(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20230816BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20230816BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B25J19/00 C
B25J17/00 A
F16D65/16
(21)【出願番号】P 2019101353
(22)【出願日】2019-05-30
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌志
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020515(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169580(WO,A1)
【文献】実開平05-030571(JP,U)
【文献】特開2017-189081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
F16D 49/00 ~ 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節部と前記関節部に連結されるアームとを有するロボットであって、
前記複数の関節部は、モータ及び当該モータの回転を規制する第一回転規制機構を含む少なくとも1つの第一関節部と、モータ及び当該モータの回転を規制する第二回転規制機構を含む少なくとも1つの第二関節部と、を含み、
前記第一回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第一回転体の外周部に形成された複数の突起の間に第一部材を挿入することによって当該モータの回転を規制する機構であり、
前記第二回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第二回転体の前記回転軸の方向の端面に第二部材を当接させることによって生じる摩擦力によって当該モータの回転を規制する機構であ
り、
前記第二関節部は、トルクの出力方向側から順に、減速機、前記モータ、前記第二回転規制機構、及び前記モータの回転位置を光学的に検出する検出器が配置された構成であり、
前記第二回転規制機構の前記第二回転体と前記検出器との間には、前記第二部材を前記モータの回転軸方向に移動させるための磁力を発生させるコイルを収容するコイルホルダが設けられている、ロボット。
【請求項2】
複数の関節部と前記関節部に連結されるアームとを有するロボットであって、
前記複数の関節部は、モータ及び当該モータの回転を規制する第一回転規制機構を含む少なくとも1つの第一関節部と、モータ及び当該モータの回転を規制する第二回転規制機構を含む少なくとも1つの第二関節部と、を含み、
前記第一回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第一回転体の外周部に形成された複数の突起の間に第一部材を挿入することによって当該モータの回転を規制する機構であり、
前記第二回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第二回転体の前記回転軸の方向の端面に第二部材を当接させることによって生じる摩擦力によって当該モータの回転を規制する機構であり、
前記第二関節部は、前記モータの回転軸に固定され且つ当該モータの磁石を支持する磁石ホルダを備え、
前記第二回転規制機構の前記第二回転体には、多角形の穴が形成されており、
前記第二回転体は、前記多角形の穴に嵌るアタッチメントを介して前記磁石ホルダに固定されている、ロボット。
【請求項3】
請求項1
または2記載のロボットであって、
前記複数の関節部のうち、最も先端側に配置された関節部は前記第一関節部であり、最も基端側に配置された関節部は前記第二関節部であるロボット。
【請求項4】
請求項1
または2記載のロボットであって、
前記複数の関節部のうち、最も先端側に配置される前記アームの三次元位置を決めるための関節部は前記第二関節部であり、当該アームの先端側に連結される関節部は前記第一関節部であるロボット。
【請求項5】
請求項1
または2記載のロボットであって、
前記複数の関節部のうち、出力トルクが閾値以下となる関節部が前記第一関節部であり、出力トルクが前記閾値を超える関節部が前記第二関節部であるロボット。
【請求項6】
請求項
3から
5のいずれか1項記載のロボットであって、
2つの前記アームを含み、
前記複数の関節部として6つの関節部を含み、
前記6つの関節部のうち、先端側に配置された3つの関節部はそれぞれ前記第一関節部であり、基端側に配置された3つの関節部はそれぞれ前記第二関節部であるロボット。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項記載のロボットであって、
前記第二関節部は、前記モータ及び前記第二回転規制機構を収容する筐体を備え、
前記筐体における前記モータの回転軸方向に直交する方向の端部には、電線を通す穴部が設けられ、
前記穴部には、前記穴部を補強する補強部材が形成されているロボット。
【請求項8】
請求項
1記載のロボットであって、
前記コイルホルダと前記モータのロータとの隙間は、前記第二部材と前記第二回転体との当接により生じ得る摩耗粉の通過を抑制する距離となっているロボット。
【請求項9】
請求項
1記載のロボットであって、
前記第二関節部は、前記モータの回転軸に固定され且つ当該モータの磁石を支持する磁石ホルダを備え、
前記第二回転規制機構の前記第二回転体には、多角形の穴が形成されており、
前記第二回転体は、前記多角形の穴に嵌るアタッチメントを介して前記磁石ホルダに固定されているロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと、停止しているモータの回転を規制する回転規制機構と、を有する回転アクチュエータが搭載され、複数の関節部と関節部に連結されるアームとを有するロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の産業用ロボットとして、支持部材としてのベースと、関節部を介してベースに連結される第1アームと、関節部を介して第1アームの先端側に連結される第2アームと、関節部を介して第2アームの先端側に連結される手首部と、を備えるものがある。また、この種の産業用ロボットでは、関節部は、ロータ及びステータを有するモータと、モータに連結される減速機と、ロータの停止状態を維持するための安全ブレーキと、を備えて関節部自体が回転アクチュエータとして構成されている。
【0003】
そして、このような産業用ロボットに搭載される回転アクチュエータとして、モータと、停止しているモータの回転を規制する回転規制機構と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1のロボットに搭載される回転アクチュエータでは、回転規制機構は、モータのロータに固定される円盤状の回転側規制部材と、回転側規制部材と係合してその回転移動を規制するピン状の規制部材と、規制部材をロータの軸方向へ移動させる駆動機構と、を備えている。また、この回転側規制部材の周縁には、ロータの径方向外側へ突出する複数の突起部が設けられる。そして、規制部材の先端には、周方向で隣り合う突起部間に入り込んで回転側規制部材の回転移動を規制する円環状の規制部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のロボットに搭載される回転アクチュエータでは、突起部と規制部とが係合(衝突)することでロータを停止させて保持させる構造である。そのため、例えばモータの回転の際に突起部の間に規制部が入り込む場合、ロータが停止するまで規制部にそのまま回転力が伝わり衝撃力として負担がかかる。それにより、突起部と規制部とが衝突する1点に過大な力が作用して、これら突起部及び規制部が破損又は変形する可能性がある。また、突起部と規制部との係合をロータの保持のみならず非常時のロータの制動にも用いたい場合がある。この場合、モータの回転の際に突起部の間に規制部が入り込む際、突起部又は規制部に打痕がつく、あるいは規制部が突起部を飛び越してしまい直ぐには止まれない可能性がある。このようなとき、複数の関節部を有するロボットが不測の動作をする可能性があり、耐久性及び作業性の点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、小型かつ軽量の第一回転規制機構と、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構とを併用することで、関節部の位置毎に適した回転規制機構を導入することができ、ロボットの耐久性向上、作業性向上を両立させることができるロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
複数の関節部と前記関節部に連結されるアームとを有するロボットであって、
前記複数の関節部は、モータ及び当該モータの回転を規制する第一回転規制機構を含む少なくとも1つの第一関節部と、モータ及び当該モータの回転を規制する第二回転規制機構を含む少なくとも1つの第二関節部と、を含み、
