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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】風力発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 15/00 20160101AFI20230816BHJP
   F03D 1/04 20060101ALI20230816BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20230816BHJP
   F03D 13/20 20160101ALI20230816BHJP
   B64B 1/50 20060101ALI20230816BHJP
   B64F 3/00 20060101ALI20230816BHJP
   F16H 7/12 20060101ALI20230816BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
F03D15/00
F03D1/04 B
F03D1/06 A
F03D13/20
B64B1/50
B64F3/00
F16H7/12 A
H02K7/18 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020007411
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021113545
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】水野 良治
(72)【発明者】
【氏名】丹原 千里
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一紀
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-204480(JP,A)
【文献】特開昭59-190097(JP,A)
【文献】特表平06-508421(JP,A)
【文献】特開2012-172676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
B64B 1/50
B64F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力発生体を有して上空を浮遊する浮遊体と、
前記浮遊体に設けられ、上空の気流により回転する風力タービンと、
前記浮遊体に設けられ、前記風力タービンの回転により回転する出力ローターと、
地上部に設置され、発電ローターが回転することにより発電する発電機と、
前記浮遊体の高さ位置に応じて、前記出力ローターの回転が伝動部材を介して前記発電ローターに伝動する状態を保持する伝動装置と、を備え
前記伝動部材は、前記出力ローターと前記発電ローターとに巻き掛けられており、
前記伝動装置は、
前記伝動部材が巻き掛けられた可動滑車と、
前記伝動部材の張力に応じて前記可動滑車を直線的に移動させる滑車移動機と、を有し、
前記可動滑車には、前記可動滑車の移動方向に沿うように前記伝動部材が巻き掛けられている
風力発電システム。
【請求項2】
浮力発生体を有して上空を浮遊する浮遊体と、
前記浮遊体に設けられ、上空の気流により回転する風力タービンと、
前記浮遊体に設けられ、前記風力タービンの回転により回転する出力ローターと、
地上部に設置され、発電ローターが回転することにより発電する発電機と、
前記浮遊体の高さ位置に応じて、前記出力ローターの回転が伝動部材を介して前記発電ローターに伝動する状態を保持する伝動装置と、を備え
前記伝動部材は、前記出力ローターと前記発電ローターとに巻き掛けられており、
前記伝動装置は、
前記伝動部材が巻き掛けられた可動滑車と、
前記伝動部材の張力に応じて前記可動滑車を移動させる滑車移動機と、を有し、前記可動滑車が地上部に設置され、前記可動滑車が前記滑車移動機によって水平方向に移動するように構成されている
風力発電システム。
【請求項3】
前記可動滑車には、前記可動滑車の移動方向に沿うように前記伝動部材が巻き掛けられている
請求項に記載の風力発電システム。
【請求項4】
前記出力ローターと前記可動滑車との間において前記伝動部材が巻き掛けられる固定滑車をさらに備え、
前記固定滑車は、
前記出力ローターと前記固定滑車との間における前記伝動部材の延在方向を鉛直方向に設定するとともに、前記固定滑車と前記可動滑車との間における前記伝動部材の延在方向を水平方向に設定する
請求項2または3に記載の風力発電システム。
【請求項5】
前記浮遊体は、第1テーブル部と前記第1テーブル部の上方に位置して前記第1テーブル部に対して旋回可能に連結される第2テーブルとを有するターンテーブル式のベース部を有し、
前記浮力発生体は、筒状の形状を有し、
