(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】オブジェクトを写真撮像する方法、および本方法を実施する、制御ユニットを有する装置を備えた印刷機
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20230815BHJP
【FI】
B41M3/14
(21)【出願番号】P 2022567594
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2021064640
(87)【国際公開番号】W WO2022037815
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】102020121617.3
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014188
【氏名又は名称】ケーニッヒ ウント バウアー アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Koenig & Bauer AG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Koenig-Str. 4, 97080 Wuerzburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ディーデリヒス
(72)【発明者】
【氏名】イングマー ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リューダー
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077218(JP,A)
【文献】独国実用新案第202015104751(DE,U1)
【文献】特表2014-516318(JP,A)
【文献】特開2009-006724(JP,A)
【文献】国際公開第2020/114857(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを写真撮像する方法であって、
前記オブジェクトの前記写真撮像を、当該オブジェクトが搬送されている間に、位置固定された場所で、ラインカメラを用いて、それぞれ少なくとも1つの画像ラインを有する撮影周期(TA)のシーケンスで実施し、
前記ラインカメラを、それぞれの撮影周期(TA)内で、所定のスイッチオン時間(EZ)の持続期間(T1)にわたって制御ユニットによってスイッチオンし、
それぞれの画像ラインは、前記オブジェクトのうちの、搬送方向に対して横方向に延在するそれぞれ1つのストリップ状の区分を写真撮像し、
写真撮像されるべき前記オブジェクトのそれぞれのストリップ状の区分を、前記オブジェクトの前記搬送方向に対して横方向に延在しており、前記制御ユニットによって制御され、前記ラインカメラと同じ被印刷物の側に配置されている露光装置によって
、露光時間にわたって露光し、
写真撮像されるべき前記オブジェクトのそれぞれのストリップ状の区分を、当該区分を写真撮像する前記撮影周期(TA)内で、前記ラインカメラの前記スイッチオン時間(EZ)の前記持続期間(T1)の間に白色光、またはUV光またはIR光を用いて露光し、
前記オブジェクトとして、印刷機内で被印刷物上に被着された印刷画像を使用し、
前記印刷画像の前記写真撮像を、前記被印刷物が前記印刷機を通過して搬送されている間に実施し、
前記印刷画像は、人間の目に見える印刷インキを用いて印刷される少なくとも1つの画像要素の他に、少なくとも1つのさらなる画像要素を有し、
前記さらなる画像要素を、UV反応性の印刷インキまたはIR反応性の印刷インキを用いて印刷し、かつ/または前記印刷画像は、少なくとも1つのUV反応性の偽造防止特徴またはIR反応性の偽造防止特徴を有する、
方法において、
前記露光装置を、前記ラインカメラの前記スイッチオン時間(EZ)の前記持続期間(T1)に基づく露光時間にわたって露光し、
写真撮像されるべき前記オブジェクトのそれぞれのストリップ状の区分を、当該区分を写真撮像する前記撮影周期(TA)内で、前記ラインカメラの前記スイッチオン時間(EZ)の前記持続期間(T1)の間に非同期的に、第1の露光時間(WS)の持続期間(T2)にわたって白色光を用いて露光し、第2の露光時間(UV)の持続期間(T3)にわたってUV光またはIR光を用いて露光し、
