(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2019221316
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 大敬
(72)【発明者】
【氏名】東原 昭太
【審査官】五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202572(JP,A)
【文献】特開2017-132387(JP,A)
【文献】特開2018-193007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートをスライド可能に支持するスライド装置であって、
乗物のフロアに固定される固定レールと、
乗物用シートに取り付けられると共に、前記固定レールに対しスライドする可動レールと、
前記可動レールに取り付けられると共に、前記可動レールを前記固定レールに対しスライドさせる駆動ユニットと、
前記可動レールに取り付けられると共に、前記可動レールの前記固定レールに対するスライドを規制するロック状態と、前記スライドを規制しない解除状態とに変位するロックユニットと、
前記ロックユニットを前記解除状態に変位させた後に前記駆動ユニットを第1出力で駆動させるスライド開始処理と、前記ロックユニットを前記ロック状態に変位させると共に前記駆動ユニットの駆動を止めるスライド停止処理とを実行するように構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記スライド停止処理において、前記駆動ユニットの出力を前記第1出力から前記第1出力よりも小さい第2出力まで連続的に下げると共に、前記駆動ユニットの駆動を止める前に前記ロックユニットを前記
ロック状態に向けて変位させるように構成される、スライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド装置であって、
前記固定レールは、前記可動レールのスライド方向に並んで配置された複数のロック用凹部を有し、
前記ロックユニットは、前記複数のロック用凹部のいずれか1つに嵌まり込
むことで前記スライドを規制する係合位置と、前記複数のロック用凹部から取り出され
ることで前記スライドを規制しない離間位置とに移動可能なピンを有する、スライド装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスライド装置であって、
前記制御部は、前記駆動ユニットの出力が前記第2出力に低下すると同時に、又は前記駆動ユニットの出力が前記第2出力に低下した後に、前記ロックユニットの変位を開始させるように構成される、スライド装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のスライド装置であって、
前記制御部は、前記駆動ユニットの出力が前記第2出力に向けて低下している途中で、前記ロックユニットの変位を開始させるように構成される、スライド装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスライド装置であって、
前記制御部は、前記可動レールの現在位置と入力された目標位置との距離から前記第1出力を決定し、前記スライド開始処理及び前記スライド停止処理によって前記可動レールを前記目標位置までスライドさせるように構成される、スライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に設置される乗物用シートにおいて、シートクッションを電動によって前後方向にスライドさせるためのスライド機構が公知である。電動式のスライド装置では、スライドを規制するロックを解除した状態で、可動レールを固定レールに対してスライドさせる。
【0003】
上述のスライド装置において、スライドの停止時に駆動アクチュエータの出力を徐々に低下させるスローストップ制御が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のスライド装置において、ロック機構の動作開始から、ロックの完了までには一定の時間が必要である。そのため、駆動アクチュエータが完全に停止してからロック機構が動作を開始すると、スローストップ制御によるスライド速度の低下と相まって、スライド処理の実行時間が長くなり、ユーザビリティが低下する。
【0006】
