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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20230816BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20230816BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230816BHJP
   H01L 23/48 20060101ALI20230816BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B23K20/00 310B
B23K20/00 310L
H01L21/60 321E
H01L21/52 F
H01L23/48 S
H01L23/36 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019110361
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2020093302
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018226546
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松久 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】井本 吉紀
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-240346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250386(US,A1)
【文献】特開2006-175503(JP,A)
【文献】特開昭63-016888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00-20/26
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせた2つの金属部材を載置する載置面を有する支持台、および前記載置面との間で前記2つの金属部材を挟むことにより前記2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制する規制部材を有する規制装置と、
前記規制装置により前記2つの金属部材の動きが規制された状態で前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面に設定されるビーム照射領域に対して前記規制部材を介して電磁波ビームを照射することにより前記2つの金属部材の接合界面に固相拡散を発生させるための熱を与える加熱装置と、を有し、
少なくとも前記電磁波ビームが照射される金属部材のビーム照射領域に対応する部分には、前記電磁波ビームが透過する透過部が設けられており、
前記規制装置は、重ね合わせた前記2つの金属部材を互いに押し付けない状態で前記2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制する接合装置。
【請求項2】
重ね合わせた2つの金属部材を載置する載置面を有する支持台、および前記載置面との間で前記2つの金属部材を挟むことにより前記2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制する規制部材を有する規制装置と、
前記規制装置により前記2つの金属部材の動きが規制された状態で前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面に設定されるビーム照射領域に対して前記規制部材を介して電磁波ビームを照射することにより前記2つの金属部材の接合界面に固相拡散を発生させるための熱を与える加熱装置と、を有し、
少なくとも前記電磁波ビームが照射される金属部材のビーム照射領域に対応する部分には、前記電磁波ビームが透過する透過部が設けられており、
前記規制部材は、前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面における前記ビーム照射領域の周縁部に接触する第1の部分と、
前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面における前記ビーム照射領域に接触する前記透過部としての第2の部分と、を有している接合装置。
【請求項3】
重ね合わせた2つの金属部材を載置する載置面を有する支持台、および前記載置面との間で前記2つの金属部材を挟むことにより前記2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制する規制部材を有する規制装置と、
前記規制装置により前記2つの金属部材の動きが規制された状態で前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面に設定されるビーム照射領域に対して前記規制部材を介して電磁波ビームを照射することにより前記2つの金属部材の接合界面に固相拡散を発生させるための熱を与える加熱装置と、を有し、
少なくとも前記電磁波ビームが照射される金属部材のビーム照射領域に対応する部分には、前記電磁波ビームが透過する透過部が設けられていることを前提として、
前記透過部の状態を検出する検出器と、
前記検出器を通じて検出される前記透過部の状態に基づき前記透過部に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、前記透過部を保護すべく定められた保護制御を実行する制御装置と、を有し、
前記検出器は、前記電磁波ビームが照射される前記金属部材における前記ビーム照射領域あるいはその近傍の温度を検出する温度センサであって、
前記制御装置は、前記温度センサを通じて検出される前記ビーム照射領域あるいはその近傍の温度に基づき前記透過部に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、前記保護制御として前記加熱装置の出力を、これまでの出力よりも弱める、または一時的に停止する接合装置。
【請求項4】
重ね合わせた2つの金属部材を載置する載置面を有する支持台、および前記載置面との間で前記2つの金属部材を挟むことにより前記2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制する規制部材を有する規制装置と、
前記規制装置により前記2つの金属部材の動きが規制された状態で前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面に設定されるビーム照射領域に対して前記規制部材を介して電磁波ビームを照射することにより前記2つの金属部材の接合界面に固相拡散を発生させるための熱を与える加熱装置と、を有し、
少なくとも前記電磁波ビームが照射される金属部材のビーム照射領域に対応する部分には、前記電磁波ビームが透過する透過部が設けられていることを前提として、
前記透過部の状態を検出する検出器と、
前記検出器を通じて検出される前記透過部の状態に基づき前記透過部に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、前記透過部を保護すべく定められた保護制御を実行する制御装置と、を有し、
前記検出器は、前記支持台において前記電磁波ビームが照射される前記金属部材の前記ビーム照射領域に対応する位置に設けられて前記載置面に交わる方向の圧力を検出する圧力センサであって、
前記制御装置は、前記圧力センサを通じて検出される圧力に基づき前記透過部に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、前記保護制御として前記加熱装置の出力を、これまでの出力よりも弱める、または一時的に停止する接合装置。
