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特許7331750製造装置監視システムおよびそれを用いた半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】製造装置監視システムおよびそれを用いた半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020054818
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021158155
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】514054982
【氏名又は名称】株式会社デンソー岩手
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小沢 透
(72)【発明者】
【氏名】曽根 弘樹
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-128304(JP,A)
【文献】特開平7-273093(JP,A)
【文献】特開2000-114239(JP,A)
【文献】特開2004-47885(JP,A)
【文献】特開平2-205019(JP,A)
【文献】特開2010-171288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物に対して複数の異なる処理ステップ(S1~S3)を順に実行する製造装置(10)の異常判定を行う製造装置監視システムであって、
前記製造装置で前記加工対象物を処理するプロセスを可視化した検出プロセスデータを出力するプロセスデータ検出部(12)と、
前記検出プロセスデータを取得し、前記検出プロセスデータに所定の処理を行った処理プロセスデータを構成するプロセスデータ処理部(32)と、
前記製造装置の異常判定を行う異常判定部(50)と、を有し、
前記プロセスデータ処理部は、前記処理ステップ内に複数の前記処理プロセスデータが存在するように、連続的に前記検出プロセスデータを取得して前記処理プロセスデータを構成し、
前記異常判定部は、それぞれの前記処理ステップにおいて、複数の前記処理プロセスデータを用いた前記製造装置の異常判定を行う製造装置監視システム。
【請求項2】
前記製造装置の処理条件に基づいた検出因子データを出力する因子データ検出部(11)と、
前記検出因子データを取得し、前記検出因子データに所定の処理を行った処理因子データを構成する因子データ処理部(31)と、を備え、
前記因子データ処理部は、前記処理ステップ内に複数の前記処理因子データが存在するように、連続的に前記検出因子データを取得して前記処理因子データを構成し、
前記異常判定部は、それぞれの前記処理ステップにおいて、複数の前記処理プロセスデータおよび複数の前記処理因子データを用いた前記製造装置の異常判定を行う請求項1に記載の製造装置監視システム。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記処理プロセスデータおよび前記処理因子データの時間軸を一致させて前記製造装置の異常判定を行う請求項2に記載の製造装置監視システム。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記処理ステップを複数に分割した分割期間(B1~B3)を構成し、それぞれの前記分割期間において、前記製造装置の異常判定を行う請求項1ないし3のいずれか1つに記載の製造装置監視システム。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記分割期間として、前記処理ステップを少なくとも3分割した第1~第3分割期間を構成し、前記第1~第3分割期間において、前記製造装置の異常判定を行う請求項4に記載の製造装置監視システム。
【請求項6】
前記異常判定部は、前記分割期間のそれぞれに対し、所定の処理を行った処理データの平均値を算出し、算出した前記平均値を用いた多変量解析を行って前記製造装置の異常判定を行う請求項4または5に記載の製造装置監視システム。
【請求項7】
前記製造装置は、プラズマエッチング装置であり、
前記プロセスデータ検出部は、プラズマの波長に基づく発光強度に関する前記検出プロセスデータを出力し、
前記プロセスデータ処理部は、少なくとも1つ以上の波長の発光強度に関する前記検出プロセスデータに所定の処理を行って前記処理プロセスデータを構成する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の製造装置監視システム。
【請求項8】
