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特許7331552提示制御装置、提示制御プログラム及び呼吸周期提示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】提示制御装置、提示制御プログラム及び呼吸周期提示装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20230816BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20230816BHJP
   A61M 21/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A61M21/02 Z
A61B5/16 110
A61M21/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019153052
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021029604
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】鳫 大樹
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-065729(JP,A)
【文献】特開2013-027570(JP,A)
【文献】特開2002-336358(JP,A)
【文献】特開2012-223511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/02
A61B 5/16
A61M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
提示対象者の自然呼吸周期を測定する測定装置が測定した自然呼吸周期の情報、又は、提示対象者が入力した自然呼吸周期の情報を取得し、
取得した自然呼吸周期の情報に基づき、前記自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期と、前記自然呼吸周期との差が前記第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期と、を設定し、
提示対象者のリラックス度を示す情報として予め定められた第一情報と、提示対象者の心身活性度を示す情報として予め定められた第二情報と、を取得し、
取得した前記第一情報及び前記第二情報に基づき、リラックス度の向上及び心身活性度の低下のいずれを優先させるかを決定し、
リラックス度の向上を優先させると決定した場合に、前記第一呼吸周期を提示させる第一制御を、呼吸周期を提示する呼吸周期提示装置に対して行い、
心身活性度の低下を優先させると決定した場合に、前記第二呼吸周期を提示させる第二制御を、前記呼吸周期提示装置に対して行う
提示制御装置。
【請求項2】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
提示対象者の自然呼吸周期を測定する測定装置が測定した自然呼吸周期の情報、又は、提示対象者が入力した自然呼吸周期の情報を取得し、
取得した自然呼吸周期の情報に基づき、前記自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期と、前記自然呼吸周期との差が前記第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期と、を設定し、
提示対象者がリラックス度の向上を優先させることを選択した場合に、前記第一呼吸周期を提示させる第一制御を、呼吸周期を提示する呼吸周期提示装置に対して行い、
提示対象者が心身活性度の低下を優先させることを選択した場合に、前記第二呼吸周期を提示させる第二制御を、前記呼吸周期提示装置に対して行う
提示制御装置。
【請求項3】
前記第二呼吸周期は、前記自然呼吸周期以上の周期であって前記第一呼吸周期よりも短い周期である
請求項1又は2に記載の提示制御装置。
【請求項4】
前記第二呼吸周期は、前記自然呼吸周期である
請求項3に記載の提示制御装置。
【請求項5】
前記第二制御は、
五感の少なくとも一部に刺激を提示する刺激提示装置が提示する提示情報を初期状態よりも低下させた低下状態で、前記第二呼吸周期を提示させる制御である
請求項1~4のいずれか1項に記載の提示制御装置。
【請求項6】
前記第二制御を前記呼吸周期提示装置に対して行った後に、前記提示情報を前記低下状態よりも増加させた増加状態にさせる第三制御を前記刺激提示装置に対して行う
請求項5に記載の提示制御装置。
【請求項7】
コンピュータに、
提示対象者の自然呼吸周期を測定する測定装置が測定した自然呼吸周期の情報、又は、提示対象者が入力した自然呼吸周期の情報を取得し、
取得した自然呼吸周期の情報に基づき、前記自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期と、前記自然呼吸周期との差が前記第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期と、を設定し、
提示対象者のリラックス度を示す情報として予め定められた第一情報と、提示対象者の心身活性度を示す情報として予め定められた第二情報と、を取得し、
取得した前記第一情報及び前記第二情報に基づき、リラックス度の向上及び心身活性度の低下のいずれを優先させるかを決定し、
リラックス度の向上を優先させると決定した場合に、前記第一呼吸周期を提示させる第一制御を、呼吸周期を提示する呼吸周期提示装置に対して行い、
心身活性度の低下を優先させると決定した場合に、前記第二呼吸周期を提示させる第二制御を、前記呼吸周期提示装置に対して行う
処理を実行させるための提示制御プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
提示対象者の自然呼吸周期を測定する測定装置が測定した自然呼吸周期の情報、又は、提示対象者が入力した自然呼吸周期の情報を取得し、
取得した自然呼吸周期の情報に基づき、前記自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期と、前記自然呼吸周期との差が前記第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期と、を設定し、
提示対象者がリラックス度の向上を優先させることを選択した場合に、前記第一呼吸周期を提示させる第一制御を、呼吸周期を提示する呼吸周期提示装置に対して行い、