前記風力タービンは、前記浮力発生体の内側空間に配設され、
前記浮力発生体および前記風力タービンが前記第2テーブルとともに旋回可能に構成されている
請求項1~のいずれか一項に記載の風力発電システム。
【請求項6】
地上部に固定されたアンカーと前記アンカーに接続されるワイヤとを有し、前記浮遊体の浮上を所定高度で規制するとともに前記所定高度における前記浮遊体の水平方向の移動を規制する繋留装置をさらに備える
請求項1~のいずれか一項に記載の風力発電システム。
【請求項7】
浮力発生体を有して上空を浮遊する浮遊体と、
前記浮遊体に設けられ、上空の気流により回転する風力タービンと、
前記浮遊体に設けられ、前記風力タービンの回転により回転する出力ローターと、
地上部に設置され、発電ローターが回転することにより発電する発電機と、
前記浮遊体の高さ位置に応じて、前記出力ローターの回転が伝動部材を介して前記発電ローターに伝動する状態を保持する伝動装置と、を備え
前記浮遊体は、第1テーブル部と前記第1テーブル部の上方に位置して前記第1テーブル部に対して旋回可能に連結される第2テーブルとを有するターンテーブル式のベース部を有し、
前記浮力発生体は、筒状の形状を有し、
前記風力タービンは、前記浮力発生体の内側空間に配設され、
前記浮力発生体および前記風力タービンが前記第2テーブルとともに旋回可能に構成されている
風力発電システム。
【請求項8】
浮力発生体を有して上空を浮遊する浮遊体と、
前記浮遊体に設けられ、上空の気流により回転する風力タービンと、
前記浮遊体に設けられ、前記風力タービンの回転により回転する出力ローターと、
地上部に設置され、発電ローターが回転することにより発電する発電機と、
前記浮遊体の高さ位置に応じて、前記出力ローターの回転が伝動部材を介して前記発電ローターに伝動する状態を保持する伝動装置と、を備え
地上部に固定されたアンカーと前記アンカーに接続されるワイヤとを有し、前記浮遊体の浮上を所定高度で規制するとともに前記所定高度における前記浮遊体の水平方向の移動を規制する繋留装置をさらに備える
風力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空を流れる気流を利用して風力発電を行う風力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上空を流れる気流を利用して発電を行う風力発電システムが知られている。例えば、特許文献1に記載の風力発電システムでは、地上部に発電機を設置し、上空を浮遊する浮遊体に気流によって回転するタービンを設け、そのタービンと発電機とを伝動部材であるケーブルで接続している。そして、タービンの回転によって発生したエネルギーをケーブルで発電機に伝動することにより発電を行っている。また、特許文献1に記載の風力発電システムでは、上空における浮遊体の姿勢を安定させるため、上空を流れる気流によって揚力を発生させる揚力発生体が浮遊体に備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-204480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮遊体は、上空の気流の流れによって高度が低下してしまうことがある。浮遊体の高度が低下してしまうとケーブルが弛んでしまい、タービンの回転力を発電機に伝動できなくなる。特許文献1に記載の風力発電システムにおいては、こうした浮遊体の高度低下に対して十分な考慮がなされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する風力発電システムは、浮力発生体を有して上空を浮遊する浮遊体と、前記浮遊体に設けられ、上空の気流により回転する風力タービンと、前記浮遊体に設けられ、前記風力タービンの回転により回転する出力ローターと、地上部に設置され、発電ローターが回転することにより発電する発電機と、前記浮遊体の高さ位置に応じて、前記出力ローターの回転が伝動部材を介して前記発電ローターに伝動する状態を保持する伝動装置と、を備える。
【0006】
上記構成の風力発電システムにおいて、前記伝動部材は、前記出力ローターと前記発電ローターとに巻き掛けられており、前記伝動装置は、前記伝動部材が巻き掛けられた可動滑車と、前記伝動部材の張力に応じて前記可動滑車を移動させる滑車移動機と、を有していてもよい。
【0007】
上記構成の風力発電システムにおいて、前記滑車移動機は、前記可動滑車を直線的に移動させてもよい。
上記構成の風力発電システムにおいて、前記可動滑車には、前記可動滑車の移動方向に沿うように前記伝動部材が巻き掛けられていてもよい。
【0008】
上記構成の風力発電システムにおいて、前記伝動装置は、前記可動滑車が地上部に設置され、前記可動滑車が前記滑車移動機によって水平方向に移動するように構成されていてもよい。
【0009】
