(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230816BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230816BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230816BHJP
C08L 25/16 20060101ALI20230816BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20230816BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/36
C08K3/04
C08L25/16
C08K5/31
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2018012970
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-11-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 直也
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038475(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190519(WO,A1)
【文献】特表2014-518913(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046766(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/046771(WO,A1)
【文献】特開2016-003269(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182780(WO,A1)
【文献】特開2015-117323(JP,A)
【文献】特開2015-174990(JP,A)
【文献】特開2015-232110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00 A
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分100質量部に対し、
シリカ、
可塑剤、および、
アミノグアニジン酸付加塩
を含んでなるタイヤ用ゴム組成物であって、
可塑剤が樹脂20質量部以上を含むものであるタイヤ用ゴム組成物。
〔但し、下記(イ)および(ロ)のタイヤ用ゴム組成物
、下記(ハ)のタイヤ、下記(ニ)の車両タイヤ用エラストマー組成物、下記(ホ)の冬用タイヤ用の加硫可能なエラストマー組成物、下記(ヘ)の夏用タイヤ、並びに、下記(ト)のタイヤトレッド用ゴム組成物を除く:
(イ)軟化点7~15℃の液状レジンを30~50質量部含有するタイヤ用ゴム組成物、
(ロ)ステアリン酸、飽和脂肪酸金属塩、ならびに、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミドおよびアミドエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する離型剤、からなる群から選ばれる少なくとも1種を2.5~8.0質量部含有するタイヤ用ゴム組成物
、
(ハ)トレッドが少なくとも:
- 第1のジエンエラストマーとして、40から100phrまでの、トランス-1,4-ブタジエニル単位の含量がブタジエニル単位の全体の50質量%よりも多いエマルジョンスチレン/ブタジエンコポリマー「E-SBR」;
- 必要により、第2のジエンエラストマーとして、0から60phrまでの他のジエンエラストマー;
- 90から150phrまでの無機補強充填剤;
- 可塑化系
を含み、可塑化系が:
- 10と60phrの間の含量Aの、Tgが20℃よりも高い炭化水素樹脂;
- 10と60phrの間の含量Bの、20℃で液体であり且つTgが-20℃よりも低い可塑剤を含み;
- A+Bが45phrよりも多い、
ゴム組成物を含んでいるタイヤ、
(ニ)1phr以上のある量Xの、少なくとも1つの液体ポリマー(A)、
1phr以上のある量Yの、少なくとも1つの樹脂(B)、
100phrの、少なくとも1つの固体ジエンエラストマーポリマー(D)、
30phr以上の、少なくとも1つの補強フィラー(E)
を少なくとも含む車両タイヤ用エラストマー組成物であって;
前記組成物は、第1のエラストマー組成物を与える少なくとも1つの混合・分散ステップ(P1)と、その後の少なくとも1つの再処理ステップ(P2)を含むプロセス(P)に従って得られ得るものであり、
前記混合・分散ステップ(P1)は、以下の工程を含むものである、
-少なくとも1つの不連続ミキサーおよび/または少なくとも1つの連続ミキサーを含んでなる少なくとも1つの混合装置へ、少なくとも
ある量X1の前記液体ポリマー(A)、ここで0≦X1≦X、
ある量Y1の前記樹脂(B)、ここで0≦Y1≦Y、
前記固体ジエンエラストマーポリマー(D)、
前記補強フィラー(E)
を供給する工程;
-前記成分を混合・分散し、前記第1のエラストマー組成物を得る工程;
-該当する場合には、前記混合装置から、前記第1のエラストマー組成物を取り出す工程;
前記再処理ステップ(P2)は、以下の工程を含むものである、
-少なくとも1つの連続ミキサーへ、前記第1のエラストマー組成物、および、該当する場合には、
ある量X2の前記液体ポリマー(A)、ここで0≦X2≦X、
ある量Y2の樹脂(B)、ここで0≦Y2≦Y、
ここで、X1+X2=XおよびY1+Y2=Y
を供給する工程;
-前記少なくとも1つの連続ミキサーによって、好ましくは前記連続ミキサーに約150ミリバール未満の吸引圧力(Pa)を適用することによって、前記エラストマー組成物が得られるように、前記第1のエラストマー組成物を混合し、そこにステップ(P2)での供給がなされた場合には前記液体ポリマー(A)および/または前記樹脂(B)を分散させる工程;および
-前記少なくとも1つの連続ミキサーから、前記エラストマー組成物を取り出す工程;
車両タイヤ用エラストマー組成物、
(ホ)1phr以上のある量Xの、液体ポリブタジエン、液体ポリイソプレンおよび/またはそれらの混合物の中から選択される少なくとも1つの液体ポリマー(A)、
4phr以上のある量Yの、少なくとも1つの樹脂(B)、
100phrの、固体ジエンエラストマーポリマーの混合物(D)、
ここで、前記混合物(D)は、
0~95phr、好ましくは20~95phrの、少なくとも1つのスチレンブタジエンポリマー(SBR)、
0~95phr、好ましくは0~60phrの、少なくとも1つのポリブタジエンポリマー(BR)、および
5~100phr、好ましくは5~80phrの、少なくとも1つのポリイソプレンポリマー(IR)
を含むものであり、
10phr以上の、少なくとも1つの補強フィラー(E)、および
0.05phrの、少なくとも1つの加硫剤(F)
を少なくとも含む冬用タイヤ用の加硫可能なエラストマー組成物、
(ヘ)ゴム成分100質量部に対して、重量平均分子量が1000~500000のファルネセン系樹脂を1~50質量部、窒素吸着比表面積が40~400m
2
/gのシリカを10~150質量部含有するゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する夏用タイヤ、