前記第一回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第一回転体の外周部に形成された複数の突起の間に第一部材を挿入することによって当該モータの回転を規制する機構であり、
前記第二回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第二回転体の前記回転軸の方向の端面に第二部材を当接させることによって生じる摩擦力によって当該モータの回転を規制する機構であり、
前記第二関節部は、トルクの出力方向側から順に、減速機、前記モータ、前記第二回転規制機構、及び前記モータの回転位置を光学的に検出する検出器が配置された構成であり、
前記第二回転規制機構の前記第二回転体と前記検出器との間には、前記第二部材を前記モータの回転軸方向に移動させるための磁力を発生させるコイルを収容するコイルホルダが設けられている、ロボット。
【0009】
(1)のロボットでは、小型かつ軽量の第一回転規制機構と、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構とを併用して、互いに停止又は制動のメカニズムや特性が異なる少なくとも2種類の回転規制機構を含んでロボットを構成する。これにより、ロボットの各関節部の要求トルクや、その全体のサイズや重量などのロボット全体の特性やバランスからそれぞれの関節部の位置に応じて回転規制機構の種類を適宜選択して、各関節部の停止や制動の点で、ロボット全体を最適化することができる。すなわち、関節部の位置毎に適した規制機構を導入することができ、ロボットの耐久性向上、作業性向上を両立させることができる。
また、第二回転規制機構の第二回転体と検出器との間に、コイルホルダが配設されるので、第二回転規制機構の使用に伴って第二回転体の摩擦粉が発生した場合でも、コイルホルダが障壁となってその摩擦粉が検出器側にまで侵入するのを抑制することができる。この侵入の抑制により、検出器の動作に影響するのを防止することができる。
(2)
複数の関節部と前記関節部に連結されるアームとを有するロボットであって、
前記複数の関節部は、モータ及び当該モータの回転を規制する第一回転規制機構を含む少なくとも1つの第一関節部と、モータ及び当該モータの回転を規制する第二回転規制機構を含む少なくとも1つの第二関節部と、を含み、
前記第一回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第一回転体の外周部に形成された複数の突起の間に第一部材を挿入することによって当該モータの回転を規制する機構であり、
前記第二回転規制機構は、前記モータの回転軸によって支持された第二回転体の前記回転軸の方向の端面に第二部材を当接させることによって生じる摩擦力によって当該モータの回転を規制する機構であり、
前記第二関節部は、前記モータの回転軸に固定され且つ当該モータの磁石を支持する磁石ホルダを備え、
前記第二回転規制機構の前記第二回転体には、多角形の穴が形成されており、
前記第二回転体は、前記多角形の穴に嵌るアタッチメントを介して前記磁石ホルダに固定されている、ロボット。
(2)のロボットでは、小型かつ軽量の第一回転規制機構と、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構とを併用して、互いに停止又は制動のメカニズムや特性が異なる少なくとも2種類の回転規制機構を含んでロボットを構成する。これにより、ロボットの各関節部の要求トルクや、その全体のサイズや重量などのロボット全体の特性やバランスからそれぞれの関節部の位置に応じて回転規制機構の種類を適宜選択して、各関節部の停止や制動の点で、ロボット全体を最適化することができる。すなわち、関節部の位置毎に適した規制機構を導入することができ、ロボットの耐久性向上、作業性向上を両立させることができる。
また、第二回転規制機構の組立・生産時において、焼き嵌め固定の後に着磁工程を設けたり、構成部材の配置順に応じて工程を適切に入れ替えたりすることが作業工程上、容易にすることができる。
【0010】
(3)
(1)または(2)記載のロボットであって、
前記複数の関節部のうち、最も先端側に配置された関節部は前記第一関節部であり、最も基端側に配置された関節部は前記第二関節部であるロボット。
【0011】
ここで、複数の関節部と関節部に連結されるアームを有するロボットにおいて、ロボットの先端側は軽量化が一般的に要求される。このことから、最も先端側に配置された関節部は、小型かつ軽量の第一回転規制機構が含まれて構成される第一関節部が適している。その一方、ロボットの基端側(根元側)は例えば天井面や地面などの固定面に固設される場合もあり、このような場合、基端側の関節部は要求トルクが大きくなる。このことから、最も基端側に配置された関節部は、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構が含まれて構成される第二関節部が適している。すなわち(3)のように、ロボットの先端側や基端側の位置に応じて回転規制機構を適宜選択して導入することにより、ロボット全体の特性やバランスからロボット全体をより適切に最適化することができる。
【0012】
(4)
(1)または(2)記載のロボットであって、
前記複数の関節部のうち、最も先端側に配置される前記アームの三次元位置を決めるための関節部は前記第二関節部であり、当該アームの先端側に連結される関節部は前記第一関節部であるロボット。
【0013】
ここで、複数の関節部と関節部に連結されるアームを有するロボットにおいて、ロボットの先端側のアームの三次元位置(位置姿勢のうち主に位置)を決定するための要求トルクは一般的に大きくなる。このことから、そのための関節部は大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構が含まれて構成される第二関節部が適している。その一方、アームの先端側に連結される関節部は主に姿勢を決定するためのものであるので、このアームの位置を決定するための要求トルクはそれほど大きくなる必要はない。このことから、そのアームの先端側に連結される関節部は、小型かつ軽量の第一回転規制機構が含まれて構成される第一関節部が適している。すなわち(4)のように、各アームの位置決定又は姿勢決定それぞれに対する寄与度に応じて回転規制機構を適宜選択して導入することにより、ロボット全体の特性やバランスからロボット全体をより適切に最適化することができる。
【0014】
(5)
(1)または(2)記載のロボットであって、
前記複数の関節部のうち、出力トルクが閾値以下となる関節部が前記第一関節部であり、出力トルクが前記閾値を超える関節部が前記第二関節部であるロボット。
【0015】
(5)のように構成すると、複数の関節部と関節部に連結されるアームを有するロボットにおいて、各関節部に要求される出力トルクの大小に応じて回転規制機構を適宜選択して導入することにより、ロボット全体の特性やバランスからロボット全体をより適切に最適化することができる。
【0016】
(6)
(3)から(4)のいずれか記載のロボットであって、
2つの前記アームを含み、
前記複数の関節部として6つの関節部を含み、
前記6つの関節部のうち、先端側に配置された3つの関節部はそれぞれ前記第一関節部であり、基端側に配置された3つの関節部はそれぞれ前記第二関節部であるロボット。
【0017】
(6)のロボットでは6つの関節部を有する場合、先端側に配置された3つの関節部はともに要求トルクがそれほど大きくなる必要がないため、小型かつ軽量の第一回転規制機構が含まれて構成される第一関節部が適している。その一方、基端部に配置された3つの関節部はともに、先端側の3つの関節部と比べて要求トルクが大きくなる。そのため、基端部に配置された3つの関節部は、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構が含まれて構成される第二関節部が適している。
【0018】
(7)
(1)から(6)のいずれか記載のロボットであって、
前記第二関節部は、前記モータ及び前記第二回転規制機構を収容する筐体を備え、
前記筐体における前記モータの回転軸方向に直交する方向の端部には、電線を通す穴部が設けられ、
前記穴部には、前記穴部を補強する補強部材が形成されているロボット。
【0019】
ここで、第二回転規制機構を所定の関節部に搭載する場合、その関節部の外形は大型化する傾向にあり、これに伴って筐体も大型化する。そのため、(7)のように構成すると、第二回転規制機構を搭載して関節部の筐体が大型化した場合でも、電線を通すための穴部に補強部材が形成されるので、関節部の筐体の強度を高めることができる。これにより、ロボットの動作時におけるロボット自体の振動などを抑制することができる。
【0022】
(8)
(1)記載のロボットであって、
前記コイルホルダと前記モータのロータとの隙間は、前記第二部材と前記第二回転体との当接により生じ得る摩耗粉の通過を抑制する距離となっているロボット。
【0023】
(8)のように構成すると、コイルホルダとモータのロータとの隙間が摩擦粉の通過を抑制する距離に設定されるので、その摩擦粉が検出器側にまで侵入するのをより一層抑制することができる。
【0024】
(9)
(1)記載のロボットであって、
前記第二関節部は、前記モータの回転軸に固定され且つ当該モータの磁石を支持する磁石ホルダを備え、
前記第二回転規制機構の前記第二回転体には、多角形の穴が形成されており、
前記第二回転体は、前記多角形の穴に嵌まるアタッチメントを介して前記磁石ホルダに固定されているロボット。