上記構成の風力発電システムは、前記出力ローターと前記可動滑車との間において前記伝動部材が巻き掛けられる固定滑車をさらに備え、前記固定滑車は、前記出力ローターと前記固定滑車との間における前記伝動部材の延在方向を鉛直方向に設定するとともに、前記固定滑車と前記可動滑車との間における前記伝動部材の延在方向を水平方向に設定してもよい。
【0010】
上記構成の風力発電システムにおいて、前記浮遊体は、第1テーブル部と前記第1テーブル部の上方に位置して前記第1テーブル部に対して旋回可能に連結される第2テーブルとを有するターンテーブル式のベース部を有し、前記浮力発生体は、筒状の形状を有し、前記風力タービンは、前記浮力発生体の内側空間に配設され、前記浮力発生体および前記風力タービンが前記第2テーブルとともに旋回可能に構成されていてもよい。
【0011】
上記構成の風力発電システムは、地上部に固定されたアンカーと前記アンカーに接続されるワイヤとを有し、前記浮遊体の浮上を所定高度で規制するとともに前記所定高度における前記浮遊体の水平方向の移動を規制する繋留装置をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、浮遊体の高度が低下しても風力タービンの回転を発電機に伝動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】風力発電システムの一実施形態の概略構成を示す図。
図2】保持装置の一例の概略構成を示す図。
図3】変形例において、保持装置の他の例の概略構成を示す図。
図4】変形例において、保持装置の他の例の概略構成を示す図。
図5】変形例において、保持装置の他の例の概略構成を示す図。
図6】変形例において、捻れ伝動の一例を利用した風力発電システムの概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および図2を参照して、風力発電システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、風力発電システム10は、地上部5の上空を浮遊する浮遊体11と、地上部5に設置されて発電ローター12が回転することにより発電する発電機13と、を備えている。浮遊体11には、上空を流れる気流Aを利用して回転する風力タービン14と、風力タービン14の回転によって回転する出力ローター15とが設けられている。出力ローター15と発電ローター12とには伝動部材16が巻き掛けられている。伝動部材16は、その張力が保持装置17によって所定張力に保持される。伝動部材16と保持装置17は、伝動装置を構成する。所定張力は、出力ローター15の回転が伝動部材16を介して発電ローター12に伝動される張力である。発電機13は、出力ローター15の回転が伝動部材16によって発電ローター12に伝えられることにより発電する。なお、「地上部に設置され」とは、地表付近に設置されて何らかのかたちで地面に支持されていることを示しており、地面に直接支持されていることや建物に支持されていること、地中に設置されることを含んでいる。
【0015】
浮遊体11は、ベース部20と浮力発生体21とを有している。
ベース部20は、第1テーブル部22と、第1テーブル部22の上方に位置して第1テーブル部22に対して旋回可能に連結された第2テーブル部23とを有するターンテーブルである。第1テーブル部22は、繋留装置25によって繋留されている。繋留装置25は、地上部5に複数箇所に固定されたアンカー26と各アンカー26に連結されたワイヤ27とで構成される。繋留装置25は、上方からの平面視においてワイヤ27が四方に向かって放射状に延びるように構成されている。繋留装置25は、浮遊体11の浮上を規制することにより浮遊体11を所定高度(例えば地上数百メートル)に繋留するとともに、所定高度にある浮遊体11の水平方向の移動を規制する。浮遊体11は、繋留装置25に繋留された状態において、第1テーブル部22に対して第2テーブル部23が鉛直方向を中心として旋回するように構成されている。
【0016】
浮力発生体21は、第2テーブル部23に支持されており、第2テーブル部23とともに第1テーブル部22に対して旋回可能に構成されている。浮力発生体21は、例えばナイロンやポリエステル、ゴムなどによって構成される。浮力発生体21は、例えば水素やヘリウムなど空気よりも軽い気体が封入されて筒状に膨らむことにより浮力を発生させる。浮力発生体21は、繋留装置25によって所定高度に浮遊体11が繋留され続けるのに十分な浮力を発生させる。
【0017】
浮遊体11は、水平方向を中心軸とする筒状をなす浮力発生体21の内側空間に風力タービン14を有している。風力タービン14は、複数のブレード28を有するタービン部29と、タービン部29に連結されて浮力発生体21の軸方向に延びる出力軸30と、を有している。風力タービン14は、浮力発生体21の内側空間を通過する気流Aを受けて浮力発生体21の軸方向を中心として回転する。風力タービン14は、ベース部20に支持されており、第2テーブル部23とともに第1テーブル部22に対して旋回可能に構成されている。