(ト)(A)天然ゴム及び合成イソプレンゴムから1種以上選ばれるイソプレン系ゴムを30質量%以上含むゴム成分と、その100質量部に対して、(B)ロジン酸樹脂、C9系石油樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂5~50質量部、及び(C)脂肪酸金属塩0.5~10質量部とを配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物〕。
【請求項2】
アミノグアニジン酸付加塩が、重炭酸アミノグアニジン、アミノグアニジンリン酸塩およびアミノグアニジン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
アミノグアニジン酸付加塩の含有量が、0.01~10質量部である、請求項1または2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
樹脂が、スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂および水添テルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一つと、スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂および水添テルペン系樹脂以外の粘着樹脂とを含むものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
粘着樹脂が、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン系樹脂、またはジシクロペンタジエン樹脂である、請求項4記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
シリカの含有量が80質量部以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
5質量部以上のカーボンブラックをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
ゴム成分が、天然ゴム、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムを含み、天然ゴムの含有量が20質量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のゴムタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物から構成されたタイヤ部材を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用ゴム組成物および該タイヤ用ゴム組成物から構成されたタイヤ部材を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車タイヤに要求される特性は多種多様となってきているが、中でも、省エネルギーの社会的な要請に伴う自動車の燃料消費節約を目的として、低燃費性の要求が高まってきている。また、低燃費性としばしば相反する性質であるグリップ性能もタイヤの基本的特性として要求されている。特許文献1には、所定の可塑剤と一定量のシリカを配合することで、これら特性に折り合いをつけ、改善することが記載されている。
【0003】
しかし、タイヤ用ゴム組成物にシリカを配合すると、加硫速度の低下(加硫遅延)、シリカの分散性の悪化という問題が生じる。
【0004】
加硫遅延の抑制のためには、所定のアミン付加塩等を添加すること(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2017-500402号公報
【文献】特開2001-139727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2のアミン付加塩等の添加では、スコーチ時間が短くなってしまい成形加工性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、シリカを含むゴム組成物に関して、低燃費性、破壊強度、ウェットグリップ性および加工性(ムーニー粘度)に優れ、さらに成形加工性(成形時間の確保)と加硫速度(加硫時間の短縮)をも両立したタイヤ用ゴム組成物を提供すること、および、このゴム組成物から構成されたタイヤ部材を有するタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、ゴム成分に対して所定量以上の樹脂を含む可塑剤とシリカとを含むゴム組成物に、さらにアミノグアニジン酸付加塩を含有せしめることで、上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]ゴム成分100質量部に対し、
シリカ、
可塑剤、および、
アミノグアニジン酸付加塩
を含んでなるタイヤ用ゴム組成物であって、
可塑剤が樹脂20質量部以上を含むものであるタイヤ用ゴム組成物、
[2]アミノグアニジン酸付加塩が、重炭酸アミノグアニジン、アミノグアニジンリン酸塩およびアミノグアニジン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも一つである、上記[1]記載のタイヤ用ゴム組成物、
[3]アミノグアニジン酸付加塩の含有量が、0.01~10質量部である、上記[1]または[2]記載のタイヤ用ゴム組成物、
[4]樹脂が、スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂、水添テルペン系樹脂および粘着樹脂からなる群から選択される少なくとも一つを含むものである、上記[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物、
[5]シリカの含有量が80質量部以上である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[6]カーボンブラックをさらに含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物、
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物から構成されたタイヤ部材を有するタイヤ、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低燃費性、破壊強度、ウェットグリップ性および加工性(ムーニー粘度)に優れ、さらに成形加工性(成形時間の確保)と加硫速度(加硫時間の短縮)をも両立したタイヤ用ゴム組成物を提供すること、および、このゴム組成物から構成されたタイヤ部材を有するタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一の本実施形態は、ゴム成分100質量部に対し、シリカ、可塑剤、および、アミノグアニジン酸付加塩を含んでなるタイヤ用ゴム組成物であって、可塑剤が樹脂20質量部以上を含むものであるタイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
他の本実施形態は、上記タイヤ用ゴム組成物から構成されたタイヤ部材を有するタイヤである。
【0013】
理論に拘束されることは意図しないが、本実施形態において所定の効果が得られるメカニズムとしては、以下が考えられる。すなわち、シリカと所定の可塑剤との組合せは低燃費性、破壊強度、ウェットグリップ性および加工性(ムーニー粘度)を向上させ得るが、一方で、シリカのシラノール基が加硫促進剤を吸着するため、加硫時間が長くなり過ぎる傾向がある。しかし、アミノグアニジン酸付加塩(炭酸塩、リン酸塩、塩酸塩)を添加すると、シリカを配合している場合でも加硫時間の増加が抑えられ、その結果、上記性能に加え、成形加工性(成形時間の確保)、加硫速度(加硫時間の短縮)がバランスよく向上するものと考えられる。また、アミノグアニジンは、その強い極性のため、単にシリカの分散を助けるのみならず、カップリング剤の加水分解反応をも助け、その結果、シリカ-ポリマー間の反応性も高くなり、これらを通じて、シリカの分散性の向上が達成され、低燃費性が実現されるものと推測される。
