(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20230815BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230815BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/16 C
G01C21/26 C
(21)【出願番号】P 2022059483
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592018320
【氏名又は名称】あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505026686
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三樹 孝博
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸治
(72)【発明者】
【氏名】谷 陽太朗
(72)【発明者】
【氏名】笛田 薫
(72)【発明者】
【氏名】田島 友祐
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155577(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157367(WO,A1)
【文献】特開2002-310680(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167701(WO,A1)
【文献】特開2003-123185(JP,A)
【文献】特開2017-167945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G08G 1/00 - 1/16
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G09B 29/00 - 29/14
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける受付部と、
自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する取得部と、
前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数
と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する予測部と、
前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部と、
前記スコア
と、前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップとを出力する出力部と、
前記リスク地点の少なくとも1つを含む経路変更指示を受け付けることに応じて、前記経路変更指示に含まれるリスク地点を回避する経路を決定する経路変更部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記インシデントの数に応じた態様で前記リスク地点及び/又は前記経路を提示する、請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記リスク地点
に関連付けられたリスク要素に基づいて
、前記リスク要素に関連して発現し得るインシデントを低減するために、自動運転車が走行する前に取り得る策を出力する、請求項
1又は
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記リスク地点及び/又は前記経路を、そのリスクの高さに応じて異なる態様で提示する、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記スコアに基づいて保険料の割引率を決定し、
前記出力部は、前記割引率をさらに出力する、請求項1~
4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記受付部は、前記受け付けた経路の変更を受け付け、
前記取得部は前記変更した経路について環境情報を取得し、
前記予測部は前記変更した経路についてインシデントの数を予測し、
前記評価部は、前記変更した経路のインシデントの数に基づいて前記スコアを算出し、
前記出力部は前記変更した経路のスコアを出力する、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける工程と、
自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する工程と、
前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数
と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する工程と、
前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する工程と、
前記スコア
と、前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップとを出力する工程と
、
前記リスク地点の少なくとも1つを含む経路変更指示を受け付ける工程と、
前記経路変更指示に含まれるリスク地点を回避する経路を決定する工程と
を含
み、
経路が決定されると、前記決定された経路について、前記取得する工程、前記予測する工程、前記算出する工程、及び前記出力する工程を実行する、方法。