提示対象者が心身活性度の低下を優先させることを選択した場合に、前記第二呼吸周期を提示させる第二制御を、前記呼吸周期提示装置に対して行う
処理を実行させるための提示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、提示制御装置、提示制御プログラム及び呼吸周期提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、利用者の自律神経機能を副交感神経が優位となる状態に誘導する環境を形成するリラックス誘導手段と、呼吸センサにより検出される利用者の呼吸の状態変化を呼吸情報として利用者に提示する呼吸情報提示手段を備え利用者の吸気期間と呼気期間とのうち呼気期間にのみ目標値を与え呼気期間を延長方向に誘導する呼吸誘導手段と、リラックス誘導手段の利用により利用者の副交感神経が優位になったと推定され時点で呼吸誘導手段の動作を開始させる誘導制御手段とを備えることを特徴とするリフレッシュ誘導システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、人の呼吸を統制する調息装置を用いた調息方法であって、前記人の呼吸を統制する時間を人の覚醒度が低下しない時間に設定することを特徴とする調息方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-104457号公報
【文献】特開2002-336358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リラックス度を優先して向上させる場合に、自然呼吸周期よりも長い呼吸周期を提示させる制御を行う制御装置において、心身活性度を優先して低下させる場合にも、前述の制御を行う場合では、心身活性度が低下しないことがある。
【0006】
本発明は、心身活性度を優先して低下させる場合にも、自然呼吸周期よりも長い呼吸周期を提示させる制御を行う構成に比べ、心身活性度を低下させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、リラックス度を優先して向上させる場合に、自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示させる第一制御を、呼吸周期を提示する呼吸周期提示装置に対して行い、心身活性度を優先して低下させる場合に、前記自然呼吸周期との差が前記第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期を提示させる第二制御を、前記呼吸周期提示装置に対して行う提示制御装置である。
【0008】
第2態様は、前記第二呼吸周期は、前記自然呼吸周期以上の周期であって前記第一呼吸周期よりも短い周期である、第1態様に係る提示制御装置である。
【0009】
第3態様は、前記第二呼吸周期は、前記自然呼吸周期である、第2態様に係る提示制御装置である。
【0010】
第4態様は、前記第二制御は、五感の少なくとも一部に刺激を提示する刺激提示装置が提示する提示情報を初期状態よりも低下させた低下状態で、前記第二呼吸周期を提示させる制御である、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様に係る提示制御装置である。
【0011】
第5態様は、前記第二制御を前記呼吸周期提示装置に対して行った後に、前記提示情報を前記低下状態よりも増加させた増加状態にさせる第三制御を前記刺激提示装置に対して行う第4態様に係る提示制御装置である。
【0012】
第6態様は、提示対象者の自然呼吸周期を測定する測定装置の測定結果を、前記第一制御及び前記第二制御を行うのに先立って取得し、取得した測定結果に基づいて、前記第一呼吸周期及び前記第二呼吸周期を設定する第1態様から第5態様のいずれか1つの態様に係る提示制御装置である。
【0013】
第7態様は、提示対象者のリラックス度及び心身活性度を示す情報を取得し、当該情報に基づき、リラックス度の向上及び心身活性度の低下のいずれを優先させるかを決定する第1態様から第6態様のいずれか1つの態様に係る提示制御装置である。
【0014】
第8態様は、コンピュータに、リラックス度を優先して向上させる場合に、自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示させる第一制御を、呼吸周期を提示する呼吸周期提示装置に対して行い、心身活性度を優先して低下させる場合に、前記自然呼吸周期との差が前記第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期を提示させる第二制御を、前記呼吸周期提示装置に対して行う処理を実行させるための提示制御プログラムである。
【0015】
第9態様は、リラックス度を優先して向上させる場合に、自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示し、心身活性度を優先して低下させる場合に、前記自然呼吸周期との差が前記第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期を提示する呼吸周期提示装置である。
【発明の効果】
【0016】
第1態様の構成によれば、心身活性度を優先して低下させる場合にも、自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示させる第一制御を行う構成に比べ、心身活性度を低下させることができる。
【0017】
第2態様の構成によれば、第二呼吸周期が自然呼吸周期よりも短い周期である構成に比べ、心身活性度を低下させることができる。
【0018】
第3態様の構成によれば、第二呼吸周期が自然呼吸周期以外の周期である構成に比べ、心身活性度を低下させることができる。
【0019】
第4態様の構成によれば、第二制御が、刺激提示装置が提示する提示情報を初期状態のままで第二呼吸周期を提示させる制御である構成に比べ、心身活性度を低下させることができる。
【0020】
第5態様の構成によれば、第二制御を呼吸周期提示装置に対して行った後も、提示情報を低下させた低下状態のままである構成に比べ、覚醒度を得ることができる。
【0021】
第6態様の構成によれば、第一呼吸周期及び第二呼吸周期が提示対象者によって任意に設定される構成に比べ、心身活性度を低下させることができる。
【0022】
第7態様の構成によれば、リラックス度の向上及び心身活性度の低下のいずれを優先させるかが提示対象者によって任意に決定される構成に比べ、心身状態の調整の効果のばらつきを抑制できる。
【0023】
