(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20230816BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230816BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230816BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230816BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J11/08
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2019222323
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】田村 純子
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108498(JP,A)
【文献】特開2018-145368(JP,A)
【文献】特開2003-253224(JP,A)
【文献】特開2019-026684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系共重合体(A)と硬化剤(B)と、
水添炭化水素樹脂(C)とを含み、
前記アクリル系共重合体(A)は、下記(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ
前記モノマー混合物100質量%中に(a-3)を10質量%以上30質量%未満、および(a-4)を5質量%以上20質量%未満含み、
前記硬化剤(B)の含有量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であ
り、
前記水添炭化水素樹脂(C)は、環状炭化水素構造を有するC9系水添石油樹脂、スチレン系水添石油樹脂および水添テルペン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記水添炭化水素樹脂(C)の含有量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、5~30質量部である、粘着剤組成物。
(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド
【請求項2】
前記硬化剤(B)は、イソシアネート硬化剤である、請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1
または2記載の粘着剤組成物の硬化物である粘着層を備えた、粘着シート。
【請求項4】
請求項1
または2記載の粘着剤組成物の硬化物である粘着層を備えた、光学粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物、および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤組成物から形成した粘着層を有する粘着シートは、接着剤と比べて取り扱いが容易であることから、表示用ラベル、固定用テープ、または表面保護シート等、幅広い分野で使用されている。
近年、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の画像表示装置とタッチパネルを組み合わせて用いるスマートデバイス、カーナビゲーション等の表示デバイスが普及してきている。これら表示デバイスには、偏光板、位相差板、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、透明導電性フィルム等の光学部材が使用されており、製造時や搬送時には、光学部材の傷つきを防止するために、工程保護用として表面保護シートが貼付される。
【0003】
工程保護用表面保護シートは、各光学部材の組み立て後に光学部材から剥離して除去される。除去作業時、剥離時の接着強度が強い場合、保護対象の光学部材を破損する恐れがあるため、長時間、光学部材に貼り合わされた後でも剥離できるという、再剥離性が必要となる。また、工程保護用表面保護シートの粘着層は、保護対象の光学部材に付着して残留しない耐汚染性が必要である。
【0004】
また、表示デバイスの製造後、表面保護シートを貼付した状態で表示デバイスを外観検査する場合が多く、表面保護シートには高い透明性が必要となる。
【0005】
さらに表面保護シートは、最終製品に対しては、傷つきや使用時の皮脂等による汚染を防止する為、スマートデバイスの最上部に構成されるカバーパネルやカバーフィルムに、製品保護用として用いられる。製品保護用としての表面保護シートには、搬送時および使用時に表面保護シートの浮き、剥がれが生じないという密着性が必要となる。
【0006】
また、近年のスマートデバイスにおいては、高い防汚性を保つため、最表面のカバーガラスに超撥水処理等の耐指紋処理を行う場合がある。超撥水処理されたカバーガラスは、撥油性、撥水性両者の特性を持つため、従来の表面保護シートを使用した際、カバーガラスからの浮き、剥がれが生じるという課題がある。これらスマートデバイスに使用される製品保護用表面保護シートには従来の性能に加えて、難接着基材へのより高い密着性が必要になる。
【0007】
さらには、スマートデバイス、カーナビゲーションはテレビ、PCのような固定表示デバイスとは異なり、高温および高温高湿雰囲気などの過酷な環境下で使用される場合があるため、製品保護用表面保護シートには高い耐久性等が必要になる。
【0008】
このように、工程保護用に必要な要求品質である再剥離性、耐汚染性と、製品保護用に必要な密着性、耐久性は互いに相反する性能であるため、工程保護用と製品保護用とでは、異なる表面保護シートが使用されている。しかしこれにより、表面保護シートの貼り換え時に表示デバイスに欠陥が生じ、品質低下が生じるという問題がある。また、工程保護用表面保護シートは、使用後廃棄されるため、貼り換え工程によるコストアップも問題となっている。
【0009】
特許文献1には、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、ポリエーテル変性シロキサン化合物とを含有し、再剥離性に優れる表面保護フィルムが記載されているが、これを製品保護に用いると、密着性および耐久性が充分ではない。また、特許文献2には、水酸基含有モノマー、アルキレングリコール基含有モノマー、窒素含有モノマー、アルコキシ基含有モノマーからなるアクリル系ポリマーと架橋剤、帯電防止剤とを含有し、密着性、耐久性に優れる表面保護フィルムが記載されているが、これを工程保護に用いると、再剥離性、耐汚染性が充分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-11479号公報
