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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20230816BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20230816BHJP
   F16H 57/027 20120101ALI20230816BHJP
【FI】
B62D5/04
F16H1/16 Z
F16H57/027
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019234609
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102397
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】天野 暁文
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特許第6592219(JP,B1)
【文献】実開昭56-066566(JP,U)
【文献】実開昭58-148376(JP,U)
【文献】実開昭60-108854(JP,U)
【文献】実開昭59-102505(JP,U)
【文献】特開2018-114904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
F16H 1/16,57/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転トルクを減速機により増加させて転舵輪の転舵に用いる操舵装置であって、
前記転舵輪に連結されるラックシャフトと、
前記ラックシャフトを収容するラックハウジングと、
前記ラックシャフトと噛み合うピニオンシャフトと、
前記ピニオンシャフトに連結されたウォームホイールと、前記ウォームホイールと噛み合うウォームシャフトとを有する減速機と、
前記ウォームホイールを収容する減速機ハウジングと、
前記ウォームシャフトを駆動するモータと、
前記減速機ハウジングの開口を封止する板状のカバーと、
前記カバーに貫通状態で取り付けられる呼吸弁と、を備え、
前記カバーは、
前記呼吸弁への潤滑剤の侵入を抑制する侵入抑制部を前記ウォームホイールに対向する内面に備え
前記カバーは、
内側に向かって窪み前記呼吸弁が取り付けられる取付部を備え、
前記侵入抑制部は、
前記取付部に沿って内側に膨出する
操舵装置。
【請求項2】
前記侵入抑制部は、
前記呼吸弁を囲む領域の少なくとも一部に前記ウォームホイールに向かって突出し前記潤滑剤の流れを防御する壁部を備える
請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記侵入抑制部は、
前記呼吸弁を囲む領域の少なくとも一部に前記ウォームホイールと逆側に向かって窪み前記潤滑剤の流れを案内する案内溝部を備える
請求項1または2に記載の操舵装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの出力に基づき転舵輪を転舵させ、車両などを操向する操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電動パワーステアリング装置においては、モータの出力が減速機を介してステアリングシャフトやラックシャフトにアシストトルクとして付与される構造が採用される。また昨今では、ステアバイワイヤ(SBW:Steer By Wire)と称される技術が注目されている。このステアバイワイヤという技術は、運転者が操作するステアリングホイールと、転舵輪とが機械的に接続されておらず、ステアリングホイールの操作状態を信号として出力し、当該信号に基づきモータが減速機を介して転舵輪を転舵する技術である。
【0003】
これらの操舵装置に用いられるラックシャフトはラックハウジングに覆われ、水、泥などから遮断されている。また、ラックハウジングの内方が負圧になると、水、泥などが流入するため、ラックハウジング、またはラックハウジングに連通する部分には呼吸弁が取り付けられる場合がある。
【0004】
特許文献1には、ラックハウジングに連通する減速機ハウジングに呼吸弁が取り付けられた操舵装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-214048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者は、エンジンルーム内に配置される部材の小型化、部品点数の削減のため、減速機ハウジングを封止するカバーに呼吸弁を取り付けることを想到した。しかしながら、ラックハウジングに対する減速機ハウジングの位置によっては、呼吸弁に機能不全が発生することを見出すに至った。さらに発明者が鋭意実験と研究を重ねた結果、呼吸弁が潤滑剤により塞がれることを見出した。