第8態様の構成によれば、心身活性度を優先して低下させる場合にも、自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示させる第一制御を行う構成に比べ、心身活性度を低下させることができる。
【0024】
第9態様の構成によれば、心身活性度を優先して低下させる場合にも、自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示する構成に比べ、心身活性度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る心身調整装置の構成を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る心身調整装置の構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態に係るユーザのリラックス度及び心身活性度の指標を示す図である。
図4】本実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態に係る提示装置によってユーザが呼吸を統制されたときの呼吸周期と、リラックス度及び心身活性度との関係の一例を示したグラフである。
図7】本実施形態に係る制御装置によって実行される提示制御処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本実施形態に係る照明装置の照度を低下させた低下状態を示す図である。
図9】本実施形態に係る心身調整装置において、リラックス度の向上を優先させる場合の処理の流れを示す図である。
図10】本実施形態に係る心身調整装置において、覚醒感を得ることを優先させる場合の処理の流れを示す図である。
図11】本実施形態に係る照明装置の照度を増加させた増加状態を示す図である。
図12】変形例に係る提示装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0027】
(心身調整装置10)
まず、本実施形態に係る心身調整装置10(以下、単に「調整装置10」という)の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る調整装置10の構成を示す概略図である。
【0028】
図1に示される調整装置10は、人の心身を調整する装置である。具体的には、調整装置10は、被調整者HSの呼吸を統制することで、被調整者HSの心身を調整する。さらに具体的には、調整装置10は、被調整者HSの呼吸を統制し且つ被調整者HSに刺激を提示することで、被調整者HSのリラックス度及び心身活性度を調整する。さらに、調整装置10では、被調整者HSのリラックス度及び心身活性度を以下のように調整する。すなわち、調整装置10では、被調整者HSのリラックス度を高めて被調整者HSをリラックス状態に誘導し、又は、被調整者HSの心身活性度を低下させてから高めることで被調整者HSをリフレッシュ状態(すなわち、覚醒状態)に誘導する。
【0029】
なお、被調整者HSは、調整装置10によって心身が調整される者である。換言すれば、被調整者HSは、調整装置10を利用する利用者(すなわち、ユーザ)ともいえる。以下、被調整者HSをユーザHSという場合がある。
【0030】
ここで、図3に示されるように、リラックス度(横軸)とは、ユーザHSがリラックスしたリラックス状態であるか、ユーザHSが緊張した緊張状態にあるかを示す指標である。リラックス度が高ければユーザHSがリラックス状態にあり、リラックス度が低ければユーザHSが緊張状態にあることを示す。心身活性度(縦軸)とは、ユーザHSの活力や覚醒度を示す指標である。心身活性度が高ければユーザHSは覚醒し、活力がみなぎった、積極的な気分などの状態にあり、心身活性度が低ければユーザHSは眠い、注意集中ができにくい、意欲が減退しているなどの状態にあることを示す。
【0031】
図1に示されるように、調整装置10は、具体的には、調整ルーム12と、テーブル14と、椅子16と、を備えている。さらに、調整装置10は、図1及び図2に示されるように、呼吸周期提示装置20と、照明装置32と、音響装置34と、送風装置36と、芳香発生装置38と、を備えている。さらに、調整装置10は、図2に示されるように、呼吸測定装置40と、心身測定装置70と、操作部60と、制御装置50と、を備えている。
【0032】
以下、調整装置10の各部(調整ルーム12、テーブル14、椅子16、呼吸周期提示装置20、照明装置32、音響装置34、送風装置36、芳香発生装置38、呼吸測定装置40、心身測定装置70、操作部60、及び制御装置50)の具体的な構成について説明する。
【0033】
(調整ルーム12、テーブル14及び椅子16)
図1に示される調整ルーム12は、ユーザHSの心身の調整が行われる部屋(すなわち、空間)である。この調整ルーム12は、外部からの光の進入が制限されている。調整ルーム12内には、図1に示されるように、テーブル14、椅子16、呼吸周期提示装置20、照明装置32、音響装置34、送風装置36、及び芳香発生装置38が設けられている。
【0034】
椅子16は、図1に示されるように、ユーザHSが着座するためのものである。椅子16は、ユーザHSが寄りかかるための背もたれ16Aを有している。
【0035】
テーブル14は、図1に示されるように、呼吸周期提示装置20、送風装置36及び芳香発生装置38が載せられる台として機能する。
【0036】
(呼吸周期提示装置20)
図1に示される呼吸周期提示装置20(以下、単に「提示装置20」という)は、呼吸周期を提示する装置である。具体的には、提示装置20は、ユーザHSに対して、ユーザHSの五感の少なくとも一部を通じて呼吸周期を提示する。さらに具体的には、提示装置20は、ユーザHSに対して、ユーザHSの視覚を通じて呼吸周期を提示する。より具体的には、提示装置20は、以下のように構成されている。
【0037】
提示装置20は、ランプが点滅する表示画面20Aを有している。提示装置20は、表示画面20Aが、椅子16に着座したユーザHSを向くように、テーブル14の上に載せられている。さらに具体的には、自然な着座姿勢で椅子16に着座したユーザHSの視界の中央付近に、表示画面20Aが位置するように、提示装置20はテーブル14の上に配置されている。
【0038】
提示装置20は、例えば、呼吸周期の始点にランプを点灯し、ユーザHSに呼吸周期を提示する。ユーザHSが、ランプの点灯時に息を吸い始めるように、呼吸を合わせることでユーザHSの呼吸が統制される。なお、呼吸周期とは、息を吸い始めた始点から次の始点までの期間である。また、提示装置20において、ユーザHSは、呼吸周期が提示される提示対象者の一例である。
【0039】