【請求項5】
前記加熱装置は、前記電磁波ビームとしてレーザビームまたは電子ビームを照射する請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項6】
前記2つの金属部材は、基板に設けられた半導体素子の表面電極または基板の表面に成膜された金属、および配線部材である請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項7】
前記2つの金属部材は、基板に設けられた半導体素子、および放熱部材である請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を照射することによって2つの金属部材を接合する技術が知られている。たとえば、特許文献1の接合方法では、半導体素子表面の端子と配線とを接合材を介して重ね合わせ、筒状の加圧ノズルにより半導体素子表面の端子と配線との接合部を押圧する。この状態で、レーザ光を加圧ノズルの内部を通じて配線の表面に照射することにより端子と配線との接合部を加熱して接合材を溶融させる。この溶融した接合材が接合層を形成することによって、端子と配線とが接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4894528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の接合方法では、つぎのことが懸念される。すなわち、筒状の加圧ノズルは、端子と配線との接合部の周縁部を押圧するものであって、端子と配線との接合部の全体を押圧するものではない。ここで、配線の接合部に対応する部分は、レーザ光の照射を受けて加熱されることにより熱膨張する。このとき、配線の加圧ノズルに押圧されている部分は端子に対して接合材を介して密着した状態に保たれる。しかし、配線の加圧ノズルに押圧されない部分は、配線の厚みなどによるものの、レーザ加熱による熱膨張に伴い加圧ノズルの内部(端子と反対側)へ向けて反るおそれがある。そして、この配線の反りが発生した部分は、端子に対して接合材を介して密着した状態に保たれない。このため、端子と配線とを適切に接合すること、ひいては端子と配線との接合強度が確保できないことが懸念される。
【0005】
本発明の目的は、2つの金属部材の接合強度を確保することができる接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得る接合装置は、重ね合わせた2つの金属部材を載置する載置面を有する支持台、および前記載置面との間で前記2つの金属部材を挟むことにより前記2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制する規制部材を有する規制装置と、前記規制装置により前記2つの金属部材の動きが規制された状態で前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面に設定されるビーム照射領域に対して前記規制部材を介して電磁波ビームを照射することにより前記2つの金属部材の接合界面に固相拡散を発生させるための熱を与える加熱装置と、を有している。少なくとも前記電磁波ビームが照射される金属部材のビーム照射領域に対応する部分には、前記電磁波ビームが透過する透過部が設けられている。
【0007】
この構成によれば、加熱装置からの電磁波ビームは、透過部を透過して、載置面から遠い方の金属部材の表面に設定されるビーム照射領域に照射される。電磁波ビームが載置面から遠い方の金属部材に吸収されることにより当該金属部材が加熱されるとともに、この電磁波ビームの照射により発生した熱は載置面に近い方の金属部材へ向けて伝達する。このため、載置面から遠い方の金属部材の表面に電磁波ビームを照射することにより、2つの金属部材の接合界面(接合部分)に固相拡散を発生させるための熱を与えることができる。2つの金属部材の接合界面が加熱されることによって金属部材が熱膨張するところ、2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向への動きが規制装置によって規制されているため、金属部材の熱膨張により接合界面が加圧される。これにより、2つの金属部材の接合界面が密着するとともに、2つの金属部材の接合界面に固相拡散が発生して2つの金属部材が接合される。
【0008】
ここで、載置面から遠い方に配置される金属部材のビーム照射領域に規制部材を介して電磁波ビームを照射するために、電磁波ビームが透過する透過部に代えて、たとえば規制部材として、電磁波ビームが単に通過する孔が設けられた構成を採用することが考えられる。この場合、載置面から遠い方に配置される金属部材のビーム照射領域には規制部材の孔が対応することになる。このため、載置面から遠い方に配置される金属部材の厚みなどによっては、電磁波ビームの照射による加熱に伴い、載置面から遠い方に配置される金属部材のビーム照射領域に対応する部分が規制部材の孔の内部へ向けて反るおそれがある。このような反りが金属部材に発生する場合、2つの金属部材の接合界面が適切に密着あるいは加圧されないことによって、2つの金属部材の接合界面における原子の拡散(固相拡散)が発生しにくくなる。したがって、2つの金属部材の接合強度が確保できないことが懸念される。
【0009】
この点、上記の接合装置によれば、載置面から遠い方に配置される金属部材のビーム照射領域に対応する部分は、透過部によって、載置面と反対側へ向けた変形が規制される。このため、電磁波ビームの照射により、載置面から遠い方に配置される金属部材が加熱された場合、当該金属部材のビーム照射領域に対応する部分が載置面と反対側へ向けて反ることが抑制される。したがって、金属部材の熱膨張に伴って発生する圧力が2つの金属部材の接合界面に対して適切に作用することにより、2つの金属部材の接合界面における原子の拡散が適切に生じる。これにより、2つの金属部材の接合強度が確保される。
【0010】
上記の接合装置において、前記規制装置は、重ね合わせた前記2つの金属部材を互いに押し付けない状態で前記2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、金属部材の熱膨張による圧力を利用することによって、金属部材の外部から接合界面を加圧することなく2つの金属部材を接合することができるため、金属部材の外部から接合界面を加圧するための加圧装置が不要である。ここで、上記の接合装置には加圧装置ではなく規制装置が設けられるところ、この規制装置は2つの金属部材の互いに重ね合わせた方向における動きを規制するだけでよいので、加圧装置と異なり接合界面を加圧するための力を発生させる必要がない。このため、規制装置は、従来一般の加圧装置に比べて体格を小さくすることができる。したがって、接合装置の体格を、加圧装置が設けられる接合装置の体格よりも小さくすることができる。
【0012】
上記の接合装置において、前記規制部材は、前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面における前記ビーム照射領域の周縁部に接触する第1の部分と、前記2つの金属部材のうち前記載置面から遠い方の金属部材の表面における前記ビーム照射領域に接触する前記透過部としての第2の部分と、を有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、載置面から遠い方に配置される金属部材のビーム照射領域に対応する部分は、規制部材における透過部としての第2の部分によって、載置面と反対側へ向けた変形(反り)が抑制される。また、規制部材を第1の部分と第2の部分とに分けることにより、第1の部分と第2の部分とを異なる材料で形成することができる。
【0014】
上記の接合装置において、前記加熱装置は、前記電磁波ビームとしてレーザビームまたは電子ビームを照射することが好ましい。