【文献】特開2019-14902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、各種光学部材の製造において、相反する性能が要求される工程保護用の表面保護シートと、製品保護用の表面保護シートとして、同じ粘着シートを用い、工程内において表面保護シートの貼り換えをすることなく表示デバイスの製造を行うことは難しいのが現状である。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、工程保護用表面保護シートに必要な要求品質である再剥離性および耐汚染性に優れるだけでなく、製品保護用表面保護シートに必要な密着性および耐久性も従来より優れており、これまでの粘着シートでは難しかった、工程保護用と製品保護用との両立が可能な粘着シートと、該粘着シートを形成することができる粘着剤組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る粘着シートは、アクリル系共重合体(A)と硬化剤(B)とを含み、
前記アクリル系共重合体(A)は、下記(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ前記モノマー混合物100質量%中に(a-3)を10質量%以上30質量%未満、および(a-4)を5質量%以上20質量%未満含み、前記硬化剤(B)の含有量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下である、粘着剤組成物であることを特徴とする。
(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド
【発明の効果】
【0014】
本発明により、工程保護用表面保護シートに必要な要求品質である再剥離性および耐汚染性に優れた粘着シートであるだけでなく、製品保護用表面保護シートに必要な密着性および耐久性にも優れた粘着シートの提供が可能となる。
これにより、本発明の粘着シートを用いた表面保護シートは、工程保護用と製品保護用に貼り替えなく、用いることができるため、表面保護シートの貼り替えによる表示デバイスの損傷、欠陥による品質低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する用語を定義する。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含む。モノマーとは、エチレン性不飽和基含有単量体である。アクリル系共重合体(A)を構成するモノマーとしては、(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド、およびその他モノマーに分類することができる。被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。本発明でシート、フィルムおよびテープは同義語である。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0016】
《粘着剤組成物》
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)と硬化剤(B)とを含み、
前記アクリル系共重合体(A)は、下記(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ前記モノマー混合物100質量%中に(a-3)を10質量%以上30質量%未満、および(a-4)を5質量%以上20質量%未満含み、前記硬化剤(B)の含有量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下である、粘着剤組成物である。
(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル
(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド
【0017】
<アクリル系共重合体(A)>
本明細書におけるアクリル系共重合体(A)(以下、「共重合体(A)」という)は、(a-1)~(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であり、かつ前記モノマー混合物100質量%中に(a-3)を10質量%以上30質量%未満、および(a-4)を5質量%以上20質量%未満含む。
これにより、粘着層に硬さと柔らかさの両立というトレードオフの性質が得られるため、再剥離性と密着性および、耐久性とを両立することができる。
【0018】
共重合体(A)の重量平均分子量は、50万~180万が好ましく、80万~150万がより好ましい。50万~180万の範囲にあると凝集力がより向上し、耐湿熱性、耐熱性がより向上する。なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。GPCの測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0019】
[(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル]
(a-1)は、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。共重合体(A)は、(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、粘着層に十分なぬれ性と凝集性を付与することができ、基材への密着性を向上することができる。アルキル基の炭素数が4未満であると粘着層の柔軟性が低下し、基材密着性が低下する。また、炭素数が8を超えると、粘着層の剛直性が低下し、耐久性が低下する。
【0020】
(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル等が挙げられる。
これらは、単独または2種以上を併用できる。
中でも柔軟性と凝集性を両立できる面で、(メタ)アクリル酸ブチル、または(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0021】