【0014】
<ゴム成分>
本実施形態において、ゴム成分は特に限定されず、従来、タイヤ工業で用いられるものをいずれも好適に用いることができる。ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)およびポリイソプレンゴム(IR)を含むイソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムや、ブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)およびフッ素化ブチルゴム(F-IIR)を含むハロゲン化ブチルゴムなどのブチル系ゴムがあげられる。これらのゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本実施形態の効果をより良好に発揮できるという理由から、NR、SBR、BRを含有するものであることが好ましく、NR、SBR、BRのみからなるものであることがより好ましい。
【0015】
(天然ゴム)
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等のタイヤ工業において一般的なもの(非改質NR)を使用することができる他、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度化天然ゴムなどの改質天然ゴムなども使用することができる。
【0016】
NRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、成形加工性、補強性、および低燃費性の観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、低燃費性の観点から、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、28質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
(スチレンブタジエンゴム)
SBRとしては、特に限定されず、例えば未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)や溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、これらを変性した変性乳化重合スチレンブタジエンゴム(変性E-SBR)や変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)などの変性SBRがあげられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性された変性SBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)などがあげられる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。例えば、JSR(株)製のもの、旭化成ケミカルズ(株)製のもの、日本ゼオン(株)製のものなどを使用することができる。
【0018】
SBRのスチレン含量は、15.0質量%~40.0質量%であることが好ましい。スチレン含量は、ゴム強度やグリップ性能の観点から、20.0質量%以上が好ましく、25.0質量%以上がより好ましく、30.0質量%以上がさらに好ましく、35.0質量%以上がさらに好ましい。また、SBRのスチレン含有量は、低燃費性の観点から、39.0質量%以下が好ましい。なお、SBRのスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される値である。
【0019】
SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、10.0~30.0%であることが好ましい。ビニル含量は、ゴム強度やグリップ性能の観点から、13.0%以上が好ましく、15.0%以上がより好ましい。また、ビニル含量は、低燃費性の観点から、25.0%以下が好ましく、20.0%以下がより好ましい。なお、SBRのビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
【0020】
SBRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、本実施形態の効果をより良好に発揮できるという理由から、35質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。また、SBRの含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。なお、SBRとして油展タイプのSBRを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中のSBRの含有量とする。
【0021】
(ブタジエンゴム)
BRとしては、特に限定されず、この分野で通常使用されるものをいずれも好適に用いることができる。例えば、ハイシス-1,4-ポリブタジエンゴム(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むブタジエンゴム(SPB含有BR)、変性ブタジエンゴム(変性BR)などの各種BRを用いることができる。このようなBRとして、例えば、宇部興産(株)製のもの、日本ゼオン(株)製のもの、ランクセス社製のなどを好適に用いることができる。
【0022】
ハイシスBRとは、シス-1,4結合含有率が90質量%以上のブタジエンゴムである。なかでも、シス-1,4結合含有率が95%質量以上のものが好ましく、同96質量%以上のものがさらに好ましく、同97質量%以上のものがさらに好ましく、同98質量%以上のものがさらに好ましい。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性を向上させることができる。なお、BR中のシス-1,4結合含有率は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0023】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル含量(1,2結合ブタジエン単位量)が1.8質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下であり、シス含量(シス-1,4結合含有率)が90質量%以上、好ましくは93質量%以上、より好ましくは95質量%以上のものを好適に用いることができる。ビニル含量およびシス-1,4結合含有率が上記範囲内であることにより、得られるゴム組成物の破断伸びおよび耐摩耗性が優れるという効果が得られる。なお、希土類系BRのビニル含量およびシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される値である。
【0024】
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒があげられる。
