(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】建設機械の乗降用手摺り
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
E02F9/16 G
(21)【出願番号】P 2019166096
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】藤川 幸治
(72)【発明者】
【氏名】松島 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】上杉 憲央
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-345373(JP,A)
【文献】特開2009-215702(JP,A)
【文献】実開平01-138828(JP,U)
【文献】実開昭58-192138(JP,U)
【文献】特開昭51-035922(JP,A)
【文献】特開2002-317467(JP,A)
【文献】実開昭57-195929(JP,U)
【文献】特開2004-345367(JP,A)
【文献】実開昭58-188276(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦者がキャブに対して乗降する際に把持する建設機械の乗降用手摺りであって、
上記キャブの一側面に設けられた乗降口上部におけるキャブ前方の角部に対応する位置で、且つ、上記キャブの室内側に位置し、一端が上記乗降口の上側縁部を形成する上部フレームに取り付けられる一方、他端が上記乗降口の前側縁部を形成する前側部フレームに取り付けられた手摺り本体を備え、
該手摺り本体の中途部は、上記上部フレームから下方に所定の間隔をあけた位置に設けられ、且つ、上記上部フレームに沿って延びる第1把持部と、上記前側部フレームからキャブ後方に所定の間隔をあけた位置に設けられ、且つ、上記前側部フレームに沿って延びる第2把持部とを備え、
上記上部フレームには、上記手摺り本体の一端の取付位置を上記上部フレームの延長方向に変更可能な第1取付位置変更部が設けられ、
上記前側部フレームには、上記手摺り本体の他端の取付位置を上記前側部フレームの延長方向に沿って変更可能な第2取付位置変更部が設けられていることを特徴とする建設機械の乗降用手摺り。
【請求項2】
請求項
1に記載の建設機械の乗降用手摺りにおいて、
上記手摺り本体は、上記第1把持部の前端と上記第2把持部の上端とを接続する接続部を備えていることを特徴とする建設機械の乗降用手摺り。
【請求項3】
請求項
1又は2に記載の建設機械の乗降用手摺りにおいて、
上記手摺り本体の一端が上記第1取付位置変更部の中央に位置し、且つ、上記手摺り本体の他端が上記第2取付位置変更部の中央に位置する状態において、上記第1把持部は、水平方向に延びる姿勢となるように構成される一方、上記第2把持部は、垂直方向に延びる姿勢となるように構成されていることを特徴とする建設機械の乗降用手摺り。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1つに記載の建設機械の乗降用手摺りにおいて、
上記手摺り本体には、下方に向けて照明光を照射可能な照明部が設けられていることを特徴とする建設機械の乗降用手摺り。
【請求項5】
請求項
4に記載の建設機械の乗降用手摺りにおいて、
上記照明部は、上記手摺り本体の上記第1及び第2把持部を除く部分に設けられている
ことを特徴とする建設機械の乗降用手摺り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械において操縦者がキャブに対して乗降する際に把持する乗降用手摺りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設機械には、操縦者の四方を取り囲むキャブが設けられ、該キャブにおける乗降口の周縁部分には、操縦者がキャブに対して安全に乗降できるように把持可能な乗降用手摺りが設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、操縦者が主にキャブから降りる際に把持する第1手摺りと、操縦者が主にキャブに乗り込む際に把持する第2手摺りとが開示されている。