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特許7331738図面管理装置、図面管理システム、図面管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】図面管理装置、図面管理システム、図面管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20230816BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20230816BHJP
   G06F 111/02 20200101ALN20230816BHJP
【FI】
G06F30/10
G05B23/02 Z
G06F111:02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020039172
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021140592
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】石 建信
(72)【発明者】
【氏名】江間 伸明
(72)【発明者】
【氏名】安念 正人
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-141405(JP,A)
【文献】特開平08-235231(JP,A)
【文献】特開2018-205974(JP,A)
【文献】特開2018-205908(JP,A)
【文献】特開2006-244072(JP,A)
【文献】特開2000-003379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G05B 23/02
G06F 111/02
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部と通信部とを備える図面管理装置であって、
前記処理部は、
プラントの要素と複数の前記要素の間の関係とを特定する各種図面に基づいて、前記実プラントの要素と複数の前記要素の間の関係とを仮想的に表す仮想プラントを生成し、
前記各種図面のうち第1種の図面が変更された場合に、前記第1種の図面の変更に基づいて、前記仮想プラントを更新し、
前記通信部を介して、更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報を所定の通知先に通知する、
図面管理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記仮想プラントの更新時に変更された要素が、前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に記載される必要のある要素であるか否かを検証し、前記仮想プラントの更新時に変更された要素が前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に記載される必要のある要素であるか否かの検証の結果を更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報に含める、請求項1に記載の図面管理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記更新時において、前記各種図面のうち変更された前記第1種の図面以外の図面に対して、前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に記載される必要のある要素であるか否かの検証を行う、請求項2に記載の図面管理装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記仮想プラントの更新時に変更された要素のうち前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に記載される必要のある要素が、前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に反映されているか否かを検証し、前記仮想プラントの更新時に変更された要素が前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に反映されているか否かの検証の結果を更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報に含める、請求項又はに記載の図面管理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記更新時において、前記各種図面のうち変更された前記第1種の図面以外の図面に対して、前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に記載される必要のある要素が前記仮想プラントの更新時における前記各種図面に反映されているか否かの検証を行う、請求項4に記載の図面管理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記第1種の図面で変更された要素が前記各種図面のうち第2種の図面で必要であり、かつ、前記第1種の図面で変更された要素のうち前記第2種の図面で必要である要素が前記第2種の図面に反映されていない場合に、更新後の前記仮想プラントの変更内容に関する情報を所定の通知先に通知する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の図面管理装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の図面管理装置と、前記図面管理装置と通信可能な少なくとも1台の端末装置と、を備える、図面管理システム。
