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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20230816BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
A41D13/018
A41D13/05 106
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020165663
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057418
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0101112(US,A1)
【文献】実開平03-038309(JP,U)
【文献】米国特許第05867842(US,A)
【文献】米国特許第05500952(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0183283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/018
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象者に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されて、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、ガス発生器からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位、を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグの複数の前記膨張部位が、相互に、区画されて、配設され、
前記ガス発生器から前記膨張部位までの膨張用ガスの流路に、転倒方向側の前記膨張部位だけに、前記ガス発生器からの膨張用ガスを流すように、ガス切替機構が、配設されており、
前記ガス切替機構が、
前記各膨張部位へ流し可能なガス流出口を表面側に並設させるように開口させた流出側部と、
前記流出側部の表面側で、転倒方向側に重力によりずれ移動可能として、前記各膨張部位側へ連通する前記ガス流出口と連通可能な連通口、を有するスライド部と、
転倒方向へのずれ移動時の前記スライド部の前記連通口を、転倒方向側の前記膨張部位側の前記ガス流出口に連通させ、他の前記膨張部位の前記ガス流出口側を前記連通口の周縁により閉口させるように、前記スライド部を位置規制するストッパと、
前記ガス発生器の膨張用ガスのガス吐出部側と連通されて、前記スライド部の前記連通口における前記流出側部から離れた側を覆って、前記連通口側に膨張用ガスを供給可能なガス入口部と、
を備えて構成されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグの複数の前記膨張部位が、
保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部と、
保護対象者の頭部の後面側を覆い可能な頭保護部と、
を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグの複数の前記膨張部位が、
保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部、
を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象者に着用させて、保護対象者の転倒時等に、膨張させたエアバッグの膨張部位により、保護対象者の保護対象部位を保護する着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、着用した保護対象者(例えば、高齢者)の転倒時、加速度センサや角速度センサによって、転倒を検知して、ガス発生器から吐出した膨張用ガスにより膨張した所定位置の各エアバッグが、それぞれ、保護対象者の保護対象部位である臀部や腰部、あるいは、頭部や左右の側部、を覆うものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。また、1つのガス発生器からの膨張用ガスを流入させてエアバッグを膨張させて、保護対象者の保護対象部位としての腰部の周囲を囲むように、覆うものもあった(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-317002号公報
【文献】国際公開第2010/090317号公報
【文献】国際公開第2019/207474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2に記載されているように、保護対象部位の数に対応した複数のエアバッグを使用しては、膨張用ガスを供給するガス発生器も複数必要となって、嵩張ったり、あるいは、重くなって、保護対象者に着用させる着用エアバッグ装置としては、課題がある。また、特許文献3に記載されているように、1つのガス発生器からの膨張用ガスを、保護対象者の腰部を囲むように配設させたエアバッグの全体に流す構成であれば、エアバッグの容量が大きいことから、大きなガス発生器が必要となって、保護対象者が着用する着用エアバッグ装置として、小型で軽量なガス発生器が望まれる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1番目の着用エアバッグ装置は、保護対象者に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されて、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、ガス発生器からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位、を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグの複数の前記膨張部位が、相互に、区画されて、配設され、
前記ガス発生器から前記膨張部位までの膨張用ガスの流路に、転倒方向側の前記膨張部位だけに、前記ガス発生器からの膨張用ガスを流すように、ガス切替機構が、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、作動時、ガス発生器からの膨張用ガスが、ガス切替機構により、転倒方向側の膨張部位だけに流れて、所定の内圧を確保して、転倒先の接地面等との間に、膨張した膨張部位を配設させて、保護対象部位を保護できる。そして、膨張する膨張部位は、他の膨張部位と区画されて、他の膨張部位に膨張用ガスが流れないことから、安定して、所定の内圧を確保できて、ガス発生器は、各膨張部位を全て膨張させるような出力で無くともよいことから、小型で軽量なものが使用可能となる。
【0008】
したがって、本発明に係る第1番目の着用エアバッグ装置では、エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0009】
この場合、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記ガス切替機構が、
前記各膨張部位へ流し可能なガス流出口を表面側に並設させるように開口させた流出側部と、
前記流出側部の表面側で、転倒方向側に重力によりずれ移動可能として、前記各膨張部位側へ連通する前記ガス流出口と連通可能な連通口、を有するスライド部と、
転倒方向へのずれ移動時の前記スライド部の前記連通口を、転倒方向側の前記膨張部位側の前記ガス流出口に連通させ、他の前記膨張部位の前記ガス流出口側を前記連通口の周縁により閉口させるように、前記スライド部を位置規制するストッパと、
前記ガス発生器の膨張用ガスのガス吐出部側と連通されて、前記スライド部の前記連通口における前記流出側部から離れた側を覆って、前記連通口側に膨張用ガスを供給可能なガス入口部と、
を備えて構成されていてもよい。
【0010】
