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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/02 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
H01H50/02 Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020055447
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021157904
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】蟹 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-076940(JP,U)
【文献】実開昭63-187239(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状を成す固定接点保持部材(12)と、
前記固定接点保持部材の一面に突出するように配置された固定接点(13)と、
板状の可動板ばね(19)と、
前記固定接点保持部材に配置された前記固定接点と対向するとともに前記可動板ばねの一面に突出するように配置された可動接点(20)と、
通電されることにより電磁力を生じさせて前記可動板ばねを駆動する電磁コイル(14)と、
前記固定接点保持部材、前記固定接点、前記可動板ばね、前記可動接点および前記電磁コイルを収容する収容空間(10a)を形成する筐体(10、11)と、
前記固定接点に接続されたメーク端子(121)と、を備え、
前記筐体には、前記収容空間と前記筐体の外部空間とを連通させる連通路(103、113)が形成されており、
前記筐体は、板状を成すベース(10)と有底筒状のケース(11)と、を有し、前記ケースの開口部を前記ベースが塞ぐように前記ケースと前記ベースが嵌合して前記収容空間を形成しており、
前記メーク端子は、前記ベースの表裏を貫通するよう配置され、
前記ベースは、前記収容空間側に突出する突出部(104)を有し、
前記連通路は、該連通路における前記収容空間側の開口部の中心線(CL)が、前記固定接点保持部材と前記可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されるとともに、前記ベースにおける前記筐体の前記外部空間側の面から前記突出部が突出する方向に延びる第1連通路(1031)と、前記第1連通路から前記収容空間に向かって延びる第2連通路(1032)と、を有し、前記第2連通路における前記収容空間側の開口部の前記中心線が、前記固定接点保持部材と前記可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されている電磁継電器。
【請求項2】
板状を成す固定接点保持部材(12)と、
前記固定接点保持部材の一面に突出するように配置された固定接点(13)と、
板状の可動板ばね(19)と、
前記固定接点保持部材に配置された前記固定接点と対向するとともに前記可動板ばねの一面に突出するように配置された可動接点(20)と、
通電されることにより電磁力を生じさせて前記可動板ばねを駆動する電磁コイル(14)と、
前記固定接点保持部材、前記固定接点、前記可動板ばね、前記可動接点および前記電磁コイルを収容する収容空間(10a)を形成する筐体(10、11)と、を備え、
前記筐体には、前記収容空間と前記筐体の外部空間とを連通させる連通路(103、113)が形成されており、
前記筐体は、板状を成すベース(10)とケース(11)と、を有し、
前記連通路は、該連通路における前記収容空間側の開口部の中心線(CL)が、前記固定接点保持部材と前記可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されるとともに、前記ケースに形成されており、
前記ベースは、該ベースの側面の外周に沿って径方向外側に膨らむ膨らみ部(105)を有している電磁継電器。
【請求項3】
板状を成す固定接点保持部材(12)と、
前記固定接点保持部材の一面に突出するように配置された固定接点(13)と、
板状の可動板ばね(19)と、
前記固定接点保持部材に配置された前記固定接点と対向するとともに前記可動板ばねの一面に突出するように配置された可動接点(20)と、
通電されることにより電磁力を生じさせて前記可動板ばねを駆動する電磁コイル(14)と、
