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特許7331399センサ設備装置及びその制御方法、車載装置及びその制御方法、並びに交通支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】センサ設備装置及びその制御方法、車載装置及びその制御方法、並びに交通支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230816BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230816BHJP
   H04W 8/00 20090101ALI20230816BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20230816BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/09 F
H04W8/00 110
H04W4/38
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019054106
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020154914
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145207
【弁理士】
【氏名又は名称】酒本 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】小川 明紘
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-199532(JP,A)
【文献】特開2009-134704(JP,A)
【文献】特開2003-151070(JP,A)
【文献】特開2007-334426(JP,A)
【文献】特開2009-059039(JP,A)
【文献】国際公開第2014/041826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、
前記センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、
無線通信装置と、
前記無線通信装置を介して前記センサデータの送信先を探索する探索装置と、
前記探索装置が送信先からの応答を受信したことに応答して、前記記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に前記無線通信装置を介して送信する送信装置とを含み、
前記探索装置は、前記通信装置を介して前記送信先を探索するための探索パケットを送信し、
前記探索パケットは、少なくとも前記センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様情報を含む、センサ設備装置。
【請求項2】
記探索パケットは、さらに、当該パケットが探索パケットであることを示す情報を含むヘッダと、前記センサデータのデータフォーマット情報とを含む、請求項1に記載のセンサ設備装置。
【請求項3】
前記探索装置は、前記探索パケットの送信による前記送信先の探索を反復して実行する探索反復装置を含み、
前記センサ設備装置はさらに、前記送信装置による前記送信先への前記センサデータの送信の開始後、前記探索反復装置が送信した前記探索パケットのいずれかに対する応答が所定時間内に受信されないことに応答して、前記送信装置による前記センサデータの送信を終了する送信終了装置をさらに含む、請求項2に記載のセンサ設備装置。
【請求項4】
無線通信装置と、
データ処理装置と、
前記無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、前記受信された通信の内容と、前記データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、前記センサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、
前記判定装置による判定にしたがって、前記通信に対する応答を返す処理と、前記通信に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、
前記応答装置が前記応答を返した後、前記無線通信装置が前記通信の送信元から受信したセンサデータを前記データ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力する交通支援装置とを含み、
前記センサデータの送信先を探索する前記通信は、前記センサデータの送信先を探索する探索パケットであり、
当該探索パケットは、少なくとも当該パケットが探索パケットであることを示す情報を含むヘッダと、前記センサデータのデータフォーマット情報と、前記センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様を特定する仕様情報とを含み、
前記判定装置は、
前記センサデータの前記データフォーマット情報に基づいて、当該データフォーマットのセンサデータを前記データ処理装置が処理可能か否かを判定する処理可否判定装置と、
前記仕様を前記データ処理装置が充足するか否かを判定する仕様充足判定装置と、
前記処理可否判定装置及び前記仕様充足判定装置による判定がいずれも肯定であるかそうでないかにしたがって、前記センサデータの受信を行うか否かを判定する受信可否判定装置とを含、車載装置。
【請求項5】
前記データ処理装置は、
1又は複数のコンピュータプログラムを記憶するプログラム記憶装置と、
前記プログラム記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムの任意の1つを実行するための中央演算処理装置と、
前記中央演算処理装置による処理結果を出力する出力装置とを含み、
前記1又は複数のコンピュータプログラムはそれぞれ、前記中央演算処理装置が所定のデータフォーマットのセンサデータを処理するためのコンピュータプログラムである、請求項に記載の車載装置。
【請求項6】
前記処理可否判定装置は、
前記データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータを処理するためのコンピュータプログラムが前記プログラム記憶装置に記憶されているか否かを判定するプログラム判定装置と、
前記プログラム判定装置による判定にしたがって、前記データフォーマット情報により指定されるデータフォーマットのセンサデータを前記データ処理装置が処理可能か否かを判定するフォーマット判定装置とを含む、請求項に記載の車載装置。
【請求項7】
前記処理可否判定装置は、
前記データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータを処理するために適切なコンピュータプログラムが前記プログラム記憶装置に記憶されているか否かを判定するプログラム記憶判定装置と、
前記プログラム記憶判定装置による判定が否定であることに応答して、前記無線通信装置を介して外部から前記適切なコンピュータプログラムを直ちに入手可能か否かを判定し、入手可能なときには当該コンピュータプログラムを入手して前記プログラム記憶装置に格納するプログラム入手装置と、
前記プログラム入手装置により前記適切なコンピュータプログラムが入手できたか否かにしたがって、前記データフォーマット情報により指定されるデータフォーマットのセンサデータを処理する能力が前記データ処理装置にあるか否かを判定する処理能力判定装置とを含む、請求項に記載の車載装置。
【請求項8】
前記車載装置はさらに、
当該車載装置を搭載した車両の予定移動経路を特定する予定移動経路特定装置と、
前記予定移動経路特定装置により特定された前記予定移動経路に沿って存在するセンサ設備装置が提供するセンサデータを処理するために適切なコンピュータプログラムが前記プログラム記憶装置に記憶されているか否かを判定する記憶プログラム判定装置と、
前記記憶プログラム判定装置により前記プログラム記憶装置に記憶されていないと判定されたコンピュータプログラムを外部から入手し、前記プログラム記憶装置に格納するプログラム入手装置とを含む、請求項に記載の車載装置。
【請求項9】
センサ設備装置と、
車載装置とを含む交通支援システムであって、
前記センサ設備装置は、
センサと、
前記センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、
無線通信装置と、
前記無線通信装置を介して前記センサデータの送信先を探索する探索装置と、
前記探索装置が送信先からの応答を受信したことに応答して、前記記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に前記無線通信装置を介して送信する送信装置とを含み、
前記車載装置は、
無線通信装置と、
データ処理装置と、
前記車載装置の前記無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、受信された前記通信の内容と、前記データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、前記センサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、
前記判定装置による判定にしたがって、前記車載装置の前記無線通信装置を介して前記通信に対する応答を返す処理と、前記通信に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、
前記応答装置が前記応答を返した後、前記車載装置の前記無線通信装置が前記通信の送信元から受信したセンサデータを前記データ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力する交通支援装置とを含み、
前記センサデータの送信先を探索する前記通信は、前記センサデータの送信先を探索する探索パケットであり、
当該探索パケットは、少なくとも当該パケットが探索パケットであることを示す情報を含むヘッダと、前記センサデータのデータフォーマット情報と、前記センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様を特定する仕様情報とを含み、
前記判定装置は、
前記センサデータの前記データフォーマット情報に基づいて、当該データフォーマットのセンサデータを前記データ処理装置が処理可能か否かを判定する処理可否判定装置と、
