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特許7331357コネクタ構造体、ウェアラブル端末および生体情報計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】コネクタ構造体、ウェアラブル端末および生体情報計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/273 20210101AFI20230816BHJP
【FI】
A61B5/273
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018238391
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020099436
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐輔
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153666(JP,A)
【文献】特表2014-500077(JP,A)
【文献】特開2001-299713(JP,A)
【文献】特開2014-226367(JP,A)
【文献】特開2011-098214(JP,A)
【文献】特開2017-046913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/273
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する絶縁基材、および、前記絶縁基材の第1の面に接する導電層を少なくとも有する層状構造体と、
導電性材料からなり前記層状構造体を貫通する軸と前記導電層に接する頭部を持つ鋲状部材と、
前記鋲状部材の軸を前記絶縁基材の第2の面側から覆う導電性材料からなる蓋部材
を有するコネクタ構造体であって、
前記鋲状部材の頭部を覆い、さらに前記導電層に接する導電性の円形のカバー部材を有する
ことを特徴とするコネクタ構造体。
【請求項2】
前記絶縁基材の第2の面と前記蓋部材の間に開口部材を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ構造体。
【請求項3】
前記開口部材の外径が前記蓋部材の外径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のコネクタ構造体。
【請求項4】
前記開口部材の外径が前記蓋部材の外径より1mm以上大きいことを特徴とする請求項3に記載のコネクタ構造体。
【請求項5】
前記カバー部材の外径が前記鋲状部材の頭部の外径より1mm以上大きいことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項6】
(前記導電層の伸長弾性率)(MPa)×(前記導電層の厚さ)(mm)をAとし、
(前記カバー部材の伸長弾性率)(MPa)×(前記カバー部材の厚さ)(mm)をCとしたときに、
(A+C)>A×1.5
の関係を満たすことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項7】
(前記導電層の伸長弾性率)(MPa)×(前記導電層の厚さ)(mm)をAとし、
(前記開口部材の伸長弾性率)(Mpa)×(前記開口部材の厚さ)(mm)をBとしたときに、
(A+B)>A×1.5
の関係を満たすことを特徴とする請求項2~5のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項8】
前記開口部材が、前記絶縁基材に接着していることを特徴とする請求項2~5、および7のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項9】
前記開口部材が熱可塑性樹脂シートであり、前記熱可塑性樹脂シートの軟化温度<前記絶縁基材の軟化温度であることを特徴とする請求項2~5、7、および8のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項10】
前記開口部材が、軟化温度の異なる二層を少なくとも有する樹脂シートであり、前記樹脂シートの軟化温度が低い層の軟化温度<前記絶縁基材の軟化温度であることを特徴とする請求項2~5、および7~9のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のコネクタ構造体を有することを特徴とするウェアラブル端末。