【0025】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、BR中に単に分散しているものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものがあげられる。前記結晶がゴム成分と化学結合したうえで分散していることにより、複素弾性率が向上する傾向がある。
【0026】
変性BRとしては、末端および/または主鎖が変性された変性BR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性BR(縮合物、分岐構造を有するものなど)、シリカと相互作用を持つ官能基により末端および/または主鎖が変性された変性BR、特に、シリル基、アミノ基、アミド基、水酸基、およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する変性BRなどがあげられる。変性BRを用いることで、充填剤との相互作用をより強固とし低燃費性に優れるという効果が得られる。
【0027】
BRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、耐摩耗性の観点から1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、BRの含有量は、成形加工性の観点から、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、28質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
<シリカ>
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、充填剤としてシリカを含有することを特徴とする。シリカを含有することにより、低燃費性向上効果が好適に得られ、高い補強性を得ることができる。
【0029】
シリカは一般にゴム組成物中で分散させることが困難であるが、本実施形態のアミノグアニジン酸付加塩を含んでなるゴム組成物によれば、良好に分散させることができ、優れたゴム性能をバランスよく発現させることが可能である。
【0030】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)など、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。シリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
シリカのN2SAは、70m2/g以上であることが好ましく、80m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上がさらに好ましい。また、N2SAの上限は特に限定されるものではないが、取扱い易さ等の観点から、例えば、500m2/g以下が好ましく、400m2/g以下がより好ましく、300m2/g以下がより好ましく、280m2/g以下がより好ましく、250m2/g以下がより好ましく、230m2/g以下がさらに好ましい。N2SAが前記範囲内のシリカを用いることにより、低燃費性および成型加工性等をバランス良く向上させることができる。なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0032】
シリカのゴム成分100質量部に対する含有量は、シリカの分散性、低燃費性、グリップ性能および成形加工性等の観点から、所定の範囲内であることが好ましく、例えば、60~150質量部である。シリカの含有量は、好ましくは65質量部以上、より好ましくは70質量部以上、より好ましくは75質量部以上、より好ましくは80質量部以上、さらに好ましくは85質量部以上である。また、シリカの含有量は、好ましくは145質量部以下、より好ましくは143質量部以下、より好ましくは140質量部以下、より好ましくは137質量部以下、さらに好ましくは135質量部以下である。
【0033】
<その他の充填剤>
充填剤としては、シリカ以外に、さらにその他の充填剤を用いてもよい。そのような充填剤としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどこの分野で一般的に使用される充填剤をいずれも用いることができる。これらの充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。充填剤として、シリカ以外のものを用いる場合、ゴム強度の観点から、カーボンブラックが好ましい。すなわち充填剤としては、シリカおよびカーボンブラックを含むものであることが好ましく、あるいは、シリカおよびカーボンブラックのみからなるものであることが好ましい。
【0034】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0035】
カーボンブラックのN2SAは、十分な補強性および耐摩耗性が得られる点から、50m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックのN2SAは、分散性に優れ、発熱しにくいという点から、500m2/g以下が好ましく、450m2/g以下がより好ましく、300m2/g以下がさらに好ましく、250m2/g以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0036】
カーボンブラックのDBP吸油量は、耐摩耗性の観点から、50ml/100g以上が好ましく、100ml/100g以上がより好ましい。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、グリップ性能の観点から、250ml/100g以下が好ましく、200ml/100g以下がより好ましく、150ml/100g以下がより好ましい。なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217-4:2008に準じて測定される値である。
【0037】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な補強性および耐摩耗性が得られる観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、成形加工性、低燃費性および耐摩耗性の観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。
【0038】
<シランカップリング剤>
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができる。そのようなシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド基を有するシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT-Z100、NXT-Z45、NXTなどのメルカプト基を有するシランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル基を有するシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系のシランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系のシランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系のシランカップリング剤;などがあげられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系がシリカとの結合力が強く、低燃費特性に優れるという点から好ましい。また、メルカプト系を使用すると、低燃費特性および耐摩耗性を好適に向上できるという点からも好ましい。
