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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】古紙梱包品の処理方法及び処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/359 20140101AFI20230815BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230815BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20230815BHJP
   B07C 5/342 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G01N21/359
G01N21/27 A
G01N21/3563
B07C5/342
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022154994
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2018104148の分割
【原出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2022188151
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592094519
【氏名又は名称】ダイオーエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】神永 誉之
(72)【発明者】
【氏名】大石 昇治
(72)【発明者】
【氏名】上田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩之
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-515068(JP,A)
【文献】特開2006-045725(JP,A)
【文献】特開2000-338036(JP,A)
【文献】特開平10-232166(JP,A)
【文献】特開2017-190957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0136993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
D21C 5/02
D21B 1/08-1/10
B07C 5/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙梱包品を解砕物に解砕し、
前記解砕物に対して測色カメラを使用して測色し、測色した測色値の白色度が高いか低いかを判断し、
解砕物に対して、ハイパースペクトルカメラにより測光した吸光度スペクトルに基づきセルロース成分が支配的であるか否かを判断し、
(1)測色カメラを使用して測色して測色値の白色度が高く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第1分類製紙原料とし、
(2)前記測色値の白色度が低く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第2分類製紙原料とし、
(3)前記セルロース成分が支配的でない場合には、前記第1分類製紙原料及び前記第2分類製紙原料以外の第3分類と判断し、製紙原料としない、
ことを特徴とする古紙梱包品の処理方法。
【請求項2】
前記ハイパースペクトルカメラにより測光した近赤外線反射波の波長強度分布図において1440~1490nmの範囲に深い谷を有する波形の場合、前記セルロース成分が支配的である場合とし、
1670nm近辺又は1730nm近辺に谷を有する波形の場合、プラスチックであり前記第3分類と判断する、請求項1記載の古紙梱包品の処理方法。
【請求項3】
前記解砕物を移動させるとともに下流側に移動させる過程で分散する搬送コンベア上に対向して、前記測色カメラ及び前記ハイパースペクトルカメラが設置されている請求項1記載の古紙梱包品の処理方法。
【請求項4】
測色値の白色度が高いか否かを判断するに際し、HSV色空間で判断する請求項1記載の古紙梱包品の処理方法。
【請求項5】
古紙梱包品を解砕物に解砕する解砕手段と、
前記解砕物に対して測色カメラを使用して測色した測色値の白色度が高いか低いかを判断する第1の弁別手段と、
解砕物に対して、ハイパースペクトルカメラにより測光した吸光度スペクトルに基づきセルロース成分が支配的であるか否かを判断する第2の弁別手段と、
次の(1)~(3)の分類を行う分類手段と、を有する、
