IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧

特許7331885予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置
<>
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図1
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図2
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図3
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図4
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図5
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図6
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図7
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図8
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図9
  • 特許-予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G05B23/02 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021089253
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022181986
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅喜
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 嶺
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 豪
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-43959(JP,A)
【文献】特開2013-207256(JP,A)
【文献】特開2019-86817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の設定値を示す設定値データ、および、前記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得するデータ取得部と、
前記設定値データおよび前記物理量データを用いて、前記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて前記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する予測部と、
前記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する評価部と、
前記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する出力部と
を備え
前記予測部は、前記設定値データおよび前記物理量データを学習データとして前記制御対象の設定値と前記成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、前記複数の予測値を算出すると共に、前記機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、前記複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ算出し、
前記評価部は、前記複数の予測値の全てが前記予め定められた基準を満たす複数の設定値の何れか1つを、前記指標に基づき、推奨する前記設定値として選択する、予測装置。
【請求項2】
前記出力部は、更に、前記複数の予測値を前記指標とともにそれぞれ出力する、請求項に記載の予測装置。
【請求項3】
前記学習モデルを生成する学習部を更に備える、請求項1または2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記設定値データおよび前記物理量データから、前記設定値の変化率および前記物理量の変化率を抽出する特徴量抽出部を更に備え、
前記学習部は、前記設定値の変化率を入力、前記物理量の変化率を出力とした前記学習モデルを生成する、請求項3に記載の予測装置。
【請求項5】
前記学習部は、ガウス過程回帰により前記学習モデルを生成する、請求項3または4に記載の予測装置。
【請求項6】
前記複数の予測値の全てが前記予め定められた基準を満たす設定値を探索するために設定値を調整する設定調整部を更に備え、
前記出力部は、前記探索された設定値を前記推奨する設定値として出力する、請求項1からのいずれか一項に記載の予測装置。
【請求項7】
前記制御対象はウエハを熱処理する炉内の温度を調整するためのヒーターであり、前記成果物の物理量は前記ウエハに成膜される膜厚である、請求項1からのいずれか一項に記載の予測装置。
【請求項8】
前記予測部は、前記炉内に配置された複数のウエハの各々に成膜される膜厚をそれぞれ予測する、請求項に記載の予測装置。
【請求項9】
制御対象の設定値を示す設定値データ、および、前記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得する段階と、