複数の異なる処理ステップ(S1~S3)を順に実行する製造装置(10)で処理されることを含む半導体装置の製造方法であって、
前記製造装置で前記処理ステップを順に実行し、加工対象物としての半導体ウェハを処理することと、
前記製造装置の異常判定を行うことと、を行い、
前記異常判定を行うことでは、
前記半導体ウェハを処理することの際に、前記製造装置で前記半導体ウェハを処理するプロセスを可視化した検出プロセスデータを取得することと、
前記検出プロセスデータに所定の処理を行って連続的に処理プロセスデータを構成し、前記処理ステップ内に複数の前記処理プロセスデータが存在するようにすることと、
それぞれの前記処理ステップにおいて、複数の前記処理プロセスデータを用いて前記製造装置の異常判定を行うことと、を行う半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置監視システムおよびそれを用いた半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置を製造する製造装置の状態を監視して製造装置の異常判定を行う製造装置監視システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。例えば、この製造装置監視システムは、プラズマエッチング装置に流量センサや圧力センサ等の各センサが取り付けられており、各センサで検出された検出データに基づいて製造装置の異常判定を行っている。なお、異常判定を行う際には、プラズマエッチング装置で処理される処理内容を複数の処理ステップに分割し、例えば、各ステップ内の1つの検出データに基づいて異常判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-47885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、このような製造装置監視システムにおいて、異常判定の精度を向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、判定精度の向上を図ることができる製造装置監視システムおよびそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1では、加工対象物に対して複数の異なる処理ステップ(S1~S3)を順に実行する製造装置(10)の異常判定を行う製造装置監視システムであって、製造装置で加工対象物を処理するプロセスを可視化した検出プロセスデータを出力するプロセスデータ検出部(12)と、検出プロセスデータを取得し、検出プロセスデータに所定の処理を行った処理プロセスデータを構成するプロセスデータ処理部(32)と、製造装置の異常判定を行う異常判定部(50)と、を有し、プロセスデータ処理部は、処理ステップ内に複数の処理プロセスデータが存在するように、連続的に検出プロセスデータを取得して処理プロセスデータを構成し、異常判定部は、それぞれの処理ステップにおいて、複数の処理プロセスデータを用いた製造装置の異常判定を行う。
【0007】
これによれば、処理プロセスデータを用いて製造装置の異常判定を行っている。そして、処理プロセスデータは、実際に加工対象物を加工するデータに関するものであり、加工対象物の出来栄えとの因果関係が強い。したがって、処理プロセスデータを用いることにより、判定精度の向上を図ることができる。
【0008】
また、プロセスデータ処理部は、各処理ステップ内に複数の処理プロセスデータが存在するように、連続的に検出プロセスデータを取得して処理プロセスデータを構成している。このため、例えば、各処理ステップ内に1個のみの処理プロセスデータが存在するようにした場合と比較して、判定精度の向上を図ることができる。
【0009】
さらに、請求項8では、複数の異なる処理ステップ(S1~S3)を順に実行する製造装置(10)で処理されることを含む半導体装置の製造方法であって、製造装置で処理ステップを順に実行し、加工対象物としての半導体ウェハを処理することと、製造装置の異常判定を行うことと、を行い、異常判定を行うことでは、半導体ウェハを処理することの際に、製造装置で半導体ウェハを処理するプロセスを可視化した検出プロセスデータを取得することと、検出プロセスデータに所定の処理を行って連続的に処理プロセスデータを構成し、処理ステップ内に複数の処理プロセスデータが存在するようにすることと、それぞれの処理ステップにおいて、複数の処理プロセスデータを用いて製造装置の異常判定を行うことと、を行う。
【0010】
これによれば、製造装置の異常判定を行う際には、処理プロセスデータを用いている。このため、判定精度の向上を図ることができる。また、製造装置の異常判定を行う際には、各処理ステップ内に複数の処理プロセスデータが存在するように、連続的に検出プロセスデータを取得して処理プロセスデータを構成している。このため、さらに判定精度の向上を図ることができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における製造装置監視システムの構成を示すブロック図である。