このような構成では、着用エアバッグ装置を装着した保護対象者が転倒する際、ガス発生器がガス吐出部から膨張用ガスを吐出するとともに、ガス切替機構のスライド部が、流出側部の表面側で転倒方向側にずれ、ストッパに位置規制されて、転倒方向側の膨張部位へ膨張用ガスを流し可能なガス流出口を開口させるように、連通口を連通させ、かつ、他の膨張部位へ膨張用ガスを流すガス流出口を閉口させる。そのため、ガス吐出部側からの膨張用ガスが、ガス入口部からガス切替機構内に流入し、そして、スライド部の連通口から、転倒方向側の膨張部位へ連なるガス流出口を経て、転倒方向側の膨張部位だけに膨張用ガスを流し、転倒方向側の膨張部位を膨張させて、保護対象者の保護対象部位を、転倒先の接地面等から保護できる。また、このような構成では、スライド部が重力によってスライドするだけで、膨張用ガスの流れを切り替えることができて、転倒方向を検出するようなセンサ部や判定手段を利用せずに構成できる。
【0011】
勿論、前記ガス発生器の作動を制御する作動制御装置が、転倒方向を検出可能なセンサ部を備えて構成されて、前記ガス切替機構が、
前記センサ部による転倒方向の検出による前記作動制御装置に、作動を制御されて、前記ガス発生器の膨張用ガスのガス吐出部側からの膨張用ガスを、転倒方向側の前記膨張部位に流し可能に構成されていてもよい。
【0012】
このような構成では、膨張部位への膨張用ガスの切替を、機械的な重力によるガス切替機構により、行わなくともよく、安定したガス流れの切替を行うことができる。
【0013】
上記の場合、前記エアバッグの複数の前記膨張部位は、
保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部と、保護対象者の頭部の後面側を覆い可能な頭保護部と、を有して構成されていれば、作動時、保護対象者の左右の大腿骨回り、あるいは、頭部を保護することができる。
【0014】
勿論、前記エアバッグの複数の前記膨張部位は、保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部を有しているだけでもよい。
【0015】
また、本発明に係る第2番目の着用エアバッグ装置では、保護対象者に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されて、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、ガス発生器からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位、を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
複数の前記膨張部位が、それぞれ、膨張時の厚さ寸法を規制する厚さ規制手段を設けて構成されていてもよい。
【0016】
このような構成では、作動時、エアバッグの保護対象者の保護対象部位を覆う複数の膨張部位が、厚さ規制手段により、丸く膨らむのではなく、厚さを抑えた板状として、膨張することから、エアバッグは、複数の保護対象部位を、広く覆って、保護できる。勿論、ガス発生器は、各膨張部位を、必要以上に厚く膨らませなくともよいことから、大きな出力で無くともよく、小型で軽量なものが使用可能となる。
【0017】
したがって、本発明に係る第2番目の着用エアバッグ装置では、エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0018】
この場合、前記厚さ規制手段は、前記エアバッグの外周壁の離隔する部位相互を、前記エアバッグの内周側で接近させるように連結する連結部、を配設させて構成されていることが望ましい。
【0019】
すなわち、厚さ規制手段としての連結部は、エアバッグの外周壁の対向する壁部の少なくとも一部相互を、直接的に連結するシームテザー、あるいは、間接的に連結するテザー、により、膨張部位の厚さ方向で連結したり、あるいは、膨張部位の厚さ方向と直交する方向で外形形状を規制するように、連結させる閉じ部を設けて、各膨張部位を、容積の増大を抑制しつつ、効果的に保護対象部位を覆い可能に、膨張させることができる。
【0020】
この場合、複数の前記膨張部位が、保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部、を備えて、
前記腰保護部が、それぞれ、保護対象部位の左右の大腿骨転子部の周囲の部位を、隣接部位より、厚く膨張する構成としていてもよい。
【0021】
このような構成では、特に保護の重要な左右の大腿骨転子部付近を、適切に覆うことができる。
【0022】
本発明に係る第3番目の着用エアバッグ装置では、保護対象者に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されて、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、ガス発生器からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位、を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
複数の膨張部位を覆う1つのアウタバッグと、該アウタバッグ内に配設されて、ガス発生器からの膨張用ガスを流入させて膨張する複数のインナバッグと、
を備えて構成され、
複数の前記インナバッグが、膨張時、前記アウタバッグ内に覆われた先端側に、相互に並設させて、保護対象部位を覆うように膨張する端末膨張部、を配設させて構成されていてもよい。
【0023】
本発明に係る第3番目の着用エアバッグ装置では、作動時、アウタバッグ内でインナバッグが膨張を完了させれば、複数のインナバッグの端末膨張部が、保護対象部位を覆うように、アウタバッグ内で並設されて、保護対象部位を保護できる。そして、このような態様は、1つの柱状に丸く膨らむ膨張部位により、保護対象部位を覆う場合に比べて、小径の端末膨張部を並設させて、保護対象部位を覆えば、保護性能の低下を抑えて、膨張部位の全体の容積を小さくでき、その結果、使用するガス発生器として、出力の小さなものを使用できる。勿論、各インナバッグの端末膨張部は、アウタバッグ内で膨張することから、位置ずれせずに、保護対象部位を覆う所定位置で、的確に、膨張を完了させることができる。
【0024】
したがって、本発明に係る第3番目の着用エアバッグ装置では、エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0025】
本発明に係る第4番目の着用エアバッグ装置では、保護対象者に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されて、保護対象者の保護対象部位を保護可能に、ガス発生器からの膨張用ガスにより膨張する複数の膨張部位、を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記ガス発生器が、前記エアバッグ内に収納されて、配設されていることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る第4番目の着用エアバッグ装置では、ガス発生器自体が、エアバッグ内に収納されており、作動時に吐出する膨張用ガスが、エアバッグ外に漏れ難く、効率的に、各膨張部位を膨張させることができて、各膨張部位に対応した出力、すなわち、大きすぎる出力のガス発生器を使用せずに済む。
【0027】
したがって、本発明に係る第4番目の着用エアバッグ装置では、エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0028】
この場合、前記エアバッグが、
前記ガス発生器からの膨張用ガスを流入させて膨張するインナバッグと、
該インナバッグの周囲を覆うアウタバッグと、
を備えて、
前記インナバッグが、保護対象者の保護対象部位を保護可能な複数の膨張部位として、保護対象者の腰部の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部を備え、
前記ガス発生器が、作動時、左右両側の前記腰保護部に膨張用ガスを流し可能に、前記インナバッグ内における左右の前記腰保護部の間の部位に、配設されて、前記インナバッグに取り付けられていてもよい。
【0029】