本開示の一局面は、スローストップ制御におけるスライド処理の実行時間を短縮できるスライド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、乗物用シート(10)をスライド可能に支持するスライド装置(1)である。スライド装置(1)は、乗物のフロアに固定される固定レール(2)と、乗物用シート(10)に取り付けられると共に、固定レール(2)に対しスライドする可動レール(3)と、可動レール(3)に取り付けられると共に、可動レール(3)を固定レール(2)に対しスライドさせる駆動ユニット(4)と、可動レール(3)に取り付けられると共に、可動レール(3)の固定レール(2)に対するスライドを規制するロック状態と、スライドを規制しない解除状態とに変位するロックユニット(5)と、ロックユニット(5)を解除状態に変位させた後に駆動ユニット(4)を第1出力で駆動させるスライド開始処理と、ロックユニット(5)をロック状態に変位させると共に駆動ユニット(4)の駆動を止めるスライド停止処理とを実行するように構成された制御部(6)と、を備える。
【0008】
制御部(6)は、スライド停止処理において、駆動ユニット(4)の出力を第1出力から第1出力よりも小さい第2出力まで連続的に下げると共に、駆動ユニット(4)の駆動を止める前にロックユニット(5)をロック状態に向けて変位させるように構成される。
【0009】
このような構成によれば、スライド停止時に、駆動ユニット(4)を駆動させながらロックユニット(5)をロック状態に向けて変位させることで、スローストップ制御におけるスライド処理の実行時間を短縮できる。
【0010】
本開示の一態様では、固定レール(2)は、可動レール(3)のスライド方向に並んで配置された複数のロック用凹部(25)を有してもよい。ロックユニット(5)は、複数のロック用凹部(25)のいずれか1つに嵌まり込んだ係合位置と、複数のロック用凹部(25)から取り出された離間位置とに移動可能なピン(51)を有してもよい。このような構成によれば、スライドしている可動レール(3)がロックされた時の衝撃を低減することができる。また、駆動ユニット(4)の出力が第2出力まで低下した状態でピン(51)がロック用凹部(25)に嵌まり込むため、ピン(51)とロック用凹部(25)との位置ずれによるピン(51)及びロック用凹部(25)の破損、ロック不良等の不具合が抑制される。
【0011】
本開示の一態様では、制御部(6)は、駆動ユニット(4)の出力が第2出力に低下すると同時に、又は駆動ユニット(4)の出力が第2出力に低下した後に、ロックユニット(5)の変位を開始させるように構成されてもよい。このような構成によれば、駆動ユニット(4)の出力が第2出力に低下した後で可動レール(3)がロックされるため、スライドしている可動レール(3)がロックされた時の衝撃を低減することができる。
【0012】
本開示の一態様では、制御部(6)は、駆動ユニット(4)の出力が第2出力に向けて低下している途中で、ロックユニット(5)の変位を開始させるように構成されてもよい。このような構成によれば、駆動ユニット(4)の出力が第2出力に低下してからロックユニット(5)のロック状態への変位完了までの時間が短縮される。そのため、スライド処理の実行時間の短縮が促進される。
【0013】
本開示の一態様では、制御部(6)は、可動レール(3)の現在位置と入力された目標位置との距離から第1出力を決定し、スライド開始処理及びスライド停止処理によって可動レール(3)を目標位置までスライドさせるように構成されてもよい。このような構成によれば、駆動ユニット(4)の出力が第2出力に低下する前に可動レール(3)がロックされることが抑制できる。
【0014】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態における乗物用シート及びスライド装置の模式的な斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線での模式的な切断部端面図である。
【
図4】
図4A-4Dは、
図2のスライド装置におけるピンとロック用凹部との位置関係を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図2のスライド装置における制御部による制御を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート10は、シートクッション11と、シートバック12と、クッションフレーム13と、バックフレーム14と、第1スライド装置1と、第2スライド装置1Aとを備える。