第1手摺りは、キャブの一側面に設けられた乗降口の上側縁部を形成する上部フレームに取り付けられ、平面視で梯子状に延びるパイプフレームで構成されている。一方、第2手摺りは、乗降口の前側縁部を形成する前側部フレームに取り付けられ、側面視で幅広な略U字状をなすパイプフレームで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上下方向に延びる旋回軸心周りに旋回可能な上部旋回体を有する建設機械では、設計上、旋回軸心からキャブの左前部分までの旋回半径を予め決められた所定の値以下に設定しなければならない場合がある。その際、建設機械における各構造のレイアウト上、キャブを旋回軸心側に寄せた設計ができない場合、特許文献1のように各手摺りをキャブの本体部分から外側方に飛び出すように設けると、各手摺りを除くキャブの本体部分を小型に設計しなければならなくなり、室内が狭いキャブになってしまうという問題がある。
【0006】
これを回避するために、各手摺りをキャブの室内側に設けてキャブの本体部分から外側に飛び出さない構成にすることが考えられる。
【0007】
しかし、特許文献1の如き第1及び第2手摺りをキャブの乗降口に設けると、各手摺りの分だけ乗降口における操縦者の通過可能な領域が狭くなり、操縦者がキャブに対して乗降し難くなるという問題が生じるおそれがある。
【0008】
さらに、特許文献1の如き異なる方向に延びる形状をなすとともに別部品である2つの手摺りをそれぞれキャブに組み付けるようにすると部品コスト及び組立コストが嵩むという問題もある。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、キャブの室内を広くすることができ、しかも、操縦者の乗降動作を邪魔することなく操縦者が安全に乗降することができる低コストな建設機械の乗降用手摺りを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、乗降口上部におけるキャブ前方の角部に対応する位置で、且つ、キャブの室内側において2つの方向に延びる把持部を有する構造を1つ設けたことを特徴とする。
【0011】
具体的には、操縦者がキャブに対して乗降する際に把持する建設機械の乗降用手摺りを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明では、操縦者がキャブに対して乗降する際に把持する建設機械の乗降用手摺りであって、上記キャブの一側面に設けられた乗降口上部におけるキャブ前方の角部に対応する位置で、且つ、上記キャブの室内側に位置し、一端が上記乗降口の上側縁部を形成する上部フレームに取り付けられる一方、他端が上記乗降口の前側縁部を形成する前側部フレームに取り付けられた手摺り本体を備え、該手摺り本体の中途部は、上記上部フレームから下方に所定の間隔をあけた位置に設けられ、且つ、上記上部フレームに沿って延びる第1把持部と、上記前側部フレームからキャブ後方に所定の間隔をあけた位置に設けられ、且つ、上記前側部フレームに沿って延びる第2把持部とを備え、上記上部フレームには、上記手摺り本体の一端の取付位置を上記上部フレームの延長方向に変更可能な第1取付位置変更部が設けられ、上記前側部フレームには、上記手摺り本体の他端の取付位置を上記前側部フレームの延長方向に沿って変更可能な第2取付位置変更部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において、上記手摺り本体は、上記第1把持部の前端と上記第2把持部の上端とを接続する接続部を備えていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、第1または第2の発明において、上記手摺り本体の一端が上記第1取付位置変更部の中央に位置し、且つ、上記手摺り本体の他端が上記第2取付位置変更部の中央に位置する状態において、上記第1把持部は、水平方向に延びる姿勢となるように構成される一方、上記第2把持部は、垂直方向に延びる姿勢となるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記手摺り本体には、下方に向けて照明光を照射可能な照明部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
