(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20230816BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20230816BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20230816BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230816BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20230816BHJP
C08G 8/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/26 511
G03F7/40 521
G03F7/20 521
H01L21/30 563
C08G8/00 Z
(21)【出願番号】P 2020533446
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2019028741
(87)【国際公開番号】W WO2020026879
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2018143710
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悠
(72)【発明者】
【氏名】牧野嶋 高史
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143635(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056277(WO,A1)
【文献】特開2013-156627(JP,A)
【文献】特開2016-044241(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024836(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0039423(KR,A)
【文献】特開2015-011169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
H01L 21/027
C08G 8/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(
1b)で表される構成単位を有する化合物、及び
溶媒
を含む下層膜形成組成物であって、
前記化合物の重量平均分子量が、ポリスチレン換算分子量で、1000~30000であり、
前記化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解性が23℃で10質量%以上である下層膜形成組成物。
【化1】
(式(
1b)中、
Aは、
-O-、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状の無置換アルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、炭素数2~10のアルケニレン基、炭素数2~10のアルキニレン基、又はカルボニル基であり、
R
1は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
R
3
は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基であり、
m
1は、各々独立して、0~5の整数であり、
m
4
は各々独立して、0~3の整数である。)
【請求項2】
Aが、-O-、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状の
無置換アルキレン基、又はカルボニル基である、請求項
1に記載の下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記式(1b)で表される構成単位を有する化合物が、下記式
(1b-2)、(1b-4)及び(1b-5)から選ばれる構成単位を有する化合物である、請求項
1に記載の下層膜形成組成物。
【化2】
(式(1b-2)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【化3】
(式(1b-4)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【化4】
(式(1b-5)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【請求項4】
酸発生剤をさらに含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物。
【請求項5】
架橋剤をさらに含有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物から形成される、リソグラフィー用下層膜。
【請求項7】
基板上に、請求項1~
5のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、及び
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程、
を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項8】
基板上に、請求項1~
5のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、中間層膜を形成する工程、
該中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングする工程、
得られた中間層膜パターンをマスクとして前記下層膜をエッチングする工程、
得られた下層膜パターンをマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程、
を含む、回路パターン形成方法。
【請求項9】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物から形成される、レジスト永久膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層膜形成組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われているが、近年、LSI(大規模集積回路)の高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。また、レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されており、極端紫外光(EUV、13.5nm)の導入も見込まれている。
【0003】
しかしながら、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になっている。
【0004】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、レジストに比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献1参照)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料に用いたChemical Vapour Deposition(CVD)によって形成されたアモルファスカーボン下層膜がよく知られている。しかしながら、プロセス上の観点から、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスでレジスト下層膜を形成できるレジスト下層膜材料が求められている。
【0006】
また、本発明者らは、エッチング耐性に優れるとともに、耐熱性が高く、溶媒に可溶で湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するリソグラフィー用下層膜形成組成物(特許文献3を参照。)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-271838号公報
【文献】特開2005-250434号公報
【文献】国際公開第2013/024779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、下層膜形成組成物として、有機溶媒に対する溶解性、エッチング耐性、及びレジストパターン形成性を高い次元で同時に満たしつつ、更に高い耐熱性が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、有用な下層膜形成組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の下層膜形成組成物が有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次のとおりである。
[1]
下記式(1)で表される構成単位を有する化合物、及び
溶媒
を含む下層膜形成組成物であって、
前記化合物の重量平均分子量が、ポリスチレン換算分子量で、1000~30000であり、
前記化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解性が23℃で10質量%以上である下層膜形成組成物。
【化1】
(式(1)中、
Aは、単結合または2価の基であり、
R
1は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
R
2は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、
R
2の少なくとも1つは、水酸基及び/又はチオール基であり、
m
1は、各々独立して、0~5の整数であり、
m
2は、各々独立して、0~8の整数であり、
p
2は、各々独立して、0~2の整数である。)
[2]
前記式(1)で表される構成単位を有する化合物が、下記式(1a)で表される構成単位を有する化合物である、[1]に記載の下層膜形成組成物。
【化2】
(式(1a)中、m
3は、各々独立して、0~4の整数であり、
A、R
1、R
2及びm
1は前記と同様である。)
[3]
前記式(1a)で表される構成単位を有する化合物が、下記式(1b)で表される構成単位を有する化合物である、[2]に記載の下層膜形成組成物。
【化3】
(式(1b)中、R
3は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基であり、
m
4は各々独立して、0~3の整数であり、
A、R
1及びm
1は前記と同様である。)
[4]