【0007】
本発明は、上記発明者の知見に基づきなされたものであり、呼吸弁の機能不全発生を抑制する操舵装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の1つである操舵装置は、モータの回転トルクを減速機により増加させて転舵輪の転舵に用いる操舵装置であって、前記転舵輪に連結されるラックシャフトと、前記ラックシャフトを収容するラックハウジングと、前記ラックシャフトと噛み合うピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトに連結されたウォームホイールと、前記ウォームホイールと噛み合うウォームシャフトとを有する減速機と、前記ウォームホイールを収容する減速機ハウジングと、前記ウォームシャフトを駆動するモータと、前記減速機ハウジングの開口を封止する板状のカバーと、前記カバーに貫通状態で取り付けられる呼吸弁とを備え、前記カバーは、前記呼吸弁への潤滑剤の侵入を抑制する侵入抑制部を前記ウォームホイールに対向する内面に備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、減速機ハウジングのカバーに取り付けられた呼吸弁に潤滑剤が流入することを防止でき、減速機ハウジングの耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る操舵装置を示す図である。
図2】実施の形態に係る減速機ハウジングとラックハウジングとの関係を示す断面図である。
図3】実施の形態に係るカバーと呼吸弁を分解した状態を減速機の内側から示す斜視図である。
図4】実施の形態に係るカバーと呼吸弁を分解した状態を減速機の外側から示す斜視図である。
図5】実施の形態に係る減速機ハウジングに取り付けられたカバーの状態の一例を示す断面図である。
図6】実施の形態に係る減速機ハウジングに取り付けられたカバーの状態の他の例を示す断面図である。
図7】侵入抑制部の別例を示す断面図である。
図8】他の実施例1に係る操舵装置を示す図である。
図9】他の実施例2に係る操舵装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る操舵装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0013】
図1は、操舵装置全体を示す図である。図2は、減速機ハウジングとラックハウジングとの関係を示す断面図である。これらの図に示すように、操舵装置100は、モータ140の出力である回転トルクを減速機150により増加させていわゆるタイヤである転舵輪201の転舵に用い、車両などの操向を行う装置である。本実施の形態の場合、操舵装置100は、運転者が操舵する操舵部材200を備え、ステアリングシャフト110、およびラックシャフト130を介して転舵輪201を機械的に転舵できる装置であり、操舵部材200を運転者が回転させることにより発生する操舵トルクに応じて転舵輪201の転舵を補助する力を付与することができる装置である。操舵装置100は、複数の軸体が自在継手により連結されたステアリングシャフト110と、ステアリングシャフト110の先端に接続される第一ピニオンシャフト120と、第一ピニオンシャフト120に噛み合うラックシャフト130と、ラックシャフト130を収容するラックハウジング131と、モータ140と、モータ140の回転トルクを増加させる減速機150と、減速機150を収容する減速機ハウジング151と、減速機150の出力軸として機能する第二ピニオンシャフト160と、呼吸弁170と、カバー180とを備えている。
【0014】
ラックシャフト130は、軸方向に長い断面略円形の棒状の部材であり、ラックハウジング131に収容されている。ラックシャフト130の両端部は、タイロッド136を介して転舵輪201に連結されている。ラックシャフト130は、操舵部材200の回転に伴って回転する第一ピニオンシャフト120と噛み合ってラックハウジング131に対して往復動する。ラックシャフト130が軸方向に往復動することにより転舵輪201が旋回し、車両の操向が行われる。
【0015】
ラックハウジング131は、車両に固定され、内部に収容したラックシャフト130を軸方向にガイドする部材である。ラックハウジング131は、ラックシャフト130に交差して接触する第一ピニオンシャフト120が挿入される筒状の第一ピニオン挿入部132(図1参照)と、ラックシャフト130を収容し、ラックシャフト130を軸方向に往復動可能に保持する筒状のラックシャフト収容部133と、ラックシャフト130に交差した状態でラックに噛み合う第二ピニオンシャフト160が挿入される筒状の第二ピニオン挿入部134とを備えている。ラックハウジング131は、例えばアルミニウム合金により形成される。また、ラックハウジング131の両端部には、ゴム等で形成された蛇腹管状のブーツ135が、取り付けられている。ブーツ135によりラックハウジング131の長手方向の両開口端部が封止され、第一ピニオン挿入部132、および第二ピニオン挿入部134の開口部なども封止されているため、ラックハウジング131はある程度密閉された状態となり、内方に水、泥などが侵入することを防止している。