【請求項12】
請求項11に記載のウェアラブル端末を用いたことを特徴とする生体情報計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を検知するための高い耐久性を有するコネクタ構造体およびそれを用いたウェアラブル端末ならびに生体情報計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病気の早期発見や健康維持のために心拍、脈拍、心電図等の生体情報を常時検知することの必要性が高まっているが、電極パッド等を用いた従来の検知装置を常時使用するのは現実的ではなく、仮に当該装置を使用した場合には被検者に身体的、心理的負担が発生する。このような課題を解決するために衣服に装着することによって容易に生体情報を検知可能な装置(いわゆる、ウェアラブルセンサ)が種々開発されており、ウェアラブルセンサは特許文献1、特許文献2に示されるように様々な方法で衣服に取り付けられている。
【0003】
ウェアラブルセンサは衣服に形成された配線と電気的、機械的に接続されるが、衣服部分は洗濯をする必要があるため、ウェアラブルセンサは、衣服から取り外しが出来るように接続されるのが通例でありる。ウェアラブルセンサと衣服配線とを脱着可能に取り付けるためには面ファスナーやスナップボタン(スナップホックないしはスナップファスナーとも呼ばれる)、あるいは専用に開発されたコネクタなどの係合手段が用いられている。このうちスナップボタンはアパレル産業界で一般的に用いられているために衣服への適用が容易であり、かつ電気的接続と機械的接続を同時に行う事ができるため、比較的多くのケースで使用されている。
スナップボタンは金属などの高剛性材料で構成されており、一方衣服側の配線には導電性繊維や伸縮性導体組成物などの比較的柔軟な材料が用いられている。そのため、ウェアラブルセンサの脱着時にスナップボタンと衣服側の配線部材(導電層)との接合部分に過度な伸縮、屈曲が加わり、導電層の接合部分との接触部近傍に応力が集中し、衣服側の配線である導電層が損傷する恐れがある。
【0004】
特許文献3では開口を有する導電部材を有頭軸部材の間に挟むことにより、かかる問題を解決することを提案しているが、このような方法では衣服側の電極部材とスナップボタンに相当する有頭軸部材の間の電気抵抗が大きくなり、生体信号取出しの妨げとなる問題が生じる場合がある。また開口部材として用いられる導電部材は圧縮剛性に劣るため、繰り返し伸縮や屈曲などの負荷が加わると、特に導電部材を重ねられた部分に座屈破壊が進行し、接合部分において電気的接続が不安定となる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-226367号公報
【文献】特開2011-98214号公報
【文献】特開2017-46913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、配線を形成した衣服と、脱着可能に取り付けられるウェアラブルセンサとの機械的、電気的接続に用いられるコネクタ部分において、ウェアラブルセンサの着脱時、あるいは着用時の振動、さらには洗濯などの際に基材の伸縮、屈曲によって生じる応力による接続不具合を解消するコネクタ構造体、およびそれを用いたウェアラブル端末、さらにそのウェアラブル端末を用いた生体情報計測システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は以下の構成である。
[1] 可撓性を有する絶縁基材と、
前記絶縁基材の第1の面に接する導電層を少なくとも有する層状構造体と、
導電性材料からなり前記層状構造体を貫通する軸と前記導電層に接する頭部を持つ鋲状部材と、
前記鋲状部材の軸を前記絶縁基材の第2の面側から覆う導電性材料からなる蓋部材
を有するコネクタ構造体において、
前記鋲状部材の頭部を覆い、さらに導電層に接するカバー部材を有することを特徴とするコネクタ構造体。
[2] 前記絶縁基材の第2の面と蓋部材の間に開口部材を有することを特徴とする前記[1]に記載のコネクタ構造体。
[3] 前記開口部材の外径が蓋部材の外径よりも大きいことを特徴とする[1]または[2]に記載のコネクタ構造体。
[4] 前記開口部材の外径が蓋部材の外径より1mm以上大きいことを特徴とする[1]~[3]のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