【請求項8】
1又は複数のコンピュータに、
自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける処理と、
自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を前記経路について取得する処理と、
前記経路及び前記環境情報に基づいて、前記経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数
と、前記経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点とを予測する処理と、
前記インシデントの数に基づいて、前記経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する処理と、
前記スコア
と、前記経路及び前記リスク地点に基づいてリスクマップとを出力する処理と
、
前記リスク地点の少なくとも1つを含む経路変更指示を受け付ける処理と、
前記経路変更指示に含まれるリスク地点を回避する経路を決定する処理と
を実行させ
、
経路が決定されると、前記決定された経路について、前記取得する処理、前記予測する処理、前記算出する処理、及び前記出力する処理を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路上の危険個所の情報をナビゲーション用の地図上に表示することが行われている。特許文献1には、道路交通に関する危険情報を収集し、その情報を運転者に提供することで安全運転支援に資するようにする技術が開示されている。
【0003】
一方、自動運転車は、運転者に生じがちな不注意等が回避されるので、交通事故削減に資する技術として期待されている。例えば、様々なセンサから取得した情報に基づいて自動運転車を制御する技術等、自動運転システムの開発が盛んにおこなわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動運転車を制御する技術の開発が進められる一方、自動運転車の導入促進に資する技術については、未開拓であると考えられる。特許文献1に記載される技術を含め従来の技術は、人が車両を運転していることが前提であり、その車両が危険地区を走行中、又は危険地区へ近づいているときに、危険地区に関する情報を用いて事故を未然に防止することを目的とするものである。
【0006】
しかしながら、人が車両を運転する場合と自動運転車とでは、同じ経路を走行する場合のリスクは異なる。したがって、従来技術では、ある経路を自動運転車が走行する場合のリスクを評価することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、ある経路を自動運転の車両が走行する場合のリスクを評価し、評価した結果を可視化することが可能な情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける受付部と、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を経路について取得する取得部と、経路及び環境情報に基づいて、経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数を予測する予測部と、インシデントの数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部と、スコアを出力する出力部とを備える。
【0009】
この態様によれば、ある経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数に基づいて、経路を自動運転の車両が走行する場合のリスクを可視化することができる。これにより、経路が自動運転車の走行に適しているか否か、事前に確認することができる。
【0010】
上記情報処理装置において、予測部は、経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点をさらに予測し、出力部は、経路及びリスク地点に基づいてリスクマップをさらに出力してもよい。この態様によれば、ユーザは、経路上のリスク地点を適格に把握することができる。
【0011】
上記情報処理装置において、出力部は、インシデントの数に応じた態様でリスク地点及び/又は経路を提示してもよい。この態様によれば、ユーザは、予測されたインシデントの数に応じて把握される各リスク地点及び/又は経路のリスクの高低を確認することができる。
【0012】
上記情報処理装置において、評価部は、スコアに基づいて保険料の割引率を決定し、出力部は、割引率をさらに出力してもよい。この態様によれば、算出したスコアを保険料に反映させることで、リスク低減策を講じるモチベーションを高めることができる。
【0013】
上記情報処理装置において、出力部は、リスク地点に基づいてリスク低減策を出力してもよい。この態様によれば、事前に把握したリスクに基づいてリスク低減策を出力することで、自動運転の導入促進と共に安全な交通社会の実現を図ることができる。
【0014】
上記情報処理装置において、受付部は、受け付けた経路の変更を受け付け、取得部は変更した経路について環境情報を取得し、予測部は変更した経路についてインシデントの数を予測し、評価部は、変更した経路のインシデントの数に基づいてスコアを算出し、出力部は変更した経路のスコアを出力してもよい。この態様によれば、ユーザは、情報処理装置が評価した自動運転車による走行リスクを考慮して複数の経路の候補の中から最善の経路を選択することができる。