【請求項8】
コンピュータを用いた図面管理方法であって、
前記コンピュータが、実プラントの要素と複数の前記要素の間の関係とを特定する各種図面に基づいて、前記実プラントの要素と複数の前記要素の間の関係とを仮想的に表す仮想プラントを生成するステップと、
前記コンピュータが、前記各種図面のうち第1種の図面が変更された場合に、前記第1種の図面の変更に基づいて、前記仮想プラントを更新するステップと、
前記コンピュータが、更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報を所定の通知先に通知するステップと、を含む、図面管理方法。
【請求項9】
実プラントの要素と複数の前記要素の間の関係とを特定する各種図面に基づいて、前記実プラントの要素と複数の前記要素の間の関係とを仮想的に表す仮想プラントを生成するステップと、
前記各種図面のうち第1種の図面が変更された場合に、前記第1種の図面の変更に基づいて、前記仮想プラントを更新するステップと、
更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報を所定の通知先に通知するステップと
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、図面管理装置、図面管理システム、及び図面管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントの3Dデータからポンプ等のオブジェクトを識別する方法として、例えば特許文献1には、プラントの外形をスキャンして取得した3Dデータから2Dデータを生成し、この2Dデータを既知の2Dデータと比較することにより、不明なオブジェクトを識別する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-120632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、既知の2Dデータが最新のデータであることを前提としているので、既知の2Dデータが最新のデータではない場合には不明なオブジェクトを特定することができない。ここで、プラントの設計等においては、PFD(Process Flow Diagram:プロセスフロー図)、PFDを詳細化したP&ID(Piping and Instrument Diagram:配管系統図)、及びP&IDに物理情報を含めた3D配管図(3Dプラント図)等の各種図面が利用される。その中のある図面、例えばPFDに対する修正等において、必要なものは、P&ID及び3D配管図に対しても反映されるべきである。しかし、プラントでは、複数の担当者が図面の修正等の作業を分担するので、担当者の変更又は多忙等の理由によって、反映作業が放置されたり、修正内容が失念されたりすることがある。したがって、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性が担保されているとは限らない。特に、プラントの現状に整合していないPFD等を元にP&ID及び3D配管図等が作成されると、図面に含まれる不整合な部分が他図面に拡散し、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性がより担保されないことになる。
【0005】
そこで、本開示は、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性を担保することができる図面管理装置、図面管理システム、及び図面管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る図面管理装置は、処理部と通信部とを備え、前記処理部は、プラントの各種図面に基づいて、仮想プラントを生成し、前記各種図面のうちいずれかの図面が変更された場合に、前記変更に基づいて、前記仮想プラントを更新し、前記通信部を介して、更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報を所定の通知先に通知する。
【0007】
これにより、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性を担保することができる。
【0008】
一実施形態において、前記処理部は、前記仮想プラントの更新時に変更された要素が、前記更新時における前記各種図面に記載される必要のある要素であるか否かを検証し、前記検証の結果を更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報に含めてもよい。
