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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】小型補聴器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20230815BHJP
   A61F 11/00 20220101ALI20230815BHJP
【FI】
H04R25/00 E
A61F11/00 300
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021544093
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2019054750
(87)【国際公開番号】W WO2020076640
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】62/742,525
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521140102
【氏名又は名称】ナノイヤー コーポレーション, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モーゼス, ロン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ムーア, マイケル エム.
(72)【発明者】
【氏名】サルトハウス, クリストファー
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0039493(US,A1)
【文献】特表2000-504913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0154030(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0142274(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0308062(US,A1)
【文献】特開2008-252876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00-25/04
A61F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補聴器であって、
第1のフランジおよび第2のフランジを有し、前記第1のフランジおよび前記第2のフランジの少なくとも1つが円錐形を有する、ハウジングと、
前記ハウジング内に配設された鼓膜作動アッセンブリとを備え、前記鼓膜作動アッセンブリ
ユーザーの鼓膜の内側または外側の少なくとも一方に配設されるように構成される少なくとも1つのマスであって、前記少なくとも1つのマスは
第1のエネルギー源を含む第1のマス構造と、
第2のエネルギー源を含む第2のマス構造とを備え、前記第2のマス構造は少なくとも1つの接続部材によって前記第1のマス構造に結合される、少なくとも1つのマスと、
前記マスに結合され、ユーザーの前記鼓膜を通して前記少なくとも1つの接続部材内に配設されるように構成される少なくとも1つのアクチュエーターとを備え、前記アクチュエーターは、前記マスを移動させ、前記鼓膜を変調するために電気信号を機械運動に変換するように構成される、補聴器
【請求項2】
前記少なくとも1つのアクチュエーターが、
内側リングと、
前記内側リングに結合された外側リングであって、複数の圧電アクチュエーターを備える、外側リングと
を備える、請求項1に記載の補聴器
【請求項3】
前記少なくとも1つのアクチュエーターが、
第1のディスクと、
第2のディスクとを備え、前記第2のディスクは、前記第1のディスクと前記第2のディスクとの間に配設された複数の圧電アクチュエーターを通して前記第1のディスクの上に配設されてそれに結合される、請求項1に記載の補聴器
【請求項4】
前記少なくとも1つのアクチュエーターが、圧電積層アクチュエーターを含む、請求項1に記載の補聴器
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクチュエーターが、圧電マイクロチューブを含む、請求項1に記載の補聴器
【請求項6】
前記鼓膜作動アッセンブリが、前記少なくとも1つのアクチュエーターに結合されたピエゾカップリングアームレバーをさらに備える、請求項1に記載の補聴器
【請求項7】
前記鼓膜作動アッセンブリが、前記少なくとも1つのアクチュエーターの上側に結合された固定カップリングをさらに備える、請求項1に記載の補聴器
【請求項8】
前記鼓膜作動アッセンブリが、前記少なくとも1つのアクチュエーターに結合した剛性カプラーをさらに備える、請求項1に記載の補聴器
【請求項9】
或る周波数を増幅し他の周波数を打ち消すために、ユーザーの鼓膜を通して挿入可能である補聴器であって、
ハウジングを備え、前記ハウジングは、
ユーザーの鼓膜の内側に配設されるように構成され、円錐形を有する第1の部分と、
前記ユーザーの鼓膜の外側に配設されるように構成された第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間に配設され、前記ユーザーの鼓膜を通して配設されるように構成された接続部分とを備え、前記補聴器は、
前記ハウジング内に配設された鼓膜作動アッセンブリをさらに備え、前記鼓膜作動アッセンブリは、
前記ハウジングの前記第1の部分および前記第2の部分の少なくとも一方の中に配設され少なくとも1つのマスであって、前記少なくとも1つのマスは
第1のエネルギー源を含む第1のマス構造と、
第2のエネルギー源を含む第2のマス構造とを備え、前記第2のマス構造は前記ハウジングの前記接続部分に配設された少なくとも1つの接続部材によって前記第1のマス構造に結合される、少なくとも1つのマスと、
前記マスに結合され、前記少なくとも1つの接続部材内に配設されるように構成される少なくとも1つのアクチュエーターとを備え、前記アクチュエーターは、前記マスを移動させ、前記ユーザーの鼓膜を変調するために電気信号を機械運動に変換するように構成される、補聴器。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアクチュエーターが、チューブ状積層式圧電アクチュエーターまたは円筒状積層式圧電アクチュエーターである、請求項9に記載の補聴器。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアクチュエーターに結合したインピーダンス整合コンポーネントをさらに備える、請求項9に記載の補聴器。
【請求項12】
前記インピーダンス整合コンポーネントが、レバーアーム変位拡大器、剛性カプラー、および固定カップリングからなる群から選択される、請求項11に記載の補聴器。
【請求項13】
或る周波数を増幅し他の周波数を打ち消すために、ユーザーの鼓膜を通して挿入可能である補聴器であって、
第1のフランジおよび第2のフランジを有し、前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間に溝を有するハウジングを備え、前記第1のフランジおよび前記第2のフランジの少なくとも1つは、円錐形を有し、かつ拡張器として構成されており、前記ハウジングは、
マイクロフォンと、
前記マイクロフォンに結合されたプロセッサと、
鼓膜作動アッセンブリとを閉囲し、前記鼓膜作動アッセンブリは、
マスであって、
前記第1のフランジ内に配設された第1の電池、および、
前記第2のフランジ内に配設された第2の電池を備え、前記第1の電池は前記鼓膜の外側上への留置のために構成され、前記第2の電池は前記鼓膜の内側上への留置のために構成される、マスと、
前記第1の電池を前記第2の電池に結合させる接続部材であって、前記鼓膜を通した留置のために構成される、接続部材と、
前記マスに結合され、前記接続部材内に配設されたアクチュエーターであって、前記マスを移動させ、前記ユーザーの鼓膜を変調するために電気信号を機械運動に変換するように構成される、アクチュエーターとを備える、補聴器。
【請求項14】
前記アクチュエーターが、チューブ状積層式圧電アクチュエーターまたは円筒状積層式圧電アクチュエーターであり、前記アクチュエーターは、穴であって、前記接続部材が該穴を通過することを可能にするように構成される、穴を前記アクチュエーター内に有する、請求項13に記載の補聴器。
【請求項15】
前記アクチュエーターの高さが約1ミリメートルと約4ミリメートルとの間である、請求項14に記載の補聴器。
【請求項16】