【0016】
モータ140は、アシストトルクを発生させる電動の駆動源である。モータ140には、モータ用のECU(Electronic Control Unit)であるMCU(Motor Control Unit)141が取り付けられている。モータ140は、操舵部材200により加えられたトルクや車速の情報を取得したMCU141に基づきアシストに適したトルクが出力される。本実施の形態の場合、モータ140の回転軸Mは、ラックシャフト130の延在方向と平行、またはほぼ平行に配置されている。これにより、ラックシャフト130の延在方向に対して垂直な方向においてラックハウジング131からのモータ140の突出量を抑制することができ、エンジンルーム内における操舵装置100のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
MCU141は、減速機ハウジング151と連通状態となっており、減速機ハウジング151に取り付けられた呼吸弁170によって、圧力が調整されている。
【0018】
減速機150は、モータ140の出力軸の回転速度を減速し、減速に対して反比例したトルクを第二ピニオンシャフト160に出力する装置である。本実施の形態の場合、減速機150は、モータ140の出力軸に接続されるウォームシャフト(図示省略)とウォームシャフトに噛み合う出力歯車であるウォームホイール159(図2参照)からなるウォーム減速機が採用されている。ウォームホイール159は、第二ピニオンシャフト160に回転可能に連結されている。
【0019】
減速機ハウジング151は、ウォームシャフト、ウォームホイール159を回転可能に支持し、ウォームシャフトやウォームホイール159を収容する筐体である。減速機ハウジング151は、第二ピニオンシャフト160が挿通される貫通孔部156が設けられている。貫通孔部156とラックハウジング131の第二ピニオン挿入部134とは連通しており、第二ピニオンシャフト160が刺し通されているが、本実施の形態の場合、第二ピニオンシャフト160と減速機ハウジング151、またはラックハウジング131との間は、第二ピニオンシャフト160が回転可能に封止されている。減速機ハウジング151は、径の異なる二つの円筒が同軸上に配置された形状の部材であり、ウォームホイール159が収容されている大径部分の外側の一端部は円形に開口している。減速機ハウジング151の貫通孔部156に取り付けられている軸受152は、第二ピニオンシャフト160、およびウォームホイール159を軸支しており、ウォームホイール159に対し軸受152と反対側には軸受が設けられていない。減速機ハウジング151を構成する材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、操舵装置100の軽量化のためアルミニウムを主成分とする合金が用いられている。
【0020】
図3は、カバーと呼吸弁を分解した状態で減速機ハウジングの内側から示す斜視図である。図4は、カバーと呼吸弁を分解した状態で減速機ハウジングの外側から示す斜視図である。これらの図に示すように、カバー180は、減速機ハウジング151の大径部分の一端に配置される開口を封止する板状の部材であり、カバー180に取り付けられた呼吸弁170への潤滑剤の侵入を抑制する侵入抑制部185をウォームホイール159に対向する内面に備えている。本実施の形態の場合、減速機ハウジング151の開口は円形であるため、カバー180は円板形状であり、減速機ハウジング151の外側から開口を塞いでいる。なお、潤滑剤とは、ウォームホイール159とこれに噛み合うウォームシャフトの潤滑のために減速機ハウジング151内に付着している油などの部材である。潤滑剤はカバー180がウォームホイール159よりも下側に配置される場合、ウォームホイール159などから落下してカバー180の内側面に付着し、カバー180をつたって移動する場合がある。
【0021】