提示装置20の提示方法としては、点灯させた状態のランプを呼吸周期の始点に消灯させる構成であってもよい。また、提示装置20の提示方法としては、呼吸周期における始点(すなわち、息を吸い始める時点)と、息を吐き始める時点とに、ランプを点灯又は消灯させる構成であってもよい。また、呼吸周期における息を吸い終わる時点で最も明るくランプを点灯し、息の吐き終わる時点で最も暗くランプを点灯もしくは消灯させ、呼吸のリズムに合わせてランプの明るさを連続的に変化させる構成であってもよい。
【0040】
さらに、提示装置20の提示方法としては、例えば、息を吸う又は吐くリズムに合わせて、表示画面20Aに表示した四角形等の形状の画像を変形させる提示方法であってもよい。この場合では、例えば、息を吸うタイミングに合わせて、画像を徐々に大きくし、息を吐くタイミングに合わせて、画像を徐々に小さくするようにしてもよい。
【0041】
(照明装置32、音響装置34、送風装置36及び芳香発生装置38)
照明装置32、音響装置34、送風装置36及び芳香発生装置38は、刺激を提示する刺激提示装置の一例である。具体的には、照明装置32、音響装置34、送風装置36及び芳香発生装置38は、ユーザHSの五感の少なくとも一部に対して、刺激を提示する。
【0042】
さらに具体的には、照明装置32は、ユーザHSの視覚に刺激を提示する装置である。この照明装置32は、具体的には、椅子16に着座したユーザHSの上方に位置するように、調整ルーム12の上部に設けられている。これにより、照明装置32は、椅子16に着座したユーザHSを照明する。さらに、照明装置32は、照度及び色が調整可能となっている。具体的には、照明装置は、例えば、初期状態において、テーブル14上における照度が600Lxとされ、初期状態から当該照度が300Lxに低下された低下状態に移行可能となっている。また、照明装置32は、例えば、白色と青色との間で色が切り替え可能となっている。
【0043】
音響装置34は、ユーザHSの聴覚に刺激を提示する装置である。この音響装置34は、椅子16に着座したユーザHSの左右に配置された一対のスピーカ34Aを有している。これにより、音響装置34は、一対のスピーカ34Aを通じて、椅子16に着座したユーザHSに音響を聴かせる。
【0044】
送風装置36は、ユーザHSの触覚に刺激を提示する装置である。この送風装置36は、具体的には、送風方向が椅子16に着座したユーザHSを向くように、テーブル14の上に載せられている。これにより、送風装置36は、椅子16に着座したユーザHSに風を送る。
【0045】
芳香発生装置38は、ユーザHSの嗅覚に刺激を提示する装置である。芳香発生装置38は、テーブル14の上に載せられている。芳香発生装置38の上部には、芳香を有する空気を排出する排出口38Aが設けられている。そして、芳香発生装置38では、排出口38Aから芳香を有する空気を排出することで、椅子16に着座したユーザHSに芳香を提供する。
【0046】
なお、照明装置32、音響装置34、送風装置36及び芳香発生装置38において、ユーザHSは、刺激が提示される提示対象者の一例である。
【0047】
(呼吸測定装置40)
呼吸測定装置40は、ユーザHSの自然呼吸周期を示す量(パラメータ)を測定する測定装置である。呼吸測定装置40としては、例えば、ユーザHSの腹部に装着され、ユーザHSの自然呼吸周期を測定する呼吸センサが用いられる。自然呼吸周期とは、ユーザHSの安静状態における呼吸周期である。
【0048】
なお、呼吸測定装置40としては、椅子16に設置された変位センサを用いてもよい。この変位センサは、ユーザHSの呼吸によって変位する椅子16の変位量を、ユーザHSの自然呼吸周期を示す量として測定する。この構成では、椅子16の変位量からユーザHSの自然呼吸周期が算出される。
【0049】
また、呼吸測定装置40としては、ユーザHSの心拍を測定する心拍計であってもよい。この心拍計では、ユーザHSの心拍数を、ユーザHSの自然呼吸周期を示す量として測定する。この構成では、ユーザHSの心拍数からユーザHSの自然呼吸周期が算出される。
【0050】
(心身測定装置70)
心身測定装置70は、ユーザHSのリラックス度及び心身活性度を求めるために、生体現象によって体内から発せられる生体信号を測定する装置である。心身測定装置70は、具体的には、ユーザHSの心拍を測定する心拍計70Aと、ユーザHSの皮膚電位基準(skin potential level:SPL)を測定する皮膚電位計70Bと、を有している。
【0051】
(操作部60)
操作部60は、調整装置10による心身の調整開始を指示する操作を行うための操作部である。操作部60は、例えば、調整装置10による心身の調整開始を指示する場合に、ユーザHSによって指定される調整開始ボタンを有している。本実施形態では、ユーザHSによって調整開始ボタンが指定されることで、調整装置10による心身の調整が実行開始される。
【0052】
(制御装置50)
制御装置50は、提示制御装置の一例である。制御装置50は、呼吸周期提示装置20、照明装置32、音響装置34、送風装置36、及び芳香発生装置38の動作を制御する装置である。図4には、制御装置50のハードウェア構成を示すブロック図が示されている。
【0053】
図4に示されるように、制御装置50は、コンピュータとしての機能を備え、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、ストレージ54、及びI/O(Input/Output)部57を有している。制御装置50の各部は、バス59を介して相互に通信可能に接続されている。なお、CPU51は、プロセッサの一例である。
【0054】
CPU51は、中央演算処理ユニットであり、提示制御プログラムを含む各種プログラムを実行したり、各部の動作を制御したりする。すなわち、CPU51は、ROM52又はストレージ54からプログラムを読み出し、RAM53を作業領域としてプログラムを実行する。CPU51は、ROM52又はストレージ54に記録されているプログラムに従って、調整装置10の各部(具体的には、提示装置20、照明装置32、音響装置34、送風装置36、芳香発生装置38、呼吸測定装置40及び心身測定装置70)の制御および各種の演算処理を行う。
【0055】
ROM52は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM53は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ54は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。I/O部57は、CPU51を調整装置10の各部と接続する。
【0056】