【0015】
上記情報処理装置において、経路変更指示を受け付けることに応じて、リスク地点の少なくとも1つを回避する経路を決定する経路変更部をさらに備えてもよい。この態様によれば、自動運転車における安全性がより高い経路をユーザに提示することができる。
【0016】
上記情報処理装置において、出力部は、リスク地点及び/又は経路を、そのリスクの高さに応じて異なる態様で提示してもよい。この態様によれば、ユーザは、特にリスク低減策を講じるべき地点や経路を直感的に把握することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る方法は、自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける工程と、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を経路について取得する工程と、経路及び環境情報に基づいて、経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数を予測する工程と、インシデントの数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する工程と、スコアを出力する工程とを含む。
【0018】
本発明の他の態様に係るプログラムは、1又は複数のコンピュータに、自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける処理と、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を経路について取得する処理と、経路及び環境情報に基づいて、経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数を予測する処理と、インシデントの数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する処理と、スコアを出力する処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ある経路を自動運転の車両が走行する場合のリスクを評価し、評価した結果を可視化することが可能な情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の処理を説明する概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理装置のブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るリスク評価処理を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るリスク評価処理を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。さらに、当業者であれば、以下に述べる各要素を均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であり、係る実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
(システム構成)
図1を用いて、本発明の概要について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の処理を説明する概略図である。
【0023】
情報処理装置100は、ある経路を自動運転の車両が走行する場合のリスクを評価し、評価した結果を可視化する装置である。
図1に示すように、情報処理装置100は、自動運転車が走行する経路の入力を受け付け、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点を予測する。本実施形態では、情報処理装置100は、
図1に示されるように、入力された経路にリスク地点を付加したリスクマップを提示することができる。リスクマップとは、少なくともインシデントの発生しやすいリスク地点に関する情報を含む地図である。また、情報処理装置100は、予測したリスクについてリスク低減策を提示することができる。一実施形態では、情報処理装置100は、予測したリスク地点の少なくとも1つを回避する経路を提示することができる。
【0024】
さらに、情報処理装置100は、予測したリスク地点とリスク地点に関連付けられたリスク要素とから求められるインシデント数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出することができる。リスク要素とは、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境の要素である。一例では、リスク要素には、歩車分離なし、高架下、交差点、交通量多い等が含まれる。インシデント数とは、経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数である。例えば、1つのリスク地点に複数のリスク要素が関連付けられる場合がある。さらに、1つのリスク要素に複数のインシデントが関連付けられる場合もある。交差点の例では、右折が最もリスクが高く、次に左折のリスクが高く、直進が最もリスクが低いことが想定される。従って、一実施形態では、リスク要素「右折の交差点」には2つのインシデント「対向車接触」及び「歩行者接触」が関連付けられ、リスク要素「左折の交差点」には1つのインシデント「歩行者接触」が関連付けられ、直進の交差点にはインシデントが関連付けられないようにすることができる。一実施形態では、情報処理装置100は、算出したスコアに基づいて、経路を走行する自動運転車の保険料を決定することもできる。