(1)測色カメラを使用して測色して測色値の白色度が高く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第1分類製紙原料とし、
(2)前記測色値の白色度が低く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第2分類製紙原料とし、
(3)前記セルロース成分が支配的でない場合には、前記第1分類製紙原料及び前記第2分類製紙原料以外の第3分類と判断し、製紙原料としない、
ことを特徴とする古紙梱包品の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙梱包品の処理方法及び処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙工場では、市中から回収され古紙は、再生処理設備で古紙パルプ化された後、再び抄紙され新聞用紙に代表されるリサイクル再生紙として利用されている。
【0003】
近年、生活の多様化に伴って、例えばラミネート紙などの禁忌品が混在する傾向が高まっている。
【0004】
したがって、市中で回収する古紙の中には、禁忌品と評価されるいわゆる難処理性古紙が混入する。
製紙工場では、難処理性古紙は製紙過程での種々の品質低下要因となるので、その受け入れをすることができないでいた。
【0005】
このために、古紙の回収企業では、古紙の中から禁忌品を含む難処理性古紙を主に人手により分離し、例えば新聞用紙に再生できる第1の古紙と、例えば段ボール原紙に再生できる第2の古紙とに分別し、それぞれ古紙の種別ごとに(圧縮)梱包し、古紙ベールの状態で製紙工場に納入している。
製紙工場では、古紙ベールを開梱し(結束用番線をも切断する)、そのままパルパーに投入し新聞古紙パルプ、段ボール古紙パルプを製造していた。
【0006】
しかし、古紙の回収段階で、前述の第1の古紙と第2の古紙とに分別するのに人手に頼る部分が大きく、受け入れ古紙のコストの高騰につながっている。また、作業環境からも見直す必要性が高い。
【0007】
一方で、古紙の回収企業にとっては、古紙の回収後に古紙の分別を行うことなく、混在状態で製紙工場に販売できることが望ましいが、製紙工場では、前述のように、難処理性古紙は製紙過程での種々の品質低下要因となるので、混在古紙の受け入れはできない。
もちろん、混在古紙を受け入れて焼却処分する方法も考えられるが、焼却によるエネルギー回収量は高くなく、古紙を有用資源として考えた場合には、焼却は避けるべきである。
【0008】
禁忌品の選別分離には多くの技術的課題が残されており、結局、人海戦術に頼ることになっていた。
【0009】
古紙の選別手段としては、風力、比重、磁力、対象物の大きさ等を選別基準とすることが知られている。
しかし、この種の選別は異物除去には有効であるが、紙と一体している難処理性古紙の分離除去には有効ではない。
【0010】
従来技術として下記の先行技術がある。
特許文献1のものは、コンベア上の搬送過程で、古紙として有用な牛乳パックなどの紙パックを、PETボトル、PEボトル、PVCボトル、コピー用紙などから、近赤外線を使用し、吸光度に基づき選別するものである。
これは、被選別対象が分離された物品であり、例えば綴じられている雑誌などの種々の形態が混在する古紙ベールの処理には適さない。
【0011】
特許文献2のものは、UV印刷物やポリスチレンのラミネート印刷物などを、脱墨しやすい油性インキによる印刷物から分離するために、FT-IR装置による赤外スペクトル測定法を利用するものである。
特許文献2のものは、被選別対象となる印刷物がどのような形態であるかの開示はないとともに、実験室レベルでの分別を対象にしたものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平10-232166号公報
【文献】WO2016/104675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする主たる課題は、白色古紙と有色古紙、あるいはそれ以外の処理品として的確に選別できる古紙梱包品の処理方法及び処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施の形態によれば、
古紙梱包品を解砕物に解砕し、
前記解砕物に対して測色カメラを使用して測色し、測色した測色値の白色度が高いか低いかを判断し、
解砕物に対して、ハイパースペクトルカメラにより測光した吸光度スペクトルに基づきセルロース成分が支配的であるか否かを判断し、
(1)測色カメラを使用して測色して測色値の白色度が高く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第1分類製紙原料とし、
(2)前記測色値の白色度が低く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第2分類製紙原料とし、