【0025】
(9)のように構成すると、第二回転規制機構の組立・生産時において、焼き嵌め固定の後に着磁工程を設けたり、構成部材の配置順に応じて工程を適切に入れ替えたりすることが作業工程上、容易にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、小型かつ軽量の第一回転規制機構と、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構とを併用することで、関節部の位置毎に適した回転規制機構を導入することができ、ロボットの耐久性向上、作業性向上を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態に係る産業用ロボットの正面図である。
【
図2】(A)は
図1に示す産業用ロボットの斜視図であり、(B)は(A)に示す産業用ロボットが動作している様子を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す第4関節部、第5関節部及び第6関節部の縦断面図である。
【
図4】
図3に示すG部の構成を説明するための拡大図であり、(A)は規制ピンが規制解除位置にある状態を示す拡大図であり、(B)は規制ピンが規制位置になる状態を示す拡大図である。
【
図5】
図3に示す回転側規制部材及び規制ピンの平面図である。
【
図6】
図1に示す第1関節部、第2関節部及び第3関節部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態を説明する。
【0029】
(産業用ロボットの概略構成)
まず
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る産業用ロボット1の構成についてその概略を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る産業用ロボット1の正面図である。
図2(A)は
図1に示す産業用ロボット1の斜視図であり、
図2(B)は
図2(A)に示す産業用ロボット1が動作している様子を示す斜視図である。
【0030】
図1及び
図2に示すように、本形態の産業用ロボット1(以下「ロボット1」ともいう)は、所定の製品の組立や製造などに用いられる多関節ロボットであり、組立ラインや製造ラインに設置されて使用される。本形態のロボット1は、複数の関節部2,3と、複数の関節部2,3に連結される複数のアーム4と、を備えている。本形態では、ロボット1は、6個の関節部2,3と、2本のアーム4と、を備えている。
【0031】
なお、以下の説明では、6個の関節部2,3のそれぞれを区別して表す場合、6個の関節部2,3のそれぞれについて、ロボット1の基端側に配置される3つを「第2型関節部2」、その先端側に配置される3つを「第1型関節部3」という。さらに、「第2型関節部2」のそれぞれについては、ロボット1の基端側から順に「第1関節部2A」、「第2関節部2B」及び「第3関節部2C」ともいう。「第1型関節部3」のそれぞれについては、ロボット1の基端側から順に「第4関節部3A」、「第5関節部3B」及び「第6関節部3C」ともいう。また、以下の説明では、2本のアーム4のそれぞれを区別して表す場合、2本のアーム4のそれぞれについては、ロボット1の基端側から順に「第1アーム4A」及び「第2アーム4B」という。
【0032】
また、ロボット1は、第1関節部2Aに相対回動可能に連結される支持部材5をさらに備えている。支持部材5は、フランジ部5aを有して鍔付きの円筒状に形成されている。支持部材5の内周側には、支持部材5の軸方向に貫通する貫通孔(図示省略)が形成されている。フランジ部5aは、円環状に形成されており、ロボット1のベースとして底面部分を構成している。支持部材5は、フランジ部5aを介して生産工場内の地面又は天井面などの固定面に強固に連結して固設される。また、アーム4は、細長い円筒状に形成されている。
【0033】
ロボット1では、第1関節部2Aと第2関節部2Bとが相対回動可能に連結され、第2関節部2Bと第1アーム4Aの基端とが固定されている。また、第1アーム4Aの先端と第3関節部2Cとが固定され、第3関節部2Cと第4関節部3Aとが相対回動可能に連結される。さらに、第4関節部3Aと第2アーム4Bの基端とが相対回動可能に連結され、第2アーム4Bの先端と第5関節部3Bとが固定され、第5関節部3Bと第6関節部3Cとが相対回動可能に連結されている。また、第6関節部3Cには、ハンドや工具などが相対回動可能に取付可能となっている。
【0034】
すなわち、本形態のロボット1は、シリアルリンク構造を採用しており、第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cはロボット1の先端側に配置され、第6関節部3Cが最も先端側に配置される。第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cはロボット1の基端側に配置され、第1関節部2Aが最も基端側に配置される。また、上述したロボット1の関節構成上、第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cは、最も先端側に配置される第2アーム4Bの三次元位置(換言すれば、位置姿勢のうち主に位置)を決定するための関節部2である。そして、第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cは、第2アーム4Bの先端側に連結される関節部3である。
【0035】
ここで、本形態では、下述するように、各関節部2,3はモータ10を含む回転アクチュエータとして構成される。また各関節部2,3には、そのモータ10それぞれの回転を規制する回転規制機構30,70が搭載される。回転規制機構30,70として2種類の機構が採用されており、第一回転規制機構30はピン接触式であり、第二回転規制機構70は電磁式である。第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cの第2型関節部2には第二回転規制機構70が搭載され、第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cの第1型関節部3には第一回転規制機構30が搭載される。
【0036】
以下、その第1型関節部3及び第2型関節部2それぞれの具体的構成についてさらに説明する。なお、
図1に示すように、本形態では、第2型関節部2において第1関節部2Aと第2関節部2Bと第3関節部2Cとが同じ大きさで形成され、第1型関節部3において第4関節部3Aと第5関節部3Bと第6関節部3Cとが同じ大きさで形成されている。また、第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cの大きさは、第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cの大きさよりも大きく設けられている。すなわち、第2型関節部2は第1型関節部3より大きい。ただし、第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cと、第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cとは、その大きさ及び回転規制機構30,70が相違する点を除けば同様に構成されている。まず第1型関節部3の構成について説明する。
【0037】
(第1型関節部の構成)
次に
図3~
図5を参照して、第1型関節部3、つまり第一回転規制機構30が搭載される第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cの構成について具体的に説明する。
図3は、
図1に示す第1型関節部3の縦断面図である。
図4は、
図3に示すG部の構成を説明するための拡大図であり、
図4(A)は規制ピン32(規制部材)が規制解除位置にある状態を示す拡大図であり、
図4(B)は規制ピン32が規制位置にある状態を示す拡大図である。
図5は、
図3に示す回転側規制部材31及び規制ピン32の平面図である。
なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図3のZ1方向側を「上」側とし、その反対側であるZ2方向側を「下」側とする。また、
図3のX1方向側を「左」側として、その反対側であるX2の方向側を「右」側とする。
【0038】
図3に示すように、第1型関節部3は、モータ10と、モータ10に連結される減速機20と、モータ10の回転位置を検出するための位置検出機構60(検出器)と、モータ10及び位置検出機構60が電気的に接続される回路基板Bと、モータ10と減速機20と位置検出機構60と回路基板Bとを収納するケース体80(筐体)と、を含んで構成されており、第1型関節部3自体が回転アクチュエータとして構成されている。
【0039】
モータ10は、径方向の中心に貫通孔が形成された中空モータであり、中空状の磁石ホルダ12を備えている。また、モータ10は、ロータ11とステータ14と、を備えている。また、減速機20は、径方向の中心に貫通孔が形成された中空減速機である。モータ10と減速機20とは上下方向で重なって配置されている。具体的には、モータ10が上側に配置され、減速機20が下側に配置されている。また、モータ10と減速機20とは同軸上に配置されている。