[5] 前記カバー部材の外径が前記鋲状部材の頭部の外径より1mm以上大きいことを特徴とする[2]~[4]のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
[6](導電層の伸長弾性率)(MPa)×(導電層の厚さ)(mm)をAとし、
(カバー部材の伸長弾性率)(MPa)×(カバー部材の厚さ)(mm)をCとしたときに、
(A+C)>A×1.5
の関係を満たすことを特徴とする[1]~[5]のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
[7](導電層の伸長弾性率)(MPa)×(導電層の厚さ)(mm)をAとし、
(開口部材の伸長弾性率)(Mpa)×(開口部材の厚さ)(mm)をBとしたときに、
(A+B)>A×1.5
の関係を満たすことを特徴とする[2]~[6]のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
[8] 前記開口部材が、前記絶縁基材に接着していることを特徴とする[2]~[7]のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
[9] 前記開口部材が熱可塑性樹脂シートであり、熱可塑性樹脂シートの軟化温度<絶縁基材の軟化温度であることを特徴とする[1]~[8]のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
[10] 前記開口部材が、軟化温度の異なる二層を少なくとも有する樹脂シートであり、前記樹脂シートの軟化温度が低い層の軟化温度<絶縁基材の軟化温度であることを特徴とする[1]~[8]のいずれか一項に記載のコネクタ構造体。
[11] 前記[1]~[10]のいずれかに記載の電極構造体を有する事を特徴とするウェアラブル端末。
[12] 前記[11]に記載のウェアラブル端末を用いたことを特徴とする生体情報計測システム。
【0008】
本発明は、さらに好ましくは以下の構成を持つ。
[13] 前記導電層が、鋲状部材の頭部が導電層内にめり込むことにより変形し、鋲状部材頭部の側面まで導電層と接触していることを特徴とする前記[1]~[10]に記載のコネクタ構造体、前記[11]に記載のウェアラブル端末および前記[12]に記載の生体情報計測システム。
[14] 前記導電層の鋲状部材頭部と接する部分が他の領域よりも厚くなっていることを特徴とする前記[1]~[10]に記載のコネクタ構造体、前記[11]に記載のウェアラブル端末および前記[12]に記載の生体情報計測システム。
[15] 前記カバー部材の素材が導電性材料であることを特徴とする前記[2]~[10]に記載のコネクタ構造体、前記[11]に記載のウェアラブル端末および前記[12]に記載の生体情報計測システム。

[16] パッチ型であることを特徴とする前記[11]に記載のウェアラブル端末および前記[12]に記載の生体情報計測システム。
[17] 衣服型であることを特徴とする前記[11]に記載のウェアラブル端末および前記[12]に記載の生体情報計測システム。
[18] 前記[12]、[16]、17]のいずれかに記載の生体情報計測システムを用いたことを特徴とする健康状態モニタリングシステム。
[19] 前記[12]、[16]、17]のいずれかに記載の生体情報計測システムを用いたことを特徴とする運動支援システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明では信号取出しのために鋲状の部材を導電層および機材を貫通して接合しているが、この鋲状部材の軸部分を覆う蓋部材と基材の間に開口部材を挿入すると、電極部材における鋲状部材の頭部相当領域の伸縮変形および屈曲変形を低減し、応力集中が回避されるため、導電層の局所的な変形が抑制される。このことにより、このコネクタ構造体を生体信号測定に用いた場合の測定時、あるいは着脱時のコネクタ構造体にかかる伸長、屈曲変形による損傷の可能性が低減され、より正確な計測を長期にわたって行うことが可能になる。本発明では前記開口部材と柔軟性を有する基材が接着している場合に、さらに顕著な効果が発現する。
【0010】