図2】製造装置における処理ステップを説明するための図である。
図3】第1ステップにおける第1~第3分割期間を説明するための図である。
図4】異常判定の方法を説明するための模式図である。
図5A】波長が683nmである際の処理時間および発光強度と、正常および異常との関係を示す図である。
図5B】波長が773nmである際の処理時間および発光強度と、正常および異常との関係を示す図である。
図5C】波長が843nmである際の処理時間および発光強度と、正常および異常との関係を示す図である。
図5D】波長が848nmである際の処理時間および発光強度と、正常および異常との関係を示す図である。
図5E】波長が916nmである際の処理時間および発光強度と、正常および異常との関係を示す図である。
図6】異常判定のフローチャートを示す図である。
図7A】波長が916nmである際の処理時間および発光強度と、正常および異常との関係を示す図である。
図7B】処理時間および出力信号値と、正常および異常との関係を示す図である。
図8】第2実施形態における多変量解析時の共分散行列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の製造装置監視システムについて、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の製造装置監視システムは、半導体装置を製造する工場等で適用されると好適であり、対象となる製造装置の異常判定を行う。以下では、対象となる製造装置がプラズマエッチング装置であり、プラズマエッチング装置で加工対象物である半導体ウェハを処理する例について説明する。
【0015】
なお、ここでのプラズマエッチング装置は、一般的な構成のものを想定しており、具体的な構成については省略するが、簡単に説明すると、例えば、以下の構成とされている。すなわち、プラズマエッチング装置は、処理室を備え、処理室内に加工対象物である半導体ウェハが配置される電極(すなわち、支持台)が配置されていると共に、処理室内にプラズマ用のガスやマイクロ波を導入できるように構成されている。また、プラズマエッチング装置は、半導体ウェハや処理室を所定温度に維持する温調装置等を備えている。さらに、プラズマエッチング装置は、処理室に観測窓が設けられており、観測窓を通じ、後述するプロセスデータ取得部22で処理室内のプラズマの状態を検出できるようになっている。
【0016】
そして、プラズマエッチング装置は、電極上に半導体ウェハが配置され、電極や処理室の温度が調整されつつ、電極に高周波電圧が印加されると共にガスやマイクロ波が導入されることにより、プラズマを発生させて半導体ウェハを加工する。
【0017】
本実施形態の製造装置監視システムは、図1に示されるように、メインコントローラ1、因子データ検出部11、プロセスデータ検出部12、因子データ取得部21、プロセスデータ取得部22、因子データ処理部31、プロセスデータ処理部32、データ蓄積部40、異常判定部50、報知部60等を備える構成とされている。そして、これらの各部1、11、12、21、22、31、32、40、50、60、またはこれらが備えられるハード構成は、無線通信や有線通信等によって通信可能に構成されている。
【0018】
メインコントローラ1は、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部等を備えた、例えば、PC(personal computerの略)等で構成される。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略であり、HDDはHard Disk Driveの略である。そして、メインコントローラ1は、製造装置10で処理される処理内容等が記憶されていると共に、製造装置10との間で通信を行い、製造装置10の実際の処理状況や処理時間等が更新されて記憶される。
【0019】
因子データ検出部11は、製造装置10の処理条件に基づいた検出因子データを出力する。例えば、本実施形態の因子データ検出部11は、処理室内に導入されるガス流量等を検出するガス系検出部11a、電極に印加される高周波電力等の電源状態を検出する電源系検出部11b、処理室内に導入されるマイクロ波の状態を検出するマイクロ波系検出部11c等を有する構成とされている。そして、各検出部11a~11cは、それぞれ検出因子データを出力する。なお、特に図示しないが、因子データ検出部11は、半導体ウェハの温度や処理室の温度等を検出して検出因子データを出力する温度系検出部等も有している。