図5は、減速機ハウジングに取り付けられたカバーの状態の一例を示す断面図である。侵入抑制部185の形状は、潤滑剤の呼吸弁170への侵入を抑制できる形状であれば特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、侵入抑制部185の中央部に取り付けられる呼吸弁170のから外側に向かって徐々に径が広がる第一テーパ面187を備えており、侵入抑制部185は、円錐台形状を形成している。侵入抑制部185がウォームホイール159に向かって膨出する形状であり、その頂上に呼吸弁170が配置されることで、カバー180の裏面に付着した潤滑剤が呼吸弁170に付着することを抑制できる。特に、ラックハウジング131よりも減速機ハウジング151が下方に配置される場合において、カバー180の外面に対する第一テーパ面187の角度θ2(図5参照)が、モータ140の回転軸Mに対するカバー180の外面の角度θ1よりも小さくなるように設定することにより、侵入抑制部185よりも呼吸弁170の開口部が高い位置に配置される。これにより侵入抑制部185に付着した潤滑剤を呼吸弁170に到達すること無くカバー180の下側に案内することができ、呼吸弁170に潤滑剤が付着することを抑制できる。さらに侵入抑制部185は、呼吸弁170を囲む領域の少なくとも一部(本実施の形態の場合は全周)にウォームホイール159側(図中上側)に向かって突出し潤滑剤の流れを防御する壁所の壁部186を備えている。これにより、呼吸弁170への潤滑剤の侵入をさらに防止している。
【0022】
取付部181は、カバー180の外面、図5図6中の破線Fで示されるカバー180の内最も外側に存在する面よりも第二ピニオンシャフト160側に呼吸弁170が位置するように陥凹した部分である。取付部181の形状は、特に限定されるものではない。本実施の形態の場合、取付部181の形状は、侵入抑制部185の形状に沿った形状であり取付部181の底部である呼吸弁170の取り付け部分から外面に向かって徐々に径が広がる第二テーパ面182を備えており、逆円錐台形状となっている。カバー180の外面に対する第二テーパ面182の角度θ3(図6参照)は、モータ140の回転軸Mに対するカバー180の外面の角度θ1よりも小さくなるように設定されている。これによれば、ラックハウジング131よりもカバー180が上側に配置されるような場合、取付部181に付着した水、泥などを比較的容易に取付部181外に排出することができ、呼吸弁170の周囲に水が溜まることを防止できる。なお本実施の形態の場合、θ2=θ3に設定されているが、角度の関係は特に限定されるものではなく、θ2<θ3であってもかまわない。
【0023】
防護壁183は、呼吸弁170から所定の距離離れた位置において呼吸弁170を囲むように取付部181の底部から外側に向かって立設される円環状の部分である。防護壁183の突出高さは特に限定されるものではないが、カバー180に取り付けられた状態の呼吸弁170の高さ位置と同等以上であることが好ましく、カバー180の外面は越えないように設定される。また、防護壁183は閉じた円環形状ではなく、スリット184(図4参照)によって周方向において複数に分断されている。防護壁183は、内方に配置された呼吸弁170に異物が付着し、呼吸弁170の機能が低下することを防止するものである。防護壁183に設けられたスリット184は、防護壁183に囲まれた部分に水、泥などが溜まることを防止している。
【0024】
カバー180を構成する材料は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、樹脂が採用されている。カバー180を樹脂にすることで、減速機150全体の軽量化を図ることができ、侵入抑制部185と取付部181とを表裏一体に容易に製造することができる。また壁部186、防護壁183、およびスリット184なども容易に一体的に製造することが可能となる。
【0025】
呼吸弁170は、カバー180の取付部181の底部に貫通状態で取り付けられ、減速機ハウジング151、および減速機ハウジング151に連通するモータ140、およびMCU141の内部圧力を大気圧と同じに調整し、かつ水、泥などの内部への侵入を防止する部材である。呼吸弁170の構造は、特に限定されるものではなく、例えばラビリンス構造により空気の流通を確保しつつ水、泥などの侵入を防ぐものでも構わない。本実施の形態の場合、呼吸弁170は、通気性を備えつつ、外部から水、泥などが侵入することを抑制することができる膜状部材を備えている。具体的に膜状部材としてはゴア(登録商標)メンブレンを例示することができる。
【0026】
第二ピニオンシャフト160は、減速機150のウォームホイール159に一体的に回転するように連結され減速機150により増幅されたモータ140の回転トルクを出力する軸体である。第二ピニオンシャフト160は、軸受152を介して減速機ハウジング151に回転可能に取り付けられている。本実施の形態の場合、第二ピニオンシャフト160は、ラックシャフト130と噛みあって、ラックシャフト130に力を付与する。なお、第二ピニオンシャフト160のラックハウジング131側の先端は、第二軸受139を介してラックハウジング131に回転可能に取り付けられている。
【0027】