また、信号取出しのために鋲状の部材を導電層および機材を貫通して接合しているが、この鋲状部材の鋲状部材の頭部を完全に覆い、周辺電極部まで達する大きさのカバー部材を接合することでも鋲状部材の輪郭に近い領域の伸縮変形および屈曲変形を低減し、応力集中が回避されるため、導電層の局所的な変形が抑制される。このことにより、このコネクタ構造体を生体信号測定に用いた場合の測定時、あるいは着脱時、さらいは洗濯時のコネクタ構造体にかかる伸長、屈曲変形による損傷の可能性が低減され、より正確な計測を長期にわたって行うことが可能になる。
【0011】
この鋲状部材の軸部分を覆う蓋材と基材の間に開口部材を挿入し、さらに鋲状部材の鋲状部材の頭部を完全に覆い、周辺電極部まで達する大きさのカバー部材を接合することでより効果的に鋲状部材の輪郭に近い領域の伸縮変形および屈曲変形を低減し、応力集中が回避されるため、導電層の局所的な変形がより抑制される。このことにより、このコネクタ構造体を生体信号測定に用いた場合の測定時、あるいは着脱時のコネクタ構造体にかかる伸長、屈曲変形による損傷の可能性が低減され、より正確な計測を長期にわたって行うことが可能になる。
【0012】
本発明で、さらに予期しない効果として、鋲状部材および蓋部材周囲が変形しにくくなることによって、蓋材側に接続するウェアラブルセンサの脱着が容易になるという効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明におけるコネクタ構造体の一例の断面模式図である。
図2図2は、本発明におけるコネクタ構造体の別の一例の断面模式図である。
図3図3は、従来のコネクタ構造体の一例の断面模式図である。
図4図4は、従来のコネクタ構造体の別の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を、図を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態の一例に於けるコネクタ構造体の断面を示した模式図である。
本発明における可撓性を有する絶縁基材(1)とは、面状の部材であり、高分子フィルム、不織布、織物、ニット、紙、発泡体等を用いることが可能である。これらの素材としては各種有機高分子を用いることが可能であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリウレタン、合成ゴム、アラミド、アクリル、アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表される合成高分子や、レーヨン、アセテートに代表される半合成高分子、さらには綿や羊毛、シルク、天然ゴムなどの天然高分子があげられる。もちろんここに挙げた以外の素材、構造体以外であっても可撓性を持つ面状の素材であれば適宜用いることが可能である。
【0015】
本発明における可撓性を有する導電層(2)とは、例えば、導電性ファブリックや、導電性フィラーと柔軟な樹脂を含む伸縮性導電性組成物から形成することができる。
上記導電性ファブリックで構成されている導電層としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した導電性繊維ないし導電糸、あるいは銀、金、銅、ニッケルなどの導電性金属により表面を被覆した繊維、導電性金属の微細線からなる導電糸、導電性金属の微細線と非導電性繊維とを混紡した導電糸などからなる織物、編物、不織布、あるいはこれら導電性の糸を非導電性の布帛に刺繍した物を導電性ファブリックからなる導電層として用いる事ができる。
【0016】
本発明における鋲状部材(3)は、頭部(3a)と軸部(3b)を有し、導電層(2)と蓋部材(4)を電気的に接続する役割を担っている。このとき導電層(2)と鋲状部材の頭部が直接的に面接触することによって検出すべき電気信号の減衰を最小限にとどめることが可能となる。
鋲状部材(3)は電気信号を伝達するために導電性が必要であり、銀、金、銅、鉄、ニッケルなどの導電性金属あるいはその合金が用いられる。また上記導電性金属をはじめ、CNT,グラフェン,カーボンブラックなどの導電性の粒子を有機材料に混合した導電性複合材料であってもよい。さらには絶縁物の表面に導電性金属や導電性複合材料などの層を形成した部材も問題なく使用できる。
【0017】
蓋部材(4)は上記鋲状部材(3)の軸部分に電気的に接しており、上記鋲状部材(3)から伝えられた電気信号を各種計測装置に直接、あるいは間接的に伝達する役目を持つ。
蓋部材(4)は電気信号を伝達するために導電性が必要であり、銀、金、銅、鉄、ニッケルなどの導電性金属あるいはその合金が用いられる。また上記導電性金属をはじめ、CNT,グラフェン,カーボンブラックなどの導電性の粒子を有機材料に混合した導電性複合材料であってもよい。さらには絶縁物の表面に導電性金属や導電性複合材料などの層を形成した部材も問題なく使用できる。