前記設定値データおよび前記物理量データを用いて、前記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて前記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する段階と、
前記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する段階と、
前記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する段階
を備え
前記複数の予測値を算出する段階では、前記設定値データおよび前記物理量データを学習データとして前記制御対象の設定値と前記成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、前記複数の予測値を算出すると共に、前記機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、前記複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ算出し、
前記評価する段階では、前記複数の予測値の全てが前記予め定められた基準を満たす複数の設定値の何れか1つを、前記指標に基づき、推奨する前記設定値として選択する、予測方法。
【請求項10】
コンピュータにより実行されて、前記コンピュータを、
制御対象の設定値を示す設定値データ、および、前記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得するデータ取得部と、
前記設定値データおよび前記物理量データを用いて、前記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて前記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する予測部と、
前記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する評価部と、
前記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する出力部と
して機能させ
前記予測部は、前記設定値データおよび前記物理量データを学習データとして前記制御対象の設定値と前記成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、前記複数の予測値を算出すると共に、前記機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、前記複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ算出し、
前記評価部は、前記複数の予測値の全てが前記予め定められた基準を満たす複数の設定値の何れか1つを、前記指標に基づき、推奨する前記設定値として選択する、予測プログラム。
【請求項11】
制御対象の設定値を示す設定値データ、および、前記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得するデータ取得部と、
前記設定値データおよび前記物理量データを用いて、前記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて前記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する予測部と、
前記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する評価部と、
前記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する出力部と、
前記推奨する設定値に従って前記制御対象を制御する制御部と
を備え
前記予測部は、前記設定値データおよび前記物理量データを学習データとして前記制御対象の設定値と前記成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、前記複数の予測値を算出すると共に、前記機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、前記複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ算出し、
前記評価部は、前記複数の予測値の全てが前記予め定められた基準を満たす複数の設定値の何れか1つを、前記指標に基づき、推奨する前記設定値として選択する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測装置、予測方法、予測プログラム、および、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「半導体製造プロセスの酸化工程においてウエハ面上に形成される酸化膜厚を、炉周方向温度分布を操作することにより均一化させる制御方式」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開昭61-120427
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、予測装置を提供する。上記予測装置は、制御対象の設定値を示す設定値データ、および、上記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得するデータ取得部を備えてよい。上記予測装置は、上記設定値データおよび上記物理量データを用いて、上記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて上記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する予測部を備えてよい。上記予測装置は、上記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する評価部を備えてよい。上記予測装置は、上記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する出力部を備えてよい。