前記仕様を前記データ処理装置が充足するか否かを判定する仕様充足判定装置と、
前記処理可否判定装置及び前記仕様充足判定装置による判定がいずれも肯定であるかそうでないかにしたがって、前記センサデータの受信を行うか否かを判定する受信可否判定装置とを含む、交通支援システム。
【請求項10】
無線通信装置に接続されたコンピュータによるセンサ設備装置の制御方法であって、
コンピュータが、センサからセンサデータを取得するステップと、
コンピュータが、前記センサデータを記憶装置に格納するステップと、
コンピュータが、前記無線通信装置を介して前記センサデータを送信する送信先を探索するステップと、
コンピュータが、前記無線通信装置により、前記探索するステップの後の所定時間の間に送信先から応答の受信を試みるステップと、
コンピュータが、前記試みるステップで前記応答を受信したことに応答して、前記記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に前記無線通信装置を介して送信するステップとを含み、
前記センサデータの送信先を探索する前記通信は、前記センサデータの送信先を探索する探索パケットであり、
当該探索パケットは、少なくとも前記センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様を特定する仕様情報を含む、センサ設備装置の制御方法。
【請求項11】
無線通信装置に接続されたコンピュータによる、車載装置の制御方法であって、
前記無線通信装置がセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、コンピュータが、前記受信された通信の内容と、前記車載装置のデータ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、前記センサデータの受信を行うか否かを判定するステップと、
コンピュータが、前記判定するステップによる判定にしたがって、前記通信に対する応答を返す処理と、前記通信に対して応答しない処理とを選択的に実行するステップと、
前記選択的に実行するステップで前記応答を返した後に前記無線通信装置が前記通信の送信元から受信したセンサデータを、コンピュータが前記データ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力するステップとを含み、
前記センサデータの送信先を探索する前記通信は、前記センサデータの送信先を探索する探索パケットであり、
当該探索パケットは、少なくとも当該パケットが探索パケットであることを示す情報を含むヘッダと、前記センサデータのデータフォーマット情報と、前記センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様を特定する仕様情報とを含み、
前記判定するステップは、
前記センサデータの前記データフォーマット情報に基づいて、当該データフォーマットのセンサデータを前記データ処理装置が処理可能か否かを判定する処理可否判定ステップと、
前記仕様を前記データ処理装置が充足するか否かを判定する仕様充足判定ステップと、
前記処理可否判定ステップ及び前記仕様充足判定ステップにおける判定がいずれも肯定であるかそうでないかにしたがって、前記センサデータの受信を行うか否かを判定する受信可否判定ステップとを含む、車載装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、センサ設備装置及びその制御方法、車載装置及びその制御方法、並びに交通支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運行する際には、自車の動きだけではなく、他車の動きにも十分に注意する必要がある。車両に加えて、歩行者が存在している場合には特に注意が必要である。従来、図1に示すように、このような実空間50に存在する移動体を、LiDAR、カメラ等の多数のセンサで検知し、その属性(大人、子供、車両、二輪車等)を推定し、仮想空間上で予め準備された高精度な道路地図データを用いて交通状況俯瞰マップ52を作成する技術がある。
【0003】
このような交通状況俯瞰マップ52を作成するためには、多数のセンサの出力であるセンサデータを、それらセンサが搭載されている車両、及び、路側に設けられたカメラ等のインフラセンサ設備装置から収集する必要がある。そのために、第5世代移動通信システム(いわゆる「5G」)を用いることが考えられる。
【0004】
さらに、交通状況俯瞰マップ52の信頼性を高めるために、収集したデータを統合する必要があるが、複数のセンサから収集したデータを統合するのは、各センサの位置及び速度、及びそれらセンサの性能に相違があるためにかなり難しい。複数のセンサから収集したデータを高い信頼性で統合する技術が後掲の特許文献1に開示されている。
【0005】
図2に、特許文献1に開示された交通支援システムの概略構成を示す。図2を参照して、従来の交通支援システムは、例えば車両82及び車両84、並びにインフラセンサ設備装置80、歩行者が持つ携帯電話機等と、これらと基地局72を介して通信し、交通状況俯瞰マップ52を構築し維持する処理を行う交通支援サーバであるエッジサーバ70とを含む。車両82及び車両84はいずれも、周囲をスキャンし、周囲に存在する物体までの距離を検出する測距センサであるLiDAR(Light Detection and Ranging)92及び94、並びに図示しない各種センサをそれぞれ搭載している。車両82及び車両84の車載装置は、車両に搭載された各種センサからのセンサデータを、無線による基地局72との通信を介してエッジサーバ70にアップロードする。従来の交通支援システムでは、固定された位置にあるインフラセンサ設備装置80もまたLiDAR及びカメラ等のセンサを含む。例えばインフラセンサ設備装置80のLiDARは常に周囲をスキャンし、周囲の物体までの距離を検出し、インフラセンサ設備装置80のカメラは周囲をスキャンして画像を取得し、リアルタイムで無線による基地局72との通信を介してエッジサーバ70にセンサデータとしてアップロードする。
【0006】
エッジサーバ70は、その管理領域内にある車両82及び84、並びにインフラセンサ設備装置80等からリアルタイムで送信されてくるセンサ情報を一定周期で集中的に解析し、車両、人等の移動体とその属性、位置、移動速度等を検出する。エッジサーバ70は、このようにして検出された移動体に関する情報を、管理領域内にある車両の車載装置等に対する運転支援情報として基地局72等を介して無線通信により配信する。エッジサーバ70はこの解析処理及び運転支援情報の配信を一定周期で反復して行う。その結果、エッジサーバ70の管理領域内に存在する車両の車載装置は、その近傍の移動体に関する交通支援情報がほぼリアルタイムで利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-018284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された発明では、エッジサーバ70にその管理領域内の車載装置及びインフラセンサ設備装置等からのセンサデータを集中的にアップロードする。エッジサーバ70はそれらのセンサデータを集中的に解析し、解析結果に基づく交通支援情報を管理領域内の車載装置等に配信する。その結果、各車載装置では交通安全に資する交通支援情報を利用できるという効果がある。
【0009】
しかし、エッジサーバは多数の装置からのセンサデータを処理することが必要なため、高性能であることが必要であり、高価であるという問題がある。さらに、例えば山間部等、エッジサーバとの通信のための基地局がほとんど存在していない場合には、車両からエッジサーバによる交通支援が受けられないという問題もある。また、エッジサーバの交通支援の対象範囲に含まれないエリアでは、交通支援が受けられないという問題もある。
【0010】
それ故にこの発明の目的は、交通支援システムの中心となるサーバとの通信が難しい地域でも、コストをかけずに交通支援情報を利用できるセンサ設備装置及びその制御方法、車載装置及びその制御方法、並びに交通支援システムを提供することである。
この発明の他の目的は、交通支援システムの中心となるサーバによる交通支援の対象とならない地域でも、コストをかけずに交通支援情報を利用できるセンサ設備装置及びその制御方法、車載装置及びその制御方法、並びに交通支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の局面に係るセンサ設備装置は、センサと、センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、無線通信装置と、無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する探索装置と、探索装置が送信先からの応答を受信したことに応答して、記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に無線通信装置を介して送信する送信装置とを含む。
【0012】
本開示の第2の局面に係る車載装置は、無線通信装置と、データ処理装置と、無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、受信された通信の内容と、データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、センサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、判定装置による判定にしたがって、通信に対する応答を返す処理と、通信に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、応答装置が応答を返した後、無線通信装置が通信の送信元から受信したセンサデータをデータ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力する交通支援装置とを含む。
【0013】