前記アクチュエーターの外径が約1ミリメートルと約2ミリメートルとの間である、請求項14に記載の補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月8日に出願された米国仮特許出願第62/742,525号の利益を主張し、その出願は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、聴力支援デバイス(assistive hearing device)およびそれを埋め込む方法に関する。より詳細には、本開示の実施形態は、鼓膜の速度または位置を変調するために振動変換を提供する、外耳道内に、例えば、鼓膜内にまたは鼓膜にわたって体内装着される小型補聴器に関する。
【背景技術】
【0003】
補聴器は、よく知られており、典型的には、マイクロフォン、増幅器、およびスピーカを含む。典型的には、マイクロフォンは、音波を受信し、音波を電気信号に変換し、増幅器は電気信号を増幅し、スピーカは、増幅された信号を、増幅された音波に変換し、その音波は、耳内の鼓膜(tympanic membrane)またはイヤードラム(ear drum)に振動を与える。従来から、補聴器は、外耳道の外に、特に外耳(outer ear)の周りに装着される。体外装着式(externally mounted)補聴器は、電池を交換し、音量を調整するためのアクセシビリティの利点を有する。しかしながら、多くのユーザーは、そのような体外装着式補聴器が、比較的かさばり、美容および快適さの理由から不快であると感じる。
【0004】
体外装着式補聴器に対する代替品は、ユーザーの外耳道内に配置される体内装着式補聴器である。従来の体内装着式補聴器は、良好な美容的外観を提供するが、不利益も有する。例えば、典型的な体内装着式補聴器は、外耳道直径の全てではないが大部分を閉塞させる。そのような閉塞は、ユーザーの身体が外耳道内に過剰の量の耳垢を生じるようにさせる可能性があり、また、耳感染を引き起こす可能性がある。さらに、外耳道を閉塞させることで、外耳道を通る音波の自然な伝達が妨害され、聴力品質に悪影響を与える。ユーザーが、全く耳が聞こえない場合を除いて、自然に発生する音波を登録する鼓膜のいずれの能力も、減少するかまたはなくなる。そのため、ユーザーは、補聴器の音忠実度に実質的に依存する。なおさらに、典型的な体内装着式補聴器は、依然として外耳道内である程度目に見える場合がある。
【0005】
いくつかの聴力システムは、電磁変換器を通してオーディオ情報を耳に送出する。マイクロフォンおよび増幅器は電子信号を変換器に伝達し、変換器は電子信号を振動に変換する。振動は、オーディオ音波に再変換することなく、音インパルスを伝達する鼓膜または中耳の(複数の)部分を振動させる。歴史的には、別個の磁石または任意の適切なアクチュエーターが、鼓膜にまたは鼓膜の近くに遠隔で装着されていた。電子信号を受信する変換器の磁界と鼓膜にまたは鼓膜の近くに装着される磁石との間の相互作用は、磁石を振動させ、したがって、耳に対する振動を通して音を蝸牛に機械的に伝達する。典型的には、しかしながら、補聴器の残りの部分は、外耳道内にまたは外耳上に挿入され、上記で論じた問題を引き起こす可能性がある。なおさらに、補聴器の変換器および/または磁石は、比較的侵襲的な手技で装着される。例えば、磁石を有する1つの接触型変換器(contact transducer)は、乳様突起(mastoid bone)に穴を開け、鼓膜を切断し、骨構造に顕微鏡的に穴を開け、磁石を耳小骨(middle earbones)の任意の1つまたは複数にねじ込むことによって取り付けられる。そのような手技は、しばしば痛みを伴いかつ費用がかかり、また、重篤な合併症をもたらす可能性がある。
【0006】
上述したように、音波を、増幅し、脳の聴力中心に伝達させ、音の知覚をもたらすために使用される種々のタイプの補聴器が存在する。しかしながら、従来の補聴器は、通常の会話および他の所望の音響信号を同時に伝達しながら、背景ノイズおよび過度に大きいノイズによって生成される音波を選択的に抑圧しない。ノイズ抑制は、国際宇宙ステーションまたは火星ミッションなどの長い継続期間のミッションに関わる宇宙飛行士によって使用される可能性があり、その宇宙飛行士は、他の宇宙飛行士によって生成される音波および他の所望の音響信号をその宇宙飛行士が聞くことを依然として可能にしながら、回転機械、エアハンドリングシステム、および環境制御システムによって生成される背景ノイズを選択的に抑制したいと望んでいる。選択的周波数の増幅は、軍事オペレーションで使用される可能性があり、敵性戦闘員によって生成される音波は、増幅され、脳の聴力中心に送信される可能性があり、一方、全ての他の音波は、通常方法で送信される。さらに、伝統的なタイプの補聴器は、隠し通信(covert communication)においてなどで、通常の人にとって可聴でない信号または音波をユーザーが受信することを可能にしない。
【0007】
したがって、低侵襲性外科手技を使用して、外耳道内におよび/または鼓膜を通して挿入することができる改良された補聴器について、当技術分野における必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、小型補聴器、そのコンポーネント、およびそのための支持システム、ならびに、それを挿入し取り外す方法に関する。小型補聴器は、概して、低侵襲性外来手技中に鼓膜を通して挿入されるように設計されるハウジング内に閉囲された、マイクロフォンなどのセンサ、作動マス(actuation mass)、小型補聴器に電力を提供するためのエネルギー源、プロセッサ、およびアクチュエーターを含む。動作中、マイクロフォンは音波を受信し、音波を電気信号に変換する。プロセッサは、その後、電気信号を修正し、電気信号をアクチュエーターに提供する。アクチュエーターは、電気信号を機械運動に変換し、機械運動は、作動マスを作動させて、ハウジングの内部に慣性を生成し、ハウジングは、鼓膜の速度または位置を変調するように構成される。
【0009】
1つの実施形態において、鼓膜作動アッセンブリが開示される。鼓膜作動アッセンブリは、ユーザーの鼓膜の内側(medial side)または外側(lateral side)の少なくとも一方に配設されるように構成される少なくとも1つのマスと、マスに結合され、ユーザーの鼓膜の内側または外側の少なくとも一方にまたは鼓膜を通して配設されるように構成される少なくとも1つのアクチュエーターとを含み、アクチュエーターは、マスを移動させ、鼓膜を変調するために電気信号を機械運動に変換するように構成される。
【0010】
別の実施形態において、或る周波数を増幅し他の周波数を打ち消すために、ユーザーの鼓膜を通して挿入可能である補聴器が開示される。補聴器は鼓膜作動アッセンブリを含み、鼓膜作動アッセンブリは、ユーザーの鼓膜の内側または外側の少なくとも一方に配設されるように構成される少なくとも1つのマスと、マスに結合され、ユーザーの鼓膜の内側または外側の少なくとも一方にまたは鼓膜を通して配設されるように構成される少なくとも1つのアクチュエーターとを含み、アクチュエーターは、マスを移動させ、ユーザーの鼓膜を変調するために電気信号を機械運動に変換するように構成される。
【0011】
さらに別の実施形態において、或る周波数を増幅し他の周波数を打ち消すために、ユーザーの鼓膜を通して挿入可能である補聴器が開示される。補聴器は、第1のフランジおよび第2のフランジを有し、第1のフランジと第2のフランジとの間に溝を有するハウジングを含み、ハウジングは、マイクロフォンと、マイクロフォンに結合されたプロセッサと、鼓膜作動アッセンブリとを閉囲し、鼓膜作動アッセンブリは、マスであって、第1のフランジ内に配設された第1の電池および第2のフランジ内に配設された第2の電池を有し、第1の電池は鼓膜の外側上への留置のために構成され、第2の電池は鼓膜の内側上への留置のために構成されるマスと、第1の電池を第2の電池に結合させる接続部材であって、鼓膜を通した留置のために構成される、接続部材と、マスに結合し、接続部材内に配設されたアクチュエーターであって、マスを移動させ、ユーザーの鼓膜を変調するために電気信号を機械運動に変換するように構成される、アクチュエーターとを含む。
【0012】
そのため、本開示の上記で挙げた特徴を詳細に理解することができる方法、上記で簡潔に要約した本開示のより詳細な説明を、添付図面にそのいくつかが示される実施形態を参照して得ることができる。しかしながら、添付図面が、例示的な実施形態のみを示し、したがって、その範囲を制限すると考えられないことが留意される。本開示は、同等に効果的な実施形態を認めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】耳の鼓膜を通して挿入された補聴器を有する耳の解剖学的構造の概略断面図である。
図2】右鼓膜の概略平面図である。
図3】小型補聴器の概略斜視図である。
図4図3の小型補聴器の断面図である。
図5】アクチュエーターの平面図である。
図6】アクチュエーターの代替の実施形態の平面図である。
図7】小型補聴器の代替の実施形態の概略斜視図である。
図8】小型補聴器の代替の実施形態の概略斜視図である。
図9】A~Cは、小型補聴器の代替の実施形態を示す図である。
図10】小型補聴器を挿入するための方法のプロセスフローである。
