(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20230816BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230816BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230816BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230816BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230816BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B3/30
B32B27/00 L
C08J5/18 CFD
C08J7/04 A
(21)【出願番号】P 2018560239
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2018026043
(87)【国際公開番号】W WO2019021814
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2017142446
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017142447
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018116756
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018116757
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光隆
(72)【発明者】
【氏名】荘司 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅佑美
(72)【発明者】
【氏名】合田 亘
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 功
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-134922(JP,A)
【文献】特開2016-065209(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141866(WO,A1)
【文献】特開2005-029688(JP,A)
【文献】特開2000-344914(JP,A)
【文献】特開2016-089150(JP,A)
【文献】特開2009-280830(JP,A)
【文献】特開2016-043594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/22
C08J 7/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーA層を少なくとも片面に有するフィルムであって、ポリマーA層の主成分がポリエステル系樹脂であり、ポリマーA層が主成分であるポリエステル系樹脂とは異なるポリマーとしてポリブチレンテレフタレートとポリオキシアルキレングリコールのブロック共重合体を含有し、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さをRm1(nm)、180℃5分間加熱処理後における、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さをRm2(nm)とした際に、下記式(I-2)を満足し、180℃5分間加熱処理後のポリマーA層の光沢度(60°)が69以上である、機能性膜を製造するための工程基材フィルム。
Rm2-Rm1≧3nm・・・(I-2)
【請求項2】
下記式(I I-2)を満足する、請求項1に記載の機能性膜を製造するための工程基材フィルム。
3nm≦(Rm2-Rm1)≦2.0×10
4nm・・・(I I-2)
【請求項3】
180℃5分間加熱処理後における、AFMで求めたポリマーA層の算術平均粗さをRa2(nm)とした際に、下記式(III)を満足する、請求項1または2に記載の機能性膜を製造するための工程基材フィルム。
6≦(Rm2/Ra2)≦15・・・(III)
【請求項4】
下記式(IV)を満足する、請求項1に記載の機能性膜を製造するための工程基材フィルム。
(Rm2/Ra2)-(Rm1/Ra1)>0・・・(IV)
【請求項5】
ポリマーA層の押し込み弾性率が800N/mm
2以上6,000N/mm
2以下である、請求項1に記載の機能性膜を製造するための工程基材フィルム。
【請求項6】
主配向軸方向、および主配向軸と直交する方向において引裂き伝播抵抗が4.0N/mm以上12.0N/mm以下である、請求項1に記載の機能性膜を製造するための工程基材フィルム。
【請求項7】
フェライト系スラリーを塗布して機能性膜を得るための工程基材として用いられる、請求項1~
6のいずれかに記載の機能性膜を製造するための工程基材フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムは、各種特性に応じて、光学用途、包装用途、工業材料用途などで幅広く使用されている。また、工業材料用途においては、半導体の薄膜や回路部材を製造するための工程基材として熱可塑性樹脂フィルムが使用されており、例えば、半導体を製造する際に使用される半導体裏面用フィルム(例えば、特許文献1)や、回路部材形成の際に使用される離型フィルム(例えば、特許文献2)が提案されている。
【0003】
特許文献1に見られるようなフィルムの場合、熱膨張性微小球が加熱により膨張してフィルム表面形状を変化させることで、半導体のピックアップ性を向上させているが、表面形状の変化が大きいため、半導体よりも柔軟な塗布材料の工程基材として使用する場合は当該塗布材料に表面形状変化が転写してしまい、得られる塗布材料の平滑性が不十分になったり、アンカー効果により所望の剥離性を得ることが困難な場合があった。また、粘着剤層がフィルムの最表面に配置されることから、フィルム自身が傷つきやすい場合や、異物が付着しやすい場合があった。
【0004】
特許文献2に見られるようなフィルムの場合、マット状の表面設計となっており、工程基材として使用する際に、得られる塗布材料の平滑性が不十分になったり、塗布材料によっては所望の剥離性を得ることが困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-033636号公報
【文献】特開2016-043594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では上記の欠点を解消し、機能性材料を塗布して機能性材料層の薄膜(機能性膜)を得るための工程基材として使用した際に、塗布性、加工後の剥離性、機能性膜の特性、品位を良好とすることが可能なフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第1のフィルムは、以下の構成を有する。
(1) ポリマーA層を少なくとも片面に有するフィルムであって、ポリマーA層の主成分がポリエステル系樹脂であり、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さをRm1(nm)、180℃5分間加熱処理後における、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さをRm2(nm)とした際に、下記式(I)を満足することを特徴とする、フィルム。
Rm2-Rm1>0nm・・・(I)
(2) 下記式(I I)を満足する、(1)に記載のフィルム。
1nm≦(Rm2-Rm1)≦2.0×104nm・・・(I I)
(3) 180℃5分間加熱処理後における、AFMで求めたポリマーA層の算術平均粗さをRa2(nm)とした際に、下記式(III)を満足する、(1)または(2)に記載のフィルム。
6≦(Rm2/Ra2)≦15・・・(III)
(4)下記式(IV)を満足する、(1)から(3)のいずれかに記載のフィルム。
(Rm2/Ra2)-(Rm1/Ra1)>0・・・(IV)
(5) ポリマーA層が前記ポリエステル系樹脂とは異なるポリマーを1種類以上含有する、請求項1に記載のフィルム。
(6) 180℃5分間加熱処理後のポリマーA層の光沢度(60°)が30以上である、(1)から(5)のいずれかに記載のフィルム。
(7) ポリマーA層の押し込み弾性率が800N/mm2以上6,000N/mm2以下である、(1)から(6)のいずれかに記載のフィルム。
(8) 主配向軸方向、および主配向軸と直交する方向において引裂き伝播抵抗が4.0N/mm以上12.0N/mm以下である、(1)から(7)のいずれかに記載のフィルム。
(9) 製造工程用途に用いられる、(1)から(8)のいずれかに記載のフィルム。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の第2のフィルムは、以下の構成を有する。すなわち、ポリマーA層を少なくとも片面に有するフィルムであって、ポリマーA層の表面自由エネルギーをSE1(mN/m)、180℃5分間加熱処理後における、ポリマーA層の表面自由エネルギーをSE2(mN/m)とした際に、下記式(I)を満足することを特徴とする、フィルムである
SE1-SE2>0mN/m・・・(a)
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1、第2のフィルムは、加熱前の密着性、加熱後の剥離性を良好にできることから、機能性材料を塗布して機能性材料の薄膜(機能性膜)を得るための工程基材として使用した際に、機能性膜の特性、品位を向上させる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のフィルムについて詳細に説明する。
[第1のフィルム]
本発明の第1のフィルムは、ポリマーA層を少なくとも片面に有するフィルムであって、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さをRm1(nm)、180℃5分間加熱処理後における、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さをRm2(nm)とした際に、下記式(I)を満足することが重要である。
Rm2-Rm1>0nm・・・(I)