Aが、-S-、-O-、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、炭素数2~10のアルケニレン基、炭素数2~10のアルキニレン基、又はカルボニル基である、[1]~[3]のいずれかに記載の下層膜形成組成物。
[5]
Aが、-O-、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基、又はカルボニル基である、[1]~[3]のいずれかに記載の下層膜形成組成物。
[6]
前記式(1b)で表される構成単位を有する化合物が、下記式(1b-1)から(1b-5)から選ばれる構成単位を有する化合物である、[3]に記載の下層膜形成組成物。
【化4】
(式(1b-1)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【化5】
(式(1b-2)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【化6】
(式(1b-3)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【化7】
(式(1b-4)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【化8】
(式(1b-5)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
[7]
酸発生剤をさらに含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の下層膜形成組成物。
[8]
架橋剤をさらに含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の下層膜形成組成物。
[9]
[1]~[8]のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物から形成される、リソグラフィー用下層膜。
[10]
基板上に、[1]~[8]のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、及び
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程、
を含む、レジストパターン形成方法。
[11]
基板上に、[1]~[8]のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物を用いて下層膜を形成する工程、
該下層膜上に、中間層膜を形成する工程、
該中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
該フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程、
該レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングする工程、
得られた中間層膜パターンをマスクとして前記下層膜をエッチングする工程、
得られた下層膜パターンをマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程、
を含む、回路パターン形成方法。
[12]
[1]~[8]のいずれか一項に記載の下層膜形成組成物から形成される、レジスト永久膜。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有用な下層膜形成組成物を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」ともいう。)について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0014】
本明細書に記載の構造式の解釈として、例えば下記のように、Xとの結合を示す線が、環A~環Dに接触している場合には、Xが環A~環Dのいずれと結合していてもよいことを意味する。本解釈は下記の構造式のみに適用されるものではなく、他の構造式に関しても同様に適用される。
【化9】
【0015】
[下層膜形成組成物]
本実施形態は、
下記式(1)で表される構成単位を有する化合物(以下、「式(1)で表される化合物」又は「本実施形態の化合物」ともいう。)、及び
溶媒
を含む下層膜形成組成物であって、
前記化合物の重量平均分子量が、ポリスチレン換算分子量で、1000~30000であり、
前記化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する溶解性が23℃で10質量%以上である、下層膜形成組成物に関する。
【0016】
【0017】
式(1)中、Aは、単結合または2価の基であり、R1は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、R2は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基又は水酸基であり、R2の少なくとも1つは、水酸基及び/又はチオール基であり、m1は、各々独立して0~5の整数であり、m2は、各々独立して0~8の整数であり、p2は各々独立して0~2の整数である。
【0018】
式(1)中、Aは、単結合または2価の基であり、ヘテロ原子を含んでいても良い。例えば、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、炭素数2~10のアルケニレン基、炭素数2~10のアルキニレン基、カルボニル基又はそれらの組み合わせからなるいずれの基が挙げられる。
【0019】
式(1)中、R1は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基及び水酸基からなる群より選択される1価の基である。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。上記アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。上記アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基等が挙げられる。
【0020】
式(1)中、R2は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基、チオール基及び水酸基からなる群より選択される1価の基である。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。上記アルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。上記アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基等が挙げられる。但し、R2の少なくとも1つは水酸基及び/又はチオール基である。
【0021】
式(1)中、m1は、各々独立して、0~5の整数であり、0~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0022】
式(1)中、m2は、各々独立して、0~8の整数であり、0~4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0023】
式(1)中、p2は、各々独立して、0~2の整数であり、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0024】
上記式(1)で表される化合物は、比較的低分子量ながらも、その構造の剛直さにより高い耐熱性を有するため、高温ベーク条件でも使用可能である。また、分子中に3級炭素又は4級炭素を有しており、結晶化が抑制され、リソグラフィー用膜形成材料として好適に用いられる。
【0025】
上記式(1)で表される化合物の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算分子量で、1000~30000であり、耐熱性の観点から、好ましくは1000~25000、より好ましくは2000~10000、さらに好ましくは2500~5000特に好ましくは3000~5000である。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、実施例に記載の測定条件で測定する。
【0026】
また、上記式(1)で表される化合物は、有機溶媒(特に安全溶媒)に対する溶解性が高く、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。このため、上記式(1)で表される化合物を含む下層膜形成組成物は、優れたレジストパターン形成性を有する。
【0027】
また、上記式(1)で表される化合物は、比較的低分子量であり、低粘度であるため、段差を有する基板(特に、微細なスペースやホールパターン等)であっても、その段差の隅々まで均一に充填させつつ、膜の平坦性を高めることが容易である。その結果、上記式(1)で表される化合物を含む下層膜形成組成物は、埋め込み特性及び平坦化特性に優れる。また、上記式(1)で表される化合物は、比較的高い炭素濃度を有する化合物であることから、高いエッチング耐性も発現できる。
【0028】
上記式(1)で表される化合物は、架橋反応のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、R2の少なくとも1つが、水酸基及び/又はチオール基である。
【0029】
上記式(1)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1a)で表される化合物であることが好ましい。
【0030】
【0031】
式(1a)中、A、R1、R2、m1は前記と同様である。m3は、各々独立して、0~4の整数である。
【0032】
また、上記式(1a)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1b)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【0034】
式(1b)中、R3は、各々独立して、炭素数1~10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基であり、
m4は各々独立して、0~3の整数であり、
A、R1及びm1は前記と同様である。
【0035】
また、上記式(1b)で表される化合物は、原料の供給性の観点から、下記式(1b-1)から(1b-5)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【0037】
式(1b-1)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。
【化14】
【0038】
式(1b-2)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。