【0017】
シートクッション11は、着席者の臀部等を支持する。シートバック12は、着席者の背部を支持する。クッションフレーム13は、シートクッション11を支持する部材である。バックフレーム14は、シートバック12を支持する部材である。
【0018】
本実施形態の乗物用シート10は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート10を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0019】
第1スライド装置1及び第2スライド装置1Aは、それぞれ、乗物用シート10をシート前後方向にスライド可能に支持している。第1スライド装置1及び第2スライド装置1Aは、シート幅方向に互いに離間して、クッションフレーム13の下側に取り付けられている。
【0020】
第1スライド装置1と第2スライド装置1Aとは、基本的な構造が同じであるため、以下では、第1スライド装置(以下、単に「スライド装置」ともいう。)1の構造について説明する。
【0021】
スライド装置1は、
図2に示すように、固定レール2と、可動レール3と、駆動ユニット4と、ロックユニット5と、制御部6とを備える。
【0022】
<固定レール>
固定レール2は、いわゆるロアレールであり、乗物用シート10が配置された乗物のフロアに対して、直接又は間接的に固定されている。
【0023】
固定レール2は、シート前後方向(つまり可動レール3のスライド方向)に延伸している。固定レール2は、底壁21と、第1側壁22と、第2側壁23と、複数のロック用凹部25とを有する。
【0024】
底壁21は、上下方向と直交する壁面を有し、スライド方向に延伸している。第1側壁22及び第2側壁23は、底壁21のレール幅方向(つまりスライド方向及び上下方向の双方と直交する方向)の両側に配置され、レール幅方向に向かい合っている。
【0025】
第1側壁22及び第2側壁23は、それぞれ、底壁21のレール幅方向両端から上方に立ち上がり、さらに固定レール2のレール幅方向の内側かつ下方に向かってU字状に湾曲している。つまり、第1側壁22及び第2側壁23は、下方が開放され、かつスライド方向に延伸する溝状の空間を底壁21の上方にそれぞれ形成している。第1側壁22及び第2側壁23は、それぞれ、スライド方向に延伸すると共に、可動レール3と少なくとも一部が対向している。
【0026】
複数のロック用凹部25は、第2側壁23の可動レール3と対向する対向部23Aに、スライド方向に並んで配置されている。各ロック用凹部25は、対向部23Aに設けられた開口、又は右方向に凹んだ溝によって構成される。本実施形態では、複数のロック用凹部25のスライド方向の長さ、間隔、及び上下方向の位置は全て等しい。
【0027】
<可動レール>
可動レール3は、いわゆるアッパレールであり、乗物用シート10に図示しないブラケット等によって取り付けられている。
【0028】
可動レール3は、固定レール2に対しシート前後方向(つまり固定レール2の延伸方向)にスライドする。可動レール3は、固定レール2と共に、電動式のスライド機構を構成している。
【0029】
可動レール3は、第1側壁32と、第2側壁33とを有する。第1側壁32及び第2側壁33は、レール幅方向に離間して配置されており、レール幅方向において互いに対向している。
【0030】
図3に示すように、第1側壁32の下端部32Aは、レール幅方向外側(つまり第2側壁33から離間する方向)にU字状に湾曲している。第1側壁32の下端部32Aは、固定レール2の第1側壁22の対向部22Aと離間しつつ、レール幅方向において対向部22Aに外側から重なっている。
【0031】
第2側壁33の下端部33Aは、レール幅方向外側(つまり第1側壁32から離間する方向)にU字状に湾曲している。第2側壁33の下端部33Aは、固定レール2の第2側壁23の対向部23Aと離間しつつ、レール幅方向において対向部23Aに外側から重なっている。
【0032】
<駆動ユニット>
図2に示す駆動ユニット4は、送り機構41と、駆動アクチュエータ42とを有する。駆動ユニット4は、可動レール3に取り付けられている。
【0033】
駆動ユニット4は、駆動アクチュエータ42の動力によって送り機構41が有する回転素子を回転させることで、可動レール3を固定レール2に対しスライドさせる。
