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特許7331136CCL21をコードする組換えラブドウイルス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】CCL21をコードする組換えラブドウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/19 20060101AFI20230815BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20230815BHJP
   A61K 35/766 20150101ALI20230815BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230815BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230815BHJP
   C07K 14/08 20060101ALI20230815BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20230815BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230815BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230815BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20230815BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230815BHJP
   C12R 1/93 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C12N15/19 ZNA
A61K31/437
A61K31/4709
A61K31/4725
A61K35/766
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
C07K14/08
C07K14/52
C12N5/10
C12N7/01
C12N15/40
C12N15/86
C12R1:93
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2021564905
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2020051701
(87)【国際公開番号】W WO2020152306
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】19153668.9
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】521322443
【氏名又は名称】ヴィラテラピューティクス・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VIRATHERAPEUTICS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】エルブ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】アールマン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ノルデン,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】パーク,ジョン・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルマン,グイド
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/156349(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/197525(WO,A1)
【文献】Galivo, F. et al.,Interference of CD40L-mediated tumor immunotherapy by oncolytic vesicular stomatitis virus,Human Gene Therapy,2010年,21,439-450
【文献】Li, Y. et al.,CCL21/IL21-armed oncolytic adenovirus enhances antitumor activity against TERT-positive tumor cells,Virus Research,2016年,220,172-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(i) 配列番号2に示すアミノ酸1‐79、1‐81、1‐88、1‐91又は1‐104を含むタンパク質、
(ii) 位置80~111において少なくとも1つのアミノ酸残基がさらに欠失又は変異している配列番号2の配列を含む、タンパク質
(iii) 配列番号2を含むタンパク質;又は
配列番号2と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(iv) 配列番号3を含むタンパク質;又は
配列番号3と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(v) 配列番号4を含むタンパク質;又は
配列番号4と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(vi) シグナルペプチド配列をさらに含む(i)~(v)のいずれかに記載のタンパク質、
(vii) 配列番号1を含むタンパク質;又は
配列番号1と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
及び
(viii)配列番号5を含むタンパク質;又は、
配列番号5と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質
を含む群から選択される少なくとも1つのCCL21タンパク質又はそのフラグメントをそのゲノム中にコードする組換え水疱性口内炎ウイルスあって、
水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換されている、及び/又は糖タンパク質Gが、LCMVの糖タンパク質GPにより置換されている、組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項2】
ゲノムが、(i)配列番号2に示すアミノ酸1‐79、1‐81、1‐88、1‐91又は1‐104を含む、タンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項3】
ゲノムが、(ii)位置80~111において少なくとも1つのアミノ酸残基がさらに欠失又は変異している配列番号2の配列を含む、タンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項4】
ゲノムが、(iii)配列番号2を含むタンパク質;又は配列番号2と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項5】
ゲノムが、(iv)配列番号3を含むタンパク質;又は配列番号3と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項6】
ゲノムが、(v)配列番号4を含むタンパク質;又は配列番号4と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項7】
ゲノムが、(vi)シグナルペプチド配列をさらに含む(i)~(v)のいずれかに記載のタンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項8】
ゲノムが、(vii)配列番号1を含むタンパク質;又は配列番号1と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項9】
ゲノムが、(viii)配列番号5を含むタンパク質;又は配列番号5と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質をコードする、請求項1に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項10】
少なくとも水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有するそのフラグメントをゲノム中にコードする組換え水疱性口内炎ウイルスであって、
(i)水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換されている、及び/又は
(ii)前記糖タンパク質Gが、LCMVの糖タンパク質GPにより置換されている、組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項11】
核タンパク質(N)が、配列番号7に記載のアミノ酸配列、又は配列番号7と少なくとも98%同一の機能的変異体を含む、請求項10に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項12】
リン酸化タンパク質(P)が、配列番号8に記載のアミノ酸配列、又は配列番号8と少なくとも98%同一の機能的変異体を含む、請求項10又は11のいずれかに記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項13】
ラージタンパク質(L)が、配列番号9に記載のアミノ酸配列、又は配列番号9と少なくとも98%同一の機能的変異体を含む、請求項10から12のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項14】
マトリックスタンパク質(M)が、配列番号10に記載のアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも98%同一の機能的変異体を含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルスであって:
-核タンパク質(N)が、配列番号7において示すアミノ酸配列、又は配列番号7と少なくとも98%同一である機能的変異体を含み、
-リン酸化タンパク質(P)が、配列番号8において示すアミノ酸配列、又は配列番号8と少なくとも98%同一である機能的変異体を含み、
-ラージタンパク質(L)が、配列番号9において示すアミノ酸配列、又は配列番号9と少なくとも98%同一である機能的変異体を含み、及び
-マトリックスタンパク質(M)が、配列番号10において示すアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも98%同一である機能的変異体を含む組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項16】
複製可能である、請求項10から15のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項17】
請求項10から16のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルスであって、
CCL21タンパク質又はそのフラグメントが、以下を含む群:
(i) 配列番号2に示すアミノ酸1‐79、1‐81、1‐88、1‐91又は1‐104を含むタンパク質、
(ii) 位置80~111において少なくとも1つのアミノ酸残基がさらに欠失又は変異している配列番号2の配列を含む、タンパク質
(iii) 配列番号2を含むタンパク質;又は
配列番号2と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(iv) 配列番号3を含むタンパク質;又は
配列番号3と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(v) 配列番号4を含むタンパク質;又は
配列番号4と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(vi) シグナルペプチド配列をさらに含む(i)~(v)のいずれかに記載のタンパク質、
(vii) 配列番号1を含むタンパク質;又は
配列番号1と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
及び
(viii)配列番号5を含むタンパク質;又は、
配列番号5と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質
より選択される、請求項10から16のいずれかに記載の組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項18】
水疱性口内炎ウイルスの核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はそのフラグメントをそのゲノム中にコードする組換え水疱性口内炎ウイルスであって、:
CCL21タンパク質又はそのフラグメントが、以下を含む群:
(i) 配列番号2に示すアミノ酸1‐79、1‐81、1‐88、1‐91又は1‐104を含むタンパク質、
(ii) 位置80~111において少なくとも1つのアミノ酸残基がさらに欠失又は変異している配列番号2の配列を含む、タンパク質
(iii) 配列番号2を含むタンパク質;又は
配列番号2と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(iv) 配列番号3を含むタンパク質;又は
配列番号3と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(v) 配列番号4を含むタンパク質;又は
配列番号4と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
(vi) シグナルペプチド配列をさらに含む(i)~(v)のいずれかに記載のタンパク質、
(vii) 配列番号1を含むタンパク質;又は
配列番号1と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質、
及び
(viii)配列番号5を含むタンパク質;又は、
配列番号5と少なくとも98%の同一性を有し、かつT細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有する、タンパク質より選択され、
水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換されており、及び/又は前記糖タンパク質Gが、LCMVの糖タンパク質GPにより置換されており、ならびに
-核タンパク質(N)が、配列番号7において示すアミノ酸配列、又は配列番号7と少なくとも98%同一である機能的変異体を含み、
-リン酸化タンパク質(P)が、配列番号8において示すアミノ酸配列、又は配列番号8と少なくとも98%同一である機能的変異体を含み、
-ラージタンパク質(L)が、配列番号9において示すアミノ酸配列、又は配列番号9と少なくとも98%同一である機能的変異体を含み、及び
-マトリックスタンパク質(M)が、配列番号10において示すアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも98%同一である機能的変異体を含む、
組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項19】
組成物が、請求項1から18のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルスを含むことを特徴とする医薬的組成物。
【請求項20】
薬物としての使用のための、請求項19に記載の医薬的組成物。
【請求項21】
癌、又は固形癌の処置における使用のための、請求項19に記載の医薬的組成物。
【請求項22】
固形癌が、神経膠芽細胞腫、非小細胞肺癌、生殖系腫瘍、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、内分泌腫瘍、胃腸腫瘍、膵臓腫瘍、肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、黒色腫、呼吸器系腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、頭頸部腫瘍、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、及び骨腫瘍からなる群から選択される、請求項21に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項23】
腫瘍内又は静脈内に投与される、請求項20から22のいずれか一項に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項24】
少なくとも1回腫瘍内に、その後に静脈内に投与される、請求項21から23のいずれか一項に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項25】
その後の静脈内投与が、最初の腫瘍内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、又は31日に与えられる、請求項24に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項26】
請求項1から18のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス、及びさらにPD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物を含む組成物。
【請求項27】
PD-1経路阻害剤が、PD-1又はPD-L1に対して向けられているアンタゴニスト抗体である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
SMAC模倣物が、化合物1から26:
【表1】





のいずれか1つ、又はこれらの化合物の1つの医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
PD-1経路阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4、及びPD1-5からなる群より選択されるアンタゴニストである、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
以下を含むキット:
a)請求項1~18いずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルス、又は請求項19に記載の医薬的組成物、及び
b)請求項29において定義されるPD-1経路阻害剤又は請求項28において定義されるSMAC模倣物。
【請求項31】
PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物と組み合わせて投与される、請求項20から22のいずれか一項に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項32】
PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物と同時に、連続的に、又は交互に投与される、請求項31に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項33】
SMAC模倣物が、請求項28に記載の化合物1から26のいずれか1つ又はこれらの化合物の1つの医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される、請求項31又は32に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項34】
PD-1経路阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4、及びPD1-5からなる群より選択される、請求項31又は32に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項35】
PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物とは異なる投与経路を介して投与される、31又は32に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項36】
医薬的組成物が、少なくとも一回腫瘍内に投与され、PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物が静脈内に投与される、請求項31~33のいずれか一項に記載の使用のための医薬的組成物。
【請求項37】
請求項1~18のいずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルスに感染したウイルス産生細胞であって、前記組換え水疱性口内炎ウイルスを産生することを特徴とするウイルス産生細胞。
【請求項38】
細胞がVero細胞、HEK細胞、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞であることを特徴とする、請求項37に記載のウイルス産生細胞。
【請求項39】
そのRNAゲノム中に少なくとも1つのCCL21タンパク質又はそのフラグメントをコードする組換え水疱性口内炎ウイルスであって、前記CCL21タンパク質又はそのフラグメントが、T細胞若しくは樹状細胞の誘引機能又は樹状細胞の活性化機能を有し、そのRNAゲノムが、配列番号24と同一、あるいは少なくとも90%同一のコード配列を含む、又はそれからなる組換え水疱性口内炎ウイルス。
【請求項40】
癌、又は固形癌の処置のための医薬の製造における、請求項1~18いずれか一項に記載の組換え水疱性口内炎ウイルスの使用。
【請求項41】
固形癌が、神経膠芽細胞腫、非小細胞肺癌、生殖系腫瘍、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、内分泌腫瘍、胃腸腫瘍、膵臓腫瘍、肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、黒色腫、呼吸器系腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、頭頸部腫瘍、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、及び骨腫瘍からなる群から選択される、請求項40に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍溶解性ウイルスの分野に、特に、CCL21タンパク質をそのゲノム中にコードする組換えラブドウイルスに関する。本発明はさらに、癌の処置における組換えラブドウイルスの使用に、及びそのようなウイルスを産生するための方法に関する。
【0002】
発明の背景
腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞内で選択的に複製し、それを死滅させ、腫瘍内に広がることができる新興クラスの生物製剤である。腫瘍溶解性ウイルスをさらに改善し、それらの治療的能力を増加させるための努力は、腫瘍処置におけるそれらの有効性を改善するために、それらのゲノム中に腫瘍抗原又は免疫調節導入遺伝子をコードする、いわゆる武装ウイルスの開発に導いてきた。
【0003】
多くの場合では、腫瘍においてT細胞の不足があるため、「免疫砂漠」として公知になっているもの・・・免疫系のT細胞が腫瘍に侵入し、無制御に成長する細胞を死滅させることができない、又はしない腫瘍微小環境が存在する。免疫監視を回避するために、腫瘍は、骨髄由来のサプレッサー細胞を動員する、又はTGFβ(細胞外マトリックス遺伝子の発現を誘導する、ならびに腫瘍中へのT細胞浸潤を促進するために要求されるケモカイン及びサイトカインの発現を抑制するという二重の役割を果たす)を含む因子を分泌することにより免疫抑制的な微小環境を作ると仮定されてきた(Pickup M, Novitskiy S, Moses HL. The roles of TGFbeta in the tumour microenvironment. Nat Rev Cancer 2013;13:788-99)。さらに、試験によって、免疫抑制的な微小環境に対応する遺伝子の高発現を示す腫瘍は、多くの癌型(卵巣癌及び結腸直腸癌を含む)にわたる不良な転帰に関連付けられることが見出されている(Calon A, Lonardo E, Berenguer-Llergo A, Espinet E, Hernando-Momblona X, Iglesias M, et al. Stromal gene expression defines poor-prognosis subtypes in colorectal cancer. Nat Genet 2015;47:320-9;Ryner L, Guan Y, Firestein R, Xiao Y, Choi Y, Rabe C, et al. Upregulation of periostin and reactive stroma is associated with primary chemoresistance and predicts clinical outcomes in epithelial ovarian cancer. Clin Cancer Res 2015;21:2941-51;Tothill RW, Tinker AV, George J, Brown R, Fox SB, Lade S, et al. Novel molecular subtypes of serous and endometrioid ovarian cancer linked to clinical outcome. Clin Cancer Res 2008;14:5198-208.)