この構成によるように、レーザビームまたは電子ビームを載置面から遠い方の金属部材に照射することによって、2つの金属部材の接合界面に固相拡散を発生させるための熱を与えることができる。レーザビームまたは電子ビームが載置面から遠い方の金属部材に吸収されることにより当該金属部材が加熱されるとともに、このレーザビームまたは電子ビームの照射により発生した熱は、載置面に近い方の金属部材へ向けて伝達する。
【0015】
上記の接合装置において、前記2つの金属部材は、基板に設けられた半導体素子の表面電極または基板の表面に成膜された金属、および配線部材であってもよい。
この構成によるように、基板に設けられた半導体素子の表面電極または基板の表面に成膜された金属、および配線部材を接合対象とすることができる。特に、接合装置が先の固相拡散を利用した接合方法を実行するものである場合、2つの金属部材の接合界面に対してそれら金属部材が溶融しない程度の熱が与えられる。このため、半導体素子あるいは基板の耐熱温度によるものの、2つの金属部材を溶融させて接合する場合に比べて、半導体素子あるいは基板に対する熱的な影響を抑えつつ半導体素子の表面電極または基板の表面に成膜された金属と、配線部材とを接合することができる。
【0016】
上記の接合装置において、前記2つの金属部材は、基板に設けられた半導体素子、および放熱部材であってもよい。
この構成によるように、基板に設けられた半導体素子、および放熱部材を接合対象とすることもできる。先の固相拡散を利用した接合方法を実行することにより、半導体素子あるいは基板に対する熱的な影響を抑えつつ半導体素子と放熱部材とを接合することができる。
【0017】
上記の接合装置において、前記透過部の状態を検出する検出器と、前記検出器を通じて検出される前記透過部の状態に基づき前記透過部に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、前記透過部を保護すべく定められた保護制御を実行する制御装置と、を有していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、透過部に異常が発生するおそれがあるとき、透過部を保護すべく定められた保護制御が実行される。このため、透過部を保護することができる。透過部に異常が存在しない状態で2つの金属部材を接合することができるため、接合装置の接合信頼性を向上させることができる。ちなみに、透過部の異常の一例としては、電磁波ビームが照射される金属部材が溶融して透過部に付着し、その透過部における溶融した金属が付着した部分に電磁波ビームが照射されることによって透過部が溶融したり割れたりすることが挙げられる。
【0019】
上記の接合装置において、前記検出器は、前記電磁波ビームが照射される前記金属部材における前記ビーム照射領域あるいはその近傍の温度を検出する温度センサであってもよい。この場合、前記制御装置は、前記温度センサを通じて検出される前記ビーム照射領域あるいはその近傍の温度に基づき前記透過部に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、前記保護制御として前記加熱装置の出力を、これまでの出力よりも弱める、または一時的に停止することが好ましい。
【0020】
電磁波ビームが照射される金属部材のビーム照射領域には透過部が接触する。このため、金属部材のビーム照射領域に対応する部分に発生する熱は透過部に伝わる。したがって、電磁波ビームの照射パワーなどによるものの、金属部材の加熱に伴い透過部が熱の影響を受けて損傷するおそれがある。
【0021】
また、電磁波ビームの照射を通じた加熱による熱膨張に伴い、載置面から遠い方に配置される金属部材のビーム照射領域に対応する部分が載置面と反対側へ向けて変形しようとすることがあるところ、この変形は透過部により規制される。このため、金属部材の変形しようとする力が透過部に作用することによって、透過部が損傷するおそれがある。
【0022】
この点、上記の接合装置によれば、透過部に異常、すなわち金属部材の加熱あるいは金属部材の変形に起因する損傷が発生するおそれがあるとき、透過部に対する保護制御として加熱装置の出力がこれまでの出力よりも弱められる、または一時的に停止される。このため、金属部材の温度上昇、ひいては金属部材の変形が抑制される。金属部材の損傷が抑えられることにより、透過部を保護することができる。
【0023】
上記の接合装置において、前記検出器は、前記支持台において前記電磁波ビームが照射される前記金属部材の前記ビーム照射領域に対応する位置に設けられて前記載置面に交わる方向の圧力を検出する圧力センサであってもよい。この場合、前記制御装置は、前記圧力センサを通じて検出される圧力に基づき前記透過部に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、前記保護制御として前記加熱装置の出力を、これまでの出力よりも弱める、または一時的に停止することが好ましい。
【0024】
電磁波ビームの照射を通じた加熱による熱膨張に伴い、載置面から遠い方に配置される金属部材のビーム照射領域に対応する部分が載置面と反対側へ向けて変形しようとすることがあるところ、この金属部材の変形しようとする力が透過部に作用することによって、透過部が損傷するおそれがある。金属部材の変形しようとする力は、反作用として載置面にも作用するため、圧力センサを通じて検出される圧力に基づき、透過部に異常が発生するおそれがあるかどうかを判定することが可能である。
【0025】
上記の接合装置によれば、透過部に異常、すなわち金属部材の加熱あるいは金属部材の変形に起因する損傷が発生するおそれがあるとき、透過部に対する保護制御として加熱装置の出力がこれまでの出力よりも弱められる、または一時的に停止される。このため、金属部材の温度上昇、ひいては金属部材の変形が抑制される。金属部材の損傷が抑えられることにより、透過部を保護することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の接合装置によれば、2つの金属部材の接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】接合装置の第1の実施の形態により2つの部品が接合されてなる接合体の半導体モジュールの正面図。
図2】接合装置の第1の実施の形態の概略構成を示す構成図。
図3】第1の実施の形態における配線部材がその表面から加熱される状態を示す接合装置の要部断面図。
図4】第1の実施の形態における2つの金属部材の接合界面の温度と2つの金属部材の接合率との関係を示すグラフ。
図5】第1の実施の形態におけるレーザ光の照射条件(照射パワーおよび照射時間)と2つの金属部材の接合界面の温度との関係を示すグラフ。
図6】第1の実施の形態における2つの金属部材の接合界面における原子流動を示す接合界面の二次元モデル。
図7】接合装置の比較例において、レーザ加熱に伴い配線部材が反った状態を示す接合装置の要部断面図。
図8】接合装置の他の実施の形態を示す接合装置の要部断面図。
図9】接合装置の第2の実施の形態の概略構成を示す構成図。
図10】第2の実施の形態において、規制部材の第2の部分の異常判定を行うための構成の一例を示す接合装置の構成図。
図11】第2の実施の形態において、規制部材の第2の部分の異常判定を行うための構成の一例を示す接合装置の構成図。
図12】(a),(b)は、第2の実施の形態において、規制部材の第2の部分の異常が検出された場合におけるレーザ装置の出力調整態様の一例を示すグラフ。
図13】第2の実施の形態において、規制部材の第2の部分を保護するための保護制御を実行するための構成の一例を示す接合装置の構成図。
図14】第2の実施の形態において、規制部材の第2の部分を保護するための保護制御を実行するための構成の一例を示す接合装置の構成図。
図15】第2の実施の形態において、規制部材の第2の部分を保護するための保護制御を実行するための構成の一例を示す接合装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1の実施の形態>
以下、接合装置の第1の実施の形態を説明する。接合装置は、電磁波ビームとしてのレーザ光(レーザビーム)を使用して金属あるいは金属部分を含む2つの部品を接合する装置である。