本開示の第3の局面に係る交通支援システムは、センサ設備装置と、車載装置とを含む交通支援システムであって、センサ設備装置は、センサと、センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、無線通信装置と、無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する探索装置と、探索装置が送信先からの応答を受信したことに応答して、記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に無線通信装置を介して送信する送信装置とを含み、車載装置は、無線通信装置と、データ処理装置と、車載装置の無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、受信された通信の内容と、データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、センサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、判定装置による判定にしたがって、車載装置の無線通信装置を介して通信に対する応答を返す処理と、通信に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、応答装置が応答を返した後、車載装置の無線通信装置が通信の送信元から受信したセンサデータをデータ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力する交通支援装置とを含む。
【0014】
本開示の第4の局面に係るセンサ設備装置の制御方法は、無線通信装置に接続されたコンピュータによるセンサ設備装置の制御方法であって、コンピュータが、センサからセンサデータを取得するステップと、コンピュータが、センサデータを記憶装置に格納するステップと、コンピュータが、無線通信装置を介してセンサデータを送信する送信先を探索するステップと、コンピュータが、無線通信装置により、探索するステップの後の所定時間の間に送信先から応答の受信を試みるステップと、コンピュータが、試みるステップで応答を受信したことに応答して、当該送信先に無線通信装置を介して記憶装置に記憶されているセンサデータを送信するステップとを含む。
【0015】
本開示の第5の局面に係るコンピュータは、無線通信装置に接続されたコンピュータによる、車載装置の制御方法であって、無線通信装置がセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、コンピュータが、受信された通信の内容と、車載装置のデータ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、センサデータの受信を行うか否かを判定するステップと、判定装置による判定にしたがって、通信に対する応答を返す処理と、通信に対して応答しない処理とを選択的に実行するステップと、選択的に実行するステップで応答を返した後に無線通信装置が通信の送信元から受信したセンサデータを、コンピュータがデータ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本開示によれば、交通支援システムの中心となるサーバとの通信が難しい地域でも、コストをかけずに交通支援情報を利用できるセンサ設備装置及びその制御方法、車載装置及びその制御方法、並びに交通支援システムを提供できる。
【0017】
なお、本開示は、このような特徴的な処理部を備える装置として実現できるだけでなく、上に記載したような特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したりできる。また、装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、それら装置を含むシステムとして実現したりできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、現実の道路状況と道路状況俯瞰マップとの関係を模式的に示す図である。
図2図2は、交通支援のためにエッジサーバを使用する従来の交通支援システムの概略構成を示す図である。
図3図3は、本開示の第1の実施の形態に係るシステムの概略構成を示す模式図である。
図4図4は、本開示の第1の実施の形態に係るシステムにおける、インフラセンサ設備装置と、車両との間の通信シーケンスの1例を示す図である。
図5図5は、本開示の第1の実施の形態に係るシステムで使用される車両の構成を模式的に示す図である。
図6図6は、図5に示す車両に搭載された車載装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7図7は、本開示の第1の実施の形態に係るシステムで使用される、路側に設けられるインフラセンサ設備装置の構成を模式的に示す図である。
図8図8は、図7に示すインフラセンサ設備装置のハードウェア構成を模式的に示すブロック図である。
図9図9は、図8に示すマイクロプロセッサで実行される、センサデータを送信するためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
図10図10は、図7に示すインフラセンサ設備装置が送信するハローパケットの概略構成を示す図である。
図11図11は、図6に示すマイクロプロセッサが実行する、センサデータをアップロードするためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
図12図12は、本開示の第2の実施の形態に係るシステムが使用される環境を示す図である。
図13図13は、第2の実施の形態で使用される車載装置と他の装置との関係を示すブロック図である。
図14図14は、第2の実施の形態に係る車載装置のマイクロプロセッサが実行する、センサデータの解析アプリケーションの予測入手のためのプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[本開示の実施の形態の説明]
以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下の実施の形態の少なくとも一部を任意に組合せても良い。
【0020】
(1)本開示の第1の局面に係るセンサ設備装置は、センサと、センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、無線通信装置と、無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する探索装置と、探索装置が送信先からの応答を受信したことに応答して、記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に無線通信装置を介して送信する送信装置とを含む。
【0021】
探索装置によりセンサデータの送信先が見つかると、センサ設備装置の送信装置は、センサデータをその送信先に送信する。送信先の装置では、センサデータを使用して交通支援に用いることができる。センサデータを集約して解析するサーバが存在しなくても、センサ設備装置と無線通信可能な領域内に進入した車両等に搭載された装置では、コストをかけずにセンサ設備装置からのセンサデータを利用した交通支援情報を利用できる。
【0022】
(2)好ましくは、探索装置は、通信装置を介して送信先を探索するための探索パケットを送信し、探索パケットは、少なくとも当該パケットが探索パケットであることを示す情報を含むヘッダと、センサデータのデータフォーマット情報と、センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様情報とを含む。
【0023】
センサ設備装置と無線通信可能な領域内に進入した車両に搭載された車載装置等では、探索パケットを受信すると、そのヘッダからそのパケットが探索パケットであることを判定できる。さらにセンサデータのデータフォーマット情報と、センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様情報も探索パケットから知ることができる。したがって、車載装置等では、自己がそのセンサデータを処理できるか否かが判定できる。処理できない場合には探索パケットに対して応答しなければ無駄な通信が発生することはない。また処理可能であれば探索パケットに応答することでセンサデータを受信し、交通支援情報を利用できる。
【0024】
(3)より好ましくは、探索装置は、探索パケットの送信による送信先の探索を反復して実行する探索反復装置を含み、センサ設備装置はさらに、送信装置による送信先へのセンサデータの送信の開始後、探索反復装置が送信した探索パケットのいずれかに対する応答が所定時間内に受信されないことに応答して、送信装置によるセンサデータの送信を終了する送信終了装置をさらに含む。
【0025】
車載装置等が探索パケットに応答した場合、センサ設備装置から車載装置等にセンサデータが送信される。これが反復して行われるため、車載装置では最新のセンサデータによる交通支援情報を利用できる。例えば車載装置等がセンサ設備装置と無線通信可能な領域から離脱して車両が探索パケットに対して応答しなくなると、センサ設備装置は自動的にセンサデータの送信を終了する。無駄な通信は行われず、センサデータを有効に利用できる。
【0026】
(4)本開示の第2の局面に係る車載装置は、無線通信装置と、データ処理装置と、無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、受信された通信の内容と、データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、センサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、判定装置による判定にしたがって、通信に対する応答を返す処理と、通信に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、応答装置が応答を返した後、無線通信装置が通信の送信元から受信したセンサデータをデータ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力する交通支援装置とを含む。
【0027】
判定装置がセンサデータの送信先を探索する通信を受信すると、その通信の内容と、データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、判定装置がそのセンサデータを受信するか否かを判定する。受信しない場合には通信に応答しないことでセンサデータの送受信は行われず、無駄な通信が発生することはない。センサデータを受信すると判定された場合には、その通信に応答することで外部からセンサデータを受信し、データ処理装置でそのセンサデータを処理することで交通支援情報を生成し運転支援に利用できる。サーバ等の高性能な装置がなくても、センサデータを提供する装置と車載装置とがあれば、そのセンサデータを提供する装置の近傍ではその装置のセンサが得たセンサデータを利用して、低いコストで交通支援情報を利用できる。