【0040】
本形態の減速機20は、中空波動歯車装置であり、剛性内歯歯車21と、可撓性外歯歯車22と、波動発生部23と、クロスローラベアリング26と、を備えている。波動発生部23は、モータ10の磁石ホルダ12に連結される中空状の入力軸24と、入力軸24の外周側に取り付けられる弾性ベアリング25と、を備えている。本形態では、剛性内歯歯車21が減速機20の出力軸となっている。
【0041】
また、第1型関節部3は、停止しているロータ11の回転を規制する第一回転規制機構30と、モータ10の磁石ホルダ12及び減速機20の入力軸24の内周側に挿通される筒状の回転軸17(モータの回転軸)と、剛性内歯歯車21に固定される出力側部材18と、をさらに備えている。第一回転規制機構30と回転軸17とも同様に、ケース体80に収納されている。
【0042】
モータ10は、上述したように、ロータ11とステータ14と回転軸17を備えている。ロータ11は、磁石ホルダ12と、磁石ホルダ12に固定される駆動用磁石13と、を備えている。磁石ホルダ12は、モータ10の回転軸17に一体に固定され、駆動用磁石13を固定する。また、磁石ホルダ12は、上下方向に細長い略円筒状に形成されており、磁石ホルダ12の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、磁石ホルダ12の軸方向であるとともにロータ11の軸方向である。そして、駆動用磁石13は、円筒状に形成されている。駆動用磁石13の長さ(上下方向の長さ)は、磁石ホルダ12よりも短く設定されており、駆動用磁石13は磁石ホルダ12の下端側部分の外周面に固定されている。
【0043】
ステータ14は、全体として略円筒状に形成されており、駆動用磁石13の外周面を覆うように駆動用磁石13の外周側(径方向外側)に配置されている。磁石ホルダ12の上端側部分は、ステータ14の上端面よりも上側に突出している。このステータ14は、駆動用コイル(不図示)と、インシュレータを介して駆動用コイルが巻回される複数の突極を有するステータコア(不図示)と、を備えている。ステータコアの突極は、内周側に向かって突出するように形成されており、突極の先端面は、駆動用磁石13の外周面に対向している。モータ10は、ケース体80に固定されている。具体的には、ステータ14の外周面がケース体80に固定されている。
【0044】
減速機20は、上述したように、剛性内歯歯車21と、可撓性外歯歯車22と、波動発生部23と、クロスローラベアリング26と、を備えている。剛性内歯歯車21は、扁平な略円筒状に形成されており、剛性内歯歯車21の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。すなわち、上下方向は、減速機20の出力軸である剛性内歯歯車21の軸方向となっている。そして、剛性内歯歯車21は、クロスローラベアリング26の内輪26aに固定されている。クロスローラベアリング26の外輪26bは、ケース体80の下端側部分に固定されており、剛性内歯歯車21は、クロスローラベアリング26を介してケース体80の下端側部分に回転可能に保持されている。
【0045】
可撓性外歯歯車22は、上端にフランジ部22aを有して鍔付きの略筒状に形成されている。フランジ部22aは、略円環状に形成されており、フランジ部22aの外周側部分は、ケース体80に固定されている。すなわち、減速機20は、ケース体80に固定されている。また、剛性内歯歯車21は、減速機20の下端側部分を構成している。可撓性外歯歯車22のフランジ部22aは、減速機20の上端側部分を構成している。剛性内歯歯車21の内周面には、内歯が形成されている。可撓性外歯歯車22の下端側の外周面には、剛性内歯歯車21の内歯と噛み合う外歯が形成されている。
【0046】
波動発生部23は、上述したように、入力軸24とウエーブベアリング25とを備えている。入力軸24は、全体として上下方向に細長い筒状に形成されており、入力軸24の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、入力軸24の、下端側部分以外の部分は、細長い略円筒状に形成されている。入力軸24の下端側部分は、入力軸24の軸方向から見たときの内周面の形状が円形状に形成されており、入力軸24の軸方向から見たときの外周面の形状が楕円状となる楕円部24aとなっている。
【0047】
波動発生部23の入力軸24の上端側部分は、モータ10の磁石ホルダ12の下端側部分の内周側に挿入されて固定されている。具体的には、入力軸24の上端側部分は、磁石ホルダ12の、駆動用磁石13が固定された部分の内周側に挿入されて固定されている。磁石ホルダ12と入力軸24とは同軸上に配置されている。また、入力軸24の上端側部分は、接着により磁石ホルダ12に固定されている。
【0048】
上下方向における入力軸24の中心部分は、ベアリング16に回転可能に支持されている。ベアリング16は、ボールベアリングである。このベアリング16は軸受保持部材15に取り付けられ、軸受保持部材15はケース体80に固定されている。すなわち、入力軸24は、軸受保持部材15を介してケース体80に取り付けられるベアリング16に回転可能に支持されている。軸受保持部材15は、円環状かつ平板状に形成されており、可撓性外歯歯車22のフランジ部22aと上下方向で重なるようにケース体80に固定されている。
【0049】
ウエーブベアリング25は、可撓性の内輪(不図示)及び外輪(不図示)を備えたボールベアリングである。このウエーブベアリング25は、楕円部24aの外周面に沿って配置されており、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車22の、外歯が形成される下端側部分は、ウエーブベアリング25を囲むようにウエーブベアリング25の外周側に配置されており、この部分は、楕円状に撓んでいる。可撓性外歯歯車22の外歯は、楕円状に撓む可撓性外歯歯車22の下端側部分の長軸方向の2か所で、剛性内歯歯車21の内歯と噛み合っている。
【0050】
出力側部材18は、フランジ部18aと筒部18bとを有して鍔付きの略円筒状に形成されている。この出力側部材18は、出力側部材18の軸方向と上下方向とが一致するように配置されており、出力側部材18の内周側には、上下方向に貫通する貫通孔18cが形成されている。フランジ部18aは、平板状かつ円環状に形成されており、筒部18bの下端に繋がっている。フランジ部18aは、フランジ部18aの上面が剛性内歯歯車21の下面に接触するように剛性内歯歯車21に固定されている。また、フランジ部18aは、ケース体80の下端よりも下側に配置されており、ケース体80の外側に配置されている。
【0051】
筒部18bの上端側には、筒部18bの下端側部分よりも外径の小さい小径部18dが形成されており、筒部18bの上端側部分の外周側には、上下方向に直交する円環状の段差面18eが形成されている。小径部18dは、回転軸17の下端側部分の内周側に挿入されており、回転軸17の下端面は、段差面18eに対向している。また、貫通孔18cは、回転軸17の内周側に通じている。筒部18bの上端側部分は、減速機20の入力軸24の下端側部分の内周側に配置されている。筒部18bの外周面と入力軸24の下端側部分の内周面との間には、ベアリング19が配置されている。ベアリング19は、ボールベアリングである。
【0052】
回転軸17は、モータ10の回転軸として構成されており、磁石ホルダ12を介して回転駆動される。回転軸17は、上下方向に細長い円筒状に形成され、回転軸17の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。上述のように、回転軸17は、磁石ホルダ12及び入力軸24の内周側に挿通されている。回転軸17の上端面は、磁石ホルダ12の上端面よりも上側に配置され、回転軸17の下端面は、入力軸24の下端面よりも上側に配置されている。また、上述したように、回転軸17の下端側部分の内周側に出力側部材18の小径部18dが挿入されるとともに回転軸17の下端面が段差面18eに対向しており、回転軸17の下端側は、出力側部材18に保持されている。
【0053】
回転軸17の上端側は、保持部材50に保持されている。保持部材50は、支柱51に固定され、支柱51は、ケース体80に固定されている。すなわち、保持部材50は、支柱51を介してケース体80に固定されている。保持部材50は、回転軸17の上端側を保持する円筒状の保持部50aを備えている。保持部50aは、保持部50aの軸方向と上下方向とが一致するように配置されており、保持部50aの内周側には、上下方向に貫通する貫通孔50bが形成されている。
【0054】
保持部50aの下端側には、保持部50aの上端側よりも内径の大きい大径部50cが形成されており、保持部50aの下端側部分の内周側には、上下方向に直交する円環状の段差面50dが形成されている。回転軸17の上端側は大径部50cの内周側に挿入されており、回転軸17の上端面は段差面50dに対向している。また、貫通孔50bは、回転軸17の内周側に通じている。
【0055】
位置検出機構60は、モータ10のステータ14の上側に配置されている。この位置検出機構60は、磁石ホルダ12の上端側に固定されるスリット板61と、センサ62と、を備えている。センサ62は、互いに対向するように配置される発光素子と受光素子とを備える透過型の光学式センサである。センサ62は、エンコーダホルダとしての固定部材35に固定されている。