【0004】
上記予測部は、上記設定値データおよび上記物理量データを学習データとして上記制御対象の設定値と上記成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、上記複数の予測値を算出してよい。
【0005】
上記予測装置は、上記学習モデルを生成する学習部を更に備えてよい。
【0006】
上記予測装置は、上記設定値データおよび上記物理量データから、上記設定値の変化率および上記物理量の変化率を抽出する特徴量抽出部を更に備えてよい。上記学習部は、上記設定値の変化率を入力、上記物理量の変化率を出力とした上記学習モデルを生成してよい。
【0007】
上記学習部は、ガウス過程回帰により上記学習モデルを生成してよい。
【0008】
上記予測部は、更に、上記機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、上記複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ算出してよい。
【0009】
上記出力部は、更に、上記複数の予測値を上記指標とともにそれぞれ出力してよい。
【0010】
上記予測装置は、上記複数の予測値の全てが上記予め定められた基準を満たす設定値を探索するために設定値を調整する設定調整部を更に備えてよい。上記出力部は、上記探索された設定値を上記推奨する設定値として出力してよい。
【0011】
上記制御対象はウエハを熱処理する炉内の温度を調整するためのヒーターであり、上記成果物の物理量は上記ウエハに成膜される膜厚であってよい。
【0012】
上記予測部は、上記炉内に配置された複数のウエハの各々に成膜される膜厚をそれぞれ予測してよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、予測方法を提供する。上記予測方法は、制御対象の設定値を示す設定値データ、および、上記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得することを備えてよい。上記予測方法は、上記設定値データおよび上記物理量データを用いて、上記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて上記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出することを備えてよい。上記予測方法は、上記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価することを備えてよい。上記予測方法は、上記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力することを備えてよい。
【0014】
本発明の第3の態様においては、予測プログラムを提供する。上記予測プログラムは、コンピュータにより実行されてよい。上記予測プログラムは、上記コンピュータを、制御対象の設定値を示す設定値データ、および、上記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得するデータ取得部として機能させてよい。上記予測プログラムは、上記コンピュータを、上記設定値データおよび上記物理量データを用いて、上記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて上記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する予測部として機能させてよい。上記予測プログラムは、上記コンピュータを、上記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する評価部として機能させてよい。上記予測プログラムは、上記コンピュータを、上記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する出力部として機能させてよい。
【0015】
本発明の第4の態様においては、制御装置を提供する。上記制御装置は、制御対象の設定値を示す設定値データ、および、上記制御対象を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得するデータ取得部を備えてよい。上記制御装置は、上記設定値データおよび上記物理量データを用いて、上記制御対象の制御に用いる設定値に基づいて上記成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する予測部を備えてよい。上記制御装置は、上記複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する評価部を備えてよい。上記制御装置は、上記評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する出力部を備えてよい。上記制御装置は、上記推奨する設定値に従って上記制御対象を制御する制御部を備えてよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る予測装置100のブロック図の一例を、制御対象20が設けられた設備10と共に示す。
図2】設備10の具体例としての拡散炉200の構成図の一例を示す。
図3】拡散炉200のメンテナンスフローの一例を示す。