【化15】
【0039】
式(1b-3)中、R1、及びm1は前記と同様である。
【0040】
【0041】
式(1b-4)中、R1、及びm1は前記と同様である。
【0042】
【化17】
(式(1b-5)中、R
1、及びm
1は前記と同様である。)
【0043】
式(1)で表される化合物の合成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、常圧下、下記式(1-x)で表される化合物と、下記式(z1)で表される化合物とを酸触媒下又は塩基触媒下にて重縮合反応させることによって、上記式(1)で表される化合物が得られる。上記の反応は、必要に応じて、加圧下で行われてもよい。
【0044】
【0045】
上記式(1-x)中、A、R2、m2、及びp2は、それぞれ、式(1)中のA、R2、m2、及びp2と同義である。
【0046】
上記式(z1)中、R1及びm1は、それぞれ、上記式(1)中のR1及びm1と同義である。
【0047】
上記の重縮合反応の具体例としては、ビフェノール類、ビナフトール類、ジヒドロキシベンゾフェノン類、ジヒドロキシフェニルエーテル類、ジヒドロキシジフェニルメタン類、ジヒドロキシフェニルチオエーテル類、ジヒドロキシナフチルエーテル類、ジヒドロキシナフチルチオエーテル類、ジヒドロキシアントラシルエーテル類、ジヒドロキシアントラシルチオエーテル類と、対応するアルデヒド類とを酸触媒下又は塩基触媒下にて重縮合反応させることによって、上記式(1)で表される化合物が得られる。
【0048】
上記フェノール性原料のうち、芳香環同士が単結合で結合しているビフェノール類、ビナフトール類よりも、熱流動性および膜平坦化特性の観点から2価の基で結合している原料が有利であり、ジヒドロキシベンゾフェノン類、ジヒドロキシフェニルエーテル類、ジヒドロキシジフェニルメタン類、ジヒドロキシフェニルチオエーテル類、ジヒドロキシナフチルエーテル類、ジヒドロキシナフチルチオエーテル類、ジヒドロキシアントラシルエーテル類、ジヒドロキシアントラシルチオエーテル類が好ましい。
【0049】
ビフェノール類としては、特に限定されず、例えば、ビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラメチルビフェノール等が挙げられる。これらのビフェノール類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ビフェノールを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0050】
ビナフトール類としては、特に限定されず、例えば、ビナフトール、ジメチルビナフトール、テトラメチルビナフトール等が挙げられる。これらのビナフトール類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ビナフトールを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0051】
ジヒドロキシベンゾフェノン類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジメチルジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらのジヒドロキシベンゾフェノン類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシベンゾフェノンを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0052】
ジヒドロキシフェニルエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシフェニルエーテル、メチルジヒドロキシフェニルエーテル、メトキシジヒドロキシフェニルエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシフェニルエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシフェニルエーテルを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0053】
ジヒドロキシジフェニルメタン類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジメチルジヒドロキシジフェニルメタン、テトラメチルジヒドロキジフェニルメタン等が挙げられる。これらのジヒドロキジフェニルメタン類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキジフェニルメタンを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0054】
ジヒドロキシフェニルチオエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシフェニルチオエーテル、メチルジヒドロキシフェニルチオエーテル、メトキシジヒドロキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシフェニルチオエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシフェニルチオエーテルを用いることが原料の安定供給性の観点から好ましい。
【0055】
ジヒドロキシナフチルエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシナフチルエーテル、メチルジヒドロキシナフチルエーテル、メトキシジヒドロキシナフチルエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシナフチルエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシナフチルエーテルを用いることが、炭素原子濃度を高め、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0056】
ジヒドロキシナフチルチオエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシナフチルチオエーテル、メチルジヒドロキシナフチルチオエーテル、メトキシジヒドロキシナフチルチオエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシナフチルチオエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシナフチルチオエーテルを用いることが、炭素原子濃度を高め、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0057】
ジヒドロキシアントラシルエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシアントラシルエーテル、メチルジヒドロキシアントラシルエーテル、メトキシジヒドロキシアントラシルエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシアントラシルエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシアントラシルエーテルを用いることが、炭素原子濃度を高め、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0058】
ジヒドロキシアントラシルチオエーテル類としては、特に限定されず、例えば、ジヒドロキシアントラシルチオエーテル、メチルジヒドロキシアントラシルチオエーテル、メトキシジヒドロキシアントラシルチオエーテル等が挙げられる。これらのジヒドロキシアントラシルチオエーテル類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ジヒドロキシアントラシルチオエーテルを用いることが、炭素原子濃度を高め、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0059】
アルデヒド類としては、ベンズアルデヒド及びその誘導体であれば特に限定されず、例えば、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、ペンタベンズアルデヒド、ブチルメチルベンズアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、フロロメチルベンズアルデヒド、シクロプロピルベンズアルデヒド、シクロブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、シクロデシルベンズアルデヒド、シクロウンデシルベンズアルデヒド又はビフェニルアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、高い耐熱性を発現できる観点から、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド又はビフェニルアルデヒドからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、ビフェニルアルデヒドを用いることがより好ましい。
【0060】
上記反応に用いる酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸や、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸を用いることが好ましい。酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0061】
上記反応に用いる塩基触媒については、特に限定されず、例えば、金属アルコキサイド(ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、カリウムメトキサイド、カリウムエトキサイド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキサイド等)、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類炭酸水素塩、アミン類(例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、1-メチルイミダゾール等の複素環式第3級アミン等))、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)の有機塩基等が挙げられる。これらの塩基触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、製造上の観点から、金属アルコキサイド、金属水酸化物やアミン類が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。塩基触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい。
