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特許7331647無線起爆システム及び無線起爆システムの設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】無線起爆システム及び無線起爆システムの設置方法
(51)【国際特許分類】
   F42D 1/05 20060101AFI20230816BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230816BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20230816BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20230816BHJP
【FI】
F42D1/05
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J50/80
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019204237
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021076312
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田崎 陽治
(72)【発明者】
【氏名】柳 直斗
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-066091(JP,A)
【文献】米国特許第05159149(US,A)
【文献】特開2019-054560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42D 1/00
F42D 3/04
E21D 9/00
H02J 7/00
H02J 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線起爆システムであって、
起爆雷管と、前記起爆雷管に駆動用エネルギーを供給する給電装置を有し、
前記起爆雷管は、前記給電装置から発信された駆動用エネルギーを受信する受信コイルと、前記受信コイルが外周面に沿って巻かれた雷管本体と、受信した前記駆動用エネルギーを充電する充電器と、前記充電器の充電が完了した際に充電完了信号を発する雷管側制御回路と、前記充電完了信号に基づいて光を発する発光機を有し、
前記給電装置は、前記駆動用エネルギーを電磁誘導方式で発信する送電コイルと、前記雷管本体が挿入されかつ前記受信コイルの外側に前記送電コイルが位置するように取付けられた筒本体と、前記発光機が発する光を検知する受光機と、前記受光機からの信号に基づいて前記充電器の充電の完了を認識する給電装置側制御回路を有する無線起爆システム。
【請求項2】
無線起爆システムであって、
起爆雷管と、前記起爆雷管に駆動用エネルギーを供給する給電装置を有し、
前記起爆雷管は、前記給電装置から発信された駆動用エネルギーを受信する受信コイルと、受信した前記駆動用エネルギーを充電する充電器と、前記充電器の充電が完了した際に充電完了信号を発する雷管側制御回路と、前記充電完了信号に基づいて光を発する発光機と、前記発光機が設けられた雷管本体を有し、
前記給電装置は、前記駆動用エネルギーを電磁誘導方式で発信する送電コイルと、前記発光機が発する光を検知する受光機と、前記雷管本体が挿入されかつ前記発光機に対向する位置に前記受光機が取付けられた筒本体と、前記受光機からの信号に基づいて前記充電器の充電の完了を認識する給電装置側制御回路を有する無線起爆システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線起爆システムであって、
前記送電コイルは、前記駆動用エネルギーのみならず、起爆準備信号を含む電波を発信する構成であり、前記電波が前記受信コイルによって受信され、
前記起爆雷管は、前記電波から前記起爆準備信号を検出する検波復調回路を有する無線起爆システム。
【請求項4】
請求項3に記載の無線起爆システムであって、
起爆信号を含む電波を発信する送信アンテナを有し、
前記受信コイルが前記起爆信号を含む前記電波を受信し、
前記検波復調回路が前記電波から前記起爆信号を検出する無線起爆システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の無線起爆システムであって、
前記起爆雷管は、前記充電器に第1スイッチを介して電気的に接続される起爆用充電器と、前記起爆用充電器と第2スイッチを介して電気的に接続される点火部を有し、
前記雷管側制御回路が前記第1スイッチをONにすることで前記充電器から前記起爆用充電器に電力が供給されて前記起爆用充電器が充電され、
前記雷管側制御回路が前記第2スイッチをONにすることで前記起爆用充電器から前記点火部に電力が供給される無線起爆システム。
【請求項6】
無線起爆システムの設置方法であって、
受信コイルを備える起爆雷管を準備し、
前記起爆雷管を給電装置の筒本体に挿入して前記筒本体に設けられた送電コイルの内側に前記受信コイルを設置し、
前記送電コイルから前記受信コイルに駆動用エネルギーを電磁誘導方式で発信し、
前記起爆雷管に設けられた充電器によって前記駆動用エネルギーを充電し、
前記起爆雷管に設けられた発光機が前記充電器の充電完了時に充電完了信号を発光し、
前記筒本体に設けられた受光機が前記充電完了信号を受光し、
前記起爆雷管が前記筒本体から抜かれ、前記起爆雷管が爆破対象に形成された装薬孔に装填される無線起爆システムの設置方法。
【請求項7】
請求項6に記載の無線起爆システムの設置方法であって、
前記送電コイルは、前記駆動用エネルギーに加えて起爆遅延時間に関する情報を含む電波を発信し、前記受信コイルが前記電波を受信し、
前記起爆雷管に設けられた記録機が前記起爆遅延時間の情報を記録し、
前記記録機が前記起爆遅延時間を記録した際に前記発光機が発光し、
前記起爆雷管が前記筒本体から抜かれ、前記装薬孔に装填され、
送信アンテナが起爆信号を発信し、
前記受信コイルが前記起爆信号を受信し、
前記起爆雷管の制御回路が前記起爆遅延時間に応じた時間に前記駆動用エネルギーを利用して点火部により爆薬を起爆させる無線起爆システムの設置方法。
【請求項8】
請求項7に記載の無線起爆システムの設置方法であって、
前記起爆雷管が前記筒本体に挿入された状態で、前記給電装置の第2送信アンテナが前記起爆信号と同じ周波数の電波を発信し、
