(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】制御装置、無人搬送車、無人搬送車の制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230816BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20230816BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G05D1/02 Y
B25J5/00 A
B25J19/02
(21)【出願番号】P 2019090793
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知大
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-181245(JP,A)
【文献】特開2019-012504(JP,A)
【文献】特開2013-186615(JP,A)
【文献】特開2007-072572(JP,A)
【文献】特開2011-005608(JP,A)
【文献】特開2012-240810(JP,A)
【文献】特開2007-052608(JP,A)
【文献】特開2008-065755(JP,A)
【文献】特開2008-117423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
B25J 5/00
B25J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置物を載置して目的地まで移動する無人搬送車を制御する制御装置であって、
加速度センサが検知した前記無人搬送車の移動において発生した加速度を取得する加速度取得部と、
前記加速度センサから取得した加速度に基づいて、前記無人搬送車の移動において発生した共振を異常として検知する検知部と、
前記異常を検知した場合、前記無人搬送車の移動を継続しつつ、異常の再発生を防ぐ処理を実行する処理実行部と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記加速度のスペクトル波形を得て、前記スペクトル波形から前記共振が発生しているか否かを判定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記検知部は、
前記加速度の絶対値が閾値を超えるか否かに応じて衝撃が発生しているか否かを判定し、
前記無人搬送車の移動において発生した前記共振と前記衝撃との両方を異常として検知する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記処理実行部は、
前記異常を検知した異常発生位置を記憶装置に記憶させ、
前記異常の発生が検知された後に前記異常発生位置を通るとき、前記異常が発生していない場合の移動速度として設定された第1速度より遅い第2速度で前記無人搬送車を移動させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
移動の前に、前記目的地までの移動経路を決定する経路決定部をさらに備え、
前記処理実行部は、前記異常発生位置において、前記無人搬送車を前記第2速度で移動させている間に前記異常が再度検知された場合、前記記憶装置に記憶させた異常発生位置を、前記無人搬送車が通行できない通行禁止位置に更新し、
前記経路決定部は、前記移動経路として、前記通行禁止位置を通らない移動経路を決定する、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記処理実行部は、前記共振が検知された場合、前記無人搬送車の移動速度を、現在の速度である第3速度から減速させる、請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
減速後の速度での移動において、前記共振が継続しているか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記処理実行部は、前記共振が継続していると判定された場合、前記共振が継続していないと判定されるまで、段階的に前記無人搬送車を減速させる、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
減速後の速度での移動において、前記共振が継続しているか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記処理実行部は、前記共振が継続していないと判定された場合、前記無人搬送車の移動速度を前記第3速度に戻す、請求項6または7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記載置物は、前記目的地まで運搬される運搬対象物を含み、
前記運搬対象物は、前記無人搬送車または前記運搬対象物以外の前記載置物に設けられた載置部に載置され、
前記加速度取得部は、前記載置部に発生した加速度を取得する、請求項1から8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の制御装置が設けられた無人搬送車。
【請求項11】
載置物を載置して移動する無人搬送車の制御方法であって、
加速度センサが検知した前記無人搬送車の移動において発生した加速度を取得する加速度取得ステップと、
前記加速度センサから取得した加速度に基づいて、前記無人搬送車の移動において発生した共振を異常として検知する検知ステップと、
前記異常を検知した場合、前記無人搬送車の移動を継続しつつ、異常の再発生を防ぐ処理を実行する処理実行ステップと、を含む制御方法。
【請求項12】
請求項1に記載の制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記加速度取得部、前記検知部および前記処理実行部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置物を載置して目的地まで移動する無人搬送車を制御する制御装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行する鉄道車両の異常振動を捉え、走行装置部品の不具合を検知する技術が開示されている。
【0003】
また、従来、載置物を載置して目的地まで移動する無人搬送車がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-51518号公報(2011年3月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無人搬送車において異常振動(例えば、共振)が発生すると、載置物が落下するなどして破損するおそれがある。しかしながら、引用文献1の技術を無人搬送車に適用しても、異常振動の発生を検知するのみであり、無人搬送車のユーザが何らかの対応をとらない限り、異常振動を解消することはできない。すなわち従来の技術は、無人搬送車に発生した不具合を自動で解消することができない。
