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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】設備管理システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20230816BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H02J13/00 301A
H04Q9/00 311J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018159105
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020036407
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 智志
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152009(JP,A)
【文献】特開2014-072561(JP,A)
【文献】特開2012-105463(JP,A)
【文献】特開2002-024973(JP,A)
【文献】特開平06-086462(JP,A)
【文献】特開2015-042020(JP,A)
【文献】特開2008-067478(JP,A)
【文献】特開2017-153276(JP,A)
【文献】特開2014-106801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力量を計測すると共に無線通信機能を持つデジタル式のスマートメータと、複数の前記スマートメータの前記無線通信機能を利用して形成され、前記スマートメータ間で通信可能なスマートメータを選択して前記電力量を集約装置まで転送する既設の無線通信網と、を利用する設備管理システムであって、
電柱に設置されている柱上変圧器内の絶縁油の圧力を計測するために設けられた圧力センサと前記柱上変圧器から接続線を介して大地に流れる漏電電流を計測するために設けられた漏電センサとのうちの少なくとも一方と、
前記圧力センサと前記漏電センサとのうちの少なくとも一方からの計測信号を受け取り、前記計測信号にセンサを識別するためのセンサ識別番号と、前記集約装置を宛先とする宛先アドレスとを付加し、前記スマートメータと同じ無線通信機能により前記計測信号と、これに付加された前記センサ識別番号および前記宛先アドレスとを無線で前記スマートメータに送信する通信装置と、を備え、
前記無線通信網の前記スマートメータは、前記計測信号と、これに付加された前記センサ識別番号および前記宛先アドレスとを受信し、前記宛先アドレスに基づいて、前記計測信号および前記センサ識別番号を前記集約装置に転送し、
前記集約装置は、前記無線通信網の前記スマートメータから前記計測信号および前記センサ識別番号を集めて、設備を管理する管理用の計算機に送信し、
前記計算機は、
前記計測信号および前記センサ識別番号を受信すると、あらかじめ記憶していると共に前記計測信号の異常を判別するためのしきい値と前記計測信号とを比較して、前記計測信号を送った前記圧力センサと前記漏電センサとのうちの少なくとも一方に対応する設備の異常を調べ、
前記設備が異常と判定すると、前記電柱に設置されている設備名と前記センサ識別番号とあらかじめ記憶している設備テーブルに基づいて、前記計測信号に付加されている前記センサ識別番号から、異常と判定された前記設備の前記設備名を特定する、
ことを特徴とする設備管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の設備を管理するための設備管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の設備として例えば送配電設備の油入機器、圧力機器などがある。油入機器としては変圧器などがあり、圧力機器としては開閉器などがある。こうした設備は例えば変電所や電柱に設置されている。従来、設備の保守業務は現地にて目視で良否を判定している。設備に異常が発生した場合、配電自動化システムが事故を検出するか、顧客からの連絡がないと、異常発生の有無が分からないという問題が生じていた。この解決手法としては、以下のようなシステムがある。
【0003】