【0004】
1つの最近のアプローチによって、そのゲノム中にIFN-βタンパク質をカーゴとしてコードする腫瘍溶解性ウイルスが予見されている。さらなるアプローチでは、腫瘍抗原MAGE-A3の発現が熟慮された。適切で効果的なカーゴを同定することに加えて、ウイルス骨格からの追加のカーゴの発現は、抗腫瘍効果だけでなく、しかし、また抗ウイルス免疫も増強するリスクを常に持っている。カーゴは、治療的カーゴの発現により得られる利益が、腫瘍溶解能の喪失により打ち消される程度までウイルスの腫瘍溶解能を制限しないことに注意しなければならない。このように、当技術分野では、腫瘍の効果的な処置において使用することができる、さらに改善された武装腫瘍溶解性ウイルスについての必要性がある。さらに、当技術分野では、免疫抑制的な腫瘍微小環境中へのT細胞及び/又は樹状細胞の浸潤を選択的に改善する必要性がある。
【0005】
発明の概要
本発明は、そのゲノム中にCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードする組換えラブドウイルス(例えば水疱性口内炎ウイルスなど)を提供することにより、上記の必要性に対処する。
【0006】
特定の態様に関する任意の実施形態は、その特定の態様に対するいくつかの実施形態を含む複数の層及び組み合わせにおいてさえ、その特定の態様に関する別の実施形態とも組み合わせてもよいことを理解すべきである。
【0007】
第1の態様では、本発明は、そのゲノム中に少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体をコードする組換えラブドウイルスに関する。
【0008】
第1の態様に関する一実施形態では、CCL21タンパク質又はその機能的変異体は、(i)プラスミン処理されたCCL21タンパク質、(ii)c末端が切断されたCCL21タンパク質、(iii)配列番号2を含む、又は配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、(iv)配列番号3を含む、又は配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、(v)配列番号4を含む、又は配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、(vi)シグナルペプチド配列をさらに含む、(i)~(v)のいずれかに従ったタンパク質、(vii)配列番号1を含む、又は配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、あるいは(viii)配列番号5を含む、又は配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質を含む群より選択する。
【0009】
第1の態様に関する一実施形態では、組換えラブドウイルスはベジクロウイルスである。
【0010】
第1の態様に関する一実施形態では、ベジクロウイルスは、水疱性口内炎アラゴアスウイルス(VSAV)、カラハスウイルス(CJSV)、チャンディプラウイルス(CHPV)、球菌ウイルス(COCV)、水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)、イスファハンウイルス(ISFV)、マラバウイルス(MARAV)、水疱性口内炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)、又はピリ(piry)ウイルス(PIRYV)、好ましくは水疱性口内炎インディアナウイルス(VSIV)又は好ましくは水疱性口内炎ニュージャージーウイルス(VSNJV)を含む群より選択する。
【0011】
第1の態様に関する一実施形態では、組換えラブドウイルスは複製能力がある。
【0012】
第1の態様に関する一実施形態では、CCL21タンパク質又はその機能的変異体はヒトCCL21である。
【0013】
第1の態様に関する一実施形態では、組換えラブドウイルスは、糖タンパク質Gをコードする機能的遺伝子を欠く、及び/又は機能的糖タンパク質Gを欠く;あるいは、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、別のウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、別のウイルスの糖タンパク質GPにより置換される;あるいは、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、アレナウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、アレナウイルスの糖タンパク質GPにより置換される。さらに好ましい実施形態では、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、Dandenongウイルス又はMopeiaウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、Dandenongウイルス又はMopeiaウイルスの糖タンパク質GPにより置換される。さらにより好ましくは、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換される。
【0014】
第1の態様に関する好ましい実施形態では、本発明は、そのゲノム中に、(i)プラスミン処理されたCCL21タンパク質、(ii)c末端が切断されたCCL21タンパク質、(iii)配列番号2を含む、又は配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、(iv)配列番号3を含む、又は配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、(v)配列番号4を含む、又は配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、(vi)シグナルペプチド配列をさらに含む、(i)~(v)のいずれかに従ったタンパク質、(vii)配列番号1を含む、又は配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質、あるいは(viii)配列番号5を含む、又は配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質を含む群より選択される、少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードする組換え水疱性口内炎ウイルスを提供し、それにおいて、組換え水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換される。
【0015】
第2の態様では、本発明は、そのゲノム中に、少なくとも水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードする組換え水疱性口内炎ウイルスに関する。
【0016】
第2の態様に関する一実施形態では、核タンパク質(N)は、配列番号7において示すアミノ酸配列、又は配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含む。
【0017】
第2の態様に関する一実施形態では、リン酸化タンパク質(P)は、配列番号8において示すアミノ酸配列、又は配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含む。
【0018】
第2の態様に関する一実施形態では、ラージタンパク質(L)は、配列番号9において示すアミノ酸配列、又は配列番号9と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含む。
【0019】
第2の態様に関する一実施形態では、マトリックスタンパク質(M)は、配列番号10において示すアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含む。
【0020】
第2の態様に関する好ましい実施形態では、核タンパク質(N)は、配列番号7において示すアミノ酸配列、又は配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含み、リン酸化タンパク質(P)は、配列番号8において示すアミノ酸配列、又は配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含み、ラージタンパク質(L)は、配列番号9において示すアミノ酸配列、又は配列番号9と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含み、及びマトリックスタンパク質(M)は、配列番号10において示すアミノ酸配列、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一である機能的変異体を含む。
【0021】
第2の態様に関する一実施形態では、組換え水疱性口内炎ウイルスは複製能力がある。
【0022】
第2の態様に関する一実施形態では、組換え水疱性口内炎ウイルスは、糖タンパク質Gをコードする機能的遺伝子を欠く、及び/又は機能的糖タンパク質Gを欠く;あるいは、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、別のウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、別のウイルスの糖タンパク質GPにより置換される;あるいは、糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換される。
【0023】
第2の態様に関する一実施形態では、CCL21タンパク質又はその機能的変異体は、(i)プラスミン処理されたCCL21タンパク質、(ii)c末端が切断されたCCL21タンパク質、(iii)配列番号2を含む、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、(iv)配列番号3を含む、又は配列番号3と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、(v)配列番号4を含む、又は配列番号4と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、(vi)シグナルペプチド配列をさらに含む、(i)~(v)のいずれかに従ったタンパク質、(vii)配列番号1を含む、又は配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、あるいは配列番号5を含む、又は配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質を含む群より選択する。
【0024】
第2の態様に関する好ましい実施形態では、本発明は、そのゲノム中に、水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードする組換え水疱性口内炎ウイルスを提供し、それにおいてCCL21タンパク質又はその機能的変異体は、(i)プラスミン処理されたCCL21タンパク質、(ii)c末端が切断されたCCL21タンパク質、(iii)配列番号2を含む、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、(iv)配列番号3を含む、又は配列番号3と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、(v)配列番号4を含む、又は配列番号4と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、(vi)シグナルペプチド配列をさらに含む、(i)~(v)のいずれかに従ったタンパク質、(vii)配列番号1を含む、又は配列番号1と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質、あるいは(viii)配列番号5を含む、又は配列番号5と少なくとも80%の同一性を有するタンパク質を含む群より選択し、それにおいて、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換される、ならびに、それにおいて核タンパク質(N)は、配列番号7において示すアミノ酸、又は配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含む、リン酸化タンパク質(P)は、配列番号8において示すアミノ酸、又は配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含む、ラージタンパク質(L)は、配列番号9において示すアミノ酸、又は配列番号9と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含む、及びマトリックスタンパク質(M)は、配列番号10において示すアミノ酸、又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含む。
【0025】
第3の態様では、本発明は、組成物が、第1の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換えラブドウイルス、あるいは第2の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換え水疱性口内炎ウイルスを含むことを特徴とする医薬的組成物を提供する。
【0026】
第4の態様では、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換えラブドウイルス、あるいは第2の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換え水疱性口内炎ウイルス、あるいは薬物としての使用のための第3の態様又はその実施形態のいずれかに従った医薬的組成物を提供する。
【0027】
第4の態様に関する一実施形態では、本発明は、組換えラブドウイルス、組換え水疱性口内炎ウイルス、又は癌、好ましくは固形癌の処置における使用のための医薬的組成物を提供する。好ましい実施形態では、固形癌は、生殖系腫瘍、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、精巣腫瘍、内分泌腫瘍、胃腸腫瘍、肝臓腫瘍、腎臓腫瘍、結腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、皮膚腫瘍、黒色腫、呼吸器系腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、頭頸部腫瘍、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、及び骨腫瘍を含むリストより選択する。
【0028】
第4の態様に関する一実施形態では、組換えラブドウイルス、組換え水疱性口内炎ウイルス、又は医薬的組成物は、腫瘍内又は静脈内に投与すべきである。別の関連する実施形態では、組換えラブドウイルス、組換え水疱性口内炎ウイルス又は医薬的組成物は、少なくとも1回腫瘍内に、及びその後、静脈内に投与すべきである。さらに関連する実施形態では、組換えラブドウイルス、組換え水疱性口内炎ウイルス、又は医薬的組成物のその後の静脈内投与は、最初の腫瘍内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、又は31日に与える。
【0029】
第5の態様では、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換えラブドウイルス、あるいは第2の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換え水疱性口内炎ウイルス、及びさらには阻害剤を含む組成物を提供し、それにおいて阻害剤はPD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物である。
【0030】
第5の態様に関する一実施形態では、PD-1経路阻害剤はアンタゴニスト抗体であり、それはPD-1又はPD-L1に対して向けられる。さらに関連する実施形態では、SMAC模倣物は、表2からの化合物1から26のいずれか、又はこれらの化合物の1つの医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される。別の関連する実施形態では、PD-1経路阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4、及びPD1-5からなる群より選択されるアンタゴニストである(表1中に示すとおり)。
【0031】
第6の態様では、本発明は、以下を含む部品のキットを提供する:組換えラブドウイルス、組換え水疱性口内炎ウイルス、又は第1から第3の態様のいずれか又はそれらの実施形態のいずれかにおいて定義するような医薬的組成物、及び第5の態様に関連する実施形態のいずれかにおいて定義するようなPD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物。
【0032】
第7の態様では、本発明は、以下を含む併用処置を提供する:a)第1の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換えラブドウイルス、あるいは第2の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換え水疱性口内炎ウイルス、あるいは第3の態様又はその実施形態のいずれかに従った医薬的組成物、及びb)PD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物。第7の態様に関連する一実施形態では、a)及びb)は、同時に、連続的に、又は交互に投与してもよい。関連する実施形態では、a)及びb)は、異なる投与経路を介して投与する。さらに関連する実施形態では、a)は腫瘍内に投与し、b)は静脈内に投与する。
【0033】
第7の態様に関する一実施形態では、PD-1経路阻害剤はアンタゴニスト抗体であり、それはPD-1又はPD-L1に対して向けられる。関連する実施形態では、PD-1経路阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、PDR-001、PD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4、及びPD1-5からなる群より選択する(表1を参照のこと)。さらに関連する実施形態では、SMAC模倣物は、表2に従った化合物1から26のいずれか1つ、又はこれらの化合物の1つの医薬的に許容可能な塩からなる群より選択する。
【0034】
第8の態様では、本発明は、細胞が第1の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換えラブドウイルス、あるいは第2の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換え水疱性口内炎ウイルスを産生することを特徴とするウイルス産生細胞を提供する。
【0035】
第8の態様に関する一実施形態では、ウイルス産生細胞は、Vero細胞、HEK細胞、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞である。
【0036】
第9の態様では、本発明は、細胞培養において組換えラブドウイルスを産生する方法を提供する:
(i)組換えラブドウイルス、好ましくは水疱性口内炎ウイルスを用いて宿主細胞を感染させること、
(ii)組換えラブドウイルスの複製を可能にする条件下で宿主細胞を培養すること、
(iii)細胞培養から組換えラブドウイルスを回収すること、
(iv)場合により、好ましくはベンゾナーゼを用いたウイルス回収物の酵素処理、
(v)陽イオン交換モノリス膜吸着剤又は樹脂上にロードし、それに続く溶出により、ラブドウイルス回収物を捕捉すること、
(vi)工程(v)の溶出液をサイズ排除、マルチモーダルサイズ排除/イオン交換又はタンジェンシャルフローろ過に供することによりラブドウイルスを研磨する、
(vii)限外ろ過/透析ろ過による研磨ラブドウイルスの緩衝液交換、
(viii)ラブドウイルスの滅菌ろ過。
【0037】
第9の態様に関する一実施形態では、宿主細胞はHEK293細胞である。
【0038】
第9の態様に関する一実施形態では、宿主細胞は懸濁液中で培養する。
【0039】
第9の態様に関する一実施形態では、組換えラブドウイルスは、医薬的組成物中で製剤化する。好ましい実施形態では、第1の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換えラブドウイルス、あるいは第2の態様又はその実施形態のいずれかに従った組換え水疱性口内炎ウイルスは、医薬的組成物中で製剤化する。
【0040】
さらなる態様では、組換えラブドウイルスは、そのRNAゲノム中で、少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードし、それにおいて組換えラブドウイルスのRNAゲノムは、配列番号24と同一の又は少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一のコード配列を含む、又はそれからなる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】示した遺伝子についての対照又はVSV-GP処置マウスからのLLC1-IFNARKO腫瘍(全RNA)の発現分析。
図2】CT26.CL25-IFNARKO担癌マウスの単一腫瘍成長曲線。(A)対照マウス(模擬処置)、(B)抗PD-1で処置されたマウス、(C)VSV-GP i.v.で処置されたマウス、又は(D)VSV-GPと抗PD-1の組み合わせで処置されたマウス。
図3】VSV-GP(図2Cを参照のこと)又はVSV-GPと抗PD1の組み合わせ(図2Dを参照のこと)で前処置された治癒マウスの腫瘍(再)攻撃分析。(A)CT26.CL25-IFNARKO腫瘍細胞を伴う無感作マウスを対照として使用した。腫瘍(再)攻撃のために、CT26Cl25 IFNAR-/-細胞を、(B)図2Cに示す実験からのVSV-GP処置長期腫瘍フリーマウス(治癒)、又は(C)図2Dに示す実験からのVSV-GPと抗PD-1の組み合わせで処置された長期腫瘍フリーマウス(治癒)中に注射した。
図4】示したケモカインについての、対照又はVSV-GP処置マウスからのLLC1-IFNARKO腫瘍(全RNA)の発現分析。
図5】(A)VSV-GPゲノム内のCCL21(導入遺伝子)挿入部位を例証する図。(B)ウイルスレスキューを例証する図。
図6】(A)VSV-GP-muCCL21(全長マウスCCL21をコードするVSV-GP)で感染させたHEK293細胞の上清中のマウスCCL21の分析。(B)Transwellセットアップ及び、組換えマウスCCL21又はVSV-GPもしくはVSV-GP-muCCL21感染HEK293細胞からの上清を使用したマウスT細胞遊走の機能分析。
図7】CT26.CL25-IFNARKO担癌マウスの単一腫瘍成長分析。担癌マウスを、(A)VSV-GP、(B)SMACm(SMAC模倣物)、又は(C)SMACm(SMAC模倣物)との組み合わせにおけるVSV-GPで処置した。濃い黒色線は未処置の対照マウスの腫瘍容積を示すのに対し、薄い灰色線は(A)VSV-GP、(B)SMACm、又は(C)VSV-GP+SMACmのいずれかで処置したマウスの腫瘍容積を示す。
図8】CT26.CL25-IFNARKO担癌マウスの単一腫瘍成長分析。担癌マウスは、(A)VSV-GP-CCL21、(B)SMACm(SMAC模倣物)、又は(C)SMACm(SMAC模倣物)との組み合わせにおけるVSV-GP-CCL21で処置した。濃い黒色線は未処置の対照マウスの腫瘍容積を示すのに対し、薄い灰色線は(A)VSV-GP-CCL21、(B)SMACm、又は(C)VSV-GP-CCL21 + SMACmのいずれかで処置したマウスの腫瘍容積を示す。
図9図7A~C及び図8A~Cに描写する実験の生存分析。