前記固定接点保持部材、前記固定接点、前記可動板ばね、前記可動接点および前記電磁コイルを収容する収容空間(10a)を形成する筐体(10、11)と、を備え、
前記筐体には、前記収容空間と前記筐体の外部空間とを連通させる連通路(103、113)が形成されており、
前記筐体は、板状を成すベース(10)とケース(11)と、前記ベースの側面の外周を覆うように配置されたOリング(106)と、を有し、
前記連通路は、該連通路における前記収容空間側の開口部の中心線(CL)が、前記固定接点保持部材と前記可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されるとともに、前記ケースに形成されている電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された電磁継電器がある。この電磁継電器は、電磁コイルにより誘起された磁束の磁路を形成するヨーク、電磁コイルの電磁力により駆動される可動接点、可動接点と対向して配置された固定接点、収容空間を形成する筐体等を備えている。
【0003】
また、筐体には、筐体の内部に形成された収容空間と、筐体の外部空間とを連通させる空気通路が形成されており、この空気通路の中にヨークの足部が挿入されている。
【0004】
この電磁継電器は、空気通路を流通する空気中に磁性体の異物が含まれている場合、その異物はヨークの足部の残留磁気により補足され、異物の収容空間への侵入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-209056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の電磁継電器においては、可動接点と固定接点が当接するよう電磁コイルを通電させている場合、電磁コイルのコイルワイヤに流れる電流によって筐体の収容空間の空気の温度は上昇する。この際、収容空間の樹脂部品から水分が放出され、筐体の収容空間の空気の湿度は高くなる。また、筐体の収容空間の空気は膨張して筐体に形成された空気通路を通って筐体の外部に流出する。
【0007】
この後、電磁コイルへの通電を遮断すると、可動接点が固定接点から離れる。ここで、筐体の外部の空気の温度が低い状態では、筐体の外部に露出したメーク端子からの熱引きによりこのメーク端子に接続された固定接点の温度が急低下する。
【0008】
このように、固定接点の温度が急低下すると、固定接点の温度と、可動接点と固定接点の間の空気の温度の温度差が大きくなり、固定接点に結露が生じやすくなる。そして、結露した水分が凍ると固定接点が氷結する接点氷結に至る。
【0009】
そこで、上記特許文献1に記載された電磁継電器のように、筐体の内部と筐体の外部との間を連通する空気通路を設けて、電磁コイルへの通電を遮断した際に、固定接点の温度と、可動接点と固定接点の間の空気の温度の温度差を低減することが考えられる。
【0010】
しかし、上記特許文献1に記載された電磁継電器は、空気通路が可動接点と固定接点から離れた位置に形成されており、さらに、空気通路の内部にヨークの足部が配置されている。このため、電磁コイルへの通電を遮断した際に、筐体の外部の空気を可動接点と固定接点との間に十分に到達させることはできない。したがって、固定接点の温度と、可動接点と固定接点の間の空気の温度の温度差を速やかに低減することはできない。
【0011】
本発明は上記点に鑑みたもので、固定接点への結露を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、電磁継電器であって、板状を成す固定接点保持部材(12)と、固定接点保持部材の一面に突出するように配置された固定接点(13)と、板状の可動板ばね(19)と、を備えている。また、固定接点保持部材に配置された固定接点と対向するとともに可動板ばねの一面に突出するように配置された可動接点(20)と、通電されることにより電磁力を生じさせて可動板ばねを駆動する電磁コイル(14)と、を備えている。また、固定接点保持部材、固定接点、可動板ばね、可動接点および電磁コイルを収容する収容空間(10a)を形成する筐体(10、11)と、固定接点に接続されたメーク端子(121)と、を備えている。また、筐体には、収容空間と筐体の外部空間とを連通させる連通路(103、113)が形成されている。そして、筐体は、板状を成すベース(10)と有底筒状のケース(11)と、を有し、ケースの開口部をベースが塞ぐようにケースとベースが嵌合して収容空間を形成している。