図11】AおよびBは、種々の埋め込みステージにおいて埋め込みツールの一部と共に図9のA~Cの小型補聴器を示す図である。
図12】ASICプロセッサのブロック図である。
図13】アクチュエーターの代替の実施形態を有する小型補聴器の断面図である。
図14】アクチュエーターの代替の実施形態を有する小型補聴器の断面図である。
図15】AおよびBは、埋め込みツールの代替の実施形態を示す図である。
図16】A~Cは、小型補聴器の代替の実施形態を示す図である。
図17】小型補聴器の作動アッセンブリの概略断面図である。
図18】小型補聴器の概略断面図である。
図19】小型補聴器の作動アッセンブリの概略断面図である。
図20】小型補聴器の作動アッセンブリの概略断面図である。
図21】小型補聴器の作動アッセンブリの一部分のトップダウン(top-down)断面図である。
図22】小型補聴器の作動アッセンブリの一部分のトップダウン断面図である。
【0014】
理解を容易にするために、同一の参照数字が、図に共通である同一の要素を指定するために、可能であれば使用されている。1つの実施形態の要素および特徴を、さらなる列挙なしで、他の実施形態に有利に組み込むことができることが企図される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、小型補聴器、そのコンポーネント、およびそのための支持システム、ならびに、それを挿入し取り外す方法に関する。小型補聴器は、概して、低侵襲性外来手技中に鼓膜を通して挿入されるように設計されるハウジング内に閉囲された、マイクロフォンなどのセンサ、作動マス、小型補聴器に電力を提供するためのエネルギー源、プロセッサ、およびアクチュエーターを含む。動作中、マイクロフォンは音波を受信し、音波を電気信号に変換する。プロセッサは、その後、電気信号を修正し、電気信号をアクチュエーターに提供する。アクチュエーターは、電気信号を機械運動に変換し、機械運動は、作動マスを作動して、鼓膜の速度または位置を変調する。
【0016】
耳の解剖学的構造
図1は、耳100の解剖学的構造の概略断面図であり、耳100は、耳100の鼓膜を通して挿入された補聴器を有する。耳100は、外耳110、外耳110に結合された外耳道112、外耳110から外耳道112の近位端の近くに配置されている鼓膜114を含む。外耳110の構造は、外耳道112に入るように音波を方向付け音波の振幅を増幅する「漏斗(funnel)」を提供する。中耳に位置し、外耳110から鼓膜114の内側上に配置されている耳小骨連鎖(ossicular chain)115は、鼓膜114から、蝸牛120として知られる螺旋構造を有する内耳まで振動を結合し増幅する。蝸牛120は振動を脳へのインパルスに変換する。
【0017】
本開示の補聴器122などの補聴器は、外耳110を通して外耳道112内に、そして少なくとも部分的に鼓膜114を通して挿入することができる。補聴器122は、概して、マイクロフォンなどのセンサ、および、以下でより詳細に述べる少なくとも1つのイヤードラム刺激部材を含む。補聴器122は、概して、外耳110から外耳道112を通して伝導される音波を受信し、音波を電気または電磁信号に変換し、そしてその電気信号を機械運動に変換し、それは、典型的には、フィードフォワードシステムと呼ばれる。機械運動は、鼓膜114および/または中耳および内耳の(複数の)部分に衝撃を与えて、耳小骨連鎖115、特に、ツチ骨(malleus)118、キヌタ骨(incus)117、およびアブミ骨(stapes)116を振動させるために使用される。耳小骨連鎖115内のこれらの3つの骨は、鼓膜114が受ける振動の振幅を増幅するレバーのセットとして働く。キヌタ骨117は、内耳流体を含む蝸牛120として知られる螺旋構造の入口に結合されている。キヌタ骨117の機械的振動は、流体に流体インパルスを生成させ、流体インパルスは、蝸牛120内の小さい毛様細胞(hair-like cell)(図示せず)を振動させる。振動は電気インパルスに変換され、電気インパルスは脳の聴力中心内の神経経路に伝達され、音の知覚をもたらす。
【0018】
図2は鼓膜114の概略平面図である(右鼓膜が例として示される)。鼓膜114は、鼓膜へそ(umbo)202と呼ばれる、鼓膜の中心において内方にわずかに描かれる全体的に卵形であり、(図1に示され、上記で述べられた)ツチ骨のハンドルが取り付けられるところである。鼓膜は、概念的に、4つの象限:前上象限204、前下象限206、後下象限208、および後上象限210に分割される。
【0019】
小型補聴器およびそのコンポーネント
本開示は、小型補聴器、そのコンポーネント、およびそのための支持システムに関する。本明細書で述べる実施形態は、本開示によって企図される小型補聴器の例示的な構成を提供する。しかしながら、直接または間接変調によって、鼓膜の速度および位置を変調する補聴器用の任意の他の適切な構成も企図される。次に続く実施形態は、例として、開示する小型補聴器を、鼓膜を通して挿入することを論じる;しかしながら、該小型補聴器は、耳内の他の場所で自由に使うこともできる。
【0020】
図3は小型補聴器300の概略斜視図である。図4図3の小型補聴器300の断面図である。図3および図4に示すように、小型補聴器300は、接続部分304によって結合された2つのフランジ部分302を含むハウジング301に包含される。埋め込まれる(implanted)と、2つのフランジ部分302は、鼓膜の両
側に位置決めされ(すなわち、1つのフランジ部分は外耳内にあり、他の部分は中耳内にある)、例として狭いチューブとして示す接続部分304は、鼓膜を横断する。接続部分304は、小型補聴器300の中心軸に沿ってまたは小型補聴器300の中心軸に平行に概して位置決めされる。
【0021】
本明細書で使用するように、フランジという語は、開示する小型補聴器の一部分を指し、その部分は、接続部分304などの小型補聴器の中心部分に対して外または周辺である。
【0022】
1つまたは複数のフランジおよび接続部材は、概して小型補聴器の本体を作り出す。本明細書で使用するように、本体という語は、概して、ユニットとしての1つまたは複数のフランジおよび接続部分を指す。
【0023】
図4に示すように、小型補聴器300はハウジング300によって閉囲され、ハウジング300は小型補聴器300の種々のコンポーネントを収容する。種々のコンポーネントは、概して、処理される音を検出するように構成されるマイクロフォンなどの少なくとも1つのセンサ408、エネルギー源410として示すマス、電気信号を機械運動に変換するように構成されるアクチュエーター412、および、プロセッサ414であって、電気信号を修正し電気信号を少なくとも1つのアクチュエーターに伝達することによって信号処理および電力変換を支援すると共に、アクチュエーター412を駆動して、この例ではエネルギー源410であるマスを移動させるように構成される、プロセッサ414を含む。共に、マスおよび少なくとも1つのアクチュエーターは鼓膜作動アッセンブリを作り出す。エネルギー源410が再充電可能なエネルギー源である実施形態において、小型補聴器300は、概して再充電回路416も含む。
【0024】
センサ408は、概して、ハウジング301内に固定され、小型補聴器300によって増幅される音を受け、音波または音響信号を電気または電磁信号に変換するように構成される。本開示は、例として、センサ408としてマイクロフォンを企図する;しかしながら、センサ408が概して任意の適切なセンサであることが企図される。適切なセンサは、高感度マイクロフォン、圧電微小電気機械システム(MEMS:micro-electro-mechanical systems)マイクロフォン、静電マイクロフォン、加速度計、ジャイロスコープ、および光センサを含むが、それらに限定されない。他の適切なセンサは、耳感染、あるいは、ユーザーのまたは小型補聴器300自身の性能およびデバイス健全度の他の変化を診断するために、耳音響放射(OAE:otoacoustic emission)または圧力を検知するために使用することができるセンサを含む。
【0025】
マイクロフォンである1つのセンサ408が例として示されるが、本明細書で述べる小型補聴器のさらなる実施形態は、小型補聴器の外側面(lateral aspect)の周りに、小型補聴器の内側面(medial aspect)の周りに、または、小型補聴器の内側面と外側面の両方に配設することができる複数のマイクロフォンまたは他のセンサを含む。なおさらなる実施形態において、センサ408などの1つのマイクロフォンが小型補聴器内に配設され、1つまたは複数の他のマイクロフォンが、外耳道内など、その他の場所に配設される。そのような実施形態において、1つまたは複数の外部マイクロフォンは、小型補聴器300に直接接続されるか、あるいは、小型補聴器300とその他の方法で通信する。
【0026】
