(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】電子通貨取引システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20230816BHJP
G06Q 20/38 20120101ALI20230816BHJP
【FI】
G06Q20/06
G06Q20/38 320
(21)【出願番号】P 2019034775
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉井 靖典
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰明
(72)【発明者】
【氏名】由水 葵
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-107589(JP,A)
【文献】特開2002-163581(JP,A)
【文献】特表2001-525087(JP,A)
【文献】ブロックチェーンを用いた地域活性化,[online],2018年07月19日,第1-5頁,[2020年5月18日検索], インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20180719063511/http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2017 /2017-10-1.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費者と、商品またはサービスを取り扱う提供者との間で当該商品の対価として取引可能な電子通貨を用いる電子通貨取引システムであって、
前記電子通貨は、券種の額面を所定の最小分割数とする複数の券種を有し、
前記電子通貨
を、発行手段によって前記額面のそれぞれに対応したデジタルコンテンツを関連付けて発行
し、前記電子通貨に関連付けられた前記デジタルコンテンツのハッシュ
を、前記デジタルコンテンツにアクセスするための情報として
記憶装置に格納
する発行手段と、
前記商品または前記サービスの前記対価と、支払われた前記額面との差額を前記複数の券種の何れかを用いて支払う釣銭支払い手段
と、
を有することを特徴とする電子通貨取引システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子通貨取引システムであって、
前記発行手段は前記額面を前記デジタルコンテンツに紐づけるための定義付手段を含むことを特徴とする電子通貨取引システム。
【請求項3】
請求項
1または
2に記載の電子通貨取引システムであって、
前記電子通貨を識別可能な資産として分散型台帳に記録するための記録手段を有することを特徴とする電子通貨取引システム。
【請求項4】
請求項
1乃至
3の何れか1つに記載の電子通貨取引システムであって、
前記消費者の所持する電子通貨を前記券種の額面ごとに記録することを特徴とする電子通貨取引システム。
【請求項5】
請求項
1乃至
4の何れか1つに記載の電子通貨取引システムであって、
前記券種を前記額面毎に表示する表示手段を有し、
前記表示手段は、前記消費者の所持する前記券種の数量がゼロになったとき、当該券種に紐づけられたデジタルコンテンツを、数量が1以上のデジタルコンテンツとは識別可能に表示することを特徴とする電子通貨取引システム。
【請求項6】
請求項
5に記載の電子通貨取引システムであって、
前記表示手段は、前記券種のうち、支払いに使用可能なデジタルコンテンツとして、数量が1以上のコンテンツのみ操作対象として表示することを特徴とする電子通貨取引システム。
【請求項7】
券種の額面を所定の最小分割数とする複数の券種を有する電子通貨を、前記額面のそれぞれに対応したデジタルコンテンツを関連付けて発行し、
前記電子通貨に関連付けられた前記デジタルコンテンツのハッシュを、前記デジタルコンテンツにアクセスするための情報として記憶装置に格納する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子通貨、プログラム及び電子通貨取引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
利用者の所持する電子機器上に保存されて、商品の対価として利用可能な通貨として取引できる電子通貨が知られている。
こうした電子通貨においては、一般に事前に法定通貨等でデポジットして入金された金額と同じ金額を価値として有する電子情報が与えられ、取引の際には当該金額から商品の価額を差し引いた値を残金として保存する。
