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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/02 20140101AFI20230816BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230816BHJP
   E05B 77/34 20140101ALI20230816BHJP
   E05B 81/06 20140101ALI20230816BHJP
   E05B 81/14 20140101ALI20230816BHJP
   E05B 81/86 20140101ALI20230816BHJP
【FI】
E05B85/02
B60J5/00 H
E05B77/34
E05B81/06
E05B81/14
E05B81/86
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019236973
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105293
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰之
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0175813(US,A1)
【文献】特開2004-92204(JP,A)
【文献】特表2016-533443(JP,A)
【文献】特開2019-190019(JP,A)
【文献】特開2016-180216(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0179788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられて、前記車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチすることにより前記ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置であって、
前記ドアラッチ装置は、
モータと、
前記モータによって駆動される機械機構と、
前記モータを制御するドアロックECUと、
前記モータ、前記機械機構、及び前記ドアロックECUを収容するケースと、を備え、
前記ドアロックECUは、プリント配線基板と、前記プリント配線基板に接続される蓄電体と、を備え、
前記ケースは、
隔壁と、
前記隔壁の一方側に前記モータ及び前記機械機構を収容する第1収容空間と、
前記隔壁の他方側に前記プリント配線基板及び前記蓄電体を収容する第2収容空間と、を備え、
前記隔壁には、前記第2収容空間から前記第1収容空間に向かって凹設された蓄電体収容部が設けられ、
前記蓄電体は、前記蓄電体収容部に配置され、
前記蓄電体は、前記隔壁に直交する第1方向から見て、前記モータを挟んで前記機械機構と反対側に配置されている、ドアラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドアラッチ装置であって、
前記蓄電体及び前記モータは、前記第1方向から見て、前記隔壁から立設された仕切壁を挟んで隣り合うように配置されている、ドアラッチ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドアラッチ装置であって、
前記機械機構は、
前記ドアを閉扉状態に保持するラッチ機構と、
前記ラッチ機構を前記モータの動力により解放可能な電動リリース手段と、
前記ラッチ機構を手動操作力により解放可能な手動リリース手段と、
前記手動リリース手段の作動を不能にするロック状態と前記手動リリース手段の作動を可能にするアンロック状態とに切り替えるロック機構と、を備える、ドアラッチ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドアラッチ装置であって、
前記蓄電体及び前記モータは、前記隔壁と平行な第2方向から見て、少なくとも一部が重なるように配置されている、ドアラッチ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のドアラッチ装置であって、
前記蓄電体は、前記蓄電体収容部に複数配置されている、ドアラッチ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のドアラッチ装置であって、
前記ドアラッチ装置は、
前記隔壁の前記一方側の面を覆うことによって、前記第1収容空間を形成する第1カバーと、
前記隔壁の他方側の面を覆うことによって、前記第2収容空間を形成する第2カバーと、
前記隔壁に設けられ、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を連通するピン孔と、
前記プリント配線基板から立設し、前記ピン孔から前記第1収容空間に突出するピンと、
前記ピンの根元の周囲を覆うことによって前記ピンを前記プリント配線基板に対して支持するピンホルダと、
前記ケースと前記第2カバーとの間に設けられ、外部と前記第2収容空間との間を防水する対外防水シールと、
前記ピンホルダと前記ピン孔との間に設けられて、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を防水する内部防水シールと、をさらに備える、ドアラッチ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のドアラッチ装置であって、
前記モータは、前記ピンを介して前記プリント配線基板に接続されている、ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアラッチ装置は、車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチするラッチ機構を備えており、該ラッチ機構によってドアを閉扉および開扉する。
【0003】
特許文献1には、モータの動力によりラッチ機構とストライカとの噛合を解除可能な電動リリース機構と、手動操作力によりラッチ機構の噛合を解除可能な手動リリース機構と、手動リリース機構の解除作動を無効にするロック状態及び手動リリース機構の解除作動を有効にするアンロック状態に切り替え可能なロック機構を備えたドアラッチ装置が記載されている。
【0004】
このようなドアラッチ装置では、車両の本体側に設けられたモータの駆動源(例えば、12Vバッテリ)とは別に、非常用の電源供給手段をドアラッチ装置の内部に備えることが好ましい。これにより、車両の衝突時等、モータの駆動源から適切に電力を供給できない場合であっても、非常用の電源供給手段からの電力でロック機構をロック状態からアンロック状態にして、乗員は手動リリース機構の解除作動によって車外に出ることができる。
【0005】
一方、このようなドアラッチ装置は、車両のドアに内蔵されることから、ウィンドウガラスの軌跡を阻害しないように配置する必要があり、これまで様々な工夫が行われている(例えば、特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6213927号公報
【文献】特開2000-027514号