(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、モノマー混合物100質量%中、40質量%以上84質量%以下であることが好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。含有量が40質量%以上であると十分な凝集性が得やすく、また、含有量が84質量%以下であると凝集力と密着性を高い水準で両立し易い。
【0022】
[(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル]
(a-2)は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。共重合体(A)は、(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、硬化剤(B)との架橋反応によりポリマーネットワークを形成する。これにより粘着層と基材との密着性が向上することに加え、再剥離性、耐汚染性、耐久性が向上する。
【0023】
(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
これらは、単独または2種以上を併用できる。
中でも耐久性をより向上できる面で、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、または(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。
【0024】
(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、モノマー混合物100質量%中、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上2質量%以下がより好ましい。含有量が0.1質量%以上であると十分な凝集力が得やすく、また、含有量が5質量%以下であると凝集力と密着性を高い水準で両立し易い。
【0025】
[(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル]
(a-3)は、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。共重合体(A)は、(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することで、粘着層に十分な弾性を付与することができ、耐熱性が向上する。また、粘着層の極性を低下させるため、低極性被着体への密着性が向上する。
【0026】
(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。
これらは、単独または2種以上を併用できる。
中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、または(メタ)アクリル酸イソボルニルが、高温雰囲気下における耐久性および、低極性被着体への密着性の観点より好ましい。
【0027】
(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有率は、モノマー混合物100質量%中、10質量%以上30質量%未満であり、好ましくは15質量%以上27質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上25質量%以下である。含有量が10質量%以上であることで耐久性に優れ、また、含有量が30質量%未満であることにより密着性が良好となる。
【0028】
[(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド]
(a-4)は、N置換(メタ)アクリルアミドである。共重合体(A)が(a-4)N置換(メタ)アクリルアミドを含有することで、粘着層に十分な弾性を付与することができ、耐湿熱性に優れる。また、粘着層の極性を上昇させるため、高極性被着体への密着性に優れる。
【0029】
(a-4)N置換(メタ)アクリルアミドは、例えば、N-メチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物;
N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有する化合物等が挙げられる。
これらは、単独または2種以上を併用できる。
中でも、ジアセトンアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリンが高温高湿雰囲気下における耐久性および、高極性被着体への密着性の観点より好ましい。
【0030】
(a-4)N置換(メタ)アクリルアミドの含有率は、モノマー混合物100質量%中、5質量%以上20質量%未満であり、好ましくは8質量%以上18質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。含有率が5質量%以上であることで耐久性が向上し、また、20質量%未満であることで密着性に優れる。
【0031】
詳細は後に記載するが、共重合体(A)と硬化剤(B)とからなる粘着シートを例えば、オレフィン等の低極性被着体へ貼付する場合、共重合体(A)が低極性モノマーである(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含むことにより、低極性被着体への密着性に優れる。また、ガラス、金属等の高極性被着体へ貼付する場合、共重合体(A)は高極性モノマーである(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド由来の構造単位を含むことにより、高極性被着体への密着性が向上する。このように、共重合体(A)は、低極性、高極性モノマー単位両者を特定の含有量含むことで、低極性被着体および高極性被着体両者への密着性が飛躍的に向上する。また、共重合体(A)が特定の割合で低極性モノマーである(a-3)および、高極性モノマーである(a-4)を含有することで、低極性および高極性両者の特性を有する、超撥水基材等の難接着基材への密着性にも優れている。
【0032】
[その他モノマー]
共重合体(A)は、(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド以外に、その他モノマーを使用できる。その他モノマーは、(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、またはビニルモノマー等が挙げられる。
【0033】