【0025】
ここで、スコアには、例えば数字により表される評価に限らず、ABCや甲乙丙など、文字や記号により表されるランク付けやその他の評価も含まれる。また、自動運転車とは、人間が運転を行わなくとも自動で走行できる自動車をいい、本実施形態では、自動車の運転権限がシステム側にあることを前提としたもの(例えば、自動車の自動運転の自動化レベル3以上)を想定している。
【0026】
(機能構成)
図2は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置のブロック図である。なお、
図2では、単一の情報処理装置100を想定し、必要な機能構成だけを示しているが、情報処理装置100を、複数のコンピュータシステムによる多機能の分散システムの一部として構成することもできるし、1以上の情報処理装置で構成されるクラウドコンピューティングが情報処理装置100における機能構成の一部を実現してもよい。
【0027】
情報処理装置100は、入力部110と、制御部120と、記憶部130と、通信部140と、表示部150とを備えている。
【0028】
入力部110は、情報処理装置100のユーザからの操作を受け付けるように構成され、キーボードやマウス、タッチパネル等によって実現することができる。
【0029】
制御部120は、プロセッサに相当するCPUやMPU等の演算処理部121及びRAM等のメモリ122を備えている。演算処理部121(プロセッサ)は、各種入力に基づき、記憶部130に記録されたプログラムをメモリ122に展開して実行することで、演算処理部121における後述する機能及び処理を実現する。このプログラムは、CD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体に記憶され、若しくはネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされるものであってもよい。メモリ122は、演算処理部121(プロセッサ)によるプログラム実行に必要なワークメモリとして機能する。
【0030】
記憶部130は、ハードディスク等の記憶装置によって構成され、制御部120における処理の実行に必要な各種プログラムや、各種プログラムの実行に必要なデータ等を記録しておくものである。本実施形態では、記憶部130は、地図記憶部131、予測モデル記憶部132及びリスク要素記憶部133を有していることが望ましい。
【0031】
地図記憶部131には、一例として、道路幅、交差点、信号、歩車区分の有無、中央分離の有無、交通量、トンネル、橋等の情報を含む地図情報が保存されている。交通量には、多い、普通、少ない等、複数のレベルのうちの1つが設定されている。なお、時間帯によって交通量に顕著な差が現れる場合には、時間帯に応じて異なる交通量を設定してもよい。
【0032】
予測モデル記憶部132には、リスク予測に用いるモデルが保存されている。本実施形態では、予測モデル記憶部132には、経路及び当該経路の環境情報を入力データとして受け取り、経路上のリスク地点、そのリスク要素、及びインシデント数を出力する予測モデルが保存されている。ここで、経路の環境情報とは、実際に車両が経路を走行する前に事前に入手し得る経路に関する情報を指す。例えば、経路の環境情報には、交差点数情報、道路幅、歩車区分の有無の割合、中央分離の有無の割合、交通量、トンネルの数、橋の数、高架下領域等が含まれる。交差点数情報には、信号の有無や、進路情報(直進、右折、左折)等に基づいて分類した交差点の数が含まれる。本実施形態では、交差点数情報には、進路情報及び信号の有無(直進信号なし、直進信号有り、右折信号なし、右折信号有り、左折信号なし、左折信号有り)で分類した交差点の数が含まれる。
【0033】
リスク要素記憶部133には、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境の要素に関する情報が保存されている。一実施形態では、リスク要素記憶部133には、リスク要素、発現事象例、リスク低減策等が含まれることが望ましい。リスク要素には、予測モデルが出力するリスク要素に対応する要素が保存されている。発現事象例には、リスク要素に関連して発現し得る事象例が保存されている。例えば、本実施形態では、発現事象例には、歩行者飛び出し、自転車はみ出し、通信途絶、対向車接触、歩行者接触、他車の急停止、他車の車線変更等が含まれる。リスク低減策には、リスク要素に関連して発現し得る事象例を低減するために取り得る方策が保存されている。
【0034】
通信部140は、情報処理装置100をネットワークに接続するように構成される。例えば、通信部140は、LANカード、アナログモデム、ISDNモデム等、及びこれらをシステムバス等の伝送路を介して処理部と接続するためのインタフェースから実現することができる。
【0035】
表示部150は、演算処理部121の制御の下で処理された各種の画像を表示するように構成され、ディスプレイ等によって実現することができる。
【0036】
さらに、
図2に示すように、演算処理部121は、機能部として、受付部123、取得部124、予測部125、評価部126、出力部127、及び経路変更部128を備えている。
【0037】