図4】本実施形態に係る予測装置100が学習モデルを生成するフローの一例を示す。
図5】ガウス過程回帰のイメージ図の一例を示す。
図6】本実施形態に係る予測装置100が物理量を予測するフローの一例を示す。
図7】本実施形態に係る予測装置100による予測結果の一例を示す。
図8】本実施形態に係る予測装置100による出力の一例を示す。
図9】本実施形態に係る制御装置900のブロック図の一例を、制御対象20が設けられた設備10と共に示す。
図10】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ9900の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る予測装置100のブロック図の一例を、制御対象20が設けられた設備10と共に示す。
【0020】
設備10は、制御対象20が設けられた施設や装置等である。設備10には、1または複数の制御対象20が設けられていてよい。例えば、設備10は、電子部品・デバイス・電子回路製造業、金属製品製造業、鉄鋼業、石油製品・石炭製品製造業、化学工業、繊維工業、木製品製造業、および、食料品製造業等、様々な業種において様々な製造プロセスで用いられる様々な製造装置であってよい。このような設備10においては、原材料を加工して様々な製品が製造される。本実施形態においては、設備10が、シリコン等のウエハを熱処理して成膜する際に用いられる拡散炉である場合を一例として説明する。これについては後述する。
【0021】
制御対象20は、制御の対象となる機器である。例えば、制御対象20は、設備10の製造プロセスにおいて温度、圧力、pH、速度、および、流量等の少なくとも1つの物理量を調整する、ヒーター、バルブ、ポンプ、ファン、モータ、および、スイッチ等のアクチュエータであってよい。本実施形態においては、制御対象20が、拡散炉内の温度(「炉温」と略す。)を調整するためのヒーターである場合を一例として説明する。
【0022】
本実施形態に係る予測装置100は、このような設備10で実行される製造プロセスにおいて、制御対象20を設定値に基づいて制御したことによる成果物における複数の物理量を予測する。そして、本実施形態に係る予測装置100は、複数の物理量を予測した複数の予測値を評価した結果に応じて推奨する設定値を出力する。
【0023】
予測装置100は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。このようなコンピュータシステムもまた広義のコンピュータである。また、予測装置100は、コンピュータ内で1または複数実行可能な仮想コンピュータ環境によって実装されてもよい。これに代えて、予測装置100は、物理量の予測用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回路によって実現された専用ハードウェアであってもよい。また、予測装置100がインターネットに接続可能な場合、予測装置100は、クラウドコンピューティングにより実現されてもよい。
【0024】
予測装置100は、データ取得部110と、特徴量抽出部120と、学習部130と、学習モデル保存部140と、設定調整部150と、予測部160と、評価部170と出力部180とを備える。なお、これらブロックは、それぞれ機能的に分離された機能ブロックであって、実際のデバイス構成とは必ずしも一致していなくてもよい。すなわち、本図において、1つのブロックとして示されているからといって、それが必ずしも1つのデバイスにより構成されていなくてもよい。また、本図において、別々のブロックとして示されているからといって、それらが必ずしも別々のデバイスにより構成されていなくてもよい。
【0025】
データ取得部110は、制御対象20の設定値を示す設定値データ、および、制御対象20を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを取得する。例えば、データ取得部110は、このような設定値データおよび物理量データを、ネットワークを介して設備10から取得してよい。しかしながら、これに限定されるものではない。データ取得部110は、このような設定値データおよび物理量データを、オペレータを介して取得してもよいし、各種メモリデバイスを介して取得してもよい。データ取得部110は、学習フェーズにおいて、取得した設定値データおよび物理量データを特徴量抽出部120へ供給する。一方、データ取得部110は、予測フェーズにおいて、取得した設定値データを特徴量抽出部120および設定調整部150へ供給し、取得した物理量データを予測部160へ供給する。
【0026】
特徴量抽出部120は、設定値データおよび物理量データから、設定値の変化率および物理量の変化率を抽出する。例えば、特徴量抽出部120は、学習フェーズにおいて、データ取得部110から供給された設定値データによって示される複数の設定値および物理量データによって示される複数の物理量に基づいて、設定値の変化率および物理量の変化率をそれぞれ抽出する。そして、特徴量抽出部120は、抽出した設定値の変化率および物理量の変化率を学習部130へ供給する。一方、特徴量抽出部120は、予測フェーズにおいて、データ取得部110から供給された設定値データによって示される設定値、すなわち、設備10において制御対象20に実際に設定された設定値と、後述する設定調整部150によって調整された調整後の設定値とに基づいて、設定値の変化率を抽出する。そして、特徴量抽出部120は、抽出した設定値の変化率を予測部160へ供給する。
【0027】