蓋部材(4)と鋲状部材(3)は電気的に接続されている限りさまざまな方法で固定できる。たとえば金属の弾性変形や塑性変形によって挟んで固定することもできるし、カシメ、ネジや接着剤による固定も可能である。
また鋲状部材(3)の軸部分先端は蓋部材(4)で覆われていてもよいし、蓋部材(4)から突出していてもよい。
【0018】
カバー部材(6)は絶縁基材(1)の第1の面の鋲状部材(3)の頭部(3a)を覆い、導電層(2)に接するように配置される。カバー部材は可撓性のある面状の部材であり、高分子フィルム、不織布、織物、ニット、紙、発泡体等を用いることが可能である。これらの素材としては各種有機高分子を用いることが可能であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリウレタン、合成ゴム、アラミド、アクリル、アクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表される合成高分子や、レーヨン、アセテートに代表される半合成高分子、さらには綿や羊毛、シルク、天然ゴムなどの天然高分子があげられる。これらの素材は単体で用いられていても複数が組み合わされていてもよい。もちろんここに挙げた以外の素材、構造体以外であっても可撓性を持つ面状の素材であれば適宜用いることが可能である。また、カバー部材は易成形性を持つことが好ましく、例えば東洋紡株式会社製ソフトシャイン、東レ株式会社製ルミラーF99などが好ましい。さらにカバー部材は、これら易成型性を有するフィルムないしシートにホットメルト素材を積層したものが好ましい。
またカバー部材は導電性でもよく、導電性ファブリックや、導電性フィラーと伸縮性を有する樹脂を含む導電性組成物から形成することができる。
【0019】
開口部材(5)は図2に示したように絶縁基材(1)の導電層のある面とは反対側の面と蓋部材(4)の間に挿入されている。開口部材は絶縁基材(1)と蓋部材(4)で挟まれることで固定されるが、さらに絶縁基材に接着されることが好ましい。接着には接着材や、好ましくは熱によって軟化、接着可能な伸縮性のある接着シートによって固定される。また開口部材そのものが熱可塑性樹脂シートの場合には、絶縁基材に熱圧着して接着する事ができる。この場合、開口部材となる熱可塑性樹脂シートの軟化温度<絶縁基材の軟化温度であることが好ましい。この条件を満たす開口部材を用いれば、絶縁基材の劣化を招くこと無く開口部材を絶縁基材に接着する事ができる。
【0020】
さらに本発明では、前記開口部材が、軟化温度の異なる二層を少なくとも有する樹脂シートであることが好ましい。この場合、前記樹脂シートの軟化温度が低い層の軟化温度<絶縁基材の軟化温度であることが好ましい。このような絶縁基材の軟化温度より低い温度で軟化する熱可塑性樹脂であれば、絶縁基材としてテキスタイル製品を用いた場合に、熱圧着により熱可塑性樹脂が繊維製品に含浸し、部分的に繊維補強コンポジット構造が形成されるため、開口部材を配置した個所の剛性が上がり、耐久性向上に顕著な効果を得ることができる。
【0021】
上記導電性ファブリックで構成されているカバー部材としては、例えば、基材繊維に導電性高分子を被覆した導電性繊維ないし導電糸、あるいは銀、金、銅、ニッケルなどの導電性金属により表面を被覆した繊維、導電性金属の微細線からなる導電糸、導電性金属の微細線と非導電性繊維とを混紡した導電糸などからなる織物、編物、不織布、あるいはこれら導電性の糸を非導電性の布帛に刺繍した物を導電性ファブリックからなるカバー部材として用いる事ができる。
【0022】
本発明では、開口部材の外径が蓋部材の外径より1mm以上、好ましくは2mm以上大きいことが好ましい。また、本発明では、カバー部材の外径が前記鋲状部材の頭部の外径より1mm以上大きいことが好ましく、さらに2.5mm以上、なおさらには5mm以上大きい事が好ましい。外径については前項と同様の解釈でよい
ここに外径とは開口部材、蓋部材を平面投影した場合の形状が円形である場合を典型として表現したものである。平面投影した形状が円形で無い場合には、外接円の直径をもって外径とみなす。
開口部材およびまたはカバー部材の外径を、鋲状部材の頭部、およびまたは蓋部材の外径より大とする事により、コネクタ構造体に曲げ負荷が加わった場合に、鋲状部材の頭部の縁、または蓋部材の縁での折れ曲がりを緩和する事ができ、曲率半径を大とする効果が得られるため、導電層へ過度な変形が抑制され、電気的接続の耐久性が向上する。