ここで、Rm1(nm)は、以下の通り求めた値とする。BrukerAXS製「NanoScopeV Dimension Icon」などのAFM(原子間力顕微鏡)において、シリコンカンチレバーを探針として適用し、タッピングモードにて、フィルムの表面形状を計測した後、AFMに付属のソフトウェア(例えば、NanoScope Analysisなど)を用いて、カットオフ3nmの条件にて最大高さを算出した。このような測定を5回繰り返し、5回の測定の平均値を求める。なお、測定方向(探針の走査方向)は、任意の一方向、および任意の一方向と直交する方向の計2方向にて測定を行い、各方向での最大高さの平均値(すなわち、任意の一方向の5回の測定値と、任意の一方向と直交する方向の5回の測定値の合計10回の測定値の平均値)をRm1(nm)として採用する。
【0011】
また、Rm2(nm)は、180℃5分間加熱処理を行ったフィルムについて、Rm1(nm)と同様にして最大高さを5回算出し、5回の測定の平均値を求める。なお、測定方向(探針の走査方向)は、任意の一方向、および任意の一方向と直交する方向の計2方向にて測定を行い、各方向での最大高さの平均値(すなわち、任意の一方向の5回の測定値と、任意の一方向と直交する方向の5回の測定値の合計10回の測定値の平均値)をそれぞれRm2(nm)として採用する。
【0012】
本発明における、180℃5分間熱処理とは、機能性膜の工程基材としてフィルムを使用した際に、機能性膜の乾燥、機能性向上のために生じるフィルムへの加熱を模した処理であり、たとえば、180℃に設定した熱風循環方式のコンベアオーブンにフィルムを5分間かけて搬送する処理を指す。また、フィルムを搬送する際には、2枚の金属枠でフィルムを挟み込んだ後、金属枠を金属クリップで固定することで、フィルムが直接コンベアに接触しないようにして行うものとする。
【0013】
本発明において、式(I)は、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さが180℃5分間の熱処理後に大きくなることを示している。なお、Rm1(nm)、Rm2(nm)など、本条件にて求めた最大高さは、一般的な接触式三次元粗さ計での測定と異なり測定範囲が非常に狭いため、例えば公知のサンドマット加工フィルム、エンボス加工フィルム、練り込み粒子によるマットフィルムの凹凸の影響は受けづらい値となっている。AFMで求められる微小範囲での最大高さを加熱後に大きくすることで、例えば、本発明のフィルムが機能性膜と積層された構成であった場合に、機能性膜の平滑性を大きく変化させずにフィルムと機能性膜との界面に微小な空間を形成し、機能性膜との密着性を低下させることが可能となる。すなわち、本発明のフィルムは、AFMで求められる微小範囲での最大高さを加熱後に大きくすることで、加熱前の機能性膜との密着性、および、加熱後の機能性膜との剥離性を両立できることを見出したものである。
【0014】
Rm1(nm)、Rm2(nm)を式(I)の範囲にするための方法としては、ポリマーA層を2種類以上のポリマーを組み合わせた構成とし、ポリマーA層を延伸させた後、ポリマーA層に含まれるポリマーの中で低融点のポリマーのみを180℃5分間の加熱により変形させてポリマーA層表面に歪みを形成させる方法、ポリマーA層に結晶性ポリマーを含む構成とし、UV処理やプラズマ処理などによりポリマーA層に微結晶を形成させ、180℃5分間の加熱によって、微結晶周辺の非晶部分のみを熱運動させてA層表面に歪みを形成させる方法、ポリマーA層に微小な空隙を形成しておき、180℃5分間の加熱によって空隙周辺のポリマーを軟化させて空隙の形状を変化させ、ポリマーA層表面に歪みを形成させる方法などが挙げられる。なお、ポリマーA層を延伸させた後、ポリマーA層に含まれるポリマーの中で低融点のポリマーのみを180℃5分間の加熱により変形させてポリマーA層表面に歪みを形成させる方法を用いる場合は、低融点のポリマーの融点より20℃以上100℃以下高い温度で延伸することが、低融点のポリマーのドメインの運動性と運動のための歪み蓄積を両立させる点から好ましく用いられる。
【0015】
本発明の第1のフィルムは、機能性膜を製造するための工程基材として使用した場合に、機能性膜の平滑性、加熱後の剥離性を良好とする観点から、下記式(I I)を満足することが好ましい。
1nm≦(Rm2-Rm1)≦2.0×104nm・・・(I I)
本発明の第1のフィルムは、(Rm2-Rm1)を1nm以上とすることで、加熱後の剥離性が良好となる。(Rm2-Rm1)は、加熱後の剥離性をより良好とする観点から、3nm以上がより好ましい。また、(Rm2-Rm1)を2.0×104nm以下とすることで、機能性膜の平滑性や、平滑性に伴う機能が良好となる。(Rm2-Rm1)は、機能性膜の平滑性や、平滑性に伴う機能をより良好とする観点から、1.0×103nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましく、50nm以下が特に好ましく、20nm以下が最も好ましい。
【0016】
(Rm2-Rm1)を式(I I)の範囲にするための方法としては、ポリマーA層を2種類以上のポリマーを組み合わせた構成とし、ポリマーA層を延伸させた後、ポリマーA層に含まれるポリマーの中で低融点のポリマーのみを180℃5分間の加熱により変形させてポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、ポリマーA層に含まれるポリマーの中で低融点のポリマーをサイドフィード方式により押出機に投入する方法が挙げられる。低融点のポリマーのみをサイドフィード方式にて投入することで、低融点のポリマーが融点よりはるかに高い温度(たとえば、ポリマーA層に含まれる、主成分の融点が高いポリマーに適した押出温度)で押し出され、溶融粘度が低くなってポリマーA層の主成分のポリマーとの分散性低下を抑制することが可能となる。その他の方法としては、ポリマーA層に結晶性ポリマーを含む構成とし、UV処理やプラズマ処理などによりポリマーA層に微結晶を形成させ、180℃5分間の加熱によって微結晶周辺の非晶部分のみを熱運動させてポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、UV処理やプラズマ処理などの表面処理条件とポリマーA層中の結晶性ポリマーの濃度を調整する方法、ポリマーA層に、微小な空隙を形成しておき、180℃5分間の加熱によって空隙周辺のポリマーを軟化させて空隙の形状を変化させ、ポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、空隙の大きさを特定範囲にする方法などが挙げられる。
【0017】
本発明の第1のフィルムは、180℃5分間加熱処理後における、AFMで求めたポリマーA層の算術平均粗さをRa2(nm)とした際に、機能性膜を製造するための工程基材として使用した場合に機能性膜の平滑性、加熱後の剥離性を良好とする観点から下記式(III)を満足することが好ましい。
6≦(Rm2/Ra2)≦15・・・(III)
ここで、Ra2(nm)は、以下の通り求めた値とする。BrukerAXS製「NanoScopeV Dimension Icon」などのAFM(原子間力顕微鏡)において、シリコンカンチレバーを探針として適用し、タッピングモードにて、180℃5分間加熱処理を行ったフィルムの表面形状を計測した後、AFMに付属のソフトウェア(例えば、NanoScope Analysisなど)を用いて、カットオフ3nmの条件にて算術平均粗さを算出した。このような測定を5回繰り返し、5回の測定値の平均値を求める。なお、測定方向(探針の走査方向)は、任意の一方向、および任意の一方向と直交する方向の計2方向について測定を行い、各方向での算術平均粗さの平均値(すなわち、任意の一方向の5回の測定値と、任意の一方向と直交する方向の5回の測定値の合計10回の測定値の平均値)をRa2(nm)として採用する。(Rm2/Ra2)は、ポリマーA層における、180℃5分間加熱処理後のAFMでの最大高さを180℃5分間加熱処理後のAFMでの算術平均粗さで除した値であり、(Rm2/Ra2)が小さいほどAFMにおける算術平均粗さに対する最大高さが小さい、すなわち、AFMにて求めた凹凸の最大高さの山とその他の山の高さの差が小さい傾向を示す。また、(Rm2/Ra2)が大きいほどAFMにおける算術平均粗さに対する最大高さが大きい、すなわち、AFMにて求めた凹凸の最大高さの山とその他の山の高さの差が大きい傾向を示す。機能性膜を製造するための工程基材としてフィルムを適用する場合において、(Rm2/Ra2)が小さすぎると、最大高さの山以外の山が全体的に低くなり、機能性膜との加熱後の剥離性が不十分な場合があり、(Rm2/Ra2)が大きすぎると、最大高さの山以外の山も全体的に高くなり、機能性膜の平滑性が不十分となる場合がある。そのため、本発明のフィルムは、(Rm2/Ra2)を式(III)の範囲とすることで、機能性膜の平滑性、加熱後の剥離性を高い範囲で両立することが可能となる。さらには、(Rm2/Ra2)は、機能性膜の表面形状と相関が見られる値であり、機能性膜同士を積層して使用する用途(たとえば、チップ積層セラミックコンデンサやチップインダクタなどの回路部材用途)においては、Rm2(nm)やRa2(nm)ではなく、(Rm2/Ra2)を式(III)の範囲とすることで、機能性膜同士を積層した際の積層部分の空隙を適切な範囲とすることができ、機能性膜を積層体とした際のの各種特性(例えば、積層時の小型化、低背化など)を良好とすることもできる。本発明のフィルムの(Rm2/Ra2)は、機能性フィルムの剥離性と平滑性を両立させる観点から、7以上14以下がより好ましく、8以上12以下が特に好ましい。
【0018】
(Rm2/Ra2)を所望の範囲にするための方法としては、ポリマーA層を2種類以上のポリマーを組み合わせた構成とし、ポリマーA層を延伸させた後、ポリマーA層に含まれるポリマーの中で低融点のポリマーのみを180℃5分間の加熱により変形させてポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、ポリマーA層全体に対する低融点のポリマーの濃度、ポリマーA層の厚みを特定範囲に調整する方法、ポリマーA層に結晶性ポリマーを含む構成とし、UV処理やプラズマ処理などによりポリマーA層に微結晶を形成させ、180℃5分間の加熱によって、微結晶周辺の非晶部分のみを熱運動させてポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、UV処理やプラズマ処理などの表面処理条件とポリマーA層中の結晶性ポリマーの濃度を調整する方法、ポリマーA層に、微小な空隙を形成しておき、180℃5分間の加熱によって空隙周辺のポリマーを軟化させて空隙の形状を変化させ、ポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、空隙の大きさを特定範囲にする方法などが挙げられる。
【0019】
本発明の第1のフィルムは、AFMで求めたポリマーA層の算術平均粗さをRa1(nm)とした際に、機能性膜を製造するための工程基材として使用した場合に、加熱後の剥離性を良好とする観点から、下記式(IV)を満たすことが好ましい。