【文献】特開平2-030868号
【文献】特開2001-262903号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドアラッチ装置が、ウィンドウガラスの軌跡を阻害しないようにするためには、ドアラッチ装置を小型化することが好ましい。非常用の電源供給手段としてコンデンサ等の蓄電体をドアラッチ装置の内部に配置した場合であっても、ドアラッチ装置が大型化するのを回避するための工夫が必要である。
【0008】
本発明は、非常用の電源供給手段として蓄電体を備え、小型化可能なドアラッチ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
車両のドアに設けられて、前記車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチすることにより前記ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置であって、
前記ドアラッチ装置は、
モータと、
前記モータによって駆動される機械機構と、
前記モータを制御するドアロックECUと、
前記モータ、前記機械機構、及び前記ドアロックECUを収容するケースと、を備え、
前記ドアロックECUは、プリント配線基板と、前記プリント配線基板に接続される蓄電体と、を備え、
前記ケースは、
隔壁と、
前記隔壁の一方側に前記モータ及び前記機械機構を収容する第1収容空間と、
前記隔壁の他方側に前記プリント配線基板及び前記蓄電体を収容する第2収容空間と、を備え、
前記隔壁には、前記第2収容空間から前記第1収容空間に向かって凹設された蓄電体収容部が設けられ、
前記蓄電体は、前記蓄電体収容部に配置され
前記蓄電体は、前記隔壁に直交する第1方向から見て、前記モータを挟んで前記機械機構と反対側に配置されている
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的体積の大きい蓄電体が、第2収容空間から第1収容空間に向かって凹設された蓄電体収容部に配置されるので、ドアラッチ装置を小型化することができる。これにより、ウィンドウガラスの軌跡を阻害せずに、ドア内にドアラッチ装置を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態のドアラッチ装置を車両外側の斜め後方からみた斜視図である。
図2図1のドアラッチ装置を車両側の斜め方からみた斜視図である。
図3図1のドアラッチ装置の内部を示す側面図である。
図4】ラッチ機構の斜視図である。
図5】ロック機構を斜め内側後方からみた斜視図である。
図6】ロック機構を斜め外側前方からみた斜視図である。
図7】カム輪が正転するときのロック機構の動作を説明する図であり、(a)はカム輪が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪が基準位置からわずかに正転した状態を示す図であり、(c)はカム輪が基準位置から略40°正転した状態を示す図であり、(d)はカム輪が基準位置から略90°正転した状態を示す図であり、(e)はカム輪が基準位置から略190°正転した状態を示す図であり、(f)はカム輪が基準位置から略250°正転した状態を示す図である。
図8】カム輪が反転と正転とを行うときのロック機構の動作を説明する図であり、(a)はカム輪が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪が基準位置から略40°反転した状態を示す図であり、(c)は(b)の状態からカム輪が略40°正転した状態を示す図であり、(d)は(c)の状態からカム輪が略40°正転した状態を示す図である。
図9】電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め前方外側から見た分解斜視図である。
図10】電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め内側前方から見た分解斜視図である。
図11】コンデンサが搭載されたプリント配線基板の正面図である。
図12図3のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態のドアラッチ装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
以下、ドアラッチ装置10の説明における方向の表記は車両を基準とする。車両を基準とした方向は、図面上で適宜上下、内外(つまり室内側と室外側)および前後を矢印で示す。また、回転する部品の回転方向(時計方向、反時計方向)の表記は、基本的にその時点で参照している図面に従う。各図に示すドアラッチ装置10は車両の右側ドアに適用されるものを例示しているが、左側ドアに適用されるものは左右対称構造とすればよい。
【0014】
図1は、本実施形態に係るドアラッチ装置10を斜め後方からみた斜視図であり、図2はドアラッチ装置10を車両外側の斜め前方からみた斜視図である。
【0015】
ドアラッチ装置10は車両のドアの内部に取り付けられて、車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチすることによりドアを閉扉および開扉する。ドアラッチ装置10が設けられてストライカをラッチするのは、例えば車両のサイドドアであるが、「ドア」は広義であり、ボンネット、トランクリッド、テールゲート等に適用されるものであってもよい。まず、ドアラッチ装置10の概略全体構成について説明する。
【0016】
図1および図2に示すように、ドアラッチ装置10は、ストライカをラッチするラッチ12がストライカ進入溝14の奥に設けられている。ラッチ12は後述するストライカをラッチすることによりドアを閉扉状態に保持するラッチ機構44の一部である。ストライカ進入溝14はカバープレート16の一部として形成されている。カバープレート16の周りにはボディ18が設けられている。ラッチ機構44の内側および後側はカバープレート16およびボディ18によって覆われている。
【0017】
ドアラッチ装置10は、上記のカバープレート16およびボディ18以外に、ケース20、第1カバー22および第2カバー24によって覆われている。ケース20は主に外側を覆い、第1カバー22は主に内側を覆い、第2カバー24はケース20における内側の前方上部をさらに覆っている。カバープレート16、ボディ18、ケース20、第1カバー22および第2カバー24は、ドアラッチ装置10の筐体を形成する。
【0018】
ドアラッチ装置10は、さらに、上面を覆う防水カバー26と、内側下方のケーブルカバー28と、内側上部に設けられたカプラー30と、外側上部に設けられたキーシリンダ連結部32とを備える。防水カバー26はケース20と第1カバー22との境部を覆い、水滴の進入を防止する。ケーブルカバー28はケーブル35との接続部分を覆う。ケーブル35は、図示しないインナーハンドルにつながっている。カプラー30にはハーネスコネクタ(不図示)が接続される。カプラー30の周りにはスポンジを設けてもよい。キーシリンダ連結部32はキーが差し込まれて操作される部分である。ドアラッチ装置10の外側面には、図示しないアウターハンドルに接続されるアウターレバー34の端部が露呈している。
【0019】