【0023】
本発明では、
(導電層の伸長弾性率)(MPa)×(導電層の厚さ)(mm)をAとし、
(開口部材の伸長弾性率)(Mpa)×(開口部材の厚さ)(mm)をBとしたときに、
(A+B)>A×1.5の関係を満たすことが好ましい。
さらに本発明では
(導電層の伸長弾性率)(MPa)×(導電層の厚さ)(mm)をAとし、
(カバー部材の伸長弾性率)(MPa)×(カバー部材の厚さ)(mm)をCとしたときに、
(A+C)>A×1.5の関係を満たすことが好ましい。
部材の弾性率と厚さの積はスティフネスを表す指標となる。すなわち本発明では導電層に開口部材およびまたはカバー部材を追加した時のスティフネスを導電層単体のスティフネスの1.5倍よりも大とする事で耐久性向上を実現する事ができる。開口部材およびまたはカバー部材のスティフネスは導電層のスティフネスの0.5倍以上が好ましく、2.5倍以上がさらにこのましく、5倍以上とすることがなお好ましい。
しかしながら、開口部材およびまたはカバー部材のスティフネスが導電層のスティフネスの300倍を超えると、開口部材あるいはカバー部材の外径の縁にて折れ曲がりが発生しやすくなり、導電層の耐久性を損なう場合がある。
【実施例
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実施例、比較例で使用した絶縁層形成用樹脂、導電性ペーストは以下のようにして調製した。
【0025】
(導電性ペースト)
樹脂(日本ゼオン社製ニトリル基含有ゴム「Nipol(登録商標)1042」アクリロニトリル含量33.3質量%)をジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、この溶液に銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製「凝集銀粉G-35」、平均粒径5.9μm)を分散させ(樹脂70体積%、銀粒子30体積%)、これを3本ロールミルにて混練し、導電性ペーストとした。
【0026】
(ポリウレタンシート)
ポリウレタンシートは、下記のものを用いた。
・ホットメルト付きポリウレタンシート:日清紡社製「モビロン(登録商標)MF-103F」
・ポリウレタンホットメルトシート:日清紡社製「モビロン(登録商標)MOB100」
【0027】
(導電層の調製)
上記導電性ペーストを離型シートの上に塗布し、120℃の熱風乾燥オーブンで30分以上乾燥することにより、シート状の離型シート付き導電層を作製した。
【0028】
(Tシャツと導電層の積層体)
次に、離型シート付き導電層の上に、ポリウレタンホットメルトシート(モビロンMOB100)を、ホットプレス機を用いて、圧力0.5kgf/cm2、温度130℃、プレス時間20秒の条件で、積層(貼り合わせ)した。ポリウレタンホットメルトシート(モビロンMOB100)を貼り合わせた後、離型フィルムを剥がし、ポリウレタンホットメルト付き導電シートを得た。その後、ホットメルト付きポリウレタンシート(モビロンMF-103F)の領域の上に、直径30mmの電極の寸法に切り取ったポリウレタンホットメルト付き導電シートを上記ホットプレス機の積層条件で貼り合わせ、第一絶縁層と導電層(電極)とを備えたパーツを形成した。次に、2-Wayトリコット生地(グンセン(株)製「KNZ2740」、ナイロンヤーン:ウレタンヤーン=63%:37%(混率)、目付け194g/m2)からなるシャツの裏側に第一絶縁層と導電層を備えたパーツを積層した。
【0029】
(実施例1)
上記Tシャツを可撓性を有する絶縁基材(1)と導電層(2)の積層体とし、鋲状部材(3)および蓋材としてスナップホックの組を用い、カバー部材(6)としてホットメルト付きポリウレタンシート(モビロンMF-103F)用い、図1に示す本発明の第1の形態のコネクタ構造体を有するTシャツ型のウェアラブル端末を作製した。

ここに、
蓋部材外径 10mm
鋲状部材頭部外径 10mm
カバー部材外径 12mm
カバー部材の厚さ 0.1mm
カバー部材の伸長弾性率 16MPa
導電層の厚さ 0.1mm
導電層の伸長弾性率 20MPa
であり、
A=(導電層の伸長弾性率)(MPa)×(導電層の厚さ)(mm)=2.0
C=(カバー部材の伸長弾性率)(Mpa)×(カバー部材の厚さ)(mm)=1.6
であり、(A+C)>A×1.5の関係を満たしている。
【0030】
(実施例2)