【0056】
固定部材35は、ケース体80に固定されている。すなわち、センサ62は、固定部材35を介してケース体80に固定されている。位置検出機構60のスリット板61は、薄い平板状に形成されるとともに円環状に形成されている。スリット板61には、スリット板61の周方向に一定の間隔で複数のスリット孔(不図示)が形成されている。スリット板61は、スリット板61の周方向の一部分がセンサ62の発光素子と受光素子との間に配置されるようにモータ10の磁石ホルダ12に固定されている。
【0057】
ケース体80は、上下の両端が開口するケース本体81と、ケース本体81の上端側の開口を塞ぐカバー82と、を備えている。ケース本体81の下端側の開口は、減速機20により塞がれている。ケース本体81の側面には、上下方向に直交する方向で開口する開口部81aが形成されている。すなわち、ケース体80には、上下方向に直交する方向で開口する開口部81aが形成されている。開口部81aは、ケース本体81の側面部分を貫通するように形成されている。
【0058】
また、カバー82の上面部分には、下述する第一回転規制機構30の駆動機構40を構成する、ピン43が配置される貫通孔82aが形成されている。すなわち、ケース体80には貫通孔82aが形成されている。貫通孔82aは、上下方向でカバー82の上面部分を貫通するように形成されており、貫通孔82aを介してケース体80の内部と外部とが連通している。また、貫通孔82aは、略丸孔状に形成されている。
【0059】
図3及び
図4に示すように、第一回転規制機構30は、第1型関節部3において、停止しているロータ11をその停止位置で保持するために設けられており、ケース体80に収容されている。この第一回転規制機構30は、平板状かつ略円環状の回転側規制部材31(第一回転体)と、回転側規制部材31と係合して、回転側規制部材31の周方向における回転側規制部材31の移動を規制する規制ピン32(第一部材)と、規制ピン32をロータ11の軸方向に沿って上下方向へ移動させる駆動機構40と、を有して構成される。すなわち、本形態の第一回転規制機構30は、モータ10の磁石ホルダ12によって支持された回転側規制部材31の外周部に形成された下述の複数の突起部31a(突起)の間に規制ピン32を挿入することによってモータ10の回転を規制する機構である。
【0060】
駆動機構40は、規制ピン32を上側へ付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネ42と、プランジャ41aを介して規制ピン32を下側へ移動させるソレノイド41と、を有している。
【0061】
ソレノイド41は、ソレノイド41が通電状態となったときにソレノイド41のプランジャ41aが下側へ突出するようにケース体80に固定されている。プランジャ41aの上端部(他端部)は、ソレノイド41の本体部41bよりも上側に突出している。ソレノイド41のプランジャ41aは、プランジャ41aの下端部(一端部)で規制ピン32に当接して押圧することで、下述する規制解除位置に規制ピン32をロータ11の軸方向に沿って移動させる。本体部41bから上側へ突出しているプランジャ41aの上端部には、ピン43が固定されている。
【0062】
ピン43は、円柱状の軸部43aと、軸部43aの一端から径方向の外側へ広がる円環状のフランジ部43bと、を有して鍔付きの円柱状に形成されている。すなわち、ピン43は、ピン43の軸方向と上下方向とが一致するように、かつ、フランジ部43bが下側に配置されるようにプランジャ41aの上端部に固定されている。また、ピン43は、プランジャ41aと同軸上に配置されている。ピン43の軸部43aは、ケース体80の貫通孔82aの中に配置されている。軸部43aの外径は、貫通孔82aの内径よりもわずかに小さく設定される。
なお、ピン43のフランジ部43bの下面には、プランジャ41aの上端部が挿入されて固定されるための凹部が形成されている。
【0063】
図3に示すように、回転側規制部材31は、回転側規制部材31の厚さ方向と上下方向とが一致するようにロータ11の磁石ホルダ12の上端面に固定されており、位置検出機構60よりも上側に配置されている。
図5に示すように、回転側規制部材31の外周面には、回転側規制部材31の径方向の外側へ突出する複数の突起部31aが、回転側規制部材31の周方向に沿って一定の間隔で形成されている。本形態では、12個の突起部31aが、回転側規制部材31の中心に対して30°ピッチで形成されている。また、突起部31aは、上下方向から見たときの形状が略等脚台形状となるように形成されている。
なお、回転側規制部材31に形成される突起部31aの数は特に限定されておらず、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。
【0064】
図3及び
図4に示すように、規制ピン32は、ロータ11の軸方向(上下方向)に垂直な断面の形状が一様の円柱状の部材であり、規制ピン32の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。規制ピン32は、規制ピン32の上側に配置されるプランジャ41aに固定されている。具体的には、規制ピン32は、プランジャ41aの下端部に当接された状態で固定されている。
【0065】
図4に示すように、規制ピン32の下端面には、上側に向かって窪む凹部32aが形成されており、凹部32aの中には、駆動機構40の圧縮コイルバネ42の上端側部分が配置されている。なお、本形態では、規制ピン32を円柱状に形成するが、これに限定されない。
【0066】
規制ピン32は、上下方向から見たときに、回転側規制部材31の外周側に配置されている。具体的には、
図5に示すように、上下方向から見たときに、回転側規制部材31の複数の突起部31aの先端面を結ぶ仮想円VCよりも規制ピン32の一部が、回転側規制部材31の径方向の内側に配置されるように、規制ピン32が配置されている。
図3及び
図4に示すように、リニアブッシュ33も同様に、上下方向に垂直な断面の形状が一様の柱状に形成されており、リニアブッシュ33の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。
【0067】
リニアブッシュ33は、固定部材35の上面に形成される凹部35a(
図4参照)に全体的に挿嵌されて配置されている。リニアブッシュ33の下端面は、凹部35aの底面に当接している。また、凹部35aの底面には、駆動機構40の圧縮コイルバネ42の下端側部分が配置される窪み35bが下側に向かって窪むように形成されている。リニアブッシュ33の内周側には、規制ピン32が全体的に挿嵌されて配置されている。
【0068】
また、本形態では、駆動機構40のソレノイド41は、モータ10の停止時に非通電状態となっており、モータ10の駆動時に通電状態となる。
図4(B)に示すように、ソレノイド41が通電状態でないとき、駆動機構40の圧縮コイルバネ42の付勢力により、回転側規制部材31の突起部31aの間に規制ピン32が配置されるように規制ピン32が上昇している。そのため、回転側規制部材31の突起部31aと規制ピン32との係合により、停止しているロータ11の回転が規制される。その一方、ソレノイド41が通電状態となると、
図4(A)に示すように、プランジャ41aが下側へ突出して、回転側規制部材31の突起部31aの間から規制ピン32が外れるまで、規制ピン32が下降する。そのため、ロータ11が回転可能となる。
【0069】
このように、駆動機構40は、回転側規制部材31の突起部31aの間に規制ピン32が配置される規制位置(
図4(B)に示す位置)と、回転側規制部材31の突起部31aの間から規制ピン32が外れる規制解除位置(
図4(A)に示す位置)との間で規制ピン32を移動させる。また、駆動機構40の圧縮コイルバネ42は、規制位置に向かって規制ピン32を付勢する。ソレノイド41は、規制位置にある規制ピン32を規制解除位置に向かって移動させる。
なお、規制ピン32が規制解除位置にある際、回転側規制部材31の外周側に配置される駆動機構40のプランジャ41aは、回転側規制部材31の突起部31aに接触しない位置に配置される。
【0070】
図3に示すように、回路基板Bは、ガラスエポキシ基板などのリジッド基板であり、平板状に形成されている。この回路基板Bは、回路基板Bの厚さ方向と上下方向とが一致するようにケース体80に固定されている。また、回路基板Bは、ケース体80の上端側に固定されており、回転側規制部材31よりも上側に配置されている。回転軸17の上端は、回路基板Bの上面よりも上側に配置されている。
【0071】
回路基板Bには、モータ10を駆動するためのモータ駆動回路や、回路基板Bに入力される信号を回路基板Bの外部へ出力するための信号伝達回路が実装されている。また、回路基板Bには、少なくとも2個のコネクタが実装されている。2個のコネクタのうちの一方のコネクタに接続される配線は、回転軸17の内周側を通過するように引き回された後、出力側部材18の貫通孔18cから引き出されている。他方のコネクタに接続される配線は、ケース体80の開口部81aから引き出されている。
【0072】
(第2型関節部の構成)
次に
図6~
図8を参照して、第2型関節部2、つまり第二回転規制機構70が搭載される第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cの構成について具体的に説明する。
図6は、