【0029】
まず、2つの部品が接合されてなる接合体の一例を説明する。
図1に示すように、接合体としての半導体モジュール11は、基板12に設けられた半導体素子13の表面電極14と、配線部材15とが接合されてなる。表面電極14は、金(Au)により平板状あるいは薄膜状に設けられた金属部材である。配線部材15は、銅(Cu)により平板状に設けられたバスバーあるいはリードフレームなどの金属部材である。配線部材15の厚みは表面電極14の厚みよりも厚い。
【0030】
なお、表面電極14と配線部材15とは、固相拡散接合により接合される。固相拡散接合とは、接合する2つの母材(ここでは、表面電極14および配線部材15)を密着させて、これら母材の融点以下の温度条件で塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法をいう。
【0031】
つぎに、接合装置について説明する。
図2に示すように、接合装置21は、支持台22、規制部材23、駆動装置24、加熱装置としてのレーザ装置25、温度センサ26、および制御装置27を有している。
【0032】
支持台22は、基板12および配線部材15が載置される載置面22aを有している。載置面22aには、基板12が半導体素子13を上(載置面22aと反対側)へ向けて載せられる。半導体素子13の表面電極14には配線部材15が重ねられる。
【0033】
規制部材23は、平板状に設けられている。規制部材23は、支持台22の載置面22aに対して平行をなしている。規制部材23は、第1の部分31および第2の部分32を有している。
【0034】
第1の部分31は、炭素鋼あるいはステンレス鋼などの金属材料により平板状に設けられている。第1の部分31には、その厚み方向(図2中の上下方向)へ貫通する孔23aが設けられている。第1の部分31において、孔23aにおける載置面22aと反対側(図2中の上側)の開口部の内周縁には、載置面22aと反対側へ向かうにつれて拡径するテーパ面が設けられている。
【0035】
第2の部分32は、第1の部分31の孔23aの内部に設けられている。第2の部分32は、孔23aにおける載置面22a側(図2中の下側)の開口部を塞いでいる。第2の部分32は、サファイヤ、ダイヤモンド、フッ化カルシウム、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)、および石英(SiO2)などのレーザ光を透過する材料により平板状に設けられている。第2の部分32の厚みは、第1の部分31の厚みよりも薄く設定されている。第2の部分32の底面と第1の部分31の底面とは面一(段差のない状態)である。第2の部分32は、電磁波ビームが透過する透過部に相当する。
【0036】
規制部材23は、載置面22aに対して直交する方向に沿って移動可能に設けられている。規制部材23は、初期位置P1と規制位置P2との間を移動する。初期位置P1は、載置面22aに基板12および配線部材15を重ねて置いたときの載置面22aを基準とする配線部材15の上面の高さHよりも高い位置である。規制位置P2は、載置面22aに基板12および配線部材15を重ねて置いたときの載置面22aを基準とする高さHと同程度の高さとなる位置である。ちなみに、図2において、初期位置P1および規制位置P2は、規制部材23の下面(載置面22a側の側面)の位置を示す。
【0037】
なお、規制部材23および支持台22の載置面22aは、互いに共働して2つの金属部材(配線部材15および基板12に設けられた半導体素子13の表面電極14)を互いに押し付けない状態でこれら金属部材の互いに重ね合わせた方向(載置面22aに対して直交する方向)における動きを規制する規制装置を構成する。
【0038】
駆動装置24は、規制部材23を載置面22aに対して直交する方向に沿って移動させる。駆動装置24は、モータあるいはシリンダなどの駆動源、および駆動源が発生する動力を規制部材23に伝達する伝達機構を有している。図2では、駆動装置24から規制部材23への動力伝達を破線で示す。また、駆動装置24は、規制部材23を初期位置P1から規制位置P2へ移動させたときに規制部材23を規制位置P2に固定するための固定機構を有している。固定機構としては、たとえば先の駆動源あるいは伝達機構の運動を規制するブレーキ機構あるいはロック機構が採用される。
【0039】
レーザ装置25は、規制部材23における第1の部分31の孔23a、および第2の部分32を介して配線部材15の表面にレーザ光Lを照射する。
温度センサ26は、配線部材15の表面においてレーザ光Lが照射される領域(規制部材23の第2の部分32を介して孔23aから露出する領域)であるレーザ照射領域15aの表面温度を非接触で検出する。レーザ照射領域15aは、電磁波ビームが照射されるビーム照射領域に相当する。
【0040】
制御装置27は、駆動装置24およびレーザ装置25の動作を制御する。制御装置27は、駆動装置24を通じて規制部材23を初期位置P1と規制位置P2との間で移動させる。また、制御装置27は、温度センサ26により検出されるレーザ照射領域15aの表面温度に基づき、表面電極14と配線部材15との接合界面Sbの温度を推定する。接合界面Sbとは、表面電極14および配線部材15において互いに接合される部分である2つの接合面14a,15bの境界をいう。接合面14aは、表面電極14の表面(配線部材15側の界面)である。接合面15bは、配線部材15の裏面(表面電極14側の界面)である。制御装置27は、接合界面Sbの温度に基づきレーザ装置25の出力を調節する。
【0041】
制御装置27は、記憶装置27aを有している。記憶装置27aには目標温度T(接合温度)が記憶されている。目標温度Tは、表面電極14と配線部材15とを適切に接合するために必要とされる接合界面Sbの温度の目標値である。目標温度Tは、接合対象の金属部材(14,15)を固相拡散接合することが可能とされる下限温度(たとえば銅の場合、200℃程度)以上、かつ接合対象の金属部材(14,15)の融点以下の範囲内の温度に設定される。
【0042】
目標温度Tは、表面電極14と配線部材15との接合率と、接合界面Sbの温度との関係に基づき設定される。接合率とは、接合界面Sbにおける実際に接合された部分の面積である真実接合面積と、接合界面Sbにおける真実接合面積と実際には接合されていない部分の面積である見かけの接合面積とを合算した面積との比をいう。接合率と接合界面Sbの温度との関係は、実験あるいはシミュレーションにより求められる。接合界面Sbの温度と接合率との関係の一例は、つぎの通りである。
【0043】
図4のグラフに示すように、接合界面Sbの温度Tの上昇に対して、接合率Sは徐々に増加し、やがて接合率Sは温度Tにかかわらず一定の値となる。目標とする接合率Sがまず決定されて、その決定された接合率Sに基づき目標温度Tが決定される。制御装置27は、接合界面Sbの温度が目標温度Tに一致するように、レーザ光Lの照射条件(照射パワーおよび照射時間)を制御する。接合界面Sbの温度Tとレーザ光Lの照射条件との関係の一例は、つぎの通りである。たとえば、図5のグラフに示すように、レーザ光Lの照射条件としてレーザ光Lの照射パワーおよび照射時間が増加するにつれて、接合界面Sbの温度Tは上昇する。
【0044】
<接合体の製造方法(接合方法)>
つぎに、半導体モジュール11の製造方法を説明する。ただし、半導体素子13が設けられた基板12は、あらかじめ用意される。また、接合装置21において、規制部材23は初期位置P1に保持されている。載置面22aには、基板12が半導体素子13を上に向けた姿勢で載せられている。半導体素子13の表面電極14には、配線部材15が重ねられている。この状態で、接合装置21の動作が開始される。
【0045】