【0018】
浮遊体11は、風力タービン14の回転を出力ローター15に伝達する伝達機構を内蔵した動力伝達部31を有している。動力伝達部31は、第2テーブル部23とともに旋回可能に風力タービン14を支持している。また動力伝達部31は、浮力発生体21の軸方向に平行な方向を回転中心として回転可能に出力ローター15を支持している。動力伝達部31は、第2テーブル部23が旋回しても風力タービン14の回転が出力ローター15に伝達可能に構成されている。出力ローター15には、環状の伝動部材16が巻き掛けられている。
【0019】
伝動部材16は、出力ローター15と発電機13の発電ローター12とに巻き掛けられており、風力タービン14の回転を発電ローター12に伝動する。伝動部材16は、出力ローター15の回転によって発電ローター12を回転可能に構成されていればよく、例えば歯付きベルトやローラーチェーンなどで構成される。発電機13では、伝動部材16が発電ローター12を回転させることにより発電が行われる。伝動部材16は、出力ローター15から発電機13に向かって伝動部材16が移動する上り部16aと、発電機13から出力ローター15に向かって伝動部材16が移動する下り部16bと、を有している。伝動部材16の上り部16aは、第1固定滑車32と可動滑車33とを介して発電機13の発電ローター12に接続されている。伝動部材16の下り部16bは、第2固定滑車34を介して出力ローター15に接続されている。これら第1固定滑車32、可動滑車33、および、第2固定滑車34の回転軸は、発電機13の発電ローター12の回転軸と平行に設定されるとよい。
【0020】
第1固定滑車32は、地上部5に設置されており、出力ローター15と可動滑車33との間に配設されている。第1固定滑車32は、出力ローター15から第1固定滑車32へと向かう伝動部材16の延在方向が鉛直方向に設定される位置に設置される。
【0021】
可動滑車33は、地上部5に設置されており、第1固定滑車32と発電機13の発電ローター12との間に配設されている。可動滑車33は、地上部5に設置された滑車移動機35によって水平方向に延びる移動方向Xに沿って発電機13に対して接離移動可能に構成されている。可動滑車33は、第1固定滑車32と可動滑車33との間、および、可動滑車33と発電機13の発電ローター12との間における伝動部材16の延在方向が可動滑車33の移動方向Xに設定される位置に設置される。
【0022】
第2固定滑車34は、地上部5に設置されており、発電機13の発電ローター12と出力ローター15との間に配設されている。第2固定滑車34は、発電機13の発電ローター12と第2固定滑車34との間における伝動部材16の延在方向が可動滑車33の移動方向Xに設定されるように、また、第2固定滑車34と出力ローター15との間における伝動部材16の延在方向が鉛直方向に設定されるように設置される。
【0023】
上述した可動滑車33と滑車移動機35は、保持装置17を構成する。保持装置17は、その時々に応じて可動滑車33を移動方向Xに沿って移動させることにより伝動部材16の張力を所定張力に保持する。
【0024】
図2に示すように、滑車移動機35は、移動方向Xに沿って可動滑車33を直線的に移動させるように構成されている。滑車移動機35は、可動滑車33の滑車部33aを回転自在に支持する回転軸部33bを移動方向Xに沿ってガイドするガイド部36と、発電機13から離間するように移動方向Xに沿って可動滑車33を押圧して伝動部材16に所定張力を発生させる押圧部37とで構成されている。押圧部37は、例えば、可動滑車33の回転軸部33bが連結される伸縮ロッド38を有する油圧シリンダー39と、リリーフ弁などを有して油圧シリンダー39に対して所定圧力の油圧を供給する油圧供給部40とで構成される。押圧部37は、伝動部材16の張力が所定張力よりも小さくなると可動滑車33を発電機13から離間させることにより伝動部材16の張力を所定張力に保持する。押圧部37は、伝動部材16の張力が所定張力よりも大きくなると可動滑車33を発電機13に接近させることにより伝動部材16の張力を所定張力に保持する。
【0025】
上述した構成の風力発電システム10において、浮遊体11は、浮力発生体21に水素が封入されることにより、繋留装置25によって繋留される所定高度まで浮上する。そして、筒状の浮力発生体21の内側空間を気流Aが通過することによって風力タービン14が回転する。風力タービン14の回転は、動力伝達部31および出力ローター15を介して伝動部材16に伝達される。伝動部材16は、風力タービン14の回転を発電機13の発電ローター12に伝動する。これにより、発電機13において発電が行われる。
【0026】
(作用)