上記のプログラムを実行する際に、制御装置50は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。制御装置50が実現する機能構成について説明する。図5は、制御装置50の機能構成の例を示すブロック図である。
【0057】
図5に示されるように、制御装置50は、機能構成として、第一制御部61と、第二制御部62と、第三制御部63と、第一取得部64と、設定部65と、第二取得部66と、決定部67と、を有している。各機能構成は、CPU51がROM52又はストレージ54に記憶された制御プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0058】
第一制御部61は、リラックス度を優先して向上させる場合に、自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示させる第一制御を提示装置20に対して行う。なお、自然呼吸周期は、具体的には、例えば、3秒を超え且つ8秒以下とされる。第一呼吸周期は、具体的には、例えば、8秒を超え且つ15秒以下の範囲内で、設定部65によって設定される。
【0059】
第二制御部62は、覚醒感を得ることを優先させる場合に、自然呼吸周期との差が第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期を提示させる第二制御を提示装置20に対して行う。
【0060】
本実施形態では、心身活性度を一旦低下させてから該心身活性度を高めることで、覚醒感を得るため、「覚醒感を得ることを優先させる場合」は、「心身活性度を優先して低下させる場合」の一例である。
【0061】
なお、「心身活性度を優先して低下させる場合」の一例としては、例えば、「心身活性度を低下させて眠い状態に誘導することを優先させる場合」であってもよい。また、「心身活性度を優先して低下させる場合」の一例としては、「心身活性度を低下させてから他の心身状態に誘導することを優先させる場合」であってもよい。すなわち、「心身活性度を優先して低下させる場合」の一例としては、「覚醒感を得ること以外の目的により心身活性度を低下させる場合」であってもよい。
【0062】
第二呼吸周期は、具体的には、自然呼吸周期以上の周期であって第一呼吸周期よりも短い周期である。さらに具体的には、第二呼吸周期は、自然呼吸周期である。より具体的には、第二呼吸周期は、例えば、3秒を超え且つ8秒以下の範囲内で設定部65によって設定される。
【0063】
ここで、図6には、提示装置20によってユーザHSが呼吸を統制されたときの呼吸周期と、リラックス度及び心身活性度との関係の一例を示したグラフが示されている。
【0064】
図6のグラフに示されるように、心身活性度が最小となる呼吸周期と、リラックス度が最大となる呼吸周期と、は異なっている。具体的には、リラックス度は、自然呼吸周期よりも長い呼吸周期(具体的には、8秒を超え且つ15秒以下の範囲)において、最大となる。一方、心身活性度は、自然呼吸周期と同等の呼吸周期(具体的には、3秒を超え且つ8秒以下の範囲)において、最小となる。
【0065】
そこで、本実施形態では、リラックス度を優先して向上させる場合に提示される第一呼吸周期として、リラックス度が最大となる呼吸周期(具体的には、8秒を超え且つ15秒以下の範囲)を用いる。また、覚醒感を得ることを優先させる場合に提示される第二呼吸周期として、心身活性度が最小となる呼吸周期(具体的には、3秒を超え且つ8秒以下の範囲)を用いる。
【0066】
さらに、第二制御部62による第二制御は、具体的には、照明装置32が提示する提示情報(以下、刺激提示情報という)を初期状態よりも低下させた低下状態で、第二呼吸周期を提示させる制御である。
【0067】
具体的には、第二制御において、照明装置32のテーブル14上における照度が600Lxとされた初期状態よりも、当該照度を低下された低下状態(例えば300Lx)で、第二呼吸周期を提示する。さらに、第二制御において、照明装置32の光が白色である初期状態から、照明装置32の光が青色に変更した状態で、第二呼吸周期を提示する。青色光は、白色光に比べ、波長成分が少なく、青色光に変更することで、ユーザHSに提示される刺激提示情報が低下する。
【0068】
なお、周囲の雑音からユーザHSの意識を遠ざけるために、第二制御において、音響装置34から自然音やホワイトノイズを提示してもよい。
【0069】
第三制御部63は、第二制御を提示装置20に対して行った後に、刺激提示情報を低下状態よりも増加させた増加状態にさせる第三制御を、照明装置32に対して行う。
【0070】
具体的には、第三制御において、テーブル14上における照度が300Lxに低下された低下状態よりも、当該照度を増加させた増加状態(例えば600Lx)にさせる。なお、第三制御では、ユーザHSに対する刺激を、音響装置34、送風装置36及び芳香発生装置38に提示させる。
【0071】
さらに、第三制御では、自然呼吸周期よりも早い第三呼吸周期(図6参照)を提示装置20に提示させる。第三呼吸周期としては、例えば、2秒以上3秒以下の範囲で設定される。
【0072】
第一取得部64は、呼吸測定装置40が測定した自然呼吸周期の測定結果を、第一制御及び第二制御を行うのに先立って取得する。すなわち、第一取得部64は、第一制御及び第二制御を行うのに先立って、呼吸測定装置40が測定した自然呼吸周期の情報(以下、周期情報という)を取得する。
【0073】
設定部65は、第一取得部64が取得した測定結果に基づいて、第一呼吸周期及び第二呼吸周期を設定する。すなわち、設定部65は、第一取得部64が取得した周期情報に基づいて、第一呼吸周期及び第二呼吸周期を設定する。
【0074】
なお、自然呼吸周期には個人差があり、自然呼吸周期が異なれば、リラックス度が最大となる呼吸周期及び、心身活性度が最小となる呼吸周期も異なる。このため、本実施形態では、自然呼吸周期に予め対応付けられた第一呼吸周期のテーブルを参照して、第一呼吸周期を設定する。また、自然呼吸周期に予め対応付けられた第二呼吸周期のテーブルを参照して、第二呼吸周期を設定する。
【0075】
第二取得部66は、ユーザHSのリラックス度及び心身活性度の情報(以下、心身情報という)を取得する。具体的には、第二取得部66は、心身情報の一例として、ユーザHSの呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報を、それぞれ、呼吸測定装置40、心拍計70A、及び皮膚電位計70Bが取得する。
【0076】
決定部67は、第二取得部66が取得した心身情報に基づき、リラックス度の向上及び覚醒感を得ることのいずれを優先させるかを決定する。なお、当該「覚醒感を得ること」は、「心身活性度の低下」の一例である。
【0077】