学習部130は、学習モデルを生成する。例えば、学習部130は、学習フェーズにおいて、特徴量抽出部120から供給された設定値の変化率および物理量の変化率を学習データとして、設定値の変化率を入力、物理量の変化率を出力とした学習モデルを生成する。この際、学習部130は、ガウス過程回帰により学習モデルを生成してよい。これについては後述する。しかしながら、これに限定されるものではない。学習部130は、線形回帰、Elastic Net、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、および、ニューラルネットワーク等、他の様々な学習アルゴリズムにより学習モデルを生成してもよい。学習部130は、生成した学習モデルを学習モデル保存部140へ供給する。
【0028】
学習モデル保存部140は、学習モデルを保存する。例えば、学習モデル保存部140は、学習フェーズにおいて、学習部130が生成した学習モデルを保存する。そして、学習モデル保存部140は、予測フェーズにおいて、保存した学習モデルを予測部160へ供給する。なお、上述の説明では、学習モデル保存部140が、予測装置100内部の学習部130によって生成された学習モデルを保存する場合を一例として示した。しかしながら、これに限定されるものではない。学習モデル保存部140は、予測装置100の外部において生成された学習モデルを保存してもよい。すなわち、学習部130は、予測装置100の内部に代えて、または、加えて、予測装置100の外部に備えられていてもよい。
【0029】
設定調整部150は、制御対象20へ設定すべき設定値を調整する。設定調整部150は、予測フェーズにおいて、データ取得部110から供給された設定値データを初期値として、少なくとも1つの設定値を変更することによって設定値を調整する。設定調整部150は、調整後の設定値を特徴量抽出部120へ供給する。特に、設定調整部150は、データ取得部110から供給された設定データにおける少なくとも1つの設定値を順次変更することによって、後述する複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値を探索するために設定値を調整する。
【0030】
予測部160は、設定値データおよび物理量データを用いて、制御対象20の制御に用いる設定値に基づいて成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する。例えば、予測部160は、予測フェーズにおいて、学習モデル保存部140から供給された学習モデルに、特徴量抽出部120から供給された設定値の変化率を入力する。そして、予測部160は、データ取得部110から供給された物理量データと、学習モデルが出力した物理量の変化率とに基づいて、成果物における複数の物理量を予測する。このように、予測部160は、設定値データおよび物理量データを学習データとして制御対象20の設定値と成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、複数の予測値を算出してよい。この際、予測部160は、更に、機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ算出してよい。これについては後述する。予測部160は、算出した複数の予測値、および、複数の予測値の信頼性を示す指標を評価部170へ供給する。
【0031】
評価部170は、複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する。例えば、評価部170は、予測フェーズにおいて、予測部160から供給された複数の予測値が予め定められた基準の範囲内であるか否か判定し、当該判定結果に応じて複数の予測値を評価する。そして、評価部170は、予測値の評価が終了した場合に、その旨を設定調整部150へ通知する。これに応じて、設定調整部150は、設定値を再調整する。そして、特徴量抽出部120は、再調整された設定値に基づいて設定値の変化率を抽出する。そして、予測部160は、再調整された設定値に基づいて複数の予測値を算出する。そして、評価部170は、再調整された設定値に基づく複数の予測値を評価する。このようにして、設定調整部150は、特徴量抽出部120、予測部160、および、評価部170と協働して、複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値を探索する。この際、評価部170は、複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値を、設定値の候補として記憶する。そして、設定値の全パターンについて評価が終了した場合に、評価部170は、記憶済みの設定値の候補のうちの少なくとも1つの設定値を出力部180へ供給する。この際、評価部170は、当該設定値に対応する複数の予測値、および、複数の予測値の信頼性を示す指標を併せて出力部180へ供給してよい。
【0032】
出力部180は、評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する。例えば、出力部180は、予測フェーズにおいて、評価部170から供給された設定値を推奨する設定値として出力する。すなわち、出力部180は、複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値として探索された設定値を推奨する設定値として出力してよい。この際、出力部180は、更に、当該設定値に対応する複数の予測値を、当該複数の予測値の信頼性を示す指標とともにそれぞれ出力してよい。
【0033】