【0006】
本発明の一態様は、無人搬送車に発生した不具合を自動で解消する、無人搬送車の制御装置などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち、本開示の一側面に係る制御装置は、載置物を載置して目的地まで移動する無人搬送車を制御する制御装置であって、前記無人搬送車の移動において発生した加速度を取得する加速度取得部と、取得した加速度に基づいて、前記無人搬送車の移動において発生した共振および衝撃の少なくとも一方を異常として検知する検知部と、前記異常を検知した場合、前記無人搬送車の移動を継続しつつ、異常の再発生を防ぐ処理を実行する処理実行部と、を備える。当該構成では、異常を検知した場合、処理実行部が異常の再発生を防ぐ処理を実行する。これにより、制御装置は、無人搬送車に発生した不具合を自動で解消することができる。
【0009】
載置物とは、無人搬送車に載置可能な物体である。載置物は、例えば、マニピュレータなどの機械装置を含む。この場合、無人搬送車とマニピュレータとにより、移動可能なマニピュレータ(移動ロボット)が実現される。また、載置物は、例えば、ワークや荷物といった、ある位置から別の位置へ運搬される運搬対象物を含む。また、載置物は、上記機械装置および上記運搬対象物の両方であってもよい。すなわち、移動ロボットに運搬物が載置されてもよい。
【0010】
加速度取得部による加速度の取得元は、制御装置と異なる装置(外部装置)と、制御装置自体とを含む。前者の一例は、加速度センサである。前者の別の例は、特定の物理量から加速度を算出する装置である。特定の物理量は、例えば、変位、速度など、加速度を算出可能な物理量であればよい。また、後者は、例えば、制御装置が外部装置から特定の物理量を取得し、該物理量から加速度を算出し、該加速度を加速度取得部が取得する構成である。
【0011】
異常の再発生を防ぐ処理は、発生した異常の継続を防ぐ処理と、異常が発生した位置を無人搬送車が再度通行するときに、同様の異常が発生することを防ぐ処理とを含む。
【0012】
上記一側面に係る制御装置において、移動の前に、前記目的地までの移動経路を決定する経路決定部をさらに備え、前記処理実行部は、前記異常を検知した異常発生位置を記憶装置に記憶させ、前記経路決定部は、前記移動経路として、前記異常発生位置を通らない移動経路を決定してもよい。当該構成によれば、異常発生位置を通行しないこととなるので、異常の再発生を防ぐことができる。
【0013】
上記一側面に係る制御装置において、前記処理実行部は、前記異常を検知した異常発生位置を記憶装置に記憶させ、前記異常の発生が検知された後に前記異常発生位置を通るとき、前記異常が発生していない場合の移動速度として設定された第1速度より遅い第2速度で前記無人搬送車を移動させてもよい。当該構成によれば、速度を落として異常発生位置を通行するので、共振の発生を防いだり、衝撃を緩和したりすることができる。すなわち、異常の再発生を防ぐことができる。
【0014】
上記一側面に係る制御装置において、移動の前に、前記目的地までの移動経路を決定する経路決定部をさらに備え、前記処理実行部は、前記異常発生位置において、前記無人搬送車を前記第2速度で移動させている間に前記異常が再度検知された場合、前記記憶装置に記憶させた異常発生位置を、前記無人搬送車が通行できない通行禁止位置に更新し、前記経路決定部は、前記移動経路として、前記通行禁止位置を通らない移動経路を決定してもよい。当該構成によれば、速度を落として異常発生位置を通行しても、異常が発生する場合は、異常発生位置を通行しないこととなるので、以降の異常の再発生を防ぐことができる。
【0015】
上記一側面に係る制御装置において、前記処理実行部は、前記共振が検知された場合、前記無人搬送車の移動速度を、現在の速度である第3速度から減速させてもよい。当該構成によれば、共振が検知された場合に速度を落とすので、無人搬送車や載置物に発生する加速度の値が変化する。結果として、無人搬送車や載置物に発生した共振を解消することができる。
【0016】
上記一側面に係る制御装置において、減速後の速度での移動において、前記共振が継続しているか否かを判定する判定部をさらに備え、前記処理実行部は、前記共振が継続していると判定された場合、前記共振が継続していないと判定されるまで、段階的に前記無人搬送車を減速させてもよい。当該構成によれば、速度の低下を抑えることができるので、無人搬送車の作業効率の低下を抑えることができる。
【0017】
上記一側面に係る制御装置において、減速後の速度での移動において、前記共振が継続しているか否かを判定する判定部をさらに備え、前記処理実行部は、前記共振が継続していないと判定された場合、前記無人搬送車の移動速度を前記第3速度に戻してもよい。当該構成によれば、共振が解消された場合に移動速度を元に戻すので、無人搬送車の作業効率の低下を抑えることができる。
【0018】
上記一側面に係る制御装置において、前記載置物は、前記目的地まで運搬される運搬対象物を含み、前記運搬対象物は、前記運搬対象物以外の前記載置物または前記無人搬送車に設けられた載置部に載置され、前記加速度取得部は、前記載置部に発生した加速度を取得してもよい。当該構成によれば、載置部に発生した加速度を取得するので、運搬対象物に対する異常を正確に検知することができる。結果として、運搬対象物が落下などで破損する可能性が高い状況を正確に検知し、運搬対象物の破損を防ぐことができる。
【0019】
また、本開示の一側面に係る無人搬送車において、上記一側面に係る制御装置が設けられてもよい。当該構成によれば、制御装置が無人搬送車に設けられていない構成と比べて、異常の再発生を防ぐ処理を迅速に行うことができる。例えば、共振を検知した場合に、迅速に移動速度を落とし、共振の継続を防ぐことができる。
【0020】
また、本開示の一側面に係る無人搬送車の制御方法は、載置物を載置して移動する無人搬送車の制御方法であって、前記無人搬送車の移動において発生した加速度を取得する加速度取得ステップと、取得した加速度に基づいて、前記無人搬送車の移動において発生した共振および衝撃の少なくとも一方を異常として検知する検知ステップと、前記異常を検知した場合、前記無人搬送車の移動を継続しつつ、異常の再発生を防ぐ処理を実行する処理実行ステップと、を含む。当該構成では、異常を検知した場合、異常の再発生を防ぐ処理を実行する。これにより、無人搬送車に発生した不具合を自動で解消することができる。
【0021】