【0034】
送り機構41の回転素子は、固定レール2に当接しながら回転することで、固定レール2に対し可動レール3をスライド方向に送る。回転素子は、例えば固定レール2に設けられた複数の凹部への係合と離脱とを繰り返すラックアンドピニオンにおけるピニオンとして機能する。また、回転素子は、固定レール2との間の摩擦力によって可動レール3をスライドさせるように構成されてもよい。
【0035】
駆動ユニット4は、回転素子の回転方向を切り替えることで、可動レール3のスライド方向を切り替える。駆動アクチュエータ42は、電動式、空気式及び油圧式のいずれであってもよい。
【0036】
<ロックユニット>
図3に示すロックユニット5は、可動レール3の固定レール2に対するスライドを規制するロック状態と、可動レール3のスライドを規制しない解除状態とに変位可能である。
【0037】
ロックユニット5は、駆動ユニット4と共に、可動レール3に取り付けられている。また、ロックユニット5は、ピン51と、ロックアクチュエータ52と、連結部53とを有する。
【0038】
ピン51は、
図4A及び
図4Dに示される複数のロック用凹部25のいずれか1つに嵌まり込んだ係合位置と、
図4Bに示される複数のロック用凹部25から取り出された離間位置とに移動可能である。
【0039】
ピン51は、ロックアクチュエータ52に連結された連結部53に固定され、左右方向に移動可能に構成されている。また、ピン51は、図示しない弾性体(例えばトーションバネ)によって、右方向に(つまり係合位置に向かって)付勢されている。
【0040】
ロックアクチュエータ52は、ピン51を係合位置と離間位置との間で左右方向に移動させる。ロックアクチュエータ52は、電動式、空気式及び油圧式のいずれであってもよい。
【0041】
具体的には、ロックアクチュエータ52は、解除方向及びロック方向の2方向に駆動する。ロックアクチュエータ52は、解除方向への駆動によって、ピン51を離間位置に移動させると共に離間位置に保持する。また、ロックアクチュエータ52は、ロック方向への駆動によって、ピン51の離間位置への保持を解除すると共に弾性体に付勢力を与え、ピン51を付勢力によって係合位置に移動させる。
【0042】
<制御部>
制御部6は、着席者によるスライド操作に基づいて駆動ユニット4及びロックユニット5を制御することで、可動レール3を前方又は後方にスライドさせるように構成されている。なお、スライド操作は、例えば、乗物又は乗物用シート10に取り付けられた物理的又は電子的なスイッチ、レバー等によって行われる。
【0043】
制御部6は、例えば、マイクロプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるマイクロコンピュータにより構成される。制御部6は、予め記憶されたプログラムを実行することで、駆動ユニット4及びロックユニット5を制御する。なお、制御部6は、乗物に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0044】
図5Aに示すように、制御部6は、時刻T1においてスライド操作の入力(
図5中の「ON」)を受けると、ロックユニット5を解除状態に変位させた後に駆動ユニット4を第1出力D1で駆動させるスライド開始処理を実行する。
【0045】
具体的には、制御部6は、スライド操作の入力後、ロックアクチュエータ52を解除方向Rに駆動させる。ロックアクチュエータ52の解除方向Rの駆動によって、ピン51は係合位置E(
図4A参照)から、離間位置D(
図4B参照)に向かって移動する。
【0046】
時刻T2においてピン51が離間位置Dに移動すると、制御部6は、ロックアクチュエータ52の駆動を止めると共に、駆動アクチュエータ42を第1出力D1で駆動させる。これにより、可動レール3がピン51と共にスライドする。なお、ピン51の位置は、例えば、リミットスイッチによって検知できる。また、ピン51の位置は、各アクチュエータの回転角又はパルス数によって推測されてもよい。
【0047】
可動レール3のスライド開始後、制御部6は、時刻T3においてスライド操作の解除(
図5中の「OFF」)を受けると、ロックユニット5をロック状態に変位させると共に駆動ユニット4の駆動を止めるスライド停止処理を実行する。
【0048】