図3は、ドアラッチ装置10の内部を示す側面図である。図3では、ボディ18、第1カバー22、防水カバー26およびケーブルカバー28を取り外した状態でドアラッチ装置10を示している。
【0020】
図3に示すように、ドアラッチ装置10の内側には第1収容空間36が形成される。第1収容空間36は外側がケース20で覆われ、内側が主に第1カバー22で覆われる領域である。第1収容空間36の内側は第1カバー22以外にも、カバープレート16、ボディ18およびケーブルカバー28で覆われる。
【0021】
第1収容空間36は、概略的に機械機構38が配置される機構領域40と、電気部品が配置される電気部品領域42とに区分できる。電気部品領域42は前方上方部を占め、機構領域40はその残余の部分を占める。機械機構38は、ラッチ12によってストライカをラッチおよびアンラッチするラッチ機構44と、該ラッチ機構44をロック状態およびアンロック状態にするロック機構46とを有する。ラッチ機構44は、第1収容空間36において後方に配置されており、カバープレート16およびボディ18で覆われている。なお、ドアラッチ装置10では第1収容空間36の他に第2収容空間124(図10参照)が形成されている。第2収容空間124については後述する。
【0022】
また、機械機構38はラッチ機構44をモータ94の動力により解放可能な電動リリース手段と、ラッチ機構44を手動操作力により解放可能な手動リリース手段とを備えている。電動リリース手段は、後述するモータ94およびカム輪76等を有してストライカをアンラッチさせる手段である。手動リリース手段は、人手の操作に機械的に連動するアウターレバー34および後述するインナーレバー59を介してストライカをアンラッチさせる手段である。
【0023】
図4は、ラッチ機構44の斜視図である。図4に示すように、ラッチ機構44は上記のラッチ12およびアウターレバー34に加えて、ベースブラケット50、ラチェット52、ラチェットホルダ54、ラチェットレバー56、アンチパニックレバー58、インナーレバー59を有する。ラッチ機構44の各要素は該ベースブラケット50に支持または枢支されている。
【0024】
ラッチ12は軸部60に枢支されており、ストライカ係合溝12aと、ラチェット係合部12bとを備える。ラッチ12は、開扉状態からストライカがストライカ係合溝12aに進入することによって図示しないスプリングに抗して回転し、ラチェット52がラチェット係合部12bに係合することによってストライカをフルラッチ位置でラッチし、閉扉する。
【0025】
ラチェット52は、軸部62で枢支されたベースレバー64と、該ベースレバー64に対して根元軸部66aが枢支されたポールレバー66とを有する。ベースレバー64は、スプリング65によって弾性付勢されている。ポールレバー66はベースレバー64に対して所定の角度範囲で屈曲する。ラチェット52は、ラチェットホルダ54によって側方から支持されることにより略直線状の姿勢が保持され、ポールレバー66の先端がラチェット係合部12bに係合し、ラッチ12をフルラッチ位置に保持する。
【0026】
ラチェットホルダ54は、軸部68によって枢支されており、スプリング70によって弾性付勢されることによりベースレバー64の側方を支持する。ラチェットホルダ54は、ラチェットレバー56の動作に基づいてスプリング70の弾性力に抗して回転し、ベースレバー64から離間する。そうするとラチェット52のベースレバー64とポールレバー66とは根元軸部66aを基準に中折れ状態となり、ポールレバー66はラチェット係合部12bから離脱してラッチ12を開放する。ラッチ12は弾性力によって回転してストライカをアンラッチし、開扉する。ラチェットホルダ54を介してラチェット52を操作することにより、ラチェット52を直接的に操作するよりも軽い力での操作が可能になる。
【0027】
ラチェットレバー56はベースブラケット50に枢支されており、回転軸よりも内側に突出した受動部56aと、回転軸よりも外側に突出した作用部56bとを備える。ラチェットレバー56は、受動部56aが上方に動くことによって作用部56bがラチェットホルダ54を回転させる。
【0028】
アウターレバー34は、軸部72によって枢支されており、軸部72よりも外側に突出したハンドル操作部34aと、軸部72よりも内側に突出した作用部34bおよびレバー受動片34cとを有する。ハンドル操作部34aはアウターハンドルによって操作される部分である。作用部34bはアンチパニックレバー58の孔58aに挿入されており、該アンチパニックレバー58に作用する部分である。作用部34bは後述するオープンリンク80の異形孔80bにも挿入されている。レバー受動片34cは、作用部34bよりも下方に配置されており、インナーレバー59によって操作される。アウターレバー34は、ハンドル操作部34aまたはレバー受動片34cの動作により回転し、アンチパニックレバー58を押し上げる。
【0029】
インナーレバー59は軸部74で枢支されており、ケーブル35の操作によって搖動し、操作片59aがレバー受動片34cを押し上げる。
【0030】
アンチパニックレバー58は作用部34bが挿入される孔58aと、上方で屈曲した作用片58bとを備える。アンチパニックレバー58は、後述するオープンリンク80がアンロック位置であるとき、アウターレバー34が回転することによって作用部34bによって押し上げられ、作用片58bがラチェットレバー56の受動部56aを押し上げる。これによりラチェットホルダ54およびラチェット52がアンラッチ動作を行う。アンチパニックレバー58は、アンチパニック機構のためにオープンリンク80とは別体構造となっている。
【0031】
図5は、ロック機構46を斜め内側斜め後方からみた斜視図であり、図6は、ロック機構46を斜め外側前方からみた斜視図である。図5ではロック機構46の配置が理解できるようにケース20を簡略的に併記している。図5および図6では、ロック機構46はロック状態となっている。
【0032】
図5および図6に示すように、ロック機構46は、軸部76aで枢支されたカム輪76と、軸部78aで枢支されてカム輪76によって駆動されるカムレバー78と、該カムレバー78によって駆動されるオープンリンク80と、該オープンリンク80と連動するサブロックレバー82と、軸部84aで枢支されてカム輪76によって駆動されるオープンレバー84とを備える。ロック機構46は、さらにサブロックレバー82と連動するロックレバー86および補助レバー88と、キー操作に連動してサブロックレバー82を駆動するキーレバー90およびサブキーレバー92とを備える。各図において部品識別を容易とするためにロックレバー86を濃いドット地、オープンリンク80を薄いドット地で示している。
【0033】
カム輪76は円盤形状であり、モータ94の回転軸のウォーム94aによって外周面に設けられた歯が駆動されることにより回転する。歯の図示は省略する。モータ94は電気部品領域42(図3参照)に配置されている。カム輪76の回転方向は、図5を基準として時計方向を正転、反時計方向を反転とする。
【0034】
カム輪76はカム76bを備える。カム76bは、カム輪76が基準位置にあるときに軸部76aの直下から反時計方向に向かって略270°にわたって次第に大径となる形状で、略270°位置でカム輪76の半径に近くなり、反時計方向に向かってさらに略180°までその径が維持されている。
【0035】