このシステムでは、電力系統における設備の予定停止および電力系統の変更を含む操作を指令する手順表を作成し、作成した手順表に基づいて遠隔で操作を実行する。つまり、操作を指令する手順表をミスなく作成して操作を実行する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、このシステムとは別に次のシステムがある。このシステムでは、電力設備の異常を検知すると、異常発生を示す異常情報を通信網を介して遠隔監視センタに送信する(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-034751号公報
【文献】特開2002-024973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先に述べた2つのシステムには次の課題がある。特許文献1に記載されたシステムでは、中央給電所等がWAN(Wide Area Network)を利用するものである。また、特許文献2に記載されたシステムでは、専用の携帯端末が基地局を介在してパケット通信網を経てデータを送る。
【0007】
このように、これらのシステムは、通信事業者等と契約して利用するインターネットなどの外部通信網を利用して遠隔地のデータを転送する。このために、2つのシステムでは大掛かりな通信機器を準備する必要がある。さらに、2つのシステムは外部通信網の利用に伴う通信料を必要とする。
【0008】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、大掛かりな通信機器を不要にし、外部通信網の利用に伴う通信料が発生することなく、設備を管理することを可能にする設備管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、電力量を計測すると共に無線通信機能を持つデジタル式のスマートメータと、複数の前記スマートメータの前記無線通信機能を利用して形成され、前記スマートメータ間で通信可能なスマートメータを選択して前記電力量を集約装置まで転送する既設の無線通信網と、を利用する設備管理システムであって、電柱に設置されている柱上変圧器内の絶縁油の圧力を計測するために設けられた圧力センサと前記柱上変圧器から接続線を介して大地に流れる漏電電流を計測するために設けられた漏電センサとのうちの少なくとも一方と、前記圧力センサと前記漏電センサとのうちの少なくとも一方からの計測信号を受け取り、前記計測信号にセンサを識別するためのセンサ識別番号と、前記集約装置を宛先とする宛先アドレスとを付加し、前記スマートメータと同じ無線通信機能により前記計測信号と、これに付加された前記センサ識別番号および前記宛先アドレスとを無線で前記スマートメータに送信する通信装置と、を備え、前記無線通信網の前記スマートメータは、前記計測信号と、これに付加された前記センサ識別番号および前記宛先アドレスとを受信し、前記宛先アドレスに基づいて、前記計測信号および前記センサ識別番号を前記集約装置に転送し、前記集約装置は、前記無線通信網の前記スマートメータから前記計測信号および前記センサ識別番号を集めて、設備を管理する管理用の計算機に送信し、前記計算機は、前記計測信号および前記センサ識別番号を受信すると、あらかじめ記憶していると共に前記計測信号の異常を判別するためのしきい値と前記計測信号とを比較して、前記計測信号を送った前記圧力センサと前記漏電センサとのうちの少なくとも一方に対応する設備の異常を調べ、前記設備が異常と判定すると、前記電柱に設置されている設備名と前記センサ識別番号とあらかじめ記憶している設備テーブルに基づいて、前記計測信号に付加されている前記センサ識別番号から、異常と判定された前記設備の前記設備名を特定する、ことを特徴とする設備管理システムである。
【0010】
請求項1の発明では、電力量を計測すると共に無線通信機能を持つ電力量計を利用している。つまり、通信装置は、設備に設けられたセンサからの計測信号を受け取り、電力量計と同じ無線通信機能によりこの計測信号を無線で送信する。通信網は、複数の電力量計の無線通信機能を利用して形成され、通信装置からの計測信号を集約装置に転送する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、通信事業者等と契約して利用可能になる外部通信網を利用しないので、この外部通信網に接続するための大掛かりな通信機器を不要にすることができる。また、外部通信網の利用に伴う通信料が発生することなく、集約装置からの計測信号を基に設備を管理することを可能にする。
【0014】
請求項1の発明によれば、また、既設のスマートメータの無線通信網を使用して、センサからの計測信号を集約装置まで転送することを可能にする。
【0015】