(3)前記セルロース成分が支配的でない場合には、前記第1分類製紙原料及び前記第2分類製紙原料以外の第3分類と判断し、製紙原料としない、
ことを特徴とする古紙梱包品の処理方法が提供される。
【0015】
古紙ベールを開梱し、混在物を解砕する。古紙ベールは、圧縮梱包がなされているため、弁別の必要な古紙同士が密着しており、密着したままでは弁別が不十分であるため、解砕により密着した古紙を解す。
【0016】
また、多数の大きい解砕物が積層したり、塊となると、選別が困難となる。そこで、分散化手段により解砕物を分散させて、例えば搬送コンベア上に乗せて搬送するのが望ましい。
【0017】
分散化手段により分散された搬送物群について、測色カメラを使用して測色する測色手段と、ハイパースペクトルカメラにより材料を測定する材料測定手段とを有し、前記測色手段による測色値の白色度が高いか否かを判断する第1の弁別工程と、前記材料測定手段により測光した吸光度スペクトルに基づきセルロース成分が支配的であるか否かを判断する第2の弁別工程と、により弁別する。
かかる弁別により、測色値の白色度が高く、かつ、セルロース成分が支配的である場合には、第1分類製紙原料、他方で、測色値の白色度が低く、かつ、セルロース成分が支配的である場合には、第2分類製紙原料として仕分けを行うことができる。
【0018】
例えばラミネート紙などの禁忌品を分別するためには、材料(材質)測定が必要となる。そこで、ハイパースペクトルカメラにより材料(材質)を測定する。
ハイパースペクトルカメラは、一般的なCCDカメラと違い、可視光から短波赤外領域(SWIR)までの広い波長領域を細かい波長域で区分けし、それぞれの波長域での光強度(波長スペクトル)を取得することができる。例えば、近赤外線(750~1700nm近傍)領域も撮影可能である。
一般のCCDカメラは、可視光領域をカラーフィルター等で、赤・緑・青に分光し、それぞれを取得することで、画像を得ている。これに対しハイパースペクトルカメラは、回折格子等で分光し、非常に狭い波長域の光強度を個々に取得することで、肉眼では識別困難な細かな色の情報を判別することができる。
一般に、物質を構成している分子は、並進/回転/振動等様々な運動をしている。運動している分子に光をあてると、運動状態に合わせて特定の波長の光のみが吸収される。吸収される赤外線領域の波長は、分子を構成する原子間距離と振動方向によって決まった値になり、分子の種類を的確に表す特徴的な波長分布になる。吸収された波長分布(吸収スペクトル)を調べることによって、測定対象物がどのような分子を含んでいるかを知ることが可能である。かかる原理によって、材料(材質)を測定ことができる。
しかも、後述の吸収スペクトル分布例をもって説明するように、セルロースとプラスチック類とは吸収スペクトル波長分布が明確に異なるので、例えば新聞古紙パルプ用の古紙と禁忌品とに弁別が容易である。
【0019】
材料(材質)の分別のみでは、例えば印刷量(面積)が過度に多い有色古紙などは新聞古紙パルプ用としては使用できない(又は可能な限り避けるべきである。)。
そこで、測色カメラを使用して測色手段により測色する。測色カメラとしては、一般のCCDカメラを使用できる。
可視光領域をカラーフィルター等で、赤・緑・青に分光し、それぞれを取得することで、画像を得る。
この場合、測色手段による測色値について白色度が高いか否かを基準として判断する。
そして、白色度が高くない場合には、有色古紙であり、新聞古紙パルプ用としては使用できないもとして分別できる。
【0020】
本発明の実施の形態において、第1の弁別工程と第2の弁別工程との先後関係はいずれでもよい。
また、白色度の弁別基準、並びにセルロース成分が支配的であるか否かの基準は、製紙工場の古紙パルプ製造設備での分離能力、及び古紙パルプを利用して得られる紙の品質として許容できるか否かの基準などに依拠するものであるから、これらの分離能力及び許容基準に応じて、適宜選定でき限定されるものではない。例えば、白色度の弁別基準を高めて、上質古紙パルプを製造し、再生PPC用紙等の新聞用紙以外の用途にも使用できる。
【0021】
仕分け工程において、さらに、セルロース成分が支配的でない場合には、古紙処理品以外のものとして処理することができる。
公益社団法人古紙再生促進センターでは、「禁忌品」とは、「製紙原料にならない異物」と定義している。
その紙類例として、粘着物の付いた封筒、裏カーボン紙、ノーカーボン紙(宅配便の複写伝票など)、防水加工された紙(紙コップ、紙皿、紙製のカップ麺容器、紙製のヨーグルト容器、油紙、ロウ紙など)、圧着はがき(親展はがき)、感熱紙(ファックス用紙、レシートなど)、印画紙の写真、インクジェット写真プリント用紙、感光紙(青焼きコピー紙)、プラスチックフィルムやアルミ箔などを貼り合わせた複合素材の紙、金・銀などの金属が箔押しされた紙、においの付いた紙(石鹸の個別包装紙、紙製の洗剤容器、線香の紙箱など)、捺染紙(昇華転写紙、おもに絵柄などを布地に加熱してプリントする際に使われる紙、感熱性発泡紙(おもに点字関係で使用されているもので、熱を加えたところが盛り上がる紙)がある。