【0039】
シランカップリング剤を含有する場合のシリカ100質量部に対する含有量は、十分なシリカ分散性や、粘度低減等の効果が得られるという理由から、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がより好ましく、4.0質量部以上がより好ましく、6.0質量部以上がさらに好ましい。また、十分なカップリング効果やシリカ分散効果を効率的に得て補強性を確保するという理由から、シランカップリング剤の含有量は、20.0質量部以下が好ましく、18.0質量部以下がより好ましく、15.0質量部以下がさらに好ましい。
【0040】
<アミノグアニジン酸付加塩>
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、アミノグアニジン酸付加塩を含有することを特徴とする。
【0041】
本実施形態において、アミノグアニジン酸付加塩とは、アミノグアニジンと酸からなる塩であって、アミノグアニジンのグアニジン部位が酸と塩を形成したものである。アミノグアニジン酸付加塩は、1分子の酸と1分子のアミノグアニジンからなる塩であってもよく、1分子の酸と2分子のアミノグアニジンからなる塩であってもよい。
【0042】
アミノグアニジン酸付加塩としては、本実施形態の効果を発揮できるものであれば特に限定されない。アミノグアニジン酸付加塩に用いられる酸としては、有機酸、無機酸を問わず使用できるが、無機酸であることが好ましい。アミノグアニジン酸付加塩の具体例としては、例えば、アミノグアニジンと炭酸からなる重炭酸アミノグアニジン(アミノグアニジン重炭酸塩)、アミノグアニジンとリン酸からなるアミノグアニジンリン酸塩、アミノグアニジンと塩酸からなるアミノグアニジン塩酸塩などがあげられる。このようなアミノグアニジン酸付加塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アミノグアニジン酸付加塩を含有することによる本実施形態の効果をより良好に発揮でき、低燃費性、破壊強度、ウェットグリップ性および加工性(ムーニー粘度)に優れ、さらに成形加工性と加硫速度を両立するという観点から、重炭酸アミノグアニジン、アミノグアニジンリン酸塩およびアミノグアニジン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含むものであることが好ましい。また、アミノグアニジン酸付加塩としては、重炭酸アミノグアニジン、アミノグアニジンリン酸塩およびアミノグアニジン塩酸塩からなる群から選択される少なくとも一つからなるものであることが好ましい。
【0043】
本実施形態のアミノグアニジン酸付加塩は、公知の方法により得ることができ、例えば、重炭酸アミノグアニジンと酸付加塩を混合させるなどの方法があげられる。なお、重炭酸アミノグアニジンおよび酸付加塩は市販品を用いることができる。例えば、東京化成工業(株)製のものなどを使用することができる。
【0044】
アミノグアニジン酸付加塩のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.01~10質量部であることが好ましい。アミノグアニジン酸付加塩の含有量は、0.05質量部以上が好ましく、0.10質量部以上がより好ましく、0.30質量部以上がより好ましく、0.50質量部以上がさらに好ましい。また、アミノグアニジン酸付加塩の含有量は、9質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下がさらに好ましい。このような範囲とすることで、本実施形態の効果をより良好に発揮できる。
【0045】
<可塑剤>
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、さらに、可塑剤を含有することが好ましい。
【0046】
可塑剤としては、特に限定されず、ゴム工業で一般的な可塑剤や、軟化剤として用いられるものを用いることができ、例えば、樹脂、オイル、液状ポリマー、低温可塑剤などとして知られているものをいずれも含む。可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、本実施形態の効果をより良好に発揮できるという理由から、樹脂、オイル、液状ポリマーが好ましく、樹脂、オイルがより好ましく、樹脂のみを用いることがより好ましい。
【0047】
(樹脂)
樹脂としては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、C5-C9系樹脂、スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂、粘着樹脂、架橋性樹脂、相溶化樹脂などがあげられる。樹脂としては、水添テルペン系樹脂、スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂、および粘着樹脂からなる群から選択される少なくとも一つを含むものであることが好ましく、水添テルペン系樹脂、スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂、および粘着樹脂からなる群から選択される少なくとも一つからなるものであることがさらに好ましい。あるいは、樹脂としては、粘着樹脂を含むものであることが好ましく、粘着樹脂とスチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂を含むもの、または、粘着樹脂と水添テルペン系樹脂を含むものであることが好ましい。また、樹脂としては、粘着樹脂とスチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂とからなるもの、または、粘着樹脂と水添テルペン系樹脂とからなるものであることが好ましい。
【0048】
これら樹脂の軟化点(Softening Point)は、可塑剤としての機能を好適に発揮させるとの観点から、-20~180℃の範囲内であることが好ましい。軟化点の上限は、170℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。また、軟化点の下限は、-10℃以上が好ましく、-5℃以上がより好ましい。なお、本明細書において、樹脂の軟化点とは、JIS K 6220-1に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0049】
これら樹脂の重量平均分子量(Mw)は、良好な成形加工性が得られ、ゴム硬度を確保するという観点から、所定の範囲内であることが好ましい。具体的には、Mwは、120000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、5000以下がさらに好ましい。また、Mwは、200以上が好ましく、250以上がより好ましく、300以上がさらに好ましく、350以上がさらに好ましい。なお、本明細書において、樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求める値である。
【0050】
≪スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂≫
スチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂とは、スチレンとα-メチルスチレンとを重合させて得られる樹脂である。
【0051】
≪水添テルペン系樹脂≫