請求項の発明によれば、また、計算機はしきい値と計測信号とを比較して設備の異常を調べるので、設備に異常が発生したかどうかを迅速に、かつ、自動的に調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の形態1による設備管理システムを示す構成図である。
図2】通信装置の一例を示す構成図である。
図3】通信装置の経路表の一例を示す図である。
図4】スマートメータの一例を示す構成図である。
図5】スマートメータの経路表の一例を示す図である。
図6】通信装置と各スマートメータの経路表の一例を示す図である。
図7】設備テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。この実施の形態による設備管理システムは電力事業者で使用されている。設備管理システムの一例を図1に示す。この設備管理システムは、センサ11、12と、通信装置21と、スマートメータ31~35と、集約装置41と、計算機51と、管理端末61とを備えている。
【0018】
この実施の形態では、電柱1に設置されている設備を設備管理システムが管理する場合を例としている。しかし、管理対象はこれに限定されることなく、例えば変電所などに設置されている各設備であってもよい。電柱1を含む各電柱(図示を省略)からは建物A~建物Eに電気が供給されている。
【0019】
電柱1は建物Aや建物Dの近隣に設置されている。電柱1には設備としての柱上変圧器2が設置されている。柱上変圧器2は油入機器であり、柱上変圧器2には絶縁油が注入されている。柱上変圧器2には、この絶縁油の圧力を計測するセンサ11が設けられている。センサ11は、絶縁油の圧力を検出する圧力センサであり、柱上変圧器2内の絶縁油の圧力を計測すると、計測結果を計測信号として通信装置21に出力する。なお、電柱1には、柱上変圧器2の他にも、開閉器のような圧力機器が設置される場合もある。
【0020】
柱上変圧器2と大地との間には設備としての接地線3が接続されている。接地線3にはセンサ12が設けられている。センサ12は、漏電を検出する漏電センサであり、柱上変圧器2から大地に流れる漏電電流を計測する。センサ12は漏電電流の計測結果を計測信号として通信装置21に出力する。
【0021】
通信装置21は、センサ11、12からの計測信号を集約装置41に宛てて送る装置である。この通信装置21の一例を図2に示す。通信装置21は、入力部21Aと、処理部21Bと、記憶部21Cと、無線通信部21Dとを備えている。
【0022】
入力部21Aは、センサ11、12からの計測信号を受け取り、これらの信号を処理部21Bで処理可能な計測信号のデータに変換する。入力部21Aはデータ化した計測信号を処理部21Bに送る。
【0023】
記憶部21Cは各種のデータを記憶する記憶装置である。記憶部21Cは、センサ11、12を識別するためのセンサ識別番号をそれぞれ記憶している。
【0024】
さらに、記憶部21Cは無線通信用の経路表を記憶している。経路表は、無線通信部21Dからデータを送る場合に、データの中継経路を表すものであり、通信装置21やスマートメータ31~35、集約装置41の各アドレス等を基にあらかじめ作成される。
【0025】
記憶部21Cが記憶している経路表の一例を図3に示す。この経路表には、データの転送先として数百メートルの範囲つまり近隣のスマートメータのアドレスが記憶され、例えばスマートメータ31とスマートメータ34のアドレスがアドレスAとアドレスDとして記憶されている。さらに、経路表には、データの宛先である集約装置41のアドレスがアドレスSとして記憶されている。なお、この実施の形態では、符号「A」~「E」は建物を表すが、便宜上、建物A~建物Eに関連するアドレスにも符号「A」~「E」を用いて、アドレスA~アドレスEとしている。
【0026】
処理部21Bは通信装置21に係わる各種の機能を持つ。処理部21Bは、センサ11、12から計測信号を受け取ると、この計測信号のデータに対して、センサを識別するためのセンサ識別番号を付加する。次に、処理部21Bは、集約装置41を宛先として集約装置41のアドレスSを計測信号に付加する。
【0027】
さらに、処理部21Bは、記憶部21Cに記憶されている経路表を参照し、近隣のアドレスの中から1つのアドレスを転送先アドレスとして選択する。この選択に際して、処理部21Bは例えば送信可能な近隣のアドレスを1つ選択する。そして、処理部21Bは、データの転送を指示する転送指示および転送先アドレスと、作成した計測信号のデータとを無線通信部21Dに送る。
【0028】