メーク端子は、ベースの表裏を貫通するよう配置されている。ベースは、収容空間側に突出する突出部(104)を有する。そして、連通路は、該連通路における収容空間側の開口部の中心線(CL)が、固定接点保持部材と可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されるとともに、ベースにおける筐体の外部空間側の面から突出部が突出する方向に延びる第1連通路(1031)と、第1連通路から収容空間に向かって延びる第2連通路(1032)と、を有し、第2連通路における収容空間側の開口部の中心線が、固定接点保持部材と可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されている。
また、上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明は、電磁継電器であって、板状を成す固定接点保持部材(12)と、固定接点保持部材の一面に突出するように配置された固定接点(13)と、板状の可動板ばね(19)と、を備えている。また、固定接点保持部材に配置された固定接点と対向するとともに可動板ばねの一面に突出するように配置された可動接点(20)と、通電されることにより電磁力を生じさせて可動板ばねを駆動する電磁コイル(14)と、を備えている。また、固定接点保持部材、固定接点、可動板ばね、可動接点および電磁コイルを収容する収容空間(10a)を形成する筐体(10、11)と、を備えている。また、筐体には、収容空間と筐体の外部空間とを連通させる連通路(103、113)が形成されている。そして、筐体は、板状を成すベース(10)とケース(11)と、を有する。連通路は、該連通路における収容空間側の開口部の中心線(CL)が、固定接点保持部材と可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されるとともに、ケースに形成されている。ベースは、該ベースの側面の外周に沿って径方向外側に膨らむ膨らみ部(105)を有している。
また、上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明は、電磁継電器であって、板状を成す固定接点保持部材(12)と、固定接点保持部材の一面に突出するように配置された固定接点(13)と、板状の可動板ばね(19)と、を備えている。また、固定接点保持部材に配置された固定接点と対向するとともに可動板ばねの一面に突出するように配置された可動接点(20)と、通電されることにより電磁力を生じさせて可動板ばねを駆動する電磁コイル(14)と、を備えている。また、固定接点保持部材、固定接点、可動板ばね、可動接点および電磁コイルを収容する収容空間(10a)を形成する筐体(10、11)と、を備えている。また、筐体には、収容空間と筐体の外部空間とを連通させる連通路(103、113)が形成されている。そして、筐体は、板状を成すベース(10)とケース(11)と、ベースの側面の外周を覆うように配置されたOリング(106)と、を有する。連通路は、該連通路における収容空間側の開口部の中心線(CL)が、固定接点保持部材と可動板ばねに挟まれた空間に含まれるよう形成されるとともに、ケースに形成されている。
【0013】
このような構成によれば、電磁コイルを通電した後、電磁コイルへの通電を遮断した際に、連通路を介して筐体の外部空間の空気が固定接点保持部材と可動板ばねに挟まれた空間に到達する。したがって、固定接点の温度と、可動接点と固定接点の間の空気の温度の温度差を速やかに低減することができ、固定接点への結露を抑制することができる。
【0014】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る電磁継電器を示す正面断面図である。
図2】ケースを破断して示す図1の右側面断面図である。
図3図1の下面図である。
図4】ケースを破断して示す図1の左側面断面図である。
図5図4中のV部拡大図である。
図6図1中のVI部拡大図である。
図7】第2実施形態の電磁継電器の断面図であって、図1に対応する図である。
図8図7中のVIII部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る電磁継電器について図1図6を用いて説明する。図1は一実施形態に係る電磁継電器を示す正面断面図、図2はケースを破断して示す図1の右側面断面図、図3図1の下面図、図4はケースを破断して示す図1の左側面断面図、図5図4中のV部拡大図、図6図1中のVI部拡大図である。