図10】CD3イプシロン、CXCL10、及びVSV-GP-muCCL21によりコードされるマウスCCL21のコドン最適化配列についての対照、VSV-GP、又はVSV-GPmuCCL21処置マウスからのLLC1-IFNARKO腫瘍(全RNA)の発現分析。
図11】VSV-G DsRed(神経毒性野生型VSV)、VSV-GP、VSV-GP-muCCL21、又はPBSの脳内注射により誘導される神経毒性の評価。パネル(A)は、それぞれの注射後の経時的なマウスにおける体重増加/減少の割合を示す。パネル(B)は、それぞれの注射後の経時的なマウスの生存率を示す。
図12】(A)VSV-GP-huCCL21(全長ヒトCCL21をコードするVSV-GP)に感染させたHEK293細胞の上清中のヒトCCL21の分析。(B)Transwellセットアップ及び組換えヒトCCL21、又はVSV-GPもしくはVSV-GP-huCCL21感染HEK293細胞からの上清を使用したヒトT細胞遊走の機能分析。
図13】種の交差反応性をテストするための、Transwellセットアップ及び組換えマウスCCL21対ヒトCCL21又はラットCCL21対ヒトCCL21をそれぞれ使用したマウス(A、左パネル)及びラット(B、右パネル)のT細胞遊走の機能分析。
図14】CT26.CL25-IFNARKO担癌対照マウス又はVSV-GPもしくはVSV-GP-huCCL21で処置したマウスの単一腫瘍成長分析。
図15】短い拡散性n末端フラグメントを生成するためのプラスミンによるCCL21プロセシングを例証する漫画。
図16】Transwellセットアップ及び組換えヒトCCL21(rec. CCL21)又はCCL21の示したc末端切断バージョンを発現するプラスミドトランスフェクトHEK293細胞からの上清を使用したヒトT細胞遊走の機能分析。
図17】Transwellセットアップ及び組換えヒトCCL21、又はVSV-GPもしくはVSV-GP-huCCL21あるいはVSV-GP-huCCL21(1-79)感染HEK293細胞からの上清を使用したヒト単球由来樹状細胞(moDC)遊走の機能分析。
図18】CCL21の示した、c末端切断もしくは全長バージョンを発現するプラスミドトランスフェクトHEK293細胞からの上清、又はVSV-GPもしくはVSV-GP-huCCL21(1-79)もしくはVSV-GP-huCCL21感染HEK293細胞からの上清中のCCL21のウエスタンブロット(WB)分析。
図19】示した細胞の上清中のVSV-GP(GP)、VSV-GP-huCCL21(21)、又はVSV-GP-huCCL21(1-79)(21k)のウイルス力価を、ウイルス感染後の示した時間点で測定してウイルス複製能力を決定した。異なるパネルは、左から右に(A)Vero細胞、(B)BHK21細胞、及び(C)HEK293細胞を示す。各々のパネルで、VSV-GP(GP)、VSV-GP-huCCL21(21)、又はVSV-GP-huCCL21(1-79)(21k)の力価を0時間、24時間、及び48時間で測定した。
図20】CT26.CL25-IFNARKO担癌対照マウス又はVSV-GP-huCCL21もしくはVSV-GP-huCCL21(1-79)で処置されたマウスにおける累積腫瘍成長。
図21図20からのマウスの30日生存。
図22】CT26.CL25-IFNARKO担癌対照マウス又はVSV-GP-huCCL21もしくはVSV-GP-huCCL21(1-79)で処置されたマウスにおけるT細胞浸潤(生存可能な非壊死性腫瘍セグメント)のIHCベースの定量化。
図23】ウイルス感染腫瘍の免疫浸潤に対するVSV-GP、VSV-GP-CCL21(全長CCL21)、及びVSV-GP-CCL21(1-79)(c末端切断CCL21)の影響を例証する漫画。
図24】CT26.CL25担癌対照マウス又はVSV-GPもしくはVSV-GP-muCCL21で処置したマウスにおける樹状細胞(CD11c陽性)浸潤(活性なウイルス複製を伴う腫瘍領域=壊死縁)のIHCベースの定量化。
【0042】
本発明の詳細な記載
以下の詳細な記載では、多数の特定の詳細を示して、本発明の完全な理解を提供する。しかし、主題の技術がこれらの特定の詳細の一部を伴わずに実行されうることは、当業者には明らかであろう。他の例では、周知の構造及び技術は、本発明を不明瞭にしないように詳細には示していない。見出しは、単に読む際に支援する便宜のために含まれており、本発明を特定の態様又は実施形態に限定すると理解すべきではない。
【0043】
ラブドウイルス
【0044】
ラブドウイルスの科は、約10~16kbのマイナス鎖一本鎖RNAゲノムを伴う18属及び134種を含む(Walke et al., ICTV Virus Taxonomy Profile: Rhabdoviridae, Journal of General Virology, 99:447-448(2018))。
【0045】
ラブドウイルスの科のメンバーの特徴となる特色は、以下の1つ又は複数を含む:マトリックス層及び脂質エンベロープにより囲まれたらせん状ヌクレオカプシドで構成される、長さ100~430nm及び直径45~100nmの弾丸形又は桿状粒子であって、それにおいて一部のラブドウイルスはエンベロープのない糸状ウイルスを有する。10.8~16.1kbのマイナス鎖の一本鎖RNAであって、大半がセグメント化されていない。構造タンパク質である核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、及び糖タンパク質(G)をコードする少なくとも5つの遺伝子をコードするゲノム。
【0046】
本明細書中で使用するように、ラブドウイルスは、アルメンドラウイルス、キュリオウイルス、サイトラブドウイルス、ジコルハウイルス、エフェメロウイルス、ハパウイルス、レダンテウイルス、リッサウイルス、ノビルハブドウイルス、ヌクレオラブドウイルス、ペルハブドウイルス、シグマウイルス、スプリビウイルス、スリプウイルス、チブロウイルス、ツパウイルス、バリコサウイルス、又はベシキュロウイルスの属に属しうる。
【0047】
本明細書中に言及する属内で、ラブドウイルスは、列挙する種のいずれかに属することができる。アルメンドラウイルスの属は、アルボレタム・アルメンドラウイルス、バルサ・アルメンドラウイルス、クート・ベイ・アルメンドラウイルス、プエルト・アルメンドラス・アルメンドラウイルス、リオ・チコ・アルメンドラウイルスを含む;キュリオウイルスの属は、キュリオノポリス・キュリオウイルス、イリリ・キュリオウイルス、イタカイウナス・キュリオウイルス、ロシャンボー・キュリオウイルスを含む;サイトラブドウイルスの属は、アルファルファ・ドワーフ・サイトラブドウイルス、オオムギ黄色条斑モザイク・サイトラブドウイルス、ブロッコリー壊死性黄色サイトラブドウイルス、コロカシア・ボボーン病関連サイトラブドウイルス、フェスツカ葉条斑サイトラブドウイルス、フェスツカ葉条斑サイトラブドウイルス、レタス壊死性黄色サイトラブドウイルス、レタス黄色モットル・サイトラブドウイルス、ノーザン・シリアル・モザイク・サイトラブドウイルス、ソンカス・サイトラブドウイルス1、ストロベリー・クリンクル・サイトラブドウイルス、小麦アメリカン条斑モザイク・サイトラブドウイルスを含む;ジコルハウイルスの属は、コーヒー・リングスポット・ジコルハウイルス、オーキッド・フレック・ジコルハウイルスを含む;エフェメロウイルスの属は、アデレード・リバー・エフェメロウイルス、ベリマ・エフェメロウイルス、ウシ熱エフェメロウイルス、キンバリー・エフェメロウイルス、クールピニャ・エフェメロウイルス、コトンカン・エフェメロウイルス、オボディアン・エフェメロウイルス、ヤタ・エフェメロウイルスを含む;ハパウイルスの属は、フランダース・ハパウイルス、グレイ・ロッジ・ハパウイルス、ハート・パーク・ハパウイルス、ジョインジャカカ・ハパウイルス、カメセ・ハパウイルス、ラ・ジョヤ・ハパウイルス、ランドジア・ハパウイルス、マニトバ・ハパウイルス、マルコ・ハパウイルス、モスケイロ・ハパウイルス、モスリル・ハパウイルス、ンゲインガン・ハパウイルス、オード・リバー・ハパウイルス、パリー・クリーク・ハパウイルス、ウォンガベル・ハパウイルスを含む;レダンテウイルスの属は、バルル・レダンテウイルス、フィキリニ・レダンテウイルス、フクオカ・レダンテウイルス、カニャワラ・レダンテウイルス、ケーン・キャニオン・レダンテウイルス、ケウラリバ・レダンテウイルス、コレンテ・レダンテウイルス、クマシ・レダンテウイルス、レ・ダンテック・レダンテウイルス、マウント・エルゴン・バット・レダンテウイルス、ニシムロ・レダンテウイルス、ンコルビソン・レダンテウイルス、オイタ・レダンテウイルス、ウーハン・レダンテウイルス、ヨンジア・レダンテウイルスを含む;リッサウイルスの属は、アラバン・リッサウイルス、オーストラリアン・コウモリ・リッサウイルス、ボケロー・コウモリ・リッサウイルス、デュベンハージ・リッサウイルス、ヨーロピアン・コウモリ1リッサウイルス、ヨーロピアン・コウモリ2リッサウイルス、ガンノルワ・コウモリ・リッサウイルス、イコマ・リッサウイルス、イルクート・リッサウイルス、ホジェンド・リッサウイルス、ラゴス・コウモリ・リッサウイルス、ルレイダ・コウモリ・リッサウイルス、モコラ・リッサウイルス、狂犬病リッサウイルス、シモニ・コウモリ・リッサウイルス、西コーカサス・コウモリ・リッサウイルスを含む;ノビルハブドウイルスの属は、ヒラメ・ノビルハブドウイルス、ピシネ・ノビルハブドウイルス、サルモニド・ノビルハブドウイルス、スネークヘッド・ノビルハブドウイルスを含む;ヌクレオラブドウイルスの属は、チョウセンアサガオ黄色葉脈ヌクレオラブドウイルス、ナス斑点矮性ヌクレオラブドウイルス、トウモロコシ・ファイン・ストリーク・ヌクレオラブドウイルス、トウモロコシ・イラン・モザイク・ヌクレオラブドウイルス、トウモロコシ・モザイク・ヌクレオラブドウイルス、ジャガイモ黄色矮性ヌクレオラブドウイルス、ライス・イエロー・スタント・ヌクレオラブドウイルス、ソンクス・イエロー・ネット・ヌクレオラブドウイルス、ノゲシ黄色葉脈ヌクレオラブドウイルス、タロ葉脈クロロシス・ヌクレオラブドウイルスを含む;ペルハブドウイルスの属は、アンギリッド・ペルハブドウイルス、パーチ・ペルハブドウイルス、シー・トラウト・ペルハブドウイルスを含む;シグマウイルスの属は、ショウジョウバエ・アフィニス・シグマウイルス、ショウジョウバエ・アナナサエ・シグマウイルス、ショウジョウバエ・イミグランス・シグマウイルス、キイロショウジョウバエ・シグマウイルス、ショウジョウバエ・オブスキュラ・シグマウイルス、ショウジョウバエ・トリスチス・シグマウイルス、ムスシナ・スタビュランス・シグマウイルスを含む;スプリビウイルスの属は、コイ・スプリビウイルス、パイク・フライ・スプリビウイルスを含む;スリプウイルスの属は、アルムピワール・スリプウイルス、チャコ・スリプウイルス、ニアカ・ スリプウイルス、セナ・マデュレイラ・スリプウイルス、スリプール・スリプウイルスを含む;チブロウイルスの属は、バスーコンゴ・チブロウイルス、ベアトリス・ヒル・チブロウイルス、コースタール・プレインズ・チブロウイルス、エクポマ1チブロウイルス、エクポマ 2チブロウイルス、スウィートウォーター・ブランチ・チブロウイルス、チブロガルガン・チブロウイルスを含む;トゥパウイルスの属は、ダーラム・トゥパウイルス、クラマス・トゥパウイルス、トゥパイア・トゥパウイルスを含む;バリコサウイルスの属は、レタス大葉脈関連バリコサウイルスを含む;ベシクロウイルスの属は、アラゴアス・ベシクロウイルス、アメリカン・コウモリ・ベシクロウイルス、カラハス・ベシクロウイルス、チャンディプラ・ベシクロウイルス、コカル・ベシクロウイルス、インディアナ・ベシクロウイルス、イスファハン・ベシクロウイルス、ジュロナ・ベシクロウイルス 、マルパイス・スプリング・ベシクロウイルス、マラバ・ベシクロウイルス、モレトン・ベシクロウイルス、ニュージャージー・ベシクロウイルス、ペリネット・ベシクロウイルス、ピリー・ベシクロウイルス、ラジ・ベシクロウイルス、ユグ・ボグダノバック・ベシクロウイルス、又はムッサ・ウイルスを含む。
【0048】
好ましくは、本発明の組換えラブドウイルスは、腫瘍溶解性ラブドウイルスである。この点で、腫瘍溶解性は当技術分野において公知のその通常の意味を有し、正常細胞ではなく(有意な範囲で)、癌細胞に感染し、溶解(分解)するラブドウイルスの能力を指す。好ましくは、腫瘍溶解性ラブドウイルスは、癌細胞内で複製することが可能である。腫瘍溶解活性は、当業者に公知の異なるアッセイ系においてテストしてもよい(例示的なインビトロアッセイが、Muik et al., Cancer Res., 74(13), 3567-78, 2014により記載されている)。腫瘍溶解性ラブドウイルスは、特定の種類の癌細胞だけに感染し、溶解しうることを理解すべきである。また、腫瘍溶解効果は、癌細胞の種類に依存して変動しうる。
【0049】
好ましい実施形態では、ラブドウイルスは、ベジクロウイルス属に属する。ベジクロウイルス種は、ゲノムの系統発生分析と連関された血清学的手段により主に定義されている。生物学的特性(例えば宿主範囲及び伝播の機構など)も、属内のウイルス種を区別するために使用される。そのようなものとして、ベジクロウイルス属は、完全なL配列から推測される最尤ツリーにより十分に支持される別個の単系統群を形成する。
【0050】
ベジクロウイルス属内の異なる種に割り当てられたウイルスは、以下の特徴の1つ又は複数を有しうる:A)Lにおける20%の最小アミノ酸配列相違;B)Nにおける10%の最小アミノ酸配列相違;C)Gにおける15%の最小アミノ酸配列相違;D)血清学的検査において区別することができる;及びE)宿主及び/又は媒介節足動物における違いにより証明されるように、異なる生態学的ニッチを占める。
【0051】
好ましいのは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、特にVSV-GP(LCMVのGPとの組換え体)である。VSV-GPの有利な特性は、以下の1つ又は複数を含む:非常に強力で高速なキラー(<8時間);腫瘍溶解性ウイルス;可能な全身適用;低下したニューロトロピズム/ニューロトックス;それによって溶解的に複製し、免疫原性細胞死を誘導する;インターフェロン(IFN)応答のため、健常なヒト細胞中では複製しない;自然免疫の強力な活性化;免疫調節カーゴ及び抗原のための約3kbのスペース;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)からのアレナウイルス糖タンパク質との組換え体;野生型VSV(VSV-G)と比較し、低下した神経毒性ならびに中和抗体応答及び補体破壊へのより少ない感受性という点での有利な安全特色;抗ウイルス性の自然免疫応答(例、I型IFNシグナル伝達)を開始し、応答する能力を失った腫瘍細胞において特異的に複製する;「健常な細胞」における不全型複製は、そのように、正常組織から迅速に除外される;腫瘍細胞におけるウイルス複製は、免疫原性細胞死の誘導、腫瘍関連抗原の放出、局所炎症、及び抗腫瘍免疫の誘導に導く。
【0052】
本発明は、少なくとも水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をそのゲノム中にコードする組換え水疱性口内炎ウイルスによりさらに具体化する。
【0053】
好ましい実施形態では、組換え水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中に、少なくとも配列番号7において示すアミノ酸配列又は配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含む水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、配列番号8において示すアミノ酸配列又は配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含むリン酸化タンパク質(P)、配列番号9において示すアミノ酸配列又は配列番号9と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含むラージタンパク質(L)、及び配列番号10において示すアミノ酸配列又は配列番号10と少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%同一の機能的変異体を含むマトリックスタンパク質(M)をコードする。
【0054】
水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、又は糖タンパク質(G)配列への修飾は、それらのタンパク質の基本的な機能を失うことなく作製することができることが当業者により理解される。本明細書中で使用されるそのような機能的変異体は、それらの基本的な機能又は活性の全て又は一部を保持する。タンパク質Lは、例えば、ポリメラーゼであり、ウイルスの転写及び複製の間に不可欠な機能を有する。その機能的変異体は、この能力の少なくとも一部を保持しなければならない。基本的な機能性又は活性の保持についての良い徴候は、腫瘍細胞を複製及び感染することが依然として可能であるウイルス(これらの機能的変異体を含む)の成功裏の産生である。ウイルスの産生及び腫瘍細胞における感染及び複製のテストは、当業者に公知の異なるアッセイ系においてテストしてもよい(例示的なインビトロアッセイは、Muik et al., Cancer Res., 74(13), 3567-78, 2014により記載されている)。
【0055】
好ましい実施形態では、組換え水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中に、少なくとも水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードし、それにおいてラージタンパク質(L)は、配列番号9の≧80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
好ましい実施形態では、組換え水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中に、少なくとも水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードし、それにおいて核タンパク質(N)は、配列番号7の≧90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0057】
さらに好ましい実施形態では、組換え水疱性口内炎ウイルスは、そのゲノム中に、少なくとも水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードし、それにおいてラージタンパク質(L)は、配列番号9の80%と等しい又はそれより大きい配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び核タンパク質(N)は、配列番号7の≧ 90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の組換えラブドウイルスのRNAゲノムは、配列番号24において示す配列を含む、又はそれからなる。さらに、本発明の組換えラブドウイルスのRNAゲノムはまた、それらの配列からなりうる、又は含みうるが、それにおいてRNAゲノムの核酸は、それぞれのアミノ酸配列の変化に導くことなく、遺伝子コードの縮重に従って交換される。さらに好ましい実施形態では、本発明の組換えラブドウイルスのRNAゲノムは、配列番号24と同一の又は少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一のコード配列を含む、又はそれからなる。
【0059】
本発明の組換えラブドウイルスは、そのゲノム中に、さらなるカーゴ、例えば腫瘍抗原、さらなるケモカイン、サイトカイン、又は他の免疫調節エレメントなどをコードしうることを理解すべきである。
【0060】
さらなる実施形態では、本発明の組換えラブドウイルスは、そのゲノム中に、ヨウ化ナトリウム共輸送体タンパク質(NIS)をさらにコードする。NISの発現及び例えば125Iを用いた同時インキュベーションによって、イメージングレポーターとしてのNISの使用が可能になる(Carlson et al., Current Gene Therapy, 12, 33-47, 2012)。
【0061】
組換えラブドウイルス
【0062】
特定の野生型ラブドウイルス株、例えば野生型VSV株などは、神経毒性であると見なされることが公知である。感染した個人は、主に糖タンパク質に対して向けられた高い抗体価を伴い、強力な体液性応答を迅速に開始できることも報告されている。ラブドウイルスの糖タンパク質G及びVSVを標的化する中和抗体は、一般的に、ウイルスの伝播を限定させ、それにより、ウイルスの再感染からの個人の保護を媒介することができる。ウイルス中和は、しかし、癌患者へのラブドウイルスの反復適用を限定する。
【0063】
これらの欠点を排除するために、ラブドウイルス野生型糖タンパク質Gを、別のウイルスからの糖タンパク質で置換してもよい。この点で、糖タンパク質を置換することは、(i)別のウイルスの糖タンパク質GPをコードする遺伝子を用いた、野生型糖タンパク質Gをコードする遺伝子の置換、及び/又は(ii)別のウイルスの糖タンパク質GPを用いた、野生型糖タンパク質Gの置換を指す。
【0064】
好ましい実施形態では、ラブドウイルス糖タンパク質Gは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPで、好ましくはWE-HPI株で置換する。さらにより好ましい実施形態では、ラブドウイルスは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPを伴う、好ましくはWE-HPI株を伴う水疱性口内炎ウイルスである。そのようなVSVは、例えば、WO2010/045026において記載されており、VSV-GPと名付けられている。提供される利点は、(i)VSV-G媒介性の神経毒性の喪失及び(ii)抗体によるベクター中和の欠如(マウスにおいて示されているとおり)である。
【0065】
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPは、GP1又はGP2でありうる。本発明は、異なるLCMV株からの糖タンパク質を含む。特に、LCMV-GPは、LCMV野生型又はLCMV株LCMV-WE、LCMV-WE-HPI、LCMV-WE-HPloptから由来しうる。好ましい実施形態では、LCMVの糖タンパク質GPをコードする遺伝子は、配列番号11において示すアミノ酸配列又は配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、95%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を伴うタンパク質をコードし、配列番号11において示すアミノ酸配列をコードする糖タンパク質GPを含む組換えラブドウイルスの機能的特性が維持されている。
【0066】
別の実施形態では、組換えラブドウイルス糖タンパク質Gは、Dandenongウイルス(DANDV)又はMopeia(MOPV)ウイルスの糖タンパク質GPで置換される。より好ましい実施形態では、組換えラブドウイルスは、糖タンパク質GがDandenongウイルス(DANDV)又はMopeia(MOPV)ウイルスの糖タンパク質GPで置換されている水疱性口内炎ウイルスである。提供される利点は、(i)VSV-G媒介性の神経毒性の喪失及び(ii)抗体によるベクター中和の欠如(マウスにおいて示されるとおり)である。
【0067】
Dandenongウイルス(DANDV)は旧世界のアレナウイルスである。今日まで、糖タンパク質GPを含み、及び本発明の組換えラブドウイルス中に含まれる糖タンパク質GPのドナーとして本発明内で用いてもよい、当業者に公知の単一の株だけがある。本発明の組換えラブドウイルス中に含まれるDADV糖タンパク質GPは、6つを上回るグリコシル化部位、特に7つのグリコシル化部位を有する。例示的な、好ましい糖タンパク質GPは、Genbank番号EU136038の下で利用できる、DANDV中に含まれる糖タンパク質GPである。一実施形態では、DNADVの糖タンパク質GPをコードする遺伝子は、配列番号12において示すアミノ酸配列あるいは配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも80、85、90、又は95%の配列同一性を有する配列をコードし、配列番号12において示すアミノ酸配列をコードする糖タンパク質GPを含む組換えラブドウイルスの機能的特性が維持されている。