前記起爆雷管の前記受信コイルが前記電波を受信し、
前記受信コイルが受信した前記電波から検波復調回路が試験信号を検出し、
前記試験信号に基づいて前記制御回路が前記発光機を発光させる無線起爆システムの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の掘削現場や、岩石等の破砕現場や、ビル等の構造物の破砕現場等にて使用する、無線起爆システム及び無線起爆システムの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削現場等における爆破作業で使用される無線起爆システムは、無線起爆雷管と起爆操作機を有する。無線起爆雷管は、掘削面である切羽面から掘削方向に向けて削孔した複数の装薬孔に爆薬とともに装填される。装薬孔は、例えば径が数cmで深さが数m程度である。起爆操作機は、切羽面から離れた遠隔地に設置される。
【0003】
特許文献1の無線起爆システムは、操作機側の送信アンテナと受信アンテナ、起爆雷管側の送信アンテナと受信アンテナを有する。操作機側送信アンテナは、起爆操作機から無線起爆雷管へ向けて駆動用エネルギーや起爆信号を含む制御信号を無線方式で送信する。無線起爆雷管は、起爆雷管側受信アンテナを介して起爆操作機からの駆動用エネルギーや制御信号を受信する。駆動用エネルギーは無線起爆雷管の蓄電素子に蓄電される。無線起爆雷管は、起爆雷管側送信アンテナを介して制御信号に基づいた自身の動作状態等を含む応答信号を電波で送信する。操作機側受信アンテナは、無線起爆雷管から起爆操作機への応答信号を受信して充電完了であることを認識する。起爆操作機が無線起爆雷管に起爆信号を発し、無線起爆雷管が爆薬を起爆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/183662号
【文献】特開2019-80391号公報
【文献】特開2019-54560号公報
【文献】特開2013-38961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線起爆雷管は、起爆処理毎に爆破されるため、少ない部品あるいは安価な部品で構成することが望まれる。そこで低コストの無線起爆システムが従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴によると無線起爆システムは、起爆雷管と、起爆雷管に駆動用エネルギーを供給する給電装置を有する。起爆雷管は、給電装置から発信された駆動用エネルギーを受信する受信コイルと、受信した駆動用エネルギーを充電する充電器を有する。さらに起爆雷管は、充電器の充電が完了した際に充電完了信号を発する雷管側制御回路と、充電完了信号に基づいて光を発する発光機を有する。給電装置は、駆動用エネルギーを電磁誘導方式で発信する送電コイルを有する。さらに給電装置は、発光機が発する光を検知する受光機と、受光機からの信号に基づいて充電器の充電の完了を認識する給電装置側制御回路を有する。
【0007】
したがって起爆雷管は、給電装置への応答信号を光信号によって発信する。一方、従来の無線起爆雷管は、応答信号を電波で給電装置へ送信する。電波で送受信する送信・受信回路と送信・受信アンテナに比べて発光機と受光器は、シンプルに構成される。このため起爆毎に消耗する起爆雷管のコストを軽減できる。しかも電波の発信に比べて光信号の発信は、必要な消費エネルギーが小さい。そのため充電器に必要な駆動用エネルギーが小さく、短時間で充電器を充電できる。
【0008】
特許文献2~4には、無線方式で電力を供給する技術が開示されている。特許文献2~4は、無線方式で電力を送電する充電装置と、充電装置からの電力を無線で受けて蓄える電池を具備する電気機器を開示している。充電装置と電気機器は、光で信号を送発信する光通信機を有する。これら電気機器は、繰り返し充電が行われる一般の電気機器であり、消耗部品ではない。一方、本開示の無線起爆雷管は、起爆処理毎に爆破される消耗部品であり、充電の回数も基本1回である。したがって特許文献2~4の技術を無線起爆雷管に応用することは容易ではない。
【0009】
本開示の他の特徴によると送電コイルは、駆動用エネルギーのみならず、起爆準備信号を含む電波を発信する構成である。電波が受信コイルによって受信される。起爆雷管は、電波から起爆準備信号を検出する検波復調回路を有する。したがって受信コイルは、駆動用エネルギーの受信と、起爆準備信号を含む電波の受信の両方に使用される。これにより起爆雷管の受信システムがシンプルになる。例えば起爆準備信号を受信する別のアンテナを必要としない。かくして消耗部分である起爆雷管のコストをより軽減できる。
【0010】
本開示の他の特徴によると起爆信号を含む電波を発信する送信アンテナを有する。受信コイルが起爆信号を含む電波を受信する。検波復調回路が電波から起爆信号を検出する。したがって起爆雷管の受信コイルは、充電時に駆動用エネルギーと起爆準備信号を受信し、起爆時に起爆信号を受信する。検波復調回路は、充電時に起爆準備信号を検出し、起爆時に起爆信号を検出する。したがって起爆雷管は、部品の共通化によりシンプルになる。
【0011】
本開示の他の特徴によると起爆雷管は、受信コイルが外周面に沿って巻かれた雷管本体を有する。給電装置は、雷管本体が挿入されかつ受信コイルの外側に送電コイルが位置するように取付けられた筒本体を有する。したがって雷管本体が筒本体に挿入されると、受信コイルが送電コイルに近接する。これにより送電コイルから受信コイルに効率良く駆動用エネルギーが供給される。かくして充電時間を短縮できる。
【0012】
本開示の他の特徴によると起爆雷管は、発光機が設けられた雷管本体を有する。給電装置は、雷管本体が挿入されかつ発光機に対向する位置に受光機が取付けられた筒本体を有する。したがって雷管本体が筒本体に挿入されると、発光機が受光機に近接する。これにより起爆雷管が発する応答信号の通信精度が高まる。しかも応答信号の通信に必要なエネルギーが小さい。そのため充電器に必要な駆動用エネルギーが小さく、短時間で充電器を充電できる。
【0013】
本開示の他の特徴によると起爆雷管は、充電器に第1スイッチを介して電気的に接続される起爆用充電器と、起爆用充電器と第2スイッチを介して電気的に接続される点火部を有する。雷管側制御回路が第1スイッチをONにすることで充電器から起爆用充電器に電力が供給されて、起爆用充電器が充電される。雷管側制御回路が第2スイッチをONにすることで起爆用充電器から点火部に電力が供給される。
【0014】