このような構成では、作動時、ガス発生器からの膨張用ガスが、左右の腰保護部に迅速に流れて、保護対象部位としての保護対象者の腰部の左右の大腿骨周りを、迅速に保護することができる。また、ガス発生器が、アウタバッグ内に収納されたインナバッグ内に取り付けられており、別途、ガス発生器の取付部位を考慮せずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置のガス切替機構を示す概略背面図である。
図3】第1実施形態のガス切替機構の作動時を示す概略断面図であり、図2のIII-III部位に対応する。
図4】第1実施形態のガス切替機構の作動時におけるストッパとスライド部とを示す概略説明図である。
図5】第1実施形態の着用エアバッグ装置のエアバッグの膨張状態を説明する概略背面図である。
図6】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時における保護対象者の転倒時を説明する図である。
図7】第2実施形態の着用エアバッグ装置を説明する概略図である。
図8】第2実施形態のガス切替機構の作動時を説明する図である。
図9】第2実施形態の着用エアバッグ装置のエアバッグの概略横断面図であり、図8のIX-IX部位に対応する。
図10】第2実施形態の着用エアバッグ装置の保護対象者への装着時を説明する背面図である。
図11】第3実施形態の着用エアバッグ装置の保護対象者への装着時を説明する背面図である。
図12】第3実施形態のガス切替機構を説明する図である。
図13】第3実施形態の着用エアバッグ装置の作動時を説明する図である。
図14】第2,3実施形態のガス切替機構の変形例を説明する図である。
図15】第4実施形態の着用エアバッグ装置を説明する概略図である。
図16】第4実施形態のエアバッグの概略横断面図であり、図15の XVI- XVI部位に対応する。
図17】第4実施形態のエアバッグの概略縦断面図であり、図15のXVII-XVII部位に対応する。
図18】第4実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略側面図と概略背面図である。
図19】第5実施形態の着用エアバッグ装置を説明する概略図である。
図20】第5実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略側面図と概略背面図である。
図21】第6実施形態の着用エアバッグ装置を説明する概略図とエアバッグの概略横断面図である。
図22】第6実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略側面図と概略背面図である。
図23】第7実施形態の着用エアバッグ装置を説明する概略図とエアバッグの概略横断面図である。
図24】第8実施形態の着用エアバッグ装置を説明する概略図とエアバッグの概略横断面図である。
図25】第8実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略背面図である。
図26】第9実施形態の着用エアバッグ装置の作動時の概略背面図である。
図27】第9実施形態の着用エアバッグ装置を説明する概略図とエアバッグの概略横断面図である。
図28】第9実施形態の概略横断面図であり、図27のXXVIII-XXVIII部位に対応する。
図29】保持体の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、図1~6に示すように、ガス発生器20と、ガス発生器20からの膨張用ガスGにより膨張するエアバッグ40と、保護対象者1の転倒を検知するセンサ部18を備えてガス発生器20を作動させる作動制御装置17と、ガス発生器20、エアバッグ40、及び、作動制御装置17を保持するベスト型の保持体11と、さらに、エアバッグ40におけるガス発生器20との連結部位に配設されるガス切替機構23と、を備えて構成されている。
【0032】
保持体11は、保護対象者1の上半身1aに装着可能なベストとして構成され、保護対象者1の上半身1aの正面を覆う左前部12及び右前部13を備えるとともに、保護対象者1の上半身1aの背面を覆う背面部14を備えて構成され、さらに、左前部12と右前部13との内側縁12a,13a相互を結合させるファスナー等の締結具16を備えて構成されている。換言すれば、保持体11は、背面部14の左部14bの前方側に、左前部12を連ならせるように配設させ、背面部14の右部14cの前方側に、右前部13を連ならせるように配設させて、構成されている。
【0033】
作動制御装置17は、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサと、上下前後左右の3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有してなるセンサ部18を備えるとともに、センサ部18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を行っていると検知されると、ガス発生器20を作動させるように構成されている。なお、具体的には、作動制御装置17は、センサ部18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を開始していると、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えて、判定手段の判定に基づいて、保護対象者1が転倒したと検出し、そして、ガス発生器20を作動させる。また、作動制御装置17には、センサ部18の作動用やガス発生器20の作動用信号の出力用に、図示しない電池等からなる電源も内蔵されている。
【0034】
作動制御装置17は、保持体11における背面部14の右部14cにおける内側面の下部14d側に、保護対象者1の衣服等と接触しないように、図示しないカバー布等に覆われて、取り付けられている。
【0035】
ガス発生器20は、内部に圧縮された二酸化炭素等からなる膨張用ガスGを貯留した略円柱状の本体部20aと、本体部20aの先端の小径の略円柱状のガス吐出部20bと、を備えて構成され、ガス吐出部20bには、膨張用ガスGを吐出する吐出口20cが配設されている。ガス発生器20は、保護対象者1の転倒を検知した作動制御装置17の作動信号を入力して、本体部20aとガス吐出部20bとの境界部位付近に配設された図示しないイニシエータを作動させて、図示しないバーストディスクを破断することにより、本体部20a内に貯留した膨張用ガスGをガス吐出部20bの吐出口20cから吐出する構成としている。
【0036】
エアバッグ40は、ポリエステルやポリアミド等の織布から縫製や袋織り等により、膨張用ガスGの漏れを防止された状態の袋状に、形成されており、膨張完了時の外周壁41として、外形形状を略同等として保護対象者1から離れた外側壁42と、保護対象者1に接近した内側の内側壁43と、を備えて、左右両側に、膨張部位55,60を配設させて構成されている。膨張部位55,60は、保持体11の背面部14側の左右方向の中央において、連通部50により連結されている。但し、連通部50には、エアバッグ40の膨張部位55,60を左右両側に二分するように、外側壁42と内側壁43とに連結される区画壁44が配設されて、膨張部位55,60は、区画壁44により、膨張用ガスGの相互の流出入が無いように、区画されている。
【0037】
なお、実施形態の区画壁44は、内側壁43の一部から形成されているが、外側壁42から形成してもよく、さらに、別体の布材を、外側壁42と内側壁43とに結合させて、区画壁を形成してもよい。
【0038】
膨張部位55,60は、区画壁44の近傍の外側壁42に、膨張用ガスGを流入させる流入口56,61を開口させている。また、膨張部位55,60は、エアバッグ40の膨張完了時、先端の略長方形板状に膨張する部位を、保護対象者1の保護対象部位としての腰部2の左右の大腿骨転子部3(L,R)を覆い可能な腰保護部58,63、としている。腰保護部58,63は、エアバッグ40の膨張完了時に、保護対象者1の腰部2の左右の側面2aを中心として、前後に延びて、大腿骨転子部3(L,R)の周囲を覆えるように、配設されている。そして、膨張部位55,60は、流入口56,61付近から腰保護部58,63までの領域を上下方向の幅寸法を狭めたガス導入部57,62としている。ガス導入部57,62は腰保護部58,63の下縁55b,60b側を上昇させたように、腰保護部58,63より上下方向の幅寸法を狭めた帯状としている(図5参照)。
【0039】