【0018】
図1図5に示すように、本実施形態に係る電磁継電器は、樹脂よりなる板状のベース10に、樹脂よりなる有底筒状で直方体のケース11が嵌合されており、ベース10とケース11によって内部に収容空間10aが形成されている。
【0019】
ベース10およびケース11により構成される筐体は、固定接点保持部材12、固定接点13、可動板ばね19、可動接点20および電磁コイル14等を収容する収容空間10aを形成する。
【0020】
ベース10には、L字状をなす導電金属製のメーク端子121が固定されている。メーク端子121は、ベース10を貫通していて、一端側が収容空間10a内に位置し、他端側が外部空間に位置している。メーク端子121は、外部ハーネス(図示せず)と接続される。
【0021】
メーク端子121における収容空間10a側の端部には、導電金属製の固定接点保持部材12がかしめ固定されている。また、固定接点保持部材12の端部には、導電金属製の固定接点13がかしめ固定されている。固定接点13は、固定接点保持部材12の一面に突出するように配置されている。
【0022】
収容空間10aに配置された電磁コイル14は、鍔付き円筒状の樹脂製のスプール141と、スプール141の円筒部外周に巻かれたコイルワイヤ142とを有し、通電時に電磁力を発生する。コイルワイヤ142には、ベース10を貫通する2つのコイル端子15を介して電力が供給されるようになっている。
【0023】
ヨーク16は、磁性体金属材料よりなり、コ字状に曲げられており、電磁コイル14により誘起された磁束の磁路を構成する。ヨーク16は、収容空間10a内に位置する本体部161と、空気通路101中に挿入される捕集部材としての2本の足部162と、外部空間側に突出して外部ハーネスと接続されるコモン端子163とを備えている。そして、ベース10に形成された空気通路101中に足部162を圧入することにより、ヨーク16がベース10に固定されている。
【0024】
スプール141の円筒部内には、磁性体金属材料よりなる固定鉄心17が配置されている。固定鉄心17はヨーク16に固定され、電磁コイル14はヨーク16と固定鉄心17に挟持されている。
【0025】
固定鉄心17に対向する位置に、磁性体金属製の可動鉄片18が配置されており、可動鉄片18は、コイル通電時に固定鉄心17側に吸引される。また、可動鉄片18は、略L字状に曲げられた薄板金属製の可動板ばね19によってヨーク16に連結されている。
【0026】
可動板ばね19には、導電金属製の可動接点20がかしめ固定されており、可動接点20は固定接点13に対向して配置されている。可動接点20は、固定接点13と対向するとともに可動板ばね19の一面に突出するよう配置されている。可動接点20は、可動板ばね19を介してヨーク16のコモン端子163と電気的に接続されている。そして、可動板ばね19は、可動鉄片18が固定鉄心17から離れる向き、すなわち、可動接点20が固定接点13から離れる向きの弾性力を、可動鉄片18に作用させる。
【0027】
本実施形態の電磁継電器においては、収容空間10aが、ベース10に形成された2つの空気通路101および1つの連通路103を介して、ベース10およびケース11から成る筐体の外部空間と連通している。
【0028】
図2に示すように、収容空間10aと外部空間を連通させる空気通路101にはヨーク16の足部162が圧入されている。そして、空気通路101のうち足部162に塞がれていない部位を呼吸用空気が流通する。換言すると、外部空間側から流入する磁性体の異物が足部162に衝突するようになっている。
【0029】
上記構成になる電磁継電器は、電磁コイル14に通電されると、その電磁力により可動鉄片18が固定鉄心17側に吸引され、可動接点20が固定接点13に当接して電気回路が閉じられる。一方、電磁コイル14への通電が遮断されると、可動板ばね19の弾性力により可動接点20が固定接点13から離され、電気回路が開かれる。
【0030】
ここで、空気通路101を流通する呼吸用空気中に磁性体の異物が含まれている場合は、その磁性体の異物は足部162の残留磁気により吸引されて足部162に捕集される。
したがって、磁性体の異物の収容空間10aへの侵入を防止し、ひいては磁性体の異物による電磁継電器の機能不良を防止することができる。
【0031】
また、連通路103は、ベース10およびケース11により構成される筐体に形成され、収容空間10aと筐体の外部空間とを連通させる。筐体は、板状を成すベース10と有底筒状のケース11と、を有し、ベース10にケース11が嵌合して収容空間10aを形成している。