したがって起爆直前まで起爆用充電器を充電することを避けることができる。例えば起爆雷管を装薬孔に装填する前に充電器を充電し、起爆雷管を装薬孔に装填した後に起爆用充電器を充電させることができる。これにより充電のタイミングに関わらず、起爆用充電器を起爆直前まで充電させないようにすることができる。かくして起爆雷管の誤爆をより確実に防ぐことができる。
【0015】
本開示の他の特徴は、無線起爆システムの設置方法に関する。受信コイルを備える起爆雷管を準備する。起爆雷管を筒本体に挿入して筒本体に設けられた送電コイルの内側に受信コイルを設置する。送電コイルから受信コイルに駆動用エネルギーを電磁誘導方式で発信する。起爆雷管に設けられた充電器によって駆動用エネルギーを充電する。起爆雷管に設けられた発光機が充電器の充電完了時に充電完了信号を発光する。筒本体に設けられた受光機が充電完了信号を受光する。起爆雷管が筒本体から抜かれ、起爆雷管が爆破対象に形成された装薬孔に装填される。
【0016】
したがって起爆雷管を装薬孔に装填する前に充電器を充電する。起爆雷管を筒本体に挿入することで、送電コイルと受信コイルを近接させることができる。これにより送電の効率が良くなり、充電時間を短縮できる。さらに起爆雷管は、応答信号を発光機から光信号として給電装置へ発する。これに対し、従来の無線起爆雷管は、電波で応答信号を起爆給電装置へ送信する。電波で送受信する送信・受信回路と送信・受信アンテナに比べて発光機と受光機は、シンプルに構成される。このため起爆毎に消耗する起爆雷管のコストを軽減できる。しかも光信号の発信は、電波の発信に比べて消費エネルギーが小さい。そのため充電器に必要な駆動用エネルギーを小さくでき、かつ充電時間を短縮できる。
【0017】
本開示の他の特徴によると送電コイルは、駆動用エネルギーに加えて起爆遅延時間に関する情報を含む電波を発信する。受信コイルが電波を受信する。起爆雷管に設けられた記録機が起爆遅延時間の情報を記録する。記録機が起爆遅延時間を記録した際に発光機が発光する。起爆雷管が筒本体から抜かれ、装薬孔に装填される。送信アンテナが起爆信号を発信する。受信コイルが起爆信号を受信する。起爆雷管の制御回路が起爆遅延時間に応じた時間に駆動用エネルギーを利用して点火部により爆薬を起爆させる。
【0018】
したがって起爆雷管が装薬孔に装填する前に、起爆遅延時間が記録機に記録される。そして起爆遅延時間が記録機に記録されたことが、発光機の発光によってまたは給電装置の受光機によって確認できる。このため各起爆雷管の起爆遅延時間の記録不良を防止できる。
【0019】
本開示の他の特徴によると起爆雷管が筒本体に挿入された状態で、給電装置の第2送信アンテナが起爆信号と同じ周波数の電波を発信する。起爆雷管の受信コイルが電波を受信する。受信コイルが受信した電波から検波復調回路が試験信号を検出する。試験信号に基づいて制御回路が発光機を発光させる。したがって充電時において受信コイルの受信性能の健全性を確認できる。かくして起爆信号の受信不良を予め防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】無線起爆システムの全体構成とトンネル掘削現場の概略図である。
図2図1中II部分における給電装置の拡大概略図である。
図3】切羽面の装薬孔及び装薬孔に装填された爆薬と起爆雷管を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る起爆雷管と給電装置を示す概略図である。
図5】充電処理中の起爆雷管と給電装置の一部断面図を含む概略図である。
図6】無線起爆システムのブロック図である。
図7】無線起爆システムによる一連の作業を示すフローチャートである。
図8】無線起爆システムにおける充電処理のフローチャートである。
図9】無線起爆システムにおける起爆処理のフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る無線起爆システムのブロック図である。
図11】第3実施形態に係る起爆雷管と給電装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の好ましい実施形態を図面を参照して下記に詳しく説明する。説明中の同じ参照番号は、重複する説明をしないが、同じ機能を有する同じ要素を意味する。本開示の一つの実施の形態を図1~9にしたがって説明する。無線起爆システム1は、爆薬を爆破させて例えばトンネル、海底、岩石、ビル等の構造物等を掘削または破砕するために用いられる。本実施形態では、図1に示すようにトンネル50の掘削現場を例として説明する。トンネル50は、洞床50aと洞側壁50bと洞天井50cを有する。さらにトンネル50は、切羽面51を奥部に有する。切羽面51には、上下方向及び左右方向に所定の間隔を有して複数の装薬孔52が削孔される。装薬孔52は、トンネル50の奥行き方向に延出する。各装薬孔52内には、起爆雷管10と複数の爆薬2が装填される。
【0022】
図1に示すように無線起爆システム1は、各装薬孔52内に装填される複数の起爆雷管10と、起爆雷管10を充電する給電装置(充電準備装置)30を有する。給電装置30は、ハンディタイプであり、切羽面51の近くで使用される。無線起爆システム1は、洞床50aまたはトンネル50の外部に設置される操作機39と送信アンテナ45を有する。操作機39は、例えばスイッチやキーボード、タッチパネル等を備える入力部47(図6参照)に連結される。操作機39は、ケーブル42によって中継機43に連結される。中継機43は、送信アンテナ用ケーブル44によって送信アンテナ45に連結される。したがって操作機39と送信アンテナ45は、中継機43を介して電気的に接続される。送信アンテナ45は、例えばループ状または複数のループ状素子を用いた複合ループ状である。送信アンテナ45は、特定の周波数、振幅、波長の電流が流れることで、送信アンテナ45の周囲に電場または磁場を発生させて特定の電磁波を発信する。
【0023】
図1に示すように送信アンテナ45は、切羽面51から距離L1だけ離れた位置に配置される。距離L1は、例えば100m~1000mに設定される。中継機43は、切羽面51から距離L2だけ離れた位置に配置される。距離L2は、例えば500m以上に設定される。送信アンテナ45が発する低周波の電波の届く距離が長い場合は、中継機43を省略し、送信アンテナ45が操作機39に直接接続される。操作機39は、装薬孔52から例えば100m~1000m離れた遠隔位置に配置される。中継機43から操作機39までの距離L3は、例えば100m~1000m程度である。中継機43は、内部に整合・同調回路等を有しケーブル42と負荷(送信アンテナ用ケーブル44及び送信アンテナ45)の電気的特性のミスマッチを解消することで、整合と同調を行う。