第5の発明では、第4の発明において、上記照明部は、上記手摺り本体の上記第1及び第2把持部を除く部分に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明では、第1取付位置変更部に対する手摺り本体の一端の取付位置が水平方向に変更可能になるとともに第2取付位置変更部に対する手摺り本体の他端の取付位置が垂直方向に変更可能になるので、手摺り本体の垂直方向の位置を変化させることができるようになる。したがって、例えば、地上からの乗降口の高さが異なる建設機械に対してキャブ及び手摺りを共通化するような場合において第1及び第2把持部を各建設機械のキャブに応じた高さに変更することができたり、或いは、第1及び第2把持部を操縦者の好みの位置に変更することができる。
【0019】
また第1の発明では、操縦者がキャブから降りる際には、主に略水平方向に延びる第1把持部を把持可能である一方、操縦者がキャブに乗り込む際には、主に略垂直方向に延びる第2把持部を把持可能であるので、操縦者がキャブに対して安全に乗降することができる。また、手摺り本体がキャブの室内に位置するので、キャブの設計を行う際の旋回半径に手摺りの領域を考慮する必要が無い。したがって、手摺りの領域を考慮してキャブの本体部分を小型に設計するといった必要が無いので、キャブ全体を大きくしてキャブの室内を広くすることができる。また、手摺り本体がキャブの乗降口に設けられているものの、その位置が乗降口上部におけるキャブ前方の角部に対応しており、乗降口を通過する操縦者の頭や肩が接触し難くなっているので、操縦者は乗降動作を邪魔されることなく安全に乗降することができる。さらに、キャブに組み付ける1つの部品に2つの方向に延びる把持部を有するようにしたので、部品コストと組立コストとの両方を抑えた手摺りにすることができる。
【0020】
第2の発明では、手摺り本体の中途部が、側面視において乗降口上部におけるキャブ前方の角部側に凹む形状になるので、乗降口における操縦者の通過領域をさらに広くすることができる。
【0021】
第3の発明では、第1把持部の姿勢を操縦者がキャブから降りる時に特に把持し易い水平方向に延びる姿勢を基準として前側に傾く姿勢と後側に傾く姿勢とにそれぞれ変更可能になる一方、第2把持部の姿勢を操縦者がキャブに乗り込む時に特に把持し易い垂直方向に延びる姿勢を基準として前側に傾く姿勢と後側に傾く姿勢とにそれぞれ変更可能になる。したがって、手摺り本体の各端部の取付位置を変更しても、第1及び第2把持部の姿勢が乗降時に特に把持し易い水平方向及び垂直方向にそれぞれ延びる姿勢から大きく傾かなくなるので、操縦者の使用感を悪くすることなく第1及び第2把持部の位置を変更することができる。
【0022】
第4の発明では、キャブの乗降口周りが明るくなるので、例えば、建設機械が暗い場所に位置する場合であっても安全に乗降することができる。
【0023】
第5の発明では、手摺り本体における第1及び第2把持部以外の領域に照明部が設けられるので、乗降時に操縦者が第1把持部又は第2把持部を把持しても操縦者の手や頭が照明部から照射される照明光を遮らない。したがって、照明部は、操縦者の乗降時において乗降口周辺を確実に照明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態1に係る乗降用手摺りが取り付けられた油圧ショベルのドア解放状態の斜視図である。
【
図4】
図2のIII部をキャブの内側から見た図である。
【
図5】手摺り本体の位置が低くなるように手摺り本体のキャブへの取付位置を変更した
図3相当図である。
【
図6】手摺り本体の位置が低くなるように手摺り本体のキャブへの取付位置を変更した
図4相当図である。
【
図7】手摺り本体の位置が高くなるように手摺り本体のキャブへの取付位置を変更した
図3相当図である。
【
図8】手摺り本体の位置が高くなるように手摺り本体のキャブへの取付位置を変更した
図4相当図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る
図4相当図である。