受付部123は、自動運転車が走行する経路の入力を受け付ける。本実施形態では、受付部123は、例えば表示部150に表示された地図上でユーザがタッチパネル等の入力部110を用いてスタート地点、経由地点、目的地点を含む経路を線で指定することにより、自動運転車が走行する経路の入力を受け付ける。別の実施形態では、受付部123は、例えば表示部150に表示された地図上でユーザが入力部110を介してスタート地点、目的地点を指定することにより、指定されたスタート地点と目的地点とを結ぶ最短経路を経路の入力として受け付けてもよい。一実施形態では、受付部123は、経路と共に自動運転車が当該経路を運転する時間の入力を受け付けてもよい。
【0038】
また、受付部123は、表示部150に表示された地図上に示される経路の変更を受け付けることもできる。例えば、ユーザは、予測されたリスク地点に基づいて、当該リスク地点を回避するように経路の一部を変更する入力を行うことができる。一実施形態では、受付部123は、例えば表示部150に表示された経路の第1の点と第2の点とを含む経路をユーザが線で指定することにより、経路の変更を受け付ける。
【0039】
取得部124は、受付部123が受け付けた経路及び地図記憶部131に保存された地図情報に基づいて、予測モデルに入力する変数を取得する。本実施形態では、取得部124は、交差点数情報、道路幅、歩車区分の有無の割合、中央分離の有無の割合、交通量、トンネルの数、橋の数、高架下領域等を含む、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を変数として取得する。交差点数情報には、信号の有無や、進路情報(直進、右折、左折)等に基づいて分類した交差点の数が含まれる。本実施形態では、交差点数情報には、進路情報及び信号の有無(直進信号なし、直進信号有り、右折信号なし、右折信号有り、左折信号なし、左折信号有り)で分類した交差点の数が含まれる。
【0040】
また、取得部124は、後述の経路変更部128が決定した経路及び地図記憶部131に保存された地図情報に基づいて、予測モデルに入力する変数を取得する。
【0041】
予測部125は、自動運転車が走行する経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点を予測する。本実施形態では、予測部125は、予測モデル記憶部132に記憶された予測モデルに、受付部123が受け付けた経路及び取得部124が取得した変数を入力することで経路上のリスク地点、そのリスク要素、及びインシデント数を予測する。また、予測部125は、後述の経路変更部128が決定した経路及び取得部124が取得した変数を予測モデルに入力することで、変更した経路上のリスク地点、そのリスク要素、及びインシデント数を予測する。
【0042】
評価部126は、ある経路を自動運転の車両が走行する場合のリスクを評価する。本実施形態では、評価部126は、予測部125が予測したインシデント数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する。また、一実施形態では、評価部126は、算出したスコアに基づいて、当該経路を走行する自動運転車の保険料を決定する。例えば、評価部126は、スコアを所定範囲のスコアグループに分類するランクと各ランクの割引率とを対応付けた事前定義のテーブルを用いて、規定の保険料からスコアが属するランクの割引率で割り引いた保険料に決定してもよい。
【0043】
出力部127は、経路上のリスク地点を可視化したリスクマップを出力する。本実施形態では、出力部127は、
図1に示されるように、受付部123が受け付けた経路に、予測部125が予測したリスク地点を付加したリスクマップを提示することができる。一実施形態では、出力部127は、リスク地点及び/又は経路を、そのリスクの高さに応じて異なる態様で提示することができる。例えば、出力部127は、リスクの高さに応じてリスク地点を示す記号の大きさを変えて提示してもよいし、リスクの高さに応じて異なる記号を用いてリスク地点を提示してもよいし、リスクの高さに応じてリスク地点及び/又は経路の色を変えて提示してもよい。リスクの高さに応じた態様でリスク地点を提示することで、ユーザは、特にリスク低減策を講じるべき地点や経路を直感的に把握することができる。
【0044】
また、出力部127は、予測部125が予測したリスク地点に関連付けられたリスク要素とリスク要素記憶部133に基づいて、
図1に示されるようなリスク地点情報を出力することができる。リスク地点情報には、位置、リスク要素、発現事象例、リスク低減策等が含まれる。
【0045】
さらに、出力部127は、評価部126が評価した結果を出力することができる。本実施形態では、出力部127は、
図4の右側に示されるように、算出したスコアと保険料の割引率とを含む評価結果を出力することができる。
【0046】
経路変更部128は、ユーザから入力された経路及び予測したリスク地点に基づいて、リスク地点の少なくとも1つを回避する経路を決定する。一実施形態では、経路変更部128は、例えばユーザがリスクマップ上の少なくとも1つのリスク地点を選択して経路変更を指示することに応じて、選択されたリスク地点を回避する経路を決定することができる。経路変更部128により経路が決定されると、取得部124、予測部125、評価部126の処理が行われる。経路変更部128により決定された経路は、リスクマップ上に既に提示されている経路に加えて、または経路に代えて提示することができる。
【0047】
(リスク評価処理)
図3を参照して、本発明の実施形態に係るリスク評価処理を詳細に説明する。本実施形態では、例えば自動運転の導入を検討している企業が走行経路を決定することを支援するために利用する例について説明する。本実施形態では、