このような電子通貨においては、どれだけの量を使用したかが直感的に分かりにくく、また使用感も現金とは異なっていた。また、現金と同じようなコレクション性があるとは言い難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、コレクション性を備える新規な電子通貨の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するため、本発明にかかる電子通貨は、消費者と、商品またはサービスを取り扱う提供者との間で当該商品の対価として取引可能な電子通貨であって、前記電子通貨は、最小分割数によってのみ分割可能な複数の券種を有し、前記券種のそれぞれに前記電子通貨と対応したデジタルコンテンツが関連付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、コレクション性を備える新規な電子通貨を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態における電子通貨取引システムの構成の一例を示す概念図である。
【
図2】本発明の実施形態における表示手段の画面構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明における電子通貨の額面の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示した電子通貨取引システムの動作の一例を示す図である。
【
図5】本発明における第2の実施形態の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態として、電子通貨50を用いた電子通貨取引システムの構成の一例を
図1に示す。
電子通貨取引システム100は、消費者たる利用者Pと、商品を販売する提供者たる加盟店Qと、電子通貨50の発行者あるいは配布者たる両替所Rと、の各端末11P、11Q、11Rをネットワーク9で互いに接続することで構成される電子取引システムであり、電子通貨50を通貨として商品と取引可能な決済手段である。
電子通貨取引システム100は、電子通貨50を所定の最小分割数に沿って分割可能な状態で発行するための通貨発行手段たる発行手段10と、利用者Pの端末11Pにインストールされて電子通貨50の残額を記憶するための記憶手段たるアプリ12と、加盟店Qにおいてアプリ12を提示して商品を購入する際に、アプリ12から電子通貨50を引き出すとともに、引き出された電子通貨50と商品の価格との差額を電子通貨50の釣銭として支払う釣銭支払い手段20と、を有している。
電子通貨取引システム100においては、電子通貨50は所謂ブロックチェーンと呼ばれる分散台帳方式で記憶され、電子通貨50は、本実施形態では代替可能性のあるファンジブルトークンと、代替不可能なノンファンジブルトークンとが組み合わされたコンポーザブルノンファンジブルトークンとして与えられる一連の文字コードで表される。このような電子通貨50の仕組みについては後に詳述する。
ここで「ファンジブルトークン」とは、同一の規格の電子通貨50において代替可能な価値を有し、トークンが同一価値であるため互換性があるものを指す。
一方、本実施形態における電子通貨50は、後述するように額面54として示される代替可能な価値に加えて、固有の代替不可能なコンテンツ51が価値として組み合わされたデータ構造となっているため、「ノンファンジブルトークン(NFT)」であると言える。
【0008】
電子通貨取引システム100を構成する各端末11P、11Q、11R、および発行手段10は、本実施形態においてはそれぞれ図示しないCPU(Central Processing Unit)、メインメモリ(MEM-P)、ノースブリッジ(NB)、サウスブリッジ(SB)を有しているコンピュータ端末である。
各端末11P、11Q、11R、および発行手段10はまた、図示しないHDD(Hard Disk Drive)、PCIバス、ネットワークI/Fを有している。
【0009】
CPUは、メインメモリに展開されたプログラムに従って、データを加工・演算したり、上述した各手段の動作を制御したりするものである。メインメモリは各端末の記憶領域としてはたらき、各機能を実現させるためのプログラムやデータを記憶する。あるいはこのプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、FD、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0010】