【0068】
Mopeiaウイルス(MOPV)は旧世界のアレナウイルスである。糖タンパク質GPを含み、及び本発明の組換えラブドウイルス中に含まれる糖タンパク質GPのドナーとして本発明内で用いてもよい、当業者に公知のいくつかの株がある。本発明の組換えラブドウイルス中に含まれるMOPV糖タンパク質GPは、6つを上回るグリコシル化部位、特に7つのグリコシル化部位を有する。例示的な、好ましい糖タンパク質GPは、Genbank番号AY772170の下で利用できる、Mopeiaウイルス中に含まれる糖タンパク質GPである。一実施形態では、MOPVの糖タンパク質GPをコードする遺伝子は、配列番号13において示すアミノ酸配列あるいは配列番号13のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、又は95%の配列同一性を有する配列をコードし、配列番号13において示すアミノ酸配列をコードする糖タンパク質GPを含む組換えラブドウイルスの機能的特性が維持されている。
【0069】
CCL21及びCCL21の機能的変異体。
【0070】
驚くべきことに、そのゲノム中にCCL21タンパク質をコードする組換えラブドウイルスが、腫瘍微小環境において免疫原性細胞死及び自然免疫細胞の刺激と組み合わされた腫瘍細胞溶解を誘導することができることが見出された。さらに、延長された生存率が、CCL21を備えたそのような組換えラブドウイルスで処置された、樹立されたマウス腫瘍モデルにおいて観察された。
【0071】
CCL21は、CCケモカインファミリーに属し、二次リンパ組織ケモカイン(SLC)、exodus-2、ckb9、scya21、TCA4、又は6Ckineとしても公知である。CCL21は、細胞外マトリックスに結合するC末端領域を含む。CCL21はまた、CCR7細胞表面受容体に結合し、それにより、その機能、例えばT細胞及び樹状細胞の誘引ならびに後者の活性化などを発揮する。CCR7は、健常な患者及び癌患者の両方における広範囲の末梢T細胞及び樹状細胞で発現される。
【0072】
このように、一態様では、そのゲノム中に少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体をコードする組換えラブドウイルスは、腫瘍環境へのT細胞及び樹状細胞の動員を増強することができる。
【0073】
別の態様では、高度に強力なケモカインCCL21の局所発現によって、腫瘍微小環境中への、優先的には、Tリンパ球及び樹状細胞の免疫細胞動員、ならびに組換えラブドウイルスの改善された有効性がさらに増強される。
【0074】
さらに別の態様では、そのゲノム中に少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体をコードする組換えラブドウイルスは、自然免疫刺激因子として作用する。
【0075】
一態様では、そのゲノム中に少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体をコードする組換えラブドウイルスによって、低温腫瘍が高温腫瘍になる。特に、結果として生じる炎症誘発性腫瘍微小環境によって、非T細胞浸潤(「コールド」)腫瘍がT細胞炎症(「ホット」)腫瘍になり、腫瘍排出リンパ節における適応性抗腫瘍免疫応答の生成を伴う。
【0076】
ヒトCCL21タンパク質は、例えば、M. Nagira et al, The Journal of Biological Chemistry, 272, 19518-19524(August 1, 1997)により記載されており、23アミノ酸の推定シグナルペプチドを伴う、合計134アミノ酸の高塩基性ポリペプチドである:
【0077】
【化1】
【0078】
CCL21タンパク質は特に、以下の配列を含む、又はそれからなるCCL21を含む:
【0079】
【化2】
【0080】
好ましくは、CCL21タンパク質は、以下の配列を有するタンパク質を含む、又はそれからなる:
【0081】
【化3】
【0082】
あるいは配列番号4と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。
【0083】
より好ましくは、CCL21タンパク質は、以下の配列を有するタンパク質を含む、又はそれからなる:
【0084】
【化4】
【0085】
あるいは配列番号3と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。
【0086】
用語「シグナルペプチド」又は「シグナルペプチド配列」によって、通常10から30アミノ酸の長さで、ポリペプチドを細胞の細胞膜(原核生物の原形質膜及び真核生物の小胞体膜)を横切って又はその中に向ける、新たに合成された分泌ポリペプチド又は膜ポリペプチドのN末端に存在するペプチド配列を記載する。それは、通常、その後に除去される。特に、シグナルペプチドは、ポリペプチドを細胞の分泌経路中に向けることが可能でありうる。
【0087】
本発明については、他の(即ち、野生型以外の)シグナルペプチド配列を、CCL21タンパク質と一緒に使用してもよいことを理解すべきである。そのような他のシグナルペプチド配列は、本来の野生型シグナルペプチド配列を置換しうる。シグナルペプチドは、原形質膜へ又は細胞外への輸送のために、リボソーム中で新たに合成されたタンパク質を小胞体に、及び、さらにゴルジ複合体に向けるペプチドを含む。それらは一般的に、一連の疎水性アミノ酸を含み、免疫グロブリンリーダー配列ならびに当業者に公知の他のものを含む。シグナルペプチドは、特に、シグナルペプチダーゼ(小胞体の槽面に位置付けられる特定のプロテアーゼ)により作用されることが可能なペプチドを含む。シグナルペプチドは当業者により十分に理解されており、任意の公知のシグナルペプチドを含みうる。シグナルペプチドはタンパク質のN末端に組み入れられて、シグナルペプチダーゼによるCCL21タンパク質のプロセシングによって、活性な生物学的形態が産生される。
【0088】
好ましい実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号6において示す配列を有する。関連する好ましい実施形態では、CCL21タンパク質は、以下の配列を有するタンパク質を含む、又はそれからなる:
【0089】
【化5】
【0090】
あるいは配列番号5と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。
【0091】
関連する実施形態では、CCL21タンパク質は、配列番号2、3、又は4のアミノ酸を含む、又はそれからなる、あるいは配列番号2、3、又は4とそれぞれ少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する、及びシグナルペプチド配列をさらに含むタンパク質を含む。好ましい実施形態では、シグナルペプチド配列は、配列番号5のアミノ酸1~19を含む、又はそれからなる。
【0092】
CCL21タンパク質はまた、配列番号2、3、又は4のアミノ酸を含む、又はそれらからなる、あるいは配列番号2、3、又は4とそれぞれ少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の同一性を有する、及び配列番号1のアミノ酸1~23を含む、又はそれからなるシグナルペプチド配列をさらに含むタンパク質を含む。
【0093】
CCL21タンパク質は、プラスミン処理形態のCCL21に対応するタンパク質をさらに含む。CCL21は、細胞外マトリックス成分、例えばヘパリン様グリコサミノグリカンなどの結合に寄与する正味の正電荷を伴う、伸長した固有のC末端(例、ヒトCCL21約30aa)を含む。C末端の切断/欠失によって、ヘパリンのようなグリコサミノグリカンへの結合が劇的に低下する。CCL21は、一部のヒトの癌において欠損しているプラスミンにより人体内で処理される。プラスミン切断の必要性は、CCL21のプラスミン処理形態に類似する、CCL21の生物活性の、即ち、生物学的に活性なN末端フラグメントを組換えラブドウイルス中にコード化することにより克服することができることが示された。CCL21のプラスミン処理形態は、C末端の切断/欠失により特徴付けられ、当業者に公知の方法により測定することができるヘパリン及び/又はヘパラン硫酸に結合する低下した能力をもたらす。この文脈において、ヘパリン及び/又はヘパラン硫酸に結合する低下した能力は、配列番号1又は2を有するCCL21タンパク質との比較及び、同じアッセイにおいて同じ条件下でテストした場合に、配列番号1又は2において示す配列を伴う(それぞれシグナルペプチド配列を伴う又は伴わない)CCL21タンパク質の結合能力の95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%又はそれ以下まで低下した結合能力を指す。
【0094】
プラスミンは、フィブリン血餅を溶解するように作用するセリンプロテアーゼである。線維素溶解とは別に、プラスミンは種々の他の系においてタンパク質をタンパク質分解する。それによって、補体系の一部のメディエーターであるコラゲナーゼが活性化され、グラーフ卵胞の壁が弱まり、排卵に導く。それによってフィブリン、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、ラミニン、及びフォンウィルブランド因子が切断される。プラスミンはセリンプロテアーゼのファミリーに属する。プラスミンは、プラスミノーゲンと呼ばれるプロ酵素として肝臓から全身循環中に放出される。活性プラスミンへのプラスミノーゲンの変換は、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)、カリクレイン、及び第XII因子(ハーゲマン因子)によるArg-561とVal-562の間のペプチド結合の切断を含む。
【0095】
プラスミンによるCCL21タンパク質の切断は、細胞表面に結合したCCL21上で、又はインビボのいずれかで(いずれの場合でも、CCL21タンパク質をプラスミンとインキュベートすることにより)起こりうる。プラスミン処理されたCCL21タンパク質は、従って、配列番号2のアミノ酸1~88に対応する配列を含む、又はそれからなる、あるいは配列番号2のアミノ酸1~88と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するCCL21を含む。さらに、CCL21タンパク質は、配列番号2のアミノ酸1~91に対応する配列を含む、又はそれからなる、あるいは配列番号2のアミノ酸1~91と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するCCL21を含む。CCL21タンパク質はまた、配列番号2のアミノ酸1~104に対応する配列を含む、又はそれからなる、あるいは配列番号2のアミノ酸1~104と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するCCL21を含む。
【0096】
C末端が切断されたCCL21タンパク質は、CCL21タンパク質の伸長したc末端におけるアミノ酸の欠失及び/又は変異により特徴付けられる。伸長したc末端においてアミノ酸を欠失及び/又は変異させることにより、ヘパリンのようなグリコサミノグリカンへの結合は、それにより低下する。好ましい実施形態では、c末端が切断されたCCL21タンパク質は、配列番号2を含む、又はそれからなる、あるいは配列番号2のアミノ酸1~79と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する((タンパク質が位置80~111に示す少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、又は32のアミノ酸残基を欠く、あるいはそれにおいて前記残基の1つ又は複数が変異しているという条件で)。さらに好ましい実施形態では、c末端が切断されたCCL21は、配列番号2を含む、又はそれらからなる、あるいは配列番号2のアミノ酸1~79と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するCCL21であり、それにおいて配列番号2の80~111の全てのアミノ酸が欠失されている(即ち、32の欠失)。
【0097】
各々の場合で、プラスミン処理されたCCL21又はc末端が切断されたCCL21のいずれかが、シグナルペプチド配列をさらに含みうる。特に好ましいのは、配列番号1のアミノ酸1~23又は配列番号5のアミノ酸1~19を含む、又はそれらからなるシグナルペプチド配列である。また、本来のシグナルペプチド配列を置換する他のシグナルペプチド配列を使用してもよい。このように、好ましい実施形態では、プラスミン処理された又はc末端が切断されたCCL21タンパク質は、以下の配列を有するタンパク質を含む、又はそれからなる:
【0098】
【化6】
【0099】
あるいは配列番号5と少なくとも70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有する。
【0100】
CCL21タンパク質はまた、切断されたシグナルペプチド配列を伴うCCL21を含みうる。この文脈において、「切断された」は、本来のシグナルペプチド配列よりも短いが、しかし、依然としてシグナルペプチドとして作用するその機能性の少なくとも一部を保持するシグナルペプチド配列を指す。例えば、ヒトシグナルペプチド配列は、配列番号1のアミノ酸1~23を含む、又はそれからなる。切断されたシグナルペプチド配列を伴うCCL21は、配列番号1のアミノ酸1~23の22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1を有しうる。さらなる例では、シグナルペプチドは、配列番号6において示す配列を含む、又はそれからなりうる。切断されたシグナルペプチド配列を伴うCCL21は、配列番号6のアミノ酸1~18の18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1を有しうる。
【0101】
切断されたシグナルペプチド配列を伴うCCL21タンパク質はまた、配列番号2~4の配列のいずれか、及び、また、本来のシグナルペプチド配列よりも短いシグナルペプチド配列を含むタンパク質でありうる。再び、例として、シグナルペプチド配列は、配列番号1のアミノ酸1~23の22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1を有しうる、あるいは、さらなる例では、シグナルペプチドは、配列番号6において示す配列を含む、又はそれからなりうる。切断されたシグナルペプチド配列を伴うCCL21は、配列番号6のアミノ酸1~18の18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1を有しうる。
【0102】
CCL21タンパク質は、マウス及びラットを含む任意の起源のものでありうる。好ましくは、CCL21タンパク質はヒト起源からである。
【0103】
CCL21タンパク質の機能的変異体は、先に記載するCCL21タンパク質の生物学的に活性な変異体及び生物学的に活性なフラグメントを含む。変異体は、具体的に記載されたCCL21タンパク質の位置において1つ又は複数の異なるアミノ酸を有しうる。変異体は、そのようなCCL21タンパク質と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%又はそれ以上のアミノ酸同一性を共有することができる。フラグメントは、所与の具体的に記載されたCCL21タンパク質と同じアミノ酸を有するが、しかし、CCL21タンパク質の特定の一部又は領域を欠きうる。
【0104】
本明細書中で使用するように、用語「同一」又は「パーセント同一性」は、2つ又はそれ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈において、同じである、あるいは、最大の対応のために比較及び整列された場合に同じである特定のパーセンテージのヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する2つ又はそれ以上の配列又は部分配列を指す。パーセント同一性を決定するために、配列を、最適な比較目的のために整列させる(例、ギャップを、第2のアミノ酸配列又は核酸配列との最適な整列のために、第1のアミノ酸配列又は核酸配列の配列中に導入することができる)。対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを次に比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占められている場合、次に、分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列により共有される同一の位置の数の関数である(即ち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数(例、重複する位置)×100)。一部の実施形態では、比較される2つの配列は、適宜(例、比較される配列を超えて伸長する追加配列を除く)、ギャップが配列内に導入された後に同じ長さである。
【0105】
2つの配列間のパーセント同一性又はパーセント類似性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい、非限定的な例は、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムであり、Karlin and Altschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877におけるように改変されている。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLASTプログラム及びXBLASTプログラム中に組み入れられている。BLASTヌクレオチド検索は、目的のタンパク質をコードする核酸に相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて実施し、目的のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的のためにギャップアラインメントを得るために、Gapped BLAST を、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402において記載されるように利用することができる。あるいは、PSI-Blastを使用し、分子間の離れた関係を検出する反復検索を実施することができる(同上)。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例、XBLAST及びNBLAST)のデフォルトパラメータを使用することができる。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS(1989)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み入れられている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。配列分析用の追加のアルゴリズムが当技術分野において公知であり、Torellis and Robotti, 1994, Comput. Appl. Biosci. 10:3-5において記載されているADVANCE及びADAM;ならびにPearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444-8において記載されているFASTAを含む。FASTA内では、ktupは検索の感度及び速度を設定する制御オプションである。ktup=2の場合、比較されている2つの配列中の類似の領域が、整列された残基の対を調べることにより見出される;ktup=1の場合、単一の整列されたアミノ酸が検証される。ktupを、タンパク質配列については2又は1に、あるいはDNA配列については1から6に設定することができる。ktupが特定されていない場合のデフォルトは、タンパク質については2、及びDNAについては6である。あるいは、タンパク質配列アラインメントは、Higgins et al., 1996, Methods Enzymol. 266:383-402により記載されているように、CLUSTAL Wアルゴリズムを使用して行ってもよい。
【0106】
両方の場合において、機能的変異体は、生物学的に活性であるCCL21の変異体及びフラグメントだけを含む。本発明については、組換えラブドウイルスのゲノム中にコードされているCCL21変異体又はCCL21フラグメントの生物学的活性を、それぞれの細胞又は腫瘍細胞中でのその発現後に決定する。これは、生物学的活性が、CCL21変異体又はCCL21フラグメントをコードする組換えラブドウイルスの状況において(例、Transwellアッセイ又はインビトロ腫瘍モデルにおいて)決定されることを意味する。好ましくは、生物学的活性を、CCL21変異体又はCCL21フラグメントをコードするベジクロウイルスを用いて決定する。より好ましくは、生物学的活性を、CCL21変異体又はCCL21フラグメントをコードするVSV-GPを用いて決定する。
【0107】
生物学的活性は、以下の能力の1つ又は複数を含みうる:化学誘引物質活性、抗腫瘍活性、サイトカイン発現の調節、例えばCD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、抗原提示細胞、及び腫瘍細胞を含む同系哺乳類細胞の集団におけるインターフェロン-ガンマ(IFN-ガンマ)ポリペプチドの発現における増加又は形質転換成長因子-ベータ(TGF-ベータ)ポリペプチドの発現における減少など。生物学的活性についてのテストは、限定しないが、例えば、実施例において示すようなプロトコルに従って行ってもよい。本発明の目的のために、CCL21タンパク質の機能的変異体又はフラグメントは、それが、同じアッセイにおいて及び同じ条件下でテストされた場合、配列番号1又は2において示す配列(それぞれシグナルペプチド配列を伴う、又は伴わない)を伴うCCL21タンパク質の活性の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は98%を示す場合、生物学的に活性である。
【0108】
理論により拘束されることを望まないが、本発明者らは、VSV-GPを用いた腫瘍細胞の処置後、いくつかのケモカイン及びサイトカインが応答して上方制御されることを見出した。CCL21は、VSV-GP処置後に腫瘍細胞において上方制御されないケモカインの1つである。今回のデータは、そのゲノム中にCCL21タンパク質をコードするVSV-GPが癌の処置において特に効果的であり、腫瘍溶解性ウイルスにより感染された腫瘍中への免疫細胞浸潤をさらに改善し、それにより抗腫瘍免疫をさらに増強することに向けて適合されることを示す。
【0109】
さらに驚くべきことに、配列番号3又は4、特に配列番号5の配列を含む(comprising)、又は含む(containing)CCL21タンパク質をコードする組換えラブドウイルスは、全長CCL21タンパク質と比較し、腫瘍処置においてさらにより強力で、より効果的であったが、タンパク質分解処理についての必要性を伴うことなく活性である。
【0110】
そのようなCCL21タンパク質は、それらのより小さなサイズのために、全長CCL21タンパク質よりもさらに好ましい。より大きな又は複数の導入遺伝子が、ラブドウイルスならびに導入遺伝子自体の生存、安定性、腫瘍溶解能力、製造可能性、又は発現に負の影響を与えうる。より小さな導入遺伝子を利用することによって、また、さらなる導入遺伝子を収容するそれらの能力において限界を有しうるラブドウイルスに追加の導入遺伝子を加える可能性が提供される。
【0111】