また、「紙類以外」のものとして、粘着テープ類、ワッペン類、ファイルの金具、金属クリップ類、フィルム類、セロハン、発泡スチロールがある。
この禁忌品の例示のように、「紙類以外」のものは禁忌品であり、古紙に分類できないので古紙処理系から除外する必要がある。
他方で、「紙類」の中でも例えばプラスチックフィルムやアルミ箔などの貼り合わせ程度が高いものなども、古紙処理系から除外することができる。
【0022】
分散化手段により分散された搬送物群は搬送コンベア上に乗せて搬送し、搬送コンベア上に対向して、測色カメラ及びハイパースペクトルカメラを設置することができる。
搬送コンベア上に乗せて搬送物群を搬送するのが、分散状態を維持する点で望ましい。また、測色カメラ及びハイパースペクトルカメラによる画像取得が容易である。
【0023】
分散化手段により分散された搬送物群は搬送コンベア上に乗せて搬送し、搬送コンベア上に対向して、測色カメラ及びハイパースペクトルカメラを設置するとともに、
搬送物群が搬送コンベア上から排出される時点で、排出搬送物をエアで吹き付けて飛ばす分別ノズルを設け、飛ばす位置の相違に基づき仕分けを行うことができる。
搬送物は軽量であるから、エアで吹き付けて飛ばす分別ノズルを設け、飛ばす位置の相違に基づき仕分けを行うことが適している。
【0024】
近赤外線の反射波のスペクトル(強度)波形が1440~1490nmの範囲に深い谷を有する波形の場合を、セルロース成分が支配的であると弁別することができる。
そして、この波長範囲1440~1490nmは他のプラスチックの波形変化位置と明確に相違するために、紙と他の材料(材質)との弁別が容易である。
【0025】
第1の弁別工程における測色値の白色度が高いか否かを判断するに際し、HSV色空間で判断するのが望ましい。
HSVとは、色を「色相(Hue)」「彩度(Saturation)」「明度(Value・Brightness)」の3要素で表現する方式である。また、HSVは「HSB色空間」とも呼ばれている。
色の表現方法に、色相(Hue)・彩度(Saturation)・輝度(Lightness)の3要素で色を表現した「HSL色空間」がある。両者は、彩度を低下させた時にHSVは赤緑青のうち最も強い色に収束していくのに対して、HSLは最も強い色と最も弱い色の中間に収束していくという明確な違いがある。
HSV色空間では、色を「鮮やかさ」「明るさ」といった直感的にわかりやすい方法で表現しているため、「この色を明るくしたい・暗くしたい」「色を薄くしたい・濃くしたい」といった感覚的な表現が可能であり、現実に、例えば新聞用紙又は有色用紙(段ボール用紙)として再生する場合の基準にマッチするものとなる。
【0026】
白色古紙は、新聞古紙パルプ用材料とし、有色古紙は段ボール古紙パルプ用材料とすることができる。
【0027】
本発明の他の実施の形態によれば、
古紙梱包品を解砕物に解砕する解砕手段と、
前記解砕物に対して測色カメラを使用して測色した測色値の白色度が高いか低いかを判断する第1の弁別手段と、
解砕物に対して、ハイパースペクトルカメラにより測光した吸光度スペクトルに基づきセルロース成分が支配的であるか否かを判断する第2の弁別手段と、
次の(1)~(3)の分類を行う分類手段と、を有する、
(1)測色カメラを使用して測色して測色値の白色度が高く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第1分類製紙原料とし、
(2)前記測色値の白色度が低く、かつ、前記セルロース成分が支配的である場合には、第2分類製紙原料とし、
(3)前記セルロース成分が支配的でない場合には、前記第1分類製紙原料及び前記第2分類製紙原料以外の第3分類と判断し、製紙原料としない、
ことを特徴とする古紙梱包品の処理システムを提供できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、古紙梱包品(例えば圧縮梱包したいわゆる古紙ベール)から、第1分類古紙と第2分類古紙、あるいはそれ以外の処理品として的確に選別できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】古紙梱包品の処理の概要フロー図である。
図2】解砕装置の正面図である。
図3】解砕装置の平面図である。
図4】解砕装置の解砕刃の正面図である。
図5】分離装置の平面図である。
図6】分離装置の要部斜視図である。
図7】分離装置の要部平面図である。
図8】分離装置から仕分け装置までの全体を示す正面図である。
図9】弁別装置の概要斜視図である。
図10】弁別装置の概要説明図である。