【
図10】本発明の実施形態3に係る
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0026】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る乗降用手摺り1が取り付けられた油圧ショベル10(建設機械)を示す。該油圧ショベル10は、主に掘削作業を行うためのものであり、クローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2の上方に旋回機構を介して取り付けられた上部旋回体3とを備え、当該上部旋回体3は、上下方向に延びる旋回軸心周りに旋回可能になっている。
【0027】
上部旋回体3の幅方向一側には、掘削アタッチメント4が設けられ、該掘削アタッチメント4は、ブーム4a、アーム4b及びバケット4cを基端側から順に備えている。
【0028】
一方、上部旋回体3の幅方向他側には、油圧ショベル10の操縦者を保護するボックス形状のキャブ5が設けられ、該キャブ5は、当該キャブ5の骨格をなすキャブ本体5aを備えている。
【0029】
該キャブ本体5aの前側略半分における左側の側面には、
図2に示すように、キャブ本体5aの上端から下端までのほぼ全域に亘って上下に延びる略長方形状の乗降口6eが開口している。
【0030】
キャブ本体5aの左前側部分には、上下に延びる支柱部材により構成された前側部フレーム6aが設けられ、該前側部フレーム6aは、乗降口6eの前側縁部を形成している。
【0031】
また、キャブ本体5aの左側上部には、キャブ左前側部分に配置された上下に延びる支柱部材とキャブ左後側部分に配置された上下に延びる支柱部材との上部同士を繋ぐ梁部材の前側部分により構成された上部フレーム6cが設けられ、該上部フレーム6cは、乗降口6eの上側縁部を形成している。
【0032】
また、キャブ本体5aには、乗降口6eに対応する形状をなす乗降ドア7が取り付けられ、該乗降ドア7は、乗降口6eの後側縁部に取り付けられた一対のドアヒンジ7aによりキャブ5の前側から乗降口6eを開閉する構成になっている。
【0033】
乗降口6eの後側縁部の略中央には、操縦者がキャブ5に乗降口6eを介して乗り込む際には主に右手で把持する一方、キャブ5から乗降口6eを介して降りる際には主に左手で把持する中央側手摺り8が取り付けられている。
【0034】
該手摺り8は、キャブ5の後側に開放する上下方向に幅広の略U字形状をなし、キャブ5の前側に飛び出すように乗降口6eの後側縁部に取り付けられている。
【0035】
一方、本発明の実施形態1に係る乗降用手摺り1は、乗降口6e上部におけるキャブ5の前方の角部に対応する位置で、且つ、キャブ5の室内側に設けられていて、操縦者がキャブ5に乗降口6eを介して乗り込む際には主に左手で把持する一方、キャブ5から乗降口6eを介して降りる際には主に右手で把持するようになっている。
【0036】
手摺り1は、1本のパイプフレームを略W形状に折り曲げて形成された手摺り本体9を備え、該手摺り本体9の一端が上部フレーム6cに取り付けられる一方、他端が前側部フレーム6aに取り付けられている。
【0037】
手摺り本体9の中途部は、
図3及び
図4に示すように、略水平方向に延びる第1把持部9aと、略垂直方向に延びる第2把持部9bと、第1把持部9aの前端と第2把持部9bの上端とを接続する緩やかに湾曲する湾曲部9c(接続部)とを備え、第1把持部9a、第2把持部9b及び湾曲部9cは、側面視で略L字形状をなしている。
【0038】
第1把持部9aは、側面視で上部フレーム6cから下方に所定の間隔をあけた位置において上部フレーム6cに沿って略直線状に延びる形状をなしている。具体的には、第1把持部9aは、湾曲部9cとの連続部分から後方に向かって少なくとも100mm以上延びる形状をなしている。
【0039】
一方、第2把持部9bは、側面視で前側部フレーム6aからキャブ後方に所定の間隔をあけた位置において前側部フレーム6aに沿って略直線状に延びる形状をなしている。具体的には、第2把持部9bは、湾曲部9cとの連続部分から下方に向かって少なくとも100mm以上延びる形状をなしている。
【0040】
第1把持部9aにおける湾曲部9cの反対側には、
