する場合は、歯科材料用組成物を適切な形状に加工した後、公知の光照射装置を用いて光硬化させ、さらに所定の条件で熱処理を行うことで、所望の歯冠材料を得ることができる。
【0075】
本開示の歯科材料用組成物及び歯科材料は、例えば、歯科修復材料、義歯床用レジン、義歯床用裏装材、印象材、合着用材料(レジンセメント、レジン添加型グラスアイオノマーセメント等)、歯科用接着材(歯列矯正用接着材、窩洞塗布用接着材等)、歯牙裂溝封鎖材、CAD/CAM用レジンブロック、テンポラリークラウン、人工歯材料等として好ましく使用することができる。また、歯科修復材料を適用範囲別に分類すると、歯冠用コンポジットレジン、齲蝕窩洞充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン、充填修復用コンポジットレジン等に分類できる。これらのうち、本開示の歯科材料用組成物及び歯科材料は特にコンポジットレジン等の歯科修復材料に適している。
【0076】
[歯科材料]
本開示の歯科材料は、本開示の歯科材料用組成物の硬化物である。歯科材料用組成物の硬化条件としては、歯科材料用組成物の組成、歯科材料の用途等に応じて適宜定めればよい。
【0077】
≪ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物≫
本開示のウレタンアリル化合物は、(メタ)アクリロイル基を含まなくてもよいが、(メタ)アクリロイル基を含んでもよい。
後者のように、本開示のウレタンアリル化合物が、ウレタン結合と、アリルオキシ基と、(メタ)アクリロイルオキシ基と、を含む場合、上記ウレタンアリル化合物を、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物とも称する。
【0078】
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、ウレタン結合と、アリルオキシ基と、(メタ)アクリロイルオキシ基と、を含む。
【0079】
アリルオキシ基は(メタ)アクリロイルオキシ基よりも重合性が高い。一方で、得られる硬化物において、アリルオキシ基を含む化合物を用いた場合は、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む化合物を用いた場合ほどの強度を得ることが困難である。
(メタ)アクリロイルオキシ基を含む化合物を用いた場合は、得られる硬化物において、アリルオキシ基を含む化合物を用いた場合よりも強度に優れる。一方で、(メタ)アクリロイルオキシ基は、アリルオキシ基と比較すると重合性が低い。
【0080】
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、ウレタン結合とアリルオキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを含むことで、アリルオキシ基の強度及びアクリロイルオキシ基の重合性を向上させることができると考えられる。結果として、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、強度に優れる硬化物を得ることができる。即ち、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、破断強度及び破断エネルギーに優れる硬化物を形成可能である。
さらに、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、重合収縮率の小さい硬化物を形成可能である。
【0081】
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物において、ウレタン結合の数及びアリルオキシ基の数、(メタ)アクリロイルオキシ基の数は特に限定されない。例えば、ウレタン結合の数は、2又は3であることが好ましく、2であることがより好ましい。アリルオキシ基の数は、2~9であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基の数は、2~9であることが好ましく、2~6であることがより好ましい。
【0082】
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、上述のイソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)と、上述のアリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)と、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)(以下、「アルコール化合物(C)」とも称する。)と、の反応生成物であることが好ましい。
より詳細には、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基と、アルコール化合物(B)のヒドロキシ基とが反応してなるウレタン結合を有し、かつ、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基と、アルコール化合物(C)のヒドロキシ基とが反応してなるウレタン結合を有する反応生成物であることがより好ましい。
また、イソ(チオ)シアネート化合物(A)の二つ以上のイソ(チオ)シアネート基が、アルコール化合物(B)のヒドロキシ基又はアルコール化合物(C)のヒドロキシ基と反応してなる2個以上のウレタン結合を有する反応生成物であることがより好ましい。
【0083】
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物としては、下記式(Y1)で表される化合物であることが好ましい。
【0084】
【化6】

【0085】
式(Y1)中、R1Yは、イソ(チオ)シアネート基を二つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)からM+N個のイソ(チオ)シアネート基を除いた残基である。
2Yは、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)からm個のアリルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