無線通信部21Dは、自装置の近隣のスマートメータと無線通信をする。無線通信部21Dは、処理部21Bから転送指示および転送先アドレスと、計測信号とを受け取ると、この転送指示を受けて計測信号を転送先アドレスに向けて送信する。
【0029】
このように、通信装置21はスマートメータ31と同じ後述の通信機能を持ち、この通信機能は処理部21Bと記憶部21Cと無線通信部21Dとによって実現される。
【0030】
建物A~建物Eにはスマートメータ31~35が設置されている。例えば、スマートメータ31は無線通信機能を備えたデジタル式の電力量計である。スマートメータ31は、図4に示すように、計測部31Aと、処理部31Bと、記憶部31Cと、無線通信部31Dと、表示部31Eとを備えている。
【0031】
計測部31Aは、引込み線1Aを経て建物Aに引き込まれる電気つまり電気使用量を計測する。計測部31Aは、所定時間毎に計測した電気使用量を処理部31Bに送る。
【0032】
記憶部31Cは各種のデータを記憶する記憶装置である。記憶部31Cは、スマートメータ31と他のスマートメータ32~34とを識別するために、スマートメータ31を特定する計器識別番号(機器ID)を記憶している。また、記憶部31Cは、データの通信の際に用いられる自装置のアドレスをアドレスAとして記憶している。さらに、記憶部31Cは無線通信用の経路表を記憶している。経路表は、無線通信部31Dからデータを送る場合に、データの中継経路を表すものであり、スマートメータ31やスマートメータ32~35、通信装置21、集約装置41のアドレス等を基にあらかじめ作成される。
【0033】
記憶部31Cが記憶している経路表の一例を図5に示す。この経路表には、データの転送先として近隣のスマートメータ、例えばスマートメータ32とスマートメータ34とのアドレスがアドレスBとアドレスDとして記憶されている。さらに、経路表には、データの宛先である集約装置41のアドレスがアドレスSとして記憶されている。
【0034】
処理部31Bは、計測部31Aや無線通信部31Dを制御することで、スマートメータ31に係わる各種の機能を持つ。
【0035】
処理部31Bは計測部31Aと共に電力量計としての計測機能を持つ。つまり、処理部31Bは計測部31Aから定期的に電気使用量を受け取る。そして、処理部31Bは、受け取った電気使用量を記憶部31Cに記憶していく。所定時間が経過すると、例えば30分が経過すると、処理部31Bは、記憶部31Cを参照して、この間の電気使用量を積算して所定時間毎の電気使用量として記憶部31Cに記憶する。同時に、処理部31Bは、表示部31Eを制御して、今までの電気使用量や、所定時間毎の電気使用量を表示する。
【0036】
また、処理部31Bは、所定時間の電気使用量を記憶部31Cに記憶したときに、この電気使用量のデータに対して、記憶部31Cに記憶されているスマートメータ31の計器識別番号と、送信元としてのスマートメータ31のアドレスAを付加する。さらに、処理部31Bは、記憶部31Cに記憶されている経路表を参照し、近隣の転送先アドレスを選択する。この選択に際して、処理部31Bは例えば送信可能な近隣の転送先アドレスを1つ選択する。この後、処理部31Bは、データの転送を指示する転送指示および転送先アドレスと、作成した電気使用量のデータとを無線通信部21Dに送る。
【0037】
処理部31Bは無線通信部31Dがデータを受信した場合に、このデータの宛先が自装置であると、受信したデータを受け取る。受信したデータが計測信号であり、データの宛先が他装置であると、処理部31Bは、記憶部31Cに記憶されている経路表を参照し、近隣の転送先アドレスを1つ選択する。この後、処理部31Bは、転送先アドレスおよび転送指示と、受信したデータとを無線通信部31Dに送る。
【0038】
無線通信部31Dは、自装置の近隣のスマートメータと無線通信をする無線通信機能を持つ装置である。無線通信部31Dは、処理部31Bから転送指示および転送先アドレスと、電気使用量を含むデータとを受け取ると、このデータに付加されている近隣の転送先アドレスに向けて、このデータを送信する。
【0039】
また、無線通信部31Dは、他装置から無線で送られてきたデータを受信すると、このデータを処理部31Bに出力する。無線通信部31Dが受信するデータには、電気使用量や計測信号などがある。この後、無線通信部31Dは、処理部31Bから転送指示および転送先アドレスと、データとを受け取ると、転送指示を受けて転送先アドレスに向けてデータを無線で送信する。
【0040】
表示部31Eは、処理部31Bの制御によって各種のデータを表示する。例えば、表示部31Eは、処理部31Bの制御で、建物Aで使用された電力量などを表示する。
【0041】