写真撮像されるべき前記印刷画像のそれぞれのストリップ状の区分を、当該区分を写真撮像する前記撮影周期(TA)内で、前記ラインカメラの前記スイッチオン時間(EZ)の前記持続期間(T1)の間に前記露光装置によって、白色光およびUV光またはIR光を用いて交互に露光し、
写真撮像されるべき前記印刷画像のそれぞれのストリップ状の区分を、当該区分を写真撮像する前記撮影周期(TA)内で、前記ラインカメラの前記スイッチオン時間(EZ)の前記持続期間(T1)の間、前記第2の露光時間(UV)の前記持続期間(T3)にわたって、UV反応性の画像要素またはUV反応性の偽造防止特徴の場合にはそれぞれUV光を用いて露光する、またはIR反応性の画像要素またはIR反応性の偽造防止特徴の場合にはそれぞれIR光を用いて露光する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
白色光を用いた前記第1の露光時間(WS)の前記持続期間(T2)、および/またはUV光またはIR光を用いた前記第2の露光時間(UV)の前記持続期間(T3)を、前記制御ユニットによって設定し、
白色光を用いた前記第1の露光時間(WS)の前記持続期間(T2)、および/またはUV光またはIR光を用いた前記第2の露光時間(UV)の前記持続期間(T3)は、事前に規定された値範囲内で可変的に設定可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
白色光を用いた前記第1の露光時間(WS)の前記持続期間(T2)を、UV光またはIR光を用いた前記第2の露光時間(UV)の前記持続期間(T3)よりも短く設定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
白色光を用いた前記露光時間(WS)のスイッチオンのために、かつ/またはUV光またはIR光を用いた前記露光時間(UV)のスイッチオンのために、前記印刷機内に配置されていて、かつ前記制御ユニットに少なくともデータ技術的に接続されているエンコーダまたは絶対値発生器を使用し、
これにより、白色光を用いた前記露光時間(WS)、および/またはUV光またはIR光を用いた前記露光時間(UV)は、それぞれ前記エンコーダまたは前記絶対値発生器によって供給された、前記印刷機を通過して搬送される前記被印刷物に対する所定の位置参照を用いて実施される
ことを特徴とする請求項1または2または3に記載の方法。
【請求項5】
単一の前記ラインカメラだけが使用される場合、該当する印刷画像を写真撮像するために2倍の個数の画像ラインを撮影し、
これにより、該当する前記撮影周期(TA)内で、白色光画像と、UV光画像またはIR光画像とを互いに入れ子式に撮影し、次いで、ラインデマルチプレックス法によって互いに分離する
ことを特徴とする請求項1または2または3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷画像の前記写真撮像を、前記被印刷物が前記印刷機内で搬送ベルト上または搬送胴の外周面上に載置されている間に実施する
ことを特徴とする請求項1または2または3または4または5に記載の方法。
【請求項7】
当該方法を、前記被印刷物上に印刷された、それぞれ1つの有価文書または銀行券を形成する印刷画像を検査するために使用する
ことを特徴とする請求項1または2または3または4または5または6に記載の方法。
【請求項8】
制御ユニットを有する装置を備えた印刷機であって、
当該装置の前記制御ユニットは、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されており、
当該装置は、前記印刷機内に配置されたラインカメラと、露光装置とを有し、
前記ラインカメラおよび前記露光装置は、前記印刷機を通過して搬送されて、そこで少なくとも1つの印刷ユニット内で印刷される被印刷物の搬送経路に向けられていて、かつ前記被印刷物の同じ側に配置されている、
印刷機において、
前記露光装置は、同一のハウジング内に、前記被印刷物を白色光を用いて露光する光源の他に、前記被印刷物をUV光を用いて露光する光源および/または前記被印刷物をIR光を用いて露光する光源を追加的に有し、
