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  • 特許-積層セラミック電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201C
H01G4/30 201D
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 201L
H01G4/30 311E
H01G4/30 311Z
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 517
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020150168
(22)【出願日】2020-09-07
(62)【分割の表示】P 2017225503の分割
【原出願日】2013-05-20
(65)【公開番号】P2020198453
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】10-2013-0018275
(32)【優先日】2013-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ビュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ・キュ・ハ
(72)【発明者】
【氏名】グ・ヒュン・ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム・チャン・フン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ミュン・チョン
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】岩田 淳
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-135063(JP,A)
【文献】特開2012-134120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G4/00-4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内部電極が形成されたセラミック本体と、
前記セラミック本体の外部に形成され前記内部電極と接続された外部電極と、
前記セラミック本体の外部面のうち前記内部電極と前記外部電極が接続される接続面から前記セラミック本体の内部側へ形成され、ホウ素を含むバッファー層と、
を含み、
前記外部電極の厚さをT、前記バッファー層の厚さをt、アクティブ領域の厚さをT、セラミック本体の厚さをTとしたとき、5μm≦T≦10μm、T/T>0.8、t≦5μmであり、
前記外部電極はアルカリ金属及びバナジウム族化合物からなる群から選択された一つ以上を含む積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記セラミック本体は直六面体である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記内部電極は長方形である、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記外部電極は前記セラミック本体の端面に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記外部電極は前記セラミック本体の上下面及び側面の一部に伸びる、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記セラミック本体はチタン酸バリウム又はチタン酸ストロンチウムを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記外部電極はガラスを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記内部電極は金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記外部電極は金、銀、パラジウム、銅、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
セラミック本体の対向する端面に形成された第1及び第2の外部電極を含む外部電極と、
前記セラミック本体の内部に離隔されて積層配置され、前記第1及び第2の外部電極にそれぞれ接続された第1及び第2の内部電極を含む内部電極と、
前記セラミック本体の端面から前記セラミック本体の内部側へ形成され、ホウ素を含むバッファー層と、
を含み、