図11】古紙パルプ製造設備例の概要フロー図である。
図12】他の古紙パルプ製造設備例の概要フロー図である。
図13】紙の近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図14】PEの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図15】PPの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図16】PSの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図17】PETの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
図18】PVCの近赤外線反射波の波長強度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。
【0031】
本発明の禁忌品を含む古紙梱包品の処理例を図1に示してある。この図1に従って処理の概要を予め説明する。
禁忌品との混在物からなる古紙梱包品、一般的にはいわゆる古紙ベールと称せられる圧縮梱包品1は、例えばフォークリスト2によって、投入コンベア3に搬送され、投入コンベア3からホッパー4を介して搬送コンベア5により、解砕装置10に投入される。
圧縮梱包品1は、例えば番線で結束されているので、解砕装置10に至る前の適宜の時点、あるいは解砕装置10内で番線6などの結束具を除去できる。
【0032】
解砕装置10では、圧縮梱包品1が解砕(破砕)され、紙束の分離と破断がなされる。この段階においては、解砕後の紙のサイズは一様ではなく、大きいサイズのものとより小さいサイズのものとに分かれる。
この場合、例えば最大幅500mm、最大面積として25~10000cm2程度に解砕するのが望ましい。
また、後述するように、解砕装置10においては、解砕刃の支持軸10A間が分離している、解砕刃10B相互が支持軸10A方向に離間していることなどにより、小さいサイズの異物(金属類など)は、紙類と容易に分離し、例えば搬送コンベア11の下端部で分離することが可能である。
【0033】
解砕装置10により解砕され細分化された紙類は搬送コンベア11により分離装置20に搬送される。分離装置20の構造は、例えば全体が下流側を上に向けた傾斜状態に設置されたもので、その構造は、例えば流れ方向に多数の回転軸20Aを有し、各回転軸20Aに多数の搬送ディスク20Bを有するものである。
搬送ディスク20Bは、外形が例えばほぼ角型形状、例えば(各辺に膨らみのある)三角形状を有し、これにより搬送材料を乗せながら、回転軸20Aの回転力により上に向けて跳ね上げ、バウンドさせながら下流側に順次移動させるようにしたものである。
【0034】
分離装置20においては、重量物PWは、滑り落ちて上流の底部に集めることができる。重量物PWは、フォークリスト2によって、スクラップヤードに排出することができる。
【0035】
他方で、主に、回転軸20Aのスペースをから小さな異物を下方にアンダーサイズ品PUとして落下させることができる。アンダーサイズ品PUは、例えば焼却しボイラーの燃料として利用できる。
【0036】
オーバーサイズ品POは、落下することなく分離装置20の下流端まで移動される。下流端から落下したオーバーサイズ品POは、下流の弁別及び仕分け装置を有する処理設備に仕向けられる。
オーバーサイズ品POの分画は、適宜選定することができるが、例えば25cm2を分画基準とすることができる。
【0037】
オーバーサイズ品POは、例えば搬送コンベア12を介して投入フィーダー30に投入される。投入フィーダー30は分散化手段を、又は分散化手段の一部を構成することができる。
投入フィーダー30の一例は、下流側が下り傾斜の振動フィーダーである。この投入フィーダー30では下流側に落下する過程で、幅方向に分散されるとともに、オーバーサイズ品POの重なりを解除して分散化(個別化)が図られる。
【0038】
投入フィーダー30により分散されたオーバーサイズ品POは、弁別(分別)装置40に投入される。
弁別(分別)装置40は、搬送コンベア41と、測色カメラ42を使用して測色する測色手段と、ハイパースペクトルカメラ43により材料を測定する材料測定手段とを有する。
また、個々の搬送物について、測色手段による測色値の白色度が高いか否かを判断する第1の弁別手段44と、個々の搬送物について、材料測定手段により測光した吸光度スペクトルに基づきセルロース成分が支配的であるか否かを判断する第2の弁別手段45とを有する。
【0039】
かかる第1の弁別手段44及び第2の弁別手段45による弁別により、測色値の白色度が高く、かつ、セルロース成分が支配的である場合には、白色古紙である、他方で、測色値の白色度が低く、かつ、セルロース成分が支配的である場合には、有色古紙であるとして弁別し、その弁別信号に基づいて仕分けを行うことができる。