(Rm2/Ra2)-(Rm1/Ra1)>0・・・(IV)
ここで、Ra1(nm)は、以下の通り求めた値とする。BrukerAXS製「NanoScopeV Dimension Icon」などのAFM(原子間力顕微鏡)において、シリコンカンチレバーを探針として適用し、タッピングモードにて、フィルムの表面形状を計測した後、AFMに付属のソフトウェア(例えば、Nano Scope Analysisなど)を用いて、カットオフ3nmの条件にて算術平均粗さを算出した。このような測定を5回繰り返し、5回の測定値の平均値を求める。なお、測定方向(探針の走査方向)は、任意の一方向、および任意の一方向と直交する方向の計2方向について測定を行い、各方向での算術平均粗さの平均値を、Ra1(nm)として採用する。フィルムを加熱する前の値である(Rm1/Ra1)と比較して、180℃5分間処理後の値である(Rm2/Ra2)を大きくすることで、加熱後の最大高さ以外の山の高さが大きくなったり、もしくは加熱後の最大高さの山が低くなるため、ポリマーA層と機能性膜の層間歪みを形成しやすくでき、加熱後の剥離性を良好とすることができる。
【0020】
(Rm1/Ra1)、(Rm2/Ra2)について、(IV)式の関係を満たすための方法としては、ポリマーA層を2種類以上のポリマーを組み合わせた構成とし、ポリマーA層を延伸させた後、ポリマーA層に含まれるポリマーの中で低融点のポリマーのみを180℃5分間の加熱により変形させてA層表面に歪みを形成させる方法において、低融点のポリマーの種類や濃度を特定成分とする方法、ポリマーA層に結晶性ポリマーを含む構成とし、UV処理やプラズマ処理などによりポリマーA層に微結晶を形成させ、180℃5分間の加熱によって、微結晶周辺の非晶部分のみを熱運動させてポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、UV処理やプラズマ処理などの表面処理条件とポリマーA層中の結晶性ポリマーの濃度を調整する方法、ポリマーA層に、微小な空隙を形成しておき、180℃5分間の加熱によって空隙周辺のポリマーを軟化させて空隙の形状を変化させ、ポリマーA層表面に歪みを形成させる方法において、空隙の大きさを特定範囲にする方法などが挙げられる。
【0021】
[第2のフィルム]
本発明の第2のフィルムは、ポリマーA層を少なくとも片面に有するフィルムであって、ポリマーA層の表面自由エネルギーをSE1(mN/m)、180℃5分間加熱処理後における、ポリマーA層の表面自由エネルギーをSE2(mN/m)とした際に、下記式(a)を満足することが重要である。
SE1-SE2>0mN/m・・・(a)
ここで、SE1(mN/m)、SE2(mN/m)は、以下の通り求めた値とする。23℃、65%RHの条件下で24時間調湿したフィルムについて、接触角計(協和界面化学製CA-D型)を使用して、水、エチレングリコ-ル、ホルムアミド、及びヨウ化メチレンの4種類の測定液を用い、協和界面化学(株)製接触角計CA-D型を用いて、フィルム表面に対する静的接触角を求めた。それぞれの液体について得られた接触角と測定液の表面張力の各成分を下式にそれぞれ代入し、4つの式からなる連立方程式をγL 、γ+ 、γ- について解いた。
【0022】
(γL γj
L )1/2 +2(γ+ γj
-)1/2 +2(γj
+γ-)1/2 =(1+cosθ)[γj
L +2(γj
+ γj
- )1/2]/2
ただし、γ=γL +2(γ+ γ- )1/2γj =γj
L +2(γj
+γj
- )1/2ここで、γ、γL 、γ+ 、γ- は、それぞれ、フィルム表面の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを、また、γj 、γj
L 、γj
+ 、γj
- は、それぞれ、用いた測定液の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターをあらわすものとする。
【0023】
ここで用いた各液体の表面張力は、Oss("Fundamentals ofAdhesion", L.H.Lee(Ed.), p153, Plenum ess, New York(1991))によって提案された表7の値を用いた。
【0024】
本発明における、180℃5分間熱処理とは、機能性膜の工程基材としてフィルムを使
用した際に、機能性膜の乾燥、機能性向上のために生じるフィルムへの加熱を模した処理であり、たとえば、180℃に設定した熱風循環方式のコンベアオーブンにフィルムを5分間かけて搬送する処理を指す。また、フィルムを搬送する際には、2枚の金属枠でフィルムを挟み込んだ後、金属枠を金属クリップで固定することで、フィルムが直接コンベアに接触しないようにして行うものとする。
【0025】
本発明において、式(a)は、ポリマーA層の表面自由エネルギーが180℃5分間の熱処理後に小さくなることを示している。ポリマーA層の表面自由エネルギーを加熱後に小さくすることで、例えば、本発明のフィルムが機能性膜と積層された構成であった場合に、機能性膜を製造する際の密着性と、乾燥等による加熱後での機能性膜の剥離性を両立できることを見出した。
【0026】
SE1-SE2を式(a)の範囲にするための方法としては、ポリマーA層に、疎水性部分を含むポリマーを少量含有させ、疎水性部分を含むポリマーをポリマーA層の島側に配置し、加熱後に疎水性部分をフィルム表面に配列させる方法などが挙げられる。なお、ポリマーA層の海島構造は、公知の方法にてフィルムの染色を行った後、断面TEM観察などによって確認することが可能である。
【0027】
本発明の第2のフィルムは、機能性膜を製造するための工程基材として使用した場合に、機能性膜の平滑性、加熱後の剥離性を良好とする観点から、下記式(b)を満足することが好ましい。
0.5mN/m≦(SE1-SE2)≦40mN/m・・・(b)
本発明のフィルムは、(SE1-SE2)を0.5mN/m以上とすることで、加熱後の剥離性が良好となる。(SE1-SE2)は、加熱後の剥離性をより良好とする観点から、2mN/mがより好ましく、5mN/m以上が特に好ましい。また、(SE1-SE2)を40mN/m以下とすることで、加熱後に剥離性が必要以上に高くなり、加工中に機能性膜との剥がれ、浮きの発生を防止することができる。(SE1-SE2)は、機能性膜の剥離性や加工中の剥がれ、浮きの発生抑制をより良好とする観点から、30mN/m以下がより好ましい。
【0028】
(SE1-SE2)を式(b)の範囲にするための方法としては、ポリマーA層に、疎水性部分を含むポリマーを少量含有させ、疎水性部分を含むポリマーをポリマーA層の海島構造の島側に配置し、加熱後に疎水性部分をフィルム表面に配列させる方法において、疎水性部分を含むポリマーのポリマーA層に対する重量比率、疎水性部分を含むポリマーの疎水性部分の比率の調整を行う方法などが挙げられる。さらには、加熱前にコロナ処理などの各種表面処理を行っておくと、疎水性部分が表面に引き出されるため、加熱後に表面自由エネルギーが低下しやすくなる。そのため、本来はフィルムの親水化で用いられるような各種表面処理(コロナ処理、プラズマ処理、UV処理など)も、加熱後にポリマーA層を疎水化させて、式(b)の範囲にするための方法としては有効である。
【0029】
本発明のフィルムは、下記式(c)を満たすことが、機能性膜の塗布性、機能性膜の加熱後の密着性の観点から好ましい。
25mN/m≦SE1≦70mN/m・・・(c)
SE1は加熱前のポリマーA層の表面自由エネルギーであり、25mN/m以上であると、機能性膜のポリマーA層に対する塗布性が良好となることから好ましく、より好ましくは35mN/m以上、特に好ましくは42mN/m以上である。また、加熱後のポリマーA層と機能性膜の剥離性を考慮すると、加熱前においてもSE1は70mN/m以下であることが好ましく、48mN/m以下がより好ましい。
【0030】
SE1を所望の範囲にする方法としては、ポリマーA層の組成、各種表面処理により調整を行う方法などが挙げられる。本発明の第2のフィルムは、180℃5分間加熱処理後における、ポリマーA層の分散力をSd2、極性力をSp2とした際に、下記式(d)の関係を満たすことが、機能性膜の均質性の観点から好ましい。
【0031】
23mN/m≦(Sd2-Sp2)≦36mN/m・・・(d)
ここで、(Sd2-Sp2)は、表面自由エネルギーの極性に関わる値であり、(Sd2-Sp2)が小さいほど、ポリマーA層の極性が高く、(Sd2-Sp2)が大きいほど、ポリマーA層の極性が低くなることを示す。本発明の第2のフィルムは、加熱後にポリマーA層の極性を低くすることで、機能性材料を塗布する際に、機能性材料の極性部分がポリマーA層の極性部分と近づこうとして機能性膜の分散性が不均一になることを抑制することができ、機能性膜の各種機能を良好とすることができる。なお、(Sd2-Sp2)は、後述する実施例の方法にてSd2(mN/m)、Sp2(mN/m)をそれぞれ算出し、これらの差から求めることができる。(Sd2-Sp2)は、機能性膜の機能をより良好とする観点から、17mN/m以上27mN/m以下がより好ましい。(Sd2-Sp2)を式(d)の範囲とする方法としては、ポリマーA層の組成、各種表面処理の調整を行う方法などが挙げられる。具体的には、ポリマーA層に含有される疎水性部分を含むポリマーの固有粘度を、ポリマーA層の主成分のポリマーの固有粘度よりも0.5以上低くして、加熱後に疎水性成分がフィルム表面に顕在化しやすいように疎水性部分を含むポリマーの運動性を相対的に高くしておき、かつ、フィルム製膜時の延伸後の熱処理温度を、ポリマーA層の融点を超えない範囲でできるだけ高温に設定し、さらに、コロナ処理、UV処理などの各種表面処理を、従来フィルムの濡れ性を向上させるような条件と比較して非常に弱い条件にて実施し、疎水性部分を含むポリマーに各種機能性膜との密着性を損なわない範囲で運動エネルギーを与える方法などが挙げられる。
【0032】
[第1および第2のフィルム]
本発明の第1および第2のフィルムにおいて、ポリマーA層を構成する樹脂は、本発明の各種要件を満たす範囲において特に限定はされないが、たとえば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂にカルボン酸や無水マレイン酸などの側鎖(金属イオンに置換された構造を含む)を有する変性ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびこれらにエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ブタンジオール以外のグリコール成分や、テレフタル酸以外のカルボン酸成分を共重合させたポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体といったフッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)系樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン共重合体)系樹脂などが挙げられる。