3Yは、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)からn個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
4Yは、水素原子又はメチル基である。n及びmは1以上の整数であり、Mは1~3の整数であり、Nは1~3の整数であり、M+Nは2~4の整数である。
【0086】
2Y、R3Y又はR4Yが複数存在する場合には、複数存在するR2Y、R3Y又はR4Yはそれぞれ、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0087】
得られる硬化物の破断エネルギーにより優れ、重合収縮率がより小さい点から、mは1~3であることがより好ましい。
は、1~3の整数であり、1であることがより好ましい。
【0088】
は、1~3であることが好ましく、得られる硬化物の破断エネルギーにより優れ、重合収縮率がより小さい点から、1又は2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
は、1~3の整数であり、1であることがより好ましい。
【0089】
以下、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物の製造に用い得る、イソ(チオ)シアネート基を2個以上有するイソ(チオ)シアネート化合物(A)、アリルオキシ基を有するアルコール化合物(B)及び(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)、並びに、これらの反応条件について説明する。
【0090】
(イソ(チオ)シアネート化合物(A))
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、本開示のウレタンアリル化合物の一形態であるため、上述のウレタンアリル化合物の説明で記載したイソ(チオ)シアネート化合物(A)を用いることができる。
【0091】
(アルコール化合物(B))
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物は、本開示のウレタンアリル化合物の一形態であるため、上述のウレタンアリル化合物の説明で記載したアルコール化合物(B)を用いることができる。
【0092】
(アルコール化合物(C))
アルコール化合物(C)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物である。アルコール化合物(C)としては、好ましくは、C価の連結基に1個のヒドロキシ基及びC-1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。ここで、Cは、2以上の整数であり、2~4であることが好ましく、得られる硬化物の破断エネルギーにより優れ、重合収縮率がより小さい点から、2又は3であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
アルコール化合物(C)は、一種を用いてもよく、二種を組み合わせてもよい。
【0093】
C価の連結基としては、特に限定されず、例えば、炭素数が1~50の直鎖状又は分岐状である二価の非環状炭化水素基、炭素数が3~50の二価の環状炭化水素基、又は炭素数が1~50であり、主鎖中に酸素原子を含む二価の有機基であることが好ましい。炭素数が3~50の二価の環状炭化水素基としては、環状炭化水素の部分のみで構成されていてもよく、環状炭化水素の部分及び非環状炭化水素の部分の組み合わせであってもよい。
【0094】
ここで、二価の非環状炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基等が挙げられ、二価の環状炭化水素基としては、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アリーレン基等が挙げられる。また、主鎖中に酸素原子を含む二価の有機基としては、主鎖中に酸素原子が連続して存在する構造、例えば、「-O-O-」を有さないことが好ましく、酸素原子以外の構造は炭化水素基であることが好ましい。また、非環状炭化水素基、及び炭化水素基における水素原子は、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボニル基等の置換基に置換されていてもよく、環状炭化水素基における水素原子は、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アルキル基等の置換基に置換されていてもよい。
【0095】
炭素数が1~50の直鎖状又は分岐状である二価の非環状炭化水素基としては、炭素数が1~20の直鎖状又は分岐状である二価の非環状炭化水素基が好ましく、炭素数が1~10の直鎖状又は分岐状である二価の非環状炭化水素基がより好ましい。
【0096】
炭素数が3~50の二価の環状炭化水素基としては、炭素数が6~30の二価の環状炭化水素基が好ましく、炭素数が10~25の二価の環状炭化水素基がより好ましい。
【0097】
炭素数が1~50であり、主鎖中に酸素原子を含む二価の有機基としては、炭素数が1~50であるオキシアルキレン基が好ましく、炭素数が2~30であるオキシアルキレン基がより好ましい。
【0098】
上述の式(1)において、Rはそれぞれ独立に、アルコール化合物(C)から全ての(メタ)アクリロイルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基から選択される一つの置換基であってもよく、複数存在するRは、いずれもアルコール化合物(C)から全ての(メタ)アクリロイルオキシ基及び1つのヒドロキシ基を除いた残基から選択される一つの置換基であることが好ましい。
【0099】
アルコール化合物(C)としては、特に限定されず、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピルメタアクリレート(HPMA)、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4HBA)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられる。