なお、エアバッグ40は、膨張部位55,60の上縁55a,60aに、複数の取付タブ40aが配設されており、これらの取付タブ40aを、縫製等により、保持体11の内側面側に取り付けて、保持体11に保持される。また、エアバッグ40は、着用エアバッグ装置10の作動前の状態では、腰保護部58,63の部位の下縁55b,60b側を、上縁55a,60a側に接近させるように、腰保護部58,63内に入れ込むように、折り畳まれて、保持体11に保持される。
【0040】
エアバッグ40の流入口56,61の周縁には、ガス発生器20における膨張用ガスGを吐出するガス吐出部20b側を接続させるガス切替機構23が配設されている。ガス切替機構23は、ガス発生器20からの膨張用ガスGを転倒方向側の膨張部位55,60に流すものであり、図2~4に示すように、ガス吐出部20b側と接続されるガス入口部24と、流入口56,61側に膨張用ガスGを流出させる流出側部28と、スライド部27と、スライド部27を位置規制するストッパ26と、を備えて構成されている。
【0041】
ガス入口部24は、ガス導入室25の後面側に配設され、ガス吐出部20bを挿入させて、ガス発生器20を保持可能な組付筒部24aを備えて構成されている。ガス入口部24には、ガス導入室25内に膨張用ガスGを流入させるガス導入口24bが開口されている。
【0042】
ガス導入室25は、ガス入口部24を配設させた天井壁25aと、天井壁25aの外周縁から流出側部28側の前方側に延びる略四角筒形状の周壁25bと、を備えて、天井壁25aと周壁25bとで囲まれた空間をガス貯留室25dとしている。
【0043】
周壁25bの天井壁25aから離れた端面側には、スライド部27の左右方向のずれ移動を停止させるストッパ26が固着されている。ストッパ26は、周壁25bの形状と同様な四角枠状の本体部26aと、本体部26aの左右方向の中央に配設される中間部26bと、を備え、中間部26bの左右に、ガス流路26c,26dを配設させている。中間部26bのガス流路26c,26d側の面は、スライド部27のスライド移動を停止させて位置規制するストッパ面26e,26fとしている。
【0044】
また、本体部26aの上下の内周側には、板状のスライド部27の上下の縁を摺動可能に嵌挿させるスライド溝26iが形成されている。
【0045】
ストッパ26の前面側には、板状の流出側部28が配設されている。流出側部28は、エアバッグ40の外側壁42の流入口56,61の周縁を、当板30とで挟持するように、当板30と連結される。流出側部28には、流入口56,61と連通する2つのガス流出口28a,28bが開口されている。左側の膨張部位55に連通する流入口56側に開口されたガス流出口28aは、ストッパ26の左側のガス流路26cより、小さな開口とし、右側の膨張部位60に連通する流入口61側に開口されたガス流出口28bは、ストッパ26の右側のガス流路26dより、小さな開口としている。換言すれば、ストッパ26の左側のガス流路26cは、エアバッグ40の流入口56より大きく開口され、ストッパ26の右側のガス流路26dは、エアバッグ40の流入口61より大きく開口されている。
【0046】
そして、スライド部27は、ストッパ26の本体部26aの内側における流出側部28の後面側(表面側)に、流出側部28と摺動可能な四角枠状として、配設されている。スライド部27は、上下方向に延びる左右の縦枠部27aと、左右の縦枠部27aの上下の端部相互を連結する横枠部27bと、を備えて、中央に、略長方形の開口面とした連通口27cを開口させている。縦枠部27aの上下の外縁側には、ストッパ26に設けられたスライド溝26iに摺動可能に嵌挿される左右方向に延びた鍔部27baが、突設されている。スライド部27の左右の縦枠部27aは、それぞれ、ガス流出口28a,28bを閉塞可能な幅寸法としている。さらに、スライド部27の左右の縦枠部27aの配置位置は、左側の縦枠部27alが、左側のガス流出口28aを閉塞する際には、ストッパ26のストッパ面26eに当接して、位置規制されるとともに、その際、右側の縦枠部27arが、右側のガス流出口28bの右側にずれて、ガス流出口28bを開口させる位置とし(図3のA,図4のA参照)、逆に、右側の縦枠部27arが、右側のガス流出口28bを閉塞する際には、ストッパ26のストッパ面26fに当接して、位置規制されるとともに、左側の縦枠部27alが、左側のガス流出口28aの左側にずれて、ガス流出口28aを開口させる位置とするように、構成されている(図3のB,図4のB参照)。なお、このようなスライド部27の左右のずれは、保護対象者1の左右方向への転倒時に発生し、スライド部27は、転倒時の重力(慣性力)によって、転倒方向側にずれることとなる。
【0047】
また、ガス切替機構23のガス導入口24bには、ガス導入口24bを塞ぐように、メッシュ状の残渣補足材21が、固着されている。残渣補足材21は、ガス発生器20の作動時に、残渣を補足して、膨張用ガスGを通過させるもので、エアバッグ40内への残渣の流入を防止する。残渣補足材21は、布製若しくは金属製のメッシュとしている。
【0048】
そして、ガス切替機構23をエアバッグ40に組み付け、さらに、ガス切替機構23にガス発生器20を組み付け、エアバッグ40の下縁55b,60bを上縁55a,60a側に接近させるように折り畳んで、取付タブ40aを利用して、保持体11に取り付けるとともに、予め、保持体11に取り付けておいた作動制御装置17からの作動信号入力用の図示しないリード線をガス発生器20に接続させれば、保持体11にエアバッグ40やガス発生器20等を保持させた着用エアバッグ装置10を製造することができる。
【0049】
第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、締結具16を利用して、保持体11を保護対象者1の上半身1aに装着し、その後、保護対象者1が転倒等すると、センサ部18からの信号を入力していた作動制御装置17が、ガス発生器20を作動させる。すると、ガス切替機構23のスライド部27が、流出側部28の表面側(後面側)で転倒方向側にずれ、例えば、左方側にずれ、スライド部27の右縦枠部27arが、ストッパ26のストッパ面26fに位置規制されて、左縦枠部27alが、ガス流出口28aから左方にずれて、スライド部27の連通口27cをガス流出口28aと連通させることから(図4のB参照)、ガス発生器20のガス吐出部20bの吐出口20cから吐出された膨張用ガスGは、ガス導入口24b、ガス貯留室25d、連通口27c、ガス流出口28aを経て、膨張部位55側へ流れ、かつ、スライド部27の右縦枠部27arが、他の膨張部位60へ膨張用ガスGを流すガス流出口28b側を閉口させる。そのため、膨張用ガスGが、転倒方向側の膨張部位55側だけに流れて、図5のA,Bや図6のA,Bに示すように、所定の内圧を確保して、転倒先の接地面8との間に、膨張した膨張部位55が配設されて、保護対象部位3Lを保護できる。そして、膨張する膨張部位55は、他の膨張部位60と区画壁44により区画されて、他の膨張部位60に膨張用ガスGが流れないことから、安定して、所定の内圧を確保できて、ガス発生器20は、各膨張部位55,60を全て膨張させるような出力で無くともよいことから、小型で軽量なものが使用可能となる。
【0050】
なお、保護対象者1が、右方側に転倒すれば、上記と逆となって、転倒方向の右側に、スライド部27がずれ移動して、右側の縦枠部27arが、右側のガス流出口28bの右側にずれて、膨張部位60へ膨張用ガスGを流すガス流出口28bを開口させ(図3のA,図4のA参照)、左縦枠部27alが、膨張部位55へ膨張用ガスGを流すガス流出口28a側を閉口させる。そのため、膨張用ガスGが、転倒方向側の膨張部位60側だけに流れて、図5のA,Bの二点鎖線に示すように、所定の内圧を確保して、転倒先の接地面との間に、膨張した膨張部位60が配設されて、保護対象部位3Rを保護できることとなる。
【0051】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、エアバッグ40を膨張させるガス発生器20として、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0052】
また、第1実施形態等の着用エアバッグ装置10では、ガス発生器20からエアバッグ40の膨張部位55,60に流出されるまでの膨張用ガスGの流路(第1実施形態では、ガス導入口24b付近)に、ガス発生器20の作動時に発生する残渣を補足可能なメッシュ状の残渣補足材21が、配設されている。