別の実施形態において、センサ408はハウジングの外に配設することができる。別の実施形態において、小型補聴器300は、センサ408がハウジングまたは第1のアクチュエーターと共に移動しないことを確実にするために第2のアクチュエーターを含むことができる。さらに別の実施形態において、小型補聴器300は、センサ408を、ハウジングまたは第1のアクチュエーターの移動から分離するために受動機械カプラーをさらに含むことができる。
【0027】
マスは、鼓膜の速度または位置を変調するために作動させることができる、任意の適切なマス材料、コンポーネント、またはコンポーネントの組み合わせであり、第1の部分および第2の部分などの任意の適切な数の部分を含むことができる。マスは、概して、全体で約5ミリグラム(mg)と約40mgとの間にある。例えば、第1の部分および第2の部分を備え、各部分が電池である実施形態において、重量は、概して、1つの電池について約10mgと1つの電池について約15mgとの間(それぞれ、合算して約20mgと約30mgとの間)である。
【0028】
エネルギー源410は、概して、任意の適切な構成の任意の適切なエネルギー源、例えば、単一のマス、複数の垂直に積層された層(例えば、5層と20層との間)、無線熱発生器(radio thermal generator)、スーパーキャパシター、厚膜電池、または伝統的なリチウム(Li)イオン電池などの任意の適切な構成である。図4に示すように、マスは、ダンベル形で、小型補聴器300内で中心に配設されるエネルギー源410である。そのような実施形態において、エネルギー源410自体は、鼓膜の速度または位置を変調するマスとして使用することができる。さらなる実施形態において、エネルギー源410は、小型補聴器内で内側にまたは外側に、かつ、鼓膜の一方の側に配設される。図13図14図16のA~C、図17、および図18などのなおさらなる実施形態において、電池などの1つまたは複数のマス部分は、鼓膜の内側と外側の両方に配設され、ハウジング301内に配設された、鼓膜を横断する接続部材によって接続することができる。なおさらなる実施形態において、鼓膜にわたって接続されるエネルギー源およびカウンターマスが使用される。カウンターマスは、概して、不活性または非アクティブマスである。
【0029】
1つの実施形態において、エネルギー源410の直径は2.5ミリメートル(mm)以下でありかつ高さは1.5mm以下である。エネルギー源410のマスは、鼓膜内で小型補聴器を保持する安全性を最大にするようおよび/または、例えば、10デシベル(dB)以下の受動ノイズ伝達減衰レベル(passive noise transmission attenuation level)に基づいて選択される。1つの実施形態において、マスは、概して15ミリグラム(mg)以下である。以下で述べるように、エネルギー源410は概して再充電可能である。そのような実施形態において、充電時間は、概して約3時間以下であり、1000回超充電できる。
【0030】
アクチュエーター412は、概して、電気信号を、マスが鼓膜の速度または位置を変調するようにマスを移動させることによる機械運動に変換するのに適した任意のアクチュエーター機構または任意の複数のアクチュエーター機構であり、また、鼓膜の内側に、外側に、両側に、または鼓膜にわたって配設することができる。アクチュエーター412は、鼓膜に対する結合に対して、マスを押す、マスを取り出すまたは引くように構成される。
【0031】
図5は、アクチュエーター412として使用することができる、1つの実施形態によるアクチュエーター500の平面図である。アクチュエーター500は、少なくとも外側リング502および内側リング504を含み、外側リング502はハウジング301に接続され、内側リング504はエネルギー源410などのマスに接続される。外側リング502は複数の圧電アクチュエーター506を有し、複数の圧電アクチュエーター506は励起されて、内側リング504を軸方向に変調するために必要とされる力を生成し、鼓膜の速度または位置を最終的に変調することができる。別の実施形態において、複数の圧電アクチュエーター506は、鼓膜の速度または位置の非軸方向変調を提供するために個別にアドレス可能である。
【0032】
図6は、アクチュエーター412として使用することができる、別の実施形態によるアクチュエーター600の斜視側面図である。アクチュエーター600は、第1のディスク602および第2のディスク604を含み、それらは、両方のディスクの間に挟まれた複数の圧電アクチュエーター606によって一緒に結合される。第1のディスク602または第2のディスク604の少なくとも一方は、鼓膜の速度または位置を変調するために可動である。別の実施形態において、複数の圧電アクチュエーター606は、鼓膜の速度または位置の非軸方向変調を提供するために個別にアドレス可能である。
【0033】
図13は、アクチュエーターの代替の実施形態を有する小型補聴器300などの小型補聴器の断面図である。図13に示す実施形態において、アクチュエーターは、直線的に作動する圧電積層アクチュエーター1320である。圧電積層アクチュエーター1320のベース1324は固定される。図示するように、圧電積層アクチュエーター1320の外側の周りに配設されるものとして示される1つまたは複数の接続部材1322は、第1のマス1328を後置マス(trailing mass)1326に接続する。第1のマス1328は圧電積層アクチュエーター1320によって変位され、後置マス1326は、概して、同相で(複数の)マスを移動させるために第1のマス1328の移動に追従する。
【0034】
図14は、アクチュエーターの代替の実施形態を有する小型補聴器300などの小型補聴器の断面図である。図14に示す実施形態において、アクチュエーターは圧電マイクロチューブ1420である。圧電マイクロチューブ1420のベース14244は固定される。動作中、圧電マイクロチューブ1420は、第1のマス1426を変位させるために直線的に伸長する。1つまたは複数の接続部材1422は、第1のマス1426および第2のマス1428を接続する。1つまたは複数の接続部材1422は圧電マイクロチューブ1420の内径内に存在する。
【0035】
なおさらなる実施形態において、アクチュエーター412はリニアアクチュエーターである。例えば、アクチュエーター412は、中心マス、一般には磁石を有し、その中心マスの周りに巻き付けられた外側コイルを有するボイスコイルであることができ、ボイスコイルは、外側コイルを励磁することによってマスに対する力を変調する。代替的に、ボイスコイルは、ボイスコイルの周りに配設された磁石と共に中心に配設することができる。リニアアクチュエーターは、小型補聴器内の鼓膜を横断することができ、励磁されると、振動し、鼓膜に対する変調力を生成する。別の実施形態において、アクチュエーター412は、ハウジング301および/またはエネルギー源410に結合された複数のアクチュエーターを含む。さらに別の実施形態において、アクチュエーター412は、直線移動を生じる複数の同心アクチュエーターである。さらに別の実施形態において、アクチュエーター412は、小型補聴器から半径方向に延在する波を生じるロータリーアクチュエーターである。さらに別の実施形態において、アクチュエーター412は、例えば、ステッパーモーターを有するピエゾMEMSデバイスまたは静電MEMSデバイスを含む。さらに別の実施形態において、アクチュエーターは、上記で述べたアクチュエーターの2つ以上の組み合わせによって形成することができる。
【0036】
本明細書で論じるように、開示される小型補聴器は1つまたは複数のアクチュエーターを含む。2つ以上のアクチュエーターが使用されるとき、アクチュエーターの全てが、同じタイプのアクチュエーターまたは2つ以上のタイプのアクチュエーターであることができる。2つ以上のタイプのアクチュエーターが使用されるとき、アクチュエーターの刺激は、異なるまたは同様の平面内であってよい。1つの実施形態において、異なるタイプのアクチュエーターは、例えば、長さおよび/または直径を増大させるために、同時に異なる平面内で作動するように構成される。さらにまた以下でさらに論じるように、アクチュエーターは、ユーザーの聴力を改善するために必要とされるエネルギーおよび変位範囲に応じて、MEMsレバーアームなどのインピーダンス整合コンポーネントを利用することができる。
【0037】
図4図13、および図14に示すように、小型補聴器300は、作動方向に対するマスの動きを制限する、軸受けまたはリニアスライドなどの移動機構418を含むこともできる。
【0038】
補聴器の動作
一般に、特定用途向け集積回路(ASIC)チップであるプロセッサ414は、音響信号を示す電気信号をセンサ408から取り(take)、その信号を、アクチュエーター412を駆動し、マス(例えば、エネルギー源410)を移動させる電気信号に変換して、鼓膜の位置を変調し、したがって、ユーザーの脳にインパルスを提供する。マスは、一般に、約1ミリメートル以下の距離を移動する。鼓膜の位置の直接または間接変調はユーザーの聴力を改善する。
【0039】