また、本開示の一側面に係る制御プログラムは、上記一側面に係る制御装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記加速度取得部、上記検知部および上記処理実行部としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、無人搬送車に発生した不具合を自動で解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る移動ロボットが備える制御装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す移動ロボットおよび該移動ロボットが備える無人搬送車の外観の一例を示す図である。
【
図3】
図1に示す制御装置が記憶しているマップと、移動ロボットの移動経路との具体例を示す図である。
【
図4】
図1に示す制御装置が実行する異常再発防止処理の流れの一例について、その一部を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示す制御装置が実行する異常再発防止処理の流れの一例について、その一部を示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示す制御装置が記憶しているマップと、移動ロボットの移動経路との更新例を示す図である。
【
図7】
図1に示す制御装置が実行する異常再発防止処理の流れの他の例について、その一部を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示す制御装置が実行する異常再発防止処理の流れの他の例について、その一部を示すフローチャートである。
【
図9】
図1に示す制御装置が記憶しているマップと、移動ロボットの移動経路との更新例を示す図である。
【
図10】
図1に示す移動ロボットの外観の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。
【0025】
§1 適用例
図1は、本実施形態に係る移動ロボットが備える制御装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
図2は、本実施形態に係る移動ロボットおよび移動ロボットが備える無人搬送車の外観の一例を示す図である。
【0027】
まず、
図1および
図2を用いて、本発明が適用される場面の一例について説明する。本実施形態に係る移動ロボットは、
図1および
図2に示す移動ロボット100であってもよい。
【0028】
図1および
図2の(a)に示されるとおり、移動ロボット100は、無人搬送車2およびマニピュレータ3を備える。
図2の(a)に示されるとおり、マニピュレータ3は、一例として、ロボットアーム11、筐体部15および載置台16(載置部)を備える。
図2の(a)に示すマニピュレータ3は、例えば、ロボットアーム11により、ストッカ(不図示)に載置されたワークを把持し、載置台16に移動させる。無人搬送車2は、移動ロボット100の目的地への移動を実現する。換言すれば、無人搬送車2は、マニピュレータ3を載置して目的地まで移動する。移動ロボット100は、無人搬送車2およびマニピュレータ3を含むことにより、例えば、出発位置から或るストッカまで移動し、該ストッカに載置されたワークを載置台16に移動させるといった動作を実現することができる。また、移動ロボット100は、例えば、或るストッカから別のストッカまで移動し、載置台16に載置されたワークを該別のストッカへ移動させる、といった動作を実現することができる。
【0029】
なお、マニピュレータ3およびワークは、本発明の「載置物」、すなわち無人搬送車2に載置される載置物の一例である。
図2の(b)に示されるタップ穴22の少なくとも一部を用いることにより、マニピュレータ3を無人搬送車2の上に固定してもよい。載置物は、無人搬送車2に載置可能なあらゆるものを含んでよく、例えば、上述したマニピュレータ3などの機械装置、上述したワークなどの運搬対象物を含む。運搬対象物とは、ある位置から別の位置へ無人搬送車2により移動される物体であり、換言すれば、無人搬送車2により目的地まで運搬される物体である。
【0030】
また、
図1の例では、移動ロボット100は、加速度センサ4を備える。加速度センサ4は、移動ロボット100の移動、すなわち無人搬送車2の移動において発生した加速度を検知する。
図2の(b)に示されるとおり、加速度センサ4は、無人搬送車2に設けられてもよい。また、加速度センサ4としては、既存の加速度センサを用いることができる。
【0031】
また、
図1の例では、移動ロボット100は、制御装置1を備える。制御装置1は、無人搬送車2の移動を制御する。
【0032】
詳細には、制御装置1は、加速度センサ4が検知した加速度を取得し、該加速度に基づいて、無人搬送車2の移動において発生した共振または衝撃を異常として検知する。制御装置1は、該異常を検知した場合、無人搬送車2の移動を継続しつつ、異常の再発生を防ぐ処理を実行する。これにより、制御装置1は、共振または衝撃の再発生を防ぎ、無人搬送車2、マニピュレータ3、ワークの破損を自動で防ぐことができる。換言すれば、制御装置1は、無人搬送車2に発生した不具合を自動で解消することができる。なお、一例として、制御装置1は無人搬送車2に設けられてもよい。これにより、制御装置1が無人搬送車2に設けられていない構成と比べて、異常の再発生を防ぐ処理を迅速に行うことができる。
【0033】
なお、制御装置1が実行する異常の再発生を防ぐ処理は、発生した異常の継続を防ぐ処理と、異常が発生した位置を無人搬送車が再度通行するときに、同様の異常が発生することを防ぐ処理とを含む。
【0034】
§2 構成例
(移動ロボット100)
移動ロボット100は、
図1の例では、上述した無人搬送車2、マニピュレータ3および加速度センサ4の他、通信装置5を備える。
【0035】
通信装置5は、移動ロボット100と、別装置との情報の送受信を行うための装置である。通信装置5は、一例として、無線通信により別装置との情報の送受信を行う。
【0036】
(制御装置1)
制御装置1は、
図1の例では、制御部10および記憶部20(記憶装置)を備える。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などを含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。記憶部20は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置であり、制御部10で実行されるプログラム、制御部10が使用する各種データを記憶する。記憶部20は、例えば、
図1に示されるとおり、加速度閾値111、速度設定112、マップ113を記憶していてもよい。
【0037】
制御部10は、経路決定部101(経路決定部)、加速度取得部102、FFT実行部103、異常判定部104(検知部、判定部)、移動制御部105(処理実行部)、マップ更新部106(処理実行部)および通知部107を含む。
【0038】