図3で説明されるリスク評価処理を行う前に、情報処理装置100の管理者の管理の下、地図記憶部131、予測モデル記憶部132及びリスク要素記憶部133に各データが格納されているものとする。本実施形態では、地図記憶部131には、一例として、道路幅、交差点、信号、歩車区分の有無、中央分離の有無、交通量、トンネル、橋等の情報を含む地図情報が保存されている。交通量には、多い、普通、少ない、の3つのレベルのうちの1つが設定されている。
【0048】
また、本実施形態では、予測モデル記憶部132には、経路及び当該経路の環境情報を入力データとして受け取り、経路上のリスク地点、そのリスク要素、及びインシデント数を出力する予測モデルが保存されている。前述したように、経路の環境情報とは、実際に車両が経路を走行する前に事前に入手し得る経路に関する情報を指す。例えば、経路の環境情報には、交差点数情報、道路幅、歩車区分の有無の割合、中央分離の有無の割合、交通量、トンネルの数、橋の数、高架下領域等が含まれる。交差点数情報には、信号の有無や、進路情報(直進、右折、左折)等に基づいて分類した交差点の数が含まれる。本実施形態では、交差点数情報には、進路情報及び信号の有無(直進信号なし、直進信号有り、右折信号なし、右折信号有り、左折信号なし、左折信号有り)で分類した交差点の数が含まれる。
【0049】
ステップS301において、情報処理装置100の受付部123は、自動運転車が走行する経路の入力を受け付ける。本実施形態では、受付部123は、例えば表示部150に表示された地図上でユーザがタッチパネル等の入力部110を用いてスタート地点、経由地点、目的地点を含む経路を線で指定することにより、自動運転車が走行する経路の入力を受け付ける。本例では、受付部123は、
図1の左側に示される経路の入力を受け付けたものとする。
【0050】
ステップS302において、情報処理装置100の取得部124は、受付部123が受け付けた経路及び地図記憶部131に保存された地図情報に基づいて、予測モデルに入力する変数を取得する。本実施形態では、取得部124は、交差点数情報、道路幅、歩車区分の有無の割合、中央分離の有無の割合、交通量、トンネルの数、橋の数、高架下領域等を含む、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を変数として取得する。交差点数情報には、信号の有無、進路情報(直進、右折、左折)等に基づいて分類した交差点の数が含まれる。本実施形態では、交差点数情報には、進路情報及び信号の有無(直進信号なし、直進信号有り、右折信号なし、右折信号有り、左折信号なし、左折信号有り)で分類した交差点の数が含まれる。本例では、
図4の左側に示されるような変数を取得したものとする。
【0051】
ステップS303において、情報処理装置100の予測部125は、自動運転車が走行する経路上の、自動運転車によるインシデントの発生しやすいリスク地点を予測する。本実施形態では、予測部125は、予測モデル記憶部132に記憶された予測モデルに、受付部123が受け付けた経路及び取得部124が取得した変数を入力することで経路上のリスク地点、そのリスク要素、及びインシデント数を予測する。なお、本実施形態では、予測モデルは、同一のリスク地点に複数のリスク要素を関連付けて出力する場合もある。例えば
図1に示されるように、リスク地点(1)は、「歩車分離なし」と「交通量多い」との2つのリスク要素が関連付けられている。本例では、予測部125は、
図1の右側に示されるように、8か所のリスク地点とそのリスク要素とを予測したものとする。
【0052】
ステップS304において、情報処理装置100の評価部126は、予測部125が予測した結果に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する。本実施形態では、評価部126は、予測部125が予測したインシデント数に基づいて、スコアを算出する。ここで、インシデント数とは、経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数である。例えば、1つのリスク地点に複数のリスク要素が関連付けられる場合がある。さらに、1つのリスク要素に複数のインシデントが関連付けられる場合もある。本例では、評価部126は、
図4に示されるように、予測部125が予測したインシデント数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示す75点のスコアを算出したものとする。
【0053】
ステップS305において、評価部126は、算出したスコアに基づいて、入力された経路を走行する自動運転車の保険料を決定する。本実施形態では、評価部126は、スコアを所定範囲のスコアグループに分類するランクと各ランクの割引率とを対応付けた事前定義のテーブルを用いて、規定の保険料からスコアが属するランクの割引率で割り引いた保険料に決定する。
図4に示す例では、評価部126は、規定の保険料から算出したスコアが属するBランクの割引率Y%で割り引いた保険料に決定したものとする。
【0054】
ステップS306において、情報処理装置100の出力部127は、経路上のリスク地点を可視化したリスクマップを出力する。本実施形態では、出力部127は、
図1に示されるように、受付部123が受け付けた経路に、予測部125が予測したリスク地点を付加したリスクマップを提示する。また、本実施形態では、出力部127は、予測部125が予測したリスク地点に関連付けられたリスク要素とリスク要素記憶部133に基づいて、位置、リスク要素、発現事象例、リスク低減策を含むリスク地点情報を出力する。本例では、出力部127は、
図1に示されるようなリスク地点情報を出力したものとする。
【0055】
ステップS307において、出力部127は、評価部126が評価した結果を出力することができる。本実施形態では、出力部127は、