図4に示すように、第1把持部9aと直交するように上方に延びる第1取付部9dが連続しており、該第1取付部9dの端部には、第1取付ボルトB1が設けられている。
【0041】
一方、第2把持部9bにおける湾曲部9cの反対側には、第2把持部9bと直交するように水平方向に延びる第2取付部9eが連続しており、該第2取付部9eの端部には、第2取付ボルトB2が設けられている。
【0042】
上部フレーム6cにおけるキャブ本体5aの室内側には、上部フレーム6cに沿って水平方向に延びる帯板状の第1取付プレート11(第1取付位置変更部)が取り付けられている。
【0043】
第1取付プレート11には、第1取付ボルトB1が螺合可能な第1締結穴11aが第1取付プレート11の延長方向に所定の間隔をあけて3つ形成されていて、第1取付ボルトB1を螺合させる各第1締結穴11aを変更することにより、手摺り本体9の一端の取付位置を上部フレーム6cの延長方向に変更できるようになっている。
【0044】
一方、前側部フレーム6aにおけるキャブ5の室内側には、前側部フレーム6aに沿って上下方向に延びる帯板状をなす第2取付プレート12(第2取付位置変更部)が取り付けられている。
【0045】
第2取付プレート12には、第2取付ボルトB2が螺合可能な第2締結穴12aが第2取付プレート12の延長方向に所定の間隔をあけて3つ形成されていて、第2取付ボルトB2を螺合させる各第2締結穴12aを変更することにより、手摺り本体9の他端の取付位置を前側部フレーム6aの延長方向に変更できるようになっている。
【0046】
具体的には、第1取付プレート11の中央の第1締結穴11aに第1取付ボルトB1を螺合させ、且つ、第2取付プレート12の中央の第2締結穴12aに第2取付ボルトB2を螺合させると、第1取付プレート11に対する手摺り本体9の一端の取付位置が第1取付プレート11の中央になり、第2取付プレート12に対する手摺り本体9の他端の取付位置が第2取付プレート12の中央になるようになっている。そして、第1把持部9aが水平方向に延びる姿勢となり、第2把持部9bが垂直方向に延びる姿勢となるようになっている。
【0047】
また、
図5及び
図6に示すように、3つの第1締結穴11aのうちの最もキャブ5の前側に位置する第1締結穴11aに第1取付ボルトB1を螺合させ、3つの第2締結穴12aのうちの最も下側に位置する第2締結穴12aに第2取付ボルトB2を螺合させると、第1取付プレート11に対する手摺り本体9の一端の取付位置が第1取付プレート11におけるキャブ5の前側に変更され、第2取付プレート12に対する手摺り本体9の他端の取付位置が第2取付プレート12におけるキャブ5の下側に変更されるようになっている。そして、第1把持部9aがキャブ5の前方下側に向かって延びるように傾斜する姿勢となり、第2把持部9bがキャブ5の前方上側に向かって延びるように傾斜する姿勢となって第1把持部9a及び第2把持部9bの位置が低くなるようになっている。
【0048】
さらに、
図7及び
図8に示すように、3つの第1締結穴11aのうちの最もキャブ5の後側に位置する第1締結穴11aに第1取付ボルトB1を螺合させ、且つ、3つの第2締結穴12aのうちの最も上側に位置する第2締結穴12aに第2取付ボルトB2を螺合させると、第1取付プレート11に対する手摺り本体9の一端の取付位置が第1取付プレート11におけるキャブ5の後側に変更され、第2取付プレート12に対する手摺り本体9の他端の取付位置が第2取付プレート12におけるキャブ5の上側に変更されるようになっている。そして、第1把持部9aがキャブ5の後方下側に向かって延びるように傾斜する姿勢となり、第2把持部9bがキャブ5の後方上側に向かって延びるように傾斜する姿勢となって第1把持部9a及び第2把持部9bの位置が高くなるようになっている。
【0049】
以上より、本発明の実施形態1によると、操縦者がキャブ5から降りる際には、主に略水平方向に延びる第1把持部9aを把持可能である一方、操縦者がキャブ5に乗り込む際には、主に略垂直方向に延びる第2把持部9bを把持可能であるので、操縦者がキャブ5に対して安全に乗降することができる。
【0050】