マスを変調するために信号を変換することに加えて、プロセッサ414は、センサ408をバイアスし、内部温度および電流モニタリングなどの安全機能を提供することもできる。
【0040】
幾つかの実施形態において、プロセッサ414は、エネルギー源410を安全にかつ効率的に適切に充電し放電するためのものを含む、エネルギー源410用の安全回路機構(circuitry)を包含する。
【0041】
なおさらなる実施形態において、プロセッサ414は、通信機能も果たし、それにより、小型補聴器は、外部世界に情報を送信し、外部世界から情報を受信することができる。例えば、プロセッサ414は、概して、小型補聴器が、小型補聴器の状態およびユーザーの耳の状態に関する情報さえも、外部受取人に通信することを可能にする回路機構を含む。
【0042】
なおさらなる実施形態において、プロセッサ414は、周波数偏移を可能にするために音響入力を修正するように構成される。この周波数偏移処理は、機械出力を最適化し、種々の周波数応答および伝達関数に対処して、最終的に、ユーザーに優れた音響体験を提供するために有用である。例えば、デバイスが見落とす場合がある或る周波数またはノードであって、予め特定されている、或る周波数またはノードを取り込み偏移させることができるため、ユーザーは、見落とした周波数を、異なる偏移した周波数で聞くことになる。
【0043】
図12は、ASICプロセッサ1200のブロック図を示す。ASICプロセッサ1200はプロセッサ414として使用することができる。ASICプロセッサ1200は、概して、ワイヤレス通信コンポーネント1202、安全回路コンポーネント1204、不揮発性メモリコンポーネント1206、マイクロフォン前置増幅器コンポーネント1208、信号処理コンポーネント1210、アクチュエータードライバーコンポーネント1212、エネルギー源管理コンポーネント1214、電源コンポーネント1216、およびワイヤレス電力コンポーネント1218を含む。ワイヤレス通信は、光学通信、音響通信、および無線周波数通信を含むが、それらに限定されない。
【0044】
1つの実施形態において、ASICプロセッサ1200は、電力ニーズを低減し、デジタルコンポーネントを最小にするためにアナログ信号処理を使用する。さらに、ASICプロセッサ1200は、許容可能な処理を維持しながら、応答をプログラムすることおよび/または推定することによって電力消費を最小にするように構成することができる。別の実施形態において、ASICプロセッサ1200は、スマートフォンなどのオーディオデバイスによって周波数通信および/または登録を実施するように構成することができる。例えば、ASICプロセッサ1200は、音響プロファイルシグネチャーによって小型補聴器をオンしオフするように構成することができる。ASICプロセッサ1200は、音響プロファイルシグネチャーを使用して、例えば、不快な音響環境にいるときの振幅を制御することによって、強度モードを変更して、全ての周波数の振幅を制限するおよび/またはノイズ打消しを提供するように構成することもできる。なおさらに、ASICプロセッサ1200は、火災警報、戸口ベル、およびガラスが割れる音などの、小型補聴器を自動的にオンする緊急トーンを認識するように構成することができる。
【0045】
さらなる実施形態において、ASICプロセッサ1200はデジタル信号処理を使用する。
【0046】
別の実施形態において、ASICプロセッサ1200は、無線周波数(RF:radiofrequency)信号によってワイヤレスで制御される。RF信号は、小型補聴器をオンしオフするために、強度モードを変更して不快な音響環境において振幅を制御するために、そして、診断のためのトーン応答の調節および検証を可能にするために使用することができる。
【0047】
ASICプロセッサ1200は、或る周波数をフィルタリングするように構成することもできる。例えば、開示する小型補聴器は、さらにまたは代替的に、或る共振周波数を回避するために、入力の或る範囲の周波数を変更することによってフィードバックを制御するフィードフォワードシステムを含むことができる。開示する小型補聴器は、さらにまたは代替的に、特有の環境が特有の共振周波数を生成するときに周波数応答を調整する学習アルゴリズムを有するシステムを含むこともできる。OAEは内耳によって生成される音である。より具体的には、振動することによって信号に応答する有毛細胞(hair cell)が内耳内に存在する。その振動は、中耳内で反響して戻す非常に静かな音を生成する。OAEが、或る周波数を選択的に増幅するのに役立つと考えられる。同様に、本明細書で開示する小型補聴器は、入ってくる音を増幅するのに役立つことになる低デシベルでかつ特許性のある周波数信号を生成するように構成可能でもある。この余分の背景音は、信号対ノイズ(STN:signal-to-noise)比を改善するのに役立つことになるか、または、その背景音は、或る周波数において独自に役立つことになる。この背景音は、単純な単一周波数音である可能性があるか、この背景音は、複数の異なる周波数から作り出される単一の複合音(complex sound)である可能性があるか、または、この背景音は、1秒の何分の1かだけ離れている幾つかの音である可能性があるか、あるいは、この背景音は、処理される周波数に応じて特定の時間にこれらの音のうちの任意の音を生成する可能性がある。
【0048】
開示する小型補聴器は、その特定のユーザーのために聴力を最適化するために、OAEを認識することによって自己診断し、デバイス自体において調整を行うように構成可能でもある。
【0049】
さらに、開示する小型補聴器は、それに対して内耳が応答し特有のOAEを生成する出力を生成し、特有のOAEは、それらの周波数における聴力損失の程度に相関する。
【0050】
追加のデバイスコンポーネントおよび構成
図4に示す実施形態において、小型補聴器300は、別個の再充電回路416を含む;しかしながら、上記で論じたように、他の実施形態において、再充電回路の多く、そして時として全てをプロセッサ414に含むことができる。再充電回路416はエネルギー源410を再充電する。
【0051】
1つの実施形態において、再充電のための1つまたは複数のコイルアレイは、フランジ(複数可)内にまたはその周りに配設される。別の実施形態において、再充電のための1つまたは複数のコイルアレイは、小型補聴器の外側部分内にまたはその周りに配設される。さらに別の実施形態において、再充電のための1つまたは複数のコイルアレイは、小型補聴器の内側部分内にまたはその周りに配設される。さらに別の実施形態において、再充電用の1つまたは複数のコイルアレイは、小型補聴器の内側部分と外側部分の両方に配設される。さらに別の実施形態において、再充電のためのコイルアレイの1つまたは複数は、上述したボイスコイルアクチュエーターに電力供給する同じコイルであるとすることができる。
【0052】
図16のA~Cは代替の実施形態の小型補聴器1600を示す。小型補聴器1600は、少なくともマイクロフォン1608、例として第1の電池1626として示す第1のマス、接続部材1621によって第1の電池1626に結合された、例として第2の電池1628として示す第2のマス、およびプロセッサ1614を収容するエンクロージャハウジング1601を含む。接続部材1621は、アクチュエーター1620を含むまたはアクチュエーター1620によって囲まれる。アクチュエーター1620は、一般に、接続部材1621が通過することを可能にする穴を内部に有するチューブ状または円筒状積層式圧電アクチュエーターである。アクチュエーター1620の高さは、概して約1mmと約4mmとの間であり、アクチュエーター1620の外径は、概して約1mmと約2mmとの間である。
【0053】
小型補聴器1600は、マイクロフォン1608の周りに配設された再充電コイルアンテナ1616も含む。再充電コイルアンテナ1616は、第1の電池1626および第2の電池1628を毎日再充電するために使用される。耳内に位置決めされると、第1の電池1626および第2の電池1628は、鼓膜の両側(すなわち、内側および外側)に配設され、接続部材1621は鼓膜を通して配設される。
【0054】
本明細書で述べる小型補聴器の、アクチュエーターなどの種々のコンポーネントの設計において考慮される因子は、ユーザーの聴力を改善するために鼓膜に適用さられる力の量および鼓膜の変位量である。力の量は、可聴周波数範囲にわたって、約20mgと約30mgとの間の1つまたは複数の変調マスに基づいて、約0.001ニュートン(N)と約0.05ニュートンNとの間の力による約0.05ミクロンと約5.0ミクロンとの間の変位で変動し得る。
【0055】