(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
【0034】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸p-カルボキシベンジル、アクリル酸β-カルボキシエチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0035】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0036】
アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0037】
アルキレンオキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、下記一般式(1)で示すモノマー、または一般式(2)で示すモノマーが挙げられる。
【0038】
【0039】
【0040】
一般式(1)および一般式(2)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、n、mは、繰り返し単位を表す整数であり、1≦n≦25、1≦m≦25であり、1≦n≦13、1≦m≦5が好ましい。
【0041】
一般式(1)で示すモノマーの市販品は、例えば、メトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=1)、メトキシジエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=2)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=3)、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=9)、メトキシポリエチレングリコール#600アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=23)、メトキシジエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1がメチル基、n=2)、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1がメチル基、n=3)、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1がメチル基、n=4)、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=9)、メトキシポリエチレングリコール#600メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、R1が水素原子、n=23)が挙げられる。
【0042】
一般式(2)で示すモノマーの市販品は、例えば、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、R1が水素原子、m=3)、メトキシトリプロピレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、R1がメチル基、m=3)
【0043】
ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルな等が挙げられる。
その他モノマーは、単独または2種類以上を併用できる。
【0044】
その他モノマーの含有率は、モノマー混合物100質量%中、50質量%以上80重量%以下であること好ましい。含有率が50重量%以上であると密着性がより向上する。また、含有率が80重量%以下であると凝集力と密着性を両立し易い。
【0045】
[アクリル系共重合体(A)の製造]
共重合体(A)は、モノマー混合物を重合することで合成できる。重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。
重合温度は、60~120℃の沸点反応が好ましい。重合時間は、5~12時間程度が好ましい。
【0046】
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0047】
アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル等が挙げられる。
【0048】
重合開始剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0049】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0050】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)は、共重合体(A)の水酸基と反応する。
本発明の粘着剤組成物は、硬化剤(B)の含有量が、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.1~10質量部含むことが好ましく、0.5~8質量部含むことがより好ましい。含有量が0.1質量部以上になると凝集力がより向上し、10質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために好ましく、耐久性および耐汚染性にも優れたものとすることができる。
【0051】
硬化剤(B)としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、または金属キレート等が挙げられる。
これらは、単独または2種以上を併用できる。
中でも、イソシアネート化合物は、高い凝集力と密着性を両立でき、それにより耐久性および、汚染性が向上するために好ましい。
【0052】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0053】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0055】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0056】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0057】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0058】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0059】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