【0033】
これらの中でも、180℃の加熱において大きな変形が起こらない観点やコストの観点から、ポリマーA層の主成分は、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0034】
本発明におけるポリエステル系樹脂とは、ジカルボン酸由来の構造単位(ジカルボン酸成分)とジオール由来の構造単位(ジオール成分)のエステル結合により結合されるポリマーを指す。
【0035】
ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、および、各種芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸とのエステル誘導体が挙げられる。これらのジオール成分はエチレングリコール以外に1種類のみでもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
また、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルビド、スピログリコールなどを挙げることができる。これらのジカルボン酸成分はエチレングリコール以外に1種類のみでもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらのジカルボン酸成分、ジオール成分の中でも、耐溶剤性、耐熱性の観点から、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましく、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、スピログリコールが好ましく用いられる。
【0037】
[第1のフィルム]
本発明の第1のフィルムのポリマーA層は、AFMにて求めたポリマーA層の最大高さを加熱後に大きくする観点から、主成分のポリマーと異なるポリマーを1種類以上含有している構成が好ましい。主成分のポリマーと異なるポリマーとしては、相溶性の低い部分を加熱で運動させてポリマーA層と機能性膜の界面に歪みを形成させる観点からは、主成分のポリマーと相溶性が高い部分と相溶性が低い部分の両方の構成を有するポリマーが好ましく選定される。また、主成分のポリマーと異なるポリマーは、加熱時にポリマーA層の主成分のポリマーとの配向緩和の差をより大きくしてポリマーA層と機能性膜の界面に歪みを形成させやすくするため、主成分のポリマーより融点が低いことが好ましい。主成分のポリマーと異なるポリマーは、主成分のポリマーよりも融点が15℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。また、主成分のポリマーは、融点を有しない非晶性のポリマーでも構わないが、非晶性ポリマーの場合は、180℃での加熱でもフィルムの変形が起きないよう、ポリマーA層100質量%に対して20質量%以下の濃度であることが好ましい。また、主成分のポリマーと異なるポリマーとして、ポリマーA層に微小な空隙を形成しておき、加熱後に空隙の形状を変化させてポリマーA層と機能性膜の界面に歪みを形成させる観点からは、ポリマーA層の主成分のポリマーと相溶性が低いポリマーであり、かつ溶融粘度が近いポリマーが好ましく選定される。
【0038】
本発明の第1のフィルムのポリマーA層の一例として、主成分がポリエステル系樹脂であり、ポリエステル系樹脂の中でもポリエチレンテレフタレートである場合、主成分のポリマーと相溶性が高い部分と相溶性が低い部分の両方の構成を有するポリマーとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレートとポリオキシアルキレングリコールのブロック共重合体(ポリブチレンテレフタレートがポリエチレンテレフタレートと相溶性が高い部分であり、ポリオキシアルキレングリコールがポリエチレンテレフタレートと相溶性が低い部分)、各種変性ポリオレフィン系樹脂(変性させた官能基がポリエチレンテレフタレートと相溶性が高い部分であり、ポリオレフィン部分がポリエチレンテレフタレートと相溶性が低い部分)などが挙げられる。また、主成分のポリマーと相溶性が低いポリマーとしては、各種ポリオレフィン系樹脂で、主成分のポリマーの溶融押出温度にて主成分のポリマー(今回の例ではポリエチレンテレフタレート)と近い溶融粘度特性を有するポリマーなどが挙げられる。
【0039】
[第2のフィルム]
本発明の第2のフィルムのポリマーA層は、加熱後の表面自由エネルギーを低下させる観点から、主成分のポリマーと異なるポリマーを1種類以上含有している構成が好ましい。主成分のポリマーと異なるポリマーとしては、表面自由エネルギーを加熱後に低くする観点とフィルム品位を両立させる観点からは、主成分のポリマーと相溶性が高い部分と相溶性が低い部分の両方の構成を有し、相溶性が低い部分が相溶性が高い部分に対して疎水性であるポリマーが好ましく選定される。
【0040】
本発明の第2のフィルムのポリマーA層の一例として、主成分がポリエステル系樹脂であり、ポリエステル系樹脂の中でもポリエチレンテレフタレートである場合、主成分のポリマーと相溶性が高い部分と相溶性が低い部分の両方の構成を有するポリマーとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレートとポリオキシアルキレングリコールのブロック共重合体(ポリブチレンテレフタレートがポリエチレンテレフタレートとの相溶性が高い部分であり、ポリオキシアルキレングリコールがポリエチレンテレフタレートと相溶性が低い部分)、各種変性ポリオレフィン系樹脂(変性させた官能基がポリエチレンテレフタレートとの相溶部分)などが挙げられる。一方で、加熱前の各種表面処理と組み合わせる場合においては、ポリエチレンテレフタレートに、ポリオキシアルキレングリコールなど、ポリエチレンテレフタレートと相溶性が低い構造を直接共重合させる方法も、加熱後の表面自由エネルギーをより低下させる観点からは好ましい。
【0041】
[第1および第2のフィルム]
本発明の第1、第2のフィルムは、機能性膜の外観や、平滑性に伴う特性を向上させる観点から、180℃5分間加熱後のポリマーA層の光沢度(60°)が30以上であることが好ましい。ここで、光沢度(60°)とは、入射角が60°の条件における光沢度を指す。機能性膜は、電磁波を反射させる特性や、機能性膜同士を複数枚積層させて回路部材とする際の各種電気特性を良好とする場合は平滑であることが好ましく、機能性膜の巨視的な視点での平滑性の指標として、機能性膜を転写させるポリマーA層の光沢度を好ましく用いることができる。180℃5分間加熱後のポリマーA層の光沢度(60°)は、50以上がより好ましく、70以上がさらに好ましく、80以上が特に好ましい。また、ポリマーA層側の光沢度(60°)は、機能性膜の取扱い性の観点から、200以下が好ましく、155以下がより好ましい。
【0042】
180℃5分間加熱後のポリマーA層の光沢度(60°)を所望の範囲とするための方法としては、ポリマーA層に巻取り性付与のために含有させている各種粒子の種類、大きさを調整する方法が挙げられる。
【0043】
本発明の第1、第2のフィルムは、フィルムの打痕や異物巻き込み時の痕を抑制し、機能性膜の品位を良好とする観点から、ポリマーA層の押し込み弾性率が800N/mm2以上6,000N/mm2以下であることが好ましい。ここで、押し込み弾性率は、ナノインデンテーション法と呼ばれる、微小領域や薄膜の硬さ、弾性率が測定可能な評価手法であり、押し込み弾性率が高いと厚み方向の微小変形に対する回復がしやすくなり、フィルムが衝撃を受けたり異物を巻き込んだ状態で重ねられたりしても打痕や異物巻き込み時の痕が生じにくくなることから、フィルムの表面品位を良好とし、転写される機能性膜の表面品位を良好とすることができる。
【0044】
本発明の第1、第2のフィルムにおいて、ポリマーA層の押し込み弾性率を800N/mm2以上6,000N/mm2以下にするための方法としては、フィルムの組成(融点、2種類以上の原料のアロイ)、製造条件(二軸延伸処理、および当該処理における延伸温度や延伸倍率など)による調整を行う方法などが挙げられる。
【0045】
本発明の第1、第2のフィルムは、機能性材料を塗布して機能性材料層の薄膜(機能性膜)を得るための工程基材として使用した際に、取扱い性を良好とする観点から、主配向軸方向、および主配向軸と直交する方向において引裂き伝播抵抗が4.0N/mm以上12.0N/mm以下であることが好ましい。ここで、引裂き伝播抵抗とは、JIS K-7128-2-1998に沿って測定した値を指し、数値が大きいほど引き裂けにくいことを示す。また、本発明における主配向軸は、マイクロ波分子配向計を用いて求めた方向であり、主配向軸と直交する方向は、マイクロ波分子配向計を用いた主配向軸方向を元にして求めた方向とする。なお、フィルムの主配向軸とは、フィルムを構成するポリマーの分子鎖が最も強く配向している面内の方位であり、マイクロ波分子配向計以外の一般的な測定方法としては、自動複屈折計(王子計測機器製「KOBRA」シリーズなど)、アッベ屈折計(アタゴ製「DR-A1」シリーズ、「NAR」シリーズなど)等で求めることが可能である。また、二軸配向フィルムは一般的に主配向軸と直交する方向が最も分子鎖の配向が弱い面内の方位となることから、フィルム面内で最も分子鎖の配向が強い方向と弱い方向の二方向の引裂き伝播抵抗を求めることで、引裂き伝播抵抗のフィルム面内の最も高い値と最も低い値を確認できる。すなわち、フィルムの引裂き抵抗の上限と下限がわかることから、いずれの方向にも取り扱い性が良好なことが確認可能となる。
【0046】
引裂き伝播抵抗は、工程基材として使用した際の取扱い性を良好とする観点から、4.5N/mm以上がより好ましく、5.5N/mm以上が特に好ましく、6.0N/mm以上が最も好ましい。また、本発明のフィルムは加工後の機能膜の剥離性を良好とする観点から、引裂き強度が9.8N/mm以下であることがより好ましい。フィルムの引裂き強度を4.0N/mm以上12.0N/mm以下の範囲とする方法としては、フィルムを構成する主成分のポリマーより低融点のポリマーを少量しか含まない層、あるいは低融点のポリマーを含まない層をフィルム中に有する積層構成とし、当該層がフィルム全体厚み100%として、50%以上95%以下の厚みを有する構成とし、フィルム総厚みを特定範囲とする方法が挙げられる。
【0047】
本発明の第1、第2のフィルムは、工程基材として使用した際に、塗布性、加工後の剥離性、傷付き性を良好とすることができるため、導電性、磁性を有する各種材料やセラミック部材等の回路部材、光学部材など各種機能性膜の製造工程用途として好ましく使用できる。
【0048】