【0062】
上記反応の際には、反応溶媒を用いても良い。反応溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、上記反応における反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常、10~200℃の範囲である。
【0064】
本実施形態の式(1)で表される化合物を得るためには、反応温度は高い方が好ましく、具体的には60~200℃の範囲が好ましい。なお、反応方法は、特に限定されないが、例えば、原料(反応物)及び触媒を一括で仕込む方法や、原料(反応物)を触媒存在下で逐次滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130~230℃ にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、目的物である化合物を得ることができる。
【0065】
好ましい反応条件としては、上記式(z1)で表されるアルデヒド類1モルに対し、上記式(1-x)で表される化合物を1.0モル~過剰量使用し、更には酸触媒を0.001~1モル使用し、常圧で、50~150℃で20分~100時間程度反応させる条件が挙げられる。
【0066】
反応終了後、公知の方法により化合物を単離することができる。例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離させ、得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトにより、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って目的物である上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0067】
ここで、本実施形態の樹脂は、本発明の効果を損なわない限り、上記式(1)で表される化合物の単独重合体であってもよいが、他のフェノール類との共重合体であってもよい。ここで共重合可能なフェノール類としては、特に限定されず、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ジフェニルフェノール、ナフチルフェノール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、ブチルカテコール、メトキシフェノール、メトキシフェノール、プロピルフェノール、ピロガロール、チモール等が挙げられる。
【0068】
また、本実施形態の化合物は、本発明の効果を損なわない限り、上述した他のフェノール類以外に、重合可能なモノマーと共重合させたものであってもよい。共重合モノマーとしては、特に限定されず、例えば、ナフトール、メチルナフトール、メトキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルナエン、ピネン、リモネン等が挙げられる。なお、本実施形態の樹脂は、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類との2元以上の(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(1)で表される化合物と上述した共重合モノマーとの2元以上(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類と上述した共重合モノマーとの3元以上の(例えば、3~4元系)共重合体であってもよい。
【0069】
上述した式(1)で表される化合物は、湿式プロセスの適用がより容易になる等の観点から、溶媒に対する溶解性が高いものであることが好ましい。より具体的には、式(1)で表される化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する溶解性は23℃で10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上でる。ここで、溶解性Sは、PGMEAの質量をA、前記質量のPGMEAに溶解する式(1)で表される化合物の最大質量をBとした場合、以下の式で表される。
S=[B/(B+A)]×100
例えば、上記式(1)で表される化合物10gがPGMEA90gに対して溶解すると評価されるのは、式(1)で表される化合物のPGMEAに対する溶解性が「10質量%以上」となる場合であり、溶解しないと評価されるのは、当該溶解性が「10質量%未満」となる場合である。
【0070】
本実施形態の組成物は、本実施形態の化合物を含有するため、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及び平坦化特性に優れる。さらに、本実施形態の組成物は、本実施形態の化合物を含有するため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性に優れたリソグラフィー用膜を形成できる。さらに、本実施形態の組成物は、レジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを形成できる。このため、本実施形態の組成物は、下層膜形成に好適に用いられる。
【0071】
本実施形態の下層膜形成組成物は、溶媒をさらに含む。本実施形態の下層膜形成組成物は、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、酸発生剤、塩基性化合物、その他の成分を含んでいてもよい。以下、これらの成分について説明する。
【0072】
[溶媒]
本実施形態の下層膜形成組成物は、溶媒を含有する。溶媒としては、本実施形態の化合物が溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。ここで、本実施形態の化合物は、上述した通り、有機溶媒に対する溶解性に優れるため、種々の有機溶媒が好適に用いられる。
【0073】
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0074】
上記溶媒の中でも、安全性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、及びアニソールからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0075】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、下層膜形成組成物100質量部に対して、50~99質量部であることが好ましく、66~98質量部であることがより好ましく、75~97質量部であることがさらに好ましい。
【0076】
[架橋剤]
本実施形態の下層膜形成組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号や国際公開2018/016614号に記載されたものを用いることができる。
【0077】
架橋剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、アクリレート化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物及びシアネート化合物からなる群より選択される1種以上であることが好ましく、エッチング耐性向上の観点から、ベンゾオキサジン化合物がより好ましい。
【0078】
フェノール化合物としては、公知のものが使用でき、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐熱性及び溶解性の点から、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。
【0079】
エポキシ化合物としては、公知のものが使用でき、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、耐熱性と溶解性の観点から、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類から得られるエポキシ樹脂等の常温で固体状エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0080】
シアネート化合物としては、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。シアネート化合物は、モノマー、オリゴマー及び樹脂のいずれの形態であってもよい。また、シアネート化合物は、芳香族基を有するものが好ましく、シアネート基が芳香族基に直結した構造のものを好適に使用することができる。このようなシアネート化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールE、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック樹脂、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールAノボラック樹脂、臭素化ビスフェノールA、臭素化フェノールノボラック樹脂、3官能フェノール、4官能フェノール、ナフタレン型フェノール、ビフェニル型フェノール、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエンアラルキル樹脂、脂環式フェノール、リン含有フェノール等の水酸基をシアネート基に置換した構造のものが挙げられる。
【0081】
アミノ化合物としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等の芳香族アミン類、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルージアミノジシクロヘキシルメタン、テトラメチルージアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式アミン類、及びエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0082】
ベンゾオキサジン化合物としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0083】
メラミン化合物としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0084】
グアナミン化合物としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0085】