浮遊体11は、十分な浮力を有しているものの、気流Aの流れ方向の変化にともなう振動などによっては高度が低下してしまうことがある。浮遊体11の高度が所定高度よりも低くなると、伝動部材16が弛んで伝動部材16の張力が所定張力よりも低下する。上述した風力発電システム10においては、浮遊体11の高度が所定高度よりも低くなるとき、保持装置17によって可動滑車33が発電機13から離間するように移動することで伝動部材16の張力が所定張力に保持される。また、この状態から浮遊体11が所定高度に戻ろうとするとき、保持装置17によって可動滑車33が発電機13に接近するように移動することで伝動部材16の張力が所定張力に保持される。
【0027】
本実施形態の効果について説明する。
(1)風力発電システム10においては、浮遊体11の高さ位置に応じて、出力ローター15の回転が伝動部材16を介して発電ローター12に伝動する状態を保持装置17が保持する。浮遊体11の高度が所定高度から低下した場合には、保持装置17によって可動滑車33が移動することにより伝動部材16の張力を所定張力に保持する。これにより、浮遊体11の高度が所定高度から低下しても、風力タービン14の回転を発電機13に伝動することができる。
【0028】
(2)保持装置17は、伝動部材16が巻き掛けられた可動滑車33を、伝動部材16の張力に応じて発電機13に対して接離移動させることで伝動部材16の張力を所定張力に保持する。これにより、例えば発電機13そのものを出力ローター15に対して接離移動させる構成に比べて、簡易な構成のもとで伝動部材16の張力を所定張力に保持することができる。
【0029】
(3)滑車移動機35は、可動滑車33を直線的に移動させる。この可動滑車33には、可動滑車33の移動方向Xに沿うように伝動部材16が巻き掛けられている。これにより、滑車移動機35の構成を簡易なものとすることができる。更に、可動滑車33の移動量に対する伝動部材16の張力変化を大きくすることができる。その結果、浮遊体11の高度変化に対して伝動部材16の張力をすばやく調整することができる。
【0030】
(4)保持装置17は、可動滑車33および滑車移動機35が地上部5に設置されている。これにより、例えば、可動滑車33および滑車移動機35のメンテナンスを同時期に行ううえで上下作業が生じることがない。その結果、可動滑車33および滑車移動機35のメンテナンスを安全に行うことができる。
【0031】
(5)第1固定滑車32は、浮遊体11と地上部5との間における伝動部材16の延在方向を鉛直方向に設定する。これにより、地上部5と浮遊体11との間を流れる下降気流の影響を伝動部材16の上り部16aが受けにくくなる。その結果、浮遊体11と地上部5との間を流れる下降気流に起因した浮遊体11の高度低下を抑えることができる。
【0032】
(6)第2固定滑車34は、地上部5と浮遊体11との間における伝動部材16の延在方向を鉛直方向に設定する。これにより、地上部5と浮遊体11との間を流れる下降気流の影響を伝動部材16の下り部16bが受けにくくなる。その結果、地上部5と浮遊体11との間を流れる下降気流に起因した浮遊体11の高度低下を抑えることができる。
【0033】
(7)浮遊体11は、浮力発生体21および風力タービン14が第2テーブル部23とともに旋回可能に構成されている。これにより、上空を流れる気流Aの流れ方向に合わせて浮力発生体21および風力タービン14の向きを変更することができる。その結果、上空を流れる気流Aの流れ方向が変化したとしても発電機13による発電を継続的に行うことができる。
【0034】
(8)浮遊体11が繋留装置25によって地上部5に繋留されている。これにより、浮遊体11が所定高度以上に浮上することを規制することができるとともに、所定高度に到達した浮遊体11の水平方向への移動を規制することができる。
【0035】
(9)保持装置17は、油圧シリンダー39に対して油圧供給部40から所定圧力の油圧を供給する。これにより、簡易な構成で、伝動部材16の張力を所定張力に保持することができる。
【0036】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・繋留装置25は、上方からの平面視においてワイヤ27が四方に向かって放射状に延びる構成に限られない。繋留装置25は、上方からの平面視においてワイヤ27が八方に向かって放射状に延びる構成であってもよいし、鉛直方向に沿ってワイヤ27が延びる構成であってもよい。また、浮遊体11は、繋留装置25によって繋留されなくともよい。
【0037】
・浮力発生体21は、浮遊体11の高度を所定高度に維持する浮力を有していればよく、筒状をなす構成に限られない。例えば、浮力発生体21は、球体状をなして第1テーブル部22に対してワイヤなどを介して支持される構成であってもよい。
【0038】
・浮遊体11のベース部20は、第1テーブル部22と第2テーブル部23とで構成されるターンテーブルに限られない。例えばベース部20は、第1テーブル部22のみで構成され、上空を流れる気流Aの流れ方向に合わせて風力タービン14の向きを変更可能に風力タービン14を支持する構成であってもよい。