前記外部電極の厚さをT、前記バッファー層の厚さをt、アクティブ領域の厚さをT、セラミック本体の厚さをTとしたとき、5μm≦T≦10μm、T/T>0.8、t≦5μmである、積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記セラミック本体は直六面体である、請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記内部電極は長方形である、請求項10または11に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記外部電極は前記セラミック本体の上下面及び側面の一部に伸びる、請求項10から12のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記セラミック本体はチタン酸バリウム又はチタン酸ストロンチウムを含む、請求項10から13のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項15】
前記外部電極はガラスを含む、請求項10から14のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項16】
前記内部電極は金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項10から15のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項17】
前記外部電極は金、銀、パラジウム、銅、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項10から16のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項18】
導電性金属及びガラスを含む外部電極用ペーストを製造する段階と、
内部電極が積層された焼結チップに前記外部電極用ペーストで外部電極を形成する段階と、
前記ガラスの軟化点以上で昇温速度を調節してホウ素を含むバッファー層の厚さを調節する外部電極焼結段階と、
を含
前記外部電極の厚さをT、前記バッファー層の厚さをt、アクティブ領域の厚さをT 、セラミック本体の厚さをT としたとき、5μm≦T≦10μm、T /T >0.8、t≦5μmである
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項19】
前記昇温速度を高めて前記バッファー層の厚さを減少させる、請求項18に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項20】
前記昇温速度を低めて前記バッファー層の厚さを増加させる、請求項18に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関し、信頼性に優れた積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品の小型化、高性能化などの傾向に伴い、電子部品の小型化及び高容量化なども求められている。このような小型化及び高容量化などの要求に応じて積層セラミック電子部品が脚光を浴びており、その需要が大きくなっている。
【0003】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を具現するために、内部電極の高積層及び内部電極の薄層化が求められている。
【0004】
一般に、外部電極にはガラス成分が含まれ、ガラス成分が焼結過程を経ながらセラミック本体の内部に拡散して浸透することがある。これにより、外部電極に存在するガラスの含量が減少して外部電極の緻密度が低下する可能性がある。
【0005】
外部電極の緻密度が低下する場合、外部電極を介してメッキ液などが浸透して信頼性が低下する可能性がある。
【0006】
特許文献1には、セラミック本体の全面を取り囲んで拡散層が形成された場合が開示されており、特許文献2には、外部電極とセラミック積層体の密着性向上のために最も外側のセラミック層に外部電極の導体と同種の導体を含ませる事項が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-1645号公報
【文献】特開平6-151234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、外部電極の緻密度低下及びメッキ液などの浸透を防止して信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、内部に内部電極が形成されたセラミック本体と、上記セラミック本体の外部に形成され上記内部電極と接続された外部電極と、上記セラミック本体の外部面のうち上記内部電極と上記外部電極が接続される接続面から上記セラミック本体の内部側へ形成されたバッファー層と、を含み、上記外部電極の厚さをT、上記バッファー層の厚さをt、アクティブ領域の厚さをT、セラミック本体の厚さをTとしたとき、T≦10μm、T/T>0.8、t≦5μmである積層セラミック電子部品を提供する。