図1に示す第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cの縦断面図である。
図7は、
図6のH-H断面図である。
図8は、
図6のI矢視図である。
なお、以下の説明でも、説明の便宜上、
図3と同様に、
図6のZ1方向側を「上」側とし、その反対側であるZ2方向側を「下」側とする。また、
図6のX1方向側を「左」側として、その反対側であるX2の方向側を「右」側とする。また、
図7及び
図8のY1方向側を「後」側として、その反対側であるY2の方向側を「前」側とする。
【0073】
図6に示すように、第2型関節部2は、モータ10と、モータ10に連結される減速機20と、モータ10の回転位置を検出するための位置検出機構60と、モータ10及び位置検出機構60が電気的に接続される回路基板Bと、モータ10と減速機20と位置検出機構60と回路基板Bとを収納するケース体80と、を含んで構成されており、関節部2自体が回転アクチュエータとして構成されている。また、第2型関節部2は、停止しているロータ11の回転を規制する第二回転規制機構70と、モータ10の磁石ホルダ12及び減速機20の入力軸24の内周側に挿通される筒状の回転軸17と、剛性内歯歯車21に固定される出力側部材18と、をさらに備えている。第1型関節部3と同様に、モータ10及び第二回転規制機構70は、ケース体80に収容される。
なお、第2型関節部2は、第1型関節部3の第一回転規制機構30の代わりに第二回転規制機構70を有しており、第2回転規制機構以外の部分は第1型関節部3と同様に構成される。そのため、第2型関節部2の構成において、第1型関節部3と同一又は同等部分については、図面に同一あるいは同等符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0074】
第二回転規制機構70は、第2型関節部2において、停止しているロータ11をその停止位置で保持するために設けられており、ケース体80(筐体)に収容されている。第二回転規制機構70は、第一回転規制機構30とは異なり、電磁式、具体的には電磁ブレーキ機構であり、その電磁ブレーキ機構としては例えば無励磁動作型、励磁動作型などが挙げられる。第2型関節部2では、上述したように第一回転規制機構30は搭載されず、固定部材35とモータ10との間において上下方向で所定の間隔が空けられ、その空間に第二回転規制機構70が配置される。第二回転規制機構70は、固定部材35の下側に固定される。つまり、第2型関節部2は、トルクの出力方向側から順に、減速機20、モータ10、第二回転規制機構70、位置検出機構60が配置された構成となっている。なお、第2型関節部2の固定部材35には、
図3に示した凹部35a及び窪み35bは設けられない。
【0075】
第二回転規制機構70は、平板状且つ略円環状のヨーク71(コイルホルダ)と、平板状かつ略円環状の摩擦板72(第二回転体)と、摩擦板72とモータ10の磁石ホルダ12の間に介在して、摩擦板72と磁石ホルダ12との周方向の移動を規制する平板状且つ環状のハブ73(アタッチメント)と、摩擦板72の上端面(回転軸17の方向の端面)に対し面接触(当接)して、摩擦板72の周方向の移動を規制する可動板74(第二部材)と、を有して構成される。すなわち、第二回転規制機構70は、モータ10の磁石ホルダ12(回転軸17)によって支持された摩擦板72の上端面に可動板74を当接させることによって生じる摩擦力によってモータ10の回転を規制する機構である。
【0076】
ヨーク71は、固定部材35の下端面に周方向に亘って形成される周溝に嵌合され固定され、その結果、第二回転規制機構70の摩擦板72と位置検出機構60との間に配置される。また、ヨーク71は、その下端面に周方向に亘って形成される収容溝71aと、この収容溝71aに収容される略円環状のコイル71bと、可動板74を摩擦板72に向けて付勢する複数のバネ(不図示)と、を有して構成される。
【0077】
コイル71bは、通電されると可動板74を上方向(モータ10の回転軸方向)に移動させるための磁力を発生させる。また、バネは、ヨーク71に設けられた穴部に挿入されており、その下端部は可動板74に接触される。また、ヨーク71とモータ10のロータ11(磁石ホルダ12)との隙間は、可動板74と摩擦板72との当接により生じ得る摩耗粉の通過を抑制する距離に設定されている。これにより、位置検出機構60側にその摩擦粉が侵入するのを防止可能となっている。
なお、バネとしては特に限定されないが、例えばコイルバネなどが挙げられる。
【0078】
図7に示すように、ハブ73の外形は、略矩形状(多角形)に形成されており、その内形は磁石ホルダ12の外形に対応して円環状に形成されている。また、
図6に示すように、磁石ホルダ12の上下方向で中間部分の外周側には、上下方向に直交する円環状の段差面12aが形成されている。ハブ73は、その内形で磁石ホルダ12に挿嵌されるとともに、その下端面で磁石ホルダ12の段差面12aに対向している。これにより、ハブ73は、磁石ホルダ12に強固に固定されている。
【0079】
図6及び
図7に示すように、摩擦板72には、ハブ73の外形に対応して略矩形状(多角形)の穴72aが形成される。その略矩形状の穴72aにハブ73が内嵌されている。つまり摩擦板72は、その略矩形状の穴72aに嵌まるハブ73を介して磁石ホルダ12に支持されている。
なお、本形態は、摩擦板72の穴72aを略矩形状に形成したが、これに限定されない。多角形であればよく、矩形以外にも三角形、五角形又は六角形や台形などが挙げられる。穴72aは、スプライン形状であってもよい。
【0080】
図6に示すように、可動板74は、磁性材料からなり、磁石ホルダ12に挿入され、磁石ホルダ12の軸方向、つまり上下方向で移動可能にヨーク71と摩擦板72との間に介挿される。可動板74は、回転軸17の周方向には回転しないように、ヨーク71と摩擦板72との間に配置されている。可動板74は、上側に移動する際はヨーク71の下端面に当接し、下側に移動する際は摩擦板72の上端面に当接する。第二回転規制機構70は、トルクの出力方向から順に、ハブ73と摩擦板72との連結体、可動板74及びヨーク71が配置された構成となっている。
【0081】
また、本形態では、第二回転規制機構70のヨーク71のコイル71bは、モータ10の停止時に非通電状態となっており、モータ10の駆動時に通電状態となる。また、第2型関節部2の稼働時に異常が発生した場合、モータ10の駆動時においてもヨーク71のコイル71bは非通電状態に切り替えられ、第2型関節部2は異常停止される。すなわち、ヨーク71のコイル71bが通電状態ではないとき磁力が発生せず、ヨーク71のバネの付勢力により、可動板74が下側に移動して摩擦板72に当接する。この当接により、摩擦板72はその周方向の移動が規制され、その結果、ロータ11の回転が規制される。その一方、ヨーク71が通電状態となると磁力を発生し、バネの付勢力に抗して可動板74を上側に移動させる。この移動により摩擦板72と可動板74との当接状態が解除されて間隙が形成される。そのため、ロータ11が回転可能となる。
【0082】
このように、第二回転規制機構70は、摩擦板72と可動板74とが当接する規制位置と、摩擦板72から可動板74が離れる規制解除位置と、の間で可動板74を移動させる。ヨーク71のバネは、規制位置に向かって可動板74を付勢する。ヨーク71のコイル71bは、通電されると規制位置にある可動板74を規制解除位置に向かって移動させる。
【0083】
また、本形態では、第2型関節部2には上述したように第二回転規制機構70が搭載される。第二回転規制機構70は電磁式であり、第一回転規制機構30のピン接触式に比べるとその占有容積及び重量が大きい。そのため、第2型関節部2のケース体80は、第1型関節部3よりも大きく設けられる。そして、
図8に示すように、その第2型関節部2のケース体80の側面(モータ10の回転軸方向に直交する方向の端部)において、その上側部分に略矩形状の開口部81b(穴部)が形成される。この開口部81bは上下方向に直交する方向に開口しており、この開口部81bには電線が通される。また、開口部81bには、その略矩形状の前後中間部分において上下方向に延びて開口部81bの上端縁と下端縁とを掛け渡す補強部材81cが形成される。補強部材81cは、開口部81bの強度を補強する。
【0084】
(第1型関節部、第2型関節部及びアームの連結構造)
再度
図2を参照して、本形態に係るロボット1の第2型関節部2、第1型関節部3及びアーム4の連結構造について説明する。
【0085】
上述したように、支持部材5と第1関節部2Aとが相対回動可能に連結され、第1関節部2Aと第2関節部2Bとが相対回動可能に連結されている。また、第2関節部2Bと第1アーム4Aの基端とが固定され、第1アーム4Aの先端と第3関節部2Cとが固定され、第3関節部2Cと第4関節部3Aとが相対回動可能に連結されている。また、第4関節部3Aと第2アーム4Bの基端とが相対回動可能に連結され、第2アーム4Bの先端と第5関節部3Bとが固定され、第5関節部3Bと第6関節部3Cとが相対回動可能に連結されている。具体的には、例えば、
図2(B)に示す動作をロボット1が行うことが可能となるように、以下のように、各関節部2,3及びアーム4が連結されている。
【0086】