図2は、設備10の具体例としての拡散炉200の構成図の一例を示す。拡散炉200は、半導体製造プロセスの一環としてウエハの成膜工程で使用される横型の熱処理システムである。このような拡散炉200においては、チューブの近傍に設けられた複数のヒーターにより炉内が加熱される。また、チューブで囲われた炉内のボート上に複数のウエハ(本図では7枚のウエハ)が均等に配置される。また、炉奥からプロセスガス(例えば、酸素ガス等)が注入される。これにより、ウエハ表面が酸化されて酸化膜が成膜される。本図においては、一例として、炉口(フロント)用、炉中央(センター)用、および、炉奥(リア)用に設けられた3つのヒーターを、対応する熱電対により示される測定値がそれぞれのヒーターに設定された設定値となるようフィードバック制御することによって、炉温を調整する場合を示している。
【0034】
このような拡散炉200において、複数のウエハのそれぞれに成膜される膜厚を均一に制御するためには、例えば、炉口温度Tf、炉中央温度Tc、炉奥温度Tr、および、成膜時間tの4つのパラメータを炉温設定として調整する必要がある。このような炉温設定は、実際にウエハを成膜する成膜工程において調整が必要となることに加えて、拡散炉200を定期的にメンテナンスする際にも調整が必要となる。
【0035】
図3は、拡散炉200のメンテナンスフローの一例を示す。ステップS310において、チューブの洗浄、および、拡散炉200の再組立てが実施される。例えば、作業者は、チューブから熱電対等を取り外し、チューブを洗浄する。そして、作業者は、チューブを洗浄した後、熱電対等の構成を再組立てする。
【0036】
ステップS320において、炉温が調整される。例えば、作業者は、炉口用、炉中央用、および、炉奥用に設けられた3つのヒーターに対して、炉口温度Tf、炉中央温度Tc、および、炉奥温度Trをそれぞれ設定して、炉内全体の温度がフラットとなるよう炉温を調整する。
【0037】
ステップS330において、ウエハが配置される。例えば、作業者は、チューブ内のボート上に複数のウエハを炉奥から炉口まで均等に配置する。
【0038】
ステップS340において、成膜が実施される。例えば、作業者は、炉奥からプロセスガスを注入し、設定した成膜時間tの間、複数のウエハを炉内で待機させることによって、複数のウエハの表面に酸化膜をそれぞれ成膜させる。
【0039】
ステップS350において、膜厚測定が実施される。例えば、作業者は、成膜時間tが経過後、全てのウエハを炉内から取り出す。そして、作業者は、取り出した全てのウエハに成膜された酸化膜の膜厚をそれぞれ測定する。
【0040】
ステップS360において、膜厚が基準範囲内であるか否かが判定される。例えば、作業者は、ステップS350において測定された膜厚の全てが予め定められた基準の範囲内であるか否か判定する。ステップS360において基準範囲内であると判定された場合(Yesの場合)、作業者は、メンテナンスフローを終了させる。一方、ステップS360において基準範囲内でないと判定された場合(Noの場合)、作業者は、処理をステップS370に進める。
【0041】
ステップS370において、炉温設定調整が実施される。例えば、作業者は、ステップS350において測定された膜厚に基づいて、炉温設定を調整する。そして、作業者は、処理をステップS330に戻してメンテナンスフローを継続する。すなわち、作業者は、ステップS360において全ての膜厚が基準範囲内となるまで、ステップS330からステップS370の処理を繰り返す。
【0042】
この際、全てのウエハに成膜される膜厚が基準範囲内となるための炉温設定の調整量は、作業者の過去の経験や勘により決定されていた。この場合、一部のウエハに成膜される膜厚を基準範囲内とすべく一部の設定値を変更すると、それに起因して他のウエハに成膜される膜厚が基準範囲外となってしまう等、炉温設定を何度も試行錯誤して再調整する無駄な工程が発生していた。また、炉温設定には、上述のとおり、炉口温度Tf、炉中央温度Tc、炉奥温度Tr、および、成膜時間t等の複数のパラメータが存在し、作業者が現状の膜厚測定値を考慮して、どのパラメータをどの程度調整すれば全てのウエハに成膜される膜厚が基準範囲内となるか判断するのが困難であった。
【0043】
そこで、本実施形態に係る予測装置100は、一例として、このような拡散炉200の炉温設定調整作業をサポートする。すなわち、本実施形態に係る予測装置100は、一例として、このような拡散炉200で実行される成膜工程において、炉温を設定値に基づいて制御した場合に複数のウエハに成膜されるそれぞれの膜厚を予測する。そして、予測装置100は、複数のウエハのそれぞれについて予測した膜厚を評価した結果に応じて、推奨する炉温設定を出力する。
【0044】
図4は、本実施形態に係る予測装置100が学習モデルを生成するフローの一例を示す。本実施形態に係る予測装置100は、例えば、本フローにより学習モデルを生成する。なお、上述のとおり、予測装置100が外部において生成された学習モデルを用いる場合、本フローは省略されてもよい。
【0045】
ステップS410において、予測装置100は、学習データを取得する。例えば、データ取得部110は、制御対象20の設定値を示す設定値データ、および、制御対象20を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを、ネットワークを介して設備10から取得する。一例として、データ取得部110は、拡散炉200のメンテナンスが実施される毎に、炉温設定を示す設定値データ、および、複数のウエハにそれぞれ成膜された膜厚の測定値を示す物理量データを取得する。
【0046】
