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特許7331130排気ガス浄化用触媒フィルタの触媒スラリー定量コーティング方法
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  • 特許-排気ガス浄化用触媒フィルタの触媒スラリー定量コーティング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用触媒フィルタの触媒スラリー定量コーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20230815BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B01J37/02 301D
B01J35/04 301L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021559023
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 KR2020095057
(87)【国際公開番号】W WO2020204683
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0039880
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514079170
【氏名又は名称】ヒソン カタリスツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ナ、スン チョル
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519616(JP,A)
【文献】特開2018-153717(JP,A)
【文献】特開2010-017666(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087816(WO,A1)
【文献】特開2002-066338(JP,A)
【文献】特開2015-062896(JP,A)
【文献】特表2015-501199(JP,A)
【文献】特開2018-047391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス浄化用触媒フィルタの定量コーティング方法であって、
触媒フィルタの内部に入口側から触媒スラリーを定量注入するステップと、前記触媒フィルタをひっくり返すステップと、前記触媒フィルタの内部に出口側から触媒スラリーを定量注入するステップと、前記触媒フィルタを再びひっくり返すステップと、セル壁の内部に形成されたスラリー分布を再配置することで、セル壁の一側に並んだスラリー配置を達成するために前記触媒フィルタの出口側から触媒フィルタの内部に空気圧を注入するステップと、を含み、
前記触媒フィルタの内部に入口側から触媒スラリーを定量注入するステップは、触媒スラリーを、底が上下動する定量容器に投入するステップと、触媒フィルタの下端及び容器の上端が水平となるように容器の上部を触媒フィルタの下端に移動させるステップと、触媒フィルタの下端及び容器の上端を外部と密閉させるステップと、容器の底を上方移動させるステップと、前記密閉を解除すると同時に真空を印加するステップと、を含み、
前記触媒フィルタの内部に出口側から触媒スラリーを定量注入するステップは、触媒スラリーを、底が上下動する定量容器に投入するステップと、触媒フィルタの下端及び容器の上端が水平となるように容器の上部を触媒フィルタの下端に移動させるステップと、触媒フィルタの下端及び容器の上端を外部と密閉させるステップと、容器の底を上方移動させるステップと、前記密閉を解除すると同時に真空を印加するステップと、を含み、
前記触媒フィルタの出口側から触媒フィルタの内部に空気圧を注入するステップにおいて、前記空気の注入は、セル壁の内部に形成されたスラリー分布を再配置することで、セル壁の一側に並んだスラリー配置を達成するための圧力及び時間で調整され、その注入される空気圧は2.0bar以内であり、注入時間は1秒以内である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記入口側から注入される触媒スラリー、及び前記出口側から注入される触媒スラリーは、同一または異なる