【0010】
本発明の態様によれば、上記バッファー層はホウ素の含量が50%以上であることができる。
【0011】
本発明の態様によれば、上記セラミック本体は直六面体であることができる。
【0012】
本発明の態様によれば、上記内部電極は長方形であることができる。
【0013】
本発明の態様によれば、上記外部電極は上記セラミック本体の端面に形成されることができる。
【0014】
本発明の態様によれば、上記外部電極は上記セラミック本体の上下面及び側面の一部に伸びることができる。
【0015】
本発明の態様によれば、上記セラミック本体はチタン酸バリウム又はチタン酸ストロンチウムを含むことができる。
【0016】
本発明の態様によれば、上記外部電極はガラスを含むことができる。
【0017】
本発明の態様によれば、上記内部電極は金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0018】
本発明の態様によれば、上記外部電極は金、銀、パラジウム、銅、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0019】
本発明の他の態様は、セラミック本体の対向する端面に形成された第1及び第2の外部電極を含む外部電極と、上記セラミック本体の内部に離隔されて積層配置され、上記第1及び第2の外部電極にそれぞれ接続された第1及び第2の内部電極を含む内部電極と、上記セラミック本体の端面から上記セラミック本体の内部側へ形成されたバッファー層と、を含み、上記外部電極の厚さをT、上記バッファー層の厚さをt、アクティブ領域の厚さをT、セラミック本体の厚さをTとしたとき、T≦10μm、T/T>0.8、t≦5μmである積層セラミック電子部品であることができる。
【0020】
本発明の態様によれば、上記バッファー層はホウ素の含量が50%以上であることができる。
【0021】
本発明の態様によれば、上記セラミック本体は直六面体であることができる。
【0022】
本発明の態様によれば、上記内部電極は長方形であることができる。
【0023】
本発明の態様によれば、上記外部電極は上記セラミック本体の上下面及び側面の一部に伸びることができる。
【0024】
本発明の態様によれば、上記セラミック本体はチタン酸バリウム又はチタン酸ストロンチウムを含むことができる。
【0025】
本発明の態様によれば、上記外部電極はガラスを含むことができる。
【0026】
本発明の態様によれば、上記内部電極は金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0027】
本発明の態様によれば、上記外部電極は金、銀、パラジウム、銅、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0028】
本発明の他の態様は、ガラスを含む外部電極用ペーストを製造する段階と、内部電極が積層された焼結チップに上記外部電極用ペーストで外部電極を形成する段階と、上記ガラスの軟化点以上で昇温速度を調節してバッファー層の厚さを調節する外部電極焼結段階と、を含む積層セラミック電子部品の製造方法であることができる。
【0029】
本発明の態様によれば、上記昇温速度を高めて上記バッファー層の厚さを減少させることができる。
【0030】
本発明の態様によれば、上記昇温速度を低めて上記バッファー層の厚さを増加させることができる。
【0031】
本発明のさらに他の態様は、ガラスを含む外部電極用ペーストを製造する段階と、内部電極が積層された焼結チップに上記外部電極用ペーストで外部電極を形成する段階と、上記外部電極を焼結する焼結段階と、を含み、上記外部電極用ペーストを製造する段階において、上記ガラスに含まれるアルカリ金属、バナジウム族酸化物の含量を調節してバッファー層の厚さを調節する積層セラミック電子部品の製造方法を提供する。
【0032】
本発明の態様によれば、上記アルカリ金属、バナジウム族は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0033】
本発明の態様によれば、上記アルカリ金属、バナジウム族酸化物の含量を増加させて上記バッファー層の厚さを増加させることができる。
【0034】
本発明の態様によれば、上記アルカリ金属、バナジウム族酸化物の含量を減少させて上記バッファー層の厚さを減少させることができる。
【0035】
本発明の態様によれば、上記焼結段階において、上記ガラスの軟化点以上での昇温速度を調節して上記バッファー層の厚さを調節することができる。
【0036】
本発明の態様によれば、上記昇温速度を高めて上記バッファー層の厚さを減少させることができる。
【0037】