【0032】
また、ベース10は、収容空間10a側に突出する突出部104を有している。また、固定接点13に接続されるメーク端子121は、ベース10の表裏を貫通するよう配置されている。
【0033】
また、連通路103は、ベース10における筐体の外部空間側の面から突出部104が突出する方向に延びる第1連通路1031と、第1連通路1031から突出部104が突出する方向と直交する方向に延びる第2連通路1032と、を有している。そして、第2連通路1032における収容空間10a側の開口部の中心線CLが、固定接点保持部材12の一面と、可動板ばね19の一面の間に含まれるよう形成されている。
【0034】
上記構成になる電磁継電器は、電磁コイル14に通電されると、その電磁力により可動鉄片18が固定鉄心17側に吸引され、可動接点20が固定接点13に当接して電気回路が閉じられる。
【0035】
この際、電磁コイル14のコイルワイヤ142に流れる電流によって筐体の収容空間の空気の温度は上昇する。そして、収容空間10aの樹脂部品から水分が放出され、筐体の収容空間の空気の湿度は高くなる。また、筐体の収容空間10aの空気は膨張して筐体に形成された空気通路101および連通路103を通って筐体の外部に流出する。
【0036】
そして、電磁コイル14への通電が遮断されると、可動板ばね19の弾性力により可動接点20が固定接点13から離れる。ここで、筐体の外部空間の空気の温度が低い状態では、筐体の外部に露出したメーク端子121からの熱引きによりこのメーク端子121に接続された固定接点13の温度が急低下する。
【0037】
この際、収容空間10a内の空気の温度が低下し、収容空間10a内の空気の圧力が筐体の外部空間の空気の気圧に対して負圧となるため、筐体の外部空間の空気が連通路103の第1連通路1031から第2連通路1032を通って収容空間10aに流れ込む。
【0038】
ここで、本実施形態の電磁継電器は、第2連通路1032における収容空間10a側の開口部の中心線CLが、固定接点保持部材12と可動板ばね19に挟まれた空間に含まれるよう形成されている。したがって、収容空間10aに流れ込んだ空気は、可動接点20と固定接点13の間の空間に速やかに到達する。
【0039】
冬季など、筐体の外部空間の空気の温度が低い状態では、筐体の外部空間から比較的湿度の低い空気が連通路103を介して収容空間10aに流れ込み、可動接点20と固定接点13の間の空気の温度が低下する。このため、固定接点13の温度と、可動接点20と固定接点13の間の空気の温度の温度差が小さくなり、固定接点13への結露が抑制され、固定接点が氷結する接点氷結が抑制される。
【0040】
ところで、筐体の外部空間と筐体の内部の収容空間10aの気密が十分に確保されていないと、電磁コイル14への通電が遮断された後、収容空間10a内の空気の圧力が十分に負圧とならない。したがって、筐体の外部空間の空気が連通路103を通って収容空間10aに十分に流れ込まない。
【0041】
そこで、本実施形態では、図6に示すように、ベース10が、該ベース10の外周に沿ってベース10の径方向外側に膨らむ膨らみ部105を有している。膨らみ部105は、ベース10の収容空間10a側の面から外部空間側の面に近づくにつれてベース10の径方向外側に膨らむように形成されている。
【0042】
この膨らみ部105によって、筐体の外部空間と筐体の内部の収容空間10aの気密がより確保される。したがって、電磁コイル14への通電が遮断された後、収容空間10a内の空気の圧力をより確実に負圧とすることができ、筐体の外部空間の空気を連通路103を介して収容空間10aに十分に流入させることができる。
【0043】
以上、説明したように、本実施形態の電磁継電器は、板状を成す固定接点保持部材12と、固定接点保持部材12の一面に突出するように配置された固定接点13と、板状の可動板ばね19と、を備えている。また、固定接点保持部材12に配置された固定接点13と対向するとともに可動板ばね19の一面に突出するように配置された可動接点20と、通電されることにより電磁力を生じさせて可動板ばね19を駆動する電磁コイル14と、を備えている。また、固定接点保持部材12、固定接点13、可動板ばね19、可動接点20および電磁コイル14を収容する収容空間10aを形成する筐体を備えている。また、筐体には、収容空間10aと筐体の外部空間とを連通させる連通路103が形成されている。そして、連通路103は、該連通路103における収容空間側の開口部の中心線CLが、固定接点保持部材12と可動板ばね19に挟まれた空間に含まれるよう形成されている。