【0060】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0061】
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0062】
アジリジン化合物は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0063】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0064】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0065】
<水添炭化水素樹脂(C)>
本発明の粘着剤組成物は、課題を解決できる範囲であれば、水添炭化水素樹脂(C)を含有できる。水添炭化水素樹脂(C)を含有することで、粘着層に弾性を付与することができ、密着性および耐熱性がさらに向上する。
【0066】
水添炭化水素樹脂(C)は、例えば、水添石油樹脂、または水添テルペン樹脂が挙げられる。
これらは、単独または2種以上を併用できる。
【0067】
水添石油樹脂は、例えば、C5系水添石油樹脂、C9系水添石油樹脂、C5/C9系水添石油樹脂、スチレン系水添石油樹脂が挙げられる。C5系水添石油樹脂は、石油ナフサから得られたC5留分を分離精製した脂肪族樹脂の不飽和二重結合に水素原子を付加したものである。また、C9系水添石油樹脂は、石油ナフサから得られたC9留分を分離精製した芳香族樹脂の不飽和二重結合に水素原子を付加したものである。また、C5/C9系水添石油樹脂は、C5留分とC9留分とを分離後混合、共重合した後精製した芳香脂肪族樹脂の不飽和二重結合に水素原子を付加したものである。スチレン系水添石油樹脂は、石油ナフサから得られたスチレン留分を分離精製、重合したスチレン樹脂の不飽和二重結合に水素原子を付加したものである。
【0068】
水添テルペン樹脂は、例えば、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族テルペン樹脂等の総称であり、これら樹脂中の不飽和二重結合には、水素原子が付加されている。
【0069】
C5系水添石油樹脂は、例えば、イーストタックC100、イーストタックC115W(イーストマンケミカル社製)等が挙げられる。C9系水添石油樹脂は、例えば、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-125、アルコンP-140、アルコンM-90、アルコンM-115、アルコンM-135(荒川化学工業社製)等が挙げられる。C5/C9系水添石油樹脂は、例えば、アイマーブS-100、アイマーブS-110、アイマーブP-100、アイマーブP-140(出光興産社製)等が挙げられる。スチレン系水添石油樹脂は、FTR6100、FTR6110、FTR6125、FTR7080、FTR7100、FTR7125(三井化学社製)等が挙げられる。水添テルペン樹脂は、例えば、クリアロンP-105、クリアロンP-125、クリアロンM-105、クリアロンP-115、YSポリスターTH130(ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0070】
これら水添炭化水素樹脂(C)のうち、環状炭化水素構造を有するC9系水添石油樹脂、スチレン系水添石油樹脂、水添テルペン樹脂が耐久性に優れたものとできる点から好ましい。
水添炭化水素樹脂(C)としては、C9系水添石油樹脂はアルコンM-90、スチレン系水添石油樹脂はFTR6100、水添テルペン樹脂はYSポリスターTH130が好ましい。
【0071】
水添炭化水素樹脂(C)は、共重合体(A)100質量部に対して5~50質量部含むことが好ましく、5~30質量部含むことがより好ましい。含有量が5質量部以上になると耐熱性、密着性がより向上し、50質量部以下であると、より粘着性能に優れる。
【0072】
<有機シラン化合物>
本発明の粘着剤組成物は、さらに有機シラン化合物を含有できる。
【0073】
有機シラン化合物は、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0074】
有機シラン化合物の含有量は、共重合体(A)100質量部に対し、0.01質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
【0075】
本発明の粘着剤組成物には、課題を解決できる範囲であれば、任意成分として各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を含有できる。
【0076】
本発明の粘着剤組成物は、粘着シートとして好適であるほか、各種プラスチックシート、一般ラベル・シール、粘着性付与剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【0077】
《粘着シート》
本発明の粘着シートは、粘着剤組成物の硬化物である粘着層を備える。なかでも、基材、および粘着剤組成物の硬化物である粘着層を備えることが好ましい。
粘着シートは、例えば、基材に粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着層を形成して作製する。また、剥離性シートに粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着層を形成し、基材を貼り合わせて作製する。また、粘着層の基材と接していない面は、通常、異物の付着防止のため使用する直前まで剥離性シートを貼り合せる。乾燥温度は、通常60~150℃程度である。粘着層の厚みは、通常0.1~200μm程度である。
【0078】
塗工方法は、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、およびグラビアコーター法等公知の方法が挙げられる。
【0079】
粘着剤組成物を塗工する際、溶媒で粘度を調整できる。溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤が挙げられる。
【0080】
基材は、柔軟なシートおよび板材が制限なく使用できる。基材は、フィルム、プラスチック、紙、および金属箔、ならびにこれらの積層体等が挙げられる。
基材の粘着層と接する面には密着性向上のため、例えば、コロナ放電処理等の乾式処理やアンカーコート剤塗布等の湿式処理といった易接着処理を予め行うことができる。