図6に示すように、カム輪76には内側面に補助部品77が設けられている。カム輪76と補助部品77は固定されており実質的に1つの部品となっている。補助部品77が形成する筒77aの内部にはスプリング76cが設けられている。スプリング76cはカム輪76が中立の基準位置となるように付勢している。カム輪76は、モータ94の作用によってスプリング76cに抗して、基準位置から正転および反転が可能である。
【0036】
補助部品77は外周近傍部で内側に突出した突起77bと、該突起77bに対して略反対側に設けられた第1傾斜壁77cとを備える。突起77bは、カム輪76が反転するとき、ケース20(図2参照)に設けられた弾性ストッパ96に当接し、カム輪76の回転を規制する。第1傾斜壁77cは、筒77aの筒面から径方向に向かって、反時計方向に沿って幅が広くなるように形成されている。
【0037】
カム輪76はさらに第2傾斜壁76dと、保持壁76eとを備える。第2傾斜壁76dは、筒77aの筒面から径方向に向かって、時計方向に沿って幅が広くなるように形成されている。第1傾斜壁77cと第2傾斜壁76dとは近い位置で対向するように形成されており、傾斜が逆向きとなっている。第1傾斜壁77cは第2傾斜壁76dよりも外側に配置されている。保持壁76eは第2傾斜壁76dよりもやや反時計方向側に設けられておりカム輪76の周面に沿って外側に突出した円弧状の壁である。図6に示すように、保持壁76eの時計方向側は閉じており、反時計方向側は開放している。
【0038】
図5に戻り、カムレバー78は下面78dがカム76bに当接しており、カム輪76が回転するとカム76bによって駆動され、スプリング78bに抗して反時計方向に搖動する。カムレバー78の先端のノブ78cは、オープンリンク80の側面ガイド溝80aに嵌合しており、カムレバー78が時計方向に搖動すると、傾斜しているオープンリンク80を正立させる。
【0039】
オープンリンク80の下端部には異形孔80bが形成されている。異形孔80bにはアウターレバー34(図4参照)の作用部34bが挿入されており、該アウターレバー34の動作によってオープンリンク80が上方に持ち上げられる。オープンリンク80の下端部にはアンチパニックレバー58が組み付けられており、該オープンリンク80とー体的に昇降および傾斜する。
【0040】
オープンリンク80はカムレバー78によって傾斜姿勢のロック位置(図5の姿勢のとき)と正立姿勢のアンロック位置(図8(b)参照)とに切り替えられる部品であって、ロック位置のときロック機構46がロック状態となり、アンロック位置のときロック機構46がアンロック状態となる。オープンリンク80はロックレバー86によっても位置が切り替えられる。
【0041】
すなわち、オープンリンク80がロック位置のときには、アウターレバー34によって持ち上げられてもアンチパニックレバー58(図4参照)はオープンリンク80とともに傾斜していることからラチェットレバー56(図4参照)に当接せず、いわゆる空振りになる。したがってラチェットレバー56は動作せず、ドアが閉扉されたままのロック状態となっている。
【0042】
一方、オープンリンク80がアンロック位置のときには、アウターレバー34によって持ち上げられると、アンチパニックレバー58もオープンリンク80とともに正立していることからラチェットレバー56に当接して押し上げる。したがってラチェットレバー56が動作して、ドアが開扉され得るアンロック状態となっている。
【0043】
サブロックレバー82は軸部82aで枢支されて搖動可能となっており、キーレバー90およびサブキーレバー92によって搖動駆動されてオープンリンク80をロック位置とアンロック位置とに切り替え可能である。つまり、サブロックレバー82はロック状態とアンロック状態とを切り替え可能である。サブロックレバー82がキーレバー90およびサブキーレバー92の作用下に反時計方向に搖動すると、オープンリンク80は上方部分がサブロックレバー82からロックレバー86の内ノブ86i(図7(d)参照)を介して押し出されて時計方向に搖動してアンロック位置となる。サブロックレバー82が時計方向に搖動して元の位置に復帰すると、オープンリンク80はスプリング78bの弾性力がカムレバー78によって伝達されて反時計方向に搖動してロック位置となる。サブロックレバー82の上部には、軸部82aから前方に突出したアーム98が設けられている。アーム98は、ロック機構46がロック状態かアンロック状態かを識別する手段として用いられ、後述する第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108(図3参照)のスイッチング操作をする。
【0044】
オープンレバー84は電動リリース、すなわち運転者のスイッチ操作等に基づいてドアを開扉させるために用いられる部品である。オープンレバー84は前方に突出したカム受動部84bと、後方に突出したラチェット操作部84cとを備えており、スプリング84dによって時計方向に付勢されている。カム輪76が正転することにより、カム76bがカム受動部84bを押し下げ、オープンレバー84はスプリング84dに抗して軸部84aを中心に反時計方向に回転し、ラチェット操作部84cが上昇する。ラチェット操作部84cが上昇することによりラチェットレバー56の受動部56aが押し上げられてラッチ機構44がアンラッチとなりドアが開扉される。カム輪76が基準位置に戻ると、オープンレバー84もスプリング84dによって基準姿勢に復帰する。
【0045】
オープンレバー84は、オープンリンク80とは独立的にラチェットレバー56を操作することができる。したがって、オープンレバー84によれば、ロック機構46がロック状態(つまり、オープンリンク80がロック位置)であっても電動リリース手段に基づいてドアを開扉させることができる。
【0046】
図6に示すように、ロックレバー86は、軸部86aで枢支されており、上方に延在するアーム86bと、該アーム86bの先端から外側に突出する外ノブ86cと、下方延在部86dから前方に突出する第1突起86eと、軸部86aの近傍から前方に突出する第2突起86fと、下方延在部86dから外側に突出するスプリング受部86gと、2つの押出部86hとを備える。外ノブ86cはサブロックレバー82の下端に形成されたガイド孔82bに嵌め込まれている。サブロックレバー82が搖動することにより、ロックレバー86は外ノブ86cによって搖動される。ロックレバー86は、オープンリンク80をロック位置からアンロック位置に切り替える作用位置と、オープンリンク80に対して切り替え作用をしない非作用位置とに変位可能である。ロックレバー86は、カム輪76またはサブロックレバー82によって駆動される。
【0047】
スプリング受部86gはスプリング100の屈曲部100aに当接しており、サブロックレバー82が搖動することによりスプリング受部86gが屈曲部100aを弾性変形させながら乗り越えることによってロック位置またはアンロック位置のいずれか一方に配置されることにより、サブロックレバー82は図6に示すロック姿勢か、アンロック姿勢(図8(b)参照)のいずれか一方の姿勢を取り得る。
【0048】
第1突起86eは第1傾斜壁77cによって押し出される。これによりロックレバー86は時計方向に回転する。第2突起86fは第2傾斜壁76dによって押し出される。これによりロックレバー86は反時計方向に回転する。第2突起86fは、カム輪76の側面と第1傾斜壁77cとの間の隙間に入り込むことができる。2つの押出部86hは、補助レバー88を下方から支持する。