【0100】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基を有するアルコール化合物(C)が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4HBA)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0101】
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物の分子量は、200~1500であることが好ましく、300~1000であることがより好ましく、350~800であることが更に好ましい。
【0102】
(ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法)
以下、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法について説明する。本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法は、イソ(チオ)シアネート化合物(A)と、アルコール化合物(B)と、アルコール化合物(C)と、を反応させる工程を含むことが好ましい。
上記工程において、イソ(チオ)シアネート化合物(A)とアルコール化合物(B)とアルコール化合物(C)とを一度に反応させてもよく、イソ(チオ)シアネート化合物(A)とアルコール化合物(B)とを反応させた後、アルコール化合物(C)を反応させてもよく、イソ(チオ)シアネート化合物(A)とアルコール化合物(C)とを反応させた後、アルコール化合物(B)を反応させてもよい。
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物を効率よく生成する観点から、上記工程において、イソ(チオ)シアネート化合物(A)とアルコール化合物(B)とアルコール化合物(C)とを一度に反応させることが好ましい。
【0103】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)と、アルコール化合物(C)とを反応させる際、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基のモル数(α)に対するアルコール化合物(C)のヒドロキシ基のモル数(γ)の比率(γ/α)は、0.5~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましく、約1.0であることがさらに好ましい。
【0104】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)、アルコール化合物(B)及びアルコール化合物(C)の反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば、公知の溶媒を用いることができ、例えば、上述の溶媒が挙げられる。
これらの溶媒は一種単独で用いてもよく、または二種以上を併用してもよい。
【0105】
(触媒)
イソ(チオ)シアネート化合物(A)、アルコール化合物(B)及びアルコール化合物(C)を反応させる際には、反応速度向上の点から、触媒を添加してもよい。触媒としては、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基とアルコール化合物(B)のヒドロキシ基との反応、又は、イソ(チオ)シアネート化合物(A)のイソ(チオ)シアネート基とアルコール化合物(C)のヒドロキシ基との反応を加速させる公知の触媒を使用できる。触媒としては、例えば、ウレタン化触媒を添加することが好ましい。
【0106】
ウレタン化触媒としては、上述のウレタン化触媒が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0107】
ウレタン化触媒の使用量としては、イソ(チオ)シアネート化合物(A)、アルコール化合物(B)及びアルコール化合物(C)の合計に対して、0.001質量%~0.1質量%であってもよく、0.01質量%~0.1質量%であってもよい。
【0108】
反応温度は、特に制限されず、通常20℃~120℃、好ましくは30℃~100℃の範囲である。
【0109】
反応時間は、反応温度等の条件に依存するため特に限定されず、通常、数分から数10時間である。反応の終点の確認方法としては、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による分析等が挙げられる。
【0110】
イソ(チオ)シアネート化合物(A)、アルコール化合物(B)及びアルコール化合物(C)を反応させる際には、アルコール化合物(B)におけるアリルオキシ基の重合反応、及び、アルコール化合物(C)におけるアクリロイルオキシ基の重合反応を抑制する点から、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては、上述の重合禁止剤が挙げられる。
【0111】
重合禁止剤の使用量としては、イソ(チオ)シアネート化合物(A)、アルコール化合物(B)及びアルコール化合物(C)の合計に対して、0.001質量%~0.5質量%であってもよく、0.002質量%~0.3質量%であってもよく、0.005質量%~0.3質量%であってもよい。
【0112】
<モノマー組成物B>
本開示のモノマー組成物において、ウレタンアリル化合物はウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物であってもよい。この場合のモノマー組成物を、モノマー組成物Bと称する。
また、本開示のモノマー組成物Bは、歯科用であってもよい。
本開示のモノマー組成物Bは、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物を含むことで、例えば、本開示のモノマー組成物Bを用いて得られる硬化物に対して、機械強度等の機能を付与することができる。
【0113】
本開示のモノマー組成物Bは、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物と、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物以外の(メタ)アクリレート化合物と、を含んでもよい。