基材は、単独または複数の基材を積層した積層体を使用できる。
本発明の粘着シートを、基材を有する光学粘着シートとして用いる場合には、透明で光透過可能なフィルムを基材として用いることが好ましい。
基材の厚みは、通常10~250μm程度である。
【0081】
剥離シートは、プラスチックまたは紙等の表面にシリコーン系剥離剤等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを使用できる。
剥離性シートの厚みは、通常10~250μm程度である。
【0082】
被着体に関しては、特に制限なく使用できる。被着体は、汎用ガラス、建材、ポリオレフィン、ABS、ポリスチレン、アクリル等のプラスチック、ダンボール、木材、合板、ステンテス、アルミ等の金属や、例えば、光学ガラスである無アルカリガラス、偏光板、楕円偏光フィルム、透明導電フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、超撥水ガラスなどの光学部材等が挙げられる。
本発明の粘着シートは、被着体として光学部材に用いられる光学粘着シートとして好適に用いることができる。
【0083】
<光学粘着シート>
本発明の粘着剤組成物の硬化物である粘着層は、透明性に優れるため、光学粘着シートとして好適に用いることができる。
光学粘着シートは、光学部材に貼り付けて用いられる粘着シートであって、表示デバイス等の表面保護シートとして好適である。
【0084】
光学粘着シートが、基材を有する場合、基材として光学フィルムと、粘着剤組成物の硬化物である粘着層を備えていることが好ましい。
光学粘着シートは、例えば、光学フィルムに粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着層を形成して作製する。また、剥離性シートに粘着剤組成物を塗工、乾燥することで粘着層を形成し、光学フィルムを貼り合わせて作製する。また、粘着層の光学フィルムと接していない面は、通常、異物の付着防止のため使用する直前まで剥離性シートを貼り合せる。乾燥温度は、通常60~150℃程度である。粘着層の厚みは、通常0.1~200μm程度である。
【0085】
光学フィルムは、透明で光透過可能なフィルムであり、例えば、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどのポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0086】
光学部材は、光学ガラス、偏光板、楕円偏光フィルム、透明導電フィルムおよび低極性部材である、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ならびに高極性(撥油性)、低極性(撥水性)両者の特性を有する難接着基材である超撥水処理ガラス等が挙げられる。
本発明の粘着組成物は、接着力が高く、難接着基材である超撥水処理ガラスに対しても、優れた密着性を有する。
【0087】
ここで、難接着基材である超撥水処理ガラスとは、ガラス表面にフッ素やケイ素等の疎水物質をコーティングまたは蒸着したのち、表面に10~500nmの微細な凹凸を形成した表面処理ガラスであり、撥油性および撥水性両者を兼ね備えた材料である。これにより、水分や汗、皮脂による表面汚染を高度に防止することができる。
【0088】
本発明の光学粘着シートの用途は、特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチスクリーンパネル、カーナビゲーション、車載内装表示デバイス、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材の表面保護用シートとしても適応できる。
【0089】
また、近年のスマートデバイス、ならびにカーナビゲーション等の車載内装表示デバイス保護用シートにおいては、従来必要とされなかった、高温および高温高湿雰囲気などの過酷な環境下における、表示デバイスからの浮きや剥がれを抑制するという耐久性が必要となる。
【0090】
前記した通り、本発明の粘着剤組成物を構成する共重合体(A)は、低極性、高極性モノマー単位両者を特定の含有量含むことで、上記低極性部材および、高極性部材両者への密着性が飛躍的に向上する。また、撥油性、撥水性両者の特性を持つ超撥水ガラスへの密着性が向上し、超撥水ガラス保護用シートとして適応することができる。さらには、従来必要とされなかった高温および高温高湿雰囲気下における高い耐久性を有するため、スマートデバイス、車載内装表示デバイス保護用として適応できる。
【実施例】
【0091】
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は質量%を意味し、「RH」は相対湿度を意味するものとする。
また、表中の配合量は、質量部である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、共重合体の重量平均分子量および粘度の測定方法は以下の通りである。
【0092】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用いた。重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0093】
<粘度の測定>
粘度の測定は、温度25℃相対湿度55%の条件でブルックフィールド粘度計を用いて測定した。
装置名:HADV-E(ブルックフィールド社製)
使用したスピンドル:HANo.7
回転数:50rpm
【0094】
実施例で使用した材料を以下に示す。
《材料》
<モノマー>
[(a-1)炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル]
EHA : アクリル酸2-エチルヘキシル
BA : アクリル酸n-ブチル
[(a-2)水酸基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル]
HEA : アクリル酸2-ヒドロキシエチル
HBA : アクリル酸4-ヒドロキシブチル
[(a-3)脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル]
CHA : アクリル酸シクロヘキシル
IBXA : アクリル酸イソボルニル
DCPA : アクリル酸ジシクロペンタニル
[(a-4)N置換(メタ)アクリルアミド]
DAAM : ジアセトンアクリルアミド
ACMO : アクリロイルモルホリン
NVP : N-ビニルピロリドン
[その他モノマー]