ラブドウイルスは、それらの遺伝物質(ゲノム)としてマイナス鎖一本鎖RNA(ssRNA)を有する。マイナス鎖ssRNAウイルスは、プラス鎖RNAを形成するためにRNAポリメラーゼを必要とする。プラス鎖RNAは、ウイルスのmRNAとして作用し、それは、新たなウイルス材料の産生のためにタンパク質中に翻訳される。新たに形成されたウイルスを用いて、より多くのマイナス鎖RNA分子が産生される。
【0112】
典型的なラブドウイルスゲノムは、3′-N-P-M-G-L-5′の順番において少なくとも5つの構造タンパク質をコードする。ゲノムは、構造タンパク質間にさらに短い遺伝子間領域又は追加の遺伝子を含みうるが、従って、長さ及び組織化において変動しうる。
【0113】
本発明に従い、CCL21遺伝子をラブドウイルスゲノムの任意の位置中に導入することができる。挿入部位に依存して、CCL21遺伝子の転写効率に影響が与えられうる。一般的に、CCL21遺伝子の転写効率は3′挿入から5′プライム挿入まで減少する。CCL21遺伝子を以下のゲノム位置中に挿入してもよい:3′-CCL21-N-P-M-G-L-5′、3′-N-CCL21-P-M-G-L-5′、3′-N-P-CCL21-M-G-L-5′、3′-N-P-M-CCL21-G-L-5′、3′-N-P-M-G-CCL21-L-5′、又は3′-N-P-M-G-L-CCL21-5′。好ましい実施形態では、CCL21遺伝子をGタンパク質とLタンパク質の間に挿入する。
【0114】
腫瘍細胞の感染後、組換えラブドウイルスのゲノム中にコードされたCCL21遺伝子は、プラス鎖RNA中に転写されて、次に、腫瘍細胞によりCCL21タンパク質中に翻訳される。用語「コードする(encoding)」又は「コードする(coding)」は、核酸中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性を指し、定義されたヌクレオチド配列(例、RNA分子)又はアミノ酸及びそれから生じる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子の合成のためのテンプレートとしての役割を果たす。したがって、所望のタンパク質が、mRNAの転写及びその後の翻訳により細胞又は別の生物学的系において産生される場合、遺伝子はタンパク質をコードする。コード鎖(そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一である)及び非コード鎖の両方が、遺伝子の転写のための鋳型としての役割を果たしうるが、その遺伝子のタンパク質又は他の産物をコードしているとして言及することができる。タンパク質をコードする核酸及びヌクレオチド配列はイントロンを含みうる。
【0115】
CCL21遺伝子の転写は、好ましくは、それ自体のプロモーターの制御下にはなく、ウイルス複製に厳密に連結されるだけであり、それにより、ウイルス複製及び伝播(腫瘍)の位置へのCCL21の標的発現を確実にする。このように、CCL21遺伝子の転写は、追加エレメント、例えばプロモーター又は誘導性遺伝子発現エレメントなどにより制御されない。
【0116】
核酸配列を、コードされるポリペプチドの一次配列を変化させることを伴う、又は伴わずに変動させてもよいことが理解されるであろう。タンパク質をコードする核酸は、異なるヌクレオチド配列を有するが、しかし、遺伝暗号の縮重に起因する、タンパク質の同じアミノ酸配列をコードする任意の核酸を含む。CCL21タンパク質、特に本明細書中に開示する任意の特定のCCL21タンパク質の発現をもたらす核酸配列を選ぶことは、当業者の知識内である。CCL21タンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、当技術分野において公知の多様な方法により調製される。これらの方法は、天然供給源からの単離、又は以前に調製されたCCL21タンパク質のオリゴヌクレオチド媒介性(又は部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発、及びカセット変異誘発による調製を含むが、これらに限定しない。
【0117】
医薬的組成物
【0118】
実際の医薬的に効果的な量又は治療的な投与量は、もちろん、当業者により公知の要因、例えば患者の年齢及び体重、投与経路、ならびに疾患の重症度などに依存するであろう。任意の場合において、組換えラブドウイルスは、医薬的に効果的な量を患者の固有の状態に基づいて送達することを可能にする投与量及び様式で投与される。
【0119】
一般的に、本明細書中で言及する疾患、障害、及び状態の処置及び/又は軽減のために、ならびに処置される特定の疾患、障害、又は状態に依存して、使用される本発明の特定の組換えラブドウイルスの効力、特定の投与経路及び使用される特定の医薬的製剤又は組成物、本発明の組換えラブドウイルスは、一般的に、例えば、週2回、毎週、又は毎月の用量で投与されるが、しかし、特に、前に言及したパラメーターに依存して有意に変動しうる。このように、一部の場合では、上に与える最小用量よりも少ない用量を使用することが十分でありうるのに対し、他の場合では、上限を超えなければならないであろう。大量に投与する場合、それらを、1日にわたり分散される、多数のより小さな用量中に分割することが得策でありうる。
【0120】
治療において使用されるために、本発明の組換えラブドウイルスは、動物又はヒトへの投与を促進するために適切な医薬的組成物中に製剤化される。典型的な製剤は、水溶液又は水性もしくは非水性懸濁液の形態において、組換えウイルスを、生理学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤と混合することにより調製することができる。担体、賦形剤、修飾剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度で無毒である。それらは、緩衝系、例えばリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、ならびに他の無機酸又は有機酸及びそれらの塩など;抗酸化剤(アスコルビン酸及びメチオニンを含む);保存剤、例えばオクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウムなど;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベンなど;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール(PEG)など;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなど;単糖、二糖、オリゴ糖、又は多糖、及び他の糖(グルコース、マンノース、スクロース、トレハロース、デキストリン、又はデキストランを含む);キレート剤、例えばEDTAなど;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;金属錯体(例、Zn-タンパク質複合体);及び/又はイオン性又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)(ポリソルベート)、PLURONICS(商標)又は脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル又は糖エステルなどを含む。賦形剤はまた、放出修飾機能又は吸収修飾機能を有しうる。
【0121】
一実施形態では、本発明の組換えラブドウイルスを、トリス、アルギニン、及び、場合により、クエン酸塩を含む医薬的組成物中に製剤化する。トリスは、好ましくは、約1mMから約100mMの濃度で使用される。アルギニンは、好ましくは、約1mMから約100mMの濃度で使用される。クエン酸塩は100mMまでの濃度で存在しうる。好ましい製剤は、約50mMのトリス及び50mMのアルギニンを含む。
【0122】
医薬的組成物は、液体、凍結液として、又は凍結乾燥形態で提供されうる。凍結液は、約0℃と約-85℃の間の温度(-70℃と-85℃の間、及び約-15℃、-16℃、-17℃、-18℃、-19℃、-20℃、-21℃、-22℃、-23℃、-24℃、又は約-25℃の温度を含む)で保存してもよい。
【0123】
本発明の組換えラブドウイルス又は医薬的組成物は、必要ではないが、しかし、場合により、問題の障害を防止又は処置するために現在使用されている1つ又は複数の薬剤と製剤化される。そのような他の薬剤の効果的な量は、製剤中に存在する組換え抗体の量、障害又は処置の種類、及び上に記載する他の要因に依存する。これらは一般的に、本明細書中に記載する同じ投与量において及び投与経路を用いて、又は本明細書中に記載する投与量の約1から99%で、又は任意の投与量において及び経験的/臨床的に適切であると決定される任意の経路により使用される。
【0124】
疾患の防止又は処置のために、本発明の組換えラボドウイルス又は医薬的組成物の適切な投与量(単独で、あるいは1つ又は複数の他の追加の治療的薬剤との組み合わせにおいて使用される場合)は、処置される疾患の種類、組換えラブドウイルスの種類、疾患の重症度及び経過、組換えラブドウイルスが防止的又は治療的な目的のために投与されるか否か、以前の治療、患者の病歴及び組換えラブドウイルスへの応答、及び主治医の判断に依存する。本発明の組換えラブドウイルス又は医薬的組成物は、一度に又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0125】
疾患の種類及び重症度に依存して、組換えラブドウイルスのTCID50により測定される約10から1013の感染性粒子は、例えば、1つ又は複数の別々の投与による、又は継続的な注入によるかを問わず、患者への投与のための最初の候補投与量でありうる。数日又はそれ以上にわたる反復投与については、状態に依存するが、処置は一般的に、疾患症状の所望の抑制が生じるまで持続されるであろう。組換えラブドウイルスの1つの例示的な投与量は、TCID50により測定される約10から1013の感染性粒子の範囲中にありうる。このように、TCID50により測定される約10、10、1010、1011、1012、又は1013の感染性粒子の1つ又は複数の用量(又はそれらの任意の組み合わせ)を患者に投与してもよい。そのような用量は、間欠的に、例えば、毎週又は3週間毎(例、患者が約2から約20、又は、例えば、約6用量の組換えラブドウイルスを受けるようにする)に投与されうる。最初のより高い負荷用量、それに続く1つ又は複数のより低い用量、あるいはその逆を投与してもよい。しかし、他の投与計画が有用でありうる。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイにより簡単にモニターされる。
【0126】
本発明の組換えラブドウイルス、及びそれを含む組成物の有効性は、含まれる特定の疾患に依存して、任意の適したインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、インビボアッセイ、及び/又はそれ自体が公知の動物モデル、あるいはそれらの任意の組み合わせを使用してテストすることができる。適したアッセイ及び動物モデルは当業者には明らかであり、例えば、以下の実施例において使用されるアッセイ及び動物モデルを含む。
【0127】
実際の医薬的に効果的な量又は治療的な投与量は、言うまでもなく、当業者により公知の要因、例えば患者の年齢及び体重、投与経路、ならびに疾患の重症度などに依存しうる。いずれの場合でも、本発明の組換えラブドウイルスは、医薬的に効果的な量を、患者の固有の状態に基づいて送達することを可能にする投薬量で、及び様式において投与されるであろう。
【0128】
あるいは、本発明の組換えラブドウイルス又は医薬的組成物は、処置される領域のサイズ、使用されるウイルス力価、投与経路、及び方法の望ましい効果に依存して、約50μlから約100ml(範囲内の全ての数を含む)の容量中で送達されうる。
【0129】
腫瘍内投与のために、容量は、好ましくは約50μlから約5mlの間(約100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μl、1100μl、1200μl、1300μl、1400μl、1500μl、1600μl、1700μl、1800μl、1900μl、2000μl、2500μl、3000μl、3500μl、4000μl、又は約4500μlの容量を含む)である。好ましい実施形態では、容量は約1000μlである。
【0130】
全身投与(例、組換えラブドウイルスの注入による)のために、容量は自然に高くなりうる。あるいは、組換えラブドウイルスの濃縮溶液は、注入の直前に、より大きな容量の注入溶液中で希釈することができる。
【0131】
特に静脈内投与のために、容量は、好ましくは1mlから100mlの間(約2ml、3ml、4ml、5ml、6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、11ml、12ml、13ml、14ml、15ml、16ml、17ml、18ml、19ml、20ml、25ml、30ml、35ml、40ml、45ml、50ml、55ml、60ml、70ml、75ml、80ml、85ml、90ml、95ml、又は約100mlの容量を含む)である。好ましい実施形態では、容量は約5mlから15mlの間であり、より好ましくは、容量は約6ml、7ml、8ml、9ml、10ml、11ml、12ml、13ml、又は約14mlである。
【0132】
好ましくは、同じ製剤を腫瘍内投与及び静脈内投与のために使用する。腫瘍内投与と静脈内投与の間の用量及び/又は容量の比率は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、又は約1:20でありうる。例えば、1:1の用量及び/又は容量の比率は、同じ用量及び/又は容量が腫瘍内ならびに静脈内に投与されることを意味するのに対し、例えば、約1:20の用量及び/又は容量の比率は、腫瘍内投与用量及び/又は容量よりも20倍高い静脈内投与用量及び/又は容量を意味する。好ましくは、腫瘍内投与と静脈内投与の間の用量及び/又は容量の比率は、約1:9である。
【0133】
組換えラブドウイルスの効果的な濃度は、望ましくは、1ミリリットル当たり約10と1014の間のベクターゲノム(vg/mL)の範囲である。感染単位は、McLaughlin et al., J Virol.;62(6):1963-73(1988)において記載されているように測定してもよい。好ましくは、濃度は、約1.5×10から約1.5×1013であり、より好ましくは、約1.5×10から約1.5×1011である。一実施形態では、効果的な濃度は、約1.5×10である。別の実施形態では、効果的な濃度は約1.5×1010である。別の実施形態では、効果的な濃度は約1.5×1011である。さらに別の実施形態では、効果的な濃度は約1.5×1012である。別の実施形態では、効果的な濃度は約1.5×1013である。別の実施形態では、効果的な濃度は約1.5×1014である。望ましくない効果のリスクを低下させるために、最も低い効果的な濃度を使用することが望ましいことがある。これらの範囲中のさらに他の投与量は、処置されている被験者、好ましくはヒトの身体的状態、被験者の年齢、特定の種類の癌、及び癌(進行性の場合)が発生した程度を考慮に入れて、主治医により選択されうる。
【0134】
組換えラブドウイルスの効果的な標的濃度は、TCID50で表現してもよい。TCID50は、例えば、Spearman-Karberの方法を使用することにより決定することができる。望ましくは、範囲は、1×10/mlと1×1014/mlの間のTCID50の効果的な標的濃度を含む。好ましくは、効果的な標的濃度は約1×109から約1×1012/mlであり、より好ましくは、約1×10から約1×1011/mlである。一実施形態では、効果的な標的濃度は約1×1010/mlである。好ましい実施形態では、標的濃度は5×1010/mlである。別の実施形態では、効果的な標的濃度は約1.5×1011/mlである。一実施形態では、効果的な標的濃度は約1×1012/mlである。別の実施形態では、効果的な標的濃度は約1.5×1013/mlである。
【0135】
組換えラブドウイルスの効果的な標的用量はまた、TCID50で表現してもよい。望ましくは、範囲は、1×10と1×1014の間のTCID50の標的用量を含む。好ましくは、標的用量は、約1×10から約1×1013であり、より好ましくは、約1×10から約1×1012である。一実施形態では、効果的な濃度は約1×1010である。好ましい実施形態では、効果的な濃度は約1×1011である。一実施形態では、効果的な濃度は約1×1012である。別の実施形態では、効果的な濃度は約1×1013である。
【0136】
別の態様では、本明細書中に記載する障害の処置、防止、及び/又は診断のために有用な材料を含むキット又はキット部品を提供する。キット又はキット部品は、容器及び、容器上の又はそれに関連付けられるラベル又は添付文書を含む。適した容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器、IV溶液バッグなどを含む。容器は、多様な材料、例えばガラス又はプラスチックなどから形成されうる。容器は、それ自体による、あるいは障害を処置、防止、及び/又は診断するために効果的な別の組成物と組み合わせた組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有しうる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針により穿刺可能なストッパーを有するバイアルでありうる)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の組換えラブドウイルス又は医薬的組成物である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選ばれた状態を処置するために使用されることを示す。
【0137】
さらに、キット又はキット部品は、(a)その中に含まれる組成物を伴う第1の容器(それにおいて、組成物は、本発明の組換えラブドウイルス又は医薬的組成物を含む);及び(b)その中に含まれる組成物を伴う第2の容器(それにおいて、組成物は、さらなる細胞傷害性薬剤又は他の治療的薬剤、例えばPD-1経路阻害剤又はSMAC模倣物などを含む)を含みうる。本発明のこの実施形態におけるキット又はキット部品は、組成物が、特定の状態、特に癌を処置するために使用することができることを示す添付文書をさらに含みうる。あるいは、又は加えて、キット又はキット部品は、医薬的に許容可能な緩衝液、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液又はデキストロース溶液などを含む第2(又は第3)の容器をさらに含みうる。それは、商業的な及びユーザーの観点から望ましい他の材料(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及び注射器を含む)をさらに含みうる。
【0138】
さらなる態様では、本発明の組換えラブドウイルスは、組換えラブドウイルスの投与のために有用なデバイス、例えば注射器、インジェクターペン、マイクロポンプ、又は他のデバイスなどとの組み合わせにおいて使用する。好ましくは、本発明の組換えラブドウイルスは、キット部品(例えば、組換えラブドウイルスの使用のための説明書を伴う添付文書も含む)中に含まれる。
【0139】
医学的使用
【0140】
本発明のさらなる態様は、そのゲノム中に、医薬における使用のための少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体をコードする組換えラブドウイルスを提供する。
【0141】
本発明の組換えラブドウイルスは、腫瘍微小環境において免疫原性細胞死及び自然免疫細胞の刺激と組み合わされた腫瘍細胞溶解を効率的に誘導する。したがって、本発明の組換えラブドウイルスは、癌の処置及び/又は防止のために有用である。
【0142】
さらなる態様では、本発明の組換えラブドウイルスは、癌を患う個体に治療的に効果的な量の組換えラブドウイルスを投与することを含み、それにより、癌の1つ又は複数の症状を寛解することを含む、癌を処置及び/又は防止するための方法において使用することができる。
【0143】
さらに別の態様では、本発明は、癌の処置及び/又は防止のための薬物の製造のための、本発明に従った組換えラブドウイルスの使用をさらに提供する。
【0144】
さらに別の態様では、本発明の組換えラブドウイルスは、治療的に効果的な量の組換えラブドウイルスを胃腸癌、肺癌、又は頭頸部癌を患う個人に投与し、それにより、胃腸癌、肺癌、又は頭頸部癌の1つ又は複数の症状を寛解させることを含む、胃腸癌、肺癌、又は頭頸部癌を処置及び/又は防止するための方法において使用することができる。
【0145】
疾患の予防又は治療のために、組換えラブドウイルスの適切な投与量は、上に定義するように、多様な要因、例えば処置される疾患の種類、疾患の重症度及び経過、組換えラブドウイルスが予防的又は治療的な目的のために投与されるのか否か、以前の治療、患者の病歴及び組換えラブドウイルスへの応答、及び主治医の判断などに依存しうる。組換えラブドウイルスは、一度で又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0146】
一態様では、癌は固形癌である。固形癌は、脳癌、結腸直腸癌、口腔咽頭扁平上皮癌、胃癌、胃食道接合部腺癌、食道癌、肝細胞癌、膵臓腺癌、胆管癌、膀胱尿路上皮癌、転移性黒色腫、前立腺癌、乳癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、神経膠芽細胞腫、非小細胞肺癌、脳腫瘍、又は小細胞肺癌でありうる。好ましいのは、胃腸癌、肺癌、及び頭頸部癌の処置である。
【0147】
組換えラブドウイルスは、任意の適した手段(経口、非経口、皮下、腫瘍内、静脈内、皮内、腹腔内、肺内、及び鼻腔内を含む)により投与される。非経口注入は、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与を含む。また、組換えラブドウイルスは、パルス注入により適切に投与される。一態様では、投薬は、投与が短時間であるか、又は慢性であるかに部分的に依存し、注射、最も好ましくは静脈内注射又は皮下注射により与えられる。
【0148】
本発明の特定の組換えラブドウイルスならびにその特定の薬物動態学的特性及び他の特性に依存し、それは、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、又は6日毎、毎週、毎月などに投与されうる。投与計画は、長期の毎週の処置を含みうる。「長期」により、少なくとも2週間、好ましくは数ヶ月、又は数年の期間を意味する。
【0149】
処置スケジュールは、種々の計画を含みうるが、典型的には、1、2、3、又は4週間の期間にわたり患者に投与される複数の用量、場合により、その後に1つ又は複数のさらなる処置回数が要求される。一態様では、本発明の組換えラブドウイルスは、所与の期間内に最大1、2、3、4、5、又は6用量で患者に投与される。好ましくは、処置の最初の回は3週間以内に終わる。3週間の処置の経過の間に、組換えラブドウイルスを、以下のスキームに記載されているように患者に投与してもよい:(i)0日目(ii)0日目及び3日目;(iii)0日目、3日目、及び6日目;(iv)0日目、3日目、6日目、及び9日目;(v)0日目及び5日目;(vi)0日目、5日目、及び10日目;(vii)0日目、5日目、10日目、及び15日目に1回。これらの計画を反復し、2回目又は3回目の処置が、1回目の処置の転帰に依存して必要になりうる。1回目の処置に基づいて計算すると、2回目の処置は、好ましくは、21日目、42日目、及び63日目にさらなる処置を含む。好ましい実施形態では、本発明の組換えラブドウイルスは、以下のスキームに従って患者に投与する:0日目、3日目、21日目、42日目、63日目。
【0150】