【0053】
そのため、このような構成では、ガス発生器20が作動されて、ガス発生器20から膨張用ガスGとともに、残渣がエアバッグ40の膨張部位55,60側に流れようとして、残渣補足材21により残渣が補足されて、膨張部位55,60内に残渣が流入しない。そのため、エアバッグ40の膨張完了後におけるエアバッグ40の膨張部位55,60の破損時、残渣が、エアバッグ40外へ流出することが無く、残渣による弊害を防止できる。
【0054】
なお、残渣補足材21は、ガス発生器20からエアバッグ40の複数の膨張部位55,60に流出されるまでの膨張用ガスGの流路に配設されていればよく、ガス流出口28a,28b付近等に、配設することができる。
【0055】
そして、第1実施形態では、ガス切替機構23が、各膨張部位55,60へ流し可能なガス流出口28a,28bを表面側に並設させるように開口させた流出側部28と、流出側部28の表面側(後面側)で、転倒方向側に重力によりずれ移動可能として、各膨張部位55,60側へ連通するガス流出口28a,28bと連通可能な連通口27c、を有するスライド部27と、転倒方向へのずれ移動時のスライド部27の連通口27cを、転倒方向側の膨張部位55側のガス流出口28aに連通させ、他の膨張部位60のガス流出口28b側を連通口27cの周縁の縦枠部27arにより閉口させるように(図3,4のB参照)、若しくは、転倒方向側の膨張部位60側のガス流出口28bに連通させ、他の膨張部位55のガス流出口28a側を連通口27cの周縁の縦枠部27alにより閉口させるように(図3,4のA参照)、スライド部27を位置規制するストッパ26と、を備えている。さらに、ガス切替機構23は、ガス発生器20の膨張用ガスGのガス吐出部20b側と連通されて、スライド部27の連通口27cにおける流出側部28から離れた側を覆って、連通口27c側に膨張用ガスGを供給可能なガス入口部24、を備えている。
【0056】
そのため、このような構成では、スライド部27が重力によってスライドするだけで、膨張用ガスGの流れを切り替えることができて、転倒方向を検出するようなセンサ部や判定手段を利用せずに構成できる。
【0057】
勿論、図7~10に示す第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aに示すように、ガス発生器20の作動を制御する作動制御装置17A、転倒方向を検出可能なセンサ部18Aを備えて構成されて、ガス切替機構23Aが、センサ部18Aによる転倒方向の検出による作動制御装置17Aに、作動を制御されて、ガス発生器20の膨張用ガスGのガス吐出部20b側からの膨張用ガスGを、転倒方向側の膨張部位55若しくは膨張部位60に流し可能に構成されていてもよい。
【0058】
なお、この着用エアバッグ装置10Aでも、第1実施形態と同様に、保持体11に、エアバッグ40A,ガス発生器20、センサ部18Aを設けた作動制御装置17A、及び、ガス切替機構23Aが、保持されて配設されている。
【0059】
このエアバッグ40Aでは、左右方向の中央部に、左右の膨張部位55,60に連なる連通部50としての分岐室46が、配設され、分岐室46におけるエアバッグ40Aの外側壁42に、ガス発生器20のガス吐出部20b側と連結される流入口部45が配設されている。流入口部45には、残渣補足材21が配設されている。
【0060】
なお、第2実施形態のガス切替機構23Aは、アクチュエータ32(L,R)と、左右の膨張部位55,60に連なる分岐室46と、分岐室46と膨張部位55,60側とを区画する区画壁47(L,R)と、区画壁47(L,R)に設けられて、膨張部位55,60側に連通する流入口56,66と兼用となる開口48(L,R)と、アクチュエータ32(L,R)により開口48(L,R)の開閉を行う弁体33と、を備えて構成されている。
【0061】
分岐室46は、外側壁42と内側壁43との間で、左右の区画壁47(L,R)を設けて、膨張部位55側と膨張部位60側とに対して、区画されている。そして、各区画壁47L,47Rには、中央に、円形の開口48L,48Rが形成されるともに、可撓性を有し、かつ、ガス非透過性のシート状の弁体33(L,R)が、各開口48(L,R)を覆うように、分岐室46側の各区画壁47(L,R)の内側に配設されている。各弁体33L,33Rは、下端側を固定端33aとして、区画壁47L,47Rの開口48L,48Rの下縁側に、縫製等により、固着され、上端側を、エアバッグ40Aに設けられた挿通孔49を経て、分岐室46の上方のエアバッグ40A外へ突出させ、電磁ソレノイド等からなるアクチュエータ32(L,R)のプランジャ32aに係止された係止端33bとしている。各アクチュエータ32(L,R)は、作動時、プランジャ32aの先端をストッパ32bから離す方向に、引き戻される。そのため、分岐室46内に膨張用ガスGが流入されて、分岐室46内の圧力が高い状態となり、アクチュエータ32(L,R)が作動されて、プランジャ32aが引き戻されていれば、弁体33(L,R)は、係止端33b側が、分岐室46内の膨張用ガスGの圧力により、プランジャ32aから外れて、挿通孔49を経て、分岐室46内に引き込まれて、さらに、開口48(L,R)から、膨張部位55,60側に進入する状態となって、膨張部位55,60側の流入口56,61となる開口48L,48Rを開口させることとなる。
【0062】
上記のようなガス発生器20、エアバッグ40A、ガス切替機構23A、センサ部18Aを有した作動制御装置17A等を保持体11に組み付けた着用エアバッグ装置10Aを、保護対象者1に装着した後、保護対象者1が、例えば、左方向に転倒すれば、センサ部18Aの信号を入力した作動制御装置17Aが、保護対象者1の左方向への転倒を検出して、ガス発生器20を作動させるとともに、アクチュエータ32Lを作動させる。そのため、ガス発生器20からの膨張用ガスGが分岐室46内に流入して、分岐室46の内圧が高まり、その際、アクチュエータ32Lが、プランジャ32aを引き戻すように、作動されることから、弁体33Lが、膨張用ガスGの圧力により、係止端33b側を、プランジャ32aから離れて、挿通孔49を経て、分岐室46内に引き込まれ、さらに、膨張部位55側に進入させて、開口48Lからなる流入口56を開口させる状態となって(図8のA,B参照)、保護対象者1の左側の大腿骨転子部3L付近を、膨張部位55の腰保護部58により覆って、転倒方向側の保護対象部位3Lを、保護することができる。
【0063】
勿論、この時、膨張部位60側に連なる流入口61(開口48R)は、アクチュエータ32Rが作動されないことから、弁体33Rにより、閉塞された状態を維持することとなって、右側の膨張部位60は、膨張せず、使用するガス発生器20は、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0064】
なお、保護対象者1が、上記と逆に、右方向に転倒すれば、センサ部18Aの信号を入力した作動制御装置17Aが、保護対象者1の右方向への転倒を検出して、ガス発生器20を作動させるとともに、アクチュエータ32Rを作動させる。そのため、ガス発生器20からの膨張用ガスGが分岐室46内に流入して、分岐室46の内圧が高まり、その際、アクチュエータ32Rが、プランジャ32aを引き戻すように、作動されることから、弁体33Rが、膨張用ガスGの圧力により、係止端33b側を、プランジャ32aから離れて、挿通孔49を経て、分岐室46内に引き込まれ、さらに、膨張部位60側に進入させて、開口48Rからなる流入口61を開口させる状態となり、保護対象者1の右側の大腿骨転子部3R付近を、膨張部位60の腰保護部63により覆って、転倒方向側の保護対象部位3Rを、保護できることとなる。
【0065】
また、エアバッグとしては、図11~13に示す第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bのエアバッグ40Bのように、膨張部位として、保護対象者1の頭部5、特に、後頭部6、を覆う頭保護部68を備えた膨張部位65を備えていてもよい。このエアバッグ40Bは、他の膨張部位として、第1、2実施形態のエアバッグ40,40Aと同様に、保護対象者1の腰部2の左右の側面2a側を覆い可能な腰保護部58,63を有した膨張部位55,60を備えている。