図3に示すように、制御装置27は、駆動装置24を通じて規制部材23を初期位置P1から規制位置P2へ移動させる。これにより、規制部材23の下面(載置面22a側の側面)が配線部材15の上面(表面電極14と反対側の側面)に接触した状態に維持される。このとき、配線部材15が表面電極14に対して積極的に押し付けられることはない。半導体素子13が設けられた基板12および配線部材15が載置面22aと規制部材23との間に挟まれることにより、表面電極14および配線部材15の互いに離間する方向D1,D2(載置面22aに対して直交する方向)への移動が規制される。
【0046】
つぎに、制御装置27は、レーザ装置25を通じてレーザ光Lを配線部材15のレーザ照射領域15aに照射する。レーザ光Lが配線部材15に吸収されることにより、配線部材15が加熱される。図3に網掛けで示すように、レーザ光Lの照射により発生した熱は、配線部材15の表面から裏面へ向けて伝達する。制御装置27は、レーザ装置25を通じて、最終的には配線部材15の裏面である接合面15bと表面電極14の表面である接合面14aとの境界、すなわち接合界面Sbの温度Tが目標温度Tに達するまでレーザ光Lをレーザ照射領域15aに照射する。ちなみに、図3における網掛けは、網目(ドット)が密であるほど温度が高い領域であることを示し、網目が粗であるほど温度が低い領域であることを示す。
【0047】
配線部材15は加熱による温度上昇に伴い熱膨張する。ここで配線部材15は、規制部材23によって載置面22aと反対側(図3中の上側)へ向けた変形が規制されることから、配線部材15は最も変形しやすい表面電極14側(図3中の下側)へ向けて膨張する。このため、配線部材15の厚み方向における熱膨張に伴って発生する下向きの圧力Pが表面電極14の表面である接合面14aに作用する。この加圧に伴い、配線部材15の接合面15bおよび表面電極14の接合面14aの微細な凹凸の峰同士が接触して潰れることにより、接合面15bと接合面14aとの密着が進行する。
【0048】
図6の接合界面の二次元モデルに示すように、接合開始の直後において、接合面15bと接合面14aとの境界である接合界面Sbには、ボイド(空隙)Vsが生じる。接合面15bと接合面14aとの密着が進行することにより、やがて表面電極14と配線部材15との接合界面Sbにおいて原子の拡散(表面拡散As、界面拡散Ab、体積拡散Av)が生じる。表面拡散Asとは、ボイドVsの表面を経路とする拡散をいう。界面拡散Abとは、接合界面Sbを経路とする拡散をいう。体積拡散Avとは、結晶内(結晶格子)を経路とする拡散をいう。この原子の拡散(固相拡散)および接合界面Sb近傍のクリープ変形を通じて接合界面SbのボイドVsが収縮あるいは消滅し、表面電極14の接合面14aと配線部材15の接合面15bとの接合が進行する。すなわち、ボイドVsが収縮して消滅するにつれて、接合界面Sbにおける実際には接合されていない部分の面積である見かけの接合面積が減少する一方、接合界面Sbにおける実際に接合された部分の面積である真実接合面積が増加する。
【0049】
制御装置27は、接合界面Sbの温度が目標温度Tに達したとき、この状態を所定の加熱時間だけ継続する。これにより、接合界面Sb近傍のクリープ変形および原子の拡散によりボイドVsの収縮および消滅が進行する。すなわち、ボイドVsの収縮および消滅の進行に伴い接合率Sが増加して、やがて目標とする接合率S(接合強度)に達する。目標とする接合率Sがたとえば「1(最大値)」である場合、表面電極14の接合面14aと配線部材15の接合面15bとが、それら接合面14a,15bにおける狙いの接合範囲の全面にわたって完全に接合される。接合面14a,15bにおいて相互に接合された接合範囲に対応する部分においては、接合開始の直後に存在していた接合界面Sbは消滅している。
【0050】
<比較例>
つぎに、規制部材として第2の部分32を割愛した構成が採用された比較例を説明する。
【0051】
図7に示すように、比較例の規制部材41は、本実施の形態の規制部材23における第1の部分31のみを有してなる。表面電極14と配線部材15とを接合する際、支持台22の載置面22aには、半導体素子13を有する基板12、配線部材15、および規制部材41がこの順で重ねられる。配線部材15のレーザ照射領域15aは、規制部材41の孔23aに対応している。このため、レーザ照射領域15aには規制部材41が接触していない。配線部材15におけるレーザ照射領域15aの周縁部分には、規制部材41が接触している。この状態で、レーザ光Lが規制部材41の孔23aを介して配線部材15のレーザ照射領域15aに照射される。
【0052】
レーザ光Lが配線部材15に吸収されることによって配線部材15が加熱されて熱膨張するところ、配線部材15の厚みなどによっては、レーザ加熱による熱膨張に伴い配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分が規制部材41の孔23aの内方(図7中の上方)へ向けて反るおそれがある。これは、配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分は、規制部材41の孔23aに対応していることにより、載置面22aと反対側へ向けた変形が規制されないからである。そして、配線部材15が反ることに伴い、配線部材15のレーザ照射領域15aと対応する部分と表面電極14との間に隙間が形成されることもある。
【0053】
このため、配線部材15が反ることによって、表面電極14の表面である接合面14aに作用する加圧力、すなわち配線部材15の厚み方向における熱膨張に伴って発生する下向きの圧力Pが弱くなる。その結果、配線部材15の接合面15bと表面電極14の接合面14aとの密着が適切に進行せず、表面電極14と配線部材15との接合界面Sbにおける原子の拡散も生じにくくなる。したがって、表面電極14と配線部材15との接合強度が低下することが懸念される。ちなみに、配線部材15の反りは、配線部材15の厚みが薄くなるほど発生しやすい。
【0054】
<本実施の形態の作用>
この点、本実施の形態の規制部材23において、第1の部分31における孔23aの内部にはレーザ光Lを透過する第2の部分32が設けられている。そして、表面電極14と配線部材15とを接合する際には、半導体素子13が設けられた基板12および配線部材15を規制部材23と支持台22の載置面22aとで挟むことにより、表面電極14および配線部材15の互いに離間する方向(図7中の上下方向)への移動を規制する。このとき、規制部材23の第1の部分31は、配線部材15におけるレーザ照射領域15aの周縁部分に接触した状態に維持される。また、規制部材23の第2の部分32は、配線部材15のレーザ照射領域15aに接触した状態に維持される。この状態で、レーザ光Lが第1の部分31の孔23aおよび第2の部分32を介して配線部材15のレーザ照射領域15aに照射される。
【0055】
レーザ光Lが配線部材15に吸収されることによって配線部材15が加熱されて熱膨張するところ、配線部材15の厚みなどによるものの、レーザ加熱による熱膨張に伴い配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分が規制部材41の孔23aの内方(図3中の上方)へ向けて反ろうとする。しかし、配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分は、規制部材23の第2の部分32によって載置面22aと反対側(図3中の上側)へ向けて変形することが規制される。すなわち、配線部材15におけるレーザ照射領域15aと対応する部分が表面電極14と反対側へ向けて反ること、ひいては配線部材15におけるレーザ照射領域15aと対応する部分と表面電極14との間に隙間が形成されることが抑制される。
【0056】
このため、配線部材15は最も変形しやすい表面電極14側(図3中の下側)へ向けて膨張し、この配線部材15の厚み方向における熱膨張に伴って発生する下向きの圧力Pが表面電極14の表面である接合面14aに対して適切に作用する。この適切な加圧に伴い、配線部材15の接合面15bと表面電極14の接合面14aとの密着が適切に進行することによって、表面電極14と配線部材15との接合界面Sbにおける原子の拡散も適切に生じる。したがって、表面電極14と配線部材15との接合強度が確保される。