水添テルペン系樹脂は、テルペン系樹脂を水素添加(水添)することにより得られるものである。テルペン系樹脂への水素添加処理は、公知の方法で行うことができる。
【0052】
水添テルペン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテンなどのテルペン原料から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂などのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったものがあげられる。ここで、芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエンなどがあげられ、また、テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどがあげられる。
【0053】
≪粘着樹脂≫
粘着樹脂は、通常、ゴム成分と相溶または少なくとも半相溶となる特性を持ち、数百~数万の分子量を有するオリゴマーである。粘着樹脂を配合することにより、タイヤ成形時の未加硫物の粘着性(成形加工性)が向上する。ここで、粘着樹脂とは、特に限定されず、上述した以外の樹脂でゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)などがあげられる。フェノール系樹脂としては、例えば、BASF社製、田岡化学工業(株)製のものなど、クマロンインデン樹脂としては、例えば、新日鉄住金化学(株)製、JXTGエネルギー(株)製のものなど、スチレン樹脂としては、例えば、Arizona chemical社製ものなどを使用することができる。テルペン系樹脂としては、例えば、Arizona chemical社製、ヤスハラケミカル(株)製のものなどを使用することができる。ロジン系樹脂としては、例えば、ハリマ化成(株)製、荒川化学工業(株)製のものなどを使用することができる。なかでも、グリップ性能に優れるという理由から、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、およびアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0054】
≪液状樹脂≫
上記樹脂としては、可塑剤としての効果を良好に発揮するという観点から、液状のもの(液状樹脂)を好適に用いることができる。ここで、液状樹脂とは、室温(25℃)で硬化していない樹脂をいう。
【0055】
液状樹脂としては、例えば、液状クマロンインデン樹脂、液状テルペン系樹脂等を好適に使用できる。なかでも、液状クマロンインデン樹脂が好ましい。
【0056】
液状クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロンおよびインデンを含む。また、当該骨格において、クマロン、インデン以外に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどがあげられる。液状クマロンインデン樹脂の軟化点は、-20~45℃が好ましい。上限は、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下である。下限は、好ましくは-10℃以上、より好ましくは-5℃以上である。液状クマロンインデン樹脂としては、例えば、Rutgers Chemicals社製のものなどを好適に使用することができる。
【0057】
(オイル)
オイルとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂などがあげられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどがあげられる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などがあげられる。また、動物油脂としては、オレイルアルコール、魚油、牛脂などがあげられる。なかでも、加工性に有利であるという理由からプロセスオイルが好ましく、環境への負荷低減という理由からは、多環式芳香族化合物(polycyclic aromatic compound:PCA)の含量の低いプロセスオイル(低PCA含量プロセスオイル)が好ましい。
【0058】
低PCA含量プロセスオイルとしては、オイル芳香族系プロセスオイルを再抽出したTreated Distillate Aromatic Extract(TDAE)、アスファルトとナフテン油の混合油であるアロマ代替オイル、軽度抽出溶媒和物(mild extraction solvates:MES)、重ナフテン系オイルなどがあげられる。
【0059】
(液状ポリマー)
液状ポリマーとしては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が1.0×103~2.0×105の液状ポリマーであることが好ましい。このような範囲とすることで、破壊特性、耐久性、成形加工性がバランスよく得られる傾向がある。
【0060】
液状ポリマーとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、液状SBR、液状BR、液状IR、液状SIRなどがあげられる。なかでも、特に耐久性能とグリップ性能とをバランスよく向上できるという理由から液状SBRを使用することが好ましい。
【0061】
(低温可塑剤)
低温可塑剤としては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等のエステル系可塑剤などがあげられる。なかでも、低温時における可塑効果と耐摩耗性のバランスから、DOS、TOPが好ましく、低燃費性に優れるという理由から、DOSが好ましい。
【0062】
低温可塑剤の凝固点は、十分なグリップ改善効果の観点から、-50℃以下が好ましく、-70℃以下がより好ましい。また、低温可塑剤の凝固点の下限は特に限定されない。
【0063】
低温可塑剤の25℃における粘度は、十分なグリップ改善効果の観点から、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。また、低温可塑剤の粘度の下限は特に限定されない。
【0064】
(含有量)
可塑剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、本実施形態の効果、特に低燃費性とウェットグリップ性能の観点から所定の範囲内であることが好ましく、例えば、15~100質量部の範囲内である。可塑剤の含有量は、16質量部以上が好ましく、17質量部以上がより好ましく、18質量部以上がより好ましく、19質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。また、可塑剤の含有量は、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がより好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。なお、可塑剤の含有量には、油展ゴムや不溶性硫黄に含まれるオイル成分以外に、後入れオイル(油展ゴムや不溶性硫黄に含まれるオイル成分とは別に配合されるオイル)も含まれる。
【0065】