【0028】
(5)好ましくは、センサデータの送信先を探索する通信は、センサデータの送信先を探索する探索パケットであり、当該探索パケットは、少なくとも当該パケットが探索パケットであることを示す情報を含むヘッダと、センサデータのデータフォーマット情報と、センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様を特定する仕様情報とを含み、判定装置は、センサデータのデータフォーマット情報に基づいて、当該データフォーマットのセンサデータをデータ処理装置が処理可能か否かを判定する処理可否判定装置と、仕様をデータ処理装置が充足するか否かを判定する仕様充足判定装置と、処理可否判定装置及び仕様充足判定装置による判定がいずれも肯定であるかそうでないかにしたがって、センサデータの受信を行うか否かを判定する受信可否判定装置とを含む。
【0029】
車載装置では、探索パケットを受信すると、そのヘッダからそのパケットが探索パケットであることを判定できる。さらにセンサデータのデータフォーマット情報と、センサデータを処理するための処理装置に対して要求される仕様情報も探索パケットから知ることができる。したがって、車載装置では、自己のデータ処理装置がそのデータフォーマットのセンサデータを処理するための仕様を従属しているか否かが判定できる。データ処理装置がセンサデータを処理できない場合には、探索パケットに対して応答しなければ無駄な通信が発生することはない。またデータ処理装置がセンサデータを処理可能であれば、探索パケットに応答することでセンサデータを受信し、データ処理装置で処理することで、車載装置が交通支援情報を利用できる。
【0030】
(6)より好ましくは、データ処理装置は、1又は複数のコンピュータプログラム(以下、「プログラム」という。)を記憶するプログラム記憶装置と、プログラム記憶装置に記憶されたプログラムの任意の1つを実行するための中央演算処理装置と、中央演算処理装置による処理結果を出力する出力装置とを含み、1又は複数のプログラムはそれぞれ、中央演算処理装置が所定のデータフォーマットのセンサデータを処理するためのプログラムである。
【0031】
データ処理装置のプログラム記憶装置は、プログラムを記憶している。各プログラムは所定のデータフォーマットのセンサデータを処理するためのものである。したがって、あるデータフォーマットのセンサデータをデータ処理装置が処理できるか否かについては、そのデータフォーマットのセンサデータを処理できるプログラムがプログラム記憶装置に記憶されているか否かを調べることで判定できる。またあるデータフォーマットのセンサデータを処理するためには、そのデータフォーマットのセンサデータを処理するためのプログラムをプログラム記憶装置に格納すればよい。
【0032】
(7)さらに好ましくは、処理可否判定装置は、データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータを処理するためのプログラムがプログラム記憶装置に記憶されているか否かを判定するプログラム判定装置と、プログラム判定装置による判定にしたがって、データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータをデータ処理装置が処理可能か否かを判定するフォーマット判定装置とを含む。
【0033】
データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータをデータ処理装置が処理できるか否かは、そのデータフォーマットのセンサデータを処理できるプログラムがプログラム記憶装置に記憶されているか否かをプログラム判定装置が調べることで判定できる。その判定にしたがって、データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータをデータ処理装置が処理可能か否かをフォーマット判定装置が判定できる。単純な基準によりセンサデータを処理できるか否かが判定でき、高度な処理は不要である。
【0034】
(8)好ましくは、処理可否判定装置は、データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータを処理するために適切なプログラムがプログラム記憶装置に記憶されているか否かを判定するプログラム記憶判定装置と、プログラム記憶判定装置による判定が否定であることに応答して、無線通信装置を介して外部から適切なプログラムを直ちに入手可能か否かを判定し、入手可能なときには当該プログラムを入手してプログラム記憶装置に格納するプログラム入手装置と、プログラム入手装置により適切なプログラムが入手できたか否かにしたがって、データフォーマット情報により指定されるデータフォーマットのセンサデータを処理する能力がデータ処理装置にあるか否かを判定する処理能力判定装置とを含む。
【0035】
データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータをデータ処理装置が処理できるか否かは、そのデータフォーマットのセンサデータを処理できるプログラムがプログラム記憶装置に記憶されているか否かをプログラム記憶判定装置が調べることで判定できる。必要なプログラムがプログラム記憶装置に記憶されていないと判定された場合には、プログラム入手装置が外部から適切なプログラムを直ちに入手できるか否かを判定する。入手可能な場合には、そのプログラムを入手してプログラム記憶装置に格納することで、データフォーマット情報により特定されるデータフォーマットのセンサデータをデータ処理装置が処理可能となる。必要なプログラムが入手できない場合には、データフォーマット情報で特定されるデータフォーマットのセンサデータはデータ処理装置では処理できない。処理能力判定装置はこれらの判定を行って、センサデータを受信するか否かを判定する。プログラム記憶装置に必要なプログラムが記憶されていない場合、可能であればそのプログラムを入手し、プログラム記憶装置に格納する。多くのデータフォーマットのセンサデータを処理できる可能性が高くなり、そのための判定も単純な基準で行える。その結果、交通支援を行うサーバとの通信が困難な地域でも、センサデータを利用できるようになり、そのために必要なコストも低廉なものでよい。
【0036】
(9)より好ましくは、車載装置はさらに、当該車載装置を搭載した車両の予定移動経路を特定する予定移動経路特定装置と、予定移動経路特定装置により特定された予定移動経路に沿って存在するセンサ設備装置が提供するセンサデータを処理するために適切なプログラムがプログラム記憶装置に記憶されているか否かを判定する記憶プログラム判定装置と、記憶プログラム判定装置によりプログラム記憶装置に記憶されていないと判定されたプログラムを外部から入手し、プログラム記憶装置に格納するプログラム入手装置とを含む。
【0037】
予定移動経路特定装置により車両の予定移動経路が特定されると、記憶プログラム判定装置が、その予定移動経路に沿って存在するセンサ設備装置が提供するセンサデータを処理するために適切なプログラムがプログラム記憶装置に記憶されているか否かを判定する。適切なプログラムがプログラム記憶装置に記憶されていない場合には、プログラム入手装置がそのプログラムを外部から入手しプログラム記憶装置に格納する。実際に予定移動経路に沿って移動する前に、その経路に沿って存在するセンサ設備装置が提供するセンサデータを処理するためのプログラムが入手できる。その結果、その予定移動経路では交通支援情報を提供するサーバとの通信ができなくても、センサ設備装置と通信可能な領域ではそのセンサ設備装置が提供するセンサデータを用いて交通支援情報を生成できることが確実となり、安全な車両の運行を行うことができる。そのために必要なコストも小さくて済む。
【0038】
(10)本開示の第3の局面に係る交通支援システムは、センサ設備装置と、車載装置とを含む交通支援システムであって、センサ設備装置は、センサと、センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、無線通信装置と、無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する探索装置と、探索装置が送信先からの応答を受信したことに応答して、記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に無線通信装置を介して送信する送信装置とを含み、車載装置は、無線通信装置と、データ処理装置と、車載装置の無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、受信された通信の内容と、データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、センサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、判定装置による判定にしたがって、車載装置の無線通信装置を介して通信に対する応答を返す処理と、通信に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、応答装置が応答を返した後、車載装置の無線通信装置が通信の送信元から受信したセンサデータをデータ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力する交通支援装置とを含む。
【0039】
センサ設備装置の探索装置は、無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する。車載装置の判定装置がこの通信を受信すると、その通信の内容と、車載装置のデータ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、車載装置の判定装置がそのセンサデータを受信するか否かを判定する。センサデータを受信する場合には、車載装置の応答装置がこの通信に対する応答を返す。探索装置がこの応答を受信することで、センサ設備装置ではセンサデータの送信先が見つかったことになる。するとセンサ設備装置の送信装置は、センサデータをその送信先、すなわち車載装置に送信する。車載装置では、センサ設備装置からセンサデータを受信し、データ処理装置でそのセンサデータを処理することで交通支援情報を生成し運転支援に利用できる。センサデータを受信しないと判定された場合には、通信に応答しないことでセンサデータの送受信は行われず、無駄な通信が発生することはない。センサデータを集約して解析するサーバが存在しなくても、センサ設備装置と無線通信可能な領域内に進入した車両等に搭載された車載装置では、センサ設備装置からのセンサデータを利用した交通支援情報を利用できる。複数のセンサ設備装置のセンサデータを集約所定処理するサーバ等の高性能な装置がなくても、センサ設備装置と車載装置とがあれば、車載装置は、そのセンサ設備装置と通信可能な領域では、センサ設備装置の提供するセンサデータを利用して、低いコストで交通支援情報を利用できる。