【0020】
プロセスデータ検出部12は、処理室内のプラズマの状態に基づいた検出プロセスデータを出力する。例えば、本実施形態のプロセスデータ検出部12は、分光器で構成され、観測窓を通じてプラズマの状態を検出し、プラズマの波長に基づいた発光強度を検出プロセスデータとして出力する。つまり、プロセスデータ検出部12は、プラズマの状態を可視化したデータを出力する。なお、本実施形態では、プラズマの状態が製造装置で加工対象物を処理するプロセスに相当する。
【0021】
因子データ取得部21およびプロセスデータ取得部22は、それぞれデータロガー等で構成される。そして、因子データ取得部21は、因子データ処理部31に、因子データ検出部11からの取得データをアナログ値またはデジタル値で送信する。プロセスデータ取得部22は、プロセスデータ処理部32に、プロセスデータ検出部12からの取得データをアナログ値またはデジタル値で送信する。
【0022】
因子データ処理部31は、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部等を備えた、例えば、PC301に備えられる。同様に、プロセスデータ処理部32は、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部等を備えた、例えば、PC302に備えられる。
【0023】
そして、因子データ処理部31は、因子データ取得部21から検出因子データを取得し、所定の処理を行った処理因子データをデータ蓄積部40に蓄積させる。同様に、プロセスデータ処理部32は、プロセスデータ取得部22から検出プロセスデータを取得し、所定の処理を行った処理プロセスデータをデータ蓄積部40に蓄積させる。
【0024】
本実施形態では、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、検出因子データおよび検出プロセスデータに時間データ(すなわち、時間軸)を付加した処理因子データおよび処理プロセスデータを構成する。また、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、連続的に処理因子データおよび処理プロセスデータを構成する。具体的には後述するが、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、製造装置10の処理ステップS1~S3内に複数の処理因子データおよび処理プロセスデータが存在するように、連続的に処理因子データおよび処理プロセスデータを構成する。例えば、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、1秒より短い間隔で検出因子データおよび検出プロセスデータを取得して処理因子データおよび処理プロセスデータを構成する。
【0025】
なお、検出プロセスデータは、上記のようにプラズマの波長に基づく発光強度とされている。そして、本実施形態のプロセスデータ処理部32は、予め定められた所定の波長の発光強度に関する検出プロセスデータを取得し、取得した検出プロセスデータから処理プロセスデータを構成する。例えば、プロセスデータ検出部12を構成する分光器から2048個の異なる波長の発光強度に関する検出プロセスデータが出力される場合、プロセスデータ処理部32は、半導体ウェハの加工との関連性が高い5種類の波長を選択し、各波長の発光強度に関する検出プロセスデータから処理プロセスデータを構成する。
【0026】
データ蓄積部40は、CPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部等を備えたサーバ等で構成される。そして、データ蓄積部40は、因子データ処理部31で構成された処理因子データおよびプロセスデータ処理部32で構成された処理プロセスデータを蓄積する。
【0027】
異常判定部50は、本実施形態では、プロセスデータ処理部32が備えられるPC302内に備えられている。そして、異常判定部50は、データ蓄積部40に蓄積されている処理因子データおよび処理プロセスデータを取得し、取得した処理因子データおよび処理プロセスデータを用いて製造装置10の異常判定を行う。
【0028】
以下、異常判定部50が実行する製造装置の異常判定について具体的に説明する。なお、異常判定部50は、メインコントローラ1と所定間隔で通信を行っており、メインコントローラ1に更新されて記憶される製造装置10の処理状況や処理時間に基づき、製造装置10での処理が終了したと判定すると以下の処理を実行する。
【0029】