前記被印刷物を白色光を用いて露光する光源および前記被印刷物をUV光を用いて露光する光源および/または前記被印刷物をIR光を用いて露光する光源は、前記制御ユニットによって、前記ラインカメラの前記スイッチオン時間(EZ)の前記持続期間(T1)の間に非同期的かつ断続的にアクティブ化されている
ことを特徴とする印刷機。
【請求項9】
前記制御ユニットは、該当する前記ラインカメラおよび前記露光装置を、それぞれ前記印刷機内に配置されたエンコーダまたは絶対値発生器の信号に依存して制御するように構成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の印刷機。
【請求項10】
前記被印刷物を、前記印刷機を通過させて搬送する搬送装置が設けられており、
前記搬送装置は、搬送ベルトまたは搬送胴として構成されている
ことを特徴とする請求項8または9に記載の印刷機。
【請求項11】
前記露光装置の前記光源は、それぞれ前記被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在する一直線上に配置されている
ことを特徴とする請求項8または9または10に記載の印刷機。
【請求項12】
前記露光装置の前記光源は、それぞれLEDまたはレーザダイオードとして構成されている
ことを特徴とする請求項8または9または10または11に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のオブジェクトを写真撮像する方法と、請求項8に記載の本方法を実施する、制御ユニットを有する装置を備えた印刷機とに関する。
【0002】
欧州特許出願公開第3312595号明細書によれば、第1の時点にカメラを用いて材料ウェブの第1の区分の第1の撮影を作成し、次いで、第2の時点にカメラを用いて材料ウェブの第2の区分の第2の撮影を作成することが公知であり、材料ウェブは、第1の撮影のためには第1の照明方式で照明され、第2の撮影のためには第2の照明方式で照明される。
独国実用新案第202015104751号明細書によれば、案内装置によって案内される材料ウェブ上に配置された製品を検査するための検査装置が公知であり、材料ウェブは、製品を載置することができる表面と、表面とは反対側に配置された裏面とを有し、当該検査装置は、焦点領域を有するカメラと、第1の照明装置と、第2の照明装置と、カメラの画像撮影機能、第1の照明装置の照明機能、および第2の照明装置の照明機能をトリガするためのトリガ装置とを有し、当該トリガ装置は、
・材料ウェブを焦点領域内に案内することが可能となるように、かつ材料ウェブの表面がカメラの焦点領域に向けられるように、カメラを材料ウェブに配置しながら、
・焦点領域内で第1の照明装置によって表面を照明することが可能となるように、第1の照明装置を配置しながら、かつ
・焦点領域内で第2の照明装置によって裏面を照明することが可能となるように、第2の照明装置を配置しながら、
カメラの画像撮影機能をトリガしたときに、第1の照明装置および第2の照明装置のグループからの少なくとも1つのアクティブな照明装置によって焦点領域を照明することが可能となるように、カメラの画像撮影機能と、第1の照明装置の照明機能と、第2の照明装置の照明機能とをトリガすることができるように構成されている。
【0003】
独国実用新案第202014105096号明細書によれば、検出領域内のオブジェクトを検出するためのカメラが公知であり、当該カメラは、複数の光受信画素を有する光受信器と、検出領域を複数の異なるスペクトル帯域で照明するためのマルチスペクトル式の照明装置と、評価ユニットとを有し、当該カメラは、照明装置によって検出領域を複数の異なる照明時間窓中にそれぞれ異なるスペクトル帯域で照明するように、かつ光受信器によって撮影時間窓内に検出領域からの画像データを撮影するように構成されており、光受信器は、第1のラインの光受信画素と、第2のラインの光受信画素とを有するダブルライン式の受信器として構成されており、第1のラインのための撮影時間窓と、第2のラインのための撮影時間窓とはそれぞれ異なっており、照明装置は、好ましくは以下のスペクトル帯域、すなわち赤色、緑色、青色、可視、赤外、紫外のうちの少なくとも2つのスペクトル帯域で照明するように構成されており、評価ユニットは、少なくとも1つのラインのための撮影時間窓をそれぞれ2つの照明時間窓によって規定するように構成されており、これによって撮影は、それぞれ照明中に、まず始めに1つのスペクトル帯域で実施され、次いで他のスペクトル帯域で実施される。