【0009】
これにより、各担当者は、仮想プラントの更新に伴って、自らが担当する図面を変更する必要があるか否かを効率的に把握することができるので、反映漏れが無くなり、作業効率も向上する。
【0010】
一実施形態において、前記処理部は、前記仮想プラントの更新時に変更された要素が、前記更新時における前記各種図面に反映されているか否かを検証し、前記検証の結果を更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報に含めてもよい。
【0011】
これにより、各担当者は、仮想プラントの更新に伴って、自らが担当する図面を変更する必要があるか否かを効率的に把握することができるので、反映漏れが無くなり、作業効率も向上する。
【0012】
一実施形態において、前記処理部は、前記更新時における前記変更された図面以外の各種図面に対して、前記検証を行ってもよい。
【0013】
これにより、上記検証をさらに効率的に行うことができる。
【0014】
幾つかの実施形態に係る図面管理システムは、前記図面管理装置と、前記図面管理装置と通信可能な少なくとも1台の端末装置と、を備える。
【0015】
これにより、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性を担保することができる。
【0016】
幾つかの実施形態に係る図面管理方法は、コンピュータを用いた図面管理方法であって、プラントの各種図面に基づいて、仮想プラントを生成するステップと、前記各種図面のうちいずれかの図面が変更された場合に、前記変更に基づいて、前記仮想プラントを更新するステップと、更新後の前記仮想プラントの変更に関する情報を所定の通知先に通知するステップと、を含む。
【0017】
これにより、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性を担保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性を担保することができる図面管理装置、図面管理システム、及び図面管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る図面管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2】本実施形態に係る図面管理システムの第1の処理例を説明するフローチャートである。
図3】本実施形態に係る図面管理システムの第2の処理例を説明するフローチャートである。
図4】第2の処理例におけるデータテーブルの概要を説明する図である。
図5】第2の処理例における仮想プラントに関する情報の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同一符号は、同一または同等の構成要素を示す。
【0021】
(図面管理システム)
図1を参照して、本実施形態に係る図面管理システム1の構成を説明する。
【0022】
図面管理システム1は、図面管理装置10と、第1の端末装置に相当する端末装置Aと、第2の端末装置に相当する端末装置Bと、第3の端末装置に相当する端末装置Cとを備える。図面管理装置10は、インターネット等のネットワーク20を介して、端末装置A、端末装置B、及び端末装置Cとそれぞれ通信可能である。なお、端末装置の数は3台に限定されず、任意である。
【0023】
図面管理装置10は、PC(personal computer)、又はクラウドコンピューティングシステム等に属するサーバ等のコンピュータであるが、これらに限定されない。
【0024】
図面管理装置10は、処理部11、記憶部12、及び通信部13を備える。
【0025】
処理部11は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(central processing unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。処理部11は、図面管理装置10の各部を制御しながら、図面管理装置10の動作に関わる処理を行う。
【0026】
記憶部12は、1つ以上の半導体メモリ、1つ以上の磁気メモリ、1つ以上の光メモリ、又はこれらの組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。記憶部12には、図面管理装置10の動作に用いられる情報、及び図面管理装置10の動作によって得られる情報が格納される。例えば、記憶部12には、実プラントの各種図面及び仮想プラントVPに関する情報の他、これらの表現ルール、比較ルール、比較結果、登録履歴、及び通知履歴に関する情報が格納される。また、記憶部12には、通知先の端末装置A乃至C、各担当者のアドレス、及び担当業務等に関する情報等も格納され得る。
【0027】
通信部13は、例えば、インターネット、ゲートウェイ、及びLAN(local area network)等を介して通信することができる、1つ以上の通信インタフェースを含む。通信部13は、図面管理装置10の動作に用いられる情報を受信し、図面管理装置10の動作によって得られる情報を送信する。