【0057】
<第1の実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)規制部材23の第1の部分31には、配線部材15の表面におけるレーザ照射領域15aに対応する孔23aが設けられている。この第1の部分31の孔23aには、レーザ光Lを透過する第2の部分32が設けられている。このため、配線部材15に対するレーザ光Lの照射を邪魔することなく、表面電極14および配線部材15の互いに離間する方向D1,D2(重ね合わせられた方向)への移動を規制することができる。
【0058】
(2)また、配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分は、規制部材23の第2の部分32によって表面電極14と反対側へ向けた変形が規制される。このため、配線部材15がレーザ光Lの照射により加熱された場合であれ、配線部材15のレーザ照射領域15aと対応する部分が表面電極14と反対側へ向けて反ることが抑制される。したがって、配線部材15の熱膨張に伴って発生する圧力Pが表面電極14の接合面14aに対して適切に作用し、その結果、表面電極14と配線部材15との接合界面Sbにおける原子の拡散が適切に生じる。これにより、表面電極14と配線部材15との接合強度が確保される。規制部材23を有する接合装置21は、加熱による熱膨張に起因して反りが発生しやすい、より薄い配線部材15の接合に好適である。
【0059】
(3)また、規制部材23は、第1の部分31と第2の部分32とに区分されている。このため、第1の部分31と第2の部分32とを異なる材料で形成することができる。
(4)重ね合わせた2つの金属部材(14,15)の互いに離間する方向D1,D2への動きを規制した状態で2つの金属部材の接合界面Sb(接合部分)に熱を与えることによって生じる金属部材の熱膨張による圧力を利用して2つの金属部材が接合される。金属部材の外部から接合界面Sbを積極的に加圧することなく2つの金属部材を接合することができるため、金属部材の外部から接合界面Sbを加圧するための加圧装置が不要である。接合装置21には、加圧装置ではなく、規制部材23を移動させる駆動装置24が設けられるところ、この駆動装置24は規制部材23を移動させることができる程度の力を発生させるだけでよい。すなわち、加圧装置と異なり接合界面Sbを加圧するための大きな力を発生させる必要がない。このため、駆動装置24は、加圧装置に比べて体格を小さくすることができる。したがって、接合装置21の体格を、加圧装置が設けられる接合装置の体格よりも小さくすることができる。
【0060】
(5)載置面22aに重ねて置かれた2つの金属部材(14,15)に対して、最も上に位置する金属部材(15)の表面に規制部材23を接触させた状態に維持するだけで2つの金属部材の互いに離間する方向D1,D2への移動を規制することができる。また、接合装置21の構成が複雑になることもない。
【0061】
<第2の実施の形態>
つぎに、接合装置の第2の実施の形態を説明する。
図9に示すように、接合装置21は、基本的には先の第1の実施の形態と同様の構成を有している。すなわち、接合装置21は、支持台22、規制部材23、駆動装置24、加熱装置としてのレーザ装置25、温度センサ26、および制御装置27を有している。
【0062】
第1の実施の形態の接合装置21によれば、配線部材15がレーザ光Lの照射により加熱された場合であれ、配線部材15のレーザ照射領域15aと対応する部分が表面電極14と反対側へ向けて反ることが、規制部材23の第2の部分32によって抑制される。しかし、第1の実施の形態の接合装置21においては、つぎのようなことが懸念される。
【0063】
すなわち、規制部材23の第2の部分32を介して照射されるレーザ光Lが配線部材15に吸収されることによって配線部材15が加熱されるところ、この配線部材15のレーザ照射領域15aには規制部材23の第2の部分32が接触している。このため、配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分に発生する熱は、規制部材23の第2の部分32に伝わる。したがって、第2の部分32を形成する材料、あるいはレーザ光Lの照射パワーなどによるものの、配線部材15のレーザ加熱に伴い規制部材23の第2の部分32が僅かながらにも溶けて損傷するおそれがある。また、それ以外にも、銅材である配線部材15が溶融し、その溶融した銅が透過材である第2の部分32に付着するおそれがあるところ、その第2の部分32における溶融した銅の付着した部分がレーザ光Lを吸収することにより第2の部分32が溶融したり熱衝撃で割れたりすることが考えられる。
【0064】
また、レーザ加熱による熱膨張に伴い配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分が表面電極14と反対側へ向けて反ろうとすることがあるところ、この配線部材15の反りは規制部材23の第2の部分32によって規制される。このため、配線部材15が反ろうとする程度、あるいは第2の部分32を形成する材料などによるものの、配線部材15のレーザ加熱に伴い生じる配線部材15の反ろうとする力が規制部材23の第2の部分32に作用することによって、規制部材23の第2の部分32が割れて損傷するおそれがある。
【0065】
そこで本実施の形態の接合装置21には、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがあるとき、規制部材23の第2の部分32を保護するための保護制御を実行する保護制御機能が持たせられている。
【0066】
制御装置27は、つぎの(A1)~(A4)の少なくとも1つの方法を使用して、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがあるかどうかを判定する。
(A1)制御装置27は、レーザ装置25を通じて配線部材15をレーザ加熱するとき、配線部材15におけるレーザ照射領域15aあるいはその近傍の表面温度Tを監視する。制御装置27は、温度センサ26を通じて検出されるレーザ照射領域15aの表面温度Tと、制御装置27の記憶装置27aに記憶された温度しきい値Tthとの比較を通じて、規制部材23の第2の部分32に軟化、変形あるいは溶融などの異常が発生するおそれがあるかどうかを判断する。温度しきい値Tthは、規制部材23の第2の部分32を形成する材料の軟化点を基準として設定される。軟化点とは、樹脂あるいはガラスなどの物質が温度の上昇によって軟化して変形を始めるときの温度をいう。制御装置27は、温度センサ26を通じて検出されるレーザ照射領域15aの表面温度Tが温度しきい値Tth未満であるとき、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれはない旨判定する。制御装置27は、温度センサ26を通じて検出されるレーザ照射領域15aの表面温度Tが温度しきい値Tth以上であるとき、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定する。制御装置27は、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、規制部材23の第2の部分32を保護すべく、定められた保護制御を実行する。
【0067】