【0024】
図4に示すように起爆雷管10は、略円柱形状の雷管本体11を有する。雷管本体11の外周面の略中央部には、受信コイル12が円環状に巻き回される。受信コイル12の巻き数は、1周以上で例えば10周以上である。受信コイル12は、給電装置30または送信アンテナ45から無線方式で送られる電力(駆動用エネルギー)あるいは各種信号を受信する。受信コイル12は、電磁場に曝されることにより特定の周波数、振幅の電流を発生させる。電流は起爆雷管10の制御用、起爆用の電力として用いられる。受信コイル12は、係る特定の電流から信号を受信することもできる。電磁波の周波数は、電力を受信する際には例えば100k~500kHzであり、信号を受信する際には土中や岩盤内の透過性が良いように例えば1k~10kHzである。
【0025】
図4に示すように起爆雷管10は、雷管本体11の一方の底面に雷管点火部13を有し、他方の底面に発光素子(発光機)14を有する。雷管点火部13は、雷管本体11の長手方向に沿って延出する。雷管点火部13の周りには、爆薬2の1つが親ダイ2aとして取付けられる。発光素子14は、例えば発光ダイオード(LED)であり、電気信号を受信して特定の波長で発光する。発光素子14は、例えば波長700~2500nmの赤外線(近赤外線)または可視光を発光する。発光素子14が赤外線を発光する場合は、水分・埃・塵等の微小異物による通信への影響が低減されて安定した通信品質を確保できる。発光素子14が可視光を発光する場合は、作業者が目視して容易に確認できる。発光素子14は、電気信号の受信が完了したら指示に応じて例えば所定の時間間隔で点滅する。
【0026】
図4に示すように起爆雷管10は、雷管本体11の内部に制御部20を有する。図6に示すように制御部20は、起爆雷管10の各電気部品からの電気信号の入力に基づいて各電気部品に電気信号を出力する起爆雷管側制御回路(CPU)21を有する。受信コイル12と雷管点火部13と発光素子14は、それぞれ起爆雷管側制御回路21に電気的に接続される。制御部20は、電流の受信周波数に同調する充電・記録用同調回路22と、電流を直流電流に整流する整流素子24と、電力を蓄電する蓄電素子(充電器)26を有する。充電・記録用同調回路22は受信コイル12に接続される。充電・記録用同調回路22は、受信コイル12が電力を受信する際に発生した電流の受信周波数に同調する。整流素子24は充電・記録用同調回路22に接続される。蓄電素子26は、例えばコンデンサ等であり、整流素子24と起爆雷管側制御回路21に接続される。蓄電素子26は、整流素子24から送電された電力を蓄えることができる。蓄電素子26は、制御部20内の電子部品を駆動するための電力と、雷管点火部13が点火するための電力を蓄える。
【0027】
図6に示すように制御部20は、指令用同調回路23と検波復調回路25を有する。指令用同調回路23は受信コイル12に接続される。指令用同調回路23は、受信コイル12が信号を受信する際に発生した電流の受信周波数に同調する。検波復調回路25は充電・記録用同調回路22と指令用同調回路23に接続される。検波復調回路25は、電流の中から特定の周波数、波形からの電流の信号を検出して、起爆雷管側制御回路21に信号を発信する。制御部20は、起爆雷管側制御回路21に接続されたメモリ(記録機)27を有する。メモリには、起爆雷管10固有のシリアルナンバーが予め記録される。メモリ27には、例えば検波復調回路25で検出した起爆遅延時間を設定する信号に基づいて起爆遅延時間が記録される。
【0028】
図6に示すように制御部20は、起爆雷管側制御回路21に接続された起爆スイッチ29と抵抗測定回路28を有する。起爆スイッチ29は、蓄電素子26と雷管点火部13の電気的な接続状態を切替えることができる。起爆スイッチ29は、起爆雷管側制御回路21からオン信号が出力されない場合、蓄電素子26と雷管点火部13の電気的な接続を遮断してオフ状態にする。起爆スイッチ29は、起爆雷管側制御回路21からオン信号が出力された際に、蓄電素子26と雷管点火部13の電気的な接続をオン状態にする。抵抗測定回路28は、起爆雷管側制御回路21からの出力に基づいて蓄電素子26と雷管点火部13の間の電気抵抗を測定する。抵抗測定回路28は、測定した電気抵抗値を起爆雷管側制御回路21に出力する。
【0029】
図2に示すように給電装置30は、入力部40と表示部41と制御部34を有する。入力部40は、例えばキーボードやスイッチ、タッチパネル等を備える。表示部41は、例えばディスプレイや点灯・消灯をするランプ等を備える。入力部40と表示部41は、それぞれ制御部34と電気的に接続される。作業者は、表示部41に表示された情報を確認しながら、入力部40を操作する。表示部41は、例えば起爆雷管10の充電状態等を表示する。作業者が表示部41を確認しつつ入力部40を操作することで、制御部34が制御される。制御部34と入力部40と表示部41は、運搬可能な保護ボックス48に収容される。給電装置30は、例えば起爆雷管10を装薬孔52に装填した後に切羽面51から離れた位置に運搬される。保護ボックス48に収容することで制御部34等の電子機器を運搬時の衝撃等から保護しつつ運搬できる。
【0030】
図4に示すように給電装置30は、円筒形状の筒本体31を有する。筒本体31は、円環状に巻き回された送電コイル32を有する。送電コイル32は、筒本体31の外周面に沿って巻き回される。送電コイル32の巻き数は、1周以上で例えば10周以上である。筒本体31は、一端に円形状の開口31aを有する。開口31aは、起爆雷管10の雷管本体11を長手方向に沿って挿入可能である。開口31aは、雷管本体11の外周面に巻き回された受信コイル12の外形よりも大きい内径である。筒本体31の内方には、開口31aと略同じ内径の中空の円柱空間が形成される。
【0031】
図5に示すように筒本体31は、開口31aと対向する位置に底面31bを有する。底面31bの内面側に受光素子(受光機)33が設けられる。受光素子33は、例えばフォトダイオードであり、光が照射されることで電流を発生する。受光素子33が例えば特定の点滅の光信号を受信することで特定の符号信号の電流を発生する。受光素子33は、筒本体31の円筒中心軸31d上に配置される。底面31bは、筒本体31の内外で光を透過できる窓部31cを有する。窓部31cは、受光素子33の近傍に設けられる。
【0032】