【0028】
なお、図面管理装置10の動作は、記憶部12に格納されたプログラムを、処理部11に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。
【0029】
端末装置A、端末装置B、及び端末装置Cは、例えば、携帯電話機、スマートフォン、タブレット、又はPC(personal computer)等のコンピュータであるが、これらに限定されない。端末装置A、端末装置B、及び端末装置Cは、実プラントの各種図面を管理するために必要な任意のアプリケーション等が適宜インストールされており、各種図面の関係者によってそれぞれ使用される。なお、各種図面の関係者は、各種図面を扱う担当者に限定されず、各種図面の監督者又は修正グループのリーダー、複数図面やプラント全体の監督者等を含んでもよい。
【0030】
実プラントは、例えば、化学等の工業プラントの他、ガス田及び油田を含む井戸元、並びにその周辺を管理制御するプラントを含む。その他にも、実プラントは、例えば、水力発電、火力発電、及び原子力発電を含む発電を管理制御するプラント、太陽光発電及び風力発電を含む環境発電を管理制御するプラント、並びに上下水及びダム等を管理制御するプラントを含んでもよい。
【0031】
上述した構成において、図面管理装置10の記憶部12の一部又は全部の処理を、図面管理装置10、並びに端末装置A、端末装置B、及び端末装置Cと通信可能な外部の記憶装置が担ってもよい。上述した構成の他に、図面管理システム1は、実プラントの外形を3Dスキャン可能な任意の3Dスキャン装置と、この3Dスキャン装置と通信可能な任意の端末装置とを備えてもよい。また、図面管理システム1は、システム全体を管理することが可能な任意の端末装置を備えてもよい。
【0032】
(第1の処理例)
図2を参照して、本実施形態に係る図面管理システム1の第1の処理例を説明する。第1の処理例は、本開示による図面管理方法の一実施形態に相当する。
【0033】
まず、図面管理装置10の記憶部12には、担当者Aが作成した図面A1、担当者Bが作成した図面B1、及び担当者Cが作成した図面C1が予め登録されているとする。本例では、図面A1は、PFD(Process Flow Diagram:プロセスフロー図)であり、図面B1は、P&ID(Piping and Instrument Diagram:配管系統図)であり、図面C1は、3D配管図である。図面A1、図面B1、及び図面C1の登録の順は任意であり、図面A1、図面B1、及び図面C1の種別も、PFD、P&ID、及び3D配管図に限定されない。図面管理装置10の処理部11は、記憶部12から取得した図面A1、図面B1、及び図面C1に基づいて、仮想プラントVP1を生成し、記憶部12に格納する。例えば、処理部11は、任意の手法を用いて、図面A1、図面B1、及び図面C1に含まれるバルブ又は配管等の要素及び要素間の関係等を抽出し、これらを重複なく統合することによって、仮想プラントVP1を生成する。すなわち、「仮想プラント」とは、実プラントにおけるバルブ又は配管等の設備及び設備間の関係等を示すデータの集合体である。例えば、「仮想プラント」は、意味モデル(Semantic Data Model)等で記載されていてもよい。
【0034】
第1の処理例は、担当者Bが、端末装置Bを用いて、図面B1を変更して図面B2を作成し、図面管理装置10の記憶部12に図面B2を登録した時点で開始する。なお、チェックイン/チェックアウト等のアクセス権のコントロールによって、担当者Bが図面B1を修正している間、他の担当者B’が図面B1を修正することができないようにしてもよい。
【0035】
ステップS101において、図面管理装置10の処理部11は、記憶部12から同種図面である図面B1及び図面B2を取得し、図面B1と図面B2とを比較する。なお、第1の処理例では、図面B1が第1種の図面における旧図面に相当し、図面B2が第1種の図面における新図面に相当する。
【0036】
ステップS102において、図面管理装置10の処理部11は、図面B1と図面B2とに差分ΔBがあるか否かを判断する。例えば、図面B1及び図面B2は、要素及び表現が同一又は類似する同種図面であるので、処理部11は、任意の画像解析技術等を用いて、ステップS102の判断を行うこともできるが、これに限定されない。例えば、処理部11は、図面B1及び図面B2を、要素及び要素同士の関係を示す情報等を含む任意の比較用モデルに変換した上で、ステップS102の判断を行う。差分ΔBがある場合(ステップS102:YES)、ステップS103に進む。差分ΔBがない場合(ステップS102:NO)、本処理は終了する。ただし、差分ΔBがない場合、処理部11は、通信部13を介して、差分ΔBがない旨を端末装置Bに通知してもよい。これにより、図面Bの関係者は、図面Bが新たに登録された事実を認識しつつ、登録された図面Bに変更が無いことを確認することができる。なお、差分ΔBが無いということは、図面Bの改版版数のみがアップされていることが考えられるが、図面Bの関係者がこれを認識することにより、変更なしでの改版の事実把握又は注意喚起等に繋がる。また、他種図面の関係者に対して、不要な通知が行われることを防止することができる。
【0037】