【0004】
独国特許出願公開第102013223852号明細書によれば、カメラ装置を用いて測定オブジェクトの少なくとも2つの画像を作成するための方法が公知であり、第1の撮影メインステップでは、照明装置が、測定領域内で測定オブジェクトを第1の照明方式で照明するように駆動され、かつ画像記録装置が、少なくともn個のセンサラインを有する第1の測定画像を撮影するように駆動され、なお、画像記録装置は、複数のセンサラインを有するエリアセンサを含み、これらのセンサラインの各々は、1つの対象物ラインの1つの画像ラインを撮影することができ、第1の測定画像は、少なくともn個のセンサラインの各々に対して1つの第1の画像ラインを有し、続いて、第1の移動メインステップでは、移動装置が、測定オブジェクトと画像撮影装置とを1つまたは複数の対象物ラインに相当する距離の分だけ相対的にシフトさせるように駆動され、続いて、第2の撮影メインステップでは、照明装置が、測定領域を第2の照明方式で照明するように駆動され、かつ画像撮影装置が、同数の少なくともn個のセンサラインを有する第2の測定画像を撮影するように駆動され、なお、第2の測定画像は、少なくともn個のセンサラインの各々に対して1つの第2の画像ラインを有し、続いて、第2の移動メインステップでは、移動装置が、測定オブジェクトを1つまたは複数の対象物ラインに相当する距離の分だけ相対的にシフトさせるように駆動され、続いて、少なくとも第1の撮影メインステップと、第1の移動メインステップと、第2の撮影メインステップと、第2の移動メインステップとを含むシーケンスが繰り返し駆動され、評価装置は、第1の測定画像に基づいて、第1の照明方式によって第1の画像を作成し、第2の測定画像に基づいて、第2の照明方式によって測定オブジェクトの第2の画像を作成する。
【0005】
欧州特許出願公開第1607220号明細書によれば、印刷機内でのインライン検査システムが公知であり、当該インライン検査システムは、ラインカメラと、照明装置とを有し、ラインカメラは、例えば対物レンズの保護としてUVフィルタを有し、照明装置は、白色光を放出する光源のグループを有することができる。
【0006】
本発明が基礎とする課題は、産業上の生産プロセスにおいて、所定の品質を遵守しているかどうかに関してオブジェクトを機械的にかつ合理的に検査することを可能にする、オブジェクトを写真撮像するための方法と、本方法を実施するための、制御ユニットを有する装置を備えた印刷機とを提供することである。
【0007】
上記の課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する方法と、請求項8に記載の特徴を有する、制御ユニットを有する装置を備えた印刷機とによって解決される。それぞれの従属請求項は、発見した解決手段のそれぞれ有利な実施の形態および/または発展形態に関する。
【0008】
とりわけ、本発明によって達成することができる利点は、とりわけ有価文書の、好ましくは銀行券の産業上の印刷技術的な生産プロセスにおいて、所定の品質および/または真正性を遵守しているかどうかに関する有価文書の、好ましくは銀行券の検査が改善されることにある。特に有利には、人間の目に見える印刷インキを用いて印刷される少なくとも1つの画像要素の他に、UV反応性またはIR反応性の印刷インキを用いて印刷される少なくとも1つのさらなる画像要素を有する、かつ/または該当する印刷画像内および/または被印刷物内に、それぞれ少なくとも1つのUV反応性またはIR反応性の偽造防止特徴を有する少なくとも1つの有価文書または印刷画像のそれぞれ異なる光学特性を、インラインで、すなわち生産の進行中に一緒に検査することが可能である。
【0009】
本発明の実施例を図面に示し、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【0011】