用語「抑制」は、本明細書中では、「寛解」及び「軽減」と同じ文脈において使用し、疾患の1つ又は複数の特性の緩和又は減少を意味する。本発明の組換えラブドウイルス又は医薬的組成物は、良好な医療行為と一致する様式で製剤化され、投薬され、及び投与される。この文脈における考慮すべき要因は、処置されている特定の障害、処置されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に公知の他の要因を含む。投与される組換えラブドウイルスの「治療的に効果的な量」は、そのような考慮事項により左右され、癌の臨床症状を防止、寛解、又は処置するために必要な最小量、特にこれらの障害に効果的である最小量である。
【0151】
別の態様では、本発明の組換えラブドウイルスは、複数回で及びいくつかの用量において投与してもよい。一態様では、組換えラブドウイルスの最初の用量は腫瘍内に投与し、組換えラブドウイルスのその後の用量は静脈内に投与する。さらなる態様では、組換えラブドウイルスの最初の用量及び少なくとも1つ又は複数のその後の用量は、腫瘍内に投与し、組換えラブドウイルスのその後の用量は、静脈内に投与する。その後の投与は、最初の腫瘍内投与後の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、又は31日に投与してもよい。
【0152】
別の態様では、組換えラブドウイルスの最初の用量は、静脈内に投与し、組換えラブドウイルスのその後の用量は、腫瘍内に投与する。その後の投与は、最初の静脈内投与後の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、又は31日に投与してもよい。
【0153】
別の態様では、組換えラブドウイルスは静脈内投与し、組換えラブドウイルスのその後の用量は腫瘍内投与する。
【0154】
別の態様では、組換えラブドウイルスは、各々の時間点で静脈内及び腫瘍内に投与する。
【0155】
上記のように、本発明の組換えラブドウイルスは、癌細胞に対する免疫応答を刺激するための多くの有用性を有する。強力な免疫活性化能は、腫瘍の微小環境に制限されることが観察された。このように、好ましい態様では、本発明の組換えラブドウイルスは、患者に全身的に投与してもよい。全身適用性は重要な属性である。なぜなら、多くの癌が高度に転移しており、到達が困難な腫瘍病変ならびに到達不可能な腫瘍病変の処置が可能になるためである。この固有の免疫刺激特性のために、本発明に従った組換えラブドウイルスは、転移性腫瘍の処置のために特に有用である。
【0156】
一部の患者は、チェックポイント阻害剤治療に耐性を発生し、そのような患者は、IFN経路において変異を蓄積するように思われることが観察された。従って、一態様では、本発明の組換えラブドウイルス、特に本発明の組換え水疱性口内炎ウイルスは、チェックポイント阻害剤治療に耐性を発生した患者の処置のために有用である。組換えラブドウイルス、及び特に本発明の組換え水疱性口内炎ウイルスの固有の免疫促進特性のために、そのような処置された患者は、チェックポイント阻害剤治療の継続について適格となりうる。
【0157】
好ましい実施形態では、本発明の組換えラブドウイルス、特に本発明の組換え水疱性口内炎ウイルスは、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤(例、PD-1又はPD-L1へのアンタゴニス抗体)のいずれかを用いたチェックポイント阻害剤治療を完了した非小細胞肺癌を伴う患者の処置のために有用である。
【0158】
上の医薬的製剤又は治療的方法のいずれかを、本発明の組換えラブドウイルス又は医薬的組成物のいずれか1つを使用して行ってもよいことが理解される。
【0159】
組み合わせ
【0160】
本発明はまた、現在使用されている及び/又は先行技術において公知である処理/方法と比較し、特定の利点を提供する組み合わせ処理/方法を提供する。これらの利点は、インビボでの有効性(例、改善された臨床応答、応答の延長、応答速度の増加、反応の持続時間、疾患の安定化率、安定化の持続時間、疾患進行までの時間、無増悪生存期間(PFS)及び/又は全生存期間(OS)、その後の耐性の発生など)、安全かつ十分な耐容性を示す投与、ならびに有害事象の頻度及び重症度の低下を含みうる。
【0161】
本発明の組換えラブドウイルスは、他の薬理学的に活性な成分、例えば、最先端の又は標準治療の化合物(例えば、例、細胞分裂停止物質又は細胞毒性物質、細胞増殖阻害剤、抗血管新生物質、ステロイド、免疫調節剤/チェックポイント阻害剤など)との組み合わせにおいて使用してもよい。
【0162】
本発明の組換えラブドウイルスとの組み合わせにおいて投与してもよい細胞分裂停止及び/又は細胞傷害性活性物質は、ホルモン、ホルモン類似体及び抗ホルモン剤、アロマターゼ阻害剤、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト、成長因子(成長因子、例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、ヒト表皮成長因子(HER 、例、HER2、HER3、HER4)及び肝細胞成長因子(HGF)など)の阻害剤を含むが、これらに制限せず、阻害剤は、例えば、(抗)成長因子抗体、(抗)成長因子受容体抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、セツキシマブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、ニンテダニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ボスチニブ、及びトラスツズマブなど;代謝拮抗剤(例、葉酸拮抗剤、例えばメトトレキサート、ラルチトレキサート、ピリミジン類似体、例えば5-フルオロウラシル(5-FU)など、ゲムシタビン、イリノテカン、ドキソルビシン、TAS-102、カペシタビン及びゲムシタビン、プリン及びアデノシン類似体、例えばメルカプトプリン、チオグアンなど、クラドリビン及びペントスタチン、シタラビン(ara C);抗腫瘍抗生物質(例、アントラサイクリン);白金誘導体(例、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤(例、エストラムスチン、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、ニトロソウレア、例えばカルムスチン及びロムスチンなど、チオテパ);有糸分裂阻害剤(例、ビンカアルカロイド、例えばビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビンクリスチンなど;及びタキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセルなど);血管新生阻害剤(ベバシズマブ、ラムシルマブ、及びアフリベルセプトを含む)、チューブリン阻害剤;DNA合成阻害剤、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(例、エピポドフィロトキシン、例えばエトポシド及びエトポフォスなど、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ミトキサントロン)、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤(例、PDK1阻害剤、Raf阻害剤、A-Raf阻害剤、B-Raf阻害剤、C-Raf阻害剤、mTOR阻害剤、mTORC1/2阻害剤、PI3K阻害剤、PI3Kα阻害剤、デュアルmTOR/PI3K阻害剤、STK33阻害剤、AKT阻害剤、PLK1阻害剤(例えばボラセルチブなど)、CDK阻害剤(CDK9阻害剤を含む)、オーロラキナーゼ阻害剤)、チロシンキナーゼ阻害剤(例、PTK2/FAK阻害剤)、タンパク質タンパク質相互作用阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、FLT3阻害剤、BRD4阻害剤、IGF-1R阻害剤、Bcl-xL阻害剤、Bcl-2阻害剤、Bcl-2/Bcl-xL阻害剤、ErbB受容体阻害剤、BCR-ABL阻害剤、ABL阻害剤、Src阻害剤、ラパマイシン類似体(例、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、シロリムス)、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、DNMT阻害剤、HDAC阻害剤、ANG1/2阻害剤、CYP17阻害剤、放射性医薬品、免疫療法剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤(例、CTLA4、PD1、PD-L1、LAG3、及びTIM3結合分子/免疫グロブリン、例えばイピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)及び種々の化学療法剤、例えばアミフォスチン、アナグレリド、クロドロナート、フィルグラスチン、インターフェロン、インターフェロンアルファ、ロイコボリン、リツキシマブ、プロカルバジン、レバミゾール、メスナ、ミトタン、パミドロネート、及びポルフィマー;プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブなど);Smac及びBH3模倣物;p53機能性を回復する薬剤(mdm2-p53アンタゴニストを含む);Wnt/ベータカテニンシグナル伝達経路の阻害剤;及び/又はサイクリン依存性キナーゼ9阻害剤である。
【0163】
本発明の組換えラブドウイルスは、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストのいずれかとの組み合わせ処置において使用することができる。そのような組み合わせ処置は、物質の非固定(例、遊離)の組み合わせとして、又は固定された組み合わせ(例、キット部品)の形態で与えてもよい。
【0164】
この文脈において、本発明の意味内での「組み合わせ(combination)」又は「組み合わせた(combined)」は、限定しないが、1を上回る活性剤の混合又は組み合わせからもたらされ、固定及び非固定(例、遊離)の両方の組み合わせ(キットを含む)及び使用(例えば、例、成分又は薬剤の同時、併用、逐次、連続、代替、又は別々の使用を含む。用語「固定された組み合わせ」は、活性剤が両方とも、単一の実体又は投薬量の形態で同時に患者に投与されることを意味する。用語「非固定の組み合わせ」は、活性剤が両方とも、特定の時間制限を伴わずに、同時に、併用で、又は連続的に別々の実体として患者に投与されることを意味し、そのような投与によって、患者の身体において2つの化合物の治療的に効果的なレベルが提供される。後者はまた、カクテル治療(例、3つ又はそれ以上の活性剤の投与)に適用される。
【0165】
本発明は、本明細書中に記載する癌の処置における、好ましくは固形癌の処置のための使用のための、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストとの組み合わせにおける組換えラブドウイルスを提供する。
【0166】
本発明はまた、本明細書中に記載する癌の処置及び/又は防止のための、好ましくは、固形癌の処置のための薬物の製造のための、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストとの組み合わせにおける組換えラブドウイルスの使用を提供する。
【0167】
本発明はさらに、治療的に効果的な量の本発明の組換えラブドウイルス、及びPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストを、癌を患っている個体に投与し、それにより、癌の1つ又は複数の症状を寛解させることを含む、癌を処置及び/又は防止するための方法を提供する。本発明の組換えラブドウイルス及びPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは、同時に、連続的に、又は交互に投与してもよい。
【0168】
本発明の組換えラブドウイルス及びPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは、同じ投与経路により、又は異なる投与経路を介して投与してもよい。好ましくは、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは静脈内投与し、本発明の組換えラブドウイルスは腫瘍内投与する。別の実施形態では、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは静脈内投与し、本発明の組換えラブドウイルスは少なくとも1回腫瘍内投与し、組換えラブドウイルスのその後の用量は静脈内投与する。その後の用量は、最初の腫瘍内投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、又は31日に投与してもよい。好ましい実施形態では、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストは、最初の腫瘍内投与後21日に投与する。
【0169】
特に好ましいのは、以下との組み合わせにおける本発明の組換えラブドウイルスを用いた処置である:
【0170】
(i)SMAC模倣物(SMACm)/IAPアンタゴニスト、
【0171】
(ii)免疫療法薬剤(抗PD-1薬剤及び抗PD-L1薬剤を含む)、ならびに抗LAG3薬剤(例えばペムブロリズマブ及びニボルマブなど)、ならびにWO2017/198741において開示されている抗体。
【0172】
本明細書中で提供する組み合わせは、(i)本発明の組換えラブドウイルス、及び(iia)PD-1経路阻害剤、好ましくはPD-1又はPD-L1に対して向けられたアンタゴニスト抗体、又は(iib)SMACm/IAPアンタゴニスを含む。さらに提供するのは、本明細書中に記載する癌の処置のための、(i)及び(iia)又は(i)及び(iib)を含むそのような組み合わせの使用である。
【0173】
別の態様では、(i)本発明の組換えラブドウイルス及び(iia)PD-1経路阻害剤又は(iib)SMACm/IAPアンタゴニストの使用を含む組み合わせ処置を提供する。そのような組み合わせ処置において、本発明の組換えラブドウイルスは、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストと同時に、連続的に、又は交互に投与してもよい。
【0174】
例えば、「併用」投与は、同じ一般的な時間期間内に、例えば、同じ日に、しかし、必ずしも同時にではなく、活性剤を投与することを含む。交互投与は、時間期間、例えば、数日又は1週間の経過にわたる1つの薬剤の投与、それに続く、その後の時間の期間、例えば、数日又は1週間の経過にわたる他の薬剤の投与を含み、次に1つ又は複数のサイクルについてパターンを繰り返す。逐次又は連続投与は、1つ又は複数の用量を使用した第1の時間期間(例えば、数日又は1週間の経過にわたる)の間での1つの薬剤の投与、それに続く、1つ又は複数の用量を使用した第2の時間期間(例えば、数日又は1週間の経過にわたる)の間での他の薬剤の投与を含む。重複するスケジュールも用いてもよく、それは、必ずしも規則的な順序に従わない、処置期間にわたる異なる日での活性剤の投与を含む。これらの一般的なガイドラインに関するバリエーションも、使用する薬剤及び被験者の状態に従って用いてもよい。
【0175】
連続的な処置スケジュールは、本発明の組換えラブドウイルスの投与、それに続くPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストの投与を含む。連続的な処置スケジュールはまた、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストの投与、それに続く本発明の組換えラブドウイルスの投与を含む。連続的な処置スケジュールは、互いの後の1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、又は31日の投与を含みうる。
【0176】
本発明及びその実施形態の全ての意味におけるPD-1経路阻害剤は、PD-1とその受容体との相互作用を阻害する化合物である。PD-1経路阻害剤は、PD-1経路のシグナル伝達を損なうことが可能であり、好ましくはPD-1受容体により媒介される。PD-1阻害剤は、PD-1経路のシグナル伝達に拮抗することが可能なPD-1経路の任意のメンバーに対して向けられた任意の阻害剤でありうる。阻害剤は、PD-1経路の任意のメンバーを標的化するアンタゴニスト抗体でありうるが、好ましくはPD-1受容体、PD-L1又はPD-L2に対して向けられている。また、PD-1経路阻害剤は、PD-1受容体又はPD-1リガンドの活性を遮断するPD-1受容体のフラグメントでありうる。
【0177】
PD-1アンタゴニストは当技術分野において周知であり、例えば、Li et al., Int. J. Mol. Sci. 2016, 17, 1151(参照により本明細書中に組み入れる)により概説されている。任意のPD-1アンタゴニスト、特に抗体(例えばLiらにより開示された抗体など)、ならびに本明細書中で以下に開示するさらなる抗体は、本発明に従って使用することができる。好ましくは、本発明及び全てのその実施形態のPD-1アンタゴニストは、以下の抗体からなる群より選択する:
・ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体);
・ニボルマブ(抗PD-1抗体);
・ピジリズマブ(抗PD-1抗体);
・PDR-001(抗PD-1抗体);
・本明細書中で以下に開示するPD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4、及びPD1-5(抗PD-1抗体)
・アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体);
・アベルマブ(抗PD-L1抗体);
・デュルバルマブ(抗PD-L1抗体)。
【0178】
例えば、Hamid, O. et al.(2013)New England Journal of Medicine 369(2):134-44において開示されているペムブロリズマブ(以前はランブロリズマブとしても公知;商品名キートルーダ;MK-3475としても公知)は、PD-1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である;それは、Fc媒介性の細胞毒性を防止するように設計されたC228Pで変異を含む。ペムブロリズマブは、例えば、US 8,354,509及びWO2009/114335において開示されている。それは、切除不能な又は転移性の黒色腫を患う患者及び転移性NSCLCを伴う患者の処置のためにFDAにより承認されている。
【0179】
ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4;BMS-936558又はMDX1106b)は、PD-1を特異的に遮断する完全ヒトIgG4モノクローナル抗体であり、検出可能な抗体依存性細胞傷害(ADCC)を欠いている。ニボルマブは、例えば、US 8,008,449及びWO2006/121168において開示されている。それは、切除不能な又は転移性の黒色腫、転移性NSCLC、及び進行性腎細胞癌を患う患者の処置のためにFDAにより承認されている。
【0180】
ピジリズマブ(CT-011;Cure Tech)は、PD-1に結合するヒト化IgG1kモノクローナル抗体である。ピジリズマブは、例えば、WO2009/101611において開示されている。
【0181】
PDR-001又はPDR001は、PD-1へのPD-L1及びPD-L2の結合を遮断する、高親和性、リガンド遮断、ヒト化抗PD-1 IgG4抗体である。PDR-001はWO2015/112900及びWO2017/019896において開示されている。
【0182】
抗体PD1-1からPD1-5は、表1において示す配列により定義される抗体分子であり、それにおいてHCは(全長)重鎖を表示し、LCは(全長)軽鎖を表示する:
【0183】
【表1】

【0184】
具体的には、本明細書中で上に記載する抗PD-1抗体分子は、以下を有する:
(PD1-1:)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-2:)配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-3:)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-4:)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号21のアミノ酸配列を含む軽鎖;又は
(PD1-5:)配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖。
【0185】
アテゾリズマブ(テセントリク、MPDL3280Aとしても公知)は、PD-L1を標的化するファージ由来のヒトIgG1kモノクローナル抗体であり、例えば、Deng et al. mAbs 2016;8:593-603において記載されている。それは、尿路上皮癌を患う患者の処置のためにFDAにより承認されている。
【0186】
アベルマブは完全ヒト抗PD-L1IgG1モノクローナル抗体であり、例えば、Boyerinas et al. Cancer Immunol. Res. 2015;3:1148-1157において記載されている。
【0187】
デュルバルマブ(MEDI4736)は、PD-L1に対して高い特異性を伴うヒトIgG1kモノクローナル抗体であり、例えば、Stewart et al. Cancer Immunol. Res. 2015;3:1052-1062において、又はIbrahim et al. Semin. Oncol. 2015;42:474-483において記載されている。
【0188】
Liら(上記)により開示されている、又は臨床治験中にあることが公知である、さらなるPD-1アンタゴニスト、例えばAMP-224、MEDI0680(AMP-514)、REGN2810、BMS-936559、JS001-PD-1、SHR-1210、BMS-936559、TSR-042、JNJ-63723283、MEDI4736、MPDL3280A、及びMSB0010718Cなどは、上に言及するアンタゴニストの代替物として、又はそれに加えて使用してもよい。
【0189】
本明細書中で使用するINNは、オリジネーター抗体と同じ、又は実質的に同じアミノ酸配列を有する全てのバイオシミラー抗体(米国における42USC§262サブセクション(k)及び他の法域における等価の規制の下で認可されたそれらのバイオシミラー抗体を含むが、それらに限定しない)も包含することを意味する。
【0190】
上に列挙するPD-1アンタゴニストは、それらのそれぞれの製造、治療的使用、及び特性を伴い、当技術分野において公知である。
【0191】
一実施形態では、PD-1アンタゴニストはペムブロリズマブである。
【0192】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはニボルマブである。
【0193】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはピジリズマブである。
【0194】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはアテゾリズマブである。
【0195】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはアベルマブである。
【0196】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはデュルバルマブである。
【0197】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはPDR-001である。
【0198】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはPD1-1である。
【0199】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはPD1-2である。
【0200】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはPD1-3である。