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒フィルタの内部を定量の触媒スラリーでコーティングする方法に係り、より詳細には、排気ガス浄化用触媒フィルタの内部を定量の触媒スラリーでコーティングしながら、フィルタを構成するフィルタセル壁の内部またはセル壁の表面における触媒分布を調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス浄化用触媒フィルタは、内燃エンジンから排出される粒子状物質をフィルタに捕集した後、これを燃やして再生し、再び粒子状物質を捕集して継続的に再使用するフィルタ技術であって、フィルタに酸化触媒をコーティングする触媒フィルタ(CSF、Catalyzed soot filter)方式が採用できる。このような排気ガス浄化用触媒フィルタは、排気ガス中のHC、CO及びNOxと共に粒子状物質を効果的に除去する。このような排気ガス浄化用触媒フィルタは、セラミック焼結体の一種である多孔質炭化ケイ素焼結体、またはコーディエライト、アルミニウムチタニアなどで形成されるハニカム構造体であって、触媒物質がフィルタのセル壁にコーティングされるか或いはセル壁に形成される細孔の内部に担持されることができる。特許文献1:韓国特許第10-2005-0034983号には、ディーゼルエンジン用触媒フィルタを製造するために、触媒成分の粒子でスラリーを製造し、ここにフィルタを浸す方法(液浸、Dipping)で触媒物質をフィルタに固定させる方法が開示されている。しかし、従来の液浸方式では、触媒フィルタで要求される多様なニーズ、すなわち、排気ガスの規制を満足し且つ触媒活性を維持するために、正確な量のスラリーを調節するとともに再現性を確保するか、或いはフィルタのセル壁内でスラリー分布を制御することができないだけでなく、フィルタの多孔性によって液浸方式が適用できない場合が発生する。一方、定量の触媒スラリーをコーティングする方式としては、特許文献2:韓国特許第10-1271434号公報にいわゆるPnP(プッシュ・アンド・プル)方式が紹介されているが、提示された方法は、フィルタとは構造的に異なる触媒コンバータに適用されるコーティング方式であって、何よりもフィルタ構造とは異なり、開放チャンネルで構成されるコンバータには背圧の制限がないため、セル壁内部のスラリー分布調節のようなセル壁内部のコーティング形状の変化が不要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国特許第10-2005-0034983号
【文献】韓国特許第10-1271434号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、排気ガス浄化用フィルタに対する定量の触媒スラリーコーティング方式を提供することにある。本発明の他の目的は、通常40%以上を要求するフィルタの多孔性とは無関係に定量の触媒スラリーをコーティングすることができる方式を提供することにある。本発明の別の目的は、フィルタのセル壁の内部または表面で触媒スラリー分布を均一に制御することができる方式を提供することにある。本発明の別の目的は、スラリー物性調節方法によってセル壁の内部に触媒スラリーをコーティングするか或いはセル壁の表面にコーティングする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、排気ガス浄化用触媒フィルタの触媒スラリー定量コーティング方法を提案し、これは、触媒フィルタの内部に触媒スラリーを定量注入するステップを含んで新しいフィルタコーティング形状を提供し、さらに前記触媒フィルタの一側から触媒フィルタの内部に空気圧を注入するステップを含むことで、内壁におけるスラリー分布を調節することができる。本発明は、非限定的に次の特徴を含む。触媒フィルタの内部に触媒スラリーを定量注入するステップは、特許文献2:韓国特許第10-1271434号のいわゆるPnP方式が適用され、具体的には、触媒スラリーを、底が上下動する定量容器に投入するステップと、触媒フィルタの下端及び容器の上端が水平となるように定量容器を触媒フィルタの下部に移動させるステップと、触媒フィルタの下端及び容器の上端を外部と密閉させるステップと、容器の底を上方移動させるステップと、前記密閉を解除しながら真空を印加する真空印加ステップと、定量容器を下方移動させるステップとを含む。本発明において、フィルタの内部に注入される触媒スラリーは、フィルタのセル壁に形成される細孔を通過することができる適切な粘度と粒度を有するもので、セル壁の内部にスラリーコーティング形状を調節することができる。一方、触媒スラリーは、フィルタのセル壁の細孔を通過することができない粘度と粒度を有することができ、このような場合、セル壁の表面にスラリーがコーティングされることができる。本発明において、触媒スラリーが注入される方向と同一の方向から触媒フィルタの内部に注入される空気圧は、フィルタのセル壁の内部の触媒スラリー分布を調節することができる圧力及び時間で調整できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明による排気ガス浄化用フィルタに対する触媒スラリー定量注入方法に従って、触媒スラリーはフィルタ内部のチャンネルに定量注入され、従来の過剰または余剰スラリーコーティングによる問題点を解決することができる。フィルタのチャンネルに定量の触媒スラリーが注入されると、注入された定量の触媒スラリーは、適切な粘度と粒度によってチャンネルのすべてのセル壁の内部にコーティングされるか或いはセル壁の表面にコーティングされ、続く空気の注入によってセル壁の内部または表面でスラリーコーティング形状が調節されることにより、背圧及び活性などの性能を改善することができる。また、空気圧力を適用して、フィルタ内のコーティング長さを調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図面は、本発明の実施例を説明するためのものであり、請求の範囲に含まれる発明を制限するためのものではない。