経路決定部101は、無人搬送車2(移動ロボット100)の移動の前に、移動開始位置から目的地までの移動経路を決定する。経路決定部101は、例えば、移動開始位置および目的地を示す情報を、通信装置5を介して取得する。該情報の送信元は、例えば、生産管理等を行う管理サーバ、または製造ラインの装置制御を行うコントローラ等である。
【0039】
図3は、マップ113および移動経路の具体例を示す図である。マップ113は、移動ロボット100が移動するエリアのマップであり、例えば、移動ロボット100が作業する工場などの施設における、少なくとも一部のエリアのマップである。
【0040】
図3の(a)に示されるとおり、マップ113は、走行可能エリア31および走行禁止エリア32(通行禁止位置)を少なくとも含む。走行可能エリア31は、移動ロボット100が走行することができるエリアである。走行禁止エリア32は、移動ロボット100が走行することができないエリアである。
【0041】
制御装置1は、移動ロボット100の移動に基づいて走行可能エリア31および走行禁止エリア32を特定し、マップ113を生成してもよい。一例として、ユーザは、移動ロボット100を作業させる前に、移動ロボット100とともに、移動ロボット100が作業するエリアを移動する。制御装置1は、一例として、移動ロボット100に設けられた障害物を検知するセンサ(不図示)の検知結果に基づき、マップ113に走行可能エリア31および走行禁止エリア32を設定することにより、マップ113を生成する。
【0042】
経路決定部101は、移動開始位置および目的地を示す情報を取得すると、
図3の(b)に示すとおり、マップ113に移動開始位置33および目的地34を設定する。また、経路決定部101は、移動開始位置33から目的地34までの、移動ロボット100の移動経路35を決定する。移動経路35は、走行可能エリア31および走行禁止エリア32のうち、走行可能エリア31のみを通る。経路決定部101は、走行可能エリア31のみを通り、移動開始位置33から目的地34まで移動できる移動経路が複数ある場合、例えば、最も距離が短い移動経路を、移動経路35として決定してもよい。なお、複数の移動経路から1つの移動経路(すなわち移動経路35)を選択する条件は、「最も距離が短い移動経路」に限定されない。例えば、経路決定部101は、移動時間が最も短い移動経路を選択してもよいし、最も障害物が少ない移動経路を選択してもよい。また、複数の移動経路から1つの移動経路を選択する条件を、ユーザが設定可能であってもよい。
【0043】
経路決定部101が、移動ロボット100の移動経路を決定することにより、上述したとおり、マップ113には、移動開始位置33、目的地34および移動経路35が設定される。
【0044】
なお、例えば移動ロボット100が、常に所定の2箇所を往復する場合、移動開始位置33および目的地34は、予めマップ113に設定されていてもよい。この場合、経路決定部101は、移動開始位置および目的地を示す情報を外部から取得することなく、移動経路35を決定することができる。
【0045】
移動制御部105は、移動ロボット100の移動、すなわち無人搬送車2の移動を制御する。移動制御部105は、移動開始指示に従い、マップ113を参照して、移動開始位置から目的地まで、決定された移動経路を通って移動する。移動開始指示は、例えば、上述した、移動開始位置および目的地を示す情報とともに受信してもよい。この例の場合、移動ロボット100は、マップ113に、移動開始位置33、目的地34および移動経路35を設定すると、移動を開始する。
【0046】
移動制御部105は、移動を開始するにあたり、記憶部20に記憶されている速度設定112を参照する。速度設定112は、例えば、複数の速度の情報を含む。複数の速度の情報には、無人搬送車2の移動開始時の速度を示す初期速度情報が含まれる。移動制御部105は、初期速度情報が示す速度(第3速度)で、無人搬送車2の移動を開始する。本実施形態では、複数の速度の情報が示す速度の各々のうち、初期速度情報が示す速度が最も速い速度であるものとして説明するが、複数の速度の情報が示す速度の大小はこの例に限定されない。
【0047】
また、移動制御部105は、無人搬送車2の移動において異常が検知された場合、無人搬送車の移動を継続しつつ、異常の再発生を防ぐ処理を実行する。この処理の詳細については後述する。
【0048】
加速度取得部102は、加速度センサ4から加速度を取得する。加速度取得部102は、例えば、加速度センサ4から継続して加速度を取得、すなわち、加速度の時系列データを取得する。加速度取得部102は、取得した加速度をFFT実行部103へ出力する。加速度取得部102は、換言すれば、移動ロボット100において発生している振動の時系列データを取得する、と表現することもできる。
【0049】
FFT実行部103は、取得した加速度に基づいて、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、以下、「FFT」と記載)を実行する。これにより、FFT実行部103は、加速度(振動)の経時変化からスペクトル波形を特定する。このスペクトル波形により、加速度の経時変化に含まれる周波数と、その周波数の振幅とを特定することができる。FFT実行部103は、スペクトル波形と、取得した加速度の時系列データとを異常判定部104へ出力する。
【0050】
異常判定部104は、取得した加速度に基づいて、移動ロボット100、換言すれば無人搬送車2の移動において発生した共振または衝撃を異常として検知する。具体的には、異常判定部104は、取得したスペクトル波形から、移動ロボット100において、共振が発生しているか否かを判定する。また、異常判定部104は、取得した加速度の時系列データから、移動ロボット100において、衝撃が発生しているか否かを判定する。そして、異常判定部104は、判定結果に基づく指示を移動制御部105およびマップ更新部106へ出力する。なお、判定の詳細については後述する。
【0051】
マップ更新部106は、異常判定部104からの指示に基づき、マップ113を更新する。この処理は、無人搬送車2の移動において異常が検知された場合の、異常の再発生を防ぐ処理である。この処理の詳細については後述する。
【0052】
通知部107は、移動制御部105およびマップ更新部106からの指示に従い、通信装置5を介して、移動ロボット100のユーザへの通知を行う。この通知の詳細については後述する。
【0053】
(マニピュレータ3)
ロボットアーム11は、一例として、関節部12、ワーク把持部13およびカメラ14を備える。
【0054】
関節部12は、ロボットアーム11を、任意の方向に回転および屈曲可能にする。ロボットアーム11が備える関節部12は、1つでもよく、複数でもよい。また、ロボットアーム11における、筐体部15に取り付けられる側の端部は、回転および屈曲可能な状態で筐体部15に取り付けられる。
【0055】