例えば銀行券のような有価文書は、通常、産業上の印刷技術的な生産プロセスにおいて、印刷機、好ましくは輪転印刷機において、例えば枚葉紙状の被印刷物に少なくとも1つの印刷画像、好ましくは複数の印刷画像、とりわけ複数の同一の印刷画像を印刷することによって製造される。この場合、該当する印刷画像は、人間の目に見える印刷インキを用いて印刷される画像要素だけでなく、UV反応性の印刷インキまたはIR反応性の印刷インキを用いて印刷される画像要素も有することができる。さらに、とりわけ有価文書は、例えば該当する有価文書の印刷画像内および/または被印刷物内に、少なくとも1つのUV反応性の偽造防止特徴またはIR反応性の偽造防止特徴を有することができる。しかしながら、UV反応性の印刷インキを用いて印刷された画像要素、および/またはUV反応性の偽造防止特徴を、白色光を用いた露光によって写真撮像することはできない。UV反応性の画像要素および/またはUV反応性の画像特徴は、これらが人間の目に見えるものになるために、それぞれとりわけUV光の照射による外部のエネルギ励起を必要とし、これにより、そのような画像要素またはそのような偽造防止特徴は、蛍光または燐光に基づいて人間の目に見えるようになる。IR反応性の画像要素またはIR反応性の偽造防止特徴も、白色光撮影用に設計されたカメラを用いて容易に写真撮像することはできない。というのも、IR反応性の画像要素またはIR反応性の偽造防止特徴も、白色光のみを用いて露光した場合には、まず差し当たり人間の目には見えないからである。IR光を用いた露光によって初めて、IR反応性の画像要素またはIR反応性の偽造防止特徴は、白色光撮影用に設計されたカメラを用いて写真的に検出可能な反応をトリガし、このことは、IR反応性の画像要素またはIR反応性の偽造防止特徴が、通常、入射したIR光をそれぞれ吸収および/または反射し、このIR光に基づいて、次いで白色光の下で、とりわけ各自のそれぞれの直近の周囲と比較してそれぞれ暗所として現れることによって実施される。
【0012】
産業上の印刷技術的な生産プロセスにおいて、このような印刷画像の所定の品質が遵守されているかどうかを機械的かつ合理的に検査するために、通常、被印刷物上に印刷されたそれぞれの印刷画像は、この被印刷物がまだ印刷機を通過して搬送されている間に、すなわちインラインで写真撮像される。少なくとも1つの印刷画像のこの写真撮像は、印刷機の内部の位置固定された場所で、とりわけラインカメラとして構成された少なくとも1つのカメラを用いて、それぞれ少なくとも1つの画像ラインを有する撮影周期のシーケンスで実施され、少なくとも1つのラインカメラは、それぞれの撮影周期内で、所定のスイッチオン時間にわたって制御ユニットによってスイッチオンされる。この場合、それぞれの画像ラインは、印刷画像のうちの、被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在するそれぞれ1つのストリップ状の区分を写真撮像する。該当する写真撮像されるべき印刷画像のそれぞれのストリップ状の区分は、露光装置によって、少なくとも1つのラインカメラのそれぞれのスイッチオン時間に依存する露光時間にわたって露光され、なお、露光装置は、被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在しており、制御ユニットによって制御される。好ましい実施の形態では、写真撮像を作成するための少なくとも1つのラインカメラと、該当するラインカメラと協働する露光装置とは、被印刷物の搬送経路に向けられていて、かつ被印刷物の同一の側に配置されており、なお、被印刷物は、印刷機を通過して搬送されて、そこで少なくとも1つの印刷ユニット内で印刷され、印刷された印刷画像を有する被印刷物は、搬送装置上に載置された状態で搬送される。この搬送装置は、例えば、搬送ベルトまたは搬送胴として構成されており、印刷された印刷画像を有する被印刷物は、回転する搬送胴の外周面上に載置された状態で搬送される。該当するラインカメラと、露光装置と、制御ユニットとは、それぞれ、例えば印刷機に所属する検査システムのコンポーネントである。
【0013】