【0066】
なお、頭保護部68は、膨張前の状態では、保持体11の背面部14の上部の襟部15内に、折り畳まれて収納されている。
【0067】
そして、左右の膨張部位55,60の中間部に、各膨張部位55,60,65に連なる連通部51としての分岐室46Bが配設されている。分岐室46Bは、第2実施形態と同様な区画壁47L,47Rにより囲まれるともに、膨張部位65側と区画される区画壁47Uを備え、区画壁47Uには、膨張部位65側の流入口66となる開口48Uが開口されている。そして、開口48Uは、アクチュエータ32Uの作動により、膨張部位65側に引き込まれて開口可能な弁体33Uにより、通常時、閉塞されている。弁体33Uは、他の弁体33L,33Rと同様に、左端側を固定端33aとして、区画壁47Uの開口48Uの分岐室46B側の左縁側に、縫製等により、固着され、右端側を、エアバッグ40Bに設けられた挿通孔49を経て、分岐室46Bの右方のエアバッグ40B外へ突出させ、電磁ソレノイド等からなるアクチュエータ32Uのプランジャ32aに係止された係止端33bとしている。
【0068】
なお、エアバッグ40Bの分岐室46Bには、第2実施形態と同様に、ガス発生器20に接続される流入口部45が配設されている。
【0069】
第3実施形態のガス切替機構23Bは、アクチュエータ32(L,R,U)と、各膨張部位55,60,65に連なる分岐室46Bと、分岐室46Bと膨張部位55,60,65側とを区画する区画壁47(L,R,U)と、区画壁47(L,R,U)に設けられて、膨張部位55,60,65側に連通する流入口56,61,66と兼用となる開口48(L,R,U)と、アクチュエータ32(L,R,U)により開口48の開閉を行う弁体33(L,R,U)と、を備えて構成されている。
【0070】
第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bを、保護対象者1に装着した後、保護対象者1が、例えば、後方へ転倒すれば、センサ部18Aの信号を入力した作動制御装置17Aが、保護対象者1の後方への転倒を検出して、ガス発生器20を作動させるとともに、アクチュエータ32Uを作動させる。そのため、ガス発生器20からの膨張用ガスGが分岐室46B内に流入して、分岐室46Bの内圧が高まり、その際、アクチュエータ32Uが、プランジャ32aを引き戻すように、作動されることから、弁体33Uが、膨張用ガスGの圧力により、係止端33b側を、プランジャ32aから離れて、挿通孔49を経て、分岐室46B内に引き込まれ、さらに、膨張部位65側に進入させて、開口48Uからなる流入口66を開口させる状態となって(図12図13のA参照)、保護対象者1の後頭部6付近を、膨張部位65の頭保護部68により覆って、転倒方向側の保護対象部位6を、保護することができる。
【0071】
勿論、この時、膨張部位55、60側に連なる流入口56,61(開口48L,48R)は、アクチュエータ32L,32Rが作動されないことから、弁体33L,33Rにより、閉塞された状態を維持することとなって、左右の膨張部位55、60は、膨張せず、使用するガス発生器20は、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0072】
また、着用エアバッグ装置10Bでは、保護対象者1が、左方向に転倒したり、右方向に転倒すれば、その転倒方向を検知した作動制御装置17Aは、ガス発生器20を作動させるとともに、アクチュエータ32L,32Rを作動させて、膨張部位55だけ、あるいは、膨張部位60だけを膨張させることとなる(図13のB,C参照)。
【0073】
なお、第2,3実施形態の着用エアバッグ装置10A,10Bでは、ガス切替機構23A,23Bとして、アクチュエータ32(L,R,U)により、流入口56,61,66としての開口48(L,R,U)を、弁体33(L,R,U)により開閉させた場合を示したが、図14のA,Bに示すように、ガス切替機構として、ガス発生器20からの膨張用ガスGを、膨張部位55,60,65側に切り替えて流入可能な切替弁35,36を使用してもよい。切替弁35,36は、電磁ソレノイドからなる図示しないブランジャを引き抜いて、膨張部位55,60,65の各流入口56,61,66側を開口させるもので、ガス発生器20側に連なる流入側部35a,36aを備えるとともに、膨張部位55,60,65側に連なるガス導入部57,62,67を連結させる流出側部35b,35c,36b,36c,36dを備えて構成されている。
【0074】
また、小型で軽量なガス発生器を使用する着用エアバッグ装置としては、図15~18に示す第4実施形態の着用エアバッグ装置10Cのように構成してもよい。
【0075】
この着用エアバッグ装置10Cは、ガス発生器20、エアバッグ40C、センサ部18を有した作動制御装置17が、第1,2実施形態と同様に、保持体11に組み付けられて構成されている。
【0076】
そして、エアバッグ40Cが、左右の膨張部位55,60を備えるとともに、左右方向の中央に、膨張部位55,60に連通される細幅の連通部50を、配設させている。連通部50には、ガス発生器20のガス吐出部20bと連結される円筒状の流入口部45Cが、配設されている。流入口部45Cには、残渣補足材21が配設されている。
【0077】
そして、左右の膨張部位55,60が、それぞれ、膨張時の厚さ寸法を規制する厚さ規制手段70を設けて構成されている。エアバッグ40Cの厚さ規制手段70は、エアバッグ40Cの外周壁41の離隔する部位相互を、エアバッグ40Cの内周側で接近させるように連結する連結部72、を配設させて構成されている。
【0078】
具体的には、エアバッグ40Cの連結部72は、エアバッグ40Cの外周壁41の保護対象者1側から離れた外側壁42と保護対象者1側に接近する内側壁43とを、縫合糸73による縫合により、直接、部分的に結合させたシームテザー74により形成されている(図17参照)。このシームテザー74は、連通部50側から延びて、各膨張部位55,60内で、渦巻状に配設されており、膨張部位55,60を、略全域にわたって、略均等な厚さの長方形板状に、膨張させることとができる。
【0079】
さらに、このエアバッグ40Cでは、膨張部位55,60が、保護対象部位としての保護対象者1の腰部2の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部58,63、を備え、さらに、それらの腰保護部58,63が、それぞれ、保護対象部位の左右の大腿骨転子部3L,3Rの周囲の部位58a,63aを、隣接部位58b,63bより、厚く膨張する構成としている。
【0080】
すなわち、シームテザー74によって、膨張部位55,60が、厚さ寸法を略均等にできる板状の腰保護部58,63を備え、さらに、その腰保護部58,63の領域内で、若干の厚さ寸法を変化させて、大腿骨転子部3L,3Rを覆う保護本体部58a,63aの部位の厚さ寸法tB(図17参照)を、周囲の周縁部58b、63bの厚さ寸法tSに比べて、十分な保護を達成できるように、厚く膨張できるように構成されている。
【0081】
この第4実施形態の着用エアバッグ装置10Cでは、エアバッグ40C、ガス発生器20、センサ部18を有した作動制御装置17、を組み付けた保持体11を、保護対象者1に装着させた後、保護対象者1が転倒等しようとすると、転倒を検出したセンサ部18の信号により、作動制御装置17がガス発生器20を作動させる。すると、ガス発生器20からの膨張用ガスGを流入させたエアバッグ40Cは、保護対象者1の保護対象部位を覆う複数の膨張部位55,60が、厚さ規制手段70のシームテザー74により、丸く膨らむのではなく、厚さを抑えた板状(実施形態では略長方形板状)として、膨張することから、エアバッグ40Cは、複数の保護対象部位3L,3Rを、広く覆って、保護できる。勿論、ガス発生器20は、各膨張部位55,60を、必要以上に厚く膨らませなくともよいことから、大きな出力で無くともよく、小型で軽量なものが使用可能となる。
【0082】
したがって、第4実施形態の着用エアバッグ装置10Cでは、エアバッグ40Cを膨張させるガス発生器20として、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0083】