なお、以下の説明では、第1関節部2Aの剛性内歯歯車21の軸方向を「第1関節部2Aの軸方向」とし、第2関節部2Bの剛性内歯歯車21の軸方向を「第2関節部2Bの軸方向」とする。また、第3関節部2Cの剛性内歯歯車21の軸方向を「第3関節部2Cの軸方向」とし、第4関節部3Aの剛性内歯歯車21の軸方向を「第4関節部3Aの軸方向」とする。また、第5関節部3Bの剛性内歯歯車21の軸方向を「第5関節部3Bの軸方向」とし、第6関節部3Cの剛性内歯歯車21の軸方向を「第6関節部3Cの軸方向」とする。
【0087】
まず、支持部材5と第1関節部2Aとは、第1関節部2Aのフランジ部18aに、支持部材5の、フランジ部5aが形成されていない側の端面が固定されることで連結されている。すなわち、第1関節部2Aの軸方向と支持部材5の軸方向とが一致するように支持部材5と第1関節部2Aとが連結されている。第1関節部2Aと第2関節部2Bとは、第1関節部2Aの軸方向と第2関節部2Bの軸方向とが直交するように連結されている。また、第2関節部2Bのフランジ部18aに、第1関節部2Aのケース本体81の、開口部81bが形成された側面が固定されている。
【0088】
第2関節部2Bと第1アーム4Aとは、第2関節部2Bの軸方向と第1アーム4Aの長手方向(軸方向)とが直交するように連結されている。また、第2関節部2Bのケース本体81の、開口部81bが形成された側面に第1アーム4Aの基端が固定されている。第1アーム4Aと第3関節部2Cとは、第1アーム4Aの長手方向と第3関節部2Cの軸方向とが直交するように連結されている。また、第3関節部2Cのケース本体81の、開口部81bが形成された側面に第1アーム4Aの先端が固定されている。
【0089】
第3関節部2Cと第4関節部3Aとは、第3関節部2Cの軸方向と第4関節部3Aの軸方向とが直交するように連結されている。また、第3関節部2Cのフランジ部18aに、第4関節部3Aのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。より具体的には、第4関節部3Aのケース本体81の開口部81aが形成された側面に固定される連結部材6を介して、第3関節部2Cのフランジ部18aに、第4関節部3Aのケース本体81の開口部81aが形成された側面が固定されている。連結部材6は、第3関節部2Cのフランジ部18aに固定されるフランジ部5aを備えて鍔付きの円筒状に形成されている。
【0090】
第4関節部3Aと第2アーム4Bとは、第4関節部3Aの軸方向と第2アーム4Bの長手方向とが一致するように連結されている。また、第4関節部3Aのフランジ部18aに第2アーム4Bの基端が固定されている。
なお、第2アーム4Bの基端には、第4関節部3Aのフランジ部18aに第2アーム4Bの基端を固定するためのフランジ部4aが形成されており、第4関節部3Aのフランジ部18aとフランジ部4aとが互いに固定されている。
【0091】
第2アーム4Bと第5関節部3Bとは、第2アーム4Bの長手方向と第5関節部3Bの軸方向とが直交するように連結されている。また、第5関節部3Bのケース本体81の、開口部81aが形成された側面に第2アーム4Bの先端が固定されている。第5関節部3Bと第6関節部3Cとは、第5関節部3Bの軸方向と第6関節部3Cの軸方向とが直交するように連結されている。また、第5関節部3Bのフランジ部18aに、第6関節部3Cのケース本体81の、開口部81aが形成された側面が固定されている。
【0092】
このように第1型関節部3、第2型関節部2及びアーム4が連結されることにより、第2型関節部2は、第2アーム4B及び第1型関節部3を支持するため、第2型関節部2の第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cの出力トルク(要求トルク)は大きい。その一方、第1型関節部3は、第2型関節部2と比較してその先端側に支持を要する機構が取り付けられないため、第1型関節部3の第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cの要求トルクは、第2型関節部2に比べて小さくて済む。すなわち、6つの関節部2,3のうち、出力トルクが閾値以下となる関節部2,3は第1型関節部3の第4関節部3A、第5関節部3B及び第6関節部3Cである。そして、出力トルクが閾値を越える関節部2,3は第2型関節部2の第1関節部2A、第2関節部2B及び第3関節部2Cである。
【0093】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、複数(本形態では6つ)の関節部2,3は、モータ10及びこのモータ10の回転を規制する第一回転規制機構30を含む第1型関節部3と、モータ10及びこのモータ10の回転を規制する第二回転規制機構70を含む第2型関節部2と、を含む。第一回転規制機構30は、モータ10の回転軸17によって支持された回転側規制部材31(第一回転体)の外周部に形成された複数の突起部31a(突起)の間に規制ピン32(第一部材)を挿入することによってモータ10の回転を規制する機構である。第二回転規制機構70は、モータ10の回転軸17によって支持された摩擦板72(第二回転体)の回転軸17の方向の端面に可動板74(第二部材)を当接させることによって生じる摩擦力によってモータ10の回転を規制する機構である。
【0094】
小型かつ軽量の第一回転規制機構30と、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構70とを併用して、互いに停止又は制動のメカニズムや特性が異なる2種類の回転規制機構30,70を含んでロボット1が構成されている。これにより、ロボット1の各関節部2,3の要求トルクや、その全体のサイズや重量などのロボット1全体の特性やバランスからそれぞれの関節部2,3の位置に応じて回転規制機構30,70の種類を適宜選択して、各関節部2,3の停止や制動の点で、ロボット1全体を最適化することができる。すなわち、関節部2,3の位置毎に適した規制機構を導入することができ、ロボット1の耐久性向上、作業性向上を両立させることができる。
【0095】
また、本形態では、複数の関節部2,3のうち、最も先端側に配置された関節部2,3は第一回転規制機構30を有する第1型関節部3(第一関節部)である。最も基端側に配置された関節部は第二回転規制機構70を有する第2型関節部2(第二関節部)である。
【0096】
ここで、複数の関節部2,3と関節部2,3に連結されるアーム4を有するロボット1において、ロボット1の先端側は軽量化が一般的に要求される。このことから、最も先端側に配置された関節部3は、小型かつ軽量の第一回転規制機構30が含まれて構成される第1型関節部3(第一関節部)が適している。その一方、ロボット1の基端側(根元側)は例えば天井面や地面などの固定面に固設される場合もあり、このような場合、基端側の関節部2は要求トルクが大きくなる。このことから、最も基端側に配置された関節部2は、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構70が含まれて構成される第2型関節部2(第二関節部)が適している。すなわちこのように、ロボット1の先端側や基端側の位置に応じて回転規制機構30,70を適宜選択して導入することにより、ロボット1全体の特性やバランスからロボット1全体をより適切に最適化することができる。
【0097】
また、本形態では、複数の関節部2,3のうち、最も先端側に配置されるアーム4の三次元位置を決めるための関節部2,3は第2型関節部2(第二関節部)である。このアーム4の先端側に連結される関節部は第1型関節部3(第一関節部)である。
【0098】
ここで、複数の関節部2,3と関節部2,3に連結されるアーム4を有するロボット1において、ロボット1の先端側のアーム4の三次元位置(位置姿勢のうち主に位置)を決定するための要求トルクは一般的に大きくなる。このことから、そのための関節部2は大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構70が含まれて構成される第2型関節部2(第二関節部)が適している。その一方、アーム4の先端側に連結される関節部3は主に姿勢を決定するためのものであるので、この姿勢を決定するための要求トルクはそれほど大きくなる必要はない。このことから、そのアーム4の先端側に連結される関節部3は、小型かつ軽量の第一回転規制機構30が含まれて構成される第1型関節部3(第一関節部)が適している。すなわちこのように、各アーム4の位置決定又は姿勢決定それぞれに対する寄与度に応じて回転規制機構30,70を適宜選択して導入することにより、ロボット1全体の特性やバランスからロボット1全体をより適切に最適化することができる。
【0099】
また、本形態では、複数の関節部2,3のうち、出力トルクが閾値以下となる関節部3が第1型関節部3(第一関節部)である。出力トルクが閾値を超える関節部2が第2型関節部2(第二関節部)である。
【0100】
このため、複数の関節部2,3と関節部2,3に連結されるアーム4を有するロボット1において、各関節部2,3に要求される出力トルクの大小に応じて回転規制機構30,70を適宜選択して導入することにより、ロボット1全体の特性やバランスからロボット1全体をより適切に最適化することができる。
【0101】
また、本形態では、2つのアーム4を含み、複数の関節部2,3として6つの関節部2,3を含む。6つの関節部2,3のうち、先端側に配置された3つの関節部3はそれぞれ第1型関節部3(第一関節部)である。基端側に配置された3つの関節部2はそれぞれ第2型関節部2(第二関節部)である。