具体的には、制御部6は、スライド操作の入力が解除されると、駆動アクチュエータ42の出力を第1出力D1から、第1出力D1よりも小さい第2出力D2まで連続的に下げる。本実施形態では、制御部6は、駆動アクチュエータ42の出力を線形的(つまり一次関数的)に低下させる。ただし、制御部6は、駆動アクチュエータ42の出力を非線形的に低下させてもよい。
【0049】
制御部6は、時刻T4において駆動アクチュエータ42の出力が第2出力D2まで低下すると同時に、ロックアクチュエータ52をロック方向Lに駆動させる。これにより、ロックユニット5が変位を開始する。なお、制御部6は、駆動アクチュエータ42の出力が第2出力D2に低下した後に、ロックユニット5の変位を開始させてもよい。
【0050】
ロックアクチュエータ52のロック方向Lの駆動によって、ピン51は離間位置Dから、係合位置Eに向かって移動する。時刻T5において、ピン51は、固定レール2の第2側壁23(具体的には対向部23A)に押し当てられる中間位置I(
図4C参照)に移動する。
【0051】
このように、制御部6は、スライド操作の解除を受けると、駆動ユニット4によって可動レール3をスライドさせつつ、ピン51を離間位置Dから係合位置Eに向けて移動させる。
【0052】
可動レール3のスライドに伴って、時刻T6において中間位置Iにあるピン51が複数のロック用凹部25の1つと左右方向に重なる位置に到達すると、ピン51は、弾性体の付勢によってロック用凹部25に進入し、係合位置E(
図4D参照)に移動する。これにより、可動レール3の固定レール2に対するスライドが規制され、可動レール3のスライドが終了する。
【0053】
ロックアクチュエータ52は、ピン51が係合位置Eに移動する時刻T6まで駆動し続ける。なお、ロックアクチュエータ52は、ピン51を係合位置Eへ付勢する弾性体に、ピン51を係合位置Eに移動させる付勢力が付与された時点で停止してもよい。
【0054】
ピン51が係合位置Eに移動した後、制御部6は、駆動アクチュエータ42を止める。駆動アクチュエータ42の停止は、例えば、駆動アクチュエータ42の負荷が閾値を超えた場合、ロックアクチュエータ52の停止から一定時間が経過した場合等に行われる。また、制御部6は、ピン51が係合位置Eに移動したことを検知して駆動ユニット4の駆動を止めてもよい。駆動アクチュエータ42の停止は、ピン51の係合位置Eへの到達と同時でなくてもよい。
【0055】
このように、制御部6は、スライド操作の解除を受けると、駆動ユニット4の出力を第1出力D1から第2出力D2まで連続的に下げると共に、駆動ユニット4の駆動を止める前にロックユニット5をロック状態に向けて変位させる。
【0056】
また、制御部6は、上述したスライド操作の入力に合わせてスライドを行う手動スライド処理に加えて、
図6に示すように、可動レール3の目標位置P2の入力をユーザから受けて、現在位置P0から目標位置P2にまで可動レール3をスライドさせる自動スライド処理を実行する。
【0057】
自動スライド処理では、時刻T1に目標位置P2の入力を受けた後、制御部6は、
図5Aと同様のスライド開始処理及びスライド停止処理を行う。ただし、自動スライド処理では、目標位置P2から第1距離M1手前にある減速位置P1に可動レール3が到達した時刻T3において、駆動アクチュエータ42の出力の低下が開始される。
【0058】
第1距離M1は、駆動ユニット4が出力の低下を開始してから止まるまでの間に、可動レール3がスライドする距離である。第1距離M1は、第1出力D1が大きいほど長くなる。
【0059】
自動スライド処理では、制御部6は、可動レール3の現在位置P0と目標位置P2との第2距離M2から第1出力D1の大きさを決定する。第2距離M2が大きい場合は、スライド時間を短縮するために、制御部6は、第1出力D1を大きくする。
【0060】
一方、第2距離M2が小さい場合、第1出力D1を大きくすると第1距離M1が十分に確保できず、駆動ユニット4の出力が第2出力D2に低下する前に目標位置P2に到達するおそれがある。そのため、制御部6は、第1出力D1を小さくする。
【0061】
このように、制御部6は、第2距離M2が大きいほど、第1出力D1を大きく設定し、第2距離M2が小さいほど、第1出力D1を小さく設定する。なお、制御部6は、第1出力D1に上限を設け、第2距離M2が閾値以上の場合に第1出力D1が最大値となるように設定してもよい。
【0062】
また、
図5Aの手動スライド処理においてスライド中の可動レール3がスライド範囲の端点に近づいた場合は、