ここで、炉温設定には、上述のとおり、炉口温度Tf、炉中央温度Tc、炉奥温度Tr、および、成膜時間tが含まれていてよい。また、膜厚には、例えば、炉内における7か所の位置a~gに配置されたそれぞれのウエハに成膜された膜厚Wa~Wgが含まれてよい。すなわち、データ取得部110は、1回目のメンテナンス時における設定値データとして、1回目のメンテナンス時に設定された炉口温度Tf1、炉中央温度Tc1、炉奥温度Tr1、および、成膜時間t1を取得してよい。また、データ取得部110は、1回目のメンテナンス時における物理量データとして、1回目のメンテナンス時に測定された位置a~gに配置されたそれぞれのウエハに成膜された膜厚Wa1~Wg1を取得してよい。同様に、データ取得部110は、2回目のメンテナンス時における設定値データとして、2回目のメンテナンス時に設定された炉口温度Tf2、炉中央温度Tc2、炉奥温度Tr2、および、成膜時間t2を取得してよい。また、データ取得部110は、2回目のメンテナンス時における物理量データとして、2回目のメンテナンス時に測定された位置a~gに配置されたそれぞれのウエハに成膜された膜厚Wa2~Wg2を取得してよい。データ取得部110は、このようにして取得した複数回のメンテナンス時における設定値データおよび物理量データを特徴量抽出部120へ供給する。
【0047】
ステップS420において、予測装置100は、特徴量を抽出する。例えば、特徴量抽出部120は、設定値データおよび物理量データから、設定値の変化率および物理量の変化率を抽出する。一例として、特徴量抽出部120は、ステップS410において取得された複数回のメンテナンス時における設定値データおよび物理量データを用いて、炉温設定変化率、および、膜厚変化率を抽出する。例えば、特徴量抽出部120は、2回目のメンテナンス時に設定された「炉口温度Tf2」を、1回目のメンテナンス時に設定された「炉口温度Tf1」で除算することで、「炉口温度変化率RTf21」を算出する。同様に、特徴量抽出部120は、2回目のメンテナンス時に設定された「炉中央温度Tc2」を、1回目のメンテナンス時に設定された「炉中央温度Tc1」で除算することで、「炉中央温度変化率RTc21」を算出する。同様に、特徴量抽出部120は、2回目のメンテナンス時に設定された「炉奥温度Tr2」を1回目のメンテナンス時に設定された「炉奥温度Tr1」で除算することで、「炉奥温度変化率RTr21」を算出する。同様に、特徴量抽出部120は、2回目のメンテナンス時に設定された「成膜時間t2」を、1回目のメンテナンス時に設定された「成膜時間t1」で除算することで、「成膜時間変化率Rt21」を算出する。特徴量抽出部120は、このようにして算出された炉口温度変化率RTf21、炉中央温度変化率RTc21、炉奥温度変化率RTr21、および、成膜時間変化率Rt21を、2回目と1回目のメンテナンス間における炉温設定変化率RT21として抽出する。特徴量抽出部120は、同様の処理を実行することにより、3回目と1回目のメンテナンス間における炉温設定変化率RT31、4回目と1回目のメンテナンス間における炉温設定変化率RT41を抽出する。特徴量抽出部120は、このようにして、複数のメンテナンス間における炉温設定変化率RTを、設定値の変化率として抽出する。
【0048】
また、特徴量抽出部120は、2回目のメンテナンス時に測定された位置aに配置されたウエハに成膜された「膜厚Wa2」を、1回目のメンテナンス時に測定された位置aに配置されたウエハに成膜された「膜厚Wa1」で除算することで、位置aについて「膜厚変化率RWa21」を算出する。特徴量抽出部120は、同様の処理を実行することにより、位置b~gについて「膜厚変化率RWb21」、「膜厚変化率RWc21」、「膜厚変化率RWd21」、「膜厚変化率RWe21」、「膜厚変化率RWf21」、および、「膜厚変化率RWg21」を算出する。特徴量抽出部120は、このようにして算出された「膜厚変化率RWa21」、「膜厚変化率RWb21」、「膜厚変化率RWc21」、「膜厚変化率RWd21」、「膜厚変化率RWe21」、「膜厚変化率RWf21」、および、「膜厚変化率RWg21」を、2回目と1回目のメンテナンス間における膜厚変化率RW21として抽出する。特徴量抽出部120は、同様の処理を実行することにより、3回目と1回目のメンテナンス間における膜厚変化率RW31、4回目と1回目のメンテナンス間における膜厚変化率RW41を抽出する。特徴量抽出部120は、このようにして、複数のメンテナンス間における膜厚変化率RWを、物理量の変化率として抽出する。特徴量抽出部120は、抽出した設定値の変化率および物理量の変化率を学習部130へ供給する。
【0049】
ステップS430において、予測装置100は、学習モデルを生成する。例えば、学習部130は、学習モデルを生成する。一例として、学習部130は、ステップS420において抽出された設定値の変化率および物理量の変化率を学習データとして、設定値の変化率を入力、物理量の変化率を出力とした学習モデルを生成する。すなわち、本実施形態において、学習部130は、炉温設定変化率RTを入力、膜厚変化率RWを出力とした学習モデルを生成する。すなわち、学習部130は、炉温設定のうちのどのパラメータをどの程度変化させた場合に、どの位置に配置されたウエハに成膜される膜厚がどの程度変化するかを予測するモデルを学習により生成する。学習部130は、生成した学習モデルを学習モデル保存部140へ供給する。
【0050】
ステップS440において、予測装置100は、学習モデルを保存する。例えば、学習モデル保存部140は、学習モデルを保存する。一例として、学習モデル保存部140は、ステップS430において生成された学習モデルを保存する。このようにして、本実施形態に係る予測装置100は、学習モデルを生成するフローを終了する。
【0051】
なお、学習部130は、学習モデルを生成するにあたり、ガウス過程回帰により学習モデルを生成してよい。ここで、ガウス過程回帰は、入力変数xから出力変数である実数値yへの関数y=f(x)を推定するモデルの1つである。ガウス過程回帰の特徴の1つは、その非線形性であり、線形回帰ではうまくフィッティングできない場合に特に有効である。また、ガウス過程回帰のもう1つの特徴は、ベイズ推定を用いる点である。ガウス過程回帰において推定される関数は1つの関数ではなく、関数の分布として得られる。これにより、ガウス過程回帰を用いることで、推定の不確からしさ(不確実性)を表現することが可能となる。これについて詳細に説明する。