ステップS102からステップS103に進んだ場合、ステップS103において、図面管理装置10の処理部11は、記憶部12から取得した仮想プラントVP1に差分ΔBを反映する。これによって、仮想プラントVP1は、仮想プラントVP2に更新される。処理部11は、更新後の仮想プラントVP2の変更に関する情報を記憶部12に格納する。なお、この情報は、更新内容又は更新時刻等の情報を含むことができる。
【0038】
ステップS104において、図面管理装置10の処理部11は、通信部13を介して、仮想プラントVP2の変更に関する情報を端末装置A、端末装置B、又は端末装置C等の所定の通知先に通知する。例えば、端末装置Aを介して通知を受けた担当者Aは、新たに発生した変更を認識し、端末装置Aを用いて、図面A1に、新たに発生した変更のうち必要な変更を反映して図面A2を作成し、図面管理装置10の記憶部12に登録する。ここで、第1の処理例では、図面A1及び図面A2がそれぞれ第2種の図面に相当する。なお、処理部11は、通信部13を介して、仮想プラントVP2の更新時にステップS104の通知を自動的に行ってもよい。あるいは、処理部11は、通信部13を介して、図面管理装置10の記憶部12に格納された仮想プラントVPへのリンク(例えばURL等)が張られたメッセージを通知してもよい。この場合、メッセージの通知を受けた担当者等は、リンクをクリックして、図面管理装置10の記憶部12に格納された仮想プラントVPにアクセスすることができる。
【0039】
第1の処理例によれば、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性を担保することができる。なお、第1の処理例では、図面B1の変更に伴った仮想プラントVP1の更新について説明したが、図面A1又は図面C1が変更された場合も、同様の処理が行われる。
【0040】
(第2の処理例)
図3乃至5を参照して、本実施形態に係る図面管理システム1の第2の処理例を説明する。第2の処理例は、本開示による図面管理方法の一実施形態に相当する。
【0041】
図面の種別が異なると、図面に含まれる要素も異なり、情報量も異なる。例えばPFD、P&ID、3D配管図の順に情報量は多くなる。特にPFDは情報量が極端に少なく、例えばP&IDを変更した場合でも、PFDには、この変更を反映する必要がないことがある。具体的に、P&IDにおいてマニュアルバルブが追加されたとする。マニュアルバルブはPFDには記載されないので、マニュアルバルブが追加されたことをPFDの担当者Aに通知しても意味がない。また、担当者個人又は担当チームが複数の図面を担当していたり、複数図面の担当者間で連携が取れていたりする場合には、ある種別の図面の変更が他の種別の図面に既に反映されていることがある。第2の処理例は、これらを考慮した例である。
【0042】
まず、図面管理装置10の記憶部12には、担当者Aが作成した図面A1、担当者Bが作成した図面B1、及び担当者Cが作成した図面C1が予め登録されているとする。なお、図面A1、図面B1、及び図面C1の登録の順は任意であり、図面A1、図面B1、及び図面C1の種別も、PFD、P&ID、及び3D配管図に限定されない。図面管理装置10の処理部11は、第1の処理例と同様にして、図面A1、図面B1、及び図面C1に基づいて、仮想プラントVP1を生成し、記憶部12に格納する。
【0043】
第2の処理例は、担当者Bが、端末装置Bを用いて、図面B1を変更して図面B2を作成し、図面管理装置10の記憶部12に図面B2を登録した時点で開始する。本例では、図面B1から図面B2への変更が、マニュアルバルブ(M-Valve)MV501及びコントロールバルブ(C-Valve)CV203の追加である。
【0044】
ステップS201において、図面管理装置10の処理部11は、記憶部12から同種図面である図面B1及び図面B2を取得し、図面B1と図面B2とを比較する。なお、第2の処理例では、図面B1が第1種の図面における旧図面に相当し、図面B2が第1種の図面における新図面に相当する。
【0045】
ステップS202において、図面管理装置10の処理部11は、ステップS102と同様にして、図面B1と図面B2との差分ΔBがあるか否かを判断する。差分ΔBがある場合(ステップS202:YES)、ステップS203に進む。なお、差分ΔBがない場合(ステップS202:NO)、本処理は終了する。本例では、差分ΔBは、MV501及びCV203の追加に相当する。
【0046】
ステップS202からステップS203に進んだ場合、ステップS203において、図面管理装置10の処理部11は、記憶部12から取得した仮想プラントVP1に差分ΔBを反映する。これによって、仮想プラントVP1は、仮想プラントVP2に更新される。本例では、仮想プラントVP2は、仮想プラントVP1に、MV501及びCV203が追加されたものである。つまり、仮想プラントVP2とは、各種図面における要素の追加又は削除等の変更に対応して、それまでの実プラントの構成を示す仮想プラントVP1に対して、この変更を反映して、最新化したものである。なお、各種図面は、プラントの設計に用いられ、その変更内容は最終的に実プラントに反映される。そして、作業者等によって変更内容が正確に反映されると、各種図面と実プラントとが合致することになる。ただし、各種図面に記載された設計内容が実プラントに反映される前は、仮想プラントVPは、プラントの設計に供する図面群を統合したデータ(将来のプラント像)であり、実プラントとは完全に合致しない。