【0201】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはPD1-4である。
【0202】
別の実施形態では、PD-1アンタゴニストはPD1-5である。
【0203】
本発明及び全てのその実施形態の意味におけるSMAC模倣物は、IAPタンパク質に結合し、それらの分解を誘導する化合物である。好ましくは、本発明及び全てのその実施形態におけるSMAC模倣物は、以下(A0)からなる群より選択する:
・WO2013/127729において(一般的及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(即ち、化合物)、又はその医薬的に許容可能な塩;
・WO2015/025018において(一般的及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(即ち、化合物)、又はその医薬的に許容可能な塩;
・WO2015/025019において(一般的及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(即ち、化合物)、又はその医薬的に許容可能な塩;
・WO2016/023858において(一般的及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(即ち、化合物)、又はその医薬的に許容可能な塩;
・WO2008/0016893において(一般的及び/又は具体的に)開示されているSMAC模倣物(即ち、化合物)、又はその医薬的に許容可能な塩;
・LCL161、即ち、WO 2008/016893(28/29ページ;[122])の実施例1における化合物A、又はその医薬的に許容可能な塩;
・Debio-1143として公知のSMAC模倣物、又はその医薬的に許容可能な塩;
・ビリナパントとして公知のSMAC模倣物、又はその医薬的に許容可能な塩;
・ASTX-660として公知のSMAC模倣物、又はその医薬的に許容可能な塩;
・CUDC-427として公知のSMAC模倣物、又はその医薬的に許容可能な塩
・表2におけるSMAC模倣物1から26のいずれか1つ、又はその医薬的に許容可能な塩:
【0204】
【表2】




【0205】
表2における化合物1から10の例は、WO2013/127729において開示されている。表2における化合物11から26の例は、WO2016/023858において開示されている。
【0206】
本明細書中で使用する用語「SMAC模倣物/IAPアンタゴニスト」はまた、互変異性体の、医薬的に許容可能な塩の、水和物の、又は溶媒和物(医薬的に許容可能な塩を含む)の形態における、上に列挙するSMAC模倣物を含む。それはまた、全てのその固体、好ましくは結晶形態、ならびにその医薬的に許容可能な塩、水和物及び溶媒和物(医薬的に許容可能な塩の水和物及び溶媒和物を含む)の全ての結晶形態におけるSMAC模倣物を含む。
【0207】
上に列挙する全てのSMAC模倣物は、それぞれの合成及び特性を伴い、当技術分野において公知である。上に言及する全ての特許出願を、参照によりその全体において組み入れる。
【0208】
一実施形態では、SMAC模倣物は、LCL161又はその医薬的に許容可能な塩である(A1)。
【0209】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物1又はその医薬的に許容可能な塩である(A2)。
【0210】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物2又はその医薬的に許容可能な塩である(A3)。
【0211】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物3又はその医薬的に許容可能な塩である(A4)。
【0212】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物4又はその医薬的に許容可能な塩である(A5)。
【0213】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物5又はその医薬的に許容可能な塩である(A6)。
【0214】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物6又はその医薬的に許容可能な塩である(A7)。
【0215】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物7又はその医薬的に許容可能な塩である(A8)。
【0216】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物8又はその医薬的に許容可能な塩である(A9)。
【0217】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物9又はその医薬的に許容可能な塩である(A10)。
【0218】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物10又はその医薬的に許容可能な塩である(A11)。
【0219】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物11又はその医薬的に許容可能な塩である(A12)。
【0220】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物12又はその医薬的に許容可能な塩である(A13)。
【0221】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物13又はその医薬的に許容可能な塩である(A14)。
【0222】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物14又はその医薬的に許容可能な塩である(A15)。
【0223】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物15又はその医薬的に許容可能な塩である(A16)。
【0224】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物16又はその医薬的に許容可能な塩である(A17)。
【0225】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物17又はその医薬的に許容可能な塩である(A18)。
【0226】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物18又はその医薬的に許容可能な塩である(A19)。
【0227】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物19又はその医薬的に許容可能な塩である(A20)。
【0228】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物20又はその医薬的に許容可能な塩である(A21)。
【0229】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物21又はその医薬的に許容可能な塩である(A22)。
【0230】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物22又はその医薬的に許容可能な塩である(A23)。
【0231】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物23又はその医薬的に許容可能な塩である(A24)。
【0232】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物24又はその医薬的に許容可能な塩である(A25)。
【0233】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物25又はその医薬的に許容可能な塩である(A26)。
【0234】
別の実施形態では、SMAC模倣物は、表2における化合物26又はその医薬的に許容可能な塩である(A27)。
【0235】
全ての実施形態(A1)から(A27)は、SMAC模倣物の性質に関して、実施形態(A0)の好ましい実施形態である。
【0236】
組み合わせ処置に関する好ましい実施形態では、組換えラブドウイルスは、そのゲノム中に、以下を含む群より選択される、少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードする組換え水疱性口内炎ウイルスである:(i)プラスミン処理CCL21タンパク質、(ii)c末端切断CCL21タンパク質、(iii)配列番号2を含む、又は配列番号2と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、(iv)配列番号3を含む、又は配列番号3と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、(v)配列番号4を含む、又は配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、(vi)シグナルペプチド配列をさらに含む(i)~(v)のいずれかに従ったタンパク質、(vii)配列番号1を含む、又は配列番号1と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、あるいは(viii)配列番号5を含む、又は配列番号5と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、それにおいて組換え水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換され、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換される。
【0237】
組み合わせ処置に関するさらに好ましい実施形態では、組換えラブドウイルスは、そのゲノム中に、水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、及び少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードする組換え水疱性口内炎ウイルスであり、それにおいてCCL21タンパク質又はその機能的変異体は、以下を含む群より選択される:(i)プラスミン処理CCL21タンパク質、(ii)c末端切断CCL21タンパク質、(iii)配列番号2を含む、又は配列番号2と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、(iv)配列番号3を含む、又は配列番号3と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、(v)配列番号4を含む、又は配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、(vi)シグナルペプチド配列をさらに含む(i)~(v)のいずれかに従ったタンパク質、(vii)配列番号1を含む、又は配列番号1と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、あるいは(viii)配列番号5を含む、又は配列番号5と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するタンパク質、それにおいて水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換され、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換され、それにおいて核タンパク質(N)は、配列番号7において示すアミノ酸又は配列番号7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含み、リンタンパク質(P)は、配列番号8において示すアミノ酸又は配列番号8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含み、ラージタンパク質(L)は、配列番号9において示すアミノ酸又は配列番号9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含み、マトリックスタンパク質(M)は、配列番号10において示すアミノ酸又は配列番号10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含む。
【0238】
組み合わせ処置に関するより好ましい実施形態では、組換えラブドウイルスは、そのゲノム中に少なくとも1つのCCL21タンパク質又はその機能的変異体、好ましくはヒトCCL21をコードする組換え水疱性口内炎ウイルスであり、それにおいてCCL21タンパク質又はその機能的変異体は、配列番号5を含む、又は配列番号5と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93% 、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有し、それにおいて組換え水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換され、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換される。
【0239】
本発明の組換えラブドウイルス、特に本発明の水疱性口内炎ウイルスとPD-1阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストとの組み合わせは、癌の処置において例外的に効果的であったが、追加のカーゴをコードしない、即ち、CCL21タンパク質をコードしない水疱性口内炎ウイルスの組み合わせも、PD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストと組み合わせた場合に効果的であることが本発明者らにより見出された。特に、VSV-GP(水疱性口内炎ウイルスとLCMVの糖タンパク質)とPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストの組み合わせ処置は、両方とも本明細書中に記載するように、癌、好ましくは固形癌の処置のために効率的であった。従って、また、本明細書中で提供するのは、CCL21タンパク質をコードしないVSV-GP及びPD-1経路阻害剤、好ましくは、PD-1又はPD-L1に対して向けられるアンタゴニスト抗体又はSMACm/IAPアンタゴニストを含む組み合わせである。さらに提供するのは、本明細書中に記載するような癌の処置のためのそのような組み合わせの使用である。さらに提供するのは、CCL21タンパク質をコードしないVSV-GP及びPD-1経路阻害剤又はSMACm/IAPアンタゴニストの使用を含む組み合わせ処置である。
【0240】
CCL21タンパク質をコードしないVSV-GPの組み合わせ処置に関連して、組換えラブドウイルスは、組換え水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換されている、及び/又は糖タンパク質Gが、LCMVの糖タンパク質GPにより置換されている組換え水疱性口内炎ウイルスであることが好ましい。
【0241】
CCL21タンパク質をコードしないVSV-GPの組み合わせ処置にさらに関連して、組換えラブドウイルスは、そのゲノム中に水疱性口内炎ウイルス核タンパク質(N)、ラージタンパク質(L)、リン酸化タンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)をコードする組換え水疱性口内炎ウイルスであることが好ましく、それにおいて、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質Gをコードする遺伝子は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質GPをコードする遺伝子により置換される、及び/又は糖タンパク質Gは、LCMVの糖タンパク質GPにより置換される、ならびに、それにおいて核タンパク質(N)は、配列番号7において示すアミノ酸、あるいは配列番号7と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含む、リン酸化タンパク質(P)は、配列番号8において示すアミノ酸、あるいは配列番号8と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含む、ラージタンパク質(L)は、配列番号9において示すアミノ酸、あるいは配列番号9と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含む、及びマトリックスタンパク質(M)は、配列番号10において示すアミノ酸、あるいは配列番号10と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一の機能的変異体を含む。
【0242】
ウイルスの生成、産生、及びウイルス産生細胞
【0243】
本発明はまた、細胞が、本発明に従った組換えラブドウイルス又は組換え水疱性口内炎ウイルスを産生することを特徴とするウイルス産生細胞を提供する。
【0244】
細胞は、任意の起源のものでありうるが、単離された細胞として、又は細胞集団中に含まれる細胞として存在しうる。組換えラブドウイルス又は組換え水疱性口内炎ウイルスを産生する細胞は哺乳動物細胞であることが好ましい。より好ましい実施形態では、本発明のウイルス産生細胞は、哺乳動物細胞が多能性成人前駆細胞(MAPC)、神経幹細胞(NSC)、間葉幹細胞(MSC)、HeLa細胞、HEK細胞、任意のHEK293細胞(例、HEK293F又はHEK293T)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、又はVero細胞もしくは骨髄由来腫瘍浸潤細胞(BM-TIC)であることを特徴とする。
【0245】
あるいは、ウイルス産生細胞は、ヒト細胞、サル細胞、マウス細胞、又はハムスター細胞でありうる。当業者は、所与の細胞がウイルスを産生するか否か、及び、このように、特定の細胞が本発明の範囲内に入るか否かをテストする際での使用のために適した方法を知っている。この点で、本発明の細胞により産生されるウイルスの量は特に限定しない。好ましいウイルス力価は、感染後、さらなる下流のプロセシングを伴わず、所与の細胞培養物の粗上清中で≧1×10 TCID50/ml又は≧1×10ゲノムコピー/mlである。
【0246】
特定の実施形態では、本発明のウイルス産生細胞は、細胞が、VSVのタンパク質N、L、P、及びMをコードする遺伝子n、l、p、及びmならびにLCMV-GP、Dandenong-GP、又はMopeia-GP糖タンパク質をコードする遺伝子gpからなる群より選択される遺伝子の少なくとも1つの発現のための1つ又は複数の発現カセットを含むことを特徴とする。
【0247】
本発明の意味におけるウイルス産生細胞は、複製不可能なベクターからの組換えラブドウイルスの産生のための古典的なパッケージング細胞、ならびに複製可能なベクターからの組換えラブドウイルスの産生のための産生細胞を含む。パッケージング細胞は通常、パッケージングされるそれぞれのベクターを欠く、及び/又はウイルスの産生のために必要である必須遺伝子の発現のための1つ又は複数のプラスミドを含む。そのような細胞は、所望の目的のために適した適切な細胞株を選択することができる当業者には公知である。
【0248】
本発明の組換えラブドウイルスは、当業者に公知の方法に従って産生することができ、(1)細胞中にトランスフェクトされたcDNAの使用又は(2)ヘルパー細胞中にトランスフェクトされたcDNAの組み合わせ、あるいは(3)細胞中にトランスフェクトされたcDNA(細胞をヘルパー/ミニウイルスにさらに感染させて、感染性又は非感染性のいずれかの組換えラブドウイルスを産生するために必要な残りの成分又は活性をトランスで提供する)を含むが、これらに限定しない。これらの方法のいずれか(例、ヘルパー/ミニウイルス、ヘルパー細胞株、又はcDNAトランスフェクションのみ)を使用する場合、要求される最小成分は、(1)ラブドウイルスNタンパク質、Pタンパク質、及びLタンパク質によるゲノム(又はアンチゲノム)RNAのキャプシド形成、ならびに(2)ゲノム又はアンチゲノム(複製中間体)RNA等価物の複製のためのシス作用シグナルを含むDNA分子である。
【0249】
複製エレメント又はレプリコンは、5′及び3′末端にラブドウイルスのリーダー配列及びトレーラー配列を最小限に含むRNAの鎖である。ゲノムセンス中では、リーダーは3′末端にあり、トレーラーは5′末端にある。これら2つの複製シグナルの間に配置された任意のRNAは順に複製される。リーダー領域及びトレーラー領域はさらに、転写及び複製を開始するために必要である、Nタンパク質によるキャプシド形成及びポリメラーゼ結合の目的のために最小限のシス作用エレメントを含まなければならない。組換えラブドウイルスを調製するために、G遺伝子を含むミニウイルスはまた、リーダー領域、トレーラー領域、及びGタンパク質mRNAを産生するための適切な開始シグナル及び終結シグナルを伴うG遺伝子を含みうる。ミニウイルスがM遺伝子をさらに含む場合、Mタンパク質mRNAを産生するための適切な開始シグナル及び終結シグナルも存在しなければならない。
【0250】
組換えラブドウイルスゲノム内に含まれる任意の遺伝子について、その遺伝子は、それらの遺伝子の発現及びタンパク質産物の産生を可能にする適切な転写開始シグナル及び終結シグナルにより隣接されうる(Schnell et al., Journal of Virology, p.2318-2323, 1996)。「非感染性」組換えラブドウイルスを産生するために、組換えラブドウイルスは最小限のレプリコンエレメントならびにN、P、及びLタンパク質を有さなければならず、それはM遺伝子を含まなければならない。これによって、細胞から出芽するウイルス粒子が産生されるが、しかし、非感染性粒子である。「感染性」粒子を産生するために、ウイルス粒子は、例えば付着タンパク質又は受容体リガンドの使用を通じて、など、ウイルス粒子の結合及び融合を媒介することができるタンパク質を追加で含まなければならない。ラブドウイルスの天然の受容体リガンドはGタンパク質である。
【0251】
組換えラブドウイルスの構築を可能にする任意の細胞を使用することができる。感染性ウイルス粒子を調製するための1つの方法は、T7 RNAポリメラーゼ又は他の適切なバクテリオファージポリメラーゼ、例えばT3又はSP6ポリメラーゼなどをコードするプラスミドで感染させた適切な細胞株を含む。細胞を次に、G、N、P、L、及びMラブドウイルスタンパク質をコードする遺伝子を含む個々のcDNAでトランスフェクトしてもよい。これらのcDNAは、組換えラブドウイルス粒子を構築するためのタンパク質を提供する。細胞は、当技術分野において公知の任意の方法によりトランスフェクトすることができる。
【0252】
また、細胞株中にトランスフェクトされるのは、ラブドウイルスゲノムRNA等価物を含む「ポリシストロン性cDNA」である。感染性の組換えラブドウイルス粒子が感染細胞中で溶解性であることを意図している場合、次に、N、P、M、及びLタンパク質をコードする遺伝子、ならびに異種核酸セグメントが存在しなければならない。感染性の組換えラブドウイルス粒子が溶解性であることを意図していない場合、次に、Mタンパク質をコードする遺伝子はポリシストロン性DNA中に含まれない。「ポリシストロン性cDNA」により、それは、N、P、及びLタンパク質をコードする遺伝子を少なくとも含む転写ユニットを含むcDNAを意味する。組換えラブドウイルスポリシストロン性DNAはまた、タンパク質変異体又はそのポリペプチドフラグメントをコードする遺伝子、あるいは治療的核酸又はタンパク質を含みうる。あるいは、最初に産生されたウイルス粒子又はそのフラグメントと最初に会合する任意のタンパク質がトランスで供給されうる。
【0253】