【0049】
図5に示すように、補助レバー88は、ロックレバー86と同様に軸部86aで枢支されており、前方に突出したアーム88aと、該アーム88aの先端上方に設けられた円弧突起88bとを備える。円弧突起88bは保持壁76e(図6参照)に係合可能な形状である。補助レバー88は、スプリング88cによってロックレバー86に対して反時計方向に付勢されており、下面が押出部86hに当接して支持される。
【0050】
次に、ロック機構46の作用について説明する。
【0051】
図7はカム輪76が正転するときのロック機構46の動作を説明する図であり、(a)はカム輪76が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪76が基準位置からわずかに正転した状態を示す図であり、(c)はカム輪76が基準位置から略40°正転した状態を示す図であり、(d)はカム輪76が基準位置から略90°正転した状態を示す図であり、(e)はカム輪76が基準位置から略190°正転した状態を示す図であり、(f)はカム輪76が基準位置から略250°正転した状態を示す図である。図7は、ロック機構46を内側から見た図であり、カム輪76の正転は時計方向である。
【0052】
図7(a)に示す基本状態からモータ94の作用によってカム輪76は正転する。図7(b)に示すように、カム輪76がわずかに回転すると、カム76bがカムレバー78の下面78dに当接して、カムレバー78を反時計方向に駆動し始める。図7(c)に示すように、カム輪76が略40°回転すると、カム76bの半径拡大開始部76baがオープンレバー84のカム受動部84bに当接し、オープンレバー84を反時計方向に駆動し始める。図7(d)に示すように、カム輪76が略90°回転すると、カム76bの最大径円弧部76bbがカムレバー78の下面78dに達し、カムレバー78は反時計方向に最大変位し、これ以後図7(f)に示す状態まで最大変位を維持する。カムレバー78が最大変位すると、オープンリンク80はノブ78cによって押し出されて搖動し、アンラッチ位置となる。ただし、このときサブロックレバー82、ロックレバー86および補助レバー88は動作せずに図7(a)の姿勢を維持している。
【0053】
また、オープンレバー84が反時計方向に回転することによってラチェット操作部84cがラチェットレバー56の受動部56aに当接して押し上げる。受動部56aが押し上げられることにより、ラチェットレバー56は軸を中心に回動し始める。
【0054】
図7(e)に示すように、カム輪76が略190°回転すると、オープンレバー84は反時計方向に駆動され、ラチェット操作部84cがラチェットレバー56の受動部56aを押し上げる。おおよそこの時点でオープンレバー84がラチェットホルダ54(図4参照)に作用し始めて、アンラッチ動作が開始される。
【0055】
図7(f)に示すように、カム輪76が略250°回転すると、カム76bの最大径円弧部76bbがカム受動部84bに達し、オープンレバー84は反時計方向に最大変位し、ラチェットレバー56の受動部56aは十分に押し上げられ、ラッチ機構44はストライカをアンラッチし、ドアが開扉される。この後、モータ94に対する給電を停止させることにより、カム輪76はスプリング76c(図6参照)の作用によって反時計方向に回動し、ロック機構46は図7(a)に示す基本状態に復帰する。
【0056】
このような電動リリース時には、図7(a)~(f)に示すように、モータ94の作用下にオープンレバー84が回転してラッチ機構44に働きかけることによりストライカをアンラッチすることができる。
【0057】
図8はカム輪76が反転と正転とを行うときのロック機構46の動作を説明する図であり、(a)はカム輪76が基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカム輪76が基準位置から略40°反転した状態を示す図であり、(c)は(b)の状態からカム輪76が略40°正転した状態を示す図であり、(d)は(c)の状態からカム輪76が略40°正転した状態を示す図である。図8は、ロック機構46を外側から見た図であり、カム輪76の反転は時計方向である。
【0058】
図8(a)に示す基本状態からモータ94の作用によってカム輪76は反転する。図8(b)に示すように、カム輪76が略40°反転すると、カム輪76の第2傾斜壁76dが第2突起86fを押圧する。これによりロックレバー86は反時計方向に回動し、スプリング受部86gがスプリング100の屈曲部100aを乗り越えて所定の傾斜位置まで変位する。ロックレバー86の回動にともない、サブロックレバー82は外ノブ86cによって駆動されて時計方向に回動し、オープンリンク80は内ノブ86iによって駆動されて反時計方向に回動し、補助レバー88は押出部86h(図5参照)によって駆動されて反時計方向に回動する。これによりサブロックレバー82およびオープンリンク80はアンロック位置となり、補助レバー88の円弧突起88bは筒77aに近い位置まで変位する。
【0059】
図8(c)に示すように、図8(b)の状態からカム輪76が略40°正転することにより、該カム輪76は図8(a)に示す位置に戻る。ただし、スプリング受部86gが屈曲部100aによって保持されていることから、ロックレバー86、サブロックレバー82およびオープンリンク80は図8(b)に示す姿勢を保持する。これにより、ロック機構46はアンロック状態となる。
【0060】
またこのとき、円弧突起88bがカム輪76の保持壁76eの内径側面に係合し始め、補助レバー88は図8(b)に示す姿勢を保持する。
【0061】
図8(d)に示すように、図8(c)の状態からカム輪76が略40°さらに正転すると、第1傾斜壁77cが第1突起86eを押圧する。これによりロックレバー86は時計方向に回動し、スプリング受部86gがスプリング100の屈曲部100aを乗り越えて図8(a)に示す位置まで復帰する。ロックレバー86の回動にともない、サブロックレバー82は外ノブ86cによって駆動されて反時計方向に回動し、オープンリンク80はカムレバー78(図7参照)によって駆動されて時計方向に回動し、それぞれ図8(a)に示す状態に復帰する。
【0062】
一方、円弧突起88bがカム輪76の保持壁76eの内径側面に係合していることから、補助レバー88は(d)に示す姿勢を保持している。そして、カム輪76がさらに正転すると、やがて円弧突起88bの反時計側端部が保持壁76eの反時計側の閉じた面に当接して回転が規制される。これにより、カム輪76の過度な回転が防止できる。この後、カム輪76は図8(a)に示す位置まで反転すると、円弧突起88bと保持壁76eとの係合が解除されることから補助レバー88はスプリング88cの弾性力によって時計方向に回動し、図8(a)に示す位置まで復帰する。こうしてロック機構46は全体として図8(a)に示す基本姿勢に復帰する。このように、ドアラッチ装置10では、単一のモータ94により、ラッチ機構44の噛合解除、手動リリース手段の作動を不能にするロック機構46のロック状態及び手動リリース手段の作動を可能にするアンロック状態への切り替えを行うことができる。
【0063】