ここで、本実施形態の製造装置10は、上記のように構成されており、異なる処理ステップを順に実行して加工対象物である半導体ウェハを加工する。本実施形態では、製造装置10がプラズマエッチング装置とされており、図2に示されるように、製造装置10は、第1処理ステップS1、第2処理ステップS2、第3処理ステップS3を順に実行して半導体ウェハを加工するとする。例えば、第1処理ステップS1は、半導体ウェハを処理室内に配置して固定する処理ステップとなり、第2処理ステップS2は、処理室内にプラズマを発生させるステップとなり、第3処理ステップS3は、半導体ウェハをプラズマで加工するステップとなる。
【0030】
そして、異常判定部50は、メインコントローラ1に記憶されている製造装置10の処理状況や処理時間に基づき、第1~第3処理ステップS1~S3を処理するのに要したそれぞれの処理時間を把握する。その後、本実施形態の異常判定部50は、図3に示されるように、第1~第3処理ステップS1~S3を均等に3分割した第1~第3分割期間B1~B3を構成する。
【0031】
なお、図3は、第1処理ステップS1を第1~第3分割期間B1~B3に分割した模式図を示しているが、異常判定部50は、第2処理ステップS2、第3処理ステップS3に対しても同様に、各処理ステップS2、S3を均等に3分割した第1~第3分割期間B1~B3を構成する。また、第1~第3処理ステップS1~S3の処理時間は、処理される半導体ウェハによって多少の違いが発生し得る。このため、本実施形態の異常判定部50は、異常判定を行う度に第1~第3処理ステップS1~S3の処理時間を把握する。
【0032】
次に、異常判定部50は、データ蓄積部40に蓄積されている処理因子データおよび処理プロセスデータを取得する。そして、異常判定部50は、図4に示されるように、処理因子データおよび処理プロセスデータと、第1~第3処理ステップS1~S3における第1~第3分割期間B1~B3とを対応付ける。具体的には、異常判定部50は、処理因子データと処理プロセスデータとの時間軸を一致させると共に、第1~第3処理ステップS1~S3と各データの時間軸とを一致させる。
【0033】
この場合、例えば、第1処理ステップS1の時間が3minであり、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32が検出因子データおよび検出プロセスデータを取得して処理因子データおよび処理プロセスデータを構成する間隔が200msecである場合には、第1処理ステップS1には、900個の処理因子データおよび処理プロセスデータが含まれることになる。つまり、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、各処理ステップS1~S3に複数の処理因子データおよび処理プロセスデータが存在するように、連続的に検出因子データおよび検出プロセスデータを取得して処理因子データおよび処理プロセスデータを構成する。より詳しくは、本実施形態では、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、各処理ステップS1~S3における各第1~第3分割期間B1~B3内に複数の処理因子データおよび処理プロセスデータが存在するように、連続的に検出因子データおよび検出プロセスデータを取得して処理因子データおよび処理プロセスデータを構成する。
【0034】
なお、図4において、916nmは、916nmの波長の発光強度を示し、RF_Pfは、電極に印加される高周波電圧の最大値を示し、Ar、O、SFは、導入されるガスの流量を示し、RF_VPPは高周波電圧の高電圧値と低電圧値との差を示し、μ波Pfは、導入されるマイクロ波の最大値を示している。そして、図4では、916nmが処理プロセスデータに相当し、RF_Pf、Ar、O、SF、RF_VPP、μ波Pfが処理因子データに相当している。また、図4では、処理プロセスデータとして916nmの波長の発光強度のみを示しているが、他の波長の発光強度も同様に処理されている。
【0035】
そして、異常判定部50は、第1~第3処理ステップS1~S3における第1~第3分割期間B1~B3のそれぞれにおいて、処理因子データおよび処理プロセスデータを用いた多変量解析を行って解析結果としてのMD値を算出する。本実施形態では、異常判定部50は、各分割期間B1~B3における処理因子データおよび処理プロセスデータの平均値を算出し、算出した平均値を用いた多変量解析を行ってMD値を算出する。その後、異常判定部50は、算出したMD値と各処理ステップS1~S3における単位空間とを比較し、これらの比較差が閾値範囲内にあるか否かを判定する。異常判定部50は、比較差が閾値範囲内にある場合には、該当する処理ステップにおける分割期間での製造装置10の処理が正常であると判定する。異常判定部50は、比較差が閾値範囲外にある場合には、該当する処理ステップにおける分割期間での製造装置10の処理が異常であると判定する。そして、異常判定部50は、判定結果を報知部60に送信する。なお、処理プロセスデータと、製造装置10で処理された半導体ウェハの実際の出来栄えとの関係は、例えば、図5A図5Eに示されるように、波形に違いが発生する。図5A図5Eでは、半導体ウェハの処理が正常に行われた場合を正常として示し、半導体ウェハの処理が正常に行われなかった場合を異常として示している。