また、手摺り本体9がキャブ5の室内に位置するので、キャブ5の設計を行う際の旋回半径に手摺り1の領域を考慮する必要が無い。したがって、手摺り1の領域を考慮してキャブ5のキャブ本体5aを小型に設計するといった必要が無いので、キャブ5の全体を大きくしてキャブ5の室内を広くすることができる。
【0051】
また、手摺り本体9がキャブ5の乗降口6eに設けられているものの、その位置が乗降口6e上部におけるキャブ前方の角部に対応しており、乗降口6eを通過する操縦者の頭や肩が接触し難くなっているので、操縦者は乗降動作を邪魔されることなく安全に乗降することができる。
【0052】
さらに、キャブ5に組み付ける1つの部品に2つの方向に延びる第1把持部9a及び第2把持部9bを有するようにしたので、部品コストと組立コストとの両方を抑えた手摺り1にすることができる。
【0053】
また、第1把持部9a及び第2把持部9bは、側面視で略L字状に配置されているので、手摺り本体9の中途部が、乗降口6e上部におけるキャブ前方の角部側に凹む形状になる。したがって、乗降口6eにおける操縦者の通過領域をさらに広くすることができる。
【0054】
また、
図5及び
図6に示すように、手摺り本体9の一端の取付位置を第1取付プレート11における前側に変更する一方、手摺り本体9の他端の取付位置を第2取付プレート12における下側に変更すると、第1把持部9a及び第2把持部9bの垂直方向の位置が下側に変化する。一方、
図7及び
図8に示すように、手摺り本体9の一端の取付位置を第1取付プレート11における後側に変更する一方、手摺り本体9の他端の取付位置を第2取付プレート12における上側に変更すると、第1把持部9a及び第2把持部9bの垂直方向の位置が上側に変化する。したがって、例えば、地上からの乗降口6eの高さが異なる建設機械に対してキャブ5及び手摺り1を共通化するような場合において第1把持部9a及び第2把持部9bを各建設機械のキャブ5に応じた高さに変更することができたり、或いは、第1把持部9a及び第2把持部9bを操縦者の好みの位置に変更することができる。
【0055】
さらに、第1取付プレート11及び第2取付プレート12により、第1把持部9aの姿勢を操縦者がキャブ5から降りる時に特に把持し易い水平方向に延びる姿勢を基準として前側に傾く姿勢と後側に傾く姿勢とにそれぞれ変更可能になる一方、第2把持部9bの姿勢を操縦者がキャブ5に乗り込む時に特に把持し易い垂直方向に延びる姿勢を基準として前側に傾く姿勢と後側に傾く姿勢とにそれぞれ変更可能になる。したがって、手摺り本体9の各端部の取付位置を変更しても、第1把持部9a及び第2把持部9bの姿勢が乗降時に特に把持し易い水平方向及び垂直方向にそれぞれ延びる姿勢から大きく傾かなくなるので、操縦者の使用感を悪くすることなく第1把持部9a及び第2把持部9bの位置を変更することができる。
【0056】
《発明の実施形態2》
図9は、本発明の実施形態2の乗降用手摺り1を示す。この実施形態2では、手摺り本体9、第1取付プレート11及び第2取付プレート12の一部構造が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0057】
実施形態2の第1取付プレート11には、上部フレーム6cの延長方向に沿って延びる第1ガイド孔11bが形成され、該第1ガイド孔11bは、長手方向中央部分が両端部分より上方に位置するように緩やかに湾曲する形状をなしている。
【0058】
実施形態2の第2取付プレート12には、前側部フレーム6aの延長方向に沿って延びる第2ガイド孔12bが形成され、該第2ガイド孔12bは、長手方向中央部分が両端部分よりキャブ5の前側に位置するように緩やかに湾曲する形状をなしている。
【0059】
実施形態2の手摺り本体9の一端には、第1ガイド孔11bにスライド可能に嵌合する第1ガイドピンG1が設けられ、手摺り本体9の他端には、第2ガイド孔12bにスライド可能に嵌合する第2ガイドピンG2が設けられている。
【0060】
すなわち、第1ガイド孔11bは、手摺り本体9の一端を案内して当該手摺り本体9の第1取付プレート11への取付位置を変更する一方、第2ガイド孔12bは、手摺り本体9の他端を案内して当該手摺り本体9の第2取付プレート12への取付位置を変更するようになっている。
【0061】