本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物以外の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、本開示のモノマー組成物Bの粘度を低下させることを目的とする(メタ)アクリレート化合物(例えば、後述の(メタ)アクリレート化合物(D))、硬化物の強度を向上させることを目的とする(メタ)アクリレート化合物(例えば、後述の(メタ)アクリレート化合物(E))等が挙げられる。
【0114】
本開示のモノマー組成物Bは、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物以外の(メタ)アクリレート化合物(D)を含んでいてもよい。
一般的に、硬化物の強度を向上可能な主成分モノマーを選択した場合、モノマー組成物Bの粘度が上昇し、取り扱い性が低下することがある。
【0115】
そこで、モノマー組成物Bの粘度を低下させて取り扱い性を向上させる点から、主成分モノマーに希釈モノマーを添加することがある。従来公知の希釈モノマーとしては、トリエチレングリコールジメタクリレート等の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0116】
しかしながら、主成分モノマーに前述の従来公知の希釈モノマーを添加してモノマー組成物Bとした場合、その硬化物における靭性等の機能が低下してしまう場合がある。一方、本開示の(メタ)アクリレート化合物(D)をモノマー組成物Bの取り扱い性を向上させる希釈モノマーとして用いた場合、前述の従来公知の希釈モノマーを用いた場合よりも硬化物の機械的物性を高められる傾向にある。
【0117】
そのため、本開示のモノマー組成物Bは、例えば、モノマー組成物Bにて重合可能な主成分モノマーと、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物と、希釈モノマーとしての本開示における(メタ)アクリレート化合物(D)と、を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
(メタ)アクリレート化合物(D)としては、本開示のモノマー組成物の説明で記載した(メタ)アクリレート化合物(D)が挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物(D)の好ましい態様は、上述の(メタ)アクリレート化合物(D)の項に記載した通りである。
【0119】
本開示のモノマー組成物Bは、本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物以外の(メタ)アクリレート化合物(E)を含んでいてもよい。
本開示のモノマー組成物Bは、(メタ)アクリレート化合物(E)を含むことで、硬化物の強度を向上させることができる。
【0120】
(メタ)アクリレート化合物(E)としては、例えば、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(ウレタンジメタクリレート:UDMA)等が挙げられる。 また、(メタ)アクリレート化合物(E)としては、(i)チオール基を3つ以上有するチオール化合物と、(ii)イソ(チオ)シアネート基を2つ以上有するイソ(チオ)シアネート化合物と、(iii)(メタ)アクリロイルオキシ基を有し、かつヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物との反応物であってもよい。
【0121】
<成形体B>
本開示の成形体は、本開示のモノマー組成物としてのモノマー組成物Bの硬化物であってもよい。この場合の成形体を成形体Bと称する。
例えば、ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物を含むモノマー組成物、好ましくはウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリレート化合物(D)を含むモノマー組成物を硬化させることにより、破断強度及び破断エネルギーに優れた硬化物Bを得ることができる。
【0122】
<歯科材料用組成物B>
本開示の歯科材料用組成物は、本開示のモノマー組成物としてのモノマー組成物Bと、重合開始剤と、を含んでもよい。この場合の歯科材料用組成物を歯科材料用組成物Bと称する。
また、本開示の歯科材料用組成物Bは、好ましくはフィラーをさらに含む。この歯科材料用組成物Bは、常温重合性、熱重合性、又は光重合性を有し、例えば歯科修復材料として好ましく使用することができる。本開示では、光重合により高い重合度を得られることから、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0123】
歯科材料用組成物Bは上述の歯科材料用組成物の一形態であるため、歯科材料用組成物Bにおけるモノマー組成物の配合量は、上述の配合量と同様である。
【0124】
歯科材料用組成物Bは上述の歯科材料用組成物の一形態であるため、歯科材料用組成物Bにおける重合開始剤は、上述の重合開始剤の項にて記載した通りである。
【0125】
フィラーの詳細は、上述のフィラーの項にて記載した通りである。
【0126】
本開示の歯科材料用組成物Bは、本開示のモノマー組成物B、重合開始剤、及びフィラー以外の成分を、目的に応じて適宜含んでもよい。また、本開示の歯科材料用組成物Bは、他の添加剤を含有してもよい。
詳細には、上述の通りである。
【0127】
本開示の歯科材料用組成物Bは、前述の重合開始剤の重合方式にて適切な条件で硬化することができる。詳細には、上述の通りである。
【0128】
以上のようにして得られる本開示の歯科材料用組成物Bの硬化物は、歯科材料Bとして好適に用いることができる。詳細には、上述の通りである。
【0129】
本開示の歯科材料用組成物B及び歯科材料Bは、上述の用途に使用することができる。
【0130】
<歯科材料B>
本開示の歯科材料Bは、本開示の歯科材料用組成物Bの硬化物である。歯科材料用組成物Bの硬化条件としては、歯科材料用組成物Bの組成、歯科材料Bの用途等に応じて適宜定めればよい。
【実施例
【0131】
以下に実施例によって本開示をより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0132】
本開示の実施例にて使用した化合物の略号を以下に示す。
EGMA:エチレングリコールモノアリルエーテル
TMPDA:トリメチロールプロパンジアリルエーテル
PETA:ペンタエリスリトールトリアリルエーテル