図1】触媒フィルタの概略斜視図及び部分拡大断面図である。
図2a】フィルタのセル壁にコーティングされた触媒成分を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2b】セル壁の内部に形成された触媒物質を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3】触媒フィルタのコーティングに適用される従来のコーティング方法のうちのいずれかである液浸によるセル壁内部のスラリー分布図(上側)とPnP方式によるセル壁内部のスラリー分布図(下側)を示す。液浸によっては、セル壁の一側に均一にスラリーが分布されるが、PnP方式を用いて、好ましくは全体20%~80%程度にフィルタのセル壁の下部を部分コーティングし、フィルタをひっくり返して、コーティングされずに残っているセル壁の上部の残り部分をさらにコーティングする図3(下側)を参照すると、セル壁内部のスラリーコーティング形状が、液浸方式によるコーティング形状とは異なり、上部と下部のコーティング形状が相反したスラリー分布を示している。
図4】本発明によるPnP方式によるセル壁内部のスラリーコーティング形状を液浸方式と同一に維持することができる方法で、触媒スラリーの注入方向と同一の方向に弱い空気圧力を提供する触媒フィルタコーティング方式によるセル壁内部のスラリー分布図を示す。液浸による方式と同等のスラリー分布及び背圧調節が可能である。
図5図4に示すセル壁内部のスラリー分布度を達成するために行われる本発明によるコーティング方式をステップ別に示すものである。
図6】PnP方式によるコーティング方式をフィルタに適用するための概略フローチャートである。
図7】本発明によって触媒の上部はセル壁の表面にスラリーをコーティングし、触媒の下部はセル壁の内部にスラリーをコーティングするためのコーティング方式を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義:
本発明において、「定量」とは、精密に制御された所定の含有量の触媒スラリーが複数のチャンネルまたはセル(cell)にほぼ完全にコーティングされることを意味する。本願において、「略」完全にコーティングされるというのは、計量された触媒スラリーの1%以内のスラリーのみがフィルタチャンネルにコーティングまたは担持されずに抜け出ることを意味する。本発明の説明において、フィルタ構造体を記述しながら、「断面」とは、別に特定しない限り、排気ガスの流動方向に対する垂直の断面と定義される。一方、「後半部」または「出口側(outlet)」とは、排気ガスがフィルタを通過して外部に排出される側と理解でき、「前半部」または「入口側(inlet)」とは、エンジンから排出された排気ガスが流入する側と定義される。また、「前半部」及び「後半部」は、必ずしもフィルタを長さ方向に二分する用語ではなく、排出ガス及びエンジンの条件に応じて前半部の一部分及び後半部の一部分として理解できる。本発明において、排気ガスは、自動車などの移動式内燃機関又は発電所などの固定式内燃機関から発生する排気ガスを含めて、有害成分を含有する包括的な概念の排気ガスを言及するものである。
【0009】
本発明は、一次的に触媒フィルタに対する定量コーティング方法を提案するものである。本発明によるコーティング方法は、従来のモノリシック触媒コンバータで適用されるPnPコーティング方式をフィルタ構造体に適用するものであり、さらにはフィルタのセル壁の内部または表面で触媒スラリー分布を制御することができる方式を提供するものであり、スラリー物性の調節に応じてセル壁の内部にコーティングするか或いは表面にスラリーをコーティングする方法を提供するものである。
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明による触媒フィルタコーティング方法を説明するが、本発明は実施形態に限定されるものではない。まず、フィルタの構造を説明する。図1は円柱状の触媒フィルタの斜視図及び部分拡大断面図を示す。
【0011】