本発明における、機能性膜を構成する機能性材料とは、材料の持つ様々な物理的特性、化学的特性に基づき機能を発現させることを目的として各種製品に用いられる材料を指し、感光性や感熱性などの特徴を有する高分子材料、接着剤、粘着材、光学材料、セラミック、金属材料、磁性材料などが例として挙げられる。
【0049】
感光性や感熱性などの特徴を有する高分子材料としては、紫外線やレーザーなどの光、あるいは熱で硬化するアクリル系樹脂などが挙げられ、各種レジスト材料や印刷インク、プラスチック材料の表面保護用途などで好ましく用いられる。
【0050】
接着剤、粘着材としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ系樹脂などの材料が挙げられ、半導体チップの封止材や導電性接着剤、ディスプレイなどの電子部材のシール材、半導体チップ製造時のダイシングテープ、メッキのマスキングテープなどの加工用途などで好ましく用いられる。
【0051】
光学材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂など透明性、位相差特性などに特徴のある材料が挙げられ、光ディスク、フラットパネルディスプレイなど情報の記録、表示、伝送を担う光学材料向け用途などで好ましく用いられる。
【0052】
セラミックとしては、チタン酸バリウムやアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、ゼオライトなど、誘電特性や耐熱性に特徴のある材料が挙げられ、スマートフォンなど各種デジタル電子機器で使用される、コンデンサやインダクタ、回路基板材料用途などで好ましく用いられる。
【0053】
金属材料としては、銀、胴、鉄など、導電性、放熱性、電磁波遮蔽性、バリア性に特徴のある材料が挙げられ、金属転写箔用途などで好ましく用いられる。
【0054】
磁性材料としては、フェライトやパーマロイなど、磁界中で磁力が発生したり変形したり、あるいは電気抵抗が変化する特徴を有する材料が挙げられ、インダクタやノイズ抑制、無線通信、無線給電用途などで好ましく用いられる。
【0055】
[第1および第2のフィルム]
次に、本発明の第1、第2のフィルムの好ましい製造方法を、ポリマーA層としてポリエステル系樹脂を選定した場合の例として以下に説明する。本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0056】
はじめに、ポリマーA層を構成する原料をベント式二軸押出機に供給して溶融押出する。ポリマーA層とポリマーA層以外の層を積層させる場合は、ポリマーA層に用いるポリエステルAと、ポリマーA層以外の層に用いるポリエステル原料とをそれぞれ別々のベント式二軸押出機に供給し溶融押出する。また、異なる組成のポリマーA層同士を積層させる場合は、各ポリマーA層に用いるポリエステルAを、それぞれ別々のベント式二軸押出機に供給し溶融押出するが、以下においては、ポリマーA層と、ポリマーA層以外の層(ポリマーB層とする)を積層した構成として説明する。溶融押出を行う際は、押出機内を流通窒素雰囲気下で、酸素濃度を0.7体積%以下とし、樹脂の押出温度は、各層のうち最も融点が高い樹脂の融点より5℃~40℃高く設定することが好ましく、融点が観測されない非晶性樹脂のみの場合は、溶融粘度や溶融状態を見ながら例えば180℃~270℃の範囲内で調整することが好ましい。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、ポリマーA層とポリマーB層を合流させた後、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリマーAのガラス転移点~(ガラス転移点-20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステル系樹脂を使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0057】
また、本発明の第1のフィルムにおいて、ポリマーA層を2種類以上のポリマーを組み合わせた構成とする場合は、押出機の溶融ゾーンからも原料投入が可能となる、いわゆるサイドフィード方式の押出機がポリマーA層の押出機として好ましく用いられる。また、低融点のポリマーが過度に加熱され溶融粘度が低くなってしまい、ポリマーA層を不均一な構成となることを防止する観点から、ポリマーA層に含まれるポリマーの中で低融点のポリマーをサイドフィード側から投入する方法が好ましく用いられる。
【0058】
本発明の第1、第2のフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向させることが好ましく、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことが好ましい。フィルムの二軸配向状態は、たとえばポリエチレンテレフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂を主成分とする構成のフィルムの場合、アッベ屈折計などでフィルム面内の主配向軸方向、フィルム面内の主配向軸と直交する方向、およびフィルムの厚み方向それぞれの屈折率を測定し、フィルムの厚み方向の屈折率が最も小さくなっていることから確認することができる。
【0059】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、長手方向に、好ましくは、2.7倍以上4倍以下、さらに好ましくは3倍以上3.5倍以下が採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また長手方向の延伸温度は、80℃以上130℃以下が好ましい。また、幅方向の延伸倍率としては、好ましくは2.8倍以上4倍以下、より好ましくは、3倍以上3.8倍以下が好ましい。幅方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが好ましい。
【0060】
さらに、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行ってもよい。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は、二軸配向後の配向結晶を成長させて熱寸法性を向上させることが目的であるため、最も融点の高いポリマーA層の融点以下の範囲内で、なるべく高い熱処理温度に設定する場合が一般的である。
【0061】
また、本発明の第1のフィルムのポリマーA層において、ポリマーA層の主成分より融点の低いポリマーを少量含有させる構成とすることで、ポリマーA層の中で低配向のドメインを形成し、加熱後のポリマーA層の表面歪みを形成しやすい設計とすることができる。ポリマーA層が2種類以上のポリマーを組み合わせた構成とする場合は、ポリマーA層の主成分のポリマーと、ポリマーA層に含有される、主成分より融点の低いポリマーの配向差をつけておき、機能性膜の加工時に配向緩和の差によりポリマーA層と機能性膜の界面に歪みを形成させやすくする観点からは、二軸延伸の後のフィルムの熱処理温度は、融点の低いポリマーの融点より15℃以上30℃以下の温度であることが好ましい。
【0062】
また、本発明の第2のフィルムのポリマーA層において、ポリマーA層の主成分と異なるポリマー(主成分のポリマーと相溶性が高い部分と相溶性が低い部分の両方の構成を有し、相溶性が低い部分が相溶性が高い部分に対して疎水性であるポリマー)を少量含有させる構成とすることで、加熱後に主成分と異なるポリマーの相溶性が低い部分(疎水性部分)が表面に配列し、A層の表面自由エネルギーを低下させやすい設計とすることができる。
【0063】
また、本発明の第1、第2のフィルムは、機能性膜との加熱前の密着性、加熱後の剥離性をより良好とするために、ポリマーA層の表面に、コロナ処理やプラズマ処理、UV処理をはじめとした表面処理を行ったり、易接着層、離型層をフィルムの製造工程中にコーティングさせたりしてもよい。
【0064】
特に、本発明の第2のフィルムのポリマーA層に疎水部分を含むポリマーを含有している場合は、従来、フィルムの濡れ性を向上させるような条件と比較して非常に弱い条件にて実施し、疎水性部分を含むポリマーに、各種機能性膜との密着性を損なわない範囲で運動エネルギーを与える方法を用いることで、ポリマーA層の極性を特定範囲に制御して機能性膜の特性、品位を良好とすることができる。
【実施例】
【0065】
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次の通りである。なお、以下において、実施例1~5、8~12、25、29~31、34、35、36、37は、参考例1~5、8~12、25、29~31、34、35、36、37と読み替えるものとする。
【0066】
(1)ポリマーの組成
公知のポリマー組成分析手法(FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)、NMR(核磁気共鳴)など)によりポリマーA層の組成を求めた。ポリマーA層のうちポリエステルが含まれている場合においては、ポリマーA層をフィルムから削り取った後、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量した。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
【0067】
(2)固有粘度
公知のポリマー組成分析手法(FT-IR、NMRなど)によりポリマーA層がポリエステルである傾向が確認された場合においては、ポリマーA層をオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の固有粘度を評価した。
【0068】
(3)フィルム厚み、層厚み
フィルム厚みを測定する際は、ダイヤルゲージを用いて、フィルムから切り出した試料の任意の場所5ヵ所の厚みを測定し、平均値を求めた。層厚みを測定する際は、フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、各層の厚みを求めた。
【0069】
(4)融点
示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー(旧セイコー電子工業)製、EXTRA DSC6220)を用い、JIS K-7121-1987、JIS K-7122-1987に準拠して測定および、解析を行った。フィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。なお、積層フィルムの場合は、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の融点を測定し、複数の融点が観測された場合は、最も面積が大きな吸熱ピークを層の融点として採用した。