HDDは、CPUの制御にしたがってデータの読み出し又は書き込みを制御する。ネットワークI/Fは、通信ネットワークを介して各端末11P、11Q、11R間においてデータを送受信する。
本実施形態においては発行手段10及び端末11Rをサーバーとし、特に端末11R上のHDDあるいはネットワークディスク上にコンテンツ51を記憶し、端末11P、端末11Qがそれぞれネットワーク9を介して端末11Rと接続されている態様として説明するが、かかる構成に限定されるものではなく、電子通貨取引システム100のハードウェア構成は、設計されるシステムの目的に合わせて適宜変更して良い。
【0011】
電子通貨50は、
図2に示すように、分割可能な最小分割数がそれぞれ異なる複数の券種を有している。例えばこれらの券種は、法定通貨の紙幣や硬貨と同様の額面とすることができるし、全く異なる分割数であっても良い。
ここでいう「分割可能な最小分割数」は券種に記載された額面であって、アプリ12に記憶された電子通貨50の残額からそれぞれの券種に対応した額面54の分だけ分割して支払い可能な数のことである。
具体的には、アプリ12には残額として各券種、例えば
図2のように5000円の券種と1000円の券種とが記憶されているときには、アプリ12に表示される残額の合計が6000円となり、最小分割数は1000円と5000円となる。かかる最小分割数は、発行手段10が発行した所定の券種毎に特有のものであって、発行するときに予め定められている。
【0012】
発行手段10は、任意の発行者からの指示に基づいて、電子通貨50を所定枚数、券種毎に定められた額面54に沿って発行するプログラムであっても良いし、当該プログラムに従って動作するコンピュータであっても良い。
発行手段10は、
図3(a)に示すように、絵や音楽等のデジタルデータとして製作されたデジタルコンテンツとしてのコンテンツ51と、
図3(b)に示すように当該コンテンツ51のデジタルデータから導出されたハッシュ52と、発行者情報53と、券種毎に設定された固有の最小分割数たる額面54と、を含むデータ構造を有するトークンを電子通貨50として生成する。
発行手段10は、かかるコンテンツ51に特有のハッシュ52をIPFS(Inter Planetary File System)のURIアドレスとして格納する。
このように、電子通貨50は、額面54と、URIアドレスとが関連付けられることで、額面54とコンテンツ51とが1対1で対応した状態でネットワーク9上に保存されている。
なお、発行手段10は、両替所Rの端末11Rが行っても良いし、電子通貨取引システム100上の別の端末であっても良く、かかる配置については適宜システム設計に合わせて変更して良い。
【0013】
アプリ12には、利用者Pが保管する電子通貨50のそれぞれの券種が、額面54毎に保存されている。
また、アプリ12は、電子通貨50のメタ・データ構造の中から、コンテンツ51の保管されたURIを取り出して当該URIを表示する表示機能を有している。
なお、アプリ12には、利用者Pが有する電子通貨50のそれぞれのコンテンツ51を表示するようなUIとしても良いし、額面54のみを表示する形式としても良く、アプリ12における電子通貨50の表示方法については限定されるものではない。
またアプリ12は、後述するような取引において、使用できない(残数がゼロとなった)券面の電子通貨50を残数が1以上の電子通貨50と比べて暗く表示するなど、使用可能か使用不可能かを明確に表示するとしてもよい。
【0014】
釣銭支払い手段20は、アプリ12等が加盟店Qにネットワーク9を介してつながる際に、商品の価格である対価55と、アプリ12において選ばれた単数あるいは複数の電子通貨50の額面54を確認する。
釣銭支払い手段20は、電子通貨50を受け取ると、かかる電子通貨50の額面54の総和から、加盟店Qで販売した商品の対価55を差し引いて、かかる差引金額を釣銭として、電子通貨50のそれぞれの額面54に分解して支払う。
釣銭支払い手段20は、かかる動作を行うように端末上に配置されたプログラムであっても良いし、かかるプログラムを利用して動作する端末であっても良い。最も好ましくは、加盟店Qの端末11Q上にインストールされたプログラムであり、アプリ12と通信によって情報をやり取り可能なプログラムである。
【0015】
このような電子通貨取引システム100を用いて支払いを行い、釣銭を受け取る場合のシステムの動作について
図4を用いて説明する。