グリコールウリル化合物としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0086】
ウレア化合物としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0087】
本実施形態の下層膜形成組成物は、架橋性向上の観点から、少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤を用いてもよい。少なくとも1つのアリル基を有する架橋剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)エ-テル等のアリルフェノール類であることが好ましい。
【0088】
本実施形態において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の化合物100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは10~40質量部である。架橋剤の含有量が上記範囲内にあることにより、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0089】
[架橋促進剤]
本実施形態の下層膜形成組成物は、必要に応じて架橋反応(硬化反応)を促進させるために架橋促進剤を含有してもよい。架橋促進剤としては、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0090】
ラジカル重合開始剤としては、光によりラジカル重合を開始させる光重合開始剤であってもよく、熱によりラジカル重合を開始させる熱重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ケトン系光重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤及びアゾ系重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0091】
このようなラジカル重合開始剤としては、特に制限されず、例えば、国際公開2018/016614号に記載のものが挙げられ、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0092】
[酸発生剤]
本実施形態の下層膜形成組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させる等の観点から、酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれも使用することができる。酸発生剤としては、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものを用いることができる。
【0093】
下層膜形成組成物中の酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の化合物100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~40質量部である。酸発生剤の含有量が上記範囲内にあることにより、架橋反応が高められる傾向にあり、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0094】
[塩基性化合物]
本実施形態の下層膜形成組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0095】
塩基性化合物は、酸発生剤から微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐ役割、すなわち酸に対するクエンチャーの役割を果たす。下層膜形成組成物の保存安定性が向上する。このような塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものが挙げられる。
【0096】
本実施形態の化合物中の塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、本実施形態の化合物100質量部に対して、0.001~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~1質量部である。塩基性化合物の含有量が上記範囲内にあることにより、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0097】
[その他の添加剤]
本実施形態の下層膜形成組成物は、熱や光による硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂及び/又は化合物としては、特に限定されず、例えば、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂;ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレン等のナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレン等のビフェニル環、チオフェン、インデン等のヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられる。本実施形態の下層膜形成組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、熱及び/又は光硬化触媒、重合禁止剤、難燃剤、充填剤、カップリング剤、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0098】
[リソグラフィー用下層膜]
本実施形態におけるリソグラフィー用下層膜は、本実施形態の下層膜形成組成物から形成される。
【0099】
[レジストパターン形成方法]
本実施形態のレジストパターン形成方法は、基板上に、本実施形態の下層膜形成組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、下層膜形成工程により形成した下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む。本実施形態のレジストパターン形成方法は、各種パターンの形成に用いることができ、絶縁膜パターンの形成方法であることが好ましい。
【0100】
[回路パターン形成方法]
本実施形態の回路パターン形成方法は、基板上に、本実施形態の下層膜形成組成物を用いて下層膜を形成する下層膜形成工程と、下層膜形成工程により形成した下層膜上に、中間層膜を形成する中間層膜形成工程と、中間層膜形成工程により形成した中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成するフォトレジスト層形成工程と、フォトレジスト層形成工程により形成したフォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、レジストパターン形成工程により形成したレジストパターンをマスクとして中間層膜をエッチングして中間層膜パターンを形成する中間層膜パターン形成工程と、中間層膜パターン形成工程により形成した中間層膜パターンをマスクとして下層膜をエッチングして下層膜パターンを形成する下層膜パターン形成工程と、下層膜パターン形成工程により形成した下層膜パターンをマスクとして前記基板をエッチングして基板にパターンを形成する基板パターン形成工程とを含む。
【0101】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態の下層膜形成組成物から形成される。その形成方法は、特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態の下層膜形成組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布方法、印刷法等により基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させる等して除去することで、下層膜を形成することができる。
【0102】
下層膜の形成時には、レジスト上層膜とのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークを施すことが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80~450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200~400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、30~20,000nmであることが好ましく、より好ましくは50~15,000nmである。
【0103】
またベークは、不活性ガスの環境で行なうことが好ましく、例えば、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気で行うと、リソグラフィー用下層膜の耐熱性を高め、またエッチング耐性を高めることができ好ましい。
【0104】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合は、その下層膜上に珪素含有レジスト層、又は炭化水素からなる単層レジストを作製することが好ましく、3層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有中間層を作製し、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0105】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0106】
3層プロセス用の珪素含有中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果を有する中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としては、フェニル基又は珪素-珪素結合を有する吸光基が導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0107】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した、反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによって中間層を形成する方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型、ネガ型のどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0108】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0109】