本発明によれば、印刷画像として、人間の目に見える印刷インキを用いて印刷される少なくとも1つの画像要素の他に、UV反応性の印刷インキまたはIR反応性の印刷インキを用いて印刷される少なくとも1つのさらなる画像要素を有するような印刷画像、および/または少なくとも1つのUV反応性またはIR反応性の偽造防止特徴を有するような印刷画像が使用され、写真撮像されるべき印刷画像のそれぞれのストリップ状の区分は、当該区分を写真撮像する撮影周期内で、少なくとも1つのラインカメラのスイッチオン時間の間に非同期的に、すなわち非同時に、第1の露光時間の持続期間にわたって白色光を用いて露光され、第2の露光時間の持続期間にわたって、UV反応性の画像要素またはUV反応性の画像要素の場合にはそれぞれ紫外光を用いて、すなわちUV光を用いて露光されるか、またはIR反応性の画像要素またはIR反応性の偽造防止特徴の場合にはそれぞれIR光を用いて露光される。この場合、白色光を用いた第1の露光時間の持続期間、および/またはUV光またはIR光を用いた第2の露光時間の持続期間は、例えば、該当するラインカメラと協働する制御ユニットによって、または少なくとも該当するラインカメラと協働する制御ユニットにおいて、事前に規定された値範囲内で可変的に設定可能である。例えば、白色光を用いた第1の露光時間の持続期間は、UV光またはIR光を用いた第2の露光時間の持続期間よりも短く設定されている。したがって、白色光を用いた第1の露光時間の持続期間は、例えば、UV光またはIR光を用いた第2の露光時間の持続期間の半分未満である。いずれの場合でも、写真撮像されるべき印刷画像のそれぞれのストリップ状の区分、すなわち同じ1つのストリップ状の区分が、当該区分を写真撮像する撮影周期内で、それぞれ少なくとも2種類の光源を用いて露光される。とりわけ、写真撮像されるべき印刷画像のそれぞれのストリップ状の区分は、当該区分を写真撮像する撮影周期内で、少なくとも1つのラインカメラのスイッチオン時間の間に露光装置によって、白色光と、UV光またはIR光とを用いて交互に露光される。
【0014】
発見した解決手段の有利な実施の形態では、白色光を用いた露光時間のスイッチオンのために、かつ/またはUV光またはIR光を用いた露光時間のスイッチオンのために、印刷機内に配置されていて、かつ制御ユニットに少なくともデータ技術的に接続されているエンコーダまたは絶対値発生器が使用され、これにより、白色光を用いた露光時間、および/またはUV光またはIR光を用いた露光時間は、それぞれエンコーダまたは絶対値発生器によって供給された、印刷機を通過して搬送される被印刷物に対する所定の位置参照を用いて実施される。
【0015】
印刷機内で、例えば平行に、好ましくは被印刷物の搬送方向に対して横方向に相並んで配置された2つのラインカメラを使用することもでき、この場合、写真撮像されるべき印刷画像のそれぞれのストリップ状の区分は、当該区分を写真撮像する撮影周期内で、露光装置によって、第1のラインカメラのスイッチオン時間の間、第1の露光時間の持続期間にわたって白色光を用いて露光され、そして時間的にオフセットされて、すなわち異なる時間に、第2のラインカメラのスイッチオン時間の間、第2の露光時間の持続期間にわたってUV光またはIR光を用いて露光される。
【0016】
単一のラインカメラだけを使用して処理される場合には、該当する印刷画像を写真撮像するために2倍の個数の画像ラインを撮影しなければならない。これにより、該当する撮影周期内に撮影された白色光画像と、UV光画像またはIR光画像とが互いに入れ子式になり、次いで、ラインデマルチプレックス法によって互いに分離されなければならない。好ましくは平行に、すなわち被印刷物の搬送方向に対して横方向に相並んで配置された2つのラインカメラを使用して処理される場合には、このことは必要ない。しかしながら、画像ライン撮影の時点を、それぞれの露光装置に合わせて、すなわちそれぞれ時間的にオフセットされた白色光を用いた露光と、UV光またはIR光を用いた露光とに合わせて適合させなければならない。
【0017】