図3に戻り、ドアラッチ装置10における電気部品としては、上記のモータ94の他に、ラッチ12の状態を検出するラッチポジションスイッチ102と、サブキーレバー92の回転状態を検出するキーレバーポジションスイッチ104と、アーム98を介してロック機構46の状態を検出する第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108とが挙げられる。ラッチポジションスイッチ102は、ラッチ機構44のラッチ12がハーフラッチ位置とフルラッチ位置との間の位置で切替わるように構成される。
【0064】
モータ94、キーレバーポジションスイッチ104、第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108は、電気部品領域42にまとめて配置されているが、ラッチポジションスイッチ102は、ラッチ12の近傍に配置するために、電気部品領域42から延出する2本のバスバー110a,110bに接続されている。バスバー110a,110bはプレート112によって保持されている。
【0065】
図9は、電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め前方外側から見た分解斜視図であり、図10は、電気部品およびその収納にかかる部品等を斜め前方内側から見た分解斜視図である。
【0066】
図9および図10に示すように、ドアラッチ装置10はモータ94を制御するドアロックECU2を備える。ドアロックECU2は、プリント配線基板120と、プリント配線基板120上に配置されるマイクロコンピュータ200と、プリント配線基板120に接続されるコンデンサ202と、を備える。ドアロックECU2が制御するモータは複数でもよい。ケース20の外側面の上部で、電気部品領域42の裏側にあたる領域には凹部122が形成されている。凹部122は外側面が上記の第2カバー24で覆われることによって第2収容空間124を形成する。即ち、ケース20の上部には、凹部122の底板122bに対し外側に第2収容空間124が設けられ、凹部122の底板122bに対し内側に第1収容空間36が設けられる。ドアロックECU2は第2収容空間124に収容されている。ケース20における凹部122の縁と第2カバー24との間には対外防水シール126が設けられており、外部と第2収容空間124との間が防水されている。対外防水シール126は紐状のシール材を所定長さに切断して得られ、専用成形品が不要である。対外防水シール126は下端部がやや重複して配置される。
【0067】
プリント配線基板120は、外側に向かって立設するピン128,130,132,134,136(以下、代表的にピンPとも呼ぶ)と、ピンPの根元の周囲を覆うことによってピンをプリント配線基板120に対して支持するピンホルダ138,140,142,144,146(以下、代表的にピンホルダHとも呼ぶ)と、2つの位置決め孔147a,147bとを備える。ピンホルダHは適度な強度を有しており、後述する内部防水シールBを押圧することができるまた、ピンホルダHは適度な弾性を有しており、挿入されるピンPとの間でシール作用を奏する。ピンホルダHは樹脂製であり、例えばポリアセタールによる成型品である。
【0068】
ピン128は2本でモータ94に接続される。ピン130は3本で第1ロックポジションスイッチ106および第2ロックポジションスイッチ108に接続される。ピン132は3本でキーレバーポジションスイッチ104に接続される。ピン134は2本でバスバー110a,110bを介してラッチポジションスイッチ102に接続される。ピン136は数本あり、第1カバー22のターミナル壁30aの孔から内側に突出してカプラー30の一部となる。ピンPは、プリント配線基板120の裏面で半田付けされている。
【0069】
ピンホルダ138は2本のピン128を保持しており、ピンホルダ140は3本のピン130を直列に保持しており、ピンホルダ142は3本のピン132を直列に保持しており、ピンホルダ144は2本のピン134を保持しており、ピンホルダ146は数本のピン136を2列に保持している。
【0070】
位置決め孔147aと位置決め孔147bとは離間した位置に設けられている。位置決め孔147aは丸孔であり、位置決め孔147bは位置決め孔147aを指向する長孔であり、後述する位置決めピン167a,167bの製造誤差が許容される。プリント配線基板120は第2収容空間124に略沿った変則形状となっている。
【0071】
ケース20における凹部122の底板122bには、ピン孔148,150,152,154,156(以下、代表的にピン孔Aとも呼ぶ)が形成されている。ピン孔Aは、第1収容空間36と第2収容空間124との間を連通する。ピン128,130,132,134,136は、順にピン孔148,150,152,154,156から第1収容空間36に突出し、各電気部品に設けられたピン接続孔に挿入されて電気的に接続される。各電気部品はケース20の外側面に設けられた保持壁165よって保持される。ピンホルダ138,140,142,144,146の外周縁とピン孔148,150,152,154,156との間には、順に矩形で環状の内部防水シール158,160,162,164,166(以下、代表的に内部防水シールBとも呼ぶ)が設けられている。内部防水シールBは第1収容空間36と第2収容空間124との間を防水する。第2収容空間124は対外防水シール126と内部防水シールBとによって防水されており、プリント配線基板120を収容するのに適する。内部防水シールBは対応するピン孔Aに応じた矩形の環状であることが好ましいが、条件によっては対外防水シール126のように非環状体の一部を重複させて用いてもよい。
【0072】
底板122bにはさらに、2つの位置決めピン167a,167bと、複数の内側基板サポータ169とが形成されている。位置決めピン167a,167bは、位置決め孔147a,147bに挿入され、プリント配線基板120が位置決めされる。内側基板サポータ169は、プリント配線基板120の周囲に沿った位置に設けられており、該プリント配線基板120の内側面に当接する。
【0073】
凹部122を囲む周壁122aの外周に沿ってシール溝173が形成されている。シール溝173には対外防水シール126が配置される。シール溝173には、対外防水シール126の下端部を重複して配置するための重複溝173aが形成されている。
【0074】
第2カバー24はその内側面に、それぞれ一対の支持突起168,170,172,174,176が形成されている。支持突起168,170,172,174,176は、プリント配線基板120を挟んで順にピンホルダ138,140,142,144,146と対向する位置に設けられている。
【0075】
第2カバー24の内側面にはさらに、2つの位置決めポスト177a,177bと、複数の外側基板サポータ178と、シール押え突起180と、浸透膜ホルダ182とが形成されている。位置決めポスト177aには丸穴が形成され,177bには位置決めポスト177bを指向する長穴が形成されている。位置決めポスト177a,177bの各穴には、位置決め孔147a,147bを貫通した位置決めピン167a,167bが挿入され、第2カバー24が位置決めされる。
【0076】