図4の右側に示されるように、算出したスコアと保険料の割引率とを含む評価結果を出力することができる。
【0056】
ステップS308において、受付部123は、経路の変更を受け付けたか否か判定する。経路の変更を受け付けたと判定される場合(S308:Yes)、処理はステップS302に進む。本例では、入力済みの経路の第1の点と第2の点とを含む経路をユーザが線で指定することにより、受付部123は、経路の変更を受け付けたものとする。受付部123が受け付けた経路に基づいて、ステップS302~ステップS307の処理が行われる。
【0057】
一方、ステップS308において経路の変更を受け付けていないと判定される場合(ステップS308:No)、ステップS309において、経路変更部128は、経路変更指示を受け付けたか否か判定する。経路変更指示を受け付けたと判定される場合(S309:Yes)、ステップS310において、経路変更部128は、リスク地点の少なくとも1つを回避する経路を決定する。本例では、ユーザが
図1のリスクマップ上のリスク地点(5)を選択して経路変更を指示することに応じて、経路変更部128は、選択されたリスク地点(5)を回避する経路を決定したものとする。
【0058】
経路変更部128により経路が決定されると、決定された経路に基づいて、ステップS302~ステップS307の処理が行われる。本例では、ステップS304において、評価部126は、経路変更部128により決定された経路について、経路の自動運転車における安全性を示す85点のスコアを算出したものとする。さらに、ステップS305において、評価部126は、算出したスコアに基づいて、既定の保険料から算出したスコア(85点)が属するAランクの割引率X%で割り引いた保険料に決定したものとする。
【0059】
なお、ステップS306及びステップS307において、出力部127は、経路変更部128により決定された経路を、リスクマップ上に既に提示されている経路に加えて、または経路に代えて提示することができる。
【0060】
以上、本実施形態によれば、情報処理装置100は、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る経路の環境情報に基づいて、経路上のリスク地点を予測し、経路にリスク地点を付加したリスクマップを提示することができる。これにより、経路が自動運転車の走行に適しているか否か、事前に確認することができる。また、本実施形態によれば、情報処理装置100は、予測したリスクに基づいてリスク低減策を提示することができる。事前に把握したリスクに基づいてリスク低減策を提示することで、自動運転の導入促進と共に安全な交通社会の実現を図ることができる。なお、本実施形態では、自動運転の導入を検討している企業が走行経路を決定することを支援するために利用する例について説明したが、別の実施形態では、自動運転車の一般ドライバーが走行経路を決定することを支援するために利用することもできる。例えば、出発前にドライバーが本発明を用いて自動運転車の走行経路を決定することもできるし、自動運転車の走行中にドライバーが本発明を用いてリスクマップを提示させてもよい。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、情報処理装置100は、予測したインシデント数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出することができる。経路上に複数存在するリスク地点とそのリスク要素とから予測される経路の安全性をスコアリングして可視化することで、ユーザは、経路が自動運転車の走行に適しているか否かをより直感的に把握し、複数の経路の候補の中から最善の経路を選択することができる。加えて、本実施形態によれば、算出したスコアを保険料に反映させることで、リスク低減策を講じるモチベーションを高めることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、評価部126は、予測部125が予測した結果に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出し、算出したスコアが属するランクの割引率を適用して保険料を決定する例について説明したが、別の実施形態では、評価部126は、予測部125が予測した結果に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すランクを決定し、当該ランクの割引率を適用して保険料を決定してもよい。
【符号の説明】
【0063】
100…情報処理装置、110…入力部、120…制御部、121…演算処理部、122…メモリ、123…受付部、124…取得部、125…予測部、126…評価部、127…出力部、128…経路変更部、130…記憶部、131…地図記憶部、132…予測モデル記憶部、133…リスク要素記憶部、140…通信部、150…表示部
【要約】
【課題】ある経路を自動運転の車両が走行する場合のリスクを評価し、評価した結果を可視化することが可能な情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】自動運転車が走行する経路に関する情報を受け付ける受付部123と、自動運転車が走行する際にリスクとなり得る環境情報を経路について取得する取得部124と、経路及び環境情報に基づいて、経路上で自動運転車により発生しやすいインシデントの数を予測する予測部125と、インシデントの数に基づいて、経路の自動運転車における安全性を示すスコアを算出する評価部126と、スコアを出力する出力部127とを備える。
【選択図】
図1