図面は、提案する方法を実施するために使用される露光装置を制御するための線図を示す。少なくとも1つの印刷ユニットを有する印刷機に、例えば搬送胴の外周面上に配置された、例えば印刷枚葉紙として構成されている被印刷物は、少なくとも1つのラインカメラのストリップ状の撮影領域を通過するように案内され、この少なくとも1つのラインカメラは、印刷機内において被印刷物の搬送方向で、この被印刷物を印刷する該当する印刷ユニットの下流に位置固定されて配置されている。被印刷物の搬送方向は、図面では方向矢印によって示されている。被印刷物上に印刷された少なくとも1つの印刷画像の写真撮像は、被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在する画像ラインのシーケンスで実施され、該当する画像ラインを撮影するラインカメラは、このラインカメラに所属する制御ユニットにより、例えば被印刷物の搬送速度に依存する所定のスイッチオン時間EZの持続期間T1にわたってスイッチオンされる。該当するラインカメラのこのスイッチオン時間EZは、最大で、制御ユニットによって制御されるこのラインカメラの1つの撮影周期TAの間、持続する。それぞれの撮影周期TA内で、該当するラインカメラは、印刷画像のうちの、被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在するそれぞれ1つのストリップ状の区分を写真撮像する。
【0018】
図面から見て取れるように、該当するラインカメラのスイッチオン時間EZの持続期間T1の間、印刷画像のうちの、被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在するストリップ状の区分の露光は、第1の露光時間WSの持続期間T2にわたって白色光を用いて実施され、図示の例では第2の露光時間UVの持続期間T3にわたってUV光を用いて実施される。それぞれの露光の時間的なシーケンスを、図面に示されているシーケンスとは逆に実施することも可能であり、すなわち、UV光を用いた露光を、白色光を用いた露光よりも時間的に前に実施することも可能である。図面に示されている例では、白色光を用いた露光と、UV光を用いた露光とが断続的に、好ましくは交互に実施される。IR光を用いた変形の形態についても相応のことが当てはまる。それぞれの露光は、それぞれとりわけ、それぞれ異なる種類の光を放出する複数の光源が組み込まれた、すなわち同一のハウジング内でそれぞれ被印刷物に向けられるように配置された露光装置によって実施され、好ましい実施の形態では、これらの複数の異なる光源がさらに線状配置で、すなわち被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在する一直線上に配置されており、したがって、この露光装置は、線状の露光装置として構成されている。露光装置内に配置された光源は、好ましくはそれぞれ制御ユニットによって制御されている。この場合、これらの光源の制御は、例えば搬送胴に配置されたエンコーダまたは絶対値発生器の信号に依存して実施され、搬送胴は、その回転により、搬送胴の外周面上に載置された被印刷物を、少なくとも1つのラインカメラの、この搬送胴の軸線方向に延在するストリップ状の撮影領域を通過させて搬送する。露光装置の光源は、好ましくはそれぞれLEDまたはレーザダイオードとして構成されている。
【0019】
これにより、印刷機内に配置された少なくとも1つのラインカメラと、露光装置とを有する、上述した方法を実施するための装置も得られ、該当するラインカメラと、露光装置とは、被印刷物の搬送経路に向けられて配置されており、なお、被印刷物は、印刷機を通過して搬送されて、そこで少なくとも1つの印刷ユニット内で印刷され、露光装置は、同一のハウジング内に、好ましくは被印刷物の搬送方向に対して横方向に延在する一直線上に、とりわけ交互の配置で、被印刷物を白色光を用いて露光するための光源の他に、被印刷物をUV光を用いて露光するための光源および/または被印刷物をIR光を用いて露光するための光源を追加的に有し、被印刷物を白色光を用いて露光するための光源と、被印刷物をUV光を用いて露光するための光源および/または被印刷物をIR光を用いて露光するための光源とは、制御ユニットによって非同期的かつ断続的にアクティブ化されている。さらに、制御ユニットは、例えば対応する制御プログラムの実行により、該当するラインカメラと、露光装置とを、それぞれ印刷機内に配置されたエンコーダまたは絶対値発生器の信号に依存して制御するように構成されている。
【符号の説明】
【0020】
EZ ラインカメラのスイッチオン時間
WS 白色光を用いた露光時間
UV UV光を用いた露光時間
TA 撮影周期
T1 ラインカメラのスイッチオン時間の持続期間
T2 白色光を用いた露光時間の持続期間
T3 UV光を用いた露光時間の持続期間