このように、スマートメータ31は通信機能を持ち、この通信機能は処理部31Bと記憶部31Cと無線通信部31Dとによって実現される。
【0042】
以上がスマートメータ31の構成である。他のスマートメータ32~35は、あらかじめ記憶している経路表が異なる点を除いてスマートメータ31と同様の構成である。ここで、スマートメータ31~35を用いたマルチホップ方式の無線通信網について説明する。マルチホップ方式の無線通信のために、通信装置21と、スマートメータ31~35とは、例えば図6に示すような経路表をそれぞれ記憶している。
【0043】
通信装置21は、センサ11やセンサ12から計測信号を受け取ると、計測信号に対してセンサ識別番号を付加する。さらに、通信装置21は、集約装置41を宛先として集約装置41のアドレスSを計測信号に付加する。
【0044】
通信装置21は、近隣のスマートメータと通信することができるが、この実施の形態では通信装置21の経路表(図6)に従って、建物Aのスマートメータ31と建物Dのスマートメータ34の中で通信可能なスマートメータ31(建物A)のアドレスAを選択する。そして、通信装置21は計測信号をアドレスAに向けて転送する。
【0045】
建物Aのスマートメータ31は、通信装置21からの計測信号を受信すると、この信号に付加されている宛先を調べる。そして、宛先が自装置向けであれば、計測信号を受け取るが、宛先は集約装置41であるので、スマートメータ31は、経路表に従って、建物Bのスマートメータ32と建物Dのスマートメータ34の中で通信可能なスマートメータ、例えばスマートメータ32(建物B)に計測信号を送信する。建物Bのスマートメータ33は、スマートメータ31と同様にして、建物Aのスマートメータ31からの計測信号を受信すると、この信号に付加されている宛先を調べる。計測信号に付加されている宛先は集約装置41であるので、スマートメータ32は、経路表に従って、建物Cのスマートメータ33に計測信号を送信する。建物Cのスマートメータ33は、受信したスマートメータ32(建物B)からの計測信号に付加されている宛先を調べる。宛先が集約装置41であるので、スマートメータ33は、経路表に従って、建物Dのスマートメータ32と集約装置41の中で通信可能な例えば集約装置41に計測信号を送信する。
【0046】
このように、スマートメータ31~35を用いたマルチホップ方式による無線通信網は、通信料を必要とする外部通信網を使用することなく、通信装置21からの計測信号を集約装置41に転送する転送機能を持つ。
【0047】
集約装置41は、スマートメータ31~35で形成される無線通信網を含む各無線通信網から、電気使用量や計測信号のデータを受信する。受信したデータの宛先が自装置であると、集約装置41はデータを受け取ってデータをまとめる。つまり、集約装置41は各無線通信網からのデータを集約する。そして、集約装置41は、通信事業者等と契約することにより接続可能なインターネット等の外部通信網N1を経て、集約した計測信号を計算機51に向けて送信する。こうした集約装置41は、例えば電柱1とは別の電柱に設置されている。
【0048】
管理端末61は、電力事業者の管理部門に設けられている。管理端末61は、管理部門の担当者によって使用されるコンピュータであり、データを計算機51から受け取る機能、データの表示機能、データの解析機能等を持つ。このために、管理端末61は、電力事業者側に設けられているローカルエリアネットワーク等の内部通信網N2に接続されて、計算機51と通信可能な状態にある。
【0049】
計算機51は、電力事業者の管理部門に設けられ、内部通信網N2に接続されている。これにより、計算機51管理端末61と通信可能な状態にあり、各種のデータを管理端末61に送ることが可能である。
【0050】
計算機51は、センサ11、12からの計測信号のしきい値をあらかじめ記憶している。センサ11つまり圧力センサのしきい値は、絶縁油の圧力が異常かどうかを判定するための基準であり、センサ12つまり漏電センサのしきい値は、漏電電流の大きさが異常かどうかを判定するための基準である。
【0051】
計算機51は各電柱に設置されている設備のテーブルを設備テーブルとして記憶している。この設備テーブルの一例を図7に示す。この設備テーブルには、例えば電柱1の電柱番号と、電柱1が設置されている設置場所とが記録されている。また、設備テーブルには、電柱1に設置されている設備名として柱上変圧器と接地線とが記録され、各設備の状態を検出するセンサとして圧力センサと漏電センサとのセンサ識別番号がそれぞれ記録されている。
【0052】