まず、発行者からの依頼に基づいて、発行手段10が額面54の電子通貨50をトークンとして仮発行する(ステップS101)。
かかるステップS101は、電子通貨50の仮発行ステップであり、
図3に既に示したように、発行手段10が絵や音楽等のデジタルデータとして製作されたコンテンツ51と、当該コンテンツ51のデジタルデータから導出されたハッシュ52と、発行者情報53と、券種毎に設定された固有の最小分割数たる額面54と、を含むデータ構造を有するトークンを電子通貨50として生成する。
【0016】
ここで『トークン』とは例えば英数字や二進数等を用いて表現された一連のデータ構造であって、端末11間で送受信され、データ構造内部に埋め込まれた上述した情報を読み取り可能なデジタルデータを指す。
【0017】
本実施形態においては、コンテンツ51からハッシュ52を導出するとともに、かかるハッシュ52を『トークン』内に読み取り可能な情報として記録することを『紐づけ』と呼称する。
言い換えれば発行手段10は、電子通貨50そのものであるデータ構造としての『トークン』と、デジタルコンテンツたるコンテンツ51と、を紐づけする定義付手段13を含んでいる。
【0018】
発行手段10は、コンテンツ51に特有のハッシュ52をIPFS(Inter Planetary File System)のURIアドレスとして格納する(ステップS102)。このとき格納されるのは、ネットワーク9内であれば何処でも良いし、端末11Rをサーバーとして、端末11R上に配置しても良い。
利用者Pが、法定通貨やその他金銭あるいは電子通貨によってデポジットを行うと、かかるデポジット金額によって定められた電子通貨50が、利用者Pのアプリ12に支払われて保存される(ステップS103)。
アプリ12は、かかるデポジットされた電子通貨50の残額を、額面54と当該額面54を有する電子通貨50の枚数として記憶する。
【0019】
アプリ12は、利用者Pが所有する電子通貨50から、
図3に示したようなメタ・データを読み取り、額面54とその枚数などを取得する(ステップS104)。なお、かかるステップS104においてコンテンツ51のアドレス等を読み取り、アプリ12の画面上に表示するとしても良い。
本実施形態のアプリ12上においては、利用者Pは電子通貨50の額面54と、枚数と、が確認できるようになっており、さらにかかる額面54と対応するコンテンツ51が確認できるようになっている。
具体的には、アプリ12はステップS102においてURIアドレスとして格納されたハッシュ52から、コンテンツ51へとアクセスすることができる。このように、アプリ12は、額面54の異なる券種に対応したデジタルコンテンツを表示する表示手段としての機能を有している。
また、このようなアプリ12は、一般には利用者Pの携帯端末である端末11Pにインストールされる態様であるから、かかる表示手段も一般的には携帯端末上に存在することとなるが、かかる構成に限定されるものではない。
【0020】
このような電子通貨を所持する利用者Pが、加盟店Qにおいて電子通貨50を用いて商品の購入を行うときには、利用者Pの端末11Pと加盟店Qの端末11Qとの間でネットワーク9を介して通信を行う。
このとき、端末11Qは決済手段として、商品の対価55を提示する(ステップS105)。
利用者Pは、アプリ12上において、端末11Qから提示された対価55に基づいて、額面54の合計値が対価55以上の数となるように支払いに使用する電子通貨50の券種を選択する(ステップS106)。
ステップS105において支払われるべき券種が全て選択されると、アプリ12は電子通貨50を使用したものとして支払い情報を端末11Qへ送信し、支払い決済が行われる(ステップS107)。
【0021】
ステップS107における支払い決済処理は、アプリ12または端末11Qを介して電子通貨50のブロックチェーン上に取引記録が記録されるとともに、アプリ12において当該額面54の券種が指定の枚数だけ使用されたとみなす。
すなわち、利用者Pの所持する電子通貨50の全金額のうち、支払いに用いられた電子通貨50については、ステップS105で選択された券種のそれぞれに使用済のチェックが記録される。
このときかかる端末11Qあるいはアプリ12は、商品の対価55に対して電子通貨50を支払うことで決済を行う決済手段としての機能を有している。
【0022】
釣銭支払い手段20は、購入した商品の価格である対価55の数字と、アプリ12において選ばれた単数あるいは複数の電子通貨50の額面54の合計を確認し、差額として釣銭を算出する(ステップS108)。