TMHDI:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとの混合物
NBDI:2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンとの混合物
XDI:m-キシリレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジアイソシアネート
TMXDI:1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
CQ:カンファーキノン
DMAB2-BE:4-ジメチルアミノ安息香酸2-ブトキシエチル
UDMA:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート
DAP:フタル酸ジアリル
BAC:ジエチレングリコールビスアリルカーボネート
HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
HPA:2-ヒドロキシプロピルアクリレート
HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
【0133】
[IRスペクトルの測定方法]
各実施例で得られたウレタンアリル化合物のIRスペクトルを、株式会社パーキンエルマージャパン製、フーリエ変換赤外分光分析装置、Spectrum Two/UATR (Universal Attenuated Total Reflectance)を用いて測定した。
各実施例で得られたウレタンアリル化合物を20℃にて24時間静置した後、ウレタンアリル化合物について20℃で赤外線吸収スペクトルの測定を行った。
【0134】
[曲げ試験の方法]
本開示の実施例及び比較例における曲げ試験の方法を、以下に示す。
【0135】
(曲げ試験用試験片の作製)
各実施例及び比較例で得たモノマー組成物 10質量部に対して、CQ 0.05質量部、DMAB2-BE 0.05質量部を添加し、均一になるまで室温で撹拌してさらに、シリカガラス(Fuselex-X(株式会社龍森))15質量部を配合し、乳鉢を用いて均一になるまで撹拌したのち、脱泡を行うことで歯科材料用組成物を調製した。得られた歯科材料用組成物を、2mm×2mm×25mmのステンレス製型に入れ、可視光照射装置(松風社製 ソリディライトV)を用いて、片面3分間ずつ両面合わせて6分間光照射して硬化物とした。さらにステンレス製型より取りだした硬化物を、オーブン中において130℃、2時間の条件で熱処理した。オーブンより取り出した硬化物を室温まで冷却したのち、密閉できるサンプル瓶中で硬化物を蒸留水に浸漬して、37℃で24時間保持したものを試験片(曲げ試験用試験片)として使用した。
【0136】
(曲げ試験)
上記方法で作製した試験片を、試験機(株式会社島津製作所製 オートグラフEZ-S)を使用して、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で三点曲げ試験を行い、破断強度及び破断エネルギーを測定した。
【0137】
[重合収縮率測定の方法]
本開示の実施例及び比較例における重合収縮率測定の方法を、以下に示す。
(重合収縮率測定用サンプルの作製)
各実施例及び比較例で得たモノマー組成物 20質量部に対して、CQ 0.1質量部、DMAB2-BE 0.1質量部を添加し、均一になるまで室温で撹拌溶解させたのち、重合収縮率測定用組成物を調製した。得られた重合収縮率測定用組成物を直径10mm、深さ2mmのシリコン型に充填し、カバーガラスで上下から挟んだ後、可視光照射装置(松風社製 ソリディライトV)を用いて、片面3分間ずつ両面合わせて6分間光照射した。型より取り出した試験片をアセトンで表面を拭いたものを試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)として使用した。
(重合収縮率測定)
硬化前後のモノマー組成物の密度を乾式密度計(株式会社島津製作所社製アキュピック1330)を用いて測定し、下記の式(1)より重合収縮率を求めた。
式(1):重合収縮率(%)=((重合後の密度-重合前の密度)/重合後の密度)×100
次いで、上記と同様の操作により、UDMA単独の重合収縮率を測定した。その結果、その重合収縮率は7.5%であった。
次いで、各実施例及び比較例で得たモノマー組成物の重合収縮率(S1)と、UDMA単独の重合収縮率(S2、7.5%)を用いて、以下の式(2)からウレタンアリル化合物(A-1)~(A-7)、アリル化合物(DAP及びBAC)の重合収縮率(S3)を求めた。
式(2):(S3)=((S1)-((S2)×0.8))/0.2
【0138】
[屈折率の測定方法]
本開示の実施例及び比較例において、屈折率はアッベ式フルデジタル屈折率計(Anton Paar社製Abbemat550)を用い測定した。温度は25℃にコントロールした。
【0139】
[実施例1A]
十分に乾燥させた撹拌羽根、及び温度計を備えた100mLの4ツ口フラスコ内に、DBTDL 0.05質量部、BHT 0.025質量部、TMHDI 24.64質量部を装入し、溶解させて均一溶液とした後、この溶液を80℃まで昇温し、さらにEGMA 25.36質量部を1時間かけて滴下した。滴下中に反応熱により内温が上昇したので、90℃以下となるように滴下量をコントロールした。EGMAを全量滴下した後、反応温度を90℃に保って、5時間反応を行った。この際、HPLC分析で反応の進行を追跡して、反応の終点を確認した。反応器から生成物を排出することにより、ウレタンアリル化合物(A-1)50gを得た。25℃における屈折率は1.4793であった。ウレタンアリル化合物(A-1)のIRスペクトルを図1Aに示す。得られたウレタンアリル化合物(A-1)3.0質量部と、UDMA 12.0質量部とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、モノマー組成物(1A)を得た。得られたモノマー組成物(1A)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(1A)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を実施したところ、破断強度181MPa及び破断エネルギー54mJであった。得られたモノマー組成物(1A)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(1A)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を実施したところ、重合収縮率は4.50%であった。