計算機51は、所定時間毎に受け取った電気使用量を記録すると共に集計して当日の電気使用量や電気料金などを計算して記録する。計算機51は、管理端末61からの要求により、当日の電気使用量や電気料金などのデータを送る。
【0053】
また、計算機51は定期的に受け取った計測信号を記録していく。計算機51は、管理端末61からの要求により、記録した各計測信号を送る。また、計算機51は、例えば計測信号がセンサ11からの信号であると、計測信号が表す絶縁油の圧力が異常かどうかを、しきい値を用いて判定する。絶縁油の圧力が異常と判定すると、計算機51は、設備テーブルを基にして、計測信号に付加されているセンサ識別番号から電柱1の設置場所を特定する。また、計算機51は、設備テーブルを基にして、計測信号に付加されているセンサ識別番号から設備名、例えば柱上変圧器を特定する。
【0054】
この後、計算機51は、センサ11の異常、その設置場所および異常な設備名を表す異常検出通知を作成する。計算機51は、作成した異常検出通知を管理端末61に送信する。
【0055】
このとき、計算機51は、図示を省略しているが電力事業者の配電自動化システムから配電系統の事故を知らせる事故通知を受け取ると、この事故通知と共に異常検出通知を管理端末61に送るようにしてもよい。これにより、配電自動化システムが検出した事故区間での事故点を特定することを可能にする。
【0056】
以上がこの実施の形態による設備管理システムの構成である。次に、この設備管理システムの作用について説明する。電柱1のセンサ11は柱上変圧器2の絶縁油の圧力を計測し、センサ12は漏電電流を計測している。例えば、センサ11が絶縁油の圧力を計測すると、計測結果である計測信号を通信装置21に送る。
【0057】
通信装置21は、計測信号を受け取ると、この計測信号を出力したセンサ11のセンサ識別番号を付加する。さらに、通信装置21は、計測信号の送り先である集約装置41のアドレスSを計測信号に付加する。そして、通信装置21は、スマートメータ31~35を用いたマルチホップ方式の無線通信網の中で通信可能な近隣のスマートメータを経路表から選択する。通信装置21は、例えば建物Aのスマートメータ31を選択すると、このスマートメータ31のアドレスAに向けて、作成した計測信号を送信する。
【0058】
スマートメータ31~35を用いた無線通信網では、スマートメータ31が計測信号を受信すると、この無線通信網の転送機能によって、通信装置21から受信した計測信号を、例えば建物Bのスマートメータ32と建物Cのスマートメータ33を経て、集約装置41に転送する。
【0059】
集約装置41は、マルチホップ方式の無線通信網から計測信号を受信する。受信したデータの宛先が自装置であると、集約装置41はデータつまり計測信号を受け取る。この後、集約装置41は外部通信網N1を経て、他の計測信号に集約された計測信号を管理部門の計算機51に送信する。
【0060】
計算機51は受け取った計測信号を記録していく。同時に、計算機51は、計測信号がセンサ11からの信号であると、計測信号が表す絶縁油の圧力が異常かどうかを、しきい値を用いて判定する。絶縁油の圧力が異常と判定すると、計算機51は、設備テーブルとセンサ識別番号とから電柱1の設置場所を特定する。また、計算機51は、計測信号に付加されているセンサ識別番号から柱上変圧器を特定する。この後、センサ11の異常、設備名、その設置場所を表す異常検出通知を作成して管理端末61に送信する。
【0061】
管理端末61は、計算機51から異常検出通知を受け取ると、この異常検出通知を表示して、管理部門の担当者に異常を知らせる。
【0062】
以上説明したように、この実施の形態によれば、センサ11やセンサ12などの設備を管理する場合には設備にセンサと通信装置21とを設置するだけでよいので、大掛かりな通信機器を不要にすることができる。また、スマートメータ31~35を利用したマルチホップ方式の無線通信網を利用してセンサからの信号を集約装置41まで送るので、外部通信網の利用に伴う通信料が発生することなく、設備を管理することを可能にする。さらに、設備の増設に伴うセンサの設置も通信装置21を設けるか、接続するだけの簡単な作業でよい。
【符号の説明】
【0063】
1 電柱
2 柱上変圧器
3 接地線
11、12 センサ
21 通信装置
21A 入力部
21B 処理部
21C 記憶部
21D 無線通信部
31~35 スマートメータ
31A 計測部
31B 処理部
31C 記憶部
31D 無線通信部
31E 表示部
41 集約装置
51 計算機
61 管理端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7