【0070】
(5)Rm1、Ra1
BrukerAXS製「NanoScopeV Dimension Icon」などのAFM(原子間力顕微鏡)において、シリコンカンチレバーを探針として適用し、タッピングモードにて、フィルム、もしくは180℃5分間加熱処理を行ったフィルムの表面形状を計測した。なお、走査範囲は3μm角とし、走査速度は0.4Hz、測定は室温(25℃)、大気中にて実施した。なお、測定の前処理として、フィルムを1cm角程度に切り出し、エポキシ樹脂でシリコンウェハに固定した後に測定を行った。その後、AFMに付属のソフトウェア(例えば、Nano Scope Analysisなど)を用いて、カットオフ3nmの条件にて最大高さ、算術平均粗さを算出し、それぞれにおいて5回の測定の平均値を計算した。測定方向(探針の走査方向)は、任意の一方向、および任意の一方向と直交する方向の計2方向にて測定を行い、各方向での最大高さ、算術平均粗さの各平均値(すなわち、任意の一方向の5回の測定値と、任意の一方向と直交する方向の5回の測定値の合計10回の測定値の平均値)をそれぞれRm1(nm)、Ra1(nm)として採用した。
【0071】
(6)Rm2、Ra2
A4サイズのフィルムを、A4サイズで四辺1cm幅以外がくり抜かれた厚み2mmのアルミニウム枠2枚で挟み込んだ後、アルミニウム枠を金属クリップで固定したサンプルを準備した。その後、180℃に設定したコンベア式オーブン(フジマック製FGJOA9H)にて、オーブン通過時間が5分になるように設定し、フィルムの熱処理を行った。上記方法によって得られた180℃5分間加熱後のフィルムについて、(5)と同様の方法にてAFMでの最大高さ、算術平均粗さを算出し、それぞれにおいて5回の測定の平均値を計算した。測定方向(探針の走査方向)は、任意の一方向、および任意の一方向と直交する方向の計2方向にて測定を行い、各方向での最大高さ、算術平均粗さの各平均値(すなわち、任意の一方向の5回の測定値と、任意の一方向と直交する方向の5回の測定値の合計10回の測定値の平均値)をそれぞれRm2(nm)、Ra2(nm)として採用した。
【0072】
(7)押し込み弾性率
ナノインデンター(エリオニクス製、ENT-2100)を用い、フィルムの一方に「アロンアルファ プロ用耐衝撃」(東亜合成製、接着剤)を1滴塗布し、サンプル固定台に固定して、残りの面を測定面として測定を行った。測定には稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いた。測定データは「ENT-2100」の専用解析ソフト(version 6.18)によりデータ処理を行い、押し込み弾性率を求めた。その後、測定面を逆にして同様の測定を実施し、両面の押し込み弾性率を求めた。
【0073】
(8)耐痕性
鉄板の上に置いた、5mm角のポリエステルフィルム片(東レ製、“ルミラー”S10(50μm))の上に、評価に用いるフィルムを10枚重ねの状態で被せた。その後、500gの錘(直径20mm、高さ28mmの円柱状)を、ポリエステルフィルム片が被さった位置に1時間放置した。その後、錘を取り除き、非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム製、VertScan2.0 RG300GL-Lite-AC)にてフィルムを1枚ずつ撮影し、付属の解析ソフトにより撮影画面を多項式4次近似にて面補正して表面形状の計測を実施した。合計10枚のうち、5μm以上の段差が確認されたフィルムの枚数について、下記基準にて評価を実施した。
なお、撮影に用いたカメラはSONY製HR-57(1/2インチ)を用い、波長フィルタは530nm white、測定ソフトウェアはVS-Measure Version5.5.1、解析ソフトウェアはVS-Viewer Version5.5.1をそれぞれ用いた。
A: 2枚以下
B: 3枚以上4枚以下
C: 5枚以上。
【0074】
(9)機能性膜との密着性(方法1)
フィルムのポリマーA層側に、機能性膜として、フェライト系スラリーを乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布した。なお、フェライト系スラリーとしては、軟磁性フェライト粉末(数平均粒子径0.7μm)100部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)社製「エスレック BM-S」)30部、可塑剤(フタール酸ジオクチル)5部、トルエン/エタノール混合溶媒(混合比率:6:4)200部よりなるスラリーを使用し、乾燥条件は100℃5分間とした。得られたフィルム/機能性膜(フェライト系スラリーを乾燥させて得られた層)の、機能性膜側に、日東電工製OPP粘着テープ(ダンプロンエースNo.375)を貼り合わせ、幅10mm、長さ150mmの矩形に切り出しサンプルとした。該サンプルの一部をフィルム/機能性膜層間で剥離し、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離100mm、引張速度を20mm/分として、180°剥離試験を行った。剥離長さ130mm(チャック間距離230mm)になるまで測定を行い、剥離長さ25mm~125mmの荷重の平均値を剥離強度とした。なお、測定は5回行い、その平均値を採用した。このようにして求めた剥離強度に対して、下記基準にて機能性膜との密着性を評価した。
A:0.030N/10mm以上、もしくは剥離不可
B:0.010N/10mm以上0.030N/mm未満
C:0.010N/10mm未満。
【0075】
(10)機能性膜との剥離性(方法1)(加熱後)
(9)と同様にフィルム/機能性膜層を作製したのち、(6)と同様にして180℃5分間の加熱処理を行った。その後は(9)と同様の方法にて剥離強度を算出した。その後、(9)で求めた剥離強度と、180℃5分間加熱処理を行った後の剥離強度を比較し、下記基準にて加熱後の剥離性向上効果を評価した。
A:180℃5分間加熱後に、剥離強度が0.01N/10mm以上低くなった、もしくは剥離不可だったものが剥離可能となった。
B:180℃5分間加熱後に、剥離強度が0.005N/10mm以上、0.01N/10mm未満低くなった。
C:180℃5分間加熱後に、剥離強度が0N/10mmを超えて0.005N/10mm未満低くなった。
D:180℃5分間加熱後に、剥離強度が変化しなかった、もしくは剥離強度が高くなった。
【0076】
(11)機能性膜の平滑性(方法1)
(10)と同様にしてフィルムから剥離した機能性膜について、ベック式平滑度試験機(熊谷理機工業株式会社製、HK型)を用いて、ガラスと機能性膜の隙間からの空気流入時間を測定し、下記基準にて評価した。なお、空気流入時間が長いと、機能性膜同士を積層しても空気が流入する隙間が少なく、機能性膜同士を積層して使用する用途において電気特性や部材の小型化で有利な指標である。なお、測定条件としては、測定面積が10cm2、ガラス上へ機能性膜を固定する加圧が100kPa、測定開始時の真空側圧力を0.05MPa、大気側の圧力を0.1MPaとし、0.051MPaから0.052MPaに圧力が変化する時間を空気流入時間とした。
A:20分以上
B:5分以上20分未満
C:1分以上5分未満
D:1分未満。
【0077】
(12)180℃5分間加熱後のポリマーA層の光沢度
(6)と同様にして180℃5分間の加熱処理を行ったフィルムについて、JIS Z-8741-1997に規定された方法に従って、スガ試験機製デジタル変角光沢度計UGV-5Dを用いて、ポリマーA層側の60°鏡面光沢度を測定した。測定はn=5で行い、最大値と最小値を除いた平均値を光沢度とした。なお、光沢度を測定する際には、黒画用紙(キングコーポレーション製、GK8012(厚み0.19mm))をフィルムの測定面の裏側に設置して測定を行った。
【0078】
(13)主配向軸方向、主配向軸方向と直交する方向
フィルムの任意の点において100mm×100mmの寸法でサンプルを切り出し、KSシステムズ(現王子計測機器)製のマイクロ波分子配向計MOA-2001A(周波数4GHz)を用い、ポリエステルフィルムの面内の主配向軸方向を求めた。また、得られた主配向軸方向を元に、主配向軸方向と直交する方向についても求めた。
【0079】
(14)引裂き伝播抵抗
重荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて、JIS K-7128-2-1998に沿って測定した。サンプルは、主配向軸方向、および主配軸方向と直交する方向にそれぞれ75mm×63mmとし、その75mmの辺の中央部の位置に端から20mmの深さの切れ込みを入れ、残り43mmを引き裂いたときの指示値を読みとって主配向軸方向の引裂力(N)を求めた。次に、指示値より読み取った主配向軸方向の引裂力(N)をフィルム厚み(mm)で除して主配向軸方向の引裂き伝播抵抗を求めた。なお、測定は10回ずつ行い、10回の平均値を採用した。また、測定サンプルを主配向軸方向と直交する方向、および主配軸方向にそれぞれ75mm×63mmとした以外は上記と同様に測定を行い、主配向軸方向と直交する方向の引裂き伝播抵抗を求めた。
【0080】
(15)表面粗さ
表面粗さ計(小坂研究所製、SE4000)を用いて両面について測定した。触針先端半径0.5μm、測定力100μN、測定長1mm、低域カットオフ0.200mm、高域カットオフ0.000mmの条件で測定し、JIS B0601-2001に準拠して算術平均粗さSRaを求めた。
【0081】
(16)破断伸度
(13)の方法で主配向軸方向、および主配向軸方向と直交する方向を求めた後、150mm×30mm(主配向軸方向×主配向軸方向と直交する方向)の矩形に切り出してサンプルを作製した。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)に試長(初期引張チャック間距離(Sa))が50mmとなるようにサンプルをセットし、引張速度300mm/分でサンプルが破断した際のチャック間距離(Sb)を求めた。Sa、Sbについて10回の測定を行い、10回の平均値を(Sb-Sa)/Sa×100の計算式で求めた値を主配向軸方向の破断伸度(%)とした。また、主配向軸方向と直交する方向の破断伸度(%)についても、150mm×10mm(主配向軸方向と直交する方向×主配向軸方向)の矩形サンプルを用いて測定を行って求めた。
【0082】
(17)破断強度
(16)の方法で主配向軸方向の破断伸度を求めた際に、サンプルが破断した際の応力を10回読み取り、10回の平均値を主配向軸方向の破断強度(MPa)とした。また、(16)の方法で主配向軸方向と直交する方向の破断伸度を求めた際に、サンプルが破断した際の応力を10回読み取り、10回の平均値を主配向軸方向と直交する方向の破断強度(MPa)とした。
【0083】
(18)加工性(方法1)