【0140】
[実施例2A~11A]
アルコール化合物(B)及びイソシアネート化合物(A)を、表1に示す化合物に変更したこと以外は実施例1Aと同様にしてウレタンアリル化合物(A-2)~(A-11)を得た。25℃における屈折率は、表1に示すとおりである。ウレタンアリル化合物(A-2)~(A-11)のIRスペクトルを図2A図11Aに示す。また、ウレタンアリル化合物(A-1)からウレタンアリル化合物(A-2)~(A-11)にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1Aと同様にしてモノマー組成物(2A)~(11A)をそれぞれ得た。得られたモノマー組成物(2A)~(11A)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(2A)~(11A)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を行った。破断強度及び破断エネルギーを表1に示す。更に、得られたモノマー組成物(2A)~(11A)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(2)~(11)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を行った。重合収縮率を表1に示す。
【0141】
[比較例1A]
DAP 3.0質量部と、UDMA 12.0質量部とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、モノマー組成物(12A)を得た。得られたモノマー組成物(12A)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(12A)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を実施したところ、破断強度133MPa及び破断エネルギー12mJであった。得られたモノマー組成物(12A)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(12A)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を実施したところ、重合収縮率は14.00%であった。
【0142】
[比較例2A]
BAC 3.0質量部と、UDMA 12.0質量部とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、モノマー組成物(13A)を得た。得られたモノマー組成物(13A)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(13A)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を実施したところ、破断強度119MPa及び破断エネルギー10mJであった。得られたモノマー組成物(13A)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(13A)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を実施したところ、重合収縮率は13.50%であった。
【0143】
【表1】

【0144】
表1に示すように、実施例1A~11Aのモノマー組成物は、比較例1A及び2Aのモノマー組成物と比較して重合収縮率を小さくすることができ、かつ破断強度及び破断エネルギーに優れていた。
【0145】
(実施例1B)
十分に乾燥させた撹拌羽根、及び温度計を備えた100mLの4ツ口フラスコ内に、DBTDL 0.05質量部、BHT 0.025質量部、XDI 23.15質量部を装入し、溶解させて均一溶液とした後、この溶液を80℃まで昇温し、さらにEGMA 12.57質量部およびHEA 14.28質量部を混合させ1時間かけて滴下した。滴下中に反応熱により内温が上昇したので、90℃以下となるように滴下量をコントロールした。EGMAを全量滴下した後、反応温度を90℃に保って、5時間反応を行った。この際、HPLC分析で反応の進行を追跡して、反応の終点を確認した。反応器から生成物を排出することにより、ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-1)50gを得た。
ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-1)の25℃における屈折率は1.4793であった。ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-1)のIRスペクトルを図1Bに示す。
得られたウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-1)3.0質量部と、UDMA 12.0質量部とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、モノマー組成物(1)を得た。
得られたモノマー組成物(1B)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(1B)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を実施した。破断強度及び破断エネルギーを表2に示す。
得られたモノマー組成物(1B)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(1B)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を実施した。結果を表2に示す。
【0146】
(実施例2B~実施例13B)