上記Tシャツを可撓性を有する絶縁基材(1)と導電層(2)の積層体とし、鋲状部材(3)および蓋材としてスナップホックの組を用い、開口部材(5)およびカバー部材部材(6)として円形にカットしたホットメルト付きポリウレタンシート(モビロンMF-10F3)用い、図2に示す本発明の第2の形態のコネクタ構造体を有するTシャツ型のウェアラブル端末を作製した。
ここに、
蓋部材外径 10mm
鋲状部材頭部外径 10mm
開口部材外径 12mm
開口部材の厚さ 0.1mm
開口部材の伸長弾性率 16MPa
カバー部材の外径 14mm
カバー部材の厚さ 0.1mm
カバー部材の伸長弾性率 16MPa
導電層の厚さ 0.1mm
導電層の弾性率 20MPa
であり、
A=(導電層の伸長弾性率)(MPa)×(導電層の厚さ)(mm)=2.0
B=(開口部材の伸長弾性率)(Mpa)×(開口部材の厚さ)(mm)=1.6
であり、(A+B)>A×1.5の関係を満たしている。
さらに
C=(カバー部材の伸長弾性率)(MPa)×(カバー部材の厚さ)(mm)=1.6
であり、(A+C)>A×1.5の関係を満たしている。
【0031】
(実施例3)
上記Tシャツを可撓性を有する絶縁基材(1)と導電層(2)の積層体とし、鋲状部材(3)および蓋部材(4)としてスナップホックの組を用い、カバー部材(5)として円形にカットした厚さ50μm易成形性PETフィルム(東洋紡株式会社製ソフトシャイン)にポリウレタンホットメルトシート(モビロンMOB100)を接着したものを用い、図1に示す本発明の第1の形態のコネクタ構造体を有するTシャツ型のウェアラブル端末を作製した。
ここに、
蓋部材外径 10mm
鋲状部材頭部外径 10mm
開口部材外径 12mm
開口部材の厚さ 0.05mm
開口部材の伸長弾性率 4000MPa
導電層の厚さ 0.1mm
導電層の伸長弾性率 20MPa
であり、
A=(導電層の伸長弾性率)(MPa)×(導電層の厚さ)(mm)=2.0
B=(開口部材の伸長弾性率)(Mpa)×(開口部材の厚さ)(mm)=200
であり、(A+B)>A×1.5の関係を満たしている。
【0032】
(比較例1)
上記Tシャツを可撓性を有する絶縁基材(1)と導電層(2)の積層体とし、鋲状部材(3)および蓋材としてスナップホックの組を用い、図3に示す従来形態のコネクタ構造体を有するTシャツ型のウェアラブル端末を作製した。
【0033】
(比較例2)
上記Tシャツを可撓性を有する絶縁基材(1)と導電層(2)の積層体とし、鋲状部材(3)および蓋材としてスナップホックの組を用い、導電性開口部材(7)として厚さ1mmの銅製板を用い、図4に示す従来形態のコネクタ構造体を有するTシャツ型のウェアラブル端末を作製した。
【0034】
<評価>
実施例および比較例でえられたTシャツ型のウェアラブル端末に、ユニオンツール社製の心拍センサWHS-2を接続し、同心拍センサWHS-2専用のアプリ「myBeat」を組み込んだアップル社製スマートホンで心拍データを受信し、画面表示できるように設定し、正常に心拍が検出できるかどうかを確認した。
実施例および比較例で得られた各コネクタ構造体有するTシャツ型のウェアラブル端末を、約8時間着用した後に家庭用全自動洗濯機で洗濯することを繰り返して生体信号の検出の可否を確認したところ、比較例1の電極を設置した衣服は約30回で生体信号の検出が不可能となり、比較例2の電極を設置した衣服は約60回で生体信号の検出が不可能になったのに対し、実施例1、2および3の電極を設置した衣服では100回繰り返し後にも生体信号を問題なく検出することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上述べてきたように、本発明のコネクタ構造体は実用上十分な耐久性を有し、本発明のコネクタ構造を有するウェアラブル端末は高い耐久性を示す。したがって本発明のウェアラブル端末を用いれば、信頼性の高い生体情報計測システムを実現する事が可能であり、かかる生体情報計測システムは健康状態モニタリングシステムや運動支援システムに応用することができ、産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0036】
1:可撓性を有する絶縁基材
2:導電層
3:鋲状部材
3a:鋲状部材頭部
3b:鋲状部材軸部
4:蓋部材
5:開口部材
6:カバー部材
7:導電性開口部材
a:蓋部材外径
b:鋲状部材頭部外径
c:開口部材外径
d:カバー部材外径
図1
図2
図3
図4