前記ハニカムフィルタ10の構造体は、断面が略正方形状をなす複数の貫通セル又はチャンネル12’、12”が軸線方向に沿って規則的に形成されており、各貫通セル12’、12”は、薄いセル壁13によって互いに仕切られている。多数のセルのうち、約半数のセルは流入端面9aに開口しており、残りのセルは流出端面9bに開口している。流入端面9aに開口しているセル12’内のセル壁13の表面又は細孔内部には、白金族元素又はその他の金属元素及びその酸化物などからなる触媒物質30がコーティング又は担持されている。各貫通セル12’、12”の開口部は、いずれか一方の端面9a、9b側において、プラッギング15によって密封されている。よって、フィルタ構造体の端面全体は碁盤模様を示す。セルの密度は200個/インチ前後に設定され、セル壁13の厚さは0.3mm前後に設定される。流入端面9aに開口しているセル12’の内部に進入した排気ガスは、セル壁を通過しながら粒子状物質は濾過され(トラップ、浸漬)、残りのガス成分のみセル壁の細孔(または気孔)を介して、流出端面9bに開口しているセル12”を介して外部へ排出される。このとき、ガス成分は、セル壁13にコーティングされるか(図2a)、或いはセル壁内部の細孔に担持された(図2b)触媒により酸化還元反応が促進されて無害な成分に転換され、流出端面9bの方向に外部放出される。図1から理解されるように、入口側及び出口側は対称的な形状を持っているので、これを便宜上区分するためのものであり、絶対的なフィルタの位置を指示するものではない。例えば、フィルタの製作過程で入口側と説明されるが、フィルタの装着及び使用過程では出口側として使用でき、その逆もそうである。
【0012】
セル壁13の表面または細孔の内部に対する様々なコーティング方法のうちの液浸(Dipping)方式が一般的であり、簡略に、図3(上側)を参照すると、触媒成分の粒子でスラリーを製造し、ここにフィルタを液浸させてセル壁の内部をコーティングするが、スラリーの流入方向と反対の方向から強い空気圧(ブローイング(Blowing)と表記される)を提供することにより、過量のコーティングされていないスラリーをフィルタの外部へ除去する。本発明者らは、このような空気圧によってセル壁内部の一側に担持された触媒物質が移動することができ(Al分布と表記される)、走査型電子顕微鏡(SEM)写真からこれを確認した。しかし、従来の液浸方式では、排気ガスの規制を満足し且つ触媒活性を維持するために、正確な量のスラリー調節及び再現性を確保するか、或いは必要に応じてフィルタのセル壁内でスラリー分布を制御することができないだけでなく、何よりもフィルタの多孔性によって液浸方式が適用できない場合が問題であった。一方、定量の触媒スラリーをコーティングする方式としては、いわゆるPnP方式が紹介されるが、これは、フィルタとは構造的に異なる触媒コンバータに適用されるコーティング方式であって、何よりもフィルタとは異なり、コンバータには背圧の問題がないので、セル壁の内部のコーティング形状調節のような要求が不要であった。本発明者らは、従来のコンバータにのみ適用されていた前記PnP方式を触媒フィルタに適用した。具体的に、図6を参照してPnP方式を説明すると、a)触媒スラリーを、底が上下動する定量容器に投入するステップ、b)触媒フィルタの下端及び容器の上端が水平となるように容器の上端を触媒フィルタの下端に移動させるステップ、c)触媒フィルタの下端及び容器の上端を外部と密閉させるステップ、d)容器の底を上方移動させるステップ、e)真空印加ステップ、f)触媒フィルタの下端及び容器の上端の密閉を解除させるステップを経て、フィルタのチャンネルの内部、詳細にはセル壁の内部または表面に触媒スラリーをコーティングすることができる。これらのステップで構成されるコーティング方法の作動過程を説明すると、a~dステップを介して触媒フィルタの複数のチャンネルに定量の触媒スラリーが充填された後、真空が印加される(eステップ)。前記eステップまでは、チャンネルの内部に充填されたスラリーが充電レベル(level)以上にチャンネル内の上部へ移動せず、次のステップ、すなわちf)触媒フィルタの下端及び容器の上端の密閉を解除させるステップが続き、これにより、チャンネルの内部に充填されている定量の触媒スラリーがチャンネル内の上部へ移動してチャンネルの内壁、すなわちセル壁に薄く塗布される。前記ハーフコーティングの後、触媒フィルタをひっくり返して、残りの部分に対してもa~fステップを繰り返し行って触媒フィルタに対するコーティングを完了すると、セル壁内の下部及び上部でスラリーの配置がそれぞれ異なるようにコーティングされる新しいコーティング形態を取得することができる。つまり、PnP方式を用いてフィルタのセル壁の下部を部分的に、好ましくは全体の20%~80%程度にコーティングし、フィルタをひっくり返して、さらにコーティングされずに残っているセル壁の上部の残り部分をコーティングする図3(下側)を参照すると、スラリーは、セル壁内の下部及び上部でスラリー配置がそれぞれ異なるようにコーティングされる新しいコーティング形態を取得することができる。このような形態は、液浸方法でコーティングされた触媒のセル壁内部のコーティング形状とは差異が発生し、詳細には、触媒フィルタのセル壁の一部ではスラリーがセル壁の出口側(Outlet)方向に集中し、触媒フィルタのセル壁の一部ではセル壁の入口側(Inlet)方向に集中することにより、液浸方法では達成できない新しい形状の触媒フィルタのセル壁の構成を得ることができる。