ワーク把持部13は、例えば、ワークを真空吸着可能なバキュームパッドを備える。バキュームパッドを備えることにより、ワーク把持部13は、ワークの把持を実現することができる。なお、ワーク把持部13が備える、ワークの把持を実現するための機構は、バキュームパッドに限定されない。ワーク把持部13は、例えば、ワークを挟んで把持するための1対の爪部を備えてもよい。
【0056】
カメラ14は、撮像対象を3次元的に認識可能な固体撮像素子およびレンズを備える。固体撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどが用いられてもよい。このような構成によれば、把持対象となるワークの空間的位置を正確に把握することができる。なお、カメラ14は上述の例に限定されない。例えば、カメラ14は、2次元画像の撮像のみ可能な固体撮像素子およびレンズを備えていてもよい。
【0057】
また、カメラ14は、ワーク把持部13を備えるロボットアーム11でなく、カメラ14専用のロボットアームに備えられていてもよい。このような構成によれば、ワークの搬送と、カメラ14による撮像動作を独立して行うことができる。
【0058】
カメラ14が撮像した撮像情報は、マニピュレータ3を制御する制御装置(不図示)に入力される。なお、制御装置1が、マニピュレータ3を制御する制御装置を兼ねてもよい。また、上記撮像情報は、マニピュレータ3を制御する制御装置が備える記憶部、または、図示しない記憶装置に記憶されてもよい。制御装置1が、マニピュレータ3を制御する構成の場合、上記撮像情報は、記憶部20に記憶されてもよい。
【0059】
なお、移動ロボット100が備えるマニピュレータ3は、ロボットアーム11を備えるものに限定されない。すなわちユーザは、移動ロボット100の使用目的に応じて、様々なマニピュレータ3を無人搬送車2に設置することができる。
【0060】
§3 動作例
(異常再発防止処理の流れ)
図4は、制御装置1が実行する異常再発防止処理の流れの一例について、その一部を示すフローチャートである。なお、
図4に示す異常再発防止処理の前提として、移動ロボット100は、移動開始位置にいるものとする。
【0061】
経路決定部101は走行ルート、すなわち移動経路を決定する(ステップS1、以下、括弧内において「ステップ」の記載を省略)。具体的には、経路決定部101は、通信装置5を介して移動開始指示を受信すると、該移動開始指示に含まれる、移動開始位置および目的地を示す情報に基づいて、マップ113に移動開始位置33および目的地34を設定する。さらに、経路決定部101は、移動開始位置33から目的地34への移動経路35を決定し、マップ113に設定する。経路決定部101は、マップ113へのこれらの設定が終了すると、移動開始指示を移動制御部105へ出力する。
【0062】
移動制御部105は、移動開始指示を取得すると、無人搬送車2の移動を開始させる(S2)。具体的には、移動制御部105は、マップ113を参照し、無人搬送車2を、移動開始位置から、決定した移動経路を通って目的地へ移動させる。また、移動制御部105は、速度設定112を参照し、初期速度情報が示す速度で無人搬送車2を移動させる。
【0063】
無人搬送車2の移動が開始されると、加速度取得部102は、加速度の時系列データを取得する(S3、加速度取得ステップ)。加速度取得部102は、取得した加速度の時系列データをFFT実行部103へ出力する。FFT実行部103は、取得した加速度の時系列データに基づいてFFTを実行し、メインスペクトルを演算する(S4)。具体的には、FFT実行部103は、FFTを実行することにより、スペクトル波形を特定する。そして、FFT実行部103は、該スペクトル波形と、取得した加速度の時系列データとを異常判定部104へ出力する。
【0064】
異常判定部104は、取得したスペクトル波形に基づいて、移動ロボット100が共振状態にあるか否かを判定する(S5、検知ステップ)。具体的には、異常判定部104は、取得したスペクトル波形が、以下の条件(1)または(2)を満たすか否かを判定する。(1)メインスペクトルが1つのみである、(2)倍数周期のスペクトルしかない。条件(1)は、振幅が所定の第1閾値を超えるスペクトルであるメインスペクトルが1つのみである、という条件である。換言すれば、条件(1)は、移動ロボット100において共振が発生していることを示す条件である。なお、所定の第1閾値は、加速度閾値111として、記憶部20に記憶されていてもよい。条件(2)は、所定の第1閾値を超えるスペクトルがすべて倍数周期のスペクトルである、という条件である。換言すれば、条件(2)は、振動において、互いに強め合う周波数成分のみが存在することを示す条件である。条件(1)および(2)はいずれも、共振が発生している可能性が高いことを示す条件である。
【0065】
共振状態にあると判定した場合(S5でYES)、すなわち、条件(1)または(2)を満たすと判定した場合(S5でYES)、異常判定部104は、共振を解消させるための指示を移動制御部105へ出力する。移動制御部105は、該指示に従って、無人搬送車2の走行速度を減速させる(S6、処理実行ステップ)。具体的には、移動制御部105は、速度設定112を参照して、減速情報が示す速度に、無人搬送車2の速度を変更する。減速情報は、複数の速度の情報の1つである。減速情報が示す速度は、初期速度情報が示す速度より遅い速度である。減速情報は複数の異なる速度を示す情報であってもよい。この例の場合、移動制御部105は、減速情報から、現在の速度より遅く、かつ、現在の速度に最も近い速度を選択する。ここでは、現在の速度は初期速度情報が示す速度であるため、移動制御部105は、複数の速度のうち、最も速い速度を選択する。
【0066】
移動制御部105は、無人搬送車2の走行速度を減速させると、その旨をFFT実行部103に通知する。FFT実行部103は、該通知を受けると、FFTを実行し、メインスペクトルを演算する(S7)。そして、FFT実行部103は、スペクトル波形を異常判定部104へ出力する。
【0067】
異常判定部104は、移動ロボット100が共振状態にあるか否かを判定する(S8)。すなわち、異常判定部104は、移動ロボット100において発生した共振が、減速後も継続しているか否かを判定する。判定方法については、ステップS5で説明した方法と同一であるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0068】
共振状態にないと判定した場合(S8でNO)、すなわち、移動ロボット100において発生した共振が、減速により解消された場合、異常判定部104は、共振が解消したことを示す通知を移動制御部105へ出力する。移動制御部105は、該通知を受けると、速度設定112を参照して、走行速度を初期値、すなわち初期速度情報が示す速度に戻す(S9)。
【0069】