本発明の態様によれば、上記昇温速度を低めて上記バッファー層の厚さを増加させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、外部電極の緻密度低下及びメッキ液などの浸透を防止して信頼性に優れた積層セラミック電子部品を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品に対する斜視図である。
図2図1のX-X'線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0041】
図1は本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品の斜視図であり、図2図1のX-X'線に沿う断面図である。
【0042】
図1及び2を参照すると、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品は、セラミック本体10、セラミック本体の内部に形成された内部電極30、セラミック本体10の外部に形成された外部電極20及びセラミック本体の内部に形成されたバッファー層41、42を含むことができる。
【0043】
セラミック本体10は直六面体形状であることができる。本明細書では、「L方向」を「長さ方向」、「W方向」を「幅方向」、「T方向」を「厚さ方向」とする。ここで、厚さ方向とは、内部電極30が積層された方向を意味することもできる。セラミック本体10の長さは幅よりも大きくても良く、幅は厚さと同一であっても良い。セラミック本体10は、上面S1、下面S4、側面S3、S6及び端面(end surface)S2、S5を有することができる。
【0044】
セラミック本体10は、誘電率の高い誘電材料を含み、具体的には、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウムを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0045】
誘電材料は、電気双極子(electric dipole)を含んでいるため、より多くの量の電荷を蓄積させることができる。
【0046】
外部電極20は、セラミック本体10の外部に形成され、具体的には、長さ方向(「L方向」)の端面(end surface)S2、S5に形成されることができる。外部電極20は、セラミック本体10の上下面S1、S4及び側面S3、S6の一部に伸びて形成されることができる。
【0047】
外部電極20は第1及び第2の外部電極21、22を有し、第1及び第2の外部電極21、22には互いに反対の極性の電気が印加されることができる。
【0048】
外部電極20は、導電性金属及びガラスを含むことができる。導電性金属は、金、銀、パラジウム、銅、ニッケル及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0049】
ガラスは、外部電極20に形成されるポア(pore)を埋めるために添加され、これにより、外部電極20の緻密度を向上させることができる。外部電極20にポアがそのまま存在する場合は、ポアを通してメッキ液などが浸透する可能性があるため、電子部品の信頼性を低下させる可能性がある。
【0050】
内部電極30は、セラミック本体10の内部に積層配置され、長方形であることができるが、これに限定されるものではない。内部電極30は第1及び第2の内部電極31、32を有し、第1及び第2の内部電極31、32は互いに反対の方向に引き出されて第1及び第2の外部電極21、22にそれぞれ接続されて反対の極性に帯電されることができる。
【0051】
内部電極30は、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。しかしながら、これに制限されず、内部電極30に十分な導電性を付与できるものであればいずれでも良い。
【0052】
バッファー層41、42は、第1及び第2の内部電極31、32と第1及び第2の外部電極21、22の接続面51、52からセラミック本体10の内部側へ形成されることができる。接続面とは、セラミック本体10の外部面のうち内部電極30と外部電極20が接続される面をいう。具体的には、図2を参照すると、セラミック本体の端面(end surface)S2、S5が接続面51、52となることができる。
【0053】
外部電極20に含有されているガラス成分は、セラミック本体10のグレインバウンダリーを介してセラミック本体10に浸透することがある。セラミック本体10に浸透したガラスは、セラミック本体10を構成する酸化物を溶かし、これにより、ガラス相(glassy phase)のバッファー層41、42が形成されることができる。
【0054】
バッファー層41、42は、ガラスを構成する元素の含量がセラミック本体10よりも高い。ガラスを構成する元素としては、主にガラスの網目構造(network structure)を形成する珪素(Si)、ホウ素(B)などがある。
【0055】