【0040】
(11)本開示の第4の局面に係るセンサ設備装置の制御方法は、無線通信装置に接続されたコンピュータによるセンサ設備装置の制御方法であって、コンピュータが、センサからセンサデータを取得するステップと、コンピュータが、センサデータを記憶装置に格納するステップと、コンピュータが、無線通信装置を介してセンサデータを送信する送信先を探索するステップと、コンピュータが、無線通信装置により、探索するステップの後の所定時間の間に送信先から応答の受信を試みるステップと、コンピュータが、試みるステップで応答を受信したことに応答して、記憶装置に記憶されているセンサデータを当該送信先に無線通信装置を介して送信するステップとを含む。
【0041】
探索するステップにおいてセンサデータの送信先を探索し、受信を試みるステップで応答が受信されると、センサデータの送信先が見つかったことになる。その場合、送信するステップにおいてセンサ設備装置のセンサデータが無線通信装置を介してその送信先に送信される。送信先の装置では、このセンサデータを使用して交通支援に用いることができる。センサデータを集約して解析するサーバのような効果な装置が存在しなくても、センサ設備装置と無線通信可能な領域内に進入した車両等に搭載された装置では、コストをかけずにセンサ設備装置からのセンサデータを利用した交通支援情報が利用できる。
【0042】
(12)本開示の第5の局面に係るコンピュータは、無線通信装置に接続されたコンピュータによる、車載装置の制御方法であって、無線通信装置がセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、コンピュータが、受信された通信の内容と、車載装置のデータ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、センサデータの受信を行うか否かを判定するステップと、判定装置による判定にしたがって、通信に対する応答を返す処理と、通信に対して応答しない処理とを選択的に実行するステップと、選択的に実行するステップで応答を返した後に無線通信装置が通信の送信元から受信したセンサデータを、コンピュータがデータ処理装置に処理させることにより、交通支援情報を生成し出力するステップとを含む。
【0043】
無線通信装置がセンサデータの送信先を探索する通信を受信すると、判定するステップにおいて、その通信の内容と、データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、そのセンサデータを受信するか否かが判定される。受信しない場合には選択的に実行するステップで通信に応答しないことでセンサデータの送受信は行われず、無駄な通信が発生することはない。センサデータを受信すると判定された場合には、選択的に実行するステップでその通信に応答することで外部からセンサデータを受信できる。受信するステップで、受信したセンサデータをデータ処理装置に処理させることで交通支援情報を生成し運転支援に利用できる。サーバ等の高性能な装置がなくても、センサデータを提供する装置と車載装置とがあれば、そのセンサデータを提供する装置の近傍ではその装置のセンサが得たセンサデータを利用して、低いコストで交通支援情報を利用できる。
【0044】
[実施の形態の詳細な説明]
<第1の実施の形態>
〈構成〉
《全体構成》
図3を参照して、この実施の形態は、エッジサーバとの通信のための基地局が近くにない地域を通る道路112における交通支援を行うシステムに関する。このシステムは、例えば道路112の交差点、三叉路等の要所に配備されたインフラセンサ設備装置110と、この道路112を走行する車両114等に搭載された図示しない車載装置とを含む。インフラセンサ設備装置110及び車両114の車載装置は、この地域ではともにエッジサーバ等の交通支援システムの主要部と通信できない。
【0045】
図4を参照して、この交通支援システムにおけるインフラセンサ設備装置110と道路112を走行する車両114及び車両114の後にこの地域を走行する車両116との間の通信シーケンスの1例について最初に説明する。
【0046】
インフラセンサ設備装置110は、一定の時間間隔で、インフラセンサ設備装置110のセンサが取得したセンサ情報を送信する送信先を探索するためのハローパケット130、132等を周囲に送信している。インフラセンサ設備装置110がハローパケット134を送信する直前にインフラセンサ設備装置110による無線通信の範囲内に車両114が進入したものとする。車両114は、ハローパケット134を受信すると、後述するような判定処理を行ってインフラセンサ設備装置110のセンサデータを受信するか否かを決定する。車両114がインフラセンサ設備装置110のセンサデータを受信すると決定した場合、車両114はハローパケットに対する応答パケット136をインフラセンサ設備装置110に対して送信する。インフラセンサ設備装置110は、この応答パケットを受信するとセンサデータ138のデータパケットを車両114に送信する。
【0047】
以下、このようなパケットによる交信140、…、142、144を行った後、インフラセンサ設備装置110からのハローパケット146に対して車両114が応答しなかったものとする。これは例えば、車両114がインフラセンサ設備装置110と通信可能な領域から離脱した場合である。するとインフラセンサ設備装置110はセンサデータの送信を中止する。インフラセンサ設備装置110は、再びハローパケット148、…、150を送信することを繰返す。
【0048】
そして例えば、ハローパケットに対して別の車両116が応答することにより、インフラセンサ設備装置110と車両116との交信152及び154等によるセンサデータの送信が繰返し実行される。以下、同様である。
【0049】
《車両側の設備》
図5を参照して、車両114は、LiDAR176に加えて、車載カメラ174及びミリ波レーダ172等の各種のセンサ、及びこれらセンサからセンサデータを収集し無線通信により外部に送信するための車載装置170とを含む。車載装置170は、エッジサーバと通信可能な領域内であれば無線通信により基地局を通じてエッジサーバと通信するが、山間部等、基地局がない領域ではエッジサーバとの通信は行わず、ハローパケットが外部から送信されてくるのを待つ状態となる。
【0050】
図6を参照して、車載装置170は実質的にはコンピュータ180を含むプロセッサであって、マイクロプロセッサ200と、マイクロプロセッサ200とコンピュータ180内の各部との間のデータ及び命令の伝送経路となるバス210とを含む。コンピュータ180はさらに、いずれもバス210に接続されたROM(Read-Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)204、ハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等からなる不揮発性の補助記憶装置206、無線通信により外部との通信を提供する無線通信部208、入出力インターフェイス(I/F)212及びユーザとの音声によるインタラクションを提供するための音声処理I/F214とを含む。
【0051】
車載装置170はさらに、バス210に接続されたタッチパネル184、液晶等のモニタ182、及び入出力I/F212に接続された車両の制御のための各種アクチュエータ186及びLiDAR176等の各種センサ188と、音声処理I/F214に接続されたスピーカ及びマイク190と、バス210に接続され、USBメモリ192を装着することが可能で、USBメモリ192とコンピュータ180の各部との間でのデータの授受を行うための半導体メモリドライブ216とを含む。ROM202にはコンピュータ180の起動プログラム等が記憶されている。RAM204はマイクロプロセッサ200による処理の際に、マイクロプロセッサ200が実行するプログラムと、様々な変数とを記憶するための作業領域として使用される。
【0052】
《インフラセンサ設備装置110》
インフラセンサ設備装置110の構成を図7に示す。図7を参照して、このインフラセンサ設備装置110は、カメラ232及びLiDAR234と、カメラ232からの画像データ及びLiDAR234からの点群データを、LiDAR234の位置情報とともに近傍を通過する車両に送信するためのインフラセンサ設備装置230とを含む。
【0053】
図8は、インフラセンサ設備装置230のハードウェア構成を示す。図8を参照して、インフラセンサ設備装置230は実質的にはコンピュータ250を含むプロセッサである。コンピュータ250は、マイクロプロセッサ280と、マイクロプロセッサ280及びコンピュータ250内の各機能部との間のデータ及び命令の経路となるバス290とを含む。コンピュータ250はさらに、いずれもバス290に接続された、ROM282と、RAM284と、ハードディスク又はSSD等からなる不揮発性の補助記憶装置286と、無線通信により外部との通信を提供する無線通信部288と、入出力I/F292とを含む。
【0054】
インフラセンサ設備装置230はさらに、入出力I/F292に接続された、カメラ232及びLiDAR234を含む各種センサ252を含む。補助記憶装置286には、センサデータの送信先を探索し、探索された送信先にセンサデータを送信するプログラムと、インフラセンサ設備装置110のセンサデータを解析するための専用のプログラムとが記憶されている。
【0055】
図9に、図8に示すインフラセンサ設備装置110の補助記憶装置286に記憶され、マイクロプロセッサ280が実行する、センサデータの送信先を探索するプログラムの制御構造をフローチャート形式で示す。図9を参照して、このプログラムは、ハローパケットを送信するステップ330と、ステップ330の後、所定時間内に車両からの応答を受信したか否かを判定し、判定にしたがって制御の流れを分岐させるステップ332と、ステップ332の判定が肯定のときにハローパケットに対する応答を送信して来た車両に対してセンサデータを送信するステップ334と、ステップ332の判定が否定のときに、一定時間だけスリープした後に制御をステップ330に移すステップ336とを含む。