【0036】
報知部60は、表示部や音声部等を有するPC等で構成されている。そして、本実施形態の報知部60は、異常判定部50が備えられているPC302と接続されており、異常判定部50から判定結果が送信されると、判定結果に基づいた内容を表示部および音声部を制御してユーザに報知する。
【0037】
なお、ここでのユーザとは、半導体装置の製造工場等に関係のある作業者や監督者等である。また、ユーザに報知する場合には、直接的なアラート音等で報知するようにしてもよいし、予め登録されたアドレス等に報知する内容を送付するようにしてもよい。この場合、ユーザが複数存在する場合には、各ユーザへの報知を実行できるように、報知部60は、複数備えられていてもよい。
【0038】
以上が本実施形態における製造装置監視システムの構成である。次に、上記製造装置監視システムを用いて半導体装置を製造する製造方法について説明する。
【0039】
まず、半導体装置を製造する際には、加工対象物である半導体ウェハを用意する。そして、半導体装置を製造する際には、複数の製造装置10に対して順に半導体ウェハを搬送、搬入し、各製造装置10で所定の処理を実行する。この場合、本実施形態では、少なくとも1つの製造装置10に対して上記製造装置監視システムを適用し、例えば、プラズマ処理装置に対して上記製造装置監視システムを適用する。
【0040】
そして、製造装置監視システムは、半導体装置を製造する際、以下のように対象となる製造装置10の異常判定を実行する。なお、対象となる製造装置10には、上記のように、因子データ検出部11およびプロセスデータ検出部12が備えられている。
【0041】
すなわち、まず、図6に示されるように、ステップS101において、因子データ検出部11で検出因子データを取得すると共に、プロセスデータ検出部12で検出プロセスデータを取得する。そして、検出因子データおよび検出プロセスデータを因子データ取得部21およびプロセスデータ取得部22に順次送信する。
【0042】
次に、ステップS102において、因子データ処理部31は、因子データ取得部21から検出因子データを取得し、時間データを付加した処理因子データを構成してデータ蓄積部40に送信する。プロセスデータ処理部32は、プロセスデータ取得部22からプロセスデータを取得し、時間データを付加した処理プロセスデータを構成してデータ蓄積部40に送信する。
【0043】
続いて、異常判定部50は、製造装置10の処理が終了したと判定すると、データ蓄積部40に蓄積されている処理因子データおよび処理プロセスデータを用い、製造装置10の異常判定を行う。具体的には、異常判定部50は、まず、製造装置10で処理された第1~第3処理ステップS1~S3の処理時間を把握し、第1~第3処理ステップS1~S3を均等に3分割して1~第3分割期間B1~B3を構成する。
【0044】
そして、異常判定部50は、ステップS103において、処理因子データおよび処理プロセスデータの時間軸を一致させると共に、第1~第3処理ステップS1~S3と各データの時間軸とを一致させる。次に、異常判定部50は、ステップS104において、取得した処理因子データおよび処理プロセスデータを用いた多変量解析を行って解析結果としてのMD値を算出する。その後、異常判定部50は、ステップS106において、解析結果と単位空間とを比較し、比較差が閾値範囲内にある場合には製造装置10が正常であると判定し、比較差が閾値範囲外にある場合には製造装置10が異常であると判定する。
【0045】
そして、異常判定部50は、ステップS106において、判定結果を報知部60に送信する。これにより、報知部60にて判定結果が報知される。なお、異常判定部50は、上記のように、第1~第3処理ステップS1~S3の1~第3分割期間B1~B3のそれぞれに対し、製造装置10の異常判定を行う。この場合、ユーザは、対象となる製造装置10で処理された半導体ウェハの出来栄えを判定し、範囲閾値や単位空間等を調整することが好ましい。これにより、本実施形態の製造装置監視システムは、継続的に利用されることによって判定精度の向上を図ることができる。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、処理プロセスデータを用いて製造装置10の異常判定を行っている。そして、処理プロセスデータは、実際に加工対象物を化学反応で加工するデータに関するものであり、半導体ウェハの出来栄えとの因果関係が強い。したがって、処理プロセスデータを用いることにより、判定精度の向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、異常判定部50は、処理因子データおよび処理プロセスデータを用いて異常判定を行っている。このため、多変量解析に用いる変数を増加させることができ、判定精度の向上を図ることができる。