他の観点では、バッファー層41、42は、バリウム(Ba)の含量がセラミック本体10よりも低い。セラミック本体10は、主にチタン酸バリウムで構成され、外部電極20からガラスが浸透することにより、バリウム(Ba)の含量が相対的に低くなる。
【0056】
バッファー層41、42は、ガラスを構成する成分のうちセラミック母材にはないホウ素(B)の含量が検出される領域と定義することができる。
【0057】
バッファー層41、42の厚さtは、セラミック本体10の端面(end surface)S2、S5から測定されたバッファー層41、42の長さ方向(「L方向」)の寸法であることができる。
【0058】
バッファー層41、42の厚さtは、セラミック本体10の端面(end surface)S2、S5から長さ方向にEPMA、EDXなどを用いてスキャンして測定することができる。即ち、セラミック本体10の端面からホウ素成分が検出される地点までの距離をバッファー層41、42の厚さtとすることができる。
【0059】
バッファー層41、42の厚さtは平均値であることができる。セラミック本体10の長さ方向及び厚さ方向がなす断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡を用いて観察し、等間隔で10個の地点を測定してその平均値をバッファー層41、42の厚さtとすることができる。
【0060】
10個の地点は、セラミック本体を中心として幅方向の両側への5層の内部電極にそれぞれ対応する地点であることができる。
【0061】
本実施形態において、外部電極の厚さTは10μmより小さいか同じである。即ち、T≦10μm以下であることができる。
【0062】
外部電極の厚さが減少するほど、外部電極の緻密度の低下によって信頼性不良が発生する可能性がある。本発明は、外部電極の厚さTが10μmより小さいか同じ場合に発生する可能性がある信頼性不良の問題を解決するためのものである。
【0063】
外部電極の厚さが減少するほど、信頼性不良が増加する点について説明すると、バッファー層の厚さが同じ場合、外部電極の焼結過程で外部電極からセラミック本体の方に移動するガラスの含量は一定である。したがって、外部電極の厚さが減少するほど、外部電極に残存するガラスの含量はより小さくなる。
【0064】
ガラスは、外部電極のポアを埋める役割をするが、ガラスの含量が少なくなるにつれ、外部電極にはポアが多くなる。したがって、メッキ過程でポアを通じたメッキ液の浸透がより容易になり、これにより、信頼性不良が増加する可能性がある。
【0065】
外部電極20の厚さTとは、セラミック本体10の端面S2、S5上に形成された外部電極20においてセラミック本体10の端面S2、S5からの長さ方向(L方向)の寸法を意味する。
【0066】
外部電極20の厚さTは平均値であることができる。
【0067】
セラミック本体10の幅方向の中心部において長さ方向(L方向)及び厚さ方向(T方向)がなす断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡でスキャンし、セラミック本体10の厚さ方向の中心部における任意の10個の地点で外部電極20の厚さを測定し、その平均値を外部電極20の厚さTとすることができる。
【0068】
幅方向の中心部とは、セラミック本体10の中心から幅方向の両側へセラミック本体10の幅の30%以内の領域を意味する。上記の範囲内で外部電極20の厚さTが安定した値を有することができる。
【0069】
厚さ方向の中心部は、セラミック本体10の中心から厚さ方向の両側へそれぞれ5番目の内部電極30以内の領域を意味する。
【0070】
また、セラミック本体の厚さTに対するアクティブ領域の厚さTの比(T/T)は0.8より大きい。即ち、T/T>0.8であることができる。
【0071】
アクティブ領域Aとは、セラミック本体の厚さ方向(T方向)において上部の内部電極30aと下部の内部電極30bの間の領域を意味する。カバー領域とは、セラミック本体10のうち上面S1から最上の内部電極31aまでの領域及びセラミック本体の下面S4から最下の内部電極31bまでの領域を意味する。
【0072】
外部電極のガラスのセラミック本体への拡散は、外部電極の金属原子が内部電極に拡散する現象に伴って発生する可能性がある。外部電極の金属原子が内部電極に拡散する量が大きいほど、外部電極のガラスの拡散もより増加する。セラミック本体内に内部電極が多く存在するほど、外部電極のガラス移動はより増加する。
【0073】
セラミック本体の厚さに対するアクティブ領域の厚さの比が大きいとは、セラミック本体内で内部電極が占める比率が大きいことを意味する。したがって、セラミック本体の厚さに対してアクティブ領域の厚さが大きいほど、外部電極のガラスの移動はより増加する。
【0074】
外部電極へガラスが抜け出るほど、外部電極内に存在するガラスの含量が減少し、メッキ液などが外部電極のポアを通して浸透する可能性があり、これにより、信頼性が低下する可能性がある。