前記可塑剤のうち樹脂の含有量は、本実施形態の効果、特に低燃費性とウェットグリップ性能の観点から、20質量部以上である。樹脂が20質量部未満であると、本実施形態の効果が適切に得られない傾向がある。樹脂の含有量は、21質量部以上がより好ましく、22質量部以上がより好ましく、23質量部以上がより好ましく、24質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましい。また、当該樹脂の含有量は、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、53質量部以下がより好ましく、50質量部以下がさらに好ましい。
【0066】
樹脂が粘着樹脂を含有する場合において、粘着樹脂の含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましい。また、粘着樹脂の含有量は、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8質量部以下がさらに好ましい。樹脂が水添テルペン系樹脂またはスチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂を含有する場合において、これら樹脂の含有量は、5質量部以上が好ましく、8質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また、これら樹脂の含有量は、55質量部以下が好ましく、50質量部以下が好ましく、48質量部以下がさらに好ましい。
【0067】
<その他の配合剤>
本実施形態に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般的に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0068】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、アミン・ケトン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、燐系老化防止剤などがあげられる。老化防止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤の含有量は、7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。このような範囲とすることで、本実施形態の効果をより良好に発揮できる。
【0070】
(ワックス)
ワックスとしては、特に限定されず、ゴム工業において通常使用されるものをいずれも好適に用いることができ、例えば、日本精鑞(株)製、パラメルト社製などのパラフィンワックスがあげられる。ワックスは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.2質量部以上がさらに好ましい。また、3.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。このような範囲とすることで、本実施形態の効果をより良好に発揮できる。
【0072】
(加硫剤)
加硫剤としては、特に限定されず、公知の加硫剤を用いることができ、例えば、硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウム等の金属酸化物などがあげられる。なかでも、硫黄を用いることが好ましい。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などがあげられ、いずれも好適に用いられる。加硫剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、硫黄の含有量は、7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。このような範囲とすることで、本実施形態の効果をより良好に発揮できる。
【0074】
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、特に限定されず、公知の加硫助剤を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系もしくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤などがあげられる。なかでも、スコーチ時間と加硫時間をバランス良くできるという理由からスルフェンアミド系、グアニジン系が好ましい。加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)などがあげられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0076】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどがあげられる。なかでも、加硫時間の短縮の観点から、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0077】
本実施形態においては、本実施形態の効果をより良好に発揮できるという理由から、加硫促進剤として、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)および1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)のみを用いることがより好ましい。
【0078】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。また、加硫促進剤の含有量は、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.5質量部以下がさらに好ましい。このような範囲とすることで、本実施形態の効果をより良好に発揮できる。
【0079】
<タイヤ用ゴム組成物の製造>
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物は、公知の方法で製造される。例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。混錬りに際しては、まず加硫剤と加硫促進剤以外の成分を混練した後、得られた混練物に加硫剤と加硫促進剤を加えて混練することができる。なお、アミノグアニジン酸付加塩の配合方法も、特に限定されず、粉体としてそのまま配合することができるが、そのような配合方法以外にも、例えば、溶媒に溶解させて溶液として配合する方法や、エマルジョン溶液として配合する方法などにより配合することもできる。
【0080】
<タイヤ用ゴム組成物>
本実施形態のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビードなどの各タイヤ部材に用いることができる。特に、低燃費性、破壊強度および耐摩耗性に優れることから、本実施形態のタイヤ用ゴム組成物により構成されたトレッドを有するタイヤとすることが好ましい。
【0081】
<タイヤの製造>
本実施形態のタイヤは、前記タイヤ用ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、タイヤ用ゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのトレッドなどのタイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成形機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで本実施形態のタイヤを製造することができる。加硫温度は、タイヤ工業において一般的な加硫温度であれば特に限定されず、例えば120℃以上200℃以下であり、140℃以上が好ましく、180℃以下が好ましい。
【0082】
<タイヤ>