釣銭支払い手段20は、ステップS107において算出された差額を端末11Qの有する複数の額面54の券種のうち何れかを用いてアプリ12に支払いを行う(ステップS109)。
このとき、端末11Qの所持する電子通貨50の中からどの券種(あるいはデジタルコンテンツ)を受け取るかを利用者Pがアプリ12を介して選択しても良いし、ランダムで配布されるとしても良い。
【0023】
具体的には、対価55が3000円の商品を買う場合に、額面54が10000円の券種を用いて支払いを行うこととすれば、7000円分の電子通貨50を、1000円の額面54の券種2つと5000円の額面54の券種1つとを『釣銭』として支払う。
すなわち、端末11Qは、ステップS107において受信した支払い情報に示される電子通貨50の総量から、取引対象の対価55に対応する総量を差し引き、差分量がある場合、差分量をいずれの額面54の組み合わせで返還するかを決定して支払いに関する決済処理を行う処理部としての機能を有している。
【0024】
このように釣銭の支払いが行われると、釣銭支払い手段20はかかる電子通貨50の取引をブロックチェーン上に記録する(ステップS110)。
アプリ12は支払われた『釣銭』として受け取った券種について、コンテンツ51を取得して表示する。
アプリ12は他の取引の有無について確認を行い(ステップS111)、他の取引が生じた場合にはステップS104に戻って同様の処理をサブルーチンとして繰り返す。
【0025】
以上最も基本的な電子通貨50を用いた商品の取引方法について述べたが、かかる支払いは、サービスの対価として支払われるものであっても良い。
このように、額面54に対してデジタルコンテンツたるコンテンツ51が紐づいていることとすれば、例えば発行者Kは自身の著作物を用いて自由にデジタルコンテンツと紐づけられた電子通貨50を発行することが可能となる。
また、電子通貨50にはその内部にハッシュ52がデータ構造として含まれているから、コンテンツ51と紐づいた形で記憶される。さらに、コンテンツ51がハッシュ52に基づいて導出されるURI上に配置されるから、かかる電子通貨50の特定の券種を表す一連のデータによってのみコンテンツ51を入手することができる。
【0026】
さらに、ハッシュ52の元となる電子通貨50のデータ構造の中には、発行者の情報である発行者情報53が含まれているから、コンテンツ51の偽造を抑制することができる。
【0027】
さて、従来の仮想通貨等の電子通貨取引システムにおいては、対価と同じだけの電子通貨を支払うことが前提であった。
しかしながら、本実施形態においては、釣銭支払い手段20を有することによって、単にデジタルデータのやり取りによって商品またはサービスの提供を得るのみならず、『釣銭』を受け取ることで、所持していなかった電子通貨50の券種についても取引を介して得ることが可能となる。
言い換えると、本実施形態においては、電子通貨取引システム100は利用者Pと加盟店Qとの間の取引において、商品(またはサービス)の対価55の支払いにあたり、対価55と支払う額面54とが不均衡かつ額面54の方が大きい第1の取引をまず行い、次に第1の取引における対価55と額面54との差額を釣銭として支払う第2の取引を行うことで第1の取引によって生じた不均衡を解消する。
このように、デジタルコンテンツと額面54とを紐づけた上で、電子通貨50において現金決済と同様に『釣銭』を算出するための釣銭支払い手段20を備えることによれば、電子通貨50自体に蒐集性の付加価値を生ずることができる。
さらに、かかる蒐集性によって電子通貨50を用いた取引を活発にさせる効果を奏する。
【0028】
本実施形態においては、電子通貨50は利用者Pと、商品またはサービスを取り扱う加盟店Qとの間で商品の対価55として取引可能な電子通貨であって、電子通貨50は、額面54で指定される最小分割数によってのみ分割可能な複数の券種を有し、券種のそれぞれに電子通貨50と対応したデジタルコンテンツ51が関連付けられている。
【0029】
また本実施形態においては、券種には、それぞれに割り当てられるハッシュ52と、ハッシュ52を含むURI上に格納されたデジタルコンテンツとしてコンテンツ51とが与えられる。
かかる構成により、コンテンツ51と額面54とを紐づけられるから、電子通貨50に蒐集性を付加出来て、電子通貨50を用いた取引を活発化させることができる。
【0030】
また、本実施形態においては、電子通貨50はコンテンツ51のハッシュ52を基礎とするチェックディジットが含まれる。
かかる構成により、発行者以外の発行者情報を持つ電子通貨50を弾くことができるから、電子通貨50の偽造を抑制する。