【0075】
本実施形態において、バッファー層41、42の厚さtは、5μmより大きいか同じである。即ち、t≦5μmであることができる。
【0076】
バッファー層41、42の厚さtが5μm以上の場合は、信頼性不良が発生する可能性がある。バッファー層41、42の厚さtが5μm以上の場合とは、外部電極20に含有されたガラスのうち多量のガラスがセラミック本体10の方に浸透又は拡散されてバッファー層41、42が相対的に厚く形成された場合を意味する。
【0077】
外部電極20に含有されたガラスがセラミック本体10の方に浸透又は拡散することにより、外部電極20はガラスの含量が減少してポアが多く発生して緻密度が低下する可能性がある。
【0078】
外部電極20の緻密度が低下する場合は、外部電極20を介してメッキ液などが浸透する可能性があるため、信頼性が減少することがある。このような現象は、外部電極20の厚さTが薄いほど、より深化する。
【0079】
バッファー層41、42は、内部電極30及び外部電極20間の金属原子の相互拡散によって発生する応力を緩和させる機能を行うことができる。
【0080】
まず、内部電極及び外部電極間の金属原子の相互拡散によってセラミック本体内部に応力が発生するメカニズムについて説明する。
【0081】
外部電極20に含有された導電性金属の拡散速度は、内部電極30に含有された導電性金属の拡散速度より大きい。より詳細には、外部電極20に銅が含有され内部電極30にニッケルが含有されている場合、銅の拡散速度がニッケルの拡散速度よりも大きい。
【0082】
焼結過程で外部電極20の銅は内部電極30に拡散され内部電極30のニッケルは外部電極20に拡散されて銅-ニッケル合金が形成され、銅の拡散速度がニッケルの拡散速度より速いため、内部電極30の体積がさらに膨張する。
【0083】
このような体積の差により、セラミック本体10には応力が発生する可能性があり、この応力が臨界値を超える場合、セラミック本体10に放射クラックなどの欠陥が発生する可能性がある。
【0084】
内部電極30が薄くて多く積層されているほど、内部電極30と外部電極20間の金属原子の相互拡散による体積の差は大きくなり、セラミック本体10内に発生する応力は大きくなり、放射クラックの発生も増加する。
【0085】
次に、バッファー層が外部電極と内部電極間の金属原子の相互拡散によって発生する応力を緩和させるメカニズムについて説明する。
【0086】
内部電極30及び外部電極20間の金属原子の相互拡散による体積の差により、セラミック本体10に応力が発生する可能性がある。また、外部電極20のガラス成分も共にセラミック本体10のグレインバウンダリーに浸透してセラミック本体10を構成する酸化物を溶かす。
【0087】
たとえ、内部電極30及び外部電極20間の金属原子の相互拡散によってセラミック本体10に応力が発生しても、それと共に、セラミック本体10の一部が溶けて液状となるため、液状となったセラミック本体10部分で応力を緩和させることができる。
【0088】
以下では、バッファー層41、42の厚さtの調節について工程条件及びガラス組成の面で説明する。
【0089】
第一に、工程条件の面では、外部電極20の焼結過程においてガラスの軟化点(softening point)以上でとどまる時間を調節することにより、バッファー層41、42の厚さtを調節することができる。具体的には、軟化点以上での昇温速度を調節することにより、バッファー層41、42の厚さtを調節することができる。
【0090】
ガラスは、ガラスの軟化点以下では流動性を有しないため、セラミック本体10の内部に浸透又は拡散することができない。軟化点以上では流動性を有するため、セラミック本体10の内部に浸透又は拡散する。
【0091】
ガラスの軟化点以下では昇温速度を小さくして長時間とどまるようにし、軟化点以上では急速昇温してとどまる時間を短くすると、バッファー層41、42の厚さtを小さくすることができる。逆に、軟化点以上で昇温速度を緩慢にしてとどまる時間を長くすると、バッファー層41、42の厚さtを大きくすることができる。
【0092】
第二に、ガラス組成の面では、アルカリ金属、バナジウム酸化物の含量を調節してバッファー層41、42の厚さtを調節することができる。
【0093】
アルカリ金属、バナジウム酸化物の含量の多いガラスを用いると、バッファー層41、42の厚さtがより増加する。これは、アルカリ金属、バナジウム酸化物の含量が多いほどガラスの軟化点が低くなりガラスの流動性が大きくなってガラスの浸透又は拡散がより活発になるためである。
【0094】
逆に、アルカリ金属、バナジウム酸化物の含量の少ないガラスを用いると、ガラスの流動性が低くてガラスの浸透又は拡散が困難となるため、バッファー層41、42の厚さtが減少する。
【0095】