図6と同様に、制御部6は、端点から第1距離M1手間の位置に可動レール3が到達した時点においてスライド停止処理を強制実行する。また、制御部6は、手動スライド処理において、スライド操作が入力されたときの可動レール3の現在位置と端点との距離に応じて第1出力D1を決定してもよい。
【0063】
なお、
図5A及び
図6を用いて説明した制御部6による駆動ユニット4及びロックユニット5の制御は、前方へのスライド及び後方へのスライドで共通である。ただし、駆動ユニット4の駆動方向は、スライド方向に応じて適宜設定される。
【0064】
また、制御部6は、第1スライド装置1と第2スライド装置1Aとで共通化されていてもよい。つまり、制御部6は、2つの可動レールのスライド開始処理及びスライド停止処理を同期して実行してもよい。
【0065】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)スライド停止時に、駆動ユニット4を駆動させながらロックユニット5をロック状態に向けて変位させることで、スローストップ制御におけるスライド処理の実行時間を短縮できる。
【0066】
(1b)ピン51のロック用凹部25への係合によりロックを行うことで、スライドしている可動レール3がロックされた時の衝撃を低減することができる。また、駆動ユニット4の出力が第2出力まで低下した状態でピン51がロック用凹部25に嵌まり込むため、ピン51とロック用凹部25との位置ずれによるピン51及びロック用凹部25の破損、ロック不良等の不具合が抑制される。
【0067】
(1c)駆動ユニット4の出力が第2出力に低下すると同時に、又は駆動ユニット4の出力が第2出力に低下した後に、ロックユニット5の変位を開始することで、駆動ユニット4の出力が第2出力に低下した後で可動レール3がロックされる。そのため、スライドしている可動レール3がロックされた時の衝撃を低減することができる。
【0068】
(1d)可動レール3の現在位置と入力された目標位置との距離から第1出力を決定することで、駆動ユニット4の出力が第2出力に低下する前に可動レール3がロックされることが抑制できる。
【0069】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0070】
(2a)上記実施形態のスライド装置1において、ロックユニット5は、必ずしもピン51を有しなくてもよい。ロックユニット5は、例えば、ディスク、ドラム等のブレーキ部材の固定レール2への押し当て(つまり摩擦)により可動レール3のスライドを規制してもよい。
【0071】
(2b)上記実施形態のスライド装置1において、制御部6は、
図5Bに示すように、駆動ユニット4の出力が第2出力D2に向けて低下している途中(つまり時刻T4)で、ロックユニット5の変位を開始させてもよい。
図5Bでは、時刻T5において駆動ユニット4の出力が第2出力D2まで低下した後、時刻T6でピン51が中間位置Iに到達する。その後、時刻T7でピン51が係合位置Eに移動する。
【0072】
これにより、駆動ユニット4の出力が第2出力に低下してからロックユニット5のロック状態への変位完了までの時間(つまり時刻T3から時刻T7までの時間)が、
図5Aの時刻T3から時刻T6までの時間よりも短縮される。そのため、スライド処理の実行時間の短縮が促進される。
【0073】
(2c)上記実施形態のスライド装置1において、制御部6は、自動スライド処理において、必ずしも可動レール3の現在位置と入力された目標位置との距離から第1出力を決定しなくてもよい。
【0074】
(2d)上記実施形態の乗物用シート10は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0075】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0076】
1,1A…スライド装置、2…固定レール、3…可動レール、4…駆動ユニット、
5…ロックユニット、6…制御部、10…乗物用シート、11…シートクッション、
12…シートバック、13…クッションフレーム、14…バックフレーム、
21…底壁、22…第1側壁、22A…対向部、23…第2側壁、23A…対向部、
25…ロック用凹部、32…第1側壁、32A…下端部、33…第2側壁、
33A…下端部、41…送り機構、42…駆動アクチュエータ、51…ピン、
52…ロックアクチュエータ、53…連結部。