図6に示すように制御部34は、給電装置側制御回路(CPU)35を有し、給電装置側制御回路35は、給電装置30の各電気部品からの電気信号の入力に基づいて各電気部品に電気信号を出力する。制御部34は、給電装置側制御回路35に電力を供給する電源38を有する。制御部34は、給電装置側制御回路35に接続された送電・送信回路36と受信回路37を有する。送電・送信回路36は、送電コイル32と送信アンテナ45に接続される。送電・送信回路36は、入力部40の入力に基づいて電流を出力する。送電・送信回路36は、起爆雷管10の受信コイル12に送電する電力に係る電流を送電コイル32に出力する。送電・送信回路36は、例えば起爆遅延時間の設定信号等に係る特定の周波数100k~500kHzでありかつ特定の符号信号を設定した電流を送電コイル32に出力する。送電・送信回路36は、例えば起爆信号等に係る特定の符号信号を設定した周波数1k~10kHzの電流を送信アンテナ45に出力する。
【0033】
図6に示すように制御部34は、送電・送信回路36に接続された第2送信アンテナ46を有する。送電・送信回路36は、入力部40の入力に基づいて特定の周波数、振幅、波長の電流を第2送信アンテナ46に出力する。第2送信アンテナ46は、特定の周波数、振幅、波長の電流によって例えば1k~10kHzで起爆信号と同じ周波数の電波を発信する。
【0034】
図6に示すように受信回路37は受光素子33に接続される。受信回路37は、受光素子33で発生した特定の符号信号の電流に基づいて給電装置側制御回路35に電気信号を出力する。給電装置側制御回路35は、受信回路37から出力された電気信号に基づいて表示部41に起爆雷管10の充電状態等を表示する。
【0035】
図2,5に示すように起爆雷管10は、発光素子14を有する底面を先端にして筒本体31に挿入される。この際に発光素子14は、円筒中心軸31d上または円筒中心軸31dの近傍で受光素子33と対向する。起爆雷管10は、発光素子14が受光素子33と距離L4だけ離れた位置に到達するまで。距離L4は、例えば0~1mに設定される。受光素子33は、円筒中心軸31dに対する傾斜角が0°から角度A1までの範囲の光信号を受信できる。角度A1は、例えば5~30°に設定される。受信コイル12は、送電コイル32の径方向内方において送電コイル32と径方向にオーバーラップする。
【0036】
図7~9にしたがって無線起爆システム1を利用して切羽面51を爆破して掘削する方法のフローを説明する。まず作業者は、図1を参照するように発破の準備のために切羽面51に複数の装薬孔52を削孔する(図7のステップS1)。装薬孔52は、例えば径が5cm程度、深さが2m程度に削孔される。図5を参照するように起爆雷管10の雷管本体11を給電装置30の筒本体31に挿入する(図7のステップS2)。起爆雷管10の発光素子14と給電装置30の受光素子33が所定の距離L4になるまで雷管本体11を挿入する。作業者は、入力部40を操作して起爆雷管10の充電処理を開始する(図7のステップS3)。
【0037】
図5,6を参照するように給電装置側制御回路35は、入力部40からの入力信号を受けて送電・送信回路36を介して送電コイル32に電流を出力する(図8のステップS11)。送電コイル32は、例えば周波数が100k~500kHzの高周波の磁界を発生させる(図8のステップS12)。起爆雷管10の受信コイル12は、高周波の磁界を受信して電流を発生させる(図8のステップS13)。充電・記録用同調回路22は、受信コイル12で発生した電流の周波数に同調する(図8のステップS14)。整流素子24は、受信した電流を直流電流に整流する(図8のステップS15)。
【0038】
図6を参照するように蓄電素子26は、直流電流が供給されることで電力を蓄える(図8のステップS16)。なお受信コイル12で電流が発生する前段階では、蓄電素子26の電圧は0Vである。起爆雷管側制御回路21は、蓄電素子26の電圧が所定値に達したか判定する(図8のステップS17)。蓄電素子26の電圧が所定値未満の場合、図8のステップS16に戻る。蓄電素子26の電圧が所定値に達した場合、制御部20の制御用の電力と雷管点火部13の点火用の電力が蓄電素子26に十分に蓄電されている。
【0039】
図6を参照するように起爆雷管側制御回路21は、蓄電素子26の電圧が所定値以上となり充電が完了したと判定した際に抵抗測定信号を抵抗測定回路28に送信する。抵抗測定回路28は、蓄電素子26に蓄えられた電力の一部を微弱電流として用いて雷管点火部13と起爆スイッチ29の間の電気抵抗を測定する(図8のステップS18)。起爆雷管側制御回路21は、測定された抵抗値から雷管点火部13の健全性(通電性)の良否を判定する(図8のステップS19)。起爆雷管側制御回路21は、充電完了信号、雷管点火部13の健全性の良否の信号、メモリ27に記録されたシリアルナンバーを発光素子14に送信する(図8のステップS20)。発光素子14は、受信した電気信号に基づいて特定の符号信号の光信号を発光する(図8のステップS21)。
【0040】
図6を参照するように給電装置30の受光素子33は、光信号を受信する(図8のステップS22)。受光素子33は、光信号に基づいて特定の符号信号の電流を発生する。受信回路37は、受光素子33から出力された電流に基づいて給電装置側制御回路35に充電完了信号と雷管点火部13の健全性の良否の信号を出力する。給電装置側制御回路35は、蓄電素子26の充電完了を確認し(図8のステップS23)、雷管点火部13の健全性の良否を確認する(図8のステップS24)。雷管点火部13の健全性が良好である場合、給電装置側制御回路35が起爆遅延時間の設定信号を送電コイル32に送電・送信回路36を介して送信する(図8のステップS25)。給電装置側制御回路35は、例えば受信した起爆雷管10のシリアルナンバーに応じた起爆遅延時間を送信する。雷管点火部13の健全性が良好でない場合、給電装置側制御回路35が充電処理を完了させ、表示部41に雷管点火部13の健全性が良好でない旨を表示させる。
【0041】
図5,6を参照するように送電コイル32は、例えば周波数が100k~500kHzの高周波の磁界を発生させて起爆遅延時間の設定信号を送信する(図8のステップS26)。起爆雷管10の受信コイル12は、設定信号を受信して(図8のステップS27)電磁誘導方式で特定の周波数の電流を出力する。充電・記録用同調回路22は、受信コイル12で発生した特定の周波数の電流を受信する。検波復調回路25は、受信した電流から起爆遅延時間の設定信号を検出して(図8のステップS28)、起爆雷管側制御回路21に出力する。起爆雷管側制御回路21は、メモリ27に各設定信号を送信する。メモリ27は、起爆遅延時間を記録する(図8のステップS29)。
【0042】