さらに、第4実施形態では、複数の膨張部位55,60が、保護対象部位としての保護対象者1の腰部2の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部58,63、を備えて、腰保護部58,63が、それぞれ、保護対象部位の左右の大腿骨転子部3L,3Rの周囲の保護本体部58a,63aを、隣接する周縁部58b,63bより、厚く膨張する構成としている(tB>tS)。
【0084】
そのため、第4実施形態のエアバッグ40Cでは、特に保護の重要な左右の大腿骨転子部3L,3R付近を、保護本体部58a,63aにより、適切に覆うことができる(図18のA,B参照)。ちなみに、転倒時に大腿骨転子部3L,3R付近が打撃されると、治療が長引く大腿骨骨折を招き易いことから、大腿骨転子部3L,3R付近の保護が重要となる。
【0085】
なお、エアバッグの膨張部位に設ける厚さ規制手段としては、エアバッグの外周壁の離隔する部位相互を、エアバッグの内周側で接近させるように連結する連結部、を配設させて構成されていればよく、図19,20に示す第5実施形態の着用エアバッグ装置10Dのエアバッグ40Dのように、膨張部位55,60の厚さ方向と直交する方向で外形形状を規制するように、連結させる閉じ部76を設けて、各膨張部位55,60を、容積の増大を抑制しつつ、効果的に保護対象部位3L,3Rを覆い可能に、膨張させてもよい。
【0086】
この第5実施形態の着用エアバッグ装置10Dは、エアバッグ40Dが第4実施形態のエアバッグ40Cと異なっているだけで、ガス発生器20や作動制御装置17、それらを保持する保持体11は、第4実施形態と同様としている。そして、エアバッグ40Dは、連通部50の左右両側に、腰部2の左右の部位を保護可能な膨張部位55,60を備えているものの、左右方向の中央部位に、大腿骨転子部3L,3R付近を覆う保護本体部58a,63aを配設し、その左右両側に周縁部58b,63bを配設している。そして、保護本体部58a,63aの左右両側の閉じ部76間の幅寸法WLを、周縁部58b、63bのそれぞれの左右両側の閉じ部76間の幅寸法WSより、広くして(図19参照)、保護本体部58a,63aの厚さ寸法tBを、周縁部58b、63bの厚さ寸法tSより、厚くして、各膨張部位55,60を、容積の増大を抑制しつつ、効果的に保護対象部位3L,3Rを覆い可能としている(図20のA,B参照)。
【0087】
なお、このエアバッグ40Dは、保護本体部58a,63aと隣接する周縁部58b,63bとの間の閉じ部76,76間に、スリット77を配設させているが、スリット77を塞ぐように、閉じ部76を延設させてもよい。但し、スリット77を配設させている場合には、保護本体部58a,63aと隣接する周縁部58b,63bとが、スリット77の自由空間により、相互に接近して、腰部2の周囲を半円弧状に囲みやすいことから、膨張部位55,60を腰部2に密着させ易い。
【0088】
また、厚さ規制手段としての連結部としては、エアバッグの外周壁の対向する壁部の少なくとも一部相互を、間接的に連結するテザー、により、膨張部位の厚さ方向で連結してもよく、図21,22に示す第6実施形態の着用エアバッグ装置10Eのエアバッグ40Eのように構成してもよい。
【0089】
第6実施形態のエアバッグ40Eは、膨張部位55,60の腰保護部58,63の部位における外側壁42と内側壁43とを、上下方向に帯状に延びたテザー78により連結したものである。そしてさらに、大腿骨転子部3L,3Rの周囲を覆う保護本体部58a,63aを間にした左右両側のテザー78,78の間の間隔WLを、テザー78の周囲の膨張部位55,60の左右方向の側縁55c、60cまでの距離WSより、広くして、保護本体部58a,63aを、左右の周縁部58b,63bより,厚く膨張するように(tB>tS)、構成されている。
【0090】
そのため、この第6実施形態の着用エアバッグ装置10Eでも、エアバッグ40E、ガス発生器20、センサ部18を有した作動制御装置17を組み付けた保持体11を、保護対象者1に装着させた後、保護対象者1が転倒等しようとすると、転倒を検出したセンサ部18の信号により、作動制御装置17がガス発生器20を作動させる。すると、ガス発生器20からの膨張用ガスGを流入させたエアバッグ40Eは、保護対象者1の保護対象部位3L,3Rを覆う複数の膨張部位55,60が、厚さ規制手段70のテザー78により、丸く膨らむのではなく、厚さを抑えた板状(実施形態では略長方形板状)として、膨張することから、エアバッグ40Eは、複数の保護対象部位3L,3Rを、広く覆って、保護できる。勿論、ガス発生器20は、各膨張部位55,60を、必要以上に厚く膨らませなくともよいことから、大きな出力で無くともよく、小型で軽量なものが使用可能となる。
【0091】
さらに、この第6実施形態でも、複数の膨張部位55,60が、保護対象部位としての保護対象者1の腰部2の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部58,63、を備えて、腰保護部58,63が、それぞれ、保護対象部位の左右の大腿骨転子部3L,3Rの周囲の保護本体部58a,63aを、隣接する周縁部58b,63bより、厚く膨張する構成としている(tB>tS)。
【0092】
そのため、第6実施形態のエアバッグ40Eでも、特に保護の重要な左右の大腿骨転子部3L,3R付近を、保護本体部58a,63aにより、適切に覆うことができる。
【0093】
なお、厚さ規制手段を設ける場合、図23に示す第7実施形態の着用エアバッグ装置10Fのエアバッグ40Fのように、左右の膨張部位55,60の他、保護対象者1の頭部5の後頭部6を覆う頭保護部68を有した膨張部位65を備えて構成されていてもよく、その膨張部位65に、第6実施形態と同様なテザー78を設けて、略板状に膨張させるとともに、左右方向の中央に、保護本体部69aを設け、保護本体部69aの左右両側に、保護本体部69aより、若干、厚さ寸法を小さくした周縁部69b,69b、を配設させてもよい。
【0094】
さらに、小型で軽量なガス発生器を使用する着用エアバッグ装置としては、図24,25に示す第8実施形態の着用エアバッグ装置10Gのように構成してもよい。
【0095】
この着用エアバッグ装置10Gは、ガス発生器20、エアバッグ40G、センサ部18を有した作動制御装置17が、第1,2実施形態と同様に、保持体11に組み付けられて構成されている。
【0096】
そして、エアバッグ40Gが、複数の膨張部位55,60を覆う1つのアウタバッグ80と、アウタバッグ80内に配設されて、ガス発生器20からの膨張用ガスGを流入させて膨張する複数のインナバッグ84L(1,2),84R(1,2)、を備えて構成されている。
【0097】
アウタバッグ80は、可撓性を有した織布や不織布等から形成されて、外形形状を、第1実施形態のエアバッグ40と同様な形状とした袋状として、左右の膨張部位55,61を覆い可能な左側部81Lと右側部81Rとを備えるとともに、左右方向の中央部位に、細幅の中央部82を備えている。そして、中央部82の上縁側には、各インナバッグ84L(1,2),84R(1,2)の流入口部85を突出させる開口82aが配設されている。
【0098】
インナバッグ84L(1,2),84R(1,2)は、第1実施形態のエアバッグ40と同様なポリエステル等の織布からされて、膨張時、アウタバッグ80の左側部81Lと右側部81Rとに覆われた先端に、相互に並設させて、保護対象部位3L,3Rを覆うように膨張する端末膨張部86、を配設させて構成されている。すなわち、インナバッグ84L1,84L2では、先端の端末膨張部86,86が、アウタバッグ80の左側部81L内で、左右に並設されて、左側の腰保護部58を構成し、インナバッグ84R1,84R2では、先端の端末膨張部86,86が、アウタバッグ80の右側部81R内で、左右に並設されて、右側の腰保護部63を構成するように、設定されている。各インナバッグ84L(1,2)、84R(1,2)は、端末膨張部86から離れた元部側を、流入口部85として、アウタバッグ80外に突出されて、ガス発生器20のガス吐出部20bから吐出される膨張用ガスGを流入可能に、ディフューザー87における各流入口部85に対応するように分岐された各流出口87aに接続されている。
【0099】