図17に示すように、小型補聴器は作動アッセンブリ1700を含み、これはまた、例として第1の電池1726として示す第1のマス、および、例として第2の電池1728として示す第2のマスの作動を増幅するために、アクチュエーター1723と連携した変位マルチプライヤー(displacement multiplier)1725を含むことができる。変位マルチプライヤー1725は、例としてピエゾカップリングアームレバーとして示される。アームレバー変位マルチプライヤー1725は、アクチュエーター脚部分、ケース部分上のピボット、およびマス(電池、レッグ部分として示す)を含む。図19に示すように、作動アッセンブリ1900は、アクチュエーター1923と連携する固定カップリング1925を含むこともできる。固定カップリング1925は、例として、アクチュエーター1923の上部に対する固定カップリングとして示される。図20に示すように、作動アッセンブリ2000は、アクチュエーター2023と連携する剛性カプラー2025を含むこともできる。剛性カプラー2025は、例として、第1の電池2026と第2の電池2028との間の剛性カプラーとして示され、アクチュエーター2023の外側の周りに位置決めされる。
【0056】
図21および図22に示すように、アームレバー変位マルチプライヤーを含む種々のピエゾカップリング、固定カップリング、および剛性カプラーは、それぞれアクチュエーター2123および2223を囲むまたはその他の方法でそれに結合された任意の適切な数のコンポーネントを含むことができる。アクチュエーター2123は例として矩形プリズムとして示され、アクチュエーター2223は例として円筒チューブとして示される。アクチュエーター2123、2223は、複数の任意の適切な数の、剛性カプラー部分2131、2231、固定カップリング部分2135、2235、およびアームレバー変位マルチプライヤー部分2137、2237の組み合わせによって囲まれる。
【0057】
上記で述べたコンポーネントに加えて、開示する小型補聴器は、耳の生物学的状態の変化、例えば、感染、炎症、瘢痕組織、上皮細胞移動(epithelial cell migration)を検出するためのセンサなどのさらなるコンポーネントを含むこともできる。
【0058】
ハウジング301は、概して、デバイスコンポーネントのためのシールされた区画を閉囲し提供する任意の適切な覆いである。適切なケーシングは、例えば、シリコン、フルオロポリマー、ポリエチレン、ステンレス鋼、およびチタンなどの生体適合性材料を含む。ハウジング301は中実または多孔質材料である。1つの実施形態において、ハウジング301は通気を可能にする微小穴を有する。別の実施形態において、ハウジング301は、ハウジングを通る通気穴を全く持たないように中実である。別の実施形態において、ハウジング301は、ハウジングを通る通気穴を全く持たず、内部移動によって生じる圧縮を可能にするためにデッドスペースを利用するように中実である。幾つかの実施形態において、ハウジング301は、アクチュエーターおよびマス(例えば、電池)の内部移動による内部圧力平衡化を可能にするために直線状チャネルを含む。直線状チャネルは、小型補聴器300についての上皮移動についての補償も提供する。なおさらに、直線状チャネルは、改善された安定化などの機械的利益を提供する。
【0059】
図18は小型補聴器1800の概略断面図である。小型補聴器1800は、コンポーネントの積層体を閉囲するハウジング1801を含み、これは、マイクロフォン1808、プロセッサ1814、第1の電池として示す第1の部分1826、第2の電池として示す第2の部分1828、および内部に配設されたアクチュエーターを有する接続部材1820を含む。
【0060】
ハウジング1801は、長さが約5mmと約10mmとの間、例えば、約6mmである。ハウジング1801は、概して、2つの直径、第1の直径1815および第2の直径1817を有する。鼓膜の両側に載る(複数の)フランジ付き部分に概して対応する第1の直径1815は、約1mmと約5mmとの間、例えば、約3mmである。鼓膜を通して配設される小型補聴器1800の部分に対応する第2の直径1817は、約0.5mmと約3mmとの間、例えば、約1.5mmである。鼓膜がその中に配設されるノッチ付き部分1829は、壊死をもたらすように鼓膜を挟み込むことなく、鼓膜のための十分な空間を提供するために、概して、約0.15mmと約0.5mmとの間、例えば、約0.25mmである。
【0061】
マイクロフォン1808およびプロセッサ1814のそれぞれは、約0.25mm厚と約1.0mm厚との間、例えば、約0.5mm厚である。第1の部分1826および第2の部分1828のそれぞれは、高さが約1mmと約2mmとの間、例えば、約1.5mmであり、約2mmと約3mmとの間、例えば、約2.5mmの外径を有する。接続部材1820であって、幾つかの実施形態において接続部材1820内に配設された、または、それに結合されたアクチュエーターを有する、接続部材1820は、高さが約0.5mmと約3mmとの間、例えば、約1mmであり、約0.5mmと約2mmとの間、例えば、約1mmの外径を有する。同様に、幾つかの実施形態において、アクチュエーターは、高さが約0.5mmと約3mmとの間、例えば、約1mmであり、約0.5mmと約2mmとの間、例えば、約1mmの外径を有する。
【0062】
上記で論じたように、小型補聴器は、種々のサイズおよび形状のコンポーネントに関して任意の適切なサイズおよび形状であるとすることができ、;しかしながら、各構成は、概して、同じ種々のコンポーネント、例えば、マイクロフォン、エネルギー源、アクチュエーター、およびプロセッサを必要とする。
【0063】
図7は、小型補聴器700の代替の実施形態の概略斜視図である。図7に示すように、少なくとも1つのフランジ702、概して内側フランジは、その内部のパイ状ノッチ704によって遮断される。ノッチ704は、鼓膜を通した小型補聴器700の挿入のために有用であり、なぜならば、ノッチ704が、アルキメデスのねじとして働き、より小さい切開部を通してフランジ702を嵌めることをより容易にするからである。
【0064】
図8は小型補聴器800の代替の実施形態の概略斜視図である。小型補聴器800は、円錐形であり、鼓膜内の切開部を通して挿入されると、拡張器として働く少なくとも1つのフランジ802、概して内側フランジを含む。
【0065】
さらなる実施形態において、小型補聴器の第1のフランジおよび第2のフランジの少なくとも一方は、その第1の端から第2の端までその他の方法でテーパが付けられ、それにより、第1のフランジまたは第2のフランジは、鼓膜内の切開部を通して挿入されるときに拡張器として働く。
【0066】
図9のA~Cは、代替の実施形態の小型補聴器900の種々の図である。小型補聴器900は第1のフランジ902および第2のフランジ904を含む。第1のフランジ902は、それに結合された複数の第1のフランジタブ906を有し、第2のフランジ904は、それに結合された複数の第2のフランジタブ908を有する。複数の第2のフランジタブ908は複数の第1のフランジタブ906からオフセットされる。図9のBに示し、以下でさらに述べるように、第1のフランジタブ906および第2のフランジタブ908は、概して、小型補聴器900が鼓膜を通して挿入されてしまった後にまで、小型補聴器900に対抗して倒伏する。小型補聴器900が挿入された後、複数の第1のフランジタブ906および/または複数の第2のフランジタブ908は、鼓膜の表面に平行して載るように開放されて(opened)、図9のCに示すように小型補聴器900を安定化させる。
【0067】
開示する小型補聴器の装着領域は、概して、鼓膜に対するエネルギー伝達を最適化するために位置決めされる、第1のフランジ902および第2のフランジ904などの1つまたは複数のフランジを含み、フランジ間の空間909が、鼓膜がその空間内に配設されるように構成される。装着領域は、鼓膜における小型補聴器900などの小型補聴器の保持を提供する。さらに、装着領域は、鼓膜における小型補聴器900の平衡および安定化を提供する。さらなる実施形態において、1つまたは複数のフランジは、鼓膜に作動または変調を送出することができる。幾つかの実施形態において、1つまたは複数のフランジは、充電コイルまたは充電アレイを含む。さらに、幾つかの実施形態において、1つまたは複数のフランジは、鼓膜の挟み込みまたは締め付けを回避するためにオフセット力を提供する事前設計された(複数の)特徴部を含み、なぜならば、そのような挟み込みまたは締め付けは、鼓膜の壊死または鼓膜内の穴をしばしばもたらすからである。
【0068】
さらなる実施形態において、第1のフランジおよび第2のフランジの少なくとも一方は、圧縮可能であり、また、鼓膜を通して挿入されると、その最終形状または位置になるように展開または解放することができる。
【0069】
上述した実施形態は、1つまたは複数のフランジの例示的な形状および構成を提供する。しかしながら、本開示は、それらに限定されないが、シルクハットに似た円形フランジ、外縁の周りで上に向けられたつば部を有するシルクハットに似た円形フランジ、その縁の周りで丸くなる本体から離間して広がるスカート、円形フランジであって、鼓膜に向く側でアンダーカットされる一方で、外側リングが上に向き、締め付け力をフランジの外側リムに分配する、円形フランジ、および、マイクロワイヤ形態であって、材料またはポリマーの薄膜によって覆われ、誘導再充電のための再充電コイルとして使用することもできる、マイクロワイヤ形態によって作成されるフランジを含む、さらなる形状および構成を企図する。幾つかの実施形態において、つば部の表面は、波状面または段付き面などの多平面表面であるとすることができる。