図5,6を参照するように起爆雷管側制御回路21は、起爆遅延時間の設定完了信号を発光素子14に送信する(図8のステップS30)。発光素子14は、受信した電気信号に基づいて特定の符号信号の光信号を発光する(図8のステップS31)。給電装置30の受光素子33は、光信号を受信する(図8のステップS32)。受光素子33は、受信した光信号に対応した符号信号の電流を発生する。受信回路37は、受光素子33から出力された電流に基づいて給電装置側制御回路35に起爆遅延時間の設定完了を通知する信号を出力する。給電装置側制御回路35は、起爆雷管10の起爆遅延時間の設定完了を確認する(図8のステップS33)。給電装置側制御回路35は、表示部41に準備完了である旨を表示させる(図8のステップS34)。
【0043】
充電処理中に給電装置30の第2送信アンテナ46を用いて、起爆信号と同じ周波数の試験信号を起爆雷管10の受信コイル12へ発信しても良い。これにより起爆雷管10を装薬孔52(図1参照)に装填する前に起爆信号の通信の健全性を確認できる。具体的には、まず第2送信アンテナ46が1k~10kHzの低周波の試験信号の電波を発信する。起爆雷管10の受信コイル12が第2送信アンテナ46から電波を受信する。検波復調回路25は、受信コイル12が受信した電波から試験信号を検出して起爆雷管側制御回路21に出力する。起爆雷管側制御回路21が試験信号に基づいて発光素子14を発光させる。受光素子33が発光素子の光信号を受信して、試験信号が受信コイル12で送受されたことを給電装置側制御回路35が確認する。
【0044】
作業者は、起爆雷管10が準備完了であることを確認した後に起爆雷管10を給電装置30の筒本体31から抜き出す(図7のステップS4)。作業者は、掘削作業に使用する複数の起爆雷管が準備完了であることを確認した後、起爆雷管10と爆薬2を装薬孔52に装填する(図7のステップS5)。図3を参照するように起爆雷管10は、雷管点火部13と連結された親ダイ2a側を手前側にして装薬孔52に装填される。親ダイ2aの手前側に複数の増ダイ2bが装填される。装薬孔52の入口は、粘土等の封止部材53で封止される。作業者は、全ての装薬孔52に起爆雷管10と爆薬2を装填した後、切羽面51から所定の距離の位置に送信アンテナ45と中継機43を設置する(図7のステップS6)。作業者は、送信アンテナ45と中継機43を設置した後、入力部40を操作して起爆雷管10に対して起爆処理を開始する(図7のステップS7)。
【0045】
図6を参照するように作業者が操作機39の入力部47を操作し、入力部47が信号を発し、信号を受信した操作機39内の制御回路が起爆信号を送信する。起爆信号は、中継機43を介して送信アンテナ45に送信される(図9のステップS41)。送信アンテナ45は、例えば周波数が1k~10kHzの低周波の電磁界を発生させて起爆信号を発信する(図9のステップS42)。装薬孔52内(図1参照)の起爆雷管10の受信コイル12が起爆信号を受信して(図9のステップS43)電磁誘導方式で特定の周波数、振幅の電流を出力する。指令用同調回路23が受信コイル12で受信した同調周波数の電流を出力する(図9のステップS44)。検波復調回路25が受信した周波数の信号から起爆信号を検出して(図9のステップS45)、起爆雷管側制御回路21に出力する。
【0046】
図6を参照するように起爆雷管側制御回路21は、起爆信号を受信した際に内部に有するタイマーを起動させる。タイマーによる時間がメモリ27に記録された起爆遅延時間に達したか否かを判定する(図9のステップS46)。判定は、タイマーのカウント時間が起爆遅延時間に達するまで繰り返される。タイマーのカウント時間が起爆遅延時間に達した場合、起爆雷管側制御回路21が起爆スイッチ29にオン信号を出力する(図9のステップS47)。起爆スイッチ29がオンし(図9のステップS48)、蓄電素子26が雷管点火部13に送電する(図9のステップS49)。雷管点火部13が点火して(図9のステップS50)、爆薬2(図3参照)が起爆する。
【0047】
上述するように無線起爆システム1は、図6に示すように起爆雷管10と、起爆雷管10に駆動用エネルギーを供給する給電装置30を有する。起爆雷管10は、給電装置30から発信された駆動用エネルギーを受信する受信コイル12と、受信した駆動用エネルギーを充電する蓄電素子26を有する。さらに起爆雷管10は、蓄電素子26の充電が完了した際に充電完了信号を発する起爆雷管側制御回路21と、充電完了信号に基づいて光を発する発光素子14を有する。給電装置30は、駆動用エネルギーを電磁誘導方式で発信する送電コイル32を有する。さらに給電装置30は、発光素子14が発する光を検知する受光素子33と、受光素子33からの信号に基づいて蓄電素子26の充電の完了を認識する給電装置側制御回路35を有する。
【0048】
したがって起爆雷管10は、給電装置30への応答信号を光信号によって発信する。一方、従来の無線起爆雷管は、応答信号を電波で給電装置へ送信する。電波で送受信する送信・受信回路と送信・受信アンテナに比べて発光素子14と受光素子33は、シンプルに構成される。このため起爆毎に消耗する起爆雷管10のコストを軽減できる。しかも電波の発信に比べて光信号の発信は、必要な消費エネルギーが小さい。そのため蓄電素子26に必要な駆動用エネルギーが小さく、短時間で蓄電素子26を充電できる。
【0049】
図6に示すように送電コイル32は、駆動用エネルギーのみならず、起爆準備信号を含む電波を発信する構成である。電波が受信コイル12によって受信される。起爆雷管10は、電波から起爆準備信号を検出する検波復調回路25を有する。したがって受信コイル12は、駆動用エネルギーの受信と、起爆準備信号を含む電波の受信の両方に使用される。これにより起爆雷管10の受信システムがシンプルになる。例えば起爆雷管10に光信号を受信する受光機を設ける必要がない。かくして消耗部分である起爆雷管10のコストをより軽減できる。
【0050】
図1,6に示すように無線起爆システム1は、起爆信号を含む電波を発信する操作機39を有する。受信コイル12が起爆信号を含む電波を受信する。検波復調回路25が電波から起爆信号を検出する。したがって起爆雷管10の受信コイル12は、充電時に駆動用エネルギーと起爆準備信号を受信し、起爆時に起爆信号を受信する。検波復調回路25は、充電時に起爆準備信号を検出し、起爆時に起爆信号を検出する。したがって起爆雷管10は、部品の共通化によりシンプルになる。
【0051】