【0040】
既述のように、例えばラミネート紙などを分別するためには、材料(材質)測定が必要となる。そこで、ハイパースペクトルカメラ43により材料(材質)を測定する。
ハイパースペクトルカメラ43は、可視光から短波赤外領域(SWIR)までの広い波長領域を細かい波長域で区分けし、それぞれの波長域での光強度(波長スペクトル)を取得することができる。例えば、近赤外線(750~1700nm近傍)領域も撮影可能である。符号46は可視光から近赤外領域までの波長をもつ光源である。
物質を構成している分子は、様々な運動をしており、運動している分子に光をあてると、運動状態に合わせて特定の波長の光のみが吸収される。吸収される赤外線領域の波長は、分子を構成する原子間距離と振動方向によって決まった値になり、分子の種類を的確に表す特徴的な波長分布になる。反射・吸収された波長分布(吸収スペクトル)を調べることによって、測定対象物がどのような分子を含んでいるかを知ることが可能である。かかる原理によって、材料(材質)を測定ことができる。
【0041】
図12図17に吸収スペクトル分布例を示す。セルロースとプラスチック類とは吸収スペクトル波長分布が明確に異なるので、禁忌品と例えば新聞古紙パルプ用の古紙とに弁別が容易となる。
ちなみに、セルロース成分が支配的である、すなわち新聞古紙パルプ用の古紙である蓋然性が高い場合、近赤外線の反射波の強度波形が1440~1490nmの範囲に深い谷を有する波形として明確に現れる。
これに対し、他のプラスチックでは、波形谷が1670nm近辺、1730nm近辺に現れ、しかも、谷部の波形も材質特有なものを示す。したがって、プラスチック間でも材料(材質)の弁別が可能である。
【0042】
他方で、測色カメラ42を使用した測色手段により測色する。測色カメラとしては、一般のCCDカメラを使用できる。可視光領域をカラーフィルター等で、赤・緑・青に分光し、それぞれを取得することで、画像を得る。
この場合、測色手段による測色値について白色度が高いか否かを基準として判断する。
そして、白色度が高い場合には白色古紙であると判断し、新聞古紙パルプ用として弁別し、白色度が高くない場合には、有色古紙であり、新聞古紙パルプ用としては使用できないもとして分別できる。
【0043】
CCDカメラでは、撮像範囲の所定面積範囲を搬送方向の幅方向に走査し、測色情報を得る。測色値の白色度が高いか否かを判断するに際し、HSV色空間で判断するのが望ましい。HSV色空間で判断することは人間の視感との対応関係が高いからである。
なお、本発明は、他のRGB色空間などの使用を排除するものではない。
【0044】
HSV色空間としては、次記表1のような設定範囲とすることができる。この設定範囲は、変えることができる。設定範囲の理由としては白色は、色相の偏りが無いので、Hは全領域を指定、色味(再度)が無いので、S小さい値(0~20)を指定、明るいので、Vは大きい値を指定したものである。
【表1】
【表2】
表1の設定範囲の下で、各色要素が表2の範囲(最小値と最大値との間の範囲)内である条件がアンドで成立する場合に、「白色」であると判断し、それ以外のものは、「有色」と判断することができる。
さらに具体的には、搬送物全体のピクセルのうち、白のピクセル数の方が多い、例えば50%超である場合には、対象物が白いと判定し、それ以外の場合を有色と判定することができる。この例では50%を分岐基準としたが、他の割合での基準設定も可能である。
【0045】
弁別(分別)装置40により弁別(分別)を行った搬送物について、搬送コンベア41の搬送速度との関係で、当該搬送物が、例えば搬送コンベア41から落下する過程で仕分け装置50を作動させる。
仕分けには人手により行うこともできるが、自動化手段を使用するのが望ましい。
実施の形態では、エアコンプレッサー(図示せず)からのエアによる吹き飛ばし仕分けを行うようにしてある。
【0046】
すなわち、白色古紙が搬送コンベア41の下流端に到達した場合には、第1エアノズル51を作動させ、第1回収容器53に回収し、有色古紙が搬送コンベア41の下流端に到達した場合には、第2エアノズル52を作動させ、第2回収容器54に回収する。白色古紙でなく、有色古紙でもないものは、例えばエアノズルを作動させることなくそのまま搬送コンベア41の下流端から落下させ第3回収容器55に回収できる。
【0047】
ここで、搬送コンベア41の幅が広い場合には、幅方向に複数の搬送物が搬送されることになるので、上記エアノズルは幅方向に複数配置することができる。
また、回収の方向を図示例のように搬送方向に区分するほか、搬送コンベア41の下流部で幅方向外側に向けてエアによる吹き飛ばしを行い仕分け及び回収を行うこともできる。また、エアによる吹き飛ばしを搬送コンベア41上で行うようにしてもよい。
【0048】