(A2)接合装置21は、圧力センサ28を有している。圧力センサ28は、支持台22に設けられている。圧力センサ28は、半導体素子13が設けられた基板12および配線部材15が支持台22の載置面22aと規制部材23との間に挟まれた状態において、配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する位置に設けられている。ただし、圧力センサ28は、載置面22aから露出していてもよいし露出していなくてもよい。圧力センサ28は、支持台22の載置面22aに直交する方向の力を検出する。制御装置27は、レーザ装置25を通じて配線部材15をレーザ加熱するとき、圧力センサ28を通じて検出される圧力Pを監視する。制御装置27は、圧力センサ28を通じて検出される圧力Pと、制御装置27の記憶装置27aに記憶された圧力しきい値Pthとの比較を通じて、規制部材23の第2の部分32に割れなどの異常が発生するおそれがあるかどうかを判断する。圧力しきい値Pthは、実験あるいはシミュレーションを通じて設定される。圧力しきい値Pthは、配線部材15をレーザ加熱したとき、規制部材23の第2の部分32に割れなどの異常が発生するときの圧力を基準として設定される。制御装置27は、圧力センサ28を通じて検出される圧力Pが圧力しきい値Pth未満であるとき、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがない旨判定する。制御装置27は、圧力センサ28を通じて検出される圧力Pが圧力しきい値Pth以上であるとき、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定する。制御装置27は、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、規制部材23の第2の部分32を保護すべく、定められた保護制御を実行する。
【0068】
(A3)図10に示すように、規制部材23の第2の部分32の表面および外周面の少なくとも一方に歪みゲージ46を設ける。制御装置27は、加熱に伴う第2の部分32の径方向および厚み方向の少なくとも一方の熱膨張に伴う変形量に基づき、第2の部分32に割れなどの異常が発生するおそれがあるかどうかを判定する。制御装置27は、たとえば歪みゲージ46を通じて検出される第2の部分32の変形量と、記憶装置27aに記憶された変形量しきい値とを比較する。変形量しきい値は、実験あるいはシミュレーションを通じて設定される。変形量しきい値は、配線部材15をレーザ加熱したとき、規制部材23の第2の部分32に割れなどの異常が発生するときの変形量を基準として設定される。制御装置27は、歪みゲージ46を通じて検出される第2の部分32の変形量が変形量しきい値未満であるとき、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれはない旨判定する。制御装置27は、歪みゲージ46を通じて検出される第2の部分32の変形量が変形量しきい値以上であるとき、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定する。制御装置27は、規制部材23の第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、規制部材23の第2の部分32を保護すべく、定められた保護制御を実行する。
【0069】
(A4)図11に示すように、接合装置21でカメラなどの撮像装置47を設ける。制御装置27は、撮像装置47を通じて規制部材23の第2の部分32の状態を監視する。制御装置27は、撮像装置47を通じて取得される第2の部分32の撮像データに基づき第2の部分32に反りなどの変形あるいは溶けなどの異常が発生するおそれがあるかどうかを判定する。制御装置27は、第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、規制部材23の第2の部分32を保護すべく、定められた保護制御を実行する。
【0070】
制御装置27は、規制部材23の第2の部分32に対する保護制御として、つぎの(B1)~(B5)のうちいずれか1つの制御を実行する。
(B1)図12(a)に示すように、レーザ装置25の出力をこれまでの出力よりも弱める。レーザ装置25の出力は、たとえば表面電極14と配線部材15とを接合するうえで好ましいとされる本来の出力よりも弱い出力に設定される。これにより、レーザ光Lの照射パワーも本来の照射パワーよりも弱くなる。すなわち、配線部材15に吸収されるレーザ光Lのエネルギ密度が低下するため、配線部材15の温度上昇、ひいては配線部材15の反りが抑制される。
【0071】
(B2)図12(b)に示すように、レーザ装置25の出力を一時的に停止する。これにより、配線部材15の温度上昇、ひいては配線部材15の反りが抑制される。
(B3)図13に示すように、レーザ装置25を上昇または下降させる。レーザ装置25は、たとえば表面電極14と配線部材15とを接合するうえで好ましいとされる本来のレーザ照射位置を基準として、配線部材15から離れる方向または配線部材15に近づく方向へ移動される。これにより、レーザ光Lのスポット径が拡大する。レーザ装置25の出力が一定である場合、レーザ光Lのスポット径が大きくなるほどレーザ光Lのエネルギ密度が減少する。配線部材15に吸収されるレーザ光Lのエネルギ密度が低下するため、配線部材15の温度上昇、ひいては配線部材15の反りが抑制される。ただし、この構成を採用する場合、レーザ装置25を支持台22の載置面22aに対して直交する方向に沿って昇降可能に設ける。また、接合装置21には、レーザ装置25を昇降させるための駆動装置48を設ける。図13では、駆動装置48からレーザ装置25への動力伝達を破線で示す。ちなみに、支持台22をその基準位置に対して上昇または下降させるようにしてもよい。
【0072】
(B4)図14に示すように、レーザ装置25と規制部材23との間に遮蔽部材42を介在させる。遮蔽部材42によりレーザ光Lが遮られることにより、配線部材15の温度上昇、ひいては配線部材15の反りが抑制される。ただし、この構成を採用する場合、遮蔽部材42は、図12に二点鎖線で示される退避位置P11と、図12に実線で示される遮蔽位置P12との間を移動可能に設ける。退避位置P11は、レーザ光Lの照射経路から外れた位置である。遮蔽位置P12は、レーザ光Lの照射経路を遮る位置である。また、接合装置21には、遮蔽部材42を退避位置P11と遮蔽位置P12との間を移動させるための駆動装置43を設ける。図14では、駆動装置43から遮蔽部材42への動力伝達を破線で示す。
【0073】
(B5)図15に示すように、規制部材23に設けられた流路44に冷却液を循環させる。配線部材15の熱が冷却液に奪われることにより、配線部材15の温度上昇、ひいては配線部材15の反りが抑えられる。ただし、この構成を採用する場合、接合装置21には、規制部材23の流路44に冷却液を循環させるためのポンプ45を設ける。図15では、ポンプ45から流路44への冷却液の供給を破線で示す。
【0074】
したがって、第2の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態の(1)~(5)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(6)レーザ光Lが透過する規制部材23の第2の部分32の状態を監視し、その第2の部分32に異常が発生するおそれがある旨判定されるとき、第2の部分32を保護するための保護制御として、先の(B1)~(B5)のうちいずれか1つの制御が実行される。このため、規制部材23の第2の部分32に対してレーザ加熱に伴うダメージを与えることが抑制される。したがって、第2の部分32の交換頻度を低減することができる。また、第2の部分32に異常が発生する前に保護制御が実行されることにより、第2の部分32に何らの異常も存在しない状態で表面電極14と配線部材15とを接合することができる。このため、接合装置21の接合信頼性が向上する。
【0075】
<他の実施の形態>
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・接合界面Sbの温度Tとレーザ光Lの照射条件(照射パワーおよび照射時間)との関係は、先の図5のグラフに示される特性に限らない。たとえば、つぎの2つの特性が考えられる。図5に二点鎖線で示されるように、第1の特性では、照射パワーおよび照射時間が増加するにつれて接合界面Sbの温度Tは上昇し、やがて温度Tは照射パワーおよび照射時間にかかわらず一定の値となる。図5に破線で示されるように、第2の特性では、照射パワーおよび照射時間が増加するにつれて接合界面Sbの温度Tが上昇する特性を示した後、今後は逆に照射パワーおよび照射時間が増加するにつれて接合界面Sbの温度Tが下降する特性を示す。また、接合界面Sbの温度Tとレーザ光Lの照射パワーとの関係、ならびに接合界面Sbの温度Tとレーザ光Lの照射時間との関係は、互いに異なる特性を有していてもよい。