具体的には、決定部67は、第二取得部66が取得した心身情報に基づき、リラックス度及び心身活性度を算出し、リラックス度及び心身活性度のうち相対的に低い指標を向上させるように、リラックス度の向上及び覚醒感を得ることのいずれを優先させるかを決定する。すなわち、決定部67は、算出されたリラックス度及び心身活性度のうち、リラックス度が心身活性度に対して相対的に低い場合において(例えば、図3の(A)の領域)、リラックス度の向上を優先する決定を行う。
【0078】
さらに、決定部67は、算出されたリラックス度及び心身活性度のうち、心身活性度がリラックス度に対して相対的に低い場合において(例えば、図3の(B)の領域)、覚醒感を得ることを優先する決定を行う。
【0079】
なお、決定部67は、算出されたリラックス度及び心身活性度において、相対的な差がない場合には、例えば、リラックス度の向上及び覚醒感を得ることのうち、予め定められた一方(例えばリラックス度の向上)を決定する。
【0080】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。図7は、制御装置50によって実行される提示制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
提示制御処理は、例えば、ユーザHSによって、操作部60の調整開始ボタンが指定されることで、実行が開始される。なお、ユーザHSは、呼吸センサである呼吸測定装置40、心拍計70A、及び皮膚電位計70Bを装着した後に、操作部60の調整開始ボタンを指定する。また、提示制御処理の実行が開始される前において、照明装置32は、テーブル14上における照度が600Lxとされる初期状態(図1参照)になっている。
【0082】
本実施形態に係る提示制御処理は、CPU51がROM52又はストレージ54から提示制御プログラムを読み出して実行することにより行なわれる。
【0083】
図7に示されるように、提示制御処理が開始されると、CPU51は、照明装置32を、初期状態(図1参照)からテーブル14上における照度が300Lxに低下された低下状態(図8参照)に移行させる(ステップS102)。このとき、提示装置20、音響装置34、送風装置36及び芳香発生装置38は、停止しており、ユーザHSは、安静状態におかれる。
【0084】
次に、CPU51は、ユーザHSの自然呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準を、呼吸測定装置40、心拍計70A、及び皮膚電位計70Bに測定させ、自然呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報を取得する(ステップS105)。自然呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報は、ユーザHSのリラックス度及び心身活性度の心身情報の一例である。
【0085】
次に、CPU51は、リラックス度の向上を優先させるか否かを判断する(ステップS106)。CPU51は、ステップS106において、リラックス度の向上を優先させると判断した場合に、リラックス度の向上を優先させる決定(ステップS110)を行って、ステップS112に移行する。
【0086】
CPU51は、ステップS106において、リラックス度の向上を優先させないと判断した場合に、覚醒感を得ることを優先させる決定を行って(ステップS120)、ステップS122に移行する。
【0087】
CPU51は、ステップS112において、自然呼吸周期に基づいて、第一呼吸周期を設定する。CPU51は、例えば、自然呼吸周期に予め対応付けられた第一呼吸周期のテーブルを参照して、第一呼吸周期を設定する。
【0088】
なお、ステップS102からステップS112までの期間において、ユーザHSは、安静状態におかれている。また、図9に示されるように、当該期間において、照明装置32は、テーブル14上における照度が300Lxである低下状態を維持する。当該期間は、例えば、60秒とされる。
【0089】
次に、CPU51は、ステップS114において、第一呼吸周期を提示装置20に提示させる(第一制御)。具体的には、提示装置20は、例えば、表示画面20Aにおいて第一呼吸周期の始点にランプを点灯し、ユーザHSに第一呼吸周期を提示する。ユーザHSが、ランプの点灯時に息を吸い始めるように、呼吸を合わせることでユーザHSの呼吸が統制される。
【0090】
提示装置20が第一呼吸周期を提示する際には、CPU51は、照明装置32に対して、照明の色を青色に変更させる。また、音響装置34から森林の自然音を出力させる。
【0091】
次に、CPU51は、提示装置20が第一呼吸周期の提示を開始してから予め定められた期間経過後に、提示装置20及び音響装置34を停止し(ステップS116)、照明装置32を初期状態に戻して、提示制御処理を終了する。なお、当該予め定められた期間は、例えば、300秒である(図9参照)。
【0092】
なお、ステップS116では、予め定められた期間経過後に、提示装置20及び音響装置34を停止したが、これに限られない。例えば、呼吸測定装置40、心拍計70A、及び皮膚電位計70Bから得られる自然呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報に基づき、ユーザHSのリラックス度の向上を検出し、その検出から予め定められた期間経過後に、提示装置20及び音響装置34を停止する構成であってもよい。
【0093】
一方、ステップS122において、CPU51は、自然呼吸周期に基づいて、第二呼吸周期を設定する。CPU51は、例えば、自然呼吸周期に予め対応付けられた第二呼吸周期のテーブルを参照して、第二呼吸周期を設定する。
【0094】
なお、ステップS102からステップS122までの期間において、ユーザHSは、安静状態におかれている。また、図10に示されるように、当該期間において、照明装置32は、テーブル14上における照度が300Lxである低下状態を維持する。当該期間は、例えば、60秒とされる。
【0095】
次に、CPU51は、ステップS124において、第二呼吸周期を提示装置20に提示させる(第二制御)。具体的には、提示装置20は、例えば、表示画面20Aにおいて第二呼吸周期の始点にランプを点灯し、ユーザHSに第二呼吸周期を提示する。ユーザHSが、ランプの点灯時に息を吸い始めるように、呼吸を合わせることでユーザHSの呼吸が統制される。
【0096】
提示装置20が第二呼吸周期を提示する際には、CPU51は、照明装置32に対して、照明の色を青色に変更させる。また、音響装置34から森林の自然音を出力させる。
【0097】