上記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、上記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~400nmである。
【0110】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0111】
上述した方法により形成されるレジストパターンは、下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0112】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、H2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0113】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上記の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0114】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公報、WO2004/066377に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0115】
中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好適に用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号、特開2007-226204号に記載されたものを用いることができる。
【0116】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0117】
本実施形態における下層膜は、基板のエッチング耐性に優れるという特徴を有する。なお、基板としては、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等、種々のLow-k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50~1,000,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75~50,000nmである。
【0118】
[レジスト永久膜]
本実施形態のレジスト永久膜は、本実施形態の組成物から形成される。本実施形態の組成物を塗布してなるレジスト永久膜は、必要に応じてレジストパターンを形成した後、最終製品にも残存する永久膜として好適である。永久膜の具体例としては、半導体デバイス関係では、ソルダーレジスト、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や集積回路素子と回路基板の接着層、薄型ディスプレー関連では、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルター保護膜、ブラックマトリクス、スペーサーなどが挙げられる。特に、本実施形態の組成物を含むレジスト永久膜は、耐熱性や耐湿性に優れている上に昇華成分による汚染性が少ないという非常に優れた利点も有する。特に表示材料において、重要な汚染による画質劣化の少ない高感度、高耐熱、吸湿信頼性を兼ね備えた材料となる。
【0119】
本実施形態の下層膜形成組成物をレジスト永久膜用途に用いる場合には、硬化剤の他、更に必要に応じてその他の樹脂、界面活性剤や染料、充填剤、架橋剤、溶解促進剤などの各種添加剤を加え、有機溶剤に溶解することにより、レジスト永久膜用組成物とすることができる。
【0120】
本実施形態の下層膜形成組成物は前記各成分を配合し、攪拌機等を用いて混合することにより調整できる。また、本実施形態の組成物が充填剤や顔料を含有する場合には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散又は混合して調整することができる。
【実施例】
【0121】
以下、本実施形態を合成実施例及び実施例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0122】
(炭素濃度及び酸素濃度)
有機元素分析により、ヤナコ分析工業(株)製品の「CHNコーダーMT-6」を用いて化合物又は樹脂の炭素濃度及び酸素濃度(質量%)を測定した。
【0123】
(分子量)
LC-MS分析により、Water社製品の「Acquity UPLC/MALDI-Synapt HDMS」を用いて化合物又は樹脂の分子量を測定した。
【0124】
(合成実施例1)PBiP-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノール(東京化成社製試薬)30g(161mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)15g(82mmol)と、1-ブタノール100mLとを仕込み、硫酸(関東化学社製試薬)2.1g(21mmol)を加えて、反応液を調製した。この反応液を還流下で6時間撹拌して、副生する水を除去しながら反応を行った。次に、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムで反応液を中和、その後濃縮し、トルエン50gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って粗生成物を分離した。
粗精製物を酢酸エチルに溶解させ、炭酸ナトリウム水溶液、塩酸水溶液、続いて水で洗浄し、その後、硫酸ナトリウムにて脱水、濃縮し、その濃縮液にトルエンを加えて目的物を析出させ、濾過により得られた固形物を乾燥させることにより、下記式で表される目的化合物(PBiP-1)3.0gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PBiP-1)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.4(O-H)、6.8~7.8(Ph-H)、6.2(C-H)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、5146であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0125】
【0126】
(合成実施例2)PBiP-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノール(東京化成社製試薬)30g(161mmol)と、4-ビフェニルアルデヒドの代わりに4-ブチルベンズアルデヒド(三菱ガス化学製)16.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PBiP-2)4.0gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PBiP-2)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.4(O-H)、6.8~7.8(Ph-H)、6.3(C-H)1.9(-C4H9)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、4678であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0127】
【0128】
(合成実施例3)PODP-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、4,4-ジヒドロキシジフェニルエーテル(東京化成社製試薬)30.3g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱ガス化学製)18.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PODP-1)2.3gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PODP-1)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.2(O-H)、6.5~7.9(Ph-H)、6.3(C-H)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、4654であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0129】
【0130】
(合成実施例4)PODP-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、4,4-ジヒドロキシジフェニルエーテル(東京化成社製試薬)30.3g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒドの代わりに4-ブチルベンズアルデヒド(三菱ガス化学製)16.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PODP-2)2.3gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PODP-2)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.3(O-H)、6.5~7.9(Ph-H)、6.3(C-H)、1.9(-C4H9)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、5213であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0131】
【0132】
(合成実施例5)POCBP-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、3,3-ジメチル-4,4-ビフェノール(東京化成社製試薬)32.1g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱ガス化学製)18.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(POCBP-1)2.3gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(POCBP-1)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.3(O-H)、6.3~7.9(Ph-H)、6.1(C-H)、2.3~2.5(-CH3)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、5213であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0133】