この第8実施形態の着用エアバッグ装置10Gでは、エアバッグ40G、ガス発生器20、センサ部18を有した作動制御装置17を組み付けた保持体11を、保護対象者1に装着させた後、保護対象者1が転倒等しようとすると、転倒を検出したセンサ部18の信号により、作動制御装置17がガス発生器20を作動させる。すると、膨張用ガスGが各インナバッグ84L(1,2)、84R(1,2)に流れて、アウタバッグ80内で各インナバッグ84L(1,2)、84R(1,2)が膨張し、そして、膨張を完了させれば、複数のインナバッグ84L(1,2)、84R(1,2)の端末膨張部86が、保護対象部位3L,3Rを覆うように、アウタバッグ80の左側部81L内や右側部81R内で並設されて、保護対象部位3L,3Rを保護できる。そして、このような態様は、1つの柱状に丸く膨らむ膨張部位により、保護対象部位3L,3Rを覆う場合に比べて、小径の端末膨張部86を並設させて、保護対象部位3L,3Rを覆えば、保護性能の低下を抑えて、膨張部位55,60の全体の容積を小さくでき、その結果、使用するガス発生器20として、出力の小さなものを使用できる。勿論、各インナバッグ84L(1,2)、84R(1,2)の端末膨張部86は、アウタバッグ80の左側部81L内や右側部81R内で膨張することから、位置ずれせずに、保護対象部位3L,3Rを覆う所定位置で、的確に、膨張を完了させることができる。
【0100】
したがって、第8実施形態の着用エアバッグ装置10Gでは、エアバッグ40Gを膨張させるガス発生器20として、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0101】
なお、エアバッグ40Gでは、アウタバッグ80の左側部81Lや右側部81R内に配設して膨張部位55,60を構成するインナバッグとして、インナバッグ84L1,84L2と、インナバッグ84R1,84R2と、の2つずつから構成したが、3つ以上のインナバッグを使用して、各膨張部位を構成してもよい。
【0102】
さらに、小型で軽量なガス発生器を使用する着用エアバッグ装置としては、図26~28に示す第9実施形態の着用エアバッグ装置10Hのように構成してもよい。この第9実施形態の着用エアバッグ装置10Hでは、ガス発生器20Hが、エアバッグ40H内に収納されて、配設されている。
【0103】
この着用エアバッグ装置10Hでは、エアバッグ40Hが、アウタバッグ80Hと、アウタバッグ80H内に配設されるインナバッグ90と、を備えて構成されている。インナバッグ90は、左右の腰保護部58,63を設けた膨張部位55,60を備えるとともに、左右の膨張部位55,60間の中央に、細幅の連通部50を配設させている。さらに、左右の膨張部位55,60には、連通部50側から延びて、下縁55b,60b側の左右方向の中央付近まで延びるシームテザーからなる連結部91が配設されて、膨張部位55,60の外周壁41の外側壁42と内側壁43とが連結されている。
【0104】
ガス発生器20Hは、略円筒状の金属製のリテーナ37と当板38とを利用して、インナバッグ90内に収納し、かつ、インナバッグ90に取付固定している(図28参照)。ガス発生器20Hは、本体部20aから外方に延びる2本のボルト20dを備えて、本体部20aと膨張用ガスGを吐出される吐出口20cを有したガス吐出部20bとを、リテーナ37内に収納させた状態で、インナバッグ90の連通部50内に収納させ、リテーナ37とインナバッグ90とを貫通させた各ボルト20dに、インナバッグ90の外表面側から当板38を配置させて、ナット39を締結させることにより、ガス発生器20Hを、インナバッグ90内に収納し、かつ、インナバッグ90に取付固定している。
【0105】
この第9実施形態の着用エアバッグ装置10Hでは、ガス発生器20Hを取り付けたエアバッグ40Hと、センサ部18を有した作動制御装置17と、を組み付けた保持体11を、保護対象者1に装着させた後、保護対象者1が転倒等しようとすると、転倒を検出したセンサ部18の信号により、作動制御装置17がガス発生器20Hを作動させる。すると、ガス発生器20Hから吐出される膨張用ガスGにより、インナバッグ90が膨張して、保護対象部位としての大腿骨転子部3L,3R付近の側方をインナバッグ90の腰保護部58,63が覆って、保護対象者1の保護対象部位3L,3Rを保護できる(図26参照)。
【0106】
そして、この着用エアバッグ装置10Hでは、ガス発生器20H自体が、エアバッグ40Hのインナバッグ90内に収納されており、作動時に吐出する膨張用ガスGが、エアバッグ40H(インナバッグ90)外に漏れ難く、効率的に、各膨張部位55,60を膨張させることができて、各膨張部位55,60に対応した出力、すなわち、大きすぎる出力のガス発生器20Hを使用せずに済む。
【0107】
したがって、この第9実施形態の着用エアバッグ装置10Hでは、エアバッグ40Hを膨張させるガス発生器20Hとして、小型で軽量なものを使用可能となる。
【0108】
また、第9実施形態のエアバッグ40Hが、ガス発生器20Hからの膨張用ガスGを流入させて膨張するインナバッグ90と、インナバッグ90の周囲を覆うアウタバッグ80Hと、を備えて、インナバッグ90が、保護対象者1の保護対象部位を保護可能な複数の膨張部位55,60として、保護対象者1の腰部2の左右の大腿骨周り、を覆い可能な左右の腰保護部58,63を備え、ガス発生器20Hが、作動時、左右両側の腰保護部58、63に膨張用ガスGを流し可能に、インナバッグ90内における左右の腰保護部58,63の間の部位(連通部)50に、配設されて、インナバッグ90に取り付けられている。
【0109】
そのため、第9実施形態では、作動時、ガス発生器20Hからの膨張用ガスGが、左右の腰保護部58,63側に迅速に流れて、保護対象部位としての保護対象者1の腰部2の左右の大腿骨周りを、迅速に保護することができる。また、ガス発生器20Hが、アウタバッグ80H内に収納されたインナバッグ90内に取り付けられており、別途、ガス発生器20Hの取付部位を考慮せずに済む。
【0110】
なお、第9実施形態では、アウタバッグ80Hとインナバッグ90との2層構造のエアバッグ40Hを例示したが、二層構造でないエアバッグの内部にガス発生器20Hを収納してもよく、例えば、第4,5,6実施形態のエアバッグ40C,40D,40Eの連通部50の内部に、リテーナ37と当板38とを利用して、ガス発生器20Hを収納させてもよい。
【0111】
また、第1,2実施形態等では、エアバッグ40等を保持する保持体11として、ベスト型を例示したが、袖部を有したジャケット型としてもよく、さらに、図29に示すベルト型の保持体11Aとしてもよい。この保持体11Aでは、左右の端末相互を締結できる面ファスナー等の締結具16Aを備えており、締結具16Aにより、第1実施形態のエアバッグ40やガス発生器20等を取り付けた保持体11Aを保護対象者1の腰部2付近に巻き付ければ、着用エアバッグ装置10Iを保護対象者1に装着させることができる。
【符号の説明】
【0112】
1…保護対象者、2…腰部、3(L,R)…大腿骨転子部、5…頭部、6…後頭部、10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H、10I…着用エアバッグ装置、17,17A…作動制御装置、18,18A…センサ部、20,20H…ガス発生器、20b…ガス吐出部、23,23A,23B…ガス切替機構、24…ガス入口部、26…ストッパ、26e…ストッパ面、26f…ストッパ面、27…スライド部、27c…連通口、28…流出側部、28a…(左)ガス流出口、28b…(右)ガス流出口、32(L,R,U)…アクチュエータ、33(L,R,U)…弁体、35,36…切替弁、40,40A,40B,40C,40D,40E,40F,40G,40H,40I…エアバッグ、41…外周壁、42…外側壁、43…内側壁、55…(左)膨張部位、58…(左)腰保護部、58a…保護本体部、58b…周縁部、60…(右)膨張部位、63…(右)腰保護部、63a…保護本体部、63b…周縁部、65…(上)膨張部位、68…頭保護部、68a…保護本体部、68b…周縁部、70…厚さ規制手段、72…連結部、73…縫合糸、74…シームテザー、76…閉じ部、78…テザー、80,80H…アウタバッグ、84L(1,2)…インナバッグ、84R(1,2)…インナバッグ、85…流入口部、86…端末膨張部、90…インナバッグ、
tB…(保護本体部の)厚さ寸法、tS…(周縁部の)厚さ寸法、G…膨張用ガス。
図1
図2
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