本発明の他の実施形態は、ガラスを含む外部電極20用ペーストを製造する段階と、内部電極30が積層された焼結チップに上記外部電極20用ペーストで外部電極20を形成する段階と、上記ガラスの軟化点以上で昇温速度を調節してバッファー層41、42の厚さtを調節する外部電極20焼結段階と、を含む積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【0096】
まず、外部電極20に導電性を付与するための導電性金属粉末、外部電極20の緻密化のためのガラス粉末、有機溶媒としてエタノール、及びバインダーとしてポリビニルブチラールなどを混合した後、これをボールミリングして外部電極20用ペーストを製造することができる。
【0097】
次に、外部電極20用ペーストでディッピング方式又は印刷方式などにより焼結チップに外部電極20を形成することができる。
【0098】
焼結チップは、下記のように製造されることができる。即ち、チタン酸バリウムなどの高誘電率セラミック粉末が含まれたセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを用意することができる。ニッケルなどの導電性金属を含む内部電極30用ペーストでセラミックグリーンシート上に内部電極30を印刷し、内部電極30が印刷されたセラミックグリーンシートを積層してグリーンシート積層体を製造することができる。グリーンシート積層体を切断してグリーンチップを製造し、これを焼結して内部電極30が積層された焼結チップを製造することができる。
【0099】
次に、外部電極20の焼結過程でガラスの軟化点以上に昇温速度を調節してバッファー層41、42の厚さtを調節することができる。
【0100】
ガラスは、ガラスの軟化点以下では流動性を有しないため、セラミック本体10の内部に浸透又は拡散することができない。軟化点以上では流動性を有するため、セラミック本体10の内部に浸透又は拡散する。
【0101】
ガラスの軟化点以下では昇温速度を小さくして長時間とどまるようにし、軟化点以上では急速昇温してとどまる時間を短くすると、バッファー層41、42の厚さtを小さくすることができる。逆に、軟化点以上で昇温速度を緩慢にしてとどまる時間を長くすると、バッファー層41、42の厚さtを大きくすることができる。
【0102】
その他、セラミック粉末、外部電極20、内部電極30及びバッファー層41、42などに関する事項は、前述した実施形態と同じである。
【0103】
本発明のさらに他の実施形態は、ガラスを含む外部電極20用ペーストを製造する段階と、内部電極30が積層された焼結チップに外部電極20用ペーストで外部電極20を形成する段階と、外部電極20を焼結する焼結段階と、を含み、外部電極20用ペーストを製造する段階において、ガラスに含まれるアルカリ金属、バナジウム酸化物の含量を調節してバッファー層41、42の厚さtを調節する積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【0104】
まず、外部電極20に導電性を付与するための導電性金属粉末、外部電極20の緻密化のためのガラス粉末、有機溶媒としてエタノール、及びバインダーとしてポリビニルブチラールなどを混合した後、これをボールミリングして外部電極20用ペーストを製造することができる。
【0105】
次に、外部電極20用ペーストでディッピング方式又は印刷方式などにより焼結チップに外部電極20を形成することができる。これに関する事項は、前述した実施形態と同じである。
【0106】
次に、外部電極20を焼結してセラミック本体10内にバッファー層41、42を形成することができる。外部電極20の焼結過程で外部電極20のガラスがセラミック本体10内に拡散又は浸透してバッファー層41、42が形成されることができる。
【0107】
外部電極20用ペーストを製造する過程で、ガラスに含有されたアルカリ金属酸化物の含量を調節してバッファー層41、42の厚さtを調節することができる。
【0108】
アルカリ金属、バナジウム酸化物の含量の多いガラスを用いると、バッファー層41、42の厚さtがより増加する。これは、アルカリ金属、バナジウム酸化物の含量が多いほどガラスの軟化点が低くなりガラスの流動性が大きくなってガラスの浸透又は拡散がより活発になるためである。
【0109】
逆に、アルカリ金属、バナジウム酸化物の含量の少ないガラスを用いると、ガラスの流動性が低くてガラスの浸透又は拡散が困難となるため、バッファー層41、42の厚さtが減少する。
【0110】
具体的には、アルカリ金属、バナジウム族は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びバナジウム(V)からなる群から選択された一つ以上であることができる。
【0111】
また、焼結段階において、ガラスの軟化点以上での昇温速度を調節してバッファー層41、42の厚さtを調節することができる。これに関する事項は、前述した実施形態と同じである。