また、熟慮するのは、CCL21をコードする遺伝子を含むポリシストロン性cDNAである。熟慮されるポリシストロン性cDNAは、タンパク質変異体をコードする遺伝子、レポーターをコードする遺伝子、治療的核酸、及び/又はN-P-L遺伝子又はN-P-L-M遺伝子のいずれかを含みうる。組換えラブドウイルスを生成する際での最初の工程は、cDNAからゲノム等価物又はアンチゲノム等価物であるRNAの発現である。次に、そのRNAはNタンパク質によりパッケージ化され、P/Lタンパク質により複製される。そのようにして産生された組換えウイルスを回収することができる。Gタンパク質が組換えRNAゲノムに存在しない場合、次にそれは、典型的には、トランスで供給される。Gタンパク質及びMタンパク質の両方が存在しない場合、次に両方がトランスで供給される。「非感染性ラブドウイルス」粒子を調製するために、手順は、細胞中にトランスフェクトされたポリシストロン性cDNAがラブドウイルスのN、P、及びL遺伝子だけを含むことを除き、上記と同じでよい。非感染性ラブドウイルス粒子のポリシストロン性cDNAは、タンパク質をコードする遺伝子を追加で含みうる。
【0254】
トランスフェクトされた細胞を、通常、所望の温度、通常は約37度で少なくとも24時間にわたりインキュベートする。非感染性ウイルス粒子について、上清を収集し、ウイルス粒子を単離する。感染性ウイルス粒子については、ウイルスを含む上清を回収し、新鮮な細胞に移す。新鮮な細胞を約48時間にわたりインキュベートし、上清を回収する。
【0255】
本発明の他の特色及び利点は、例として本発明の原理を例証する以下のより詳細な実施例から明らかになるであろう。
【0256】
実施例
【0257】
実施例1
【0258】
VSV-GP感染腫瘍における免疫浸潤/活性化及び免疫チェックポイント発現の誘導。
【0259】
発現分析/NanoString(図1
【0260】
VSV-GPプラットフォーム免疫細胞浸潤(T細胞:CD3イプシロン、CD4及びCD8)を用いた治療的介入の影響をよりよく理解するために、活性化(CD69、グランザイムB(GzmB)及びパーフォリン(Prf1))ならびに免疫チェックポイント(PD-L1(CD274)、PD-1(Pdcd1)、Ctla-4、Tigit、Lag3)発現を対照又はVSV-GP感染腫瘍において分析した。この目的のために、樹立されたLLC1-IFNARKO(インターフェロンアルファ受容体について欠失されたLLC1腫瘍細胞)腫瘍を伴うC57BL/6マウスを対照として使用した、又は1×10 TCID50のVSV-GPの単一の静脈内注射で処置した。処置後7日目に腫瘍を切除した;全RNAを、NanoStringからの「Pan Cancer Immune Profiling Panel」を使用し、製造元の指示に従って抽出し、分析した。図1において描写するように、VSV-GP処置によって、PD-L1遺伝子及びPD-1遺伝子を含む、分析された遺伝子の発現の強力な上方調節がもたらされた。
【0261】
実施例2
【0262】
有効性:抗PD-1を伴うVSV-GPコンボ
【0263】
腫瘍成長(図2A~D)
【0264】
癌患者におけるPD-1もしくはPD-L1遮断抗体の臨床的な成功及びVSV-GPプラットフォームを用いた処置が免疫チェックポイント、例えばPD-1及びPD-L1などの上方調節と密接に関連して腫瘍浸潤T細胞の活性化をもたらしたことを例証する本発明者ら自身のデータ(図1を参照のこと)に基づき構築し、VSV-GP由来の治療薬とPD-1遮断抗体を組み合わせることの治療的な可能性を、CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデル(インターフェロンアルファ受容体について欠失されたCT26.CL25腫瘍細胞)を使用して分析した。
【0265】
皮下注射されたCT26Cl25IFNAR-/-腫瘍細胞の生着率は100%(50/50匹マウス)であった。8日目(ウイルス適用日)、腫瘍サイズの中央値は0.05cm3であった。腫瘍成長を60日間隔にわたり追跡した。偽(=未処置)対照は10%(1/10匹)の自然寛解を呈し、1つの腫瘍はずっと遅く成長した。VSV-GP単独で静脈内処置されたマウスでは、30%(3/10匹マウス)の完全寛解が観察された。生着後11日目から開始したPD-1処置単独は、腫瘍成長に対する効果は有さなかった。VSV-GPと抗PD-1の組み合わせによって、高い腫瘍寛解率がもたらされた。抗PD-1をVSV-GP処置後に適用した場合、完全寛解が70%(7/10マウス)で見られた。マウスは少なくとも60日間にわたり腫瘍がないままであった。全体として、高い生存率は組み合わせ群において達成された(示さず)。
【0266】
実施例3
【0267】
記憶形成:VSV-GP&VSV-GP/抗PD-1コンボ。
【0268】
腫瘍成長/再攻撃(図3A~C)
【0269】
VSV-GP/抗PD-1組み合わせ実験からの治癒マウスは、再攻撃から保護される。VSV-GP/抗PD-1組み合わせ群(n=7)又はVSV-GP単独(低用量、n=3)群からのマウスを再攻撃した。簡単には、CT26Cl25IFNAR-/-細胞をマウスの左側腹部中に皮下注射し、腫瘍成長を経時的にモニターした。陽性対照として、年齢及び性別を一致させた無感作マウス(n=10)にCT26Cl25IFNAR-/-を皮下移植し、腫瘍は、以前に観察されたように、一貫して成長し、1回の自然寛解を伴った。腫瘍成長は、VSV-GP/抗PD-1組み合わせ群(n=7)又はVSV-GP単独(低用量、n=3)群において観察されず、治癒マウスが特定の免疫学的記憶を発生したことを示している。
【0270】
実施例4
【0271】
腫瘍におけるCCL21カーゴ及びVSV-GP誘導性ケモカイン発現の選択。
【0272】
NanoString(登録商標)発現分析(図4)。
【0273】
前臨床腫瘍モデルにおけるVSV-GPプラットフォームを用いた治療的介入の影響を、複数のケモカインの発現を測定することにより分析した(図4)。CCL5、CXCL9、CXCL10、及び他のケモカイン発現が、1×10 TCID50のVSV-GPを用いた単一の静脈内処置後の3もしくは7日目に、LLC1-IFNARKO腫瘍において強力に上方調節された。他方で、CCR7リガンドCCL19及びCCL21の発現は、VSV-GP感染により上方調節されなかった。
【0274】
実施例5
【0275】
VSV-CCL21組換え体の生成。
【0276】
ウイルスレスキュー(図5)。
【0277】
実施例4において記載する知見を基に構築し、腫瘍溶解性ウイルスVSV-GPのゲノムを、CCL21遺伝子をコードし(図5を参照のこと)、ウイルス複製の間に腫瘍部位でCCL21ケモカインを局所的に発現し、VSV-GPの「免疫治療ギャップ」を満たし(VSV-GPはCCR7リガンドCCL19及びCCL21を上方調節できなかった)、免疫細胞浸潤ならびに腫瘍溶解性ウイルスVSV-GPの治療的な有効性をさらに改善するように操作した。
【0278】
複製能力のあるVSV-GP-CCL21ウイルス変異体を、VSV-GP及びマウス又はヒトCCL21のバージョンの完全なウイルスゲノムについてのcDNAを含む細菌プラスミドからの逆遺伝学(目的の遺伝子(GOI)のクローニング、ウイルスレスキュー、及び反復プラーク精製)によって生成した。pVSV-GP-CCL21プラスミドは、T7プロモーターの制御下にあるVSVインディアナ血清型の完全なcDNAゲノムを含むプラスミドpVSV-XN1(Schnell et al.]に基づいた。pVSV-GP-CCL21変異体を生成するために、VSV Gエンベロープタンパク質についての全配列を、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV、WE-HPI株)からのGPエンベロープタンパク質のコドン最適化配列により置換した。加えて、CCL21遺伝子をコードする合成核酸を、Gibsonアセンブリにより糖タンパク質GPとウイルスポリメラーゼLの間に挿入した。ウイルス感染の状況におけるCCL21遺伝子の転写は、CCL21オープンリーディングフレームの3′末端の余分のVSV開始シグナル配列により、及び5′末端の追加の停止シグナル配列により確実になる(図5A)。
【0279】
感染性ウイルスを、標準的なトランスフェクション方法(例、CaPO4沈殿、リポソームDNA送達)によるHEK293T又は任意の他のVSV許容細胞株のトランスフェクションにより、プラスミドcDNAから回収(又はレスキュー)した。簡単には、HEK293T細胞に、VSVタンパク質N、P、及びLならびにコドン最適化T7ポリメラーゼをコードするpSF-CAG-ampベースの発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。加えて、VSV-GP、VSV-GP-CCL21、又はそれらの変異体のウイルスゲノムcDNAをコードするプラスミドを同時トランスフェクトした(図5B)。レスキュー過程の第一の工程では、T7ポリメラーゼがプラスミドにコードされたウイルスcDNAからウイルスRNAゲノムを転写する。第二の工程では、VSV-Lタンパク質及びPタンパク質が、同時トランスフェクトされたプラスミドから外因的に発現され、ウイルスRNAゲノムをさらに増幅する。ウイルスRNAゲノムは、VSV-Nタンパク質により同時転写的にキャプシド形成される。加えて、P/Lポリメラーゼ複合体によって、ウイルス遺伝子産物N、P、M、GP、及びLの一式、ならびに挿入されたCCL21変異体の転写が可能になる。ウイルスRNAゲノムは、その後、リボ核タンパク質、マトリックスタンパク質、及びウイルスエンベロープGPを含む感染性VSV粒子中にパッケージ化される。ウイルス粒子は、出芽により細胞から放出される。
【0280】
レスキューされたウイルスを、最初に、許容細胞株、例えばHEK293T、BHK21Cl.13、又はVEROなどで継代させた。数回のプラーク精製を、標準的な方法によるウイルスシードストックの生成前に実施した。簡単には、HEK293T細胞、BHK21Cl.13細胞、又はVERO細胞を、レスキューされたプレシードの連続10倍希釈液で感染させた。約2時間後、細胞単層を2回洗浄し、0.8%の低融点アガロースを含む培地で覆った。感染後24時間から48時間に、プラークを採取し、ウイルスを、追加の回数のプラーク精製のために使用する、又はウイルスシードストックを生成した。
【0281】
実施例5.1
【0282】
インビトロでのウイルス適応度の検証。
【0283】
TCID50図19A~C)
【0284】
感染前1日目に、Vero細胞、BHK21細胞、及びHEK293細胞を6ウェルプレート中に播種した。対応する培養培地は:(a)Vero細胞:DMEM(Gibco、#31966-021)+5%熱不活化FBS(Gibco、#10500-064)、(b)BHK21細胞:GMEM(Life Technologies、#21710-082/025)+10%熱不活化FBS(Gibco、#10500-064)+5%TPBトリプトースホスフェートブロス(Life Technologies、#18050-039)、(c)HEK293細胞:Freestyle(商標)293発現培地(ThermoFisher Scientific、#12338018)である。
【0285】
感染の日に、全ての細胞株が、60~70%の集密度を有した。細胞株当たり1つのウェルを、0.005 MOIのウイルス構築物VSV-GP(GP)、VSV-GP-huCCL21(21)、又はVSV-GP-huCCL21(1-79)(21k)の1つで他のウェルに感染させる前にカウントした(Countess(商標)セルカウンター、Invitrogen)。
【0286】
培養上清(総量3mL)を感染後0時間、24時間、又は48時間に回収し、TCID50/mLを測定することによりウイルス複製能力を決定した。
【0287】
TCID50(組織培養感染量の中央値)を、感染前の1日目に播種したVERO細胞の96ウェルプレート上で決定した。全ての上清のうち、22の連続半対数希釈液(1E-1.0から1E-11.5の範囲)を調製し、4通りに滴定した。感染後の6日目、細胞変性効果(CPE)をプレートの顕微鏡検査により読み取った。
【0288】
TCID50/mLを、スピアマン・カーバーの式M=x+d[0.5-(1/n)(r)]に従って算出した。x:テストされた最も高い希釈での正の指数;d=希釈間の間隔;n=希釈当たりのウェル;r=負の応答の数の合計。
【0289】
実施例5.2
【0290】
インビトロでのカーゴ発現。
【0291】
ELISA/ウエスタンブロット(図6A-B&図12A-B&図18
【0292】
ウイルスCCL21カーゴ(導入遺伝子)の発現を確認及び定量化するため、ならびに異なるCCL21変異体をより良く特徴付けるために、CCL21特異的ELISAならびにウエスタンブロット分析を実施した。図6A及び図12Aにおいて描写するように、VSV-GP-muCCL21(図6A;全長マウスCCL21を発現するVSV-GP)感染HEK293細胞又はVSV-GP-huCCL21(図12A;全長ヒトCCL21を発現するVSV-GP)からの上清をそれぞれ、マウスあるいはヒト特異的ELISAを使用し、ウイルス感染後の異なる時間点で分析した。また、ヒトCCL21変異体、すなわち、全長ヒトCCL21及びヒトCCL21=CCL21(1-79)の最初の79のアミノ酸(シグナル配列を伴わない)に類似したc末端切断バージョンを、ヒトCCL21特異的ウエスタンブロットを使用して特徴付けた。図18(左から)において描写するように、CCL21(1-79)又は全長CCL21タンパク質をコードするプラスミドトランスフェクトHEK293細胞からの上清、ならびに示したウイルスで感染されたHEK293細胞からの上清を分析した。ケモカイン変異体は、両方の系(プラスミド及びウイルス)において十分に発現していた。全長CCL21サンプルは複数のCCL21種あるいは分解/切断産物を含んでいたが、CCL21(1-79)タンパク質はきれいな単一バンドとして提示された。
【0293】
実施例5.3
【0294】
インビトロでのカーゴ活性
【0295】
Transwell(T細胞/DC)(図6A&12A&16&17)
【0296】
ウイルスCCL21カーゴ(導入遺伝子)の生物学的機能性を確認し、さらに特徴付けるために、Transwell遊走アッセイにおいてT細胞又は単球由来樹状細胞(moDC)を誘引するそれらの能力を分析した。この目的のために、実施例5.2(図6A及び12A)においてそれぞれ記載する上清、遊走培地だけ(バックグラウンド対照)、組換えCCL21(陽性対照)、又はVSV-GP感染HEK293細胞からの対応する上清(VSV-GPバックグラウンド対照)を含むマウス及びヒトCCL21を、Transwell遊走アッセイ設定の下部ウェルに加え、CD3/28刺激マウス(図6;右部位)又はヒト(図12;右部位)のT細胞を上部チャンバー(Transwellインサート)に加えた。インキュベーション後、下部ウェルの細胞を、Promega(登録商標)CellTiter-Glo(登録商標)細胞生存アッセイを使用して定量した。結果を、遊走培地だけの対照と比べた「倍増」として描写する。さらなる実験は、CCL21の短いカーゴバージョン、CCL21(1-79)(ヒトCCL21のaa 1-79)、及びプラスミン媒介性プロセシングから生じる最短の天然に生じるCCL21フラグメント;上に記載するアッセイを使用したCCL21(1-81)(ヒトCCL21のaa 1-81)(図15を参照のこと)を含んだ。この目的のために、発現プラスミドをトランスフェクトしたHEK293細胞からの上清を生成して分析した(図16を参照のこと)。最後の工程では、VSV-GP、VSV-GP-huCCL21(全長)、及びVSV-GP-huCCL21(1-79)感染HEK293細胞からの上清を、上に記載するTranswell遊走アッセイ及び応答細胞としてのmoDCを使用することにより比較した。このアッセイでは、全長ヒトCCL21及びCCL21(1-79)の両方によって同程度のmoDC遊走がもたらされた(図17を参照のこと)。
【0297】
実施例5.4
【0298】
インビトロでの種の交差反応性(ヒト対マウス&ラット)
【0299】
Transwell(T細胞)(図13
【0300】
マウス及びラットCCL21受容体(CCR7)に対するヒトCCL21の異種間反応性を確認するために、上に記載するTranswell遊走アッセイを、レスポンダーとしてマウス(左)又はラット(右)T細胞と使用した(図13を参照のこと)。遊走アッセイを、示した濃度(下部ウェル)でヒト対マウス(左)及びヒト対ラット(右)の組換えケモカインを使用して実施した。結論として、ヒトCCL21は、対応するマウス及びラットのケモカインの様に、マウス及びラットの系でそれぞれ活性であり、ヒト分子を前臨床げっ歯類(マウス/ラット)モデルでテストすることができることを示している。
【0301】
実施例6:
【0302】
インビボでのカーゴCCL21発現
【0303】
RNAseq(図10
【0304】
ウイルスによりコードされるCCL21の発現を、対照におけるげっ歯類腫瘍、又はVSV-GPもしくはVSV-GP-muCCL21感染腫瘍において分析/確認した。この目的のために、樹立されたLLC1-IFNARKO腫瘍を伴うC57BL/6マウスを対照として使用した、あるいは1×10 TCID50のVSV-GP又はVSV-GP-muCCL21の単一の静脈内注射で処置した。治療後7日目に腫瘍を切除した;全RNAを抽出し、RNAseqを使用して分析した。CD3epsilon及びCXCL10を対照薬として使用した。ウイルスによりコードされるCCL21は、コドン最適化されたDNA配列を読み出しとして使用し、特異的に検出された(図10を参照のこと)。
【0305】
実施例6.1:
【0306】
VSV-GP及びVSV-GP-CCL21の神経毒性の欠如。
【0307】
生存率(図11
【0308】
野生型VSV感染は、ウイルスが脳に接近する場合に神経学的症状を起こしうる。これらの神経学的合併症は、感染した被験者の死亡に導きうる重度脳炎を含む。キメラVSV-GPを使用する利点は、神経感染がほぼ完全に存在せず、VSV骨格を安全な腫瘍溶解剤にすることである。減弱した表現型についての理由は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質を介して促進される、変化したウイルス指向性に起因していると考えられている。神経感染及び脳中でのVSV-GPの伝播は見られないが、他の細胞型、例えばグリア細胞又は星状細胞などにおけるウイルス遺伝子発現が完全に欠如しているか否かは明らかではない。VSV GPによるCCL21導入遺伝子の偶発的な発現は、免疫細胞を誘引し、脳内に有害効果を起こしうるため、VSV-GP-muCCL21の神経毒性評価を行った。
【0309】
スイスCD-1マウスは、右線条体中への定位注射を介して、1×10 TCID50を含む3μlの単一の頭蓋内注射を受けた。PBSを対照群において心臓内投与した。動物を、神経毒性の徴候及び全身の健康について毎日モニターした。PBS(点)、VSV-G DsRed(ひし形)、VSV-GP(四角)、及びVSV-GP muCCL21の実験群でのマウス生存率を、カプランマイヤー曲線としてプロットした(図11B)。カプランマイヤー分析は、テストしたウイルス変異体のいずれも、マウスにおいて神経毒性を示さなかったことを示す。ウイルス表面に野生型VSV糖タンパク質を含むVSV-GDsRed対照群だけが、増加した体重減少を示し(図11A)、心臓感染後の最初の1週間以内に安楽死に導く神経学的徴候を発生した。
【0310】
実施例6.2
【0311】
VSV-GP及びVSV-GP-CCL21のインビボ有効性。
【0312】
腫瘍成長(図14)。
【0313】
VSV-GP及びVSV-GP-huCCL21の治療的な可能性を、CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデルを使用して評価/比較した。この目的のために、樹立された腫瘍を、2×10 TCID50 VSV-GP又はVSV-GP-huCCL21の2つの静脈内注射(0日目及び3日目)で処置した。示すように処置されたマウスの生存率を図1において描写する。
【0314】
実施例6.3
【0315】
VSV-GP-huCCL21及びVSV-GP-CCL21(1-79)のインビボ有効性。
【0316】
腫瘍成長/生存率(図20/21)。
【0317】
VSV-GP-huCCL21及びVSV-GP-huCCL21(1-79)の治療的な可能性を、CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデルを使用して評価/比較した。この目的のために、樹立された腫瘍を、2×10 TCID50 VSV-GP-huCCL21又はVSV-GP-huCCL21(1-79)の2つの静脈内注射(0日目及び3日目)で処置した。示すように処置されたマウスの累積腫瘍成長及び30日生存率を図20/21において描写する。完全にプラスミン処理された(より少ないaa 80/81)及び自由に拡散性の形態のヒトCCL21に対応する短いCCL21変異体(CCL21(1-79))での処置によって、VSV-GP変異体を持つ全長CCL21と比較し、腫瘍成長をより良く制御し、生存率が改善することができた。
【0318】
実施例6.4
【0319】
MoA:VSV-GP-huCCL21及びVSV-GP-huCCL21(1-79)により誘導されるT細胞浸潤。
【0320】
IHC(FIG.22/23)
【0321】
実施例6.3の下で処置された腫瘍を、T細胞浸潤について分析した。FFPE腫瘍切片を、CD4及びCD8ならびにVSV-N及び切断されたカスパーゼ3について染色した。生存可能な(非壊死性)腫瘍領域中の全T細胞(CD4+&CD8+細胞)を定量化した。図22において描写するように、完全にプラスミン処理された(少ないaa 80/81)及び自由に拡散性の形態のヒトCCL21に対応する短いCCL21変異体(CCL21(1-79))によって、腫瘍中により多くのT細胞を誘引することができたが、観察された有効性における増加についての説明を提供する(実施例6.3)。
【0322】
加えて、ウイルスで発現されたCCL21によって、感染されたCT26.CL25腫瘍中に樹状細胞(CD11c陽性)を誘引することができた。樹立されたCT26.CL25腫瘍に、0日目及び3日目に2×10 TCID50のVSV-GP又はVSV-GP-muCCL21を局所(髄腔内)注射した。それぞれの腫瘍のFFPE切片を、樹状細胞浸潤(活性なウイルス複製を伴う腫瘍領域=壊死周縁部)について分析した(図24を参照のこと)。
【0323】
実施例7
【0324】
有効性:SMACmを伴うVSV-GP及びVSV-GP-CCL21コンボ。
【0325】
腫瘍成長/生存率(図7-9)。
【0326】
VSV-GP及びPD-1遮断抗体(実施例2)の組み合わせからの有望なデータに基づき、SMAC模倣物(SMACm)(腫瘍細胞を、細胞死を誘導する刺激/薬剤に対してより感受性にする細胞死経路のモジュレーター)を伴うVSV-GP(図7/9)及びVSV-GP-muCCL21(図8/9)のさらなる組み合わせをテストした。化合物の治療的な相互作用を、CT26.CL25-IFNARKO腫瘍モデルを使用して分析した。この目的のために、樹立されたCT26.CL25-IFNARKO腫瘍を伴うBalb/cマウスを、4×10 TCID50のVSV-GPあるいはVSV-GP-muCCL21を用いた単一の静脈内処置及び/又は100mg/kgのSMACmの1日1回経口(p.o.)投与を、VSV-GPあるいはVSV-GP-muCCL21処置と同じ日に開始して2週間の期間にわたり受けた。VSV-GP及びSMACmの組み合わせによって、対応する単剤療法と比較し、改善された有効性がもたらされた。VSV-GP-muCCL21をSMACmと組み合わせた場合、組み合わせ効果がさらに顕著になり、全ての処置動物の治癒がもたらされた。
図1
図2-1】
図2-2】
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図3-2】
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【配列表】
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