白色古紙は、新聞古紙パルプ用材料とし、有色古紙は段ボール古紙パルプ用材料とすることができる。図1に白色古紙7及び有色古紙8をベーラー9により梱包し、後に利用に供する形態を図示してある。
【0049】
上記のように回収された白色古紙は、新聞古紙パルプ(NDIP)用材料とするか雑誌古紙パルプ(MDIP)用材料とし、新聞用紙や再生PPC用紙等として再生できる。有色古紙については、段ボール古紙パルプ(WP)用材料とすることができる。
雑誌古紙パルプ(MDIP)は、新聞古紙パルプ(NDIP)と同じパルプ製造設備(フロー)で製造できる。各種古紙パルプを製造する場合、既存の又は公知のパルプ製造設備で製造できるが、以下の実施の形態で製造するのが最適である。
【0050】
回収された有色古紙により段ボール古紙パルプ(WP)を製造する一例を図11に示した。
この実施の形態を要すれば次のとおりである。
(1)回収された白色古紙の乾式の解砕工程
(2)連続高濃度パルパーによる離解工程
(3)リフラー型スクリーンによるスラッシング工程を含む第1粗選工程
(4)前段クリーナー、ホールスクリーン、スリットスクリーン、後段クリーナーの順の第2粗選工程
(5)脱水工程
(6)第1粗選工程でのホールスクリーンリジェクトは、ローターと丸穴円筒バスケットからなる離解分散と、スリットスクリーン及び又はドラムスクリーンの精選リジェクト回収工程
を有するものである。
【0051】
具体例を説明すると、回収された有色古紙(ベール)7は必要に応じ乾式で解砕機61により解砕される。
例えば35mm幅に裁断された解砕物は、連続高濃度パルパー62により蒸気を得ながら離解される。
重量異物は、分離機78により分離される一方で、タンク63に一旦貯蔵される。続いて、第1粗選工程を実施ためのフラッシュソーター(リフラー型スクリーン)からなる分別機64により異物分離を行い、タンク65に貯蔵される。
その後、タンク67に送り、ドラムスクリーン66によりゴミとして小さくさせないで繊維分のみを回収し、タンク67に送る。
続いて、前段クリーナー68により重量異物を除去し、ホールスクリーン69に送り、ラミネートなどの大きなゴミ、金銀ラミネートを分離し、タンク72に貯蔵する。
その後、スリットスクリーン73により細かな異物除去を行ない、タンク74に貯蔵する。
続いて、後段クリーナー75により、細かな異物除去を行い、フィルター76、例えばドラム式パルプレスフィルターにより脱水を図り、古紙パルプとしてタンク77に仮貯蔵する。
他方で、第1粗選工程でのホールスクリーン69のリジェクト分は、ローターと丸穴円筒バスケットからなる、離解と分別の両方の機能を有する離解分散機(コンビソーター)71に供給し、金属ラミネート中の繊維分を回収する。
また、スリットスクリーン73のリジェクト分はドラムスクリーン66に供給することで回収し、離解分散機(コンビソーター)71のリジェクト分についても、タンク79に回収し、タンク67に送ることで利用する。
又、回収された白色古紙により新聞古紙パルプ(NDIP)を製造する製造方法としては、前記段ボール古紙パルプの製造例に加え、浮遊選別工程(フローテーター)等の脱墨処理工程を組み合わせて新聞古紙パルプを製造することができる。
【0052】
回収された白色古紙により新聞古紙パルプ(NDIP)を製造する一例を図12に示した。
白色古紙7は、パルパー80により離解され、ターボセパレーター81、高濃度クリーナー82及び粗選スクリーン83により粗選される、続いて、プレフローテーター84により脱墨された後、クリーナー85、スクリーン86により精選され、脱水機87により脱水される。その後、ホットディスパーザー88により異物除去を行い、過酸化水素タワー89にて漂白処理され、ポストフローテーター90により脱墨された後、脱水機91により脱水され、高濃度ポンプ92により高濃度タワー93から抄紙機(図示せず)へ送給される。
【0053】
禁忌品の定義は、時代によって変遷する。それに応じて選別基準を変更できる。本発明の禁忌品を含む古紙梱包品の処理方法の実施にあたり、上記の装置を使用することに限定されず、また、一部の工程を人力又は機器の併用による半自動で行うことができる。古紙梱包品は圧縮梱包品に限定されない。さらに回収古紙の利用先、及び廃棄先は適宜選定でき、上記例に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
各種古紙を回収して資源の有効利用及び環境保全に役立たせることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 圧縮梱包品
7 白色古紙
8 有色古紙
10 解砕装置
20 分離装置
30 投入フィーダー
40 弁別(分別)装置
50 仕分け装置
図1
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