外側基板サポータ178は、プリント配線基板120の周囲に沿った位置で、かつ該プリント配線基板120を介して内側基板サポータ169に対向する位置に設けられており、該内側基板サポータ169とともにプリント配線基板120を挟持して保持する。内側基板サポータ169と外側基板サポータ178とは互いに対向するように、同じ断面形状、同じ向きに設けられている。
【0077】
シール押え突起180は、シール溝173に沿った略環状の細い突起であって対外防水シール126の外面を押圧する。対外防水シール126はシール押え突起180によって押圧されて密封されることによりシール作用を奏する。
【0078】
浸透膜ホルダ182は外側に突出した筒体で先端に孔を有する。浸透膜ホルダ182には内側から浸透膜フィルタ184が取り付けられる。浸透膜フィルタ184は水滴の通過を防止するとともに孔から水蒸気を通過させることができ、第2収容空間124が高湿度状態となることを防止する。浸透膜ホルダ182および浸透膜フィルタ184は、第2収容空間124においてプリント配線基板120よりも下の空間に配置される。
【0079】
第2カバー24には周囲に複数のビス孔186が設けられており、該ビス孔186を通ったビス188がケース20に設けられたビスポスト190に螺合することにより、第2カバー24がケース20に固定される。
【0080】
第1カバー22には周囲に複数のフック192が設けられており、該フック192がケース20に設けられた爪194に係合することにより、第1カバー22がケース20に固定される。ケース20に対して第1カバー22および第2カバー24が取り付けられた後に上から防水カバー26が取り付けられる。
【0081】
なお、ケース20と第1カバー22との間に形成される第1収容空間36は完全防水ではなく、いわゆる防滴構造となっている。第1収容空間36に収容される各部品は防滴構造で足りるためである。これに対して、上記のように第2収容空間124はプリント配線基板120上に精密電子部品などが実装されていることから、対外防水シール126および内部防水シールBによって防水構造となっている。
【0082】
マイクロコンピュータ200は、CPU(中央演算処理装置)及びROM、RAM等のメモリ、及びI/F(インターフェース)を備える。ドアロックECU2は、カプラー30(図1参照)に接続されるハーネスコネクタ(不図示)を介して、車両の本体側に設けられるバッテリ(例えば、12Vバッテリ)に接続され、通常、バッテリからの電力によりモータ94を駆動する。ドアロックECU2には、ドアの内側に設けられた内側アンラッチスイッチ及び内側ロックスイッチからの信号、ドアの外側に設けられた外側アンラッチスイッチからの信号などが入力される。ドアロックECU2は、内側アンラッチスイッチ及び外側アンラッチスイッチから所定の信号が入力されると、電動リリース手段によりストライカをアンラッチさせドアを開扉する。内側ロックスイッチから所定の信号が入力されると、ロック機構46をロック状態又はアンロック状態へ切り替える。
【0083】
続いて、プリント配線基板120に設けられたコンデンサ202について図3図11、および図12を参照しながら詳細に説明する。図3は、前述したように図1のドアラッチ装置10の内部を示す側面図であり、より詳細には、内外方向(車両の車幅方向)に沿ってドアラッチ装置10の内部を車両の内側から見た図である。図11は、コンデンサ202が搭載されたプリント配線基板120の正面図であり、より詳細には、プリント配線基板120を車両の内側から見た図である。図12は、図3のA-A線断面図であり、より詳細には、前後方向に沿って図3のA-A線断面を車両の前方から見た図である。
【0084】
図11に示すように、プリント配線基板120には、内側面の前方上部にコンデンサ202が配置される。コンデンサ202は1つでもよいが、複数のコンデンサが電気的に並列に接続されていることが好ましい。静電容量の大きなコンデンサを1つ設けるよりも、複数のコンデンサを用いることで配置の自由度が向上する。さらに、複数のコンデンサを電気的に並列に接続することで、必要な静電容量を複数のコンデンサの静電容量の合計(合成容量)でまかなうことができる。本実施形態では、プリント配線基板120に3つのコンデンサ202が設けられている。
【0085】
コンデンサ202は、非常用の電源供給手段としてモータ94に電力供給可能に構成され、車両の衝突時など、モータ94のバッテリから適切に電力を供給できない場合に、コンデンサ202に蓄えられた電力でロック機構46をロック状態からアンロック状態にする。これにより、バッテリからの電力供給が遮断された時にロック機構46がアンロック状態であったとしても、乗員は手動リリース機構の解除作動によって車外に出ることができる。
【0086】
コンデンサ202としては、電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ等を採用することができ、好ましくは電解コンデンサである。コンデンサ202は、緊急時にロック機構46をロック状態からアンロック状態にできるのに十分な電力を蓄電できればよい。静電容量が小さすぎるとロック機構46をロック状態からアンロック状態にすることができず、静電容量が大きすぎるとコンデンサ202が大型化してしまう。コンデンサ202の放電可能時間は、好ましくは50ms以上1s以下であり、さらに好ましくは100ms以上500ms以下である。コンデンサ202の静電容量(複数の場合は合成容量)は、好ましくは50μF以上200μF以下であり、さらに好ましくは、80μF以上150μF以下である。
【0087】
コンデンサ202は、プリント配線基板120とともに第2収容空間124のコンデンサ収容部125に配置されている。コンデンサ収容部125は、第2収容空間124の凹部122に凹設される。より具体的には、第1収容空間36と第2収容空間124とを区画形成する隔壁である底板122bの一部が、第2収容空間124から第1収容空間36に向かって突出し、第2収容空間124が他の領域よりも広くなることで、コンデンサ収容部125が形成される。即ち、第2収容空間124のコンデンサ収容部125は、内外方向における幅が第2収容空間124の他の領域よりも広くなっている。
【0088】
このように、比較的体積の大きいコンデンサ202が、第2収容空間124から第1収容空間36に向かって凹設されたコンデンサ収容部125に配置されるので、ドアラッチ装置10を小型化することができる。これにより、ウィンドウガラスの軌跡を阻害せずに、ドア内にドアラッチ装置10を配置することができる。なお、コンデンサ202は長尺方向が内外方向に向くようにコンデンサ収容部125に配置されることが好ましい。例えば、コンデンサ202が円柱形状の場合、円柱の高さ方向が内外方向に向くようにコンデンサ収容部125に配置されることが好ましい。
【0089】
また、コンデンサ202は、図3に示すように内外方向から見て、モータ94を保持する前方の保持壁165(以下、この保持壁165を仕切壁196と称する)を挟んでモータ94と隣り合うように配置されるとともに、図12に示すように前後方向から見て、少なくとも一部が内外方向において重なるように配置されている。このように、体積の大きいモータ94とコンデンサ202とを、内外方向から見て隣り合うようにずらして配置するとともに、前後方向から見て少なくとも一部が重なるように配置することで、仕切壁196の高さ方向におけるドアラッチ装置の寸法(内外方向の幅)をさらに抑えることができる。
【0090】