【0047】
ここで、図4は、仮想プラントVP1、VP2を構成する主要計装等の要素が各図面に記載される必要のある要素であるか否かに関する情報を含むデータテーブルの一例を示す。図4に示すデータテーブルは、図面管理装置10の記憶部12に格納されており、処理部11によって適宜参照される。図4に示すデータテーブルによれば、例えば、コントロールバルブは、PFD、P&ID、及び3D配管図のいずれにも記載される必要のある要素であるが、マニュアルバルブは、PFDには記載される必要のない要素であり、P&ID及び3D配管図には記載される必要のある要素であることがわかる。そこで、ステップS204において、図面管理装置10の処理部11は、図4に示すデータテーブルを参照して、図面A1、図面B2、及び図面C1それぞれにおいて、仮想プラントVP2の更新時に変更された要素が、仮想プラントVP2の更新時における各種図面に記載される必要のある要素であるか否かを検証する。処理部11は、この検証の結果を仮想プラントVP2の変更に関する情報に含める。代替的に、仮想プラントVP1から仮想プラントVP2への更新は、図面B1から図面B2への変更がトリガとなっているので、処理部11は、図面B2以外の図面A1及び図面C1それぞれについて、ステップS204の検証を行ってもよい。これにより、ステップS204の検証がさらに効率化される。本例では、処理部11は、MV501については、図面A1に記載される必要のない要素であるが、図面C1に記載される必要のある要素であり、CV203については、図面A1及び図面C1に記載される必要のある要素であるという検証の結果を得る。
【0048】
ステップS205において、図面管理装置10の処理部11は、図面A1、図面B2、及び図面C1それぞれにおいて、仮想プラントVP2の更新時に変更された要素のうちステップS204で各種図面に記載される必要のある要素であると検証された要素が、各種図面に反映されているか否かを検証する。処理部11は、この検証の結果を仮想プラントVP2の変更に関する情報に含める。代替的に、仮想プラントVP1から仮想プラントVP2への更新は、図面B1から図面B2への変更がトリガとなっているので、処理部11は、図面B2以外の図面A1及び図面C1それぞれについて、ステップS205の検証を行ってもよい。これにより、ステップS205の検証がさらに効率化される。本例では、処理部11は、MV501については、図面C1に反映されておらず、CV203については、図面A1に反映されているが、図面C1に反映されていないという検証の結果を得る。
【0049】
ステップS206において、図面管理装置10の処理部11は、通信部13を介して、仮想プラントVP2の変更に関する情報を端末装置A、端末装置B、又は端末装置C等の所定の通知先に通知する。本例では、処理部11は、通信部13を介して、図5に示すリスト形式で、仮想プラントVP2の変更に関する情報を、端末装置A、端末装置B、又は端末装置C等の所定の通知先に通知する。これにより、各端末装置を介して通知を受けた各担当者は、(1)仮想プラントVP1から仮想プラントVP2への更新に関する情報、(2)仮想プラントVP2を構成する要素が各種図面に記載される必要のある要素であるか否かに関する情報、(3)仮想プラントVP2を構成する要素が各種図面に反映されているか否かに関する情報、及び(4)仮想プラントVP1を仮想プラントVP2に更新するトリガとなった図面の種別等を確認することができる。本例では、端末装置Aを介して通知を受けた担当者Aは、(1)仮想プラントVP1にMV501及びCV203が追加されたこと、(2)MV501は、図面A1に記載される必要のない要素であり、CV203は、図面A1に記載される必要のある要素であること、(3)CV203は、図面A1に反映されていること、及び(4)仮想プラントVP1を仮想プラントVP2に更新するトリガとなった図面が図面Bであることを確認することができる。この場合、担当者Aは、図面A1を変更する必要がない。一方で、端末装置Cを介して通知を受けた担当者Cは、(1)仮想プラントVP1にMV501及びCV203が追加されたこと、(2)MV501及びCV203は、図面C1に記載される必要のある要素であること、(3)MV501及びCV203とも図面C1に反映されていないこと、及び(4)仮想プラントVP1を仮想プラントVP2に更新するトリガとなった図面が図面Bであることを確認することができる。この場合、担当者Cは、端末装置Cを用いて、図面C1にMV501及びCV203を追加することによって図面C2を作成し、図面管理装置10の記憶部12に登録する。ただし、通知の形式は、図5に示すリスト形式に限定されず、通知対象又は目的に応じて適宜変更することができる。なお、第2の処理例では、図面A1が第2種の図面に相当し、図面C1及び図面C2がそれぞれ第3種の図面に相当する。
【0050】