移動制御部105は、無人搬送車2の移動中において、マップ113を参照しながら、無人搬送車2、換言すれば移動ロボット100の現在位置を認識する。すなわち、移動制御部105は、移動ロボット100が目的地(ゴール)に到達したか否かを判定している(S10)。移動制御部105は、移動ロボット100が目的地に到達したと判定した場合(S10でYES)、移動ロボット100を停止させ、また、異常再発防止処理を終了する。一方、移動ロボット100が目的地に到達していない、すなわち、まだ移動中であると判定した場合(S10でNO)、移動制御部105は、移動ロボット100の移動を継続させる。また、異常再発防止処理はステップS3に戻る。
【0070】
一方、ステップS8において、共振状態にあると判定した場合(S8でYES)、異常判定部104は、共振を解消させるための指示を移動制御部105へ出力する。移動制御部105は、該指示に従って、無人搬送車2の走行速度をさらに減速可能であるか否かを判定する(S11)。具体的には、移動制御部105は、速度設定112を参照して、減速情報において、現在の速度より遅い速度があるか否かを判定する。減速可能であると判定した場合(S11でYES)、すなわち、減速情報において、現在の速度よりさらに遅い速度があると判定した場合、異常再発防止処理はステップS6に戻る。つまり、移動制御部105は、無人搬送車2の走行速度をさらに減速させる。
【0071】
一方、減速可能でない場合(S11でNO)、すなわち、減速情報において、現在の速度より遅い速度が無いと判定した場合、移動制御部105は、無人搬送車2を停止させ、移動ロボット100のユーザへの通知を通知部107へ指示する(S12)。この通知は、共振を解消できないことを示す通知である。通知部107は、移動制御部105からの指示に従い、該ユーザへの通知を実行する。そして、異常再発防止処理は終了する。
【0072】
例えば、通知部107は、通信装置5を介して、ユーザの端末装置へ通知情報を送信する。これにより、端末装置は、共振を解消できず移動ロボット100を停止させたことを、ユーザに通知することができる。端末装置が実行する通知の方法は特に限定されない。例えば、端末装置は、共振を解消できず移動ロボット100を停止させたことを示すテキストや画像を、端末装置の表示部に表示させてもよい。また、例えば端末装置は、この表示に代えて、あるいは加えて、自装置に設けられた音声出力部から音声を出力させたり、自装置に設けられた点灯部を点灯または点滅させたりしてもよい。
【0073】
また、通知部107が実行する処理も、ユーザの端末装置への通知情報の送信に限定されない。例えば、通知部107は、移動ロボット100が備える音声出力部(不図示)から音声を出力してもよいし、移動ロボット100が備える点灯部(不図示)を点灯または点滅させてもよい。すなわち、ユーザへの通知は、ユーザが移動ロボット100に問題が発生したことを認識できるものであれば、その方法は特に限定されない。
【0074】
ステップS5において、共振状態にないと判定した場合(S5でNO)、異常判定部104は、取得した加速度の時系列データにおいて、加速度の絶対値を特定する(S13)。そして、異常判定部104は、特定した加速度の絶対値のうち、所定の第2閾値を超える絶対値があるか否かを判定する(S14、検知ステップ)。換言すれば、異常判定部104は、移動ロボット100に衝撃が発生したか否かを判定する。なお、所定の第2閾値は、加速度閾値111として、記憶部20に記憶されている。所定の第2閾値を超える絶対値があると判定した場合(S14でYES)、異常再発防止処理は
図4に示す「A」に進む。所定の第2閾値を超える絶対値が無いと判定した場合(S14でNO)、異常再発防止処理はステップS10へ進む。
【0075】
図5は、制御装置1が実行する異常再発防止処理の流れの一例について、その一部を示すフローチャートである。具体的には、
図5は、
図4に示す「A」以降の処理を示すフローチャートである。
【0076】
所定の第2閾値を超える絶対値があると判定した場合(S14でYES)、異常判定部104は、衝撃の再発を防止するための指示をマップ更新部106へ出力する。マップ更新部106は、該指示に従い、第2の閾値を超えた加速度を取得した地点(異常発生位置)をマップ113に記録する(S15)。マップ更新部106は、一例として、移動ロボット100の現在位置および速度、並びに、第2の閾値を超えた加速度を取得した時間に基づいて、第2の閾値を超えた加速度を取得した地点を特定する。
【0077】
図6は、マップ113および移動経路の更新例を示す図である。マップ更新部106は、記録した地点を走行禁止エリアに追加する(S16、処理実行ステップ)。マップ更新部106は、例えば、
図6の(a)に示されるとおり、記録した地点を、新たな走行禁止エリア32Aとしてマップ113に追加する。そして、マップ更新部106は、更新後のマップ113に基づいて移動経路を決定するよう、経路決定部101へ指示する。
【0078】
経路決定部101は指示に従い、走行禁止エリア32Aを通らない、新たな移動経路を作成可能か否か判定する(S17)。作成可能と判定した場合(S17でYES)、異常再発防止処理は
図5に示す「B」に進む。すなわち、異常再発防止処理は、
図4のステップS10へ進む。
【0079】
一方、作成不可能と判定した場合(S17でNO)、異常再発防止処理は
図5に示す「C」に進む。すなわち、異常再発防止処理は、
図4のステップS12へ進む。具体的には、経路決定部101は、一例として、走行経路を作成することができない旨を、マップ更新部106へ通知する。該通知を受けると、マップ更新部106は、移動制御部105へ指示して無人搬送車2を停止させ、さらに、移動ロボット100のユーザへの通知を通知部107へ指示する(S12)。この通知は、次の移動において衝撃の発生を回避できないことを示す通知である。通知部107は、マップ更新部106からの指示に従い、該ユーザへの通知を実行する。そして、異常再発防止処理は終了する。
【0080】
[作用・効果]
以上のとおり、本実施形態に係る制御装置1は、無人搬送車2の移動において発生した加速度を取得し、該加速度に基づいて、無人搬送車2の移動において発生した共振および衝撃の少なくとも一方を異常として検知する。制御装置1は、異常を検知した場合、無人搬送車2の移動を継続しつつ、異常の再発生を防ぐ処理を実行する。これにより、制御装置1は、無人搬送車に発生した不具合を自動で解消することができる。
【0081】
制御装置1は、一例として、共振の発生を検知した場合、無人搬送車2の移動速度を減速させる。これにより、移動ロボット100に発生する加速度の値が変化するので、制御装置1は、発生した共振を解消することができる。
【0082】
また、制御装置1は、一例として、減速後の速度での移動において、共振が継続していると判定した場合、共振が継続していないと判定されるまで、段階的に無人搬送車2を減速させる。これにより、制御装置1は、速度の低下を抑えることができるので、移動ロボット100の作業効率の低下を抑えることができる。