本実施の形態に係る操舵装置100によれば、モータ140、およびMCU141は、減速機ハウジング151を介して呼吸弁170と繋がっているため、温度変化などにより熱膨張が繰り返されてもモータ140やMCU141の内部圧力は大気圧と同じになるように調整される。また、水、泥などが内部へ侵入することが抑制される。
【0028】
減速機ハウジング151がラックハウジング131の下側に配置されるような場合において、減速機150の動作をスムーズにする潤滑剤がカバー180の内面に付着したとしても、呼吸弁170への潤滑剤の侵入を侵入抑制部185が抑制するため、呼吸弁170の機能を長期間にわたって維持することが可能となる。
【0029】
呼吸弁170は、カバー180に取り付けられているため、ラックハウジング131や減速機ハウジング151等に呼吸弁170を取り付けるための複雑な構造部分を設ける必要が無い。従ってラックハウジング131や減速機ハウジング151の生産効率を向上させることが可能となる。
【0030】
呼吸弁170は、減速機ハウジング151のカバー180の外面から突出しないように陥凹状の取付部181の底部に取り付けられているため、減速機150全体の大きさに影響を与えることなく呼吸弁170の機能を発揮させることができる。また、減速機150が小型となるため、エンジンルーム内において他の部材と干渉することを回避できる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0032】
例えば、侵入抑制部185は、図7に示すように、呼吸弁170を囲む領域の少なくとも一部にウォームホイール159と逆側(図中下側)に向かって窪み、潤滑剤の流れを呼吸弁170以外に案内する案内溝部188を備えてもかまわない。例えば、呼吸弁170の全周を囲む様に環状の案内溝部188を設けることにより、案内溝部188が樋の機能を果たし、カバー180の裏面に付着した潤滑剤は、案内溝部188に案内され呼吸弁170を回避するように落下する。
【0033】
また、呼吸弁170は、カバー180の外面から所定の距離で第二ピニオンシャフト160側に配置する例を示したが、呼吸弁170の外側の面とカバー180の外面とが面一になるように呼吸弁170を配置しても構わない。この場合、取付部181の深さが浅くなり、カバー180の外面に対する第一テーパ面187の角度θ2、第二テーパ面182の角度θ3を小さくすることができる。これにより減速機ハウジング151の内側においては潤滑剤の呼吸弁170への侵入を容易に抑制し、カバー180の外面においては取付部181からの水、泥などの自然排出をより容易に実現することが可能となる。また、カバー180の減速機ハウジング151の内側への突出量を抑制でき、減速機150の小型化を図ることができる。
【0034】
また、第二ピニオンシャフト160の軸方向において、第二ピニオンシャフト160と呼吸弁170とが対向する第二ピニオンシャフト160の端部に孔を設け、呼吸弁170の一部が前記孔の中に配置されるようにしてもよい。これにより、第二ピニオンシャフト160の軸方向において、減速機150および減速機ハウジング151の小型化を図ることができる。
【0035】
また、操舵装置100は、図8に示すように、操舵部材200とラックシャフト130とが機械的に連結されず、操舵部材200の回転角などをセンサ等で読み取り、センサ等の信号に基づいてラックシャフト130が第二ピニオンシャフト160の回転により往復動し、転舵輪201を転舵するいわゆるSBW(Steer By Wire System)であってもよい。
【0036】
さらに、操舵装置100は、図9に示すように、操舵部材200、ステアリングシャフト110などを備えず、コンピュータが操向を行う無人操舵装置であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は車両などの操舵装置であって、人による操舵力をアシストすることができる操舵装置、操舵部材と転舵輪とが機械的に接続されず、電気的に操舵されるSBW、無人操舵装置などに利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
100…操舵装置、110…ステアリングシャフト、120…第一ピニオンシャフト、130…ラックシャフト、131…ラックハウジング、132…第一ピニオン挿入部、133…ラックシャフト収容部、134…第二ピニオン挿入部、135…ブーツ、136…タイロッド、139…第二軸受、140…モータ、150…減速機、151…減速機ハウジング、152…軸受、156…貫通孔部、159…ウォームホイール、160…第二ピニオンシャフト、170…呼吸弁、180…カバー、181…取付部、182…第二テーパ面、183…防護壁、184…スリット、185…侵入抑制部、186…壁部、187…第一テーパ面、188…案内溝部、200…操舵部材、201…転舵輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9