【0013】
一方、液浸方式によるセル壁の一側に並んだスラリー配置、これによる液浸方法によって製造された触媒の背圧と同一の効果を期待するためには、さらに、究極的にフィルタにコーティングまたは担持される触媒物質に対するコーティング形状を調節するために、PnP方式によるフィルタコーティングの後、2.0bar以下の弱い空気圧を1秒内の短期で注入した結果、驚くべきことに、液浸方式のようにセル壁の一側に並んだスラリー配置を達成することができた。
【0014】
図4はスラリーがセル壁の内部に流入できるように粘度を調整した例(100cP以下)を示すものであり、よって、セル壁内部のコーティング形状(In-wall)を示すものであり、必要に応じて、スラリーがセル壁の内部に流入できないように粘度の調整(500cP以上)及び粒度(10μm以上)の調整を行う方法でセル壁の表面に対するコーティング形状(On-wall)に変化を与えることができる。これについて、さらに後述する。
【0015】
まず、図4を参照すると、PnP方式によるセル壁内部のスラリー分布を改善するために、スラリーをフィルタ内部に定量注入した後、弱い空気圧力を提供すると、セル壁内部のスラリーコーティング形状が変化され、すなわち、液浸による方式と同等なスラリー分布及び背圧調節が可能であることを確認することができる。図4(上側)は、PnP方式によって、本発明の一次目標として触媒フィルタの一部(上端)でスラリーがセル壁の出口側の方向に集中し、触媒フィルタの一部(下端)ではスラリーがセル壁の入口側の方向に集中した構成を示す。図4に示されている触媒フィルタの上端及び下端は、触媒フィルタをひっくり返してコーティングしたものであり、まず、入口側から流入したスラリーに触媒フィルタの下端のセル壁の内部をコーティングし、これを反転させて、再び出口側から流入したスラリーで触媒フィルタの残り未コーティングの一部をコーティングすることにより、セル壁の内部全体にコーティングされたフィルタが完成するが、このようなフィルタは、上述したように、触媒の一部ではスラリーがセル壁の出口側の方向に集中し、触媒の他の一部ではスラリーがセル壁の入口側の方向に集中した非対称構造を持つ。さらに、図4(下側)はPnP方式でコーティングされるが、上下反転し、本発明の追加コーティング方式に応じて2.0bar以下の弱い空気圧を1秒内の短期で注入した結果、セル壁の一側に並んだスラリー配置を示す。
【0016】
図5を参照して具体的に説明すると、まず、触媒フィルタのハーフ(half)コーティングを行うが、触媒フィルタの入口側からスラリーがPnP方式で定量注入され、弱いVIC(Vacuum Infusion Coating、真空印加)が適用されるので、スラリーが注入された側のセル壁にスラリーが集中する。触媒フィルタは、ひっくり返して、残り未コーティングの一部に対してハーフ(half)コーティングを行うが、すなわち、触媒フィルタの出口側からスラリーがPnP方式で定量注入され、やはり弱いVICが適用されるので、スラリーが注入された側のセル壁にスラリーが集中する。このような結果が図4(下側)に示されている新しいセル壁形状である。本発明者らは、さらに、再び図5を参照すると、触媒フィルタをひっくり返して出口側から弱い空気圧(2.0bar以下)を短期的に(1秒以内)注入した結果、セル壁の上端に配置されたスラリー分布が変更されて、セル壁の下端に配置されたスラリー分布と一致することを確認した。
【0017】
一方、図7は、フィルタの入口側では、スラリーがセル壁の内部に流入できないように粘度の調整(500cP以上)及び粒度(10μm以上)の調整を行う方法でセル壁の表面に対してコーティングし(On-wall)、フィルタの出口側では、スラリーがセル壁の内部に流入できるように粘度及び粒度を調整してセル壁の内部に対してコーティングしたこと(In-wall)を示すものであり、本発明による様々なコーティング方式を例示したものである。
【0018】
したがって、本発明によるフィルタに対するスラリー定量注入方法によれば、触媒スラリーは、フィルタの内部チャンネルに定量注入されることで、従来の過剰または余剰スラリーコーティングによる問題点を解決することができる。フィルタのチャンネルに定量が注入されると、注入された定量のスラリーは、粘度に応じてチャンネルの全てのセル壁にコーティングされるか、或いはセル壁の内部にコーティングされ、さらに後続の空気注入によってセル壁の内部でスラリーコーティング形状が調節されることにより、背圧及び活性などの性能を改善することができる。また、空気圧力を適用してフィルタ内のコーティング長さを調節することができる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7