300mm幅、200m長(6インチ、350mm長コア巻)のフィルムを準備し、下記条件で、3インチ、350mm長コアに巻返しを行い、搬送速度、張力を変増加しながら下記の基準で評価を行った。
A:速度10m/分、搬送張力70N/mで巻き返しても破れが発生しなかった。
B:速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速10m/分、搬送張力70N/mに変更すると破れが発生した。
C:速度5m/分、搬送張力35N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返すと破れが発生した。
D:速度5m/分、搬送張力35N/mで巻き返しても破れが発生した。
【0084】
(19)表面自由エネルギーSE1
23℃、65%RHの条件下で24時間調湿したフィルムについて、接触角計(協和界面化学製CA-D型)を使用して、水、エチレングリコ-ル、ホルムアミド、及びヨウ化メチレンの4種類の測定液を用い、協和界面化学(株)製接触角計CA-D型を用いて、フィルム表面に対する静的接触角を求めた。それぞれの液体について得られた接触角と測定液の表面張力の各成分を下式にそれぞれ代入し、4つの式からなる連立方程式をγL 、γ+ 、γ- について解いた。
【0085】
(γL γj
L )1/2 +2(γ+ γj
-)1/2 +2(γj
+γ-)1/2 =(1+cosθ)[γj
L +2(γj
+ γj
- )1/2]/2
ただし、γ=γL +2(γ+ γ- )1/2γj =γj
L +2(γj
+γj
- )1/2ここで、γ、γL 、γ+ 、γ- は、それぞれ、フィルム表面の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターを、また、γj 、γj
L 、γj
+ 、γj
- は、それぞれ、用いた測定液の表面自由エネルギー、長距離間力項、ルイス酸パラメーター、ルイス塩基パラメーターをあらわすものとする。
【0086】
ここで用いた各液体の表面張力は、Oss("Fundamentals ofAdhesion", L.H.Lee(Ed.), p153, Plenum ess, New York(1991))によって提案された表1の値を用いた。なお、各測定液における静的接触角は、5回の測定の平均値を採用した。
【0087】
(20)表面自由エネルギーSE2
A4サイズのフィルムを、A4サイズで四辺1cm幅以外がくり抜かれた厚み2mmのアルミニウム枠2枚で挟み込んだ後、アルミニウム枠を金属クリップで固定したサンプルを準備した。その後、180℃に設定したコンベア式オーブン(フジマック製FGJOA9H)にて、オーブン通過時間が5分になるように設定し、フィルムの熱処理を行った。上記方法によって得られた180℃5分間加熱後のフィルムについて、(19)と同様の方法にて表面自由エネルギーを求め、SE2とした。
【0088】
(21)機能性膜との密着性(方法2)
フィルムのポリマーA層側に、機能性膜として、導電性ペーストを乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布した。導電性ペーストとしては、エポキシ系接着剤(東亞合成製“AS-60”)100質量部に、50%粒子径(メディアン径)が5.9μmの銀コート銅粉(福田金属箔粉工業製“Cu-HWQ5μm”)150質量部を混合したものを使用し、乾燥条件は100℃5分間とした。得られたフィルム/機能性膜(導電性ペーストを乾燥させて得られた層)の、機能性膜側に、日東電工製OPP粘着テープ(ダンプロンエースNo.375)を貼り合わせ、幅10mm、長さ150mmの矩形に切り出しサンプルとした。該サンプルの一部をフィルム/機能性膜間で剥離し、引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離100mm、引張速度を20mm/分として、180°剥離試験を行った。剥離長さ130mm(チャック間距離230mm)になるまで測定を行い、剥離長さ25mm~125mmの荷重の平均値を剥離強度とした。なお、測定は5回行い、その平均値を採用した。このようにして求めた剥離強度に対して、下記基準にて機能性膜との密着性を評価した。
A:0.030N/10mm以上、もしくは剥離不可
B:0.010N/10mm以上0.030N/mm未満
C:0.010N/10mm未満。
【0089】
(22)機能性膜との剥離性(方法2)(加熱後)
(21)と同様にフィルム/機能性膜を作製したのち、(20)と同様にして180℃5分間の加熱処理を行った。その後は(21)と同様の方法にて剥離強度を算出した。その後、(21)で求めた剥離強度と、180℃5分間加熱処理を行った後の剥離強度を比較し、下記基準にて加熱後の剥離性向上効果を評価した。
A:180℃5分間加熱後に、剥離強度が0.01N/10mm以上低くなった、もしくは剥離不可だったものが剥離可能となった。
B:180℃5分間加熱後に、剥離強度が0.005N/10mm以上、0.01N/10mm未満低くなった。
C:180℃5分間加熱後に、剥離強度が0N/10mmを超えて0.005N/10mm未満低くなった。
D:180℃5分間加熱後に、剥離強度が変化しなかった、もしくは剥離強度が高くなった。
【0090】
(23)機能性膜の均一性
(21)と同様にフィルム/機能性膜を作製したのち、機能性膜の表面比抵抗を測定し、下記基準にて評価した。機能性膜の組成が均一であれば、機能性膜に含有される金属が均一に分散し、電流が流れやすくなるので表面比抵抗は小さくなり、機能性膜が均一であることの指標となる。なお、表面比抵抗の測定方法としては、フィルムを200mm×200mmに切り取った後、23℃、相対湿度25%に調湿された部屋にて24時間放置後、その雰囲気下で、ポリマーA層側についてデジタル超高抵抗/微小電流系R8340A(アドバンテスト製)を用いて測定を行い、10回の平均値を求めたのち下記基準で評価した。
A:1.0×108Ω/sq以下
B:1.0×108Ω/sqを超えて1.0×1013Ω/sq以下
C:1.0×1013Ω/sqを超えて1.0×1015Ω/sq以下
D:1.0×1015Ω/sqを超えた値
(24)Sd2、Sp2
(20)と同様にして180℃5分間の加熱処理を行ったフィルムについて、分散力Sd2、極性力Sp2は、次にようにして求めた。まず、拡張Fowkes式とYoungの式から、下記式(e)を導いた。
〔拡張Fowkes式〕
γSL=γS +γL -2(γsd ・γLd )1/2 -2(γsD ・γLD )1/2 -2(γsh ・γLh )1/2
〔Youngの式〕
γS =γSL+γL cosθ
γS :固体の表面自由エネルギー
γL :液体の表面張力
γSL:固体と液体の界面の張力
θ :液体との接触角
γsd ,γLd :γS ,γL の分散力成分
γsD,γLD :γS ,γL の極性力成分
γsh ,γhL :γS ,γL の水素結合成分
(γsd ・γLd )1/2 +(γsD ・γLD )1/2 +(γsh ・γLh )1/2=γL (1+cosθ)/2 ・・・(e)
次に、表面張力の各成分が既知である4種類の液体について、180℃5分間の加熱処理を行ったフィルムとの接触角を測定し、式(e)に代入、各液体についての3元1次連立方程式を解くことで、180℃5分間の加熱処理を行ったフィルムの表面自由エネルギー中の分散力成分γsdをSd2、極性力成分γsDをSp2として採用した。連立方程式の解法には数値計算ソフト“Mathematica”を用いた。また、接触角の測定には、水、エチレングリコール、ホルムアミド、ヨウ化メチレンの測定液を用い、測定機は協和界面化学(株)製接触角計CA-D型を使用した。なお、各測定液における静的接触角は、5回の測定の平均値を採用した。
【0091】
(25)加工性(方法2)
300mm幅、200m長(6インチ、350mm長コア巻)のフィルムを準備し、下記条件で、3インチ、350mm長コアに巻返しを行い、搬送速度、張力を変増加しながら下記の基準で評価を行った。
A:速度10m/分、搬送張力70N/mで巻き返しても破れが発生しなかった。
B:速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速10m/分、搬送張力70N/mに変更すると破れが発生した。
C:速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返すと破れが発生した。
【0092】
(26)機能性膜の平滑性(方法2)
(22)と同様にしてフィルムから剥離した機能性膜について、蛍光灯の下に置き、視認される蛍光灯の像を下記基準で評価した。
A:蛍光灯の輪郭がはっきりと確認できた。
B:蛍光灯の輪郭がぼやけて見えるものの、蛍光灯の状態をほぼ確認できた。
C:蛍光灯の輪郭がほとんど確認できなかった。
【0093】
(27)主配向軸方向、主配向軸方向と直交する方向
フィルムの任意の点において100mm×100mmの寸法でサンプルを切り出し、KSシステムズ(現王子計測機器)製のマイクロ波分子配向計MOA-2001A(周波数4GHz)を用い、ポリエステルフィルムの面内の主配向軸方向を求めた。また、得られた主配向軸方向を元に、主配向軸方向と直交する方向についても求めた。
本発明のフィルムの製造には下記の樹脂を使用した。
【0094】
(ポリエステル1)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂を製造後、数平均粒子径2.2μmのシリカ粒子をポリエチレンテレフタレート樹脂100質量%に対して0.04質量%含有させた、粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.63、融点255℃)。
【0095】
(ポリオレフィン2)
無水マレイン酸が結合されている変性ポリオレフィン系樹脂として、三洋化成製“ユーメックス”1001(融点142℃)を用いた。
(ポリエステル3)
ポリブチレンテレフタレート90質量%と、ポリテトラメチレングリコールを10質量%とをブロック共重合させたポリエステル系樹脂(固有粘度1.1、融点215℃)を用いた。
【0096】
(ポリオレフィン4)
ポリプロピレン系樹脂として、住友化学製R101(MFR=19、融点163℃)を用いた。
【0097】
(ポリオレフィン5)
環状ポリオレフィン系樹脂として、ポリプラスチックス製“TOPAS”8007F-04(融点なし)を用いた。
【0098】
(ポリオレフィン6)
ポリエチレン系主鎖に、メタクリル酸(カルボン酸)の水素イオンの一部を金属イオンに置換した側鎖が結合されている変性ポリオレフィン系樹脂として、三井デュポンポリケミカル製“ハイミラン”1707(融点90℃)を用いた。
【0099】
(アクリル7)
DIC製“ファインタック”CT-3088を74質量%に対して、熱膨張性微小球(マイクロスフェアF-50)を26質量%含有させた樹脂塗剤を用いた。