【0039】
・伝動装置の保持装置17は、伝動部材16の張力を所定張力に保持できる構成であればよい。
例えば、図3に示すように、保持装置17は、可動滑車33が発電機13よりも下方に配設され、滑車移動機35による移動方向Xが鉛直方向に設定される構成であってもよい。これにより、水平方向において保持装置17が占有する領域を小さくすることができる。こうした構成においては、出力ローター15の直下に位置するように可動滑車33が配設され、かつ、伝動部材16が他の滑車を介すことなく可動滑車33に巻き掛けられるとよい。また、発電ローター12に伝動部材16が十分に巻き掛けられるように一対の固定滑車41,42が配設されるとよい。
【0040】
・保持装置17は、滑車移動機35を用いて可動滑車33を移動させる構成に限られない。例えば、保持装置17は、可動滑車33を鉛直方向にガイドするガイド部36を有し、伝動部材16の張力が所定張力に保持されるように可動滑車33の重量が設定される構成であってもよい。これにより、保持装置17のさらなる簡素化を図ることができる。
【0041】
図4に示すように、伝動部材16は、他の滑車を介すことなく、出力ローター15、可動滑車33、および、発電ローター12に巻き掛けられる構成であってもよい。こうした構成においては、例えば可動滑車33および発電機13のメンテナンスを考慮して、可動滑車33および発電機13が地上部5に設置され、可動滑車33の移動方向Xが水平方向に沿う方向に設定されるとよい。また、図4に示すように、可動滑車33には、移動方向Xとは異なる方向に延びるように伝動部材16が巻き掛けられてもよい。
【0042】
・保持装置17は、可動滑車33を直線的に移動させる構成に限らず、例えば、可動滑車33の移動経路が円弧状に設定される構成であってもよい。
・保持装置17においては、油圧シリンダー39に対して油圧供給部40から所定圧力の油圧を供給することにより伝動部材16の張力を所定張力に保持した。これに限らず、保持装置17は、伝動部材16の張力を所定張力に保持できればよく、油圧シリンダー39に対して油圧供給部40から所定圧力の油圧を供給する構成に限定されない。
【0043】
図5に示すように、例えば、伝動部材16の張力を検出する張力センサー43と、張力センサー43の検出値が所定張力に保持されるように滑車移動機35を制御するコンピューター44とを有する構成であってもよい。また、浮遊体11の高度を計測し、その計測した高度に基づいて滑車移動機35を制御する構成であってもよい。
【0044】
・滑車移動機35は、油圧シリンダー39と油圧供給部40とを用いて可動滑車33を移動させる構成に限られない。例えば、滑車移動機35は、モーターを用いて可動滑車33を移動させる構成であってもよい。
【0045】
・保持装置17は、発電機13を移動させることにより、伝動部材16の張力を所定張力に保持する構成であってもよい。
・伝動装置の伝動部材16は、フレキシブルシャフトのように、自由自在に曲げられる可撓軸を出力ローター15によって捻ることにより、出力ローター15の回転を発電ローター12に伝動する構成であってもよい。
【0046】
図6に示すように、捻り伝動の一例においては、フレキシブルチューブに収容されたコア16(伝動部材)の捻りを発電ローター12の回転に変換することにより、出力ローター15の回転が発電ローター12に伝動される状態に保持する保持装置45が設けられる。これにより、浮遊体11の高さが変化してフレキシブルチューブが撓んだ場合にも、保持装置45によりコア16の回転を発電ローター12に伝達することができる。
【0047】
捻り伝動の他の例においては、コア16により、出力ローター15と発電ローター12とが直接連結される。この場合も、保持装置45により、出力ローター15の回転が発電ローター12に伝動可能な状態にコア16が保持される。
【符号の説明】
【0048】
A…気流、X…移動方向、5…地上部、10…風力発電システム、11…浮遊体、12…発電ローター、13…発電機、14…風力タービン、15…出力ローター、16…伝動部材、16a…上り部、16b…下り部、17…保持装置、20…ベース部、21…浮力発生体、22…第1テーブル部、23…第2テーブル部、25…繋留装置、26…アンカー、27…ワイヤ、28…ブレード、29…タービン部、30…出力軸、31…動力伝達部、32…第1固定滑車、33…可動滑車、33a…滑車部、33b…回転軸部、34…第2固定滑車、35…滑車移動機、36…ガイド部、37…押圧部、38…伸縮ロッド、39…油圧シリンダー、40…油圧供給部、41,42…固定滑車、43…張力センサー、44…コンピューター、45…保持装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6