【0083】
また、制御装置1は、一例として、減速後の速度での移動において、共振が継続していないと判定した場合、無人搬送車2の移動速度を初期速度情報が示す速度に戻す。これにより、制御装置1は、速度の低下を抑えることができるので、移動ロボット100の作業効率の低下を抑えることができる。
【0084】
また、制御装置1は、一例として、移動ロボット100に対する衝撃の発生を検知した場合、マップ113において、その地点を走行禁止エリア32に追加する。これにより、制御装置1の経路決定部101は、次の移動において、走行禁止エリア32を通らない新たな移動経路を決定する。例えば、移動ロボット100が目的地での作業を終え、移動開始位置へ戻るとする。この場合において、経路決定部101は、前回の移動経路、すなわち、衝撃が発生した移動経路ではなく、例えば
図6の(b)の例のように新たな移動経路35Aを決定する。これにより、移動ロボット100は、次の移動において、衝撃が発生した位置を通行しないため、衝撃の再度の発生を防ぐことができる。
【0085】
§4 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。そして、本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については説明を繰り返さない。また、以下の変形例は適宜組み合わせが可能である。
【0086】
<4.1>
図7は、制御装置1が実行する異常再発防止処理の流れの他の例について、その一部を示すフローチャートである。
【0087】
図8は、制御装置1が実行する異常再発防止処理の流れの他の例について、その一部を示すフローチャートである。具体的には、
図8の(a)は、
図7に示す「D」以降の処理を示すフローチャートである。また、
図8の(b)は、
図7に示す「E」以降の処理を示すフローチャートである。
【0088】
本開示に係る制御装置1が実行する異常再発防止処理の流れは、例えば、
図7および
図8に示すものであってもよい。なお、
図7に示すステップS21~S25は、
図4に示すステップS1~S5と同一の処理を実行するステップであるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0089】
ステップS25でNOの場合、異常判定部104は、取得した加速度の時系列データにおいて、加速度の絶対値を特定する(S32)。そして、異常判定部104は、特定した加速度の絶対値のうち、所定の第2閾値を超える絶対値があるか否かを判定する(S33)。これらの処理は、
図4に示すステップS13およびS14と同一の処理であるので、その詳細についての説明を繰り返さない。
【0090】
所定の第2閾値を超える絶対値が無いと判定した場合(S33でNO)、異常判定部104は、その旨を移動制御部105へ通知する。そして、異常再発防止処理はステップS35へ進む。なお、ステップS35は、
図4に示すステップS10と同一の処理を実行するステップであるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0091】
一方、所定の第2閾値を超える絶対値があると判定した場合(S33でYES)、異常判定部104は、マップ113を参照して、移動ロボット100が移動しているエリアが、無人搬送車2を減速させて通行する減速エリアであるか否かを判定する(S34)。減速エリアでないと判定した場合(S34でNO)、異常再発防止処理は
図7に示す「D」に進む。なお、移動制御部105は、移動ロボット100が減速エリアに侵入した場合、一例として、無人搬送車2の移動速度を初期速度情報が示す速度(第1速度)から、減速情報が示す速度(第2速度)に変更して、移動ロボット100を移動させる。
【0092】
減速エリアでないと判定した場合(S34でNO)、異常判定部104は、衝撃の再発を防止するための指示をマップ更新部106へ出力する。マップ更新部106は、該指示に従い、第2の閾値を超えた加速度を取得した地点をマップ113に記録する(S36)。
【0093】
図9は、マップ113および移動経路の更新例を示す図である。マップ更新部106は、記録した地点を減速エリアに追加する(S37)。マップ更新部106は、例えば、
図9の(a)に示されるとおり、記録した地点を、新たな減速エリア36としてマップ113に追加する。そして、異常再発防止処理は
図8の(a)に示す「F」に進む。すなわち、異常再発防止処理は、
図7のステップS35へ進む。
【0094】
一方、ステップS34において、減速エリアであると判定した場合(S34でYES)、異常再発防止処理は
図7に示す「E」に進む。
【0095】
減速エリアであると判定した場合(S34でYES)、異常判定部104は、衝撃の再発の防止方法を変更するための指示をマップ更新部106へ出力する。マップ更新部106は、該指示に従い、減速エリアを走行禁止エリアに変更する(S38)。そして、マップ更新部106は、更新後のマップ113に基づいて移動経路を決定するよう、経路決定部101へ指示する。
【0096】
経路決定部101は指示に従い、走行禁止エリアを通らない、新たな移動経路を作成可能か否か判定する(S39)。作成可能と判定した場合(S39でYES)、異常再発防止処理は
図8に示す「F」に進む。すなわち、異常再発防止処理は、
図7のステップS35へ進む。
【0097】
一方、作成不可能と判定した場合(S39でNO)、異常再発防止処理は
図8に示す「G」に進む。すなわち、経路決定部101は、一例として、走行経路を作成することができない旨を、マップ更新部106へ通知する。該通知を受けると、マップ更新部106は、移動制御部105へ指示して無人搬送車2を停止させ、さらに、移動ロボット100のユーザへの通知を通知部107へ指示する(S31)。この通知は、次の移動において、衝撃の発生、具体的には、第2の閾値以上の加速度の発生を回避できないことを示す通知である。通知部107は、マップ更新部106からの指示に従い、該ユーザへの通知を実行する。そして、異常再発防止処理は終了する。通知部107が実行する通知処理の詳細については、上述した実施形態で既に説明しているため、ここでは説明を繰り返さない。
【0098】
ステップS25でYESの場合、異常判定部104は、マップ113を参照して、移動ロボット100が移動しているエリアが減速エリアであるか否かを判定する(S26)。減速エリアでないと判定した場合(ステップS26でNO)、異常判定部104は、共振を解消させるための指示を移動制御部105へ出力する。移動制御部105は、該指示に従って、無人搬送車2の走行速度を減速させる(S27)。移動制御部105は、無人搬送車2の走行速度を減速させると、その旨をFFT実行部103に通知する。FFT実行部103は、該通知を受けると、FFTを実行し、メインスペクトルを演算する(S28)。そして、FFT実行部103は、スペクトル波形を異常判定部104へ出力する。異常判定部104は、移動ロボット100が共振状態にあるか否かを判定する(S29)。すなわち、異常判定部104は、移動ロボット100において発生した共振が、減速後も継続しているか否かを判定する。これらの処理は、