図5に示すように起爆雷管10は、受信コイル12が外周面に沿って巻かれた雷管本体11を有する。給電装置30は、雷管本体11が挿入されかつ受信コイル12の外側に送電コイル32が位置するように取付けられた筒本体31を有する。したがって雷管本体11が筒本体31に挿入されると、受信コイル12が送電コイル32に近接する。これにより送電コイル32から受信コイル12に効率良く駆動用エネルギーが供給される。かくして充電時間を短縮できる。
【0052】
図5に示すように起爆雷管10は、発光素子14が設けられた雷管本体11を有する。給電装置30は、雷管本体11が挿入されかつ発光素子14に対向する位置に受光素子33が取付けられた筒本体31を有する。したがって雷管本体11が筒本体31に挿入されると、発光素子14が受光素子33に近接する。これにより起爆雷管10が発する応答信号の通信精度が高まる。しかも応答信号の通信に必要なエネルギーが小さい。そのため蓄電素子26に必要な駆動用エネルギーが小さく、短時間で蓄電素子26を充電できる。
【0053】
図5,6に示すように受信コイル12を備える起爆雷管10を準備する。起爆雷管10を筒本体31に挿入して筒本体31に設けられた送電コイル32の内側に受信コイル12を設置する。送電コイル32から受信コイル12に駆動用エネルギーを電磁誘導方式で発信する。起爆雷管10に設けられた蓄電素子26によって駆動用エネルギーを充電する。起爆雷管10に設けられた発光素子14が蓄電素子26の充電完了時に充電完了信号を発光する。筒本体31に設けられた受光素子33が充電完了信号を受光する。起爆雷管10が筒本体31から抜かれ、起爆雷管10が爆破対象に形成された装薬孔52(図1参照)に装填される。
【0054】
したがって起爆雷管10を装薬孔52に装填する前に蓄電素子26を充電させる。起爆雷管10を筒本体31に挿入することで、送電コイル32と受信コイル12を近接させることができる。これにより送電の効率が良くなり、充電時間を短縮できる。さらに起爆雷管10は、応答信号を発光素子14から光信号として給電装置30へ発する。これに対して、従来の無線起爆雷管は、電波で応答信号を起爆給電装置へ送信する。電波で送受信する送信・受信回路と送信・受信アンテナに比べて発光素子14と受光素子33は、シンプルに構成される。このため起爆毎に消耗する起爆雷管10のコストを軽減できる。しかも光信号の発信は、電波の発信に比べて消費エネルギーが小さい。そのため蓄電素子26に必要な駆動用エネルギーを小さくでき、かつ充電時間を短縮できる。
【0055】
図6に示すように送電コイル32は、駆動用エネルギーに加えて起爆遅延時間に関する情報を含む電波を発信する。受信コイル12が電波を受信する。起爆雷管10に設けられたメモリ27が起爆遅延時間の情報を記録する。メモリ27が起爆遅延時間を記録した際に発光素子14が発光する。起爆雷管10が筒本体31から抜かれ、装薬孔52(図1参照)に装填される。送信アンテナ45が起爆信号を発信する。受信コイル12が起爆信号を受信する。起爆雷管側制御回路21が起爆遅延時間に応じた時間に駆動用エネルギーを利用して雷管点火部13により爆薬2(図3参照)を起爆させる。
【0056】
したがって起爆雷管10が装薬孔52に装填する前に、起爆遅延時間がメモリ27に記録される。そして起爆遅延時間がメモリ27に記録されたことが、発光素子14の発光によってまたは給電装置30の受光素子33によって確認できる。このため各起爆雷管10の起爆遅延時間の記録不良を防止できる。
【0057】
図6に示すように起爆雷管10が筒本体31に挿入された状態で、給電装置30の第2送信アンテナ46が起爆信号と同じ周波数の電波を発信する。起爆雷管10の受信コイル12が電波を受信する。受信コイル12が受信した電波から検波復調回路25が試験信号を検出する。試験信号に基づいて起爆雷管側制御回路21が発光素子14を発光させる。したがって充電時において受信コイル12の受信性能の健全性を確認できる。かくして起爆信号の受信不良を予め防止できる。
【0058】
本開示の他の実施の形態を図10にしたがって説明する。第2実施形態の無線起爆システム60は、図5に示す無線起爆システム1の起爆雷管10に代えて図10に示す起爆雷管61を有する。起爆雷管61の制御部62は、蓄電素子26(図5参照)に代えて蓄電素子(メイン充電器)63と起爆用蓄電素子(起爆用充電器)64を有する。蓄電素子63は、整流素子24と起爆雷管側制御回路21に接続される。蓄電素子63は、起爆スイッチ(第2スイッチ)29に直接的に接続されず、起爆充電スイッチ65と起爆用蓄電素子64を介して接続される。起爆用蓄電素子64は、例えば蓄電できる容量が蓄電素子63よりも小さいコンデンサである。起爆用蓄電素子64は、起爆雷管側制御回路21と起爆スイッチ29に接続される。起爆充電スイッチ(第1スイッチ)65は、蓄電素子63と起爆用蓄電素子64の接続のオンオフを切替える。起爆充電スイッチ65は、起爆雷管側制御回路21から信号の出力がない場合オフである。
【0059】
図10に示す蓄電素子63は、起爆雷管61の受信コイル12が給電装置30(図6参照)の送電コイル32から受信した電力を蓄電する。受信コイル12が送信アンテナ45(図1,6参照)から起爆信号を受信した場合、起爆雷管側制御回路21が起爆充電スイッチ65にオン信号を出力する。起爆充電スイッチ65がオンし、蓄電素子63から起爆用蓄電素子64に電力が供給される。起爆用蓄電素子64は、雷管点火部13を点火する電力を蓄電する。起爆雷管側制御回路21は、メモリ27に記録された起爆遅延時間で起爆スイッチ29にオン信号を出力する。起爆スイッチ29がオンし、起爆用蓄電素子64から雷管点火部13に電力が供給される。雷管点火部13が点火して爆薬2(図3参照)が起爆する。
【0060】
上述するように起爆雷管61は、図10に示すように蓄電素子63に起爆充電スイッチ65を介して電気的に接続される起爆用蓄電素子64と、起爆用蓄電素子64と起爆スイッチ29を介して電気的に接続される雷管点火部13を有する。起爆雷管側制御回路21が起爆充電スイッチ65をONにすることで蓄電素子63から起爆用蓄電素子64に電力が供給されて、起爆用蓄電素子64が充電される。起爆雷管側制御回路21が起爆スイッチ29をONにすることで起爆用蓄電素子64から雷管点火部13に電力が供給される。
【0061】
したがって起爆直前まで起爆用蓄電素子64を充電することを避けることができる。例えば起爆雷管61を装薬孔52(図1参照)に装填する前に蓄電素子63を充電し、起爆雷管61を装薬孔52に装填した後に起爆用蓄電素子64を充電させることができる。これにより充電のタイミングに関わらず、起爆用蓄電素子64を起爆直前まで充電させないようにすることができる。かくして起爆雷管61の誤爆をより確実に防ぐことができる。
【0062】