MA : アクリル酸メチル
<硬化剤(B)>
B-1 : トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
B-2 : ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
B-3 : ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体
B-4 : N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン
B-5 : N,N'-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)
<水添炭化水素樹脂(C)>
C-1 : アルコンM-90(C9系水添石油樹脂)
C-2 : FTR6100(スチレン系水添石油樹脂)
C-3 : YSポリスターTH130(水添テルペン樹脂)
【0095】
<アクリル系共重合体(A)>
[合成例1:共重合体(A-1)]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)79.0部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)1.0部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)10.0部、ジアセトンアクリルアミド(DAAM)10.0部、酢酸エチル100部、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を65℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度3000mPa・sの共重合体(A-1)溶液を得た。得られた共重合体(A-1)の重量平均分子量は120万であった。
【0096】
[合成例2~16:共重合体(A-2~10、AC-1~6)]
表1の質量比率に従って原料および使用量を変更した以外は、合成例1と同様の方法で共重合体(A)を合成した。得られた共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を表3に示す。
【0097】
【0098】
(実施例1)
<粘着剤組成物の調製>
得られた共重合体(A-1)溶液中の共重合体(A-1)100部に対して、硬化剤(B)としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体(B-1)1.0部に、不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤組成物を得た。
【0099】
<粘着シートの作製>
得られた粘着剤組成物を、厚み50μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート(PET)、「E7004」、シリコーン系剥離層、東洋紡社製)の剥離層上に、乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、120℃で3分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、厚み38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート、「SP-PET3811」、シリコーン系剥離層、リンテック社製)の剥離層面を貼り合せ、「剥離性シート/粘着層/剥離性シート」の積層体を作製した。次いで、得られた積層体を温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、粘着シートを得た。
【0100】
(実施例2~10、16、17、比較例1~6、9、10)
表2に示す通り、共重合体の種類、硬化剤の種類、および配合量(質量部)を変更した以外は実施例1と同様にして、粘着シートを得た。
【0101】
(実施例11)
<粘着剤組成物の調製>
得られた共重合体(A-5)溶液中の共重合体(A-5)100部に対して、水添炭化水素樹脂(C)として、C9系水添石油樹脂であるアルコンM-90(C-1)20部、硬化剤(B)としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体(B-1)2.0部に、不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤組成物を得た。
【0102】
<粘着シートの作製>
得られた粘着剤組成物を、厚み50μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート(PET)、「E7004」、シリコーン系剥離層、東洋紡社製)の剥離層上に、乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、120℃で3分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、厚み38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート、「SP-PET3811」、シリコーン系剥離層、リンテック社製)の剥離層面を貼り合せ、「剥離性シート/粘着層/剥離性シート」の積層体を作製した。次いで、得られた積層体を温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、粘着シートを得た。
【0103】
(実施例12~15、比較例7、8)
表2に示す通り、共重合体の種類、硬化剤の種類、水添炭化水素樹脂の種類、および配合量(質量部)を変更した以外は実施例11と同様にして、粘着シートを得た。
【0104】
【0105】
得られた粘着シートを用いて、試験用積層体[A]、[B]、[C]を作製し、以下の透明性、再剥離性、耐汚染性、密着性、耐久性を評価した。
【0106】
《試験用積層体の作製》
[試験用積層体[A];PETフィルム/粘着層/無アルカリガラス]
得られた粘着シートから幅25mm×長さ100mmのサイズに切り出してPETフィルム/粘着層/剥離性シートからなる試験用粘着シート[A]を作製した。
試験用粘着シート[A]の剥離性シートを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気で無アルカリガラス板(EN-A1:旭硝子社製)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着層/ガラスからなる試験用積層体[A]を得た。