【0031】
また本実施形態においては、発行手段10は額面54をコンテンツ51に紐づけるための定義付手段13を含んでいる。
かかる構成により、定義付手段13により額面54とコンテンツ51とがハッシュ52等を用いて紐づけされるから、電子通貨50がコンテンツ51を含む形で配布され、電子通貨50にコレクション性を付与することができる。
【0032】
また本実施形態においては、電子通貨50を所有者それぞれについて識別可能な資産として分散型台帳に記録するための記録手段を有する。
かかる構成により、電子通貨50をブロックチェーン上に記録することができるから、改ざん防止等に寄与する。
【0033】
また本実施形態においては、アプリ12は、利用者Pの所持する電子通貨50を券種の額面54ごとに記録する表示手段としての機能を有している。
かかる構成により、同一の額面54を持つ電子通貨50をファンジブルトークンとして扱うことができる。
【0034】
また本実施形態においては、券種を額面54毎に表示する表示手段としてのアプリ12を有し、アプリ12は、利用者Pの所持する券種の数量がゼロになったとき、当該券種に紐づけられたコンテンツ51を、数量が1以上の券種に紐づけられたコンテンツ51とは識別可能に表示する。
かかる構成により、アプリ12において、消費した券種と、未だ消費していない券種とが明示できるので、例えばコンテンツ51を釣銭として受け取る場合に券種や額面54の選択をしやすくすることができる。
また本実施形態においては、アプリ12は、電子通貨50の券種のうち、支払いに使用可能な券種として、アプリ12において利用者Pの所有する数量が1以上の券種のみ操作対象として表示する。
かかる構成により、所持していない券種について支払うことができなくなる。
【0035】
また、本発明の第2の実施形態として、電子チケット管理システム200についても説明を行う。
本実施形態においては、電子チケット60を購入し消費を行う利用者P’、電子チケット60の管理者R’、電子チケット60を確認して利用者P’が正しく電子チケット60を購入した者であることを確認するための確認者Q’として
図5に示している。
【0036】
本実施形態においては、発行手段10は、電子通貨50とともに電子チケット60の発行を行う。発行手段10は、それぞれの電子チケット60をデジタルコンテンツとして、第1の実施形態におけるコンテンツ51と同様の操作によって電子通貨50との紐づけを行い、電子通貨50を発行する。
すなわち、本実施形態においては、発行手段10は、電子チケット60と電子通貨50とを紐づける定義付手段としての機能を有している。
【0037】
利用者P’は、かかる電子チケット60と紐づけされた電子通貨50を、アプリ12を介してデポジットあるいは購入することによって、電子通貨50を取得する。
【0038】
利用者P’は、例えば会場などを訪れて、確認者Q’の端末11Q’によって読取を行う際に、電子通貨50を確認者Q’に対して支払うことで、サービスの対価55を支払うとともに、確認者Q’によって利用者P’の端末11P’に入場許可が与えられる。
本実施形態のように電子通貨50を電子チケット60と紐づけすることで、電子チケット60の取引手段として機能する。
【0039】
かかる電子通貨50には、電子チケット60がデジタルコンテンツとして紐づけられているから、かかる電子通貨50を購入することで、電子チケット60の授受が可能となる。
さらに、確認者Q’が端末11Q’を用いて電子通貨50の取引を行うことで、電子チケット60をチケットの半券としてアプリ12からアクセス可能に残したまま、電子チケット60の対価たる料金の支払いを電子通貨50を用いて行うことができる。
さらに、電子通貨50には、
図3で示したような発行者情報を含めることができるから、電子チケット60が真正なチケットであることをも確認することができる。
【0040】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0041】
例えば、本実施形態では、電子通貨の発行を行う発行者が存在する場合について説明したが、加盟店あるいはサービスの提供者が独自の電子通貨を発行する構成であっても良い。
【0042】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
P 消費者
Q 提供者
10 発行手段(定義付手段)
12 表示手段
13 定義付手段
50 電子通貨
51 デジタルコンテンツ
52 ハッシュ
53 発行者情報
54 最小分割数(額面)
55 対価
100 電子通貨取引システム