【0076】
・接合装置21は、表面電極14と配線部材15との接合だけでなく、金属線材(ワイヤ)と基板12上のパッド(電極)との接合、あるいは基板12の表面にめっきなどにより成膜された金属と配線部材15との接合など、種々の形状を有する金属部材同士を接合することが可能である。また、接合装置21は、基板12に設けられた金属部材としての半導体素子13と、金属部材としての放熱部材(ヒートシンク)とを接合することもできる。固相拡散を利用した接合方法を実行することにより、半導体素子13あるいは基板12に対する熱的な影響を抑えつつ半導体素子と放熱部材とを接合することができる。
【0077】
・接合対象の金属材料としては、金および銅のみならず、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、アルミシリコン合金(Al-Si系)などの種々の金属材料を採用することができる。接合装置21により、同種金属同士および異種金属同士を接合することが可能である。
【0078】
・温度センサ26に代えて、配線部材15のレーザ照射領域15aからの赤外線量、あるいはレーザ光Lの反射量を検出するセンサを採用してもよい。赤外線量およびレーザ光Lの反射量(レーザ光Lの吸収量)は、配線部材15の表面温度と相関がある。このため、レーザ照射領域15aからの赤外線量およびレーザ光Lの反射量に基づき接合界面Sbの温度を推定することができる。また、非接触式の温度センサ26に代えて、接触式の温度センサを使用してもよい。接触式の温度センサは、たとえば規制部材23の配線部材15に対する接触面に設けたり、規制部材23を配線部材15に近づける際に配線部材15に接触するように設けたりする。また、基板12に接触式の温度センサを設けるようにしてもよい。接触式の温度センサとしては、たとえば熱電対が挙げられる。
【0079】
・温度センサ26に代えて、圧力センサを使用してもよい。圧力センサは、配線部材15の熱膨張による圧力を検出する。制御装置27は、配線部材15の熱膨張による圧力(加圧力)と接合率Sとの関係をあらかじめ記憶していて、圧力センサにより検出される圧力が目標とする接合率Sに対応する値に達したとき、接合界面Sbが目標とする接合率Sに対応する温度に達したと判定する。
【0080】
・駆動装置24の駆動源および伝達機構の構成あるいは種類(タイプ)によるものの、駆動装置24が停止した状態で駆動源および伝達機構における接触運動を行う部分の摩擦力によって規制部材23を規制位置P2に固定できる場合、駆動装置24として規制部材23を規制位置P2に固定するための固定機構を割愛した構成を採用してもよい。
【0081】
・規制部材23における第2の部分32の厚みは、第1の部分31の厚みと同じであってもよいし、第1の部分31の厚みより厚くてもよい。また、第2の部分32は、第1の部分31の孔23aに充填されるかたちで設けられてもよい。第1の部分31の孔23aの形状として、テーパ面を割愛した形状を採用してもよい。
【0082】
・規制部材23における第1の部分31の孔23aの形状は、円形あるいは四角形などの適宜の形状が採用される。すなわち、レーザ光Lを通過させることができれば孔23aの形状は問わない。また、規制部材23の第1の部分31には、孔23aに代えて切り欠き(除去される部分)を設けてもよい。切り欠きは、たとえば規制部材23における第1の部分31の側縁からレーザ光Lの照射経路に対応する部分(たとえば規制部材23の中央部分)までの間にわたって設けられる。規制部材23においてレーザ光Lが透過する部分である第2の部分32の形状は、孔23aあるいは切り欠きの形状に合わせて設定される。
【0083】
・規制部材23として、つぎの構成を採用してもよい。たとえば第1の部分31を、間隔をあけて配置された複数(たとえば2つ)の部材として構成する。この場合、第2の部分32は、第1の部分31としての複数の部材の間の隙間を埋めるかたちで設ける。これら第1の部分31としての2つの部材の間の隙間に設けられた第2の部分32を通じて表面電極14の表面(レーザ照射領域15a)にレーザ光Lが照射される。
【0084】
・規制部材23の一部分ではなく、規制部材23の全体を、レーザ光Lを透過する材料により形成してもよい。この場合、規制部材23において、第1の部分31および第2の部分32なる区分は存在しない。
【0085】
・規制部材23の形状は、平板状でなくてもよい。たとえば、規制部材23の第1の部分31を筒状に設けてもよい。この場合、第2の部分32は、筒状の第1の部分31における配線部材15側の開口部を塞ぐかたちで設けられる。レーザ光Lは、筒状の第1の部分31の内部を通り第2の部分32を透過して配線部材15の表面に照射される。
【0086】
図8に示すように、規制部材23として第1の部分31のみを有する構成を採用してもよい。透過部としての平板状の第2の部分32は、第1の部分31とは別の部材として設ける。半導体モジュール11を製造する際、第2の部分32は、配線部材15と第1の部分31との間に介在される。第2の部分32のサイズは、少なくとも孔23aにおける載置面22a側(図2中の下側)の開口部を覆って塞ぐことができる程度のサイズに設定される。レーザ光Lは、第1の部材(規制部材23)の孔23aを通過するとともに第2の部分32を透過して配線部材15の表面におけるレーザ照射領域15aに照射される。このようにしても、配線部材15に対するレーザ光Lの照射を邪魔することなく、表面電極14および配線部材15の互いに離間する方向(重ね合わせられた方向)への移動を規制することができる。また、配線部材15のレーザ照射領域15aに対応する部分が表面電極14と反対側へ向けて変形すること(反ること)を、第2の部分32によって規制することができる。ちなみに、第2の部分32は、第1の部分31の下面(載置面22a側の側面)に固定してもよいし、固定しなくてもよい。また、別部材としての第2の部分32は、第1の部分31と共に規制部材23を構成する要素として捉えてもよい。
【0087】
・接合装置21として、表面電極14と配線部材15とを固相拡散接合する際、規制部材23を介して表面電極14と配線部材15との接合界面Sbを配線部材15の外部から加圧するようにしてもよい。この場合、接合装置21には、駆動装置24に代えて、あるいは駆動装置24に加えて、配線部材15の外部から接合界面Sbを加圧するための加圧装置を設ける。また、加圧装置を設ける場合、規制部材23における第1の部分31を筒状の加圧ノズルとして設けてもよい。この場合、第2の部分32は、加圧ノズルにおける配線部材15側の開口部を塞ぐかたちで設けられる。加圧ノズルの内部を通るレーザ光Lは第2の部分32を透過して配線部材15の表面に照射される。
【0088】
・表面電極14と配線部材15との接合界面Sbに固相拡散を発生させるための熱を与える加熱装置として、レーザ装置25に代えて、電子ビームを照射する電子ビーム照射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
12…基板、13…半導体素子、14…表面電極(金属部材)、15…配線部材(金属部材)、15a…レーザ照射領域(ビーム照射領域)、14a,15b…接合面、21…接合装置、22…支持台、22a…規制装置を構成する載置面、23…規制装置を構成する規制部材、23a…孔、25…レーザ装置(加熱装置)、26…温度センサ(検出器)、27…制御装置、28…圧力センサ、31…規制部材の第1の部分、32…規制部材の第2の部分(透過部)、L…レーザ光(レーザビーム、電磁波ビーム)、Sb…接合界面。
図1
図2
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