【0107】
[試験用積層体[B];PETフィルム/粘着層/超撥水ガラス]
得られた粘着シートから幅66mm×長さ145mm(6.1インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出してPETフィルム/粘着層/剥離性シートからなる試験用粘着シート[B]を作製した。
試験用粘着シート[B]の剥離性シートを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気で超撥水ガラス(Simplism)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着層/超撥水ガラスからなる試験用積層体[B]を得た。
【0108】
[試験用積層体[C];PETフィルム/粘着層/スマートフォン]
得られた粘着シートから幅66mm×長さ145mm(6.1インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出してPETフィルム/粘着層/剥離性シートからなる試験用粘着シート[C]を作製した。
試験用粘着シート[C]から剥離性シートを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気でスマートフォン(Galaxy10:Samsung社製)の超撥水ガラス面にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着層/スマートフォン(粘着層貼付面は超撥水ガラス)からなる試験用積層体[C]を得た。
【0109】
《評価方法》
<透明性>
試験用積層体[A]を23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、HAZEを測定した。なお、HAZEは日本電色工業社製Turbidimeter NDH5000Wを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
○:HAZEが1.0未満(良好)。
×:HAZEが1.0以上(不良)。
【0110】
<再剥離性>
試験用積層体[A]を、23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験を実施した。剥離時の剥離強度を測定し、再剥離性を2段階で評価した。
○:「剥離強度が2N未満であり、実用上全く問題がない」
×:「剥離強度が2N以上であり、実用不可」
【0111】
<耐汚染性>
試験用積層体[A]を、23℃、相対湿度50%で1週間放置した後に、180度方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験を実施した。剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、再剥離性および汚染性を3段階で評価した。
◎:「ガラス表面に曇りがない、実用上全く問題がない」
○:「ガラス表面にわずかな曇りが認められるが、実用上問題がない」
×:「ガラス表面に曇り、または粘着層の転着が認められた、実用不可」
【0112】
<密着性(超撥水ガラス)>
試験用積層体[B]を、耐熱密着性試験として40℃の条件下に500時間放置し、25℃、相対湿度50%雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した(試験条件[2])。又、耐湿熱密着性試験の評価として、試験用積層体[B]を40℃、相対湿度90%雰囲気で500時間放置し、25℃、相対湿度50%雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した(試験条件[3])。
耐熱密着性(試験条件[2])および耐湿熱密着性(試験条件[3])について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない」
○:「気泡の発生、浮き・ハガレがわずかに認められるが、実用上問題がない」
△:「気泡の発生、浮き・ハガレが顕著に認められ、実用不可」
【0113】
<密着性(スマートフォン)>
試験用積層体[C]を、耐熱密着性試験として40℃の条件下に500時間放置し、25℃、相対湿度50%雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した(試験条件[2])。又、耐湿熱密着性試験の評価として、試験用積層体[C]を40℃、相対湿度90%雰囲気で500時間放置し、25℃、相対湿度50%雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した(試験条件[3])。
耐熱密着性(試験条件[2])および耐湿熱密着性(試験条件[3])について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない」
○:「気泡の発生、浮き・ハガレがわずかに認められるが、実用上問題がない」
△:「気泡の発生、浮き・ハガレが顕著に認められ、実用不可」
【0114】
<耐熱性・耐湿熱性(無アルカリガラス)>
試験用積層体[A]を、耐熱性試験として105℃の条件下に500時間放置し、25℃、相対湿度50%雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した(耐熱性)。又、耐湿熱性試験の評価として、上記試験用積層体を85℃、相対湿度85%雰囲気で500時間放置し、25℃、相対湿度50%RH雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した(耐湿熱性)。
耐熱密着性および耐湿熱密着性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない」
○:「気泡の発生、浮き・ハガレがわずかに認められるが、実用上問題がない」
△:「気泡の発生、浮き・ハガレが顕著に認められ、実用不可」
【0115】
【0116】
表3の結果から実施例の粘着剤組成物は、透明性、再剥離性、耐汚染性、密着性、耐久性が優れている。すなわち、工程保護用、製品保護用両者に適応可能な表面保護シートの提供が可能である。また、表面保護シートの貼り替えを必要としないため、表面保護シートの貼り替えによる表示デバイスの損傷、欠陥による品質低下を防止することができ、表示デバイスの品質維持、工程短縮によるコストダウンが可能であることが確認できた。
一方、比較例の粘着剤組成物は、前記特性を全て満たすことはできなかった。