次に、CPU51は、提示装置20が第二呼吸周期の提示を開始してから予め定められた期間経過すると、ステップS126において、照明装置32の照度を600Lxに増加させた増加状態に移行させると共に(図11参照)、自然呼吸周期よりも早い第三呼吸周期を提示装置20に提示させる(第三制御)。このとき、さらに、図11に示されるように、音響装置34を停止し、送風装置36及び芳香発生装置38を運転させる。なお、当該予め定められた期間は、例えば、300秒である(図10参照)。
【0098】
なお、上記では、予め定められた期間経過後に、ステップS126に移行したが、これに限られない。例えば、呼吸測定装置40、心拍計70A、及び皮膚電位計70Bから得られる自然呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報に基づき、ユーザHSの心身活性度の低下を検出し、その検出から予め定められた期間経過後に、ステップS126に移行する構成であってもよい。
【0099】
次に、CPU51は、提示装置20が第三呼吸周期の提示を開始してから予め定められた期間経過後に、提示装置20、送風装置36及び芳香発生装置38を停止し(ステップS128)、提示制御処理を終了する。なお、当該予め定められた期間は、例えば、30秒である(図10参照)。
【0100】
なお、ステップS128では、予め定められた期間経過後に、提示装置20、送風装置36及び芳香発生装置38を停止したが、これに限られない。例えば、呼吸測定装置40、心拍計70A、及び皮膚電位計70Bから得られる自然呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報に基づき、心身活性度の向上(すなわち、覚醒感を得たこと)を検出し、その検出から予め定められた期間経過後に、提示装置20、送風装置36及び芳香発生装置38を停止する構成であってもよい。
【0101】
以上のように、本実施形態では、CPU51が、覚醒感を得ることを優先させる場合に、自然呼吸周期との差が第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期を提示させる。
【0102】
ここで、ユーザHSは、提示装置20が提示する呼吸周期に呼吸を合わせるため、提示装置20の表示画面20Aに意識を集中する必要がある。そして、覚醒感を得ることを優先させる場合にも自然呼吸周期よりも長い第一呼吸周期を提示させる構成(以下、第一構成という)では、提示装置20の表示画面20Aへの意識の集中が高まり、心身活性度の低下が阻害される。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られない。
【0103】
これに対して、本実施形態では、CPU51が、覚醒感を得ることを優先させる場合に、自然呼吸周期との差が第一呼吸周期よりも小さい第二呼吸周期を提示させるので、第一構成に比べ、提示装置20の表示画面20Aに意識を集中させなくても、呼吸を自然に合わられる。
【0104】
このため、本実施形態の構成によれば、第一構成に比べ、ユーザHSの心身活性度を低下させられる。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られる。
【0105】
また、本実施形態では、具体的には、第二呼吸周期は、自然呼吸周期以上の周期であって第一呼吸周期よりも短い周期である。ここで、第二呼吸周期が自然呼吸周期よりも短い周期である構成(以下、第二構成という)では、第二呼吸周期が自然呼吸周期よりも長い場合に比べ、心身活性度が高まりやすい(図6参照)。
【0106】
これに対して、本実施形態では、第二呼吸周期は、自然呼吸周期以上の周期であって第一呼吸周期よりも短い周期であるので、第二構成に比べ、ユーザHSの心身活性度を低下させられる。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られる。
【0107】
さらに具体的には、本実施形態では、第二呼吸周期は、自然呼吸周期である。このため、第二呼吸周期が自然呼吸周期以外の周期である構成(以下、第三構成という)に比べ、提示装置20の表示画面20Aに意識を集中させなくても、呼吸を自然に合わられる。
【0108】
このため、本実施形態の構成によれば、第三構成に比べ、ユーザHSの心身活性度を低下させられる。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られる。
【0109】
また、本実施形態では、前述のように、提示装置20は、第二制御において、照明装置32のテーブル14上における照度が600Lxとされた初期状態よりも、当該照度を低下された低下状態(例えば300Lx)で、第二呼吸周期を提示する。
【0110】
ここで、照明装置32が初期状態のままで、提示装置20が第二呼吸周期を提示する構成(以下、第四構成という)では、照明装置32による視覚への刺激により、心身活性度が高まりやすい。
【0111】
これに対して、本実施形態では、照明装置32の低下状態において、提示装置20が第二呼吸周期を提示するので、第四構成に比べ、ユーザHSの心身活性度を低下させられる。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られる。
【0112】
本実施形態では、前述のように、CPU51は、第二制御を提示装置20に対して行った後に、刺激提示情報を低下状態よりも増加させた増加状態にさせる第三制御を、照明装置32に対して行う。
【0113】
第二制御を呼吸周期提示装置に対して行った後も、提示情報を低下させた低下状態のままである構成(以下、第五構成という)では、一旦低下した心身活性度が高まりにくい。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られない。
【0114】
これに対して、第二制御を提示装置20に対して行った後に、刺激提示情報を低下状態よりも増加させた増加状態にさせるので、第五構成に比べ、一旦低下した心身活性度が高まりやすい。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られる。
【0115】
また、本実施形態では、呼吸測定装置40が測定した自然呼吸周期の情報に基づいて、第一呼吸周期及び第二呼吸周期を設定する。このため、第一呼吸周期及び第二呼吸周期がユーザHSによって任意に設定される構成(以下、第六構成という)に比べ、第一呼吸周期及び第二呼吸周期が自然呼吸周期を反映した周期となるので、提示装置20の表示画面20Aに意識を集中させなくても、呼吸を自然に合わられる。これにより、本実施形態の構成によれば、第六構成に比べ、ユーザHSの心身活性度を低下させられる。この結果、ユーザHSは、十分な覚醒感を得られる。