【0102】
本形態のように6つの関節部2,3を有する場合、先端側に配置された3つの関節部3はともに要求トルクがそれほど大きくなる必要がないため、小型かつ軽量の第一回転規制機構30が含まれて構成される第1型関節部3(第一関節部)が適している。その一方、基端部に配置された3つの関節部2はともに、先端側の3つの関節部3を比べて要求トルクが大きくなる。そのため、基端部に配置された3つの関節部2は、大ブレーキトルク且つ高耐久の第二回転規制機構70が含まれて構成される第2型関節部2(第二関節部)が適している。
【0103】
また、本形態では、第2型関節部2(第二関節部)は、モータ10及び第二回転規制機構70を収容するケース体80(筐体)を備える。ケース体80におけるモータ10の回転軸方向に直交する方向の端部には、電線を通す開口部81a(穴部)が設けられ、開口部81bには、開口部81bを補強する補強部材81cが形成されている。
【0104】
ここで、第二回転規制機構70を所定の関節部2に搭載する場合、その関節部2の外形は大型化する傾向にあり、これに伴ってケース体80(筐体)も大型化する。そのため、このように構成すると、第二回転規制機構70を搭載して関節部2のケース体80が大型化した場合でも、電線を通すための開口部81bに補強部材81cが形成されるので、関節部2のケース体80の強度を高めることができる。これにより、ロボット1の動作時におけるロボット1自体の振動などを抑制することができる。なお、このような補強部材は、関節部3のケース体80に設けられた電線を通すための開口部に設けられてもよい。
【0105】
また、本形態では、第2型関節部2(第二関節部)は、トルクの出力方向側から順に、減速機20、モータ10、第二回転規制機構70、及びモータ10の回転位置を光学的に検出する位置検出機構60(検出器)が配置された構成である。第二回転規制機構70の摩擦板72(第二回転体)と位置検出機構60との間には、摩擦板72をモータ10の回転軸方向に移動させるための磁力を発生させるコイル71bを収容するヨーク71が設けられている。
【0106】
このように、第二回転規制機構70の摩擦板72(第二回転体)と位置検出機構60(検出器)との間に、ヨーク71が配設されるので、第二回転規制機構70の使用に伴って摩擦板72の摩擦粉が発生した場合でも、ヨーク71が障壁となってその摩擦粉が位置検出機構60側にまで侵入するのを抑制することができる。この侵入の抑制により、位置検出機構60の動作に影響するのを防止することができる。
【0107】
また、本形態では、ヨーク71とモータ10のロータ11(磁石ホルダ12)との隙間は、可動板74(第二部材)と摩擦板72(第二回転体)との当接により生じ得る摩耗粉の通過を抑制する距離となっている。
【0108】
このため、ヨーク71とロータ11との隙間が摩擦粉の通過を抑制する距離に設定されるので、その摩擦粉が位置検出機構60(検出器)側にまで侵入するのをより一層抑制することができる。
【0109】
また、本形態では、第2型関節部2(第二関節部)は、モータ10の回転軸17に固定され且つこのモータ10の駆動用磁石13を支持する磁石ホルダ12を備える。第二回転規制機構70の摩擦板72(第二回転体)には、略矩形状(多角形の一例)の穴72aが形成されている。摩擦板72は、その略矩形状の穴72aに嵌まるハブ73を介して磁石ホルダ12に支持されている。
【0110】
このため、第二回転規制機構70の組立・生産時において、焼き嵌め固定の後に着磁工程を設けたり、構成部材の配置順に応じて工程を適切に入れ替えたりすることが作業工程上、容易にすることができる。
【0111】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0112】
上述した形態では、第一回転規制機構30の圧縮コイルバネ42が規制ピン32を上側へ付勢し、ソレノイド41が規制ピン32を下側へ移動させているが、これに限定されない。例えば、圧縮コイルバネ42が規制ピン32を下側へ付勢し、ソレノイド41が規制ピン32を上側へ移動させてもよい。また、上述した形態では、第一回転規制機構30の圧縮コイルバネ42により規制ピン32が付勢されているが、これに限定されない。例えば、引張りコイルバネなどの他のバネ部材により規制ピン32が付勢されてもよい。
【0113】
上述した形態では、回転側規制部材31の突起部31aは、ロータ11の径方向の外側へ突出するように形成されているが、これに限定されない。例えば、突起部31aは、ロータ11の径方向の内側へ突出するように形成されてもよい。
【0114】
上述した形態では、駆動機構40のプランジャ41aの上端部にピン43が固定されているが、これに限定されない。例えば、プランジャ41aの上端部にピン43が固定されていなくてもよい。この場合には、ソレノイド41の本体部41bよりも上側に突出するプランジャ41aの上端部の長さが長くなっており、プランジャ41aの上端部は、ケース体80の貫通孔82aの中に配置されている。また、規制ピン32が規制位置にあるとき、プランジャ41aの上端部はケース体80の外部に突出しており、ケース体80の外部に突出しているプランジャ41aの上端部がケース体80の内部に向かって押されると、規制位置にある規制ピン32が規制解除位置へ移動する。
【0115】
なお、駆動機構40のプランジャ41aの上端部にピン43が固定されていない場合、規制ピン32が規制位置にあるときにプランジャ41aの上端部がケース体80の内部に配置されていてもよい。この場合、カバー82に貫通孔82aが形成されていなくてもよい。
【0116】
上述した形態では、剛性内歯歯車21が減速機20の出力軸となっているが、これに限定されない。例えば、可撓性外歯歯車22が減速機20の出力軸となっていてもよい。この場合、剛性内歯歯車21がケース体80及びクロスローラベアリング26の内輪26aに固定され、可撓性外歯歯車22がクロスローラベアリング26の外輪26b及び出力側部材18のフランジ部18aに固定される。また、上述した形態では、減速機20は、中空波動歯車装置であるが、これに限定されない。例えば、減速機20は、中空波動歯車装置以外の中空減速機であってもよい。また、減速機20は、中空減速機以外の減速機であってもよい。また、上述した形態では、モータ10は中空モータであるが、これに限定されない。例えば、モータ10は中空モータ以外のモータであってもよい。また、上述した形態では、モータ10はいわゆるインナーロータ型のモータであるが、これに限定されない。例えば、モータ10は、アウターロータ型のモータであってもよい。
【0117】
上述した形態では、ロボット1は、6個の関節部2,3を備えているが、これに限定されない。例えば、ロボット1が備える関節部2,3の数は5個以下であってもよいし、7個以上であってもよい。また、上述した形態では、ロボット1は2本のアーム4を備えているが、これに限定されない。例えば、ロボット1が備えるアーム4の数は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、上述した形態では、ロボット1の関節部2,3がモータ10及び減速機20などを有する回転アクチュエータによって構成されているが、これに限定されない。例えば、回転アクチュエータはロボット1の関節部2,3以外に使用されてもよい。またその他、回転アクチュエータはθステージ(回転ステージ)の駆動部などに使用されてもよい。また、上述した形態では、ロボット1は、産業用ロボットであるが、ロボット1は、様々な用途に適用可能である。例えば、ロボット1は、サービス用ロボットであってもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 産業用ロボット(ロボット)
2 第2型関節部
2A 第1関節部
2B 第2関節部
2C 第3関節部
3 第1型関節部
3A 第4関節部
3B 第5関節部
3C 第6関節部
4 アーム
4A 第1アーム
4B 第2アーム
4a フランジ部
5 支持部材
5a フランジ部
6 連結部材
6a フランジ部
10 モータ
11 ロータ
12 磁石ホルダ
12a 段差面
13 駆動用磁石(磁石)
14 ステータ
15 軸受保持部材
16 ベアリング
17 回転軸
18 出力側部材
18a フランジ部
18b 筒部
18c 貫通孔
18d 小径部
18e 段差面
19 ベアリング
20 減速機
21 剛性内歯歯車
22 可撓性外歯歯車
22a フランジ部
23 波動発生部
24 入力軸
24a 楕円部
25 ウエーブベアリング
26 クロスローラベアリング
26a 内輪
26b 外輪
30 第一回転規制機構
31 回転側規制部材(第一回転体)
31a 突起部(突起)
32 規制ピン(第一部材)
32a 凹部
33 リニアブッシュ
35 固定部材
35a 凹部
35b 窪み
40 駆動機構
41 ソレノイド
41a プランジャ
41b 本体部
42 圧縮コイルバネ
43 ピン
43a 軸部
43b フランジ部
50 保持部材
50a 保持部
50b 貫通孔
50c 大径部
50d 段差面
51 支柱
60 位置検出機構(検出器)
61 スリット板
62 センサ
70 第二回転規制機構
71 ヨーク
71a 収容溝
71b コイル
72 摩擦板(第二回転体)
72a 穴
73 ハブ
74 可動板(第二部材)
80 ケース体(筐体)
81 ケース本体
81a 開口部
81b 開口部(穴部)
81c 補強部材
82 カバー
82a 貫通孔