なお、ステップS206において、図面管理装置10の処理部11は、通信部13を介して、仮想プラントVP2の変更に関する情報を全ての関係者に通知してもよく、あるいは、各種図面の担当者に必要な情報のみを通知してもよい。例えば、処理部11は、通信部13を介して、図面Aの担当者には、仮想プラントVP2の変更に関する情報のうち、図面Aにおける変更の要否のみを通知してもよい。また、例えば、図5に示すように、仮想プラントVP2の更新時に変更された要素のうち、例えば図面Cに反映されていない要素があることを示す記号(例えば「×」)が付されている場合のみ、処理部11は、通信部13を介して、図面Cに反映されていない要素がある旨を図面Cの担当者等に通知してもよい。代替的に、処理部11は、仮想プラントVPの更新から所定の時間が経過した場合に、又は仮想プラントVPの更新に伴って各種図面に反映すべき情報量が所定の閾値を超えた場合に、通信部13を介して、各端末装置に仮想プラントVPの変更に関する情報を通知してもよい。なお、「所定の期間」及び「所定の閾値」は、各担当者によって適宜設定される。これにより、各担当者は、通知に伴う作業の頻度を適宜調整することができる。このため、各担当者は、少量の変更を逐一通知されることにより煩わしさを感じたり、作業が非効率となったりすることを回避することができるので有用である。
【0051】
第2の処理例によれば、各担当者は、仮想プラントVPの更新に伴って、自らが担当する図面を変更する必要があるか否かを効率的に把握することができるので、図面変更の作業効率が向上する。なお、第2の処理例では、図面B1の変更に伴う仮想プラントVP1の更新を説明したが、図面A1又は図面C1が変更された場合も、同様の処理が行われる。
【0052】
以上、本開示を諸図面及び実施形態に基づき説明したが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のステップ等を1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0053】
例えば、上述した処理例において、各担当者は、仮想プラントVPの最新状況を確認するために、任意のタイミングで各端末装置を用いて図面管理装置10にアクセスしてもよい。
【0054】
また、上述した処理例において、仮想プラントVPの変更に関する情報は、図5に示すリスト形式で担当者A、B、又はCに通知される例を説明した。しかし、仮想プラントVPを構成する要素は多種多様であるため、仮想プラントVPの変更に関する情報をフィルタリングして担当者A、B、又はCに通知することができれば、作業効率が向上する。そこで、一変形例として、図面管理装置10の処理部11は、通信部13を介して、例えば端末装置A、B、又はCから取得したフィルタリング条件に基づいて、仮想プラントVPの変更に関する情報をフィルタリングする。続いて、図面管理装置10の処理部11は、通信部13を介して、フィルタリングされた仮想プラントVPの変更に関する情報を端末装置A、B、又はCに通知する。なお、「フィルタリング条件」は、(1)自らが担当する図面におけるバルブ又は配管等の特定の要素の現状、(2)自らが担当する図面に対する仮想プラントの更新に係る要素の反映の要否、(3)自らが担当する図面以外の図面(特に、担当外の図面であるが、自ら担当する図面と関連性が高い図面)の現状、(4)仮想プラント全体の現状、又はこれらの組み合わせである。特に、上記(3)については、プラント全体を総括する監督者等にとって有用である。なお、フィルタリング条件は、担当者A、B、又はCによって、例えば端末装置A、B、又はCを用いて適宜設定される。
【0055】
また、上述した処理例において、現場の作業者等は、プラントの部品を交換又は修理等するにあたって、逐一図面を参照しなかったり、図面に完全に従わなかったりことがある。この対策として、実プラントの外形を撮像することが可能な3Dスキャン装置等を用いて、実プラントの現状を把握してもよい。図面管理装置10の処理部11は、3Dスキャン装置等により撮像された実プラントの3Dスキャンデータを元に新たに作成された3D配管図と、PFD又はP&ID等を元に既に作成されていた3D配管図との比較に基づいて、仮想プラントVPを更新してもよい。これにより、各種図面の変更に伴って、各種図面に追加又は削除された機器等のうちいずれの機器等が設置されたのか、どのように設置されたのか、取り除かれたのか等の実プラントの実態の把握に繋がり、仮想プラントVPは、実プラントの実態に応じて更新される。このため、各種図面と実プラントとの整合性をより高めることができる。なお、仮想プラントVPの変更に関する情報は、各種図面の作成履歴等を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示によれば、各種図面間の整合性、ひいては各種図面と実プラントとの整合性を担保することができる図面管理装置、図面管理システム、及び図面管理方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 図面管理システム
10 図面管理装置
11 処理部
12 記憶部
13 通信部
20 ネットワーク
A 端末装置(第1の端末装置)
B 端末装置(第2の端末装置)
C 端末装置(第3の端末装置)
VP 仮想プラント
図1
図2
図3
図4
図5