【0112】
その他、外部電極20、内部電極30及びバッファー層41、42などに関する事項は、前述した実施形態と同じである。
【0113】
以下では、実施例及び比較例を参照して本発明について詳細に説明する。
【0114】
実施例及び比較例による積層セラミックキャパシタは、下記のような方法により製造された。
【0115】
チタン酸バリウム粉末、有機溶媒としてエタノール、バインダーとしてポリビニルブチラールを混合し、これをボールミリングしてセラミックスラリーを製造し、これを用いてセラミックグリーンシートを製造した。
【0116】
セラミックグリーンシート上にニッケルを含有する内部電極30用導電性ペーストを印刷して内部電極30を形成し、これを積層したグリーン積層体を85℃、1,000kgf/cm(9,800N/cm)の圧力で等圧圧縮成形(isostatic pressing)した。
【0117】
圧着されたグリーン積層体を切断してグリーンチップを製造し、切断されたグリーンチップを大気雰囲気下で230℃で60時間維持する脱バインダー工程を経た後、グリーンチップを950℃で焼結して焼結チップを製造した。Ni/NiO平衡酸素分圧より低い10-11~10-10atm(1.013×10-6~10-5Pa)の還元雰囲気下で焼結を行って内部電極30の酸化を防止した。
【0118】
焼結チップの外部に銅粉末及びガラス粉末を含む外部電極20用ペーストを用いて外部電極を形成し、780℃で焼結し、外部電極20上に電気メッキによりニッケルメッキ層及びスズメッキ層を形成した。
【0119】
まず、外部電極の厚さの適正性を確認するために、外部電極の厚さTを変化させながら0603サイズの積層セラミックキャパシタを製造し、これに対して信頼性試験を行った。0603サイズは、積層セラミックキャパシタのサイズが0.6mm×0.3mm×0.3mmの場合を示す。
【0120】
信頼性テストの結果、絶縁抵抗がすべて1E+07Ωcm以下に低下することがない場合を良好と判断した。加速寿命の評価は、40個のサンプルに対して130℃、2Vr及び4時間の条件下で行った。
【0121】
【表1】
【0122】
表1を参照すると、外部電極の厚さTが11μm、12μm及び14μmの場合は信頼性不良が発生しなかったが、外部電極の厚さが10μm以下となってから信頼性不良が発生した。
【0123】
これは、外部電極のガラスがセラミック本体に移動して外部電極でのガラスの含量が少なくなり、これにより、外部電極の気孔を通してメッキ液が浸透したためである。
【0124】
本発明は、外部電極の厚さTが10μm以下の場合にメッキ液の浸透によって信頼性不良が発生する問題を解決するためのものである。
【0125】
次に、セラミック本体の厚さTに対するアクティブ領域の厚さTの比(T/T)の適正性を確認するために、T/Tを変化させながら信頼性試験を行った。
【0126】
【表2】
【0127】
表2を参照すると、T/Tが0.80以下の場合は信頼性良好の結果を示し、0.80を超える場合は信頼性不良の結果を示した。
【0128】
/Tが0.80を超える場合は、セラミック本体内の内部電極の占有率が大きいため、外部電極から内部電極への金属原子及びガラスの拡散が増加して外部電極に残存するガラス含量が減少し、外部電極のポアを通してメッキ液が浸透したため、信頼性不良の結果を示した。
【0129】
本発明は、T/Tが0.80を超える場合に発生する信頼性不良の問題を解決するためのものである。
【0130】
次に、バッファー層41、42の厚さtの適正性を確認するために、外部電極の厚さTを10μm、T/Tを0.84とし、バッファー層41、42の厚さtを変化させながら信頼性試験を行った。
【0131】
【表3】
【0132】
表3を参照すると、実施例1~5は、バッファー層の厚さtが1~5μmで、信頼性試験結果が良好であり、比較例1~4は、バッファー層の厚さが6~9μmで、信頼性試験結果が不良であった。
【0133】
比較例1~4は、バッファー層が厚くて外部電極に残存するガラスの含量が少ないことから、メッキ液の浸透を効果的に防止することができなかったため、メッキ液の浸透による信頼性試験結果が不良であった。
【0134】
これに対し、実施例1~5は、バッファー層の厚さが薄くて外部電極に残存するガラスの含量が多いことから、ガラスがメッキ液の浸透を効果的に防止したため、信頼性試験結果が良好であった。
【0135】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0136】
10 セラミック本体
20 外部電極
21、22 第1及び第2の外部電極
30 内部電極
31、32 第1及び第2の内部電極
41、42 第1及び第2のバッファー層
51、52 第1及び第2の接続面
t バッファー層の厚さ
T 外部電極の厚さ
セラミック本体の厚さ
アクティブ領域の厚さ
図1
図2