【0044】
このような構成によれば、電磁コイル14を通電した後、電磁コイル14への通電を遮断した際に、連通路103を介して筐体の外部空間の空気が固定接点保持部材12と可動板ばね19に挟まれた空間に到達する。したがって、固定接点13の温度と、可動接点20と固定接点13の間の空気の温度の温度差を速やかに低減することができ、固定接点13への結露を抑制することができる。
【0045】
また、電磁継電器は、固定接点13に接続されるメーク端子121を備えている。また、筐体は、板状を成すベース10と有底筒状のケース11と、を有し、ケース11の開口部をベース10が塞ぐようにケース11とベース10が嵌合して収容空間10aを形成している。また、メーク端子121は、ベース10の表裏を貫通するよう配置され、ベース10は、収容空間10a側に突出する突出部104を有している。そして、連通路103は、ベース10における筐体の外部空間側の面から突出部104が突出する方向に延びる第1連通路1031と、第1連通路1031から収容空間10aに向かって延びる第2連通路1032と、を有している。そして、連通路103は、第2連通路1032における収容空間10a側の開口部の中心線CLが、固定接点保持部材12と可動板ばね19に挟まれた空間に含まれるよう形成されている。
【0046】
このように、第2連通路1032における収容空間10a側の開口部の中心線CLが、固定接点保持部材12と可動板ばね19に挟まれた空間に含まれるよう連通路103を形成することもできる。
【0047】
このような構成によれば、ベース10における筐体の外部空間側の面から筐体の外部空間の空気が第1連通路1031に取り込まれた後、第2連通路1032を通って筐体の外部空間に導入される。したがって、筐体の外部空間の空気中に浮遊する埃等の筐体内への侵入を抑制することができる、
また、ベース10は、該ベース10の側面の外周に沿って径方向外側に膨らむ膨らみ部105を有している。この膨らみ部105によって、筐体の外部空間と筐体の内部の収容空間10aの気密がより確保される。
【0048】
したがって、電磁コイル14への通電が遮断された後、収容空間10a内の空気の圧力をより確実に負圧とすることができ、筐体の外部空間の空気を連通路103を介して収容空間10aに十分に流入させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る電磁継電器について図7図8を用いて説明する。上記第1実施形態の電磁継電器は、ベース10に、第1連通路1031と第2連通路1032を有する連通路103が形成されているが、本実施形態の電磁継電器は、ケース11に連通路113が形成されている点が異なる。
【0050】
連通路113は、ケース11の収容空間10aにおける固定接点13の近くに形成されている。連通路113は、該連通路113における収容空間側の開口部の中心線CLが、固定接点保持部材12と可動板ばね19に挟まれた空間に含まれるよう形成されている。
【0051】
このように、連通路113における収容空間側の開口部の中心線CLが、固定接点保持部材12と可動板ばね19に挟まれた空間に含まれるよう連通路113を形成することもできる。
【0052】
本実施形態では、上記第1実施形態と共通の構成から奏される同様の効果を上記第1実施形態と同様に得ることができる。
【0053】
(他の実施形態)
(1)上記第1実施形態では、図6に示したように、ベース10に、該ベース10の側面の外周に沿ってベース10の径方向外側に膨らむ膨らみ部105を設けるようにした。これに対し、図8に示すように、ベース10の側面の外周を覆うようにOリング106を設けるようにしてもよい。このOリング106によって、筐体の外部空間と筐体の内部の収容空間10aの気密をより確保することもできる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
10 ベース
10a 収容空間
11 ケース
12 固定接点保持部材
13 固定接点
14 電磁コイル
15 コイル端子
16 ヨーク
17 固定鉄心
18 可動鉄片
19 可動板ばね
20 可動接点
121 メーク端子
141 スプール
142 コイルワイヤ
161 本体部
163 コモン端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8