図4に示すステップS6~S8と同一の処理であるので、その詳細についての説明を繰り返さない。
【0099】
共振状態にないと判定した場合(S29でNO)、すなわち、移動ロボット100において発生した共振が、減速により解消された場合、異常判定部104は、共振が解消したことを示す通知をマップ更新部106へ出力する。そして、異常再発処理は
図7に示す「D」に進む。すなわち、マップ更新部106は、該指示に従い、条件(1)または(2)を満たす加速度を取得した地点をマップ113に記録する(S36)。そして、マップ更新部106は、記録した地点を減速エリアに追加する(S37)。そして、異常再発防止処理は
図8の(a)に示す「F」に進む。すなわち、異常再発防止処理は、
図7のステップS35へ進む。
【0100】
なお、ステップS29において、共振状態にあると判定した場合(S29でYES)の処理、すなわち、ステップS30およびS31の処理は、
図4に示すステップS11およびS12の処理と同一であるため、ここでは説明を繰り返さない。
【0101】
ステップS26において、減速エリアであると判定した場合(ステップS26でYES)、異常再発処理は
図7に示す「E」に進む。すなわち、異常再発処理は、
図8の(b)に示すフローチャートへ進む。
【0102】
[作用・効果]
本変形例に係る制御装置1は、一例として、移動ロボット100における共振または衝撃の発生を検知した場合、マップ113において、その地点を減速エリア36に追加する。例えば、移動ロボット100が目的地での作業を終え、移動開始位置へ戻るとする。この場合において、経路決定部101は、当該地点が走行禁止エリア32に追加された場合と異なり、例えば
図9の(b)に示されるように、前回の移動経路と同じ移動経路35を決定する。ただし、制御装置1は、この移動において当該地点を通るとき、無人搬送車2を減速させる。これにより、加速度の値が変化し、共振の発生を抑えることができる。また、制御装置1は、当該地点を通るとき、無人搬送車2を減速させるので、移動ロボット100に対する衝撃を緩和することができる。該衝撃とは、例えば、移動ロボット100と障害物との接触に起因する衝撃である。
【0103】
また、制御装置1は、一例として、無人搬送車2を減速させて走行させている間に共振または衝撃の発生を検知した場合、マップ113において、当該地点、すなわち減速エリア36を走行禁止エリア32に更新する。これにより、制御装置1の経路決定部101は、次の移動において、走行禁止エリア32を通らない新たな移動経路を決定する。例えば、移動ロボット100が、再度移動開始位置から目的地へ移動するとする。この場合において、経路決定部101は、前回の移動経路、すなわち、共振の解消または衝撃の緩和がなされなかった移動経路ではなく、例えば
図6の(b)の例のように新たな移動経路35Aを決定する。これにより、移動ロボット100は、次の移動において、共振または衝撃が発生した位置を通行しないため、共振または衝撃の再度の発生を防ぐことができる。
【0104】
<4.2>
図10は、本実施形態に係る移動ロボット100の外観の他の例を示す図である。加速度センサ4の設置位置は、無人搬送車2に限定されない。例えば、
図9に示されるとおり、加速度センサ4は、載置台16に備えられていてもよい。
【0105】
これにより、制御装置1は、載置台16および載置台16に載置される運搬対象物(例えば、ワーク)に発生する加速度をより正確に取得することができる。つまり、制御装置1は、運搬対象物における振動の発生などの異常を、正確に検知することができる。結果として、運搬対象物が落下などで破損する可能性が高い状況を正確に検知し、運搬対象物の破損を防ぐことができる。
【0106】
なお、本変形例において、加速度センサ4の設置位置は
図9に示す位置に限定されない。すなわち、本変形例において、加速度センサ4の設置位置は、載置台16に発生する加速度を取得することができる位置であればよく、例えば、加速度センサ4は、載置台16とは異なる位置に設置されてもよい。
【0107】
<4.3>
上記実施形態では、制御装置1は、移動ロボット100と一体となっている。これに対し、制御装置1は、移動ロボット100とは別体の装置であってもよい。例えば、制御装置1は、生産管理などを行う管理サーバ、製造ラインの装置制御を行うコントローラ、移動ロボット100と無線通信可能な端末装置のいずれかであってもよい。
【0108】
<4.4>
上記実施形態では、制御装置1は、移動ロボット100に備えられた加速度センサ4から加速度を取得している。これに対し、制御装置1は、移動ロボット100に備えられたセンサなどが計測した物理量から演算された加速度を取得してもよい。該物理量は、例えば、変位、速度など、加速度を算出可能な物理量であればよい。加速度の演算は、制御装置1が実行してもよいし、制御装置1と異なる装置が実行し、算出した加速度を制御装置1へ送信してもよい。
【0109】
<4.5>
上記実施形態では、制御装置1は、移動ロボット100の移動において発生した共振と衝撃との両方を異常として検知可能な構成である。これに対し、制御装置1は、共振または衝撃のいずれか一方のみを異常として検知可能な構成であってもよい。
【0110】
<4.6>
制御装置1は、取得した加速度の時系列データを記憶部20に記憶してもよい。これにより、移動ロボット100に発生した共振や衝撃といった異常がいつ発生したかを、後で特定することができる。これにより、万が一、マニピュレータ3や運搬対象物が破損した場合における、原因特定の可能性を向上させることができる。
【0111】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置1の制御ブロック(制御部10)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0112】
後者の場合、制御装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0113】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 制御装置
2 無人搬送車
3 マニピュレータ(載置物)
20 記憶部(記憶装置)
101 経路決定部(経路決定部)
102 加速度取得部
104 異常判定部(検知部、判定部)
105 移動制御部(処理実行部)
106 マップ更新部(処理実行部)
S3 加速度取得ステップ
S5、S14 検知ステップ
S6、S16 処理実行ステップ