【0134】
(合成実施例6)POCBP-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、3,3-ジメチル-4,4-ビフェノール(東京化成社製試薬)32.1g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒドの代わりに4-ブチルベンズアルデヒド(三菱ガス化学製)16.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(POCBP-2)3.3gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(POCBP-2)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.3(O-H)、6.5~7.9(Ph-H)、6.2(C-H)、2.3~2.5(-CH3)、1.9(-C4H9)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、4415であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0135】
【0136】
(合成実施例7)PDDM-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、4,4-ジヒドロキシジフェニルメタン(東京化成社製試薬)30.1g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱ガス化学製)18.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PDDM-1)3.3gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PDDM-1)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.3(O-H)、6.5~7.9(Ph-H)、6.3(C-H)、4.1(-CH2-)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、4632であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0137】
【0138】
(合成実施例8)PDDM-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、4,4-ジヒドロキシジフェニルメタン(東京化成社製試薬)30.1g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒドの代わりに4-ブチルベンズアルデヒド(三菱ガス化学製)16.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PDDM-2)4.3gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PDDM-2)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.3(O-H)、6.5~7.9(Ph-H)、6.3(C-H)、4.0(-CH2-)、1.8(-C4H9)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、5143であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0139】
【0140】
(合成実施例9)PDBZ-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200m1の容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、4,4-ジヒドロキベンゾフェノン(東京化成社製試薬)32.1g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱ガス化学製)18.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PDBZ-1)3.5gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PDBZ-1)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.4(O-H)、6.5~7.8(Ph-H)、6.3(C-H)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、4754であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0141】
【0142】
(合成実施例10)PDBZ-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、4,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(東京化成社製試薬)32.1g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒドの代わりに4-ブチルベンズアルデヒド(三菱ガス化学製)16.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PDBZ-2)3.2gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PDBZ-2)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.4(O-H)、6.4~7.9(Ph-H)、6.1(C-H)、1.9(-C4H9)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、4945であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0143】
【0144】
(合成実施例11)PBNF-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積300mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、1,1-ビ-2-ナフトール(東京化成社製試薬)42.9g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒド(三菱ガス化学製)18.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PBNF-1)5.3gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PBNF-1)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.2~9.4(O-H)、6.2~8.1(Ph-H)、6.0(C-H)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、6213であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0145】
【0146】
(合成実施例12)PBNF-2の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積300mLの容器を準備した。この容器に、4,4-ビフェノールの代わりに、1,1-ビ-2-ナフトール(東京化成社製試薬)42.9g(150mmol)と、4-ビフェニルアルデヒドの代わりに4-ブチルベンズアルデヒド(三菱ガス化学製)16.2g(100mmol)とを用いたこと以外は、合成実施例1と同様の操作にて、下記式で表される目的化合物(PBNF-2)4.9gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式(PBNF-2)の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)δ(ppm)9.1~9.3(O-H)、6.5~7.9(Ph-H)、6.1(C-H)、1.9(-C4H9)
得られた化合物について、GPC分析により重量平均分子量を測定した結果、4415であった。
得られた化合物は、窒素下にて400℃で重量減少率が10%未満と非常に優れる耐熱性が確認できた。
【0147】
【0148】
(合成例1)
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備え、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂の数平均分子量(Mn)は562であり、重量平均分子量(Mw)は1168であり、分散度(Mw/Mn)は2.08であった。
【0149】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、前記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。
得られた樹脂(CR-1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:2.51であった。また、得られた樹脂(CR-1)の炭素濃度は89.1質量%、酸素濃度は4.5質量%であった。なお、樹脂(CR-1)のMn、Mw及びMw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、以下の測定条件にてポリスチレン換算にて求めた。
装置:Shodex GPC-101型(昭和電工株式会社製品)
カラム:KF-80M×3
溶離液:THF 1mL/min
温度:40℃
【0150】
[実施例1~12、比較例1]
上記合成実施例により得られた化合物(PBiP-1~PBNF-2)及びCR-1につき、23℃における各種有機溶媒に対する溶解性試験を行った。
(有機溶媒)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(表中、「PGMEA」と記載)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(表中、「PGME」と記載)、シクロヘキサノン(表中、「CHN」と記載)、シクロペンタノン(表中、「CPN」と記載)、乳酸エチル(表中、「EL」と記載)。結果を表1に示す。
【0151】