【0070】
幾つかの実施形態において、小型補聴器を安定化させるフランジは、鼓膜にわたって並置されて、対向する圧力を回避し、鼓膜について大量の血管(vascular profusion)を維持し、壊死を回避する。そのようなフランジは、概して、フランジの円周の周りに配置されたタブを含み、タブは、フランジおよび小型補聴器の本体から個別に離間して広がる。タブは、それらに限定されないが、パイ状、ローブ、デュアルローブ、またはクローバー状を含む種々の形状であるとすることができる。
【0071】
さらに別の実施形態において、装着領域は、断続的フランジのアレイを含み、そのアレイは、鼓膜に向く側でアンダーカットされる一方で、断続的フランジの外縁は上に向いて、力をフランジの外側リムに分配する。アレイは、内側および外側に留置されて、内側と外側との間に鼓膜を挟む、または、半径方向にオフセットして、鼓膜が安定化フランジの間に挟み込まれないことを確実にする。
【0072】
さらなる実施形態において、フランジは、小型補聴器を安定化するように設計され、鼓膜の外側における上皮移動の課題を軽減するために位置決めされる、または、軽減する特徴部を有する。フランジは、内側で、保持および安定化特徴部と並置させることができる。適切な特徴部は、バンプパターニング、両面ハッチング、直線状トラックまたはチャネル、軸方向トラック、涙滴状隆起部分のパターニング、およびボートハル状構成を含むが、それらに限定されない。なおさらなる実施形態において、これらの特徴部は、付加的にまたは代替的に、本体などの、開示する小型補聴器の他の部分上にパターニングすることができる。
【0073】
なおさらなる実施形態において、1つまたは複数のフランジのうちの少なくとも1つのフランジは、ツチ骨または鼓膜へそ(umbo)を直接変調するように小型補聴器から延在するアクチュエーターコンポーネントを含む。なおさらなる実施形態において、アクチュエーターは、ツチ骨または鼓膜へそを直接変調するために、本体などの小型補聴器の他の部分から延在させることができる。
【0074】
本明細書で開示するフランジは、単独でまたは任意の組み合わせで、任意の適切な方法で小型補聴器の本体および/または鼓膜と相互作用することができる。
【0075】
埋め込み方法
開示する小型補聴器は任意の適切な埋め込み方法によって埋め込み可能である。図10は、1つのそのような方法1000のプロセスフローである。
【0076】
方法1000に先立って、鼓膜および近位外耳道を消毒するために任意の消毒を実施することができる。
【0077】
方法1000は概して、操作1010において、小型補聴器の留置のために最適な場所を特定すること(identifying)、操作1020において、留置用の場所に麻酔をかけること、操作1030において、留置用の場所で切開部または任意の他の穿刺部を作ること、および、操作1040において、切開部を通して小型補聴器を挿入することを含む。方法1000は概して、操作1050において、小型補聴器の留置および機能を確認することをさらに含む。
【0078】
1つの実施形態において、最適な場所は、鼓膜の前下象限である。したがって、方法は、前下象限の一部分に麻酔をかけること、約2mm以下など、例えば約1mm以下の小さい切開部を作ること、およびユーザーの鼓膜の前下象限に小型補聴器を位置決めするために切開部を通して小型補聴器を挿入することを含む。
【0079】
上記で論じたように、小型補聴器の幾つかの実施形態は、鼓膜を通したより容易な挿入に適合する構成を含む。例えば、1つまたは複数のフランジのうちの少なくとも1つのフランジは、切開部を通して小型補聴器を回転させることによって鼓膜内の切開部にわたる留置を支援するために、図7に示す小型補聴器700のように、スロット付きまたは断続的フランジを含むことができる。
【0080】
図8の小型補聴器800などの別の実施形態において、内側フランジなどの1つまたは複数のフランジのうちの少なくとも1つのフランジまたは小型補聴器自体の本体は、拡張器としての機能を果たすように円錐状に成形されており、拡張器は、切開部を拡張し、切開部を小型補聴器の内側部分が通過するのを可能にするように鼓膜内の切開部を通して押されるプロファイルを提供する。
【0081】
さらに別の実施形態において、内側フランジおよび外側フランジの少なくとも一方は自己拡張型フランジであり、自己拡張型フランジは、切開部を通して挿入可能であり中耳内で拡張可能であり、それにより、フランジは、拡張すると、鼓膜の内側に当接することになる。なおさらなる実施形態において、フランジ間またはフランジの断続的部分間の距離は、埋め込みを可能にし、かつ、鼓膜の可変厚および/または可変力についての調整を提供するために予め決定される。
【0082】
なおさらなる実施形態において、小型補聴器は、小型補聴器全体を形成するために共に結合できる多数のピースを含む。そのような実施形態において、内側フランジおよび外側フランジは概して、コネクタのアレイによって接続され、コネクタのアレイは、一方のまたは両方の半分で固定され、一方のまたは両方の半分の上の対応するレセプタクルに結合する。小型補聴器の1つのピースが、切開部を通して、例えば鼓膜を通して挿入された後、第2のピースが、例えば、既に挿入されたピースと嵌合するピンのアレイと共に鼓膜を貫通することによって、既に挿入されたピースに結合される。なおさらなる実施形態において、1つのピースは、切開部を通して鼓膜の内側に挿入され、第2のピースは、初期留置切開部(initial placement incision)から離間した或る距離にある場所で鼓膜にわたって第1のピースに結合される。そのような実施形態において、初期留置切開部は癒着することになる。
【0083】
緊急または安全上の理由から取り外す方法
開示する小型補聴器は、安全上のおよび緊急の理由から迅速かつ安全に取り外すことができる。例えば、上記で論じたように、小型補聴器の実施形態は、特定のオーディオシグネチャー周波数を認識すると、オフになるように構成される。特定のオーディオシグネチャーが小型補聴器をオフにすることに失敗する場合、または、小型補聴器を緊急の理由から取り外す必要がある場合、デバイスを、物理的手段によって停止するおよび/または取り外すことができる。
【0084】
1つの実施形態において、開示する小型補聴器の外側フランジは、スイッチ、圧力スイッチ、接点、スライド、またはそれらの任意の組み合わせを含む。医療専門家は、緊急処置室または他の医療環境において基本的な医療ツールを使用して、スイッチ、圧力スイッチ、接点、スライド、またはそれらの組み合わせに接触して、オーディオシグネチャー周波数に応答して小型補聴器がオフになるのに失敗した後に、小型補聴器を停止することができる。幾つかの実施形態において、開示する小型補聴器の外側フランジは、ピンセット、プローブ、および鉗子などの一般的な医療ツールによって把持または接続することができる、小型補聴器を取り外すのを支援する特徴部を組み込む。
【0085】
なおさらなる実施形態において、開示する小型補聴器のユーザーは、緊急状況においてデバイスを取り外すまたは停止させるために医療専門家が使用できるカスタム構成された停止または取り出しツールを提供される。
【0086】
埋め込みおよび取り出しのためのデバイス
開示する小型補聴器は、低侵襲性の、外来患者の手技中に患者の耳内に埋め込むことができる。1つの実施形態において、開示する小型補聴器は、小さい切開部または任意の他の穿刺部を作るために、外科用メスまたは任意の適切な切断機器を使用して挿入され、ツールは、小型補聴器を保持し、鼓膜を通して小型補聴器を位置決めするために使用される。別の実施形態において、埋め込みツールは、概して、その遠位端に切断ツールを有する細長いロッドを具え、外耳道を通して鼓膜上の適切な位置に挿入される。切断ツールは、遠位位置合わせリングガイドを使用して留置用の場所に小型補聴器を位置決めし、所定の適切なサイズのブレードまたは針などの切断機器を前進させて、留置用の場所に切開部を作り、その後、鼓膜にわたって小型補聴器を前進させて、鼓膜を通して小型補聴器を配設する。
【0087】
埋め込みおよび取り出しのためのデバイスの構成は、開示する小型補聴器の特定の構成をより容易に挿入するために多彩であってよい。例えば、図11のA~Bは、例示的な埋め込みツールの一部分と共に、図9のA~Cの小型補聴器900を示す。図11のA~Bに示すように、埋め込みツール1100はシース1102および前進ロッド1104を含む。操作中、シースは小型補聴器900を囲み、複数の第1のフランジタブ906および複数の第2のフランジタブ908を、それらの非拡張位置に保ち、それにより、タブは、図11のAに示すように、小型補聴器900に側に倒伏する。