(ポリエステル8)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂を製造後、数平均粒子径3.5μmのシリカ粒子をポリエチレンテレフタレート樹脂100質量%に対して5質量%含有させた、粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.63、融点255℃)。
(ポリエステル9)
ポリブチレンテレフタレート85質量%と、ポリテトラメチレングリコールを15質量%とをブロック共重合させたポリエステル系樹脂(固有粘度1.0、融点213℃)を用いた。
(ポリエステル10)
ポリブチレンテレフタレート90質量%と、ポリテトラメチレングリコールを10質量%とをブロック共重合させたポリエステル系樹脂(固有粘度1.4、融点218℃)を用いた。
(ポリエステル11)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂を製造後、数平均粒子径3.5μmのシリカ粒子をポリエチレンテレフタレート樹脂100質量%に対して20質量%含有させた、粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65、融点255℃)。
【0100】
(ポリエステル12)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂を製造後、数平均粒子径2.2μmのシリカ粒子をポリエチレンテレフタレート樹脂100質量%に対して0.04質量%含有させた、粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.63)。
【0101】
(ポリオレフィン13)
無水マレイン酸が結合されている変性ポリオレフィン系樹脂として、三洋化成製“ユーメックス1001”を用いた。
【0102】
(ポリエステル14)
ポリブチレンテレフタレート90質量%と、ポリテトラメチレングリコールを10質量%とをブロック共重合させた樹脂(固有粘度0.57)を用いた。
【0103】
(ポリオレフィン15)
ポリプロピレン系樹脂として、住友化学製“R101”(MFR=19)を用いた。
【0104】
(ポリオレフィン16)
環状ポリオレフィン系樹脂として、ポリプラスチックス製“TOPAS8007F-04”を用いた。
【0105】
(アクリル17)
DIC製“ファインタックCT-3088”74質量%に、熱膨張性微小球(マイクロスフェアF-50)を26質量%含有させた樹脂塗剤を用いた。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が90モル%、イソフタル酸成分が10モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合
ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7、融点230℃)。
【0106】
(ポリエステル18)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が99.3モル%、テトラメチレングリコールが0.7モル%である、テトラメチレングリコール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を製造後、数平均粒子径2.2μmのシリカ粒子をポリエチレンテレフタレート樹脂100質量%に対して0.04質量%含有させた、粒子含有ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0107】
(ポリエステル19)
ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンテレフタレートのブロック共重合させた樹脂として、東レデュポン製“ハイトレル”7247を用いた。
【0108】
(実施例1)
組成を表の通りとして、ポリエステル1を酸素濃度を0.2体積%としたベント同方向二軸押出機の通常フィーダーに供給し、ポリオレフィン2を、同方向二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、ポリマーA層の押出機のシリンダー温度を280℃で溶融し、短管温度を280℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向へ延伸温度85℃で長手方向に3.5倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度85℃で1.5秒予熱を行い、延伸温度100℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理温度を245℃として熱処理を行った。なお、幅方向に5%縮めながら熱処理を行い、フィルム厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0109】
(実施例2,3、6、7、8、9、11、18、19、20、21)
組成、製造条件を表のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0110】
(実施例4)
組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給した。ポリマーA層についてはポリエステル1を通常フィーダーに供給し、ポリオレフィン2を、サイドフィーダーから供給しポリマーA層の押出機のシリンダー温度を280℃に設定して原料を溶融させた。ポリマーB層については、ポリエステル1を通常フィーダーに供給し、押出機シリンダー温度を280℃に設定して原料を溶融させた。その後、それぞれの押出機にて溶融させたポリマーA層、ポリマーB層の原料について、フィードブロック内でA層/B層の2層構成になるよう合流させた以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0111】
(実施例5、13、14、15、16、17、22、23、24、25、26,27、28、29、30、31、32、33、34、35、36)
各層の厚みを表の通りとした以外は、実施例4と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0112】
(実施例10)
アクリル7を、二軸配向ポリエステルフィルムである東レ製“ルミラー”S10(100μm)に塗工し、80℃で3分間乾燥を行って、ポリエステルフィルムとアクリル7の積層フィルムを得た。
【0113】
(実施例12)
ポリエステル1とポリオレフィン2をいずれも通常フィーダーから供給した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0114】
(実施例37)
組成を表の通りとした以外は、実施例12と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0115】
(比較例1、2)
組成、製造条件を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
(参考実施例1)
組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%としたベント同方向二軸押出機に供給し、ポリマーA層の押出機のシリンダー温度を280℃で溶融し、短管温度を280℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向へ延伸温度85℃で長手方向に3.5倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度85℃で1.5秒予熱を行い、延伸温度100℃で幅方向に3.5倍延伸し、そのままテンター内にて、幅方向に5%縮めながら、245℃の熱処理温度にて熱処理を行った。その後、得られたフィルムに、コロナ表面処理の照射強度の目安であるE値(=処理強度(W)/(処理電極幅(m)×コロナ表面処理時のフィルム搬送速度(m/分))を1W・分/m2に設定してコロナ表面処理を行い、フィルム厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0123】
(参考実施例2,3、6、7、8、11、15、16、20、21)
組成、製造条件を表の通りに変更した以外は、参考実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0124】
(参考実施例4、10、12)
組成、製造条件を表の通りとし、コロナ表面処理におけるE値を60W・分/m2とした以外は、参考実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
(参考実施例5)
コロナ表面処理のE値を50W・分/m2に変更した以外は、参考実施例4と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0126】
(参考実施例13、17、18)
組成、製造条件を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、ポリマーA層の押出機のシリンダー温度を280℃、B層押出機シリンダー温度を280℃で溶融し、フィードブロック内でA層/B層の2層構成になるよう合流させた以外は、参考実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0127】
(参考実施例9)
アクリル6を、二軸配向ポリエステルフィルムである東レ製“ルミラー”S10(100μm)に塗工、80℃で3分間乾燥を行って、ポリエステルフィルムとアクリル17の積層フィルムを得た。
【0128】
(参考実施例14)
組成、製造条件を表の通りとして、コロナ表面処理を行わなかった以外は、参考実施例1と同様にして二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0129】
(参考実施例19)
組成、製造条件を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、ポリマーA層の押出機のシリンダー温度を280℃、B層押出機シリンダー温度を280℃で溶融し、フィードブロック内でA層/B層/A層の3層構成になるように合流させた以外は、参考実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0130】
(参考比較例1、2)
組成、製造条件を表の通りに変更した以外は、参考実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の第1、第2のフィルムは、加熱前の密着性、加熱後の剥離性を良好にできることから、機能性材料を塗布して機能性材料の薄膜(機能性膜)を得るための工程基材として好ましく用いられる。