【0056】
なお、マイクロプロセッサ280は、補助記憶装置286に記憶されている、センサデータ解析のためのコンピュータプログラムである解析アプリケーションプログラム(以下「解析アプリケーション」という。)を配信するためのプログラムを別プロセスで実行している。このプロセスが無線通信部288を介して専用の解析アプリケーションのダウンロード要求を受信すると、マイクロプロセッサ280は解析アプリケーションを相手に送信する。
【0057】
図10に、図9のステップ330でインフラセンサ設備装置110が送信するハローパケット360の概略構成を示す。なお、ハローパケットの構成はこの図10に示されるものには限定されない。
【0058】
図10を参照して、ハローパケット360は、このデータパケットがハローパケットであることを示すデータからなるヘッダ370と、インフラセンサ設備装置110から送信されるセンサデータの種別(LiDARによる点群データ、カメラによる画像データ、等)及びそのデータフォーマットを示す情報を含むフィールド372と、センサデータのサイズを示す情報を格納したフィールド374と、このセンサデータを処理するためにデータ処理装置が満足すべきとして要求された仕様情報である要求仕様情報を格納したフィールド376とを含む。要求仕様情報は、インフラセンサ設備装置110がセンサから受信したセンサデータを処理するために必要な計算リソース(マイクロプロセッサの計算能力又は品番、主記憶容量等)及び通信帯域等を示す情報が格納されている。
【0059】
図11に、車載装置170のマイクロプロセッサ200が実行する、インフラセンサ設備装置110からの交通支援情報のダウンロード処理を実現するプログラムの制御構造を示す。このプログラムは、図6に示す補助記憶装置206に記憶されており、車載装置170が起動するとRAM204にロードされ、マイクロプロセッサ200により実行される。図11を参照して、このプログラムは、起動後、インフラセンサ設備装置からハローパケットを受信するまで待機するステップ400と、ステップ400でハローパケットを受信したと判定されたことに応答して、コンピュータ180の計算リソース及び通信帯域を確認するステップ402と、ステップ400で受信したハローパケットのフィールド376に格納された要求仕様情報と、ステップ402で確認した計算リソース及び通信帯域とを比較し、コンピュータ180でインフラセンサ設備装置110からのセンサデータが処理可能か否かを判定し、処理可能でないと判定したときには制御をステップ400に戻すステップ404とを含む。
【0060】
このプログラムはさらに、ステップ404の判定が肯定のときに、インフラセンサ設備装置110からのセンサデータのフォーマットをハローパケットのフィールド372に格納された情報から確認するステップ406と、ステップ406で確認されたフォーマットのセンサデータを処理するための解析アプリケーションが補助記憶装置206に記憶されているか否かを判定し判定に応じて制御の流れを分岐させるステップ408と、ステップ408の判定が否定のときに、解析アプリケーションをアプリケーションサーバ又はインフラセンサ設備装置110からダウンロード可能か否かを判定し、可能でない場合には制御をステップ400に戻すステップ410と、ステップ410の判定が肯定のときに、解析アプリケーションをアプリケーションサーバ又はインフラセンサ設備装置110からダウンロードし補助記憶装置206に保存するステップ412とを含む。インフラセンサ設備装置110が山間部等の基地局が存在しない地域に存在するときには、アプリケーションサーバにアクセスすることは難しい。したがって解析のためのアプリケーションが存在しないときには、通常は専用の解析アプリケーションをインフラセンサ設備装置110からダウンロードする。なお、インフラセンサ設備装置110の種類によっては解析アプリケーションの配信機能を有さない場合もあり得る。その場合には、車両はこのインフラセンサ設備装置110からのセンサデータの解析は行えない。
【0061】
このプログラムはさらに、ステップ408の判定が肯定のとき、又はステップ412の処理が実行された後に、インフラセンサ設備装置110に対してハローパケットに対する応答を送信するステップ414と、ステップ414で送信した応答に対してインフラセンサ設備装置110から送信されてくるセンサデータの受信を試み、受信したときには補助記憶装置206に保存するステップ416と、ステップ416で、所定時間内にセンサデータを受信したか否かを判定し、判定が否定のときに制御をステップ400に戻すステップ418と、ステップ418の判定が肯定のときに、ステップ416で受信したセンサデータを解析し、運転支援に反映させた後、制御をステップ400に戻すステップ420とを含む。
【0062】
図11に制御構造を示すプログラムにより、インフラセンサ設備装置110からのハローパケットを車載装置170が受信すると、車載装置170にインフラセンサ設備装置110からセンサデータが送信されてくる。
【0063】
〈動作〉
上記したシステムは以下のように動作する。図3及び図4を参照して、インフラセンサ設備装置110はセンサから受信した最新の情報を蓄積し、古い情報を削除しながら、一定の時間間隔でハローパケット130、132等を周囲に送信する処理を反復している。近傍に車両が存在していなければインフラセンサ設備装置110はこの動作を繰返す(図9のステップ330→332→336→330の経路)。
【0064】
インフラセンサ設備装置110の近傍領域に車両(例えば車両114)が進入する直前を考える。車両114のコンピュータ180は図11に制御構造を示すプログラムを実行している。すなわち、ハローパケットを受信しない場合にはステップ400を繰返し実行している。車両114がインフラセンサ設備装置110の近傍領域に進入し、例えばハローパケット134を受信したものとする。するとステップ400の判定が肯定となり、ステップ402でコンピュータ180はハローパケットのフィールド376に格納された要求仕様情報を読出す。コンピュータ180はこの要求仕様情報と、自己のマイクロプロセッサ200の計算リソース及び通信帯域とを比較し、センサデータが処理可能か否かを判定する(ステップ404)。自己の計算リソースが要求仕様を充足しない場合、又は利用可能な通信帯域が要求された通信帯域に満たない場合にはセンサデータを処理できないと判定し(ステップ404においてNO)、制御をステップ400に戻し、次のハローパケットを待つ。すなわち、マイクロプロセッサ200の仕様及び利用可能な通信帯域では処理できない場合には、コンピュータ180は受信したハローパケットを無視し、応答を何も返さない。
【0065】
ステップ404の判定が肯定のときには、制御はステップ406に進む。ステップ406では、図10に示すハローパケット360のフィールド372に格納されているセンサデータのデータフォーマットを確認する。ステップ408では、このデータフォーマットを解析可能かどうか判定する。この判定は、このデータフォーマットのセンサデータを処理するための専用の解析アプリケーションが図6に示す補助記憶装置206に記憶されているか否かにより判定する。判定が否定であれば制御はステップ410に進み、必要な解析アプリケーションがアプリケーションサーバかインフラセンサ設備装置110からダウンロード可能か否かを判定する。ダウンロードが可能でなければ、コンピュータ180は何もせず制御をステップ400に戻す。すなわち、センサデータを解析するためのアプリケーションが補助記憶装置206に記憶されていなければコンピュータ180は受信したハローパケットを無視し、応答を何も返さない。
【0066】
ステップ410で解析アプリケーションがダウンロード可能なときには、ステップ412でこのアプリケーションをアプリケーションサーバ又はインフラセンサ設備装置110からダウンロードし、補助記憶装置206に保存する。
【0067】
ステップ408の判定が肯定のとき、及びステップ412の処理が完了した後は、インフラセンサ設備装置110からのセンサデータをコンピュータ180で処理可能である。そこでコンピュータ180はステップ414でインフラセンサ設備装置110に対して応答(図4の応答パケット136)を送信する。
【0068】
図9を参照して、インフラセンサ設備装置110が実行中のプログラムでは、ハローパケットに対する応答を受信するとステップ332の判定が肯定となり、制御はステップ334に進む。ステップ334ではインフラセンサ設備装置110の最新のセンサデータ(図4のハローパケット130)が応答を送信してきた車両に送信される。
【0069】
次にインフラセンサ設備装置110がハローパケットを送信すると、車載装置170のコンピュータ180で実行されているプログラムの制御は、図11を参照して、ステップ400→402→404→406→408→414→416→418→420→400という経路を移動する。その結果、インフラセンサ設備装置110からはハローパケットの送信と最新のセンサデータの送信とが反復され、車載装置170ではセンサデータの受信と解析、及び運転支援の処理とが繰返される。
【0070】
車両114がインフラセンサ設備装置110と通信可能な領域から離脱すると、車載装置170はインフラセンサ設備装置110からのハローパケットを受信しなくなる。その結果、図11に示すプログラムではステップ400が繰返し実行され、ハローパケットに対する応答が送信されなくなる。又は、ハローパケットを受信してステップ420までの処理が実行されるが、ステップ414で送信した応答がインフラセンサ設備装置110では受信できなくなる。その結果、いずれの場合にもインフラセンサ設備装置110からのセンサデータの送信は終了し、インフラセンサ設備装置110は次の車両が通信可能領域に進入するまでハローパケットの送信を繰返す。
【0071】