アルコール化合物(B)、(C)及びイソシアネート化合物(A)を、表2に示す化合物に変更したこと以外は実施例1Bと同様にしてウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-2)~(B-13)を得た。25℃における屈折率は、表2に示すとおりである。ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-2)~(B-13)のIRスペクトルを図2B図13Bに示す。また、ウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-1)からウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物(B-2)~(B-13)にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1Bと同様にしてモノマー組成物(2B)~(13B)をそれぞれ得た。得られたモノマー組成物(2B)~(13B)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(2)~(13B)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を行った。破断強度及び破断エネルギーを表2に示す。更に、得られたモノマー組成物(2B)~(13B)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(2B)~(13B)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を行った。重合収縮率を表2に示す。
【0147】
(比較例1B)
DAP 3.0質量部と、UDMA 12.0質量部とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、モノマー組成物(14B)を得た。得られたモノマー組成物(14B)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(14B)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を実施した。破断強度及び破断エネルギーを表2に示す。
得られたモノマー組成物(14B)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(14B)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を実施した。結果を表2に示す。
なお、DAPの屈折率は表2に示す。
【0148】
(比較例2B)
BAC 3.0質量部と、UDMA 12.0質量部とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、モノマー組成物(15B)を得た。得られたモノマー組成物(15B)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(15B)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を実施した。破断強度及び破断エネルギーを表2に示す。
得られたモノマー組成物(15B)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(15B)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を実施した。結果を表2に示す。
なお、BACの屈折率は表2に示す。
【0149】
(比較例3B)
3G 3.0質量部と、UDMA 12.0質量部とを容器に入れ、均一になるまで50℃で撹拌して、モノマー組成物(16B)を得た。得られたモノマー組成物(16B)から(曲げ試験用試験片の作製)及び(曲げ試験)の項に記載の方法に従い歯科材料用組成物(16B)及び試験片(曲げ試験用試験片)を得て、曲げ試験を実施した。破断強度及び破断エネルギーを表2に示す。
得られたモノマー組成物(16B)から(重合収縮率測定用サンプルの作製)及び(重合収縮率測定)の項に記載の方法に従い重合収縮率測定用組成物(16B)及び試験サンプル(重合収縮率測定用サンプル)を得て、重合収縮率測定を実施した。結果を表2に示す。
なお、3Gの屈折率は表2に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
表2に示す通り、ウレタン結合と、アリルオキシ基と、(メタ)アクリロイルオキシ基と、を含むウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物を用いた実施例は、比較例と比較して、破断強度及び破断エネルギーに優れていた。
また、実施例は、重合収縮率が比較例と比較して低く、優れていた。
一方、(メタ)アクリロイルオキシ基を有していない比較例1B及び比較例2Bは、破断強度及び破断エネルギーに劣っていた。また、比較例1B及び比較例2Bは、重合収縮率が高く、劣っていた。
【0152】
2019年8月14日に出願された日本国特許出願2019-148911号、及び2019年10月31日に出願された日本国特許出願2019-199162号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
【0153】
(付記)本開示の態様は、以下に記載の態様を含む。
<1A> ウレタン結合と、アリルオキシ基とを有する、ウレタンアリル化合物。
<6A> 本開示のウレタンアリル化合物と、(メタ)アクリレート化合物(D)と、を含むモノマー組成物。
<8A> 本開示のモノマー組成物の硬化物である成形体。
<9A> 本開示のモノマー組成物と、重合開始剤と、を含む歯科材料用組成物。
<11A> 本開示の歯科材料用組成物の硬化物である歯科材料。
【0154】
<1B> ウレタン結合と、アリルオキシ基と、(メタ)アクリロイルオキシ基と、を含むウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物。
<7B> 本開示のウレタンアリル(メタ)アクリレート化合物を含むモノマー組成物。
<10B> 本開示のモノマー組成物の硬化物である成形体。
<11B> 本開示のモノマー組成物と、重合開始剤と、を含む歯科材料用組成物。
<12B> 本開示の歯科材料用組成物の硬化物である歯科材料。
図1A
図2A
図3A
図4A
図5A
図6A
図7A
図8A
図9A
図10A
図11A
図1B
図2B
図3B
図4B
図5B
図6B
図7B
図8B
図9B
図10B
図11B
図12B
図13B