【0048】
さらに、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、連続的に検出因子データおよび検出プロセスデータを取得して処理因子データおよび処理プロセスデータを構成している。具体的には、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、各処理ステップS1~S3内に複数の処理因子データおよび処理プロセスデータが存在するように、連続的に検出因子データおよび検出プロセスデータを取得して処理因子データおよび処理プロセスデータを構成している。より詳しくは、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、各処理ステップS1~S3における各第1~第3分割期間B1~B3内に複数の処理因子データおよび処理プロセスデータが存在するように、連続的に検出因子データおよび検出プロセスデータを取得して処理因子データおよび処理プロセスデータを構成している。このため、例えば、各処理ステップS1~S3内に1個のみの処理因子データおよび処理プロセスデータが存在するようにした場合と比較して、判定精度の向上を図ることができる。また、各処理ステップS1~S3における各第1~第3分割期間B1~B3内に複数の処理因子データおよび処理プロセスデータが存在するようにしているため、半導体ウェハを処理する際の開始から終了までをフルタイムで監視することになり、さらに判定精度の向上を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態では、異常判定部50は、各処理ステップS1~S3を複数の分割期間B1~B3に分割し、各分割期間B1~B3に対して異常判定を行っている。したがって、各処理ステップS1~S3に対して1回の異常判定を行う場合と比較して、各処理ステップS1~S3に対して詳細な異常判定を行うことができる。さらに、各処理ステップS1~S3を3分割して第1~第3分割期間B1~B3を有する構成とすることにより、各処理ステップS1~S3は、初期期間、後期期間、および初期期間と後期期間との間の中間期間を含むことになる。この場合、例えば、初期期間は、プラズマの状態が不安定となり易い期間となり、中間期間は、プラズマの状態が安定し易い期間となり、後期期間は、次の処理ステップに移行するための期間となる。したがって、処理ステップに対して1回の異常判定を行う場合と比較して、プラズマの状態に応じた判定を行うことが可能となり、さらに判定精度の向上を図ることができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、上記のように、異常判定部50は、処理因子データおよび処理プロセスデータを用いて異常判定を行っている。ここで、処理因子データと処理プロセスデータとを用いる場合、例えば、プラズマエッチング装置では、図7Aおよび図7Bに示されるように、処理プロセスデータである発光強度と、処理因子データであるRF_Vppの出力信号値との関係に相関関係があることが確認される。具体的には、発光強度が正常値より小さくなって異常となる場合には、RF_Vppの出力信号値は、正常値より大きくなって異常であることが確認される。また、発光強度が異常である期間とRF_Vppの出力信号値が異常である期間とがほぼ同じとなることが確認される。このため、処理因子データおよび処理プロセスデータを用いて異常判定を行う場合、製造装置10が異常であると判定した際には、ユーザは、RF_Vppの出力信号値を小さくする等の処理を行うことにより、処理プロセスデータが正常となる値に修正できる。したがって、処理因子データおよび処理プロセスデータを用いて異常判定を行う場合には、処理プロセスデータと処理因子データとの因果関係を把握することにより、製造装置10の管理を行い易くでき、半導体ウェハの出来栄えを制御し易くできる。また、処理因子データおよび処理プロセスデータを用いて異常判定を行う場合、処理因子データまたは処理プロセスデータを用いて製造装置10のインターロックシステム等を構築することにより、安定性の向上を図ることもできる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、異常判定部50で行う処理を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