【0088】
シース1102の一部分は、概して、鼓膜内に作られた切開部を通して挿入され、シース1102が鼓膜を通して挿入されると、シース1102の少なくとも一部分が引き抜かれる。小型補聴器900は、こうして鼓膜を通して配設され、それにより、小型補聴器900の第1の部分は、鼓膜の内側に配設され、小型補聴器900の第2の部分は鼓膜の外側に配設される。複数の第1のフランジタブ906を有する小型補聴器900の部分がシース1102から解放されると、前進ロッド1104は、シース1102が引き抜かれる間、その位置を維持する。第1のフランジタブ906は、拡張し、広がり、あるいはその他の方法で展開し、図11のBに示すように鼓膜に沿ってフランジを形成する。
【0089】
別の実施形態において、カップ付き鉗子などの1つまたは複数のツールは、鼓膜の内側にアクセスするために一次開口部を通して挿入され、その結果、2つ以上のコンポーネントが、ピンまたはスナップなどの種々の機構を通して鼓膜にわたって結合される。カップ付き鉗子などの1つまたは複数のツールは、その後、除去される。
【0090】
図15のA~Bは、代替の実施形態の埋め込みツール1500を示す。埋め込みツール1500は、遠位カップ1501、近位カップ1502、接続部材1503、前進部材1504、ハンドル1505、および作動トリガー1506を含む。埋め込みツール1500は、埋め込まれる1つまたは複数のデバイスを保持するように構成される。
【0091】
埋め込みツール1500の操作は、鼓膜を通して小型補聴器を挿入する文脈で述べられる。しかしながら、埋め込みツール1500が本体全体を通して任意の適切な場所に任意の適切なデバイスを埋め込むために有用であることが企図される。
【0092】
図15のBに示すように、埋め込みツールは、本明細書で開示する小型補聴器などの小型補聴器の第1の部分1508および第2の部分1510を保持するように構成される。
【0093】
操作中、第1の部分1508を保持する遠位カップ1501は、鼓膜内の切開部を通して前進し、それにより、遠位カップ1501および第1の部分1508は鼓膜の内側に配設される一方、近位カップ1502および第2の部分1510は鼓膜の外側に配設される。作動トリガー1506は、その後、切開部から離間した或る距離で鼓膜を通して小型補聴器の第1の部分1508および第2の部分1510を共にパチンとはめるように、遠位カップ1501および/または近位カップ1502を作動させるために使用することができる。小型補聴器が、鼓膜を通して一緒にパチンとはまり埋め込まれると、埋め込みツール1500は、切開部を通して引き抜かれ、補聴器は、鼓膜を通して所定の場所に残される。
【0094】
再充電するためのデバイスおよびシステム
本開示は、埋め込まれた小型補聴器を容易に再充電するためのユーザーインターフェースを提供するための再充電器デバイスおよびシステムをさらに企図する。再充電器デバイスおよびシステムは、開示する小型補聴器を再充電するために充電回路要素と相互作用する。再充電器デバイスおよびシステムは、概して、外耳道内に、耳を覆って、耳の周りに、またはユーザーの頭部の近傍に配設される。例示的な再充電器は、再充電回路と相互作用するために、外耳道内に、耳を覆って、耳の周りに、またはユーザーの頭部の近傍に留置することができる、イヤホン、内耳道インサート、耳あて、オーバーイヤークリップ(over-the-ear clip)、ガラスステムクリップ、枕内のまたはその周りのデバイス、および、ユーザーの頭部の近傍内のまたはその周りのデバイスを含む。幾つかの場合に、再充電器デバイス自体は、再充電される必要があることになる。1つの実施形態において、再充電システムは、コンセント、USBポート、または自動車電力源などの電力源に結合される再充電デバイス用の支持クレイドルを提供するクレイドルシステムである。別の実施形態において、再充電デバイス自体は、プロングなどのコネクタを通して電力源に直接接続することができる。再充電システムがモジュール式であるとすることができ、それにより、ヘッドセットが、耳コンポーネント用のホルダーであって、耳コンポーネントが患者によって装着されている間、耳コンポーネントを所定の場所に保持する、ホルダー、および、耳コンポーネントが再充電している間、耳コンポーネントを保持するためのさらなるホルダーを提供することになることも企図される。外耳道内に留置される(複数の)充電コンポーネントは、より目立たず、移動式再充電(mobile recharging)を可能にするために、ヘッドセットシステムから切り離すことができる。
【0095】
ドッキングデバイス
本開示は、1つまたは複数のデバイスを、鼓膜を通してなどで、ユーザーの耳内でドッキングさせるためのドッキングデバイスも企図する。本明細書で述べる小型補聴器の実施形態のように、ドッキングデバイスは、接続部材によって接続された第1のフランジおよび第2のフランジの任意の適切な構成を含むこともできる。しかしながら、ドッキングデバイスは、概して、上述した補聴器のコンポーネントを含まない。代わりに、ドッキングデバイスは、概して、内部を貫通する中空部分を含み、その中空部分は、別のデバイスを内部でドッキングさせるように事前設計される。開示する小型補聴器と同様に、ドッキングデバイスは、低侵襲性の外来患者の手技中に挿入することができる。手技は、概して、ドッキングデバイスの留置のために最適な場所を特定すること、留置用の場所に麻酔をかけること、留置用の場所において切開部または任意の他の穿刺部を作ること、および、切開部を通してドッキングデバイスを挿入することを含む。手技は、留置用の場所を消毒すること、ならびに、ドッキングデバイスが留置された後にドッキングデバイスの留置および機能を確認することを含むこともできる。
【0096】
ドッキングされる適切なデバイスは、バイオメトリックデバイス、診断機器、エンターテインメントモジュール、隠し通信モジュール、治療デバイス、フィットネストラッキングデバイス、健康トラッキングデバイス、組織刺激デバイス、および聴力支援デバイスを含むが、それらに限定されない。これらのドッキングデバイスは、有利には、鼓膜を通してなどで耳内にドッキングステーションを提供し、ドッキングステーションは、所定の期間にわたって種々のデバイスが鼓膜内に留置されることを可能にする。ドッキングデバイスは、留置用の所定の場所に既に留置されているため、デバイスがドッキングステーション内でドッキングされると、さらなる切開部を留置場所に作る必要はない。
【0097】
刺激および/または変調デバイス
本開示は、開示するデバイスが小型補聴器として使用されることを論じる。本開示は、例えば、ユーザーの身体全体を通して任意の組織内に位置決め可能である刺激デバイスおよび/または変調デバイスも企図する。そのような組織刺激デバイスは、1つまたは複数のセンサ、1つまたは複数のマス、1つまたは複数のエネルギー源などの、1つまたは複数のマス、1つまたは複数のプロセッサ、および1つまたは複数のアクチュエーターとして使用することができる種々のコンポーネントを内部に有するハウジングも含む。1つまたは複数のセンサは、概して、所定の出力を提供する任意の適切なセンサであり、所定の出力は、ユーザーの身体に対する所望の効果に基づく。例示的な出力は、機械出力、電気出力、および熱出力を含むが、それらに限定されない。操作中、刺激デバイスおよび/または変調デバイスは、筋肉、靭帯、膜、骨、および軟骨などの、身体内の多数の異なる組織に対する変化をもたらすのに有用である。
【0098】
結論
本開示の実施形態は、鼓膜の速度または位置を直接的にまたは間接的に変調するために振動変換を使用する改良型小型補聴器を提供する。鼓膜の速度または位置のこの直接または間接変調は、ユーザーのために音品質を著しく改善する。開示する小型補聴器は、より小型で、より快適で、美容的に目立たない。実際には、開示する小型補聴器は、外耳道内および鼓膜にわたって配設することができるため、外の観察者から見えない。さらに、開示する小型補聴器は小型設計であるため、小型補聴器は外耳道を完全に閉塞しない。代わりに、開示する小型補聴器は、外耳道を妨げられない状態のままにし、したがって、ユーザーにとってより自然でかつ改善された音品質を提供する。さらに、開示する小型補聴器は、導管閉塞効果(canal occlusion effect)を回避することなどのさらなる機能、および、従来の補聴器に関連する補聴器フィードバックを提供する。さらに、開示する小型補聴器は、低侵襲性の外来患者の手技中に挿入し取り外すことができる。
【0099】
上記は本開示の実施形態を対象とするが、本開示の他のおよびさらなる実施形態は、本開示の基本的範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、以下に続く特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
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図22