以上にようにこの実施の形態に係るシステムでは、多数の装置からセンサデータを集約し解析するエッジサーバを必要とせずに、インフラセンサ設備装置110のセンサデータを車載装置170に送信し、車載装置170を搭載した車両の運転支援に役立てることができる。インフラセンサ設備装置110の構成はエッジサーバとは異なり比較的単純でよく、高性能なコンピュータは必要としない。その結果、低いコストで車両の運転支援を行うことができる。インフラセンサ設備装置110と車載装置170との間の通信シーケンスも単純でよく、複雑な手順を踏まなくても良いという効果がある。さらに、車載装置170にインフラセンサ設備装置110のセンサデータを処理できるアプリケーションが存在しない場合、条件が許せば(アプリケーションサーバとの通信が可能であるか、又はインフラセンサ設備装置110にアプリケーションプログラムの配信機能があれば)、車載装置170はセンサデータを解析するために必要な専用の解析アプリケーションをダウンロードし、センサデータを解析処理できる。その結果、例えばインフラセンサ設備装置110のセンサが新たな種類のセンサに更新されたときにも、車載装置170では必要な解析アプリケーションを運転者の介入なしに入手し、センサデータを解析できる。運転者にとっては、車載装置170とインフラセンサ設備装置110との通信、及び車載装置170によるセンサデータ解析のためのプログラムの入手処理は透過的であって、インフラセンサ設備装置110の通信の要否、及び解析のためのプログラムの入手について運転者が判断する必要はない。
【0072】
<第2の実施の形態>
〈構成〉
上記第1の実施の形態に係る交通支援システムでは、車両がインフラセンサ設備装置から受信したハローパケットの内容に基づいて、解析アプリケーションを入手すべきか否かを判定している。また、解析アプリケーションを入手すべきと判定されたときに、解析アプリケーションを入手できるか否かは自分ではコントロールできず、アプリケーションサーバと通信可能か否か、アプリケーションサーバに必要な解析アプリケーションがあるか否か、及びインフラセンサ設備装置110に専用の解析アプリケーションの配信機能があるか否かにより左右される。
【0073】
しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。車載装置がいわゆるナビゲーション機能を持っており、車両がアプリケーションサーバと通信可能な領域に存在しているときに、運転者が出発地から目的地までの情報を指定した場合には、以下のような仕組みで車載装置が予め必要な解析アプリケーションを入手し補助記憶装置に記憶しておくことができる。
【0074】
図12を参照して、運転者により出発地440と目的地442とが指定されたものとする。すると、その間の経路450が、距離が最短の経路及び到着までの所要時間が最短の経路、費用が最短の経路、使用される燃料が最少の経路等、ある基準によって1又は複数個定まる。こうした経路450の候補の全てにつき、その経路に沿ってどのようなインフラセンサ設備装置(例えば図12のインフラセンサ設備装置452及び456)が存在しているかを予め知り、それらのインフラセンサ設備装置から送信されるセンサデータのフォーマットを予め知ることができれば、アプリケーションサーバとの通信が可能な間にそれらのセンサデータを解析するためのアプリケーションを予め入手できる。この実施の形態では、そのために必要な設備を以下のように準備する。なお、念のために、経路450に沿っているわけではないが、経路の近くに配備されているインフラセンサ設備装置454、458等に関しても同様の処理をしてもよい。
【0075】
図13を参照して、この実施の形態では、この仕組のために、予め、道路ごとに、その道路のどの地点にどのようなインフラセンサ設備装置があるかに関するインフラセンサ配備情報を提供するインフラセンサ配備情報サーバ510と、センサの種類(品番)ごとに、そのセンサのデータフォーマットとそのデータフォーマットを解析するための解析アプリケーションを特定する情報とを提供するインフラセンサ情報サーバ512と、インフラセンサ情報サーバ512に登録されている解析アプリケーションを網羅的に記憶し、配信するためのインフラセンサアプリサーバ514とを準備する。これらは、原理的には世界でそれぞれ単独のサーバで実現することも可能である。しかし、例えばインフラセンサ配備情報サーバ510及びインフラセンサ情報サーバ512の場合には、国ごと、又は日本の場合なら北海道、東北地方、関東地方等という大きな区域でそれぞれ別々に準備した方が合理的な場合もある。インフラセンサアプリサーバ514については、各メーカがそれぞれ別々に管理することにしてもよいし、インフラセンサ配備情報サーバ510及びインフラセンサ情報サーバ512と同様に管理しても良い。
【0076】
この第2の実施の形態に係る車載装置500において、ナビゲーション機能により運転者が出発地440と目的地442とを指定したものとする。すると、高精度マップ記憶装置502が運転支援のために保持している高精度マップを用いて、出発地440と目的地442との間の経路を特定できる。実際には経路は無数にあり得るが、多くの場合は最短の経路及び最短に近い他の2、3個の経路に絞ることができる。それらの経路の近傍に配備されているインフラセンサ設備装置について網羅的な情報をインフラセンサ配備情報サーバ510から得ることができる。
【0077】
さらに、インフラセンサ配備情報サーバ510から得た全てのインフラセンサ設備装置のセンサデータのデータフォーマットと、それを全て処理するために必要な解析アプリケーションの種類とをインフラセンサ情報サーバ512から取得できる。この情報に基づき、車載装置500がインフラセンサアプリサーバ514をアクセスし、車載装置500に記憶されていない解析アプリケーションをインフラセンサアプリサーバ514から予めダウンロードする。
【0078】
この第2の実施の形態に係る車両480は、前述したとおり、ナビゲーション機能と、インフラセンサ配備情報サーバ510、インフラセンサ情報サーバ512、及びインフラセンサアプリサーバ514にアクセスする機能を備えた車載装置500と、車載装置500がナビゲーションのために用いる高精度マップを記憶した高精度マップ記憶装置502と、車載装置500がインフラセンサ設備装置のセンサデータを解析するために必要な解析アプリケーションを記憶する補助記憶装置である解析アプリケーション記憶装置504と、車載装置500のナビゲーション機能を用いて運転者が出発地及び目的地を指定する際に使用するためのタッチパネル184及びモニタ182とを含む。車載装置500のハードウェア構成は、図6に示すものと同様である。
【0079】
図14に、この実施の形態に係る車両480のための車載装置500の機能を実現するプログラムは以下のような制御構造を有する。すなわち、このプログラムは、モニタ182及びタッチパネル184を用いて運転者から出発地及び目的地の指定を受け取るステップ550と、ステップ550で受け取った出発地及び目的地の情報に基づいて、図13に示す高精度マップ記憶装置502に記憶された高精度マップから途中経路の道路を特定する道路情報を取得するステップ552と、この道路情報をキーにインフラセンサ配備情報サーバ510をアクセスし、その道路で出発地と目的地とを結ぶ経路上に存在するインフラセンサ設備装置を検索するステップ554と、ステップ554で取得したインフラセンサ設備装置の各々について、以下に説明する処理558を行うステップ556とを含む。
【0080】
処理558は、インフラセンサ情報サーバ512から処理対象のインフラセンサ設備装置の備えるセンサのセンサデータのデータフォーマットと、そのデータフォーマットのセンサデータを処理するための解析アプリケーションを特定する情報とからなるインフラセンサ情報を取得するステップ570と、ステップ570で取得されたインフラセンサ情報に含まれる解析アプリケーションを特定する情報から、その解析アプリケーションが解析アプリケーション記憶装置504に記憶されているか否か、すなわちその解析アプリケーションを取得済か否かを判定し、判定に応じて制御の流れを分岐させるステップ572と、ステップ572の判定が否定のときに、その解析アプリケーションを特定する情報をキーにインフラセンサアプリサーバ514をアクセスし、その解析アプリケーションをインフラセンサアプリサーバ514からダウンロードし解析アプリケーション記憶装置504に格納するステップ574とを含む。ステップ572の判定が肯定のときには直ちに対象インフラセンサ設備装置に対する処理558の実行を終わる。
【0081】
その他の点では、この第2の実施の形態に係る車両480の車載装置500は、第1の実施の形態に係る車載装置170と同一の構成を持つ。
【0082】
〈動作〉
第2の実施の形態に係る車両480の車載装置500は以下のように動作する。図13を参照して、運転者が車載装置500のナビゲーション機能により、出発地440と目的地442とを指定すると(図14のステップ550)、車載装置500は高精度マップ記憶装置502をアクセスし、高精度マップの情報に基づいて出発地440から目的地442までの最短経路を含む複数個(例えば2、3個)の経路を定め、それらの経路を構成する道路に関する道路情報を取得する(ステップ552)。続いて車載装置500は、この道路情報をキーにインフラセンサ配備情報サーバ510をアクセスし、その道路で出発地と目的地とを結ぶ経路上に存在するインフラセンサ設備装置を検索する(ステップ554)。さらに車載装置500は、ステップ554で取得したインフラセンサ設備装置の各々について、以下の処理558を行う(ステップ556)。
【0083】
処理558では、車載装置500は、処理対象のインフラセンサ設備装置のインフラセンサ情報をインフラセンサ情報サーバ512から取得する(ステップ570)。インフラセンサ情報は、センサデータのデータフォーマットと、そのデータフォーマットのセンサデータを処理するための解析アプリケーションを特定する情報とからなる。車載装置500は、続いてステップ570で取得した解析アプリケーションを特定する情報から、その解析アプリケーションが取得済か否か(その解析アプリケーションが解析アプリケーション記憶装置504に既に格納されているか否か)を判定し、判定に応じて制御の流れを分岐させる(ステップ572)。車載装置500は、ステップ572の判定が否定のときには解析アプリケーションを特定する情報をキーにインフラセンサアプリサーバ514をアクセスし、その解析アプリケーションをダウンロードして解析アプリケーション記憶装置504に格納する(ステップ574)。車載装置500は、ステップ572の判定が肯定のときには直ちに対象インフラセンサ設備装置に対する処理558の実行を終わる。
【0084】