本実施形態のタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わないが、空気入りタイヤであることが好ましい。また、空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤなどの高性能タイヤ、ランフラットタイヤなど各種タイヤに用いることができる。
【0083】
<その他>
本明細書において、数値範囲を「10~100」と表現した場合、当該数値範囲は、特に断り書きの無い限り、その両端の値も含む意味である。
【実施例】
【0084】
本実施形態を実施例に基づいて説明するが、本実施形態は、実施例にのみ限定されるものではない。
【0085】
以下に実施例および比較例において用いる各種薬品をまとめて示す。
天然ゴム(NR):TSR20
スチレンブタジエンゴム(SBR):日本ゼオン(株)製のNipol1502(E-SBR、スチレン含有量:23.5質量%)
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製UBEPOL 150B
カーボンブラック(CB):三菱化学(株)製のダイアブラックH(N330)
シリカ:東ソー・シリカ社製のNipsil VN3(N2SA(BET):175m2/g)
シランカップリング剤(カップリング剤):デグッサ社製のSi69
樹脂1:スチレンとα-メチルスチレンとを重合した軟化点85℃のスチレン/α-メチルスチレンコポリマー樹脂
樹脂2:テルペンを重合した軟化点140℃、水添率90%の水添テルペン系樹脂
樹脂3:軟化点100℃の炭化水素系樹脂(粘着樹脂)
オイル:(株)ジャパンエナジー社製のプロセスX-140
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
ステアリン酸
酸化亜鉛
硫黄
加硫促進剤1:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)
加硫促進剤2:1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)
アミノグアニジン酸付加塩1(AG酸付加塩1):アミノグアニジンリン酸塩
アミノグアニジン酸付加塩2(AG酸付加塩2):重炭酸アミノグアニジン
アミノグアニジン酸付加塩3(AG酸付加塩3):アミノグアニジン塩酸塩
【0086】
実施例1~8および比較例1~7
表1に示す配合内容のうち、各種薬品(硫黄ならびに加硫促進剤1および2を除く)を、バンバリーミキサーにて混練りし、混練り物を得る。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄ならびに加硫促進剤1および2を添加して混練りし、未加硫ゴム組成物を得る。
【0087】
前記未加硫ゴム組成物を所望の形状に成形し、170℃の条件下でプレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を製造する。加硫時間は、下記で求める170℃の加硫特性t90の2倍の時間とする。
【0088】
前記未加硫ゴム組成物をトレッドの形状の口金を備えた押し出し機で押し出し成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下でプレス加硫することにより、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造する。
【0089】
<加工性>
未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300-1の「未加硫ゴム-物理特性-第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にて、ムーニー粘度(ML1+4)を測定し、基準比較例のML1+4を100として下記計算式により指数表示する。数値が大きい程、ムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(加工性指数)={(基準比較例のML1+4)/(各配合のML1+4)}×100
【0090】
<成形加工性>
未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300に記載されている振動式加硫試験機(キュラストメーター)を用い、測定温度130℃で加硫試験を行って、時間とトルクとをプロットした加硫速度曲線を得る。加硫速度曲線のトルクの最小値をML、最大値をMH、その差(MH-ML)をMEとしたとき、ML+0.1MEに到達する時間t10(スコーチタイム)(分)を読み取る。基準比較例のスコーチタイムを100として下記計算式により指数表示する。数値が大きい程、スコーチタイムが長く、成形加工性に優れることを示す。
(成形加工性指数)=
{(各配合のスコーチタイム)/(基準比較例のスコーチタイム)}×100
【0091】
<加硫速度>
未加硫ゴム組成物について、粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、商品名:RPA2000)を用いて、170℃の加硫特性t90を求め、加硫時間とする。基準比較例の加硫時間を100として下記計算式により指数表示する。数値が大きい程、加硫時間が短いことを示す。
(加硫速度指数)={(基準比較例の加硫時間)/(各配合の加硫時間)}×100
【0092】
<破壊強度>
加硫ゴム組成物からなる6号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、25℃雰囲気下にて引張試験を実施し、破断強度TB(MPa)、破断時伸びEB(%)を測定する。そして、TB×EB/2(MPa%)の値を算出する。算出した値は、下記計算式により、基準比較例を100とする指数に変換する。数値が大きい程、破壊強度に優れることを示す。
(破壊強度指数)={(各配合の値)/(基準比較例の値)}×100
【0093】
<低燃費性>
加硫ゴム組成物について、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合の損失正接(tanδ50℃)を測定し、基準比較例の低燃費性指数を100とし、下記計算式により、各配合の低燃費性を指数表示する。数値が大きい程、転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
(低燃費性指数)=
{(基準比較例のtanδ50℃)/(各配合のtanδ50℃)}×100
【0094】
<ウェットグリップ性能>
加硫ゴム組成物について、粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度O℃、初期歪10%、動歪み0.1%、周波数10Hzの条件下で各配合の損失正接(tanδ0℃)を測定し、基準比較例のウェットグリップ性能指数を100とし、下記計算式により、各配合のウェットグリップ性能を指数表示する。数値が大きい程、ヒステリシスロス摩擦が大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=
{(各配合のtanδ0℃)/(基準比較例のtanδ0℃)}×100
【0095】
表1の配合内容に基づいて上記各試験を行うことで各指数またはそれに近い値が得られる。
【0096】
【0097】
本実施形態において、加工性指数、成形加工性指数および加硫速度指数の目標値は95~105の範囲内である。破壊強度指数の目標値は105以上、好ましくは110≧である。低燃費性指数の目標値は100超、好ましくは111以上である。ウェットグリップ性能指数の目標値は105以上、好ましくは110以上である。