また、コンデンサ202と機械機構38とは、図3に示すように内外方向から見て、モータ94を挟んで、反対側に配置される。即ち、コンデンサ202はモータ94の前方に配置され、機械機構38はモータ94の後方に配置される。このように、コンデンサ202を、モータ94を挟んで、部品点数の多い機械機構38と反対側に配置することで、仕切壁196の高さ方向におけるドアラッチ装置10の寸法(内外方向の幅)をより一層抑えることができる。
【0091】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、前述した実施形態では、蓄電体としてコンデンサ202を例示したが、コンデンサ202に限らず、誘電体を持たないキャパシタであってもよい。
【0092】
また、本実施形態のコンデンサ収容部125は、前後方向よりも上下方向に長くなるように形成されているが、これに限らず、上下方向よりも前後方向に長くなるように形成されてもよく、複数設けられてもよい。本実施形態では、1つのコンデンサ収容部125に複数のコンデンサ202を集約して配置することで、プリント配線基板120の構造が複雑になるのが抑制される。
【0093】
また、本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0094】
(1) 車両のドアに設けられて、前記車両の本体側に設けられたストライカをラッチおよびアンラッチすることにより前記ドアを閉扉および開扉するドアラッチ装置(ドアラッチ装置10)であって、
前記ドアラッチ装置は、
モータ(モータ94)と、
前記モータによって駆動される機械機構(機械機構38)と、
前記モータを制御するドアロックECU(ドアロックECU2)と、
前記モータ、前記機械機構、及び前記ドアロックECUを収容するケース(ケース20)と、を備え、
前記ドアロックECUは、プリント配線基板(プリント配線基板120)と、前記プリント配線基板に接続される蓄電体(コンデンサ202)と、を備え、
前記ケースは、
隔壁(底板122b)と、
前記隔壁の一方側に前記モータ及び前記機械機構を収容する第1収容空間(第1収容空間36)と、
前記隔壁の他方側に前記プリント配線基板及び前記蓄電体を収容する第2収容空間(第2収容空間124)と、を備え、
前記隔壁には、前記第2収容空間から前記第1収容空間に向かって凹設された蓄電体収容部(コンデンサ収容部125)が設けられ、
前記蓄電体は、前記蓄電体収容部に配置されている、ドアラッチ装置。
【0095】
(1)によれば、比較的体積の大きい蓄電体が、第2収容空間から第1収容空間に向かって凹設された蓄電体収容部に配置されるので、ドアラッチ装置を小型化することができる。これにより、ウィンドウガラスの軌跡を阻害せずに、ドア内にドアラッチ装置を配置することができる。
【0096】
(2) (1)に記載のドアラッチ装置であって、
前記蓄電体及び前記モータは、前記隔壁に直交する第1方向(内外方向)から見て、前記隔壁から立設された仕切壁(仕切壁196)を挟んで隣り合うように配置されている、ドアラッチ装置。
【0097】
(2)によれば、隔壁に直交する第1方向から見て、体積の大きいモータと蓄電体とを隣り合うようにずらして配置することで、仕切壁の高さ方向におけるドアラッチ装置の寸法を抑えることができる。
【0098】
(3) (2)に記載のドアラッチ装置であって
前記機械機構は、
前記ドアを閉扉状態に保持するラッチ機構(ラッチ機構44)と、
前記ラッチ機構を前記モータの動力により解放可能な電動リリース手段と、
前記ラッチ機構を手動操作力により解放可能な手動リリース手段と、
前記手動リリース手段の作動を不能にするロック状態と前記手動リリース手段の作動を
可能にするアンロック状態とに切り替えるロック機構(ロック機構46)と、を備え、
前記蓄電体は、前記第1方向から見て、前記モータを挟んで、前記機械機構と反対側に
配置されている、ドアラッチ装置。
【0099】
(3)によれば、蓄電体を、モータを挟んで、部品点数の多い機械機構と反対側に配置することで、仕切壁の高さ方向におけるドアラッチ装置の寸法を抑えることができる。
【0100】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載のドアラッチ装置であって、
前記蓄電体及び前記モータは、前記隔壁と平行な第2方向(前後方向)から見て、少なくとも一部が重なるように配置されている、ドアラッチ装置。
【0101】
(4)によれば、隔壁と平行な第2方向から見て、体積の大きいモータと蓄電体とを少なくとも一部が重なるように配置することで、仕切壁の高さ方向におけるドアラッチ装置の寸法をさらに抑えることができる。
【0102】
(5) (1)~(4)のいずれかに記載のドアラッチ装置であって、
前記蓄電体は、前記蓄電体収容部に複数配置されている、ドアラッチ装置。
【0103】
(5)によれば、静電容量の大きい1つの蓄電体よりも複数の蓄電体で静電容量を確保することにより、蓄電体の配置の自由度が高く、ドアラッチ装置を小型化することができる。
【0104】
(6) (1)~(5)のいずれかに記載のドアラッチ装置であって、
前記ドアラッチ装置は、
前記隔壁の前記一方側の面を覆うことによって、前記第1収容空間を形成する第1カバー(第1カバー22)と、
前記隔壁の他方側の面を覆うことによって、前記第2収容空間を形成する第2カバー(第2カバー24)と、
前記隔壁に設けられ、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を連通するピン孔(ピン孔148)と、
前記プリント配線基板から立設し、前記ピン孔から前記第1収容空間に突出するピン(ピン128)と、
前記ピンの根元の周囲を覆うことによって前記ピンを前記プリント配線基板に対して支持するピンホルダ(ピンホルダ138)と、
前記ケースと前記第2カバーとの間に設けられ、外部と前記第2収容空間との間を防水する対外防水シール(対外防水シール126)と、
前記ピンホルダと前記ピン孔との間に設けられて、前記第1収容空間と前記第2収容空間との間を防水する内部防水シール(内部防水シール160)と、をさらに備える、ドアラッチ装置。
【0105】
(6)によれば、対外防水シールと内部防水シールとによりプリント配線基板の全面および蓄電体を防水することができる。
【0106】
(7) (6)に記載のドアラッチ装置であって
前記モータは、前記ピンを介して前記プリント配線基板に接続されている、ドアラッチ
装置。
【0107】
(7)によれば、モータを、ピンを介してプリント配線基板に接続することで、第2収容空間に配置されたプリント配線基板および蓄電体に対し、モータを第1収容空間に配置しても、防水機能の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0108】
2 ドアロックECU
10 ドアラッチ装置
20 ケース
22 第1カバー
24 第2カバー
38 機械機構
44 ラッチ機構
46 ロック機構
94 モータ
120 プリント配線基板
122b 底板(隔壁)
124 第2収容空間
125 コンデンサ収容部
126 対外防水シール
160 内部防水シール
128 ピン
138 ピンホルダ
148 ピン孔
196 仕切壁
202 コンデンサ(蓄電体)
図1
図2
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