本開示の他の実施の形態を図11にしたがって説明する。第3実施形態の無線起爆システム70は、図4に示す無線起爆システム1の給電装置30に代えて図11に示す給電装置71を有する。給電装置71は、複数の起爆雷管10を同時に収容できる大きさの例えば円筒形状の筒本体72を有する。筒本体72は、円環状に巻き回された送電コイル73を有する。送電コイル73は、筒本体72の外周面に沿って1周以上巻き回され、例えば10周以上巻き回される。筒本体72は、一端側に円形状の開口72aを有する。開口72aは、複数の起爆雷管10の雷管本体11を長手方向に沿って挿入可能である。筒本体72の内方には、開口72aと略同じ内径の中空の円柱空間が形成される。筒本体72は、例えば挿入された各起爆雷管10を区画する仕切り片等を有していても良い。
【0063】
図11に示すように筒本体72は、開口72aと対向する位置に底面72bを有する。底面72bの内面側に受光素子(受光機)74が設けられる。受光素子74は、例えばフォトダイオードであり、光が照射されることで電流を発生する。受光素子74は、各起爆雷管10の発光素子14の照射範囲となる位置に配置される。受光素子74は、底面72bに複数設けられても良い。例えば筒本体72に挿入された複数の起爆雷管10の発光素子14に対応して複数の受光素子74が筒本体72に設けられても良い。
【0064】
図11に示す送電・送信回路36は、各起爆雷管10のメモリ27(図6参照)に記録されたシリアルナンバーに基づいて時分割で起爆遅延時間の設定信号を送電コイル73に出力する。送電コイル73は、各起爆雷管10の受信コイル12(図6参照)に所定の時間間隔で起爆遅延時間の設定信号を送信する。各起爆雷管10の起爆雷管側制御回路21(図6参照)は、設定完了信号をシリアルナンバーに基づいた時分割の時間間隔で発光素子14に出力する。これにより複数の起爆雷管10の発光素子14が同時ではなく所定の時間間隔を開けてそれぞれ発光する。これにより複数の発光素子14から受光素子74への通信の誤作動を防ぐことができる。
【0065】
本発明の形態を上記構造を参照して説明したが、本発明の目的を逸脱せずに多くの交代、改良、変更が可能であることは当業者であれば明らかである。したがって本発明の形態は、添付された請求項の精神と目的を逸脱しない全ての交代、改良、変更を含み得る。例えば本発明の形態は、前記特別な構造に限定されず、下記のように変更が可能である。
【0066】
例えば給電装置30は、上述するように切羽面51の近くまで持ち運びができるハンディタイプである。これに代えて操作機39の近くに設置される設置タイプの給電装置30に変更しても良い。例えば無線起爆システム1は、上述するようにトンネル50の掘削作業に使用できる。これに代えて、例えばビル等の構造物の破砕作業や海底の掘削作業に適用しても良い。例えば給電装置30の筒本体31は、上述するように窓部31cを有する円筒形状である。これに代えて窓部を有さない筒本体31に変更しても良い。これに代えて、例えば箱形の筒本体31に変更しても良い。例えば発光素子14は、蓄電素子26の充電完了の光信号と起爆遅延時間の設定完了の光信号を発光する。これに代えて一方の光信号のみを発光する構成としても良く、例えば起爆雷管10が各信号を発光する複数の発光素子14を有していても良い。
【0067】
上記実施の形態の発光素子14は、充電完了信号等に基づいて所定の時間間隔で点滅する。これに代えて発光素子14は、信号内容に応じて色の異なる光を発する、あるいは異なる周波数の光を発しても良い。あるいは起爆雷管10毎にその発光素子14が色の異なる光を発する、あるいは異なる周波数の光を発しても良い。上記実施の形態の起爆雷管10は、受信コイル12によって信号を受信している。これに代えて起爆雷管10が受信コイル12の他に、起爆信号を受信する受信アンテナを別個に有していても良い。
【0068】
上記実施の形態では、起爆雷管10がトンネル等の暗い場所で充電され、発光素子14が光を発信する。そのため発光素子14が可視光を発信する場合、太陽下の明るい場所に比べて、容易に発光素子14の発信する光を目視できる。上記実施の形態では、遅延時間が給電装置30から起爆雷管10に発信され、起爆雷管10のメモリ27に記録される。これに代えて遅延時間が起爆雷管10を充電する前においてメモリ27に記録されていても良い。
【0069】
上記実施の形態では、給電装置30が起爆信号と同じ周波数の試験信号を発信する第2送信アンテナ46を有する。これに代えて給電装置30が第2送信アンテナ46を有さず、試験信号を発信しない形態であっても良い。上記実施の形態の発光素子14は、雷管本体11の先端に設けられ、受光素子33が筒本体31の底面に設けられている。これに代えて発光素子14が雷管本体11の外周面に設けられ、受光素子33が筒本体31の内周面に設けられていても良い。この場合、雷管本体11が筒本体31に挿入された際に、発光素子14と受光素子33が対面する。
【符号の説明】
【0070】
1…無線起爆システム
2…爆薬、2a…親ダイ、2b…増ダイ
10…起爆雷管
11…雷管本体
12…受信コイル
13…雷管点火部
14…発光素子(発光機)
20…制御部
21…起爆雷管側制御回路
22…充電・記録用同調回路
23…指令用同調回路
24…整流素子
25…検波復調回路
26…蓄電素子(充電器)
27…メモリ(記録機)
28…抵抗測定回路
29…起爆スイッチ(第2スイッチ)
30…給電装置
31…筒本体、31a…開口、31b…底面、31c…窓部、31d…円筒中心軸
32…送電コイル
33…受光素子(受光機)
34…制御部
35…給電装置側制御回路
36…送電・送信回路
37…受信回路
38…電源
39…操作機
40…入力部
41…表示部
42…ケーブル
43…中継機
44…送信アンテナ用ケーブル
45…送信アンテナ
46…第2送信アンテナ
47…入力部
48…保護ボックス
50…トンネル、50a…洞床、50b…洞側壁、50c…洞天井
51…切羽面
52…装薬孔
53…封止部材
60…無線起爆システム
61…起爆雷管
62…制御部
63…蓄電素子(充電器)
64…起爆用蓄電素子(起爆用充電器)
65…起爆充電スイッチ(第1スイッチ)
70…無線起爆システム
71…給電装置
72…筒本体、72a…開口、72b…底面
73…送電コイル
74…受光素子(受光機)
L1、L2、L3、L4…距離
A1…角度
図1
図2
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図8
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図11