この実施の形態に係る車載装置500では以下のような効果を得ることができる。予め出発地と目的地とを運転者が指定することにより、その間に存在するインフラセンサ設備装置に関するインフラセンサ情報を全て入手できる。インフラセンサ情報に基づいて、そのインフラセンサ設備装置のセンサデータを処理するための解析データが判明し、解析アプリケーション記憶装置504に記憶されていなければアプリケーションサーバから予めダウンロードしておく。その結果、経路上に存在する全てのインフラセンサ設備装置のセンサデータを処理するための解析アプリケーションを予め解析アプリケーション記憶装置504に記憶させておくことができる。例えば経路の途中が山間部でエッジサーバともアプリケーションサーバとも通信できず、しかもインフラセンサ設備装置が解析アプリケーションの配信機能を持っていなくても、解析アプリケーション記憶装置504に記憶されている解析アプリケーションのいずれかを用いてそのセンサデータを解析できる。
【0085】
こうした処理は出発地及び目的地を指定するときを除き、運転者による操作を必要としない。出発地及び目的地の指定は、ナビゲーション機能を利用するときには通常行われる操作である。したがって、運転者にとって透過的に、エッジサーバ及びアプリケーションサーバとの通信が難しい地域を通る経路で移動するときにも、途中のインフラセンサ設備装置からセンサデータを受信して運転支援に用いることができる。
【0086】
上記第1の実施の形態は、インフラセンサ設備装置という固定されたセンサのセンサデータを車両という移動体で利用するものである。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。双方とも車両のように移動するものであってもよい。この場合、互いのセンサデータを交換することになるので、上記第1の実施の形態の処理を並列して、互いに対称に実行すれば良い。
【0087】
また上記第1の実施の形態では、インフラセンサ設備装置のセンサデータを車両に送信し、その解析も車両で行っている。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、インフラセンサ設備装置を受信した車両がインフラセンサ設備装置に応答した後、車両側からそのセンサデータをインフラセンサ設備装置に送信するようにしてもよい。この場合、センサデータの解析は、インフラセンサ設備装置の側で、インフラセンサ設備装置のセンサデータを車両から受信した車両側のセンサデータとの双方に対して行われる。インフラセンサ設備装置は、この解析結果を車両に送信し、車両側ではこの解析結果を運転支援に利用する。
【0088】
この場合、インフラセンサ設備装置側で、車両側のセンサデータを処理可能か否かが問題となる。例えばセンサデータの標準化が行われていればそのような問題は生じないし、探索パケットに対する応答に、車両側のセンサデータのデータフォーマット及びそのために必要な要求仕様情報等を含ませるようにしてもよい。インフラセンサ設備装置側では、その情報を見てセンサデータの受信を行うようにすればよい。又は、センサデータを無条件で受信した後にそのセンサデータが処理可能か否かを判定するようにしてもよい。こうした方法は、インフラセンサ設備装置と車載装置との間のみで可能なわけではなく、車載装置同士でも可能である。また、通信を行う2つの装置の間で、いずれがセンサデータを処理するかを最初にネゴシエートするようにしてもよい。
【0089】
なおこの場合にはさらに、隣接するインフラセンサ設備装置の間の通信が可能であれば、それらの情報を統合してセンサデータの解析を行っても良い。ただしこの場合にも、センサデータを統合するインフラセンサ設備装置の数が多すぎるとインフラセンサ設備装置のコンピュータの性能では解析が難しくなる可能性がある。したがって、センサデータを統合するインフラセンサ設備装置の数は所定数(例えば2個又は3個)以下とすることが望ましい。
【0090】
上記実施の形態では、図9及び図10に示すように、インフラセンサ設備装置からは1つのセンサデータ種別について車両にセンサデータを送信している。しかし、この開示はそのような実施の形態には限定されない。図7に示すインフラセンサ設備装置110のように、インフラセンサ設備装置が複数種類のセンサを持つ場合には、センサごとに図9に示される一連の処理を行なうようにしてもよい。この場合、車両ではハローパケットに含まれるセンサデータの種別を見て、センサの種別ごとにハローパケットに応答するか否かを判定すればよい。
【0091】
上記交通支援システムにおける各装置は、図6及び図8に示すように、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等を含んで構成されるコンピュータを備える。マイクロプロセッサ等の演算処理部は、図9図11および図14に示すような、シーケンス図またはフローチャートの各ステップの一部または全部を含むコンピュータプログラムを、ROM、RAM等の記憶部からそれぞれ読み出して実行する。これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、外部のサーバ装置等からインストールすることができる。また、これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通する。
【0092】
[変形例]
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0093】
付記1
センサと、
前記センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、
無線通信装置と、
前記無線通信装置を前記センサデータから生成される交通支援情報の送信先を介して探索する探索装置と、
前記探索装置が送信先からの応答を受信したことに応答して、前記送信先から当該送信先のセンサデータを受信し前記記憶装置に格納するセンサデータ受信装置と、
前記記憶装置に記憶されている、前記センサからのセンサデータ及び前記送信先からのセンサデータを解析し、交通支援情報を生成する交通支援情報生成装置と、
前記交通支援情報生成装置が生成した前記交通支援情報を前記送信先に前記無線通信装置を介して送信する送信装置とを含む、センサ設備装置。
【0094】
付記2
センサと、
前記センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、
無線通信装置と、
データ処理装置と、
前記無線通信装置を介してセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、前記受信された通信の内容と、前記データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、前記センサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、
前記判定装置による判定にしたがって、前記通信に対する応答を返す処理と、前記通信に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、
前記応答装置が前記応答を返した後に、前記無線通信装置が前記他の送信元から受信したセンサデータを、前記記憶装置に格納する受信装置と、
前記記憶装置に記憶されている、前記センサからのセンサデータと前記受信装置が受信したセンサデータとを処理し、交通支援情報を生成する交通支援装置とを含む、車載装置。
【0095】
付記3
前記応答装置はさらに、前記応答装置による応答の後、前記通信の送信元に前記記憶装置に記憶されている、前記センサの出力するセンサデータを送信する送信装置を含む、付記2に記載の車載装置。
【0096】
付記4
センサと、
前記センサの出力するセンサデータを記憶する記憶装置と、
無線通信装置と、
データ処理装置と、
前記無線通信を介して前記センサデータの送信先を探索する通信を送信する探索装置と、
前記無線通信を介して、前記探索装置が送信した前記通信に対する応答を受信したことに応答して、前記記憶装置に記憶されている前記センサデータを当該応答の送信元に送信する送信装置と、
前記無線通信を介して、他の車載装置から、当該他の車載装置のセンサデータの送信先を探索する通信を受信したことに応答して、当該受信された通信の内容と、前記データ処理装置の仕様及び状態とに基づいて、前記他の車載装置のセンサデータの受信を行うか否かを判定する判定装置と、
前記判定装置による判定にしたがって、前記他の車載装置に対する応答を返す処理と、前記他の車載装置に対して応答しない処理とを選択的に実行する応答装置と、
前記応答装置が前記応答を返した後に、前記無線通信装置が前記他の車載装置から受信したセンサデータを前記記憶装置に格納する受信装置と、
前記記憶装置に記憶されている、前記センサからのセンサデータと前記受信装置が受信したセンサデータとを処理し、交通支援情報を生成する交通支援装置とを含む、車載装置。
【0097】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、この発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。この発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0098】
50 実空間
52 交通状況俯瞰マップ
70、630 エッジサーバ
72 基地局
80、110、230、452、454、456、458 インフラセンサ設備装置、
82、84、114、116、480 車両
92、94、176、234 LiDAR
112 道路
130、132、134、146、148、150、360 ハローパケット
136 応答パケット
138 センサデータ
152、154 交信
170、500 車載装置
172 ミリ波レーダ
174 車載カメラ
180、250 コンピュータ
182 モニタ
184 タッチパネル
186 各種アクチュエータ
188、252 各種センサ
190 スピーカ及びマイク
192 USBメモリ
200、280 マイクロプロセッサ
202、282 ROM
204、284 RAM
206、286 補助記憶装置
208、288 無線通信部
210、290 バス
212、292 入出力I/F
214 音声処理I/F
216 半導体メモリドライブ
232 カメラ
330、332、334、336、400、402、404、406、408、410、412、414、416、418、420、550、552、554、556、570、572、574 ステップ
370 ヘッダ
372、374、376 フィールド
440 出発地
442 目的地
450 経路
502 高精度マップ記憶装置
504 解析アプリケーション記憶装置
510 インフラセンサ配備情報サーバ
512 インフラセンサ情報サーバ
514 インフラセンサアプリサーバ
558 処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14