[溶解性試験]
<評価基準>
A:有機溶媒に対して20重量%以上溶解する。
B:有機溶媒に対して10重量%以上20重量%未満溶解する。
C:有機溶媒に対する溶解度が10重量%未満である。
【0152】
【表1】
表1に示すように、合成実施例により得られた化合物(PBiP-1~PBNF-2)は各種有機溶媒に対する溶解性に優れることが確認された。
【0153】
次に、表2に示す組成となるように、本実施形態のリソグラフィー用膜形成材料を用いて、実施例13~34並びに比較例2及び3に対応するリソグラフィー用膜形成用組成物を各々調製した。酸発生剤、架橋剤及び有機溶媒については以下のものを用いた。
酸発生剤:みどり化学株式会社製品「ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート」(表中、「DTDPI」と記載。)
架橋剤:三和ケミカル株式会社製品「ニカラックMX270」(表中、「ニカラック」と記載)
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(表中、「PGMEA」と記載)
【0154】
次いで、実施例13~34並びに比較例2及び3のリソグラフィー用膜形成用組成物をシリコン基板上に回転塗布し、150℃で60秒間プリベーク後の膜厚を測定し、初期膜厚とした。その後、窒素雰囲気下において、450℃で120秒間ポストベークして、塗布膜の膜厚を測定した。初期膜厚とポストベーク後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、下記に示す条件にて各下層膜の膜耐熱性を評価した。
その後、該シリコン基板をPGMEA70%/PGME30%の混合溶媒に60秒間浸漬し、エアロダスターで付着溶媒を除去後、110℃で溶媒乾燥を行った。浸漬前後の膜厚差から膜厚減少率(%)を算出して、下記に示す条件にて各下層膜の硬化性を評価した。
また、下記に示す条件にて、段差基板に形成された膜の平坦性を評価した。
【0155】
[膜耐熱性の評価]
<評価基準>
S:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦20%
A:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦25%
B:450℃ベーク前後の膜厚減少率≦30%
C:450℃ベーク前後の膜厚減少率>30%
【0156】
[硬化性の評価]
<評価基準>
S:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦1%
A:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦5%
B:溶媒浸漬前後の膜厚減少率≦10%
C:溶媒浸漬前後の膜厚減少率>10%
【0157】
[平坦性の評価]
幅100nm、ピッチ150nm、深さ150nmのトレンチ(アスペクト比:1.5)及び幅5μm、深さ180nmのトレンチ(オープンスペース)が混在するSiO2段差基板上に、上記得られた膜形成用組成物をそれぞれ塗布した。その後、窒素雰囲気下にて、450℃で120秒間焼成して、膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の形状を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「S-4800」)にて観察し、トレンチ又はスペース上におけるレジスト下層膜の膜厚の最大値と最小値の差(ΔFT)を測定した。
<評価基準>
S:ΔFT<15nm(平坦性最良)
A:15nm≦ΔFT<20nm(平坦性良好)
B:20nm≦ΔFT<40nm(平坦性やや良好)
C:40nm≦ΔFT(平坦性不良)
【0158】
実施例13~34並びに比較例2及び3で得られた各下層膜について、下記に示す条件でエッチング試験を行い、エッチング耐性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0159】
[エッチング試験]
エッチング装置:サムコインターナショナル社製品「RIE-10NR」
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
[エッチング耐性の評価]
エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。
まず、実施例13において用いる化合物(PBiP-1)に代えてフェノールノボラック樹脂(群栄化学社製 PSM4357)を用いた以外は、実施例13と同様の条件で、フェノールノボラック樹脂を含む下層膜を作製した。そして、このフェノールノボラック樹脂を含む下層膜について上記エッチング試験を行い、そのときのエッチングレート(エッチング速度)を測定した。次に、各実施例及び比較例の下層膜について上記エッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。そして、フェノールノボラック樹脂を含む下層膜のエッチングレートを基準として、以下の評価基準で各実施例及び比較例のエッチング耐性を評価した。
[評価基準]
A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%未満
B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、-10%~+5%
C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、+5%超
【0160】
【0161】
表2から明らかなように、本実施形態の化合物を用いた実施例13~34は、膜耐熱性、硬化性、膜の平坦性及びエッチング耐性のいずれの点も良好であることが確認された。一方、CR-1(フェノール変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂)を用いた比較例2あるいは3では、特に膜の耐熱性およびエッチング耐性が不良であった。
【0162】
[実施例35~38]
上記の各実施例13~16で調製したリソグラフィー用下層膜形成材料の各溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、150℃で60秒間、さらに窒素雰囲気下において450℃で120秒間ベークすることにより、膜厚180nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(11)で表される化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。下記式(11)で表される化合物は、2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて得た。
【0163】
【0164】
前記式(11)中の数字は、各構成単位の比率を示している。
【0165】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0166】
得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの欠陥を観察した結果を、表3に示す。表中、「良好」とは、形成されたレジストパターンに大きな欠陥が見られなかったことを示し、「不良」とは、形成されたレジストパターンに大きな欠陥が見られたことを示す。
【0167】
[比較例4]
下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例35と同様にして、フォトレジスト層をSiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。
結果を表3に示す。
【0168】
【0169】
表3から明らかなように、本実施形態の化合物を用いた実施例35~38では、現像後のレジストパターン形状が良好であり、大きな欠陥が見られないことが確認された。更に、各実施例35~38は、下層膜を形成していない比較例4と比較して、解像性及び感度のいずれにおいても有意に優れていることが確認された。ここで、現像後のレジストパターン形状が良好であることは、実施例35~38において用いたリソグラフィー用下層膜形成材料が、レジスト材料(フォトレジスト材料等)との密着性がよいことを示している。
【0170】
[実施例39~42]
各実施例13~16のリソグラフィー用下層膜形成材料の溶液を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、150℃で60秒間、さらに窒素雰囲気下にて450℃で120秒間ベークすることにより、膜厚180nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに、この中間層膜上に、上記のArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材料としては、特開2007-226170号公報の<合成例1>に記載の珪素原子含有ポリマーを用いた。次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、55nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。その後、サムコインターナショナル社製 RIE-10NRを用いて、得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO2膜のドライエッチング加工とを順次行った。
【0171】
各々のエッチング条件は、下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:1min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:8:2(sccm)
レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
レジスト下層膜パターンのSiO2膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:C5F12ガス流量:C2F6ガス流量:O2ガス流量
=50:4:3:1(sccm)
【0172】
[評価]
上記のようにして得られたパターン断面(すなわち、エッチング後のSiO2膜の形状)を、日立製作所株式会社製品の「電子顕微鏡(S-4800)」を用いて観察した。観察結果を表4に示す。表中、「良好」とは、形成されたパターン断面に大きな欠陥が見られなかったことを示し、「不良」とは、形成されたパターン断面に大きな欠陥が見られたことを示す。
【0173】
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明の下層膜形成組成物は、耐熱性が高く、溶媒溶解性も高く、湿式プロセスが適用可能である。