【0116】
また、本実施形態では、CPU51は、取得した心身情報に基づき、リラックス度の向上及び覚醒感を得ることのいずれを優先させるかを決定する。このため、リラックス度の向上及び覚醒感を得ることのいずれを優先させるかがユーザHSによって任意に決定される構成に比べ、ユーザHSの客観的な心身の状態に応じて、リラックス度の向上及び覚醒感を得ることのいずれを優先させるかが決定されるので、ユーザHSの心身状態の調整の効果のばらつきが抑制される。
【0117】
(提示装置20の変形例)
本実施形態では、呼吸周期提示装置の一例として、提示装置20を用いたが、これに限られない。例えば、呼吸周期提示装置の一例として、視覚を除く五感の一部(聴覚や触覚等)を通じて、呼吸周期を提示する提示装置を用いてもよい。聴覚を通じて呼吸周期を提示する構成としては、例えば、呼吸周期の始点に音を発生させる構成が挙げられる。触覚を通じて呼吸周期を提示する構成としては、例えば、呼吸周期の始点に皮膚に刺激を付与する構成が挙げられる。
【0118】
さらに、呼吸周期提示装置の一例として、図12に示されるように、VR(virtual reality:バーチャル・リアリティ)ヘッドセット200を用いてもよい。VRヘッドセット200は、頭部に装着するディスプレイ装置202と、ヘッドフォン204と、を有している。VRヘッドセット200は、ディスプレイ装置202によって視覚を通じ、ヘッドフォン204によって聴覚を通じて、呼吸周期が提示される。なお、図12における符号RAは、ディスプレイ装置202によって視認されるユーザHSの映像イメージを示したものである。
【0119】
さらに、呼吸周期提示装置の一例として、ユーザHSが所有するスマートフォンやタブレットコンピュータなどの携帯端末を、提示装置20として用いてもよい。
【0120】
(その他の変形例)
本実施形態では、第二呼吸周期は、自然呼吸周期であったが、これに限られない。例えば、第二呼吸周期は、自然呼吸周期を超える周期であって第一呼吸周期よりも短い周期であってもよい。また、第二呼吸周期は、自然呼吸周期との差が第一呼吸周期よりも小さければ、自然呼吸周期よりも短い周期であってもよい。
【0121】
本実施形態では、呼吸測定装置40が測定した自然呼吸周期の情報を、第一取得部64が取得し、該自然呼吸周期の情報に基づいて、第一呼吸周期及び第二呼吸周期を設定していたが、これに限られない。例えば、ユーザHSが操作部60等を通じて入力した自然呼吸周期の情報を、第一取得部64が取得し、該自然呼吸周期の情報に基づいて、第一呼吸周期及び第二呼吸周期を設定してもよい。この場合では、例えば、ユーザHSは、予め、ユーザHS自身で自然呼吸周期を測定して、自然呼吸周期を操作部60等を通じて入力することが考えられる。
【0122】
本実施形態では、決定部67は、第二取得部66が取得した心身情報(例えば、呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報)に基づき、リラックス度の向上及び覚醒感を得ることのいずれを優先させるかを決定していたが、これに限られない。例えば、リラックス度の向上を優先するか、覚醒感を得ることを優先させるかを、ユーザHSが選択する構成であってもよい。この構成では、例えば、ユーザHSは、操作部60を通じて選択操作が行われる。
【0123】
また、本実施形態では、呼吸測定装置40、心拍計70A、及び皮膚電位計70Bが測定したユーザHSの呼吸周期、心拍数及び皮膚電位基準の情報を、第二取得部66が取得していたが、これに限られない。例えば、アンケートなどの、測定装置の測定によらない情報を第二取得部66が取得し、該情報に基づきリラックス度の向上及び覚醒感を得ることのいずれを優先させるかを決定する構成であってもよい。
【0124】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【0125】
また、上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、前述のCPU等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0126】
また、上記実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0127】
<評価>
実験例1(覚醒モード)、実験例2(リラックスモード)及び比較例において、ユーザHSの心身の状態について評価した。
【0128】
本評価では、RSA(Roken Arousal Scale)を主観評価指標として、ユーザHSの心身活性度とリラックス度をスコア化し、装置使用前後のスコアの変化量を求めた。また、心拍計70Aで取得した心拍変動の情報から、自律神経活動全体の活性度(CVRR)と、リラックス状態を反映するとされる副交感神経活動の活性度(ccvHF)を算出し、装置使用前後の変化量を求めた。
【0129】
[実験例1(覚醒モード)]
実験例1では、前述の提示制御処理におけるステップS102~S106及び、ステップS120~S128を、被験者19名に対して行った。
この結果、主観的活性度を示すスコアは平均で2.3ポイント上昇した。また、自律神経活動の活性度(CVRR)は、平均で55%増加した。
【0130】
[比較例]
比較例1では、第二呼吸周期を10秒に固定する点を除いて、実験例1と同一の条件で、前述の提示制御処理におけるステップS102~S106及び、ステップS120~S128を、被験者10名に対して行った。なお、10秒の第二呼吸周期は、実験例1において設定されたいずれの第二呼吸周期よりも長い呼吸周期である。
この結果、主観的活性度を示すスコアの変化量の平均は0.3ポイントで、2名の被験者については、手順終了後に主観的活性度が低下した。また、自律神経活動の活性度(CVRR)は、平均で8%増加した。したがって、比較例に比べ、実験例1のほうが、覚醒感が得られることがわかる。
【0131】
[実験例2(リラックスモード)]
実験例2では、前述の提示制御処理におけるステップS102~S106及び、ステップS110~S116を、被験者25名に対して行った。
この結果、主観的リラックス度を示すスコアは平均で2.2ポイント上昇した。また、副交感神経活動の活性度(ccvHF)は、平均で28%増加した。
【符号の説明】
【0132】
20 呼吸周期提示装置
32 照明装置(刺激提示装置の一例)
40 呼吸測定装置
50 制御装置(提示制御装置の一例)
51 CPU(プロセッサの一例)
HS ユーザ(提示対象者の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12