まず、上記第1実施形態では、検出プロセスデータをプラズマの波長に基づく発光強度に関するデータとしている。このため、各データの相関関係が強くなることで共線性が強くなる。すなわち、図8に示されるように、プロセスデータ1~5は、それぞれプラズマに関するものであるため、データ間の差が小さくなることが確認される。
【0053】
なお、図8中におけるプロセスデータ1は、波長が683nmである場合の発光強度に関するデータであり、プロセスデータ2は、波長が773nmである場合の発光強度に関するデータであり、プロセスデータ3は、波長が843nmである場合の発光強度に関するデータである。プロセスデータ4は、波長が848nmである場合の発光強度に関するデータであり、プロセスデータ5は、波長が916nmである場合の発光強度に関するデータである。また、因子データ1~10は、高周波電圧に関するデータや、導入されるガスの流量等に関するデータである。
【0054】
このため、本実施形態の異常判定部50は、第1~第3処理ステップS1~S3の第1~第3分割期間B1~B3のそれぞれに対し、統計解析を行って異常判定を行う。そして、異常判定部50は、統計解析を行った解析結果が範囲閾値内である場合には製造装置10が正常であると判定し、解析結果が範囲閾値外である場合には製造装置10が異常であると判定する。この場合、異常判定部50は、継続して利用されることで用いることのできるデータが増加し、継続的に利用されることによって判定精度の向上を図ることができる。
【0055】
以上説明した本実施形態のように、異常判定部50は、統計解析によって異常判定を行うようにしてもよい。そして、異常判定部50が統計解析によって異常判定を行うことにより、共線性の影響を低減でき、判定精度の向上を図ることができる。さらに、判定結果と実際の半導体ウェハの出来栄えとを比較して範囲閾値を調整しながら継続して利用することにより、さらに判定精度の向上を図ることができる。
【0056】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0057】
例えば、上記各実施形態において、本実施形態の製造装置監視システムは、対象となる製造装置がCVD(chemical vapor depositionの略)装置やPVD(physical vapor depositionの略)装置等であってもよく、適宜変更可能である。
【0058】
また、上記各実施形態において、因子データ取得部21およびプロセスデータ取得部22は、一体化されていてもよいし、因子データ処理部31およびプロセスデータ処理部32は、一体化されていてもよい。また、因子データ処理部31は、プロセスデータ処理部32および異常判定部50が備えられるPC302に備えられていてもよい。さらに、プロセスデータ処理部32および異常判定部50は、別々のPC等に備えられていてもよい。また、データ蓄積部40および報知部60は、プロセスデータ処理部32および異常判定部50が備えられるPC302に備えられていてもよい。つまり、因子データ取得部21、プロセスデータ取得部22、因子データ処理部31、プロセスデータ処理部32、異常判定部50、データ蓄積部40、報知部60が備えられるハード構成は、適宜変更可能である。
【0059】
そして、上記各実施形態において、製造装置10で処理される処理ステップは、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0060】
さらに、上記各実施形態において、第1~第3処理ステップS1~S3における分割期間B1~B3の数は適宜変更可能である。但し、各処理ステップS1~S3は、上記第1実施形態で説明したように、少なくとも第1~第3分割期間B1~B3を有するように分割されることが好ましい。
【0061】
また、上記各実施形態において、第1~第3処理ステップS1~S3を分割せず、各処理ステップS1~S3で1回の異常判定を行うようにしてもよい。また、第1~第3処理ステップS1~S3を分割して構成される第1~第3分割期間B1~B3は、均等な処理時間でなくてもよい。
【0062】
本開示に記載の異常判定部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の異常判定部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の異常判定部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 製造装置
12 プロセスデータ検出部
32 プロセスデータ処理部
50 異常判定部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図8