以上より、本発明の実施形態2によると、手摺り本体9の一端を第1ガイド孔11bに沿って移動させるとともに手摺り本体9の他端を第2ガイド孔12bに沿って移動させることにより、手摺り本体9の各端部の前側部フレーム6a及び上部フレーム6cへの取付位置が無段階に変更可能になる。したがって、操縦者は、自分の好みに合うように第1把持部9a及び第2把持部9bの姿勢を細かく変更することができる。
【0062】
《発明の実施形態3》
図10は、本発明の実施形態3の乗降用手摺り1を示す。この実施形態3では、手摺り本体9の一部構造が実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
実施形態3における手摺り本体9の湾曲部9cには、キャブ5の後側の斜め下方に向くように開口する開口部9fが形成されている。
【0063】
また、湾曲部9c内部の開口部9fに対応する位置には、当該開口部9fを介して下方に照明光L1を照射可能な光源13(照明部)が設けられている。つまり、光源13は、手摺り本体9における第1把持部9a及び第2把持部9bを除く部分である湾曲部9cの内部に埋設されている。
【0064】
以上より、本発明の実施形態3によると、光源13から照射される照明光L1によってキャブ5の乗降口6e周りが明るくなるので、例えば、油圧ショベル10が暗い場所に位置する場合であっても安全に乗降することができる。
【0065】
また、手摺り本体9の内側に光源13が位置するようになるので、光源13を設けても手摺り本体9の外周面から飛び出す部分が形成されない。したがって、操縦者が乗降口6eを通過する際に光源13が操縦者に引っ掛かるといったことがなくなり、操縦者の乗降動作を行い易くすることができる。
【0066】
さらに、手摺り本体9における第1把持部9a及び第2把持部9b以外の領域に光源13が設けられるので、乗降時に操縦者が第1把持部9a又は第2把持部9bを把持しても操縦者の手や頭が光源13から照射される照明光L1を遮らない。したがって、光源13は、操縦者の乗降時において乗降口6e周辺を確実に照明することができる。
【0067】
尚、本発明の実施形態1~3では、手摺り本体9の一端が第1取付プレート11の中央に位置し、且つ、手摺り本体9の他端が第2取付プレート12の中央に位置するときに、第1把持部9aが水平方向に延びる姿勢となり、第2把持部9bが垂直方向に延びる姿勢となるように構成されているが、手摺り本体9の一端が第1取付プレート11の中央に位置せず、手摺り本体9の他端が第2取付プレート12の中央に位置しない場合のときに、第1把持部9aが水平方向に延びる姿勢となり、第2把持部9bが垂直方向に延びる姿勢となるような構成であってもよい。
【0068】
また、本発明の実施形態1~3では、第1把持部9a及び第2把持部9bが直線状をなしているが、緩やかに湾曲する形状であってもよく、例えば、連続する第1把持部9a、湾曲部9c及び第2把持部9bが同じ曲率半径で連続して湾曲するような形状であってもよい。
【0069】
また、本発明の実施形態1~3では、手摺り本体9が1本のパイプフレームを折り曲げて形成されているが、例えば、2つの部品を組み立てて一体的に形成されるような構造であってもよい。
【0070】
また、本発明の実施形態3では、光源13が湾曲部9cに設けられているが、手摺り本体9における湾曲部9c以外の領域に設けるようにしてもよい。
【0071】
また、本発明の実施形態3では、光源13が手摺り本体9の内部に埋設されているが、手摺り本体9の外側に位置するような構造であってもよい。
【0072】
また、本発明の実施形態1~3の手摺り1は、油圧ショベル10のキャブ5に取り付けられているが、その他の建設機械のキャブにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、建設機械において操縦者がキャブに対して乗降する際に把持する乗降用手摺りに適している。
【符号の説明】
【0074】
1 乗降用手摺り
5 キャブ
6a 前側部フレーム
6c 上部フレーム
6e 乗降口
9 手摺り本体
9a 第1把持部
9b 第2把持部
9c 湾曲部(接続部)
10 油圧ショベル(建設機械)
11 第1取付プレート(第1取付位置変更部)
12 第2取付プレート(第2取付位置変更部)
13 光源(照明部)
L1 照明光