【0052】
図5は、ガウス過程回帰のイメージ図の一例を示す。本実施形態に係る予測装置100は、図4のフローを実行することによって、例えば、ガウス過程回帰により学習モデルを生成してよい。このようなガウス過程回帰は、上述のとおり、入力変数xから出力変数である実数値yへの関数y=f(x)を推定するモデルの1つであり、当該関数f(x)は、次の式により示される。ここで、Nは正規分布(Normal Distribution)を示し、μは平均を示し、σは標準偏差を示す。すなわち、ガウス過程回帰において推定される関数f(x)は、平均μおよび分散σ^2によって示される正規分布Nに従うことを意味している。
【数1】
【0053】
本図において、横軸は入力変数x、縦軸は実数値yを示している。また、本図において、ドットはデータ点を示している。そして、本図において実線で描かれた曲線は上記数式における平均μを示している。また、本図において、当該曲線の上下を覆う帯状の領域は上記数式における標準偏差σを示している。このような帯状の領域における縦軸方向の幅は、関数の不確からしさを意味する。すなわち、本図において、帯状の領域における縦軸方向の幅が小さい部分は予測信頼性が高く、縦軸方向の幅が大きい部分は予測信頼性が低いことを意味している。本実施形態に係る予測装置100は、このようなガウス過程回帰により生成された学習モデルを用いて複数の予測値を算出するので、複数の予測値の信頼性を示す指標をも併せて算出することができる。
【0054】
図6は、本実施形態に係る予測装置100が物理量を予測するフローの一例を示す。本フローにおいては、上述のとおり制御対象20がウエハを熱処理する拡散炉内の温度を調整するためのヒーターであり、成果物の物理量がウエハに成膜される膜厚である場合を一例として説明する。
【0055】
ステップS610において、予測装置100は、予測に必要なデータを取得する。例えば、データ取得部110は、制御対象20の設定値を示す設定値データ、および、制御対象20を制御したことによる成果物の物理量を示す物理量データを、ネットワークを介して設備10から取得する。一例として、データ取得部110は、現在のメンテナンス時における炉温設定を示す設定値データ、および、複数のウエハにそれぞれ成膜された膜厚の測定値を示す測定値データを取得する。
【0056】
ここで、データ取得部110は、例えば、現在のメンテナンス時に設定された炉口温度Tf、炉中央温度Tc、炉奥温度Tr、および、成膜時間tを、現在のメンテナンス時における設定値データTとして取得してよい。また、データ取得部110は、現在のメンテナンス時に測定された位置a~gに配置されたそれぞれのウエハに成膜された膜厚Wa~Wgを、現在のメンテナンス時における物理量データWとして取得してよい。なお、ここで取得された膜厚Wa~Wgの少なくとも1つは、予め定められた基準の範囲外であるものとする。データ取得部110は、このようにして取得した設定値データTを特徴量抽出部120および設定調整部150へ供給する。また、データ取得部110は、このように取得した物理量データWを予測部160へ供給する。
【0057】
ステップS620において、予測装置100は、設定値を調整する。例えば、設定調整部150は、ステップS610において取得された設定値データTを初期値として、少なくとも1つの設定値を変更することによって設定値を調整する。一例として、設定調整部150は、現在のメンテナンス時に設定された炉口温度Tf、炉中央温度Tc、および、炉奥温度Trにおける少なくとも1つの炉温を1度ずつ上げる/下げる、または、成膜時間tを1秒ずつ長くする/短くすることによって、設定値Tを調整する。設定調整部150は、調整後の設定値T´を特徴量抽出部120へ供給する。
【0058】
ステップS630において、予測装置100は、特徴量を抽出する。例えば、特徴量抽出部120は、設定値データTから、設定値の変化率(調整率)を抽出する。一例として、特徴量抽出部120は、ステップS610において取得された設定値データTと、ステップS620において調整された調整後の設定値T´とに基づいて、設定値の変化率を抽出する。例えば、特徴量抽出部120は、調整後の「炉口温度Tf´」を、調整前の「炉口温度Tf」で除算することで、「炉口温度調整率RTf」を算出する。同様に、特徴量抽出部120は、調整後の「炉中央温度Tc´」を、調整前の「炉中央温度Tc」で除算することで、「炉中央温度調整率RTc」を算出する。同様に、特徴量抽出部120は、調整後の「炉奥温度Tr´」を、調整前の「炉奥温度Tr」で除算することで、「炉奥温度調整率RTr」を算出する。同様に、特徴量抽出部120は、調整後の「成膜時間t´」を調整前の「成膜時間t」で除算することで、「成膜時間調整率Rt」を算出する。特徴量抽出部120は、このようにして算出した炉口温度調整率RTf、炉中央温度調整率RTc、炉奥温度調整率RTr、および、成膜時間調整率Rtを、設定値の変化率として抽出する。特徴量抽出部120は、抽出した設定値の変化率を予測部160へ供給する。
【0059】
ステップS640において、予測装置100は、成果物の物理量を予測する。例えば、予測部160は、設定値データおよび物理量データを用いて、制御対象20の制御に用いる設定値に基づいて成果物における複数の物理量を予測した複数の予測値を算出する。一例として、予測部160は、学習モデル保存部140から学習モデルを読み出す。そして、予測部160は、当該学習モデルに、ステップS630において抽出された設定値の変化率を入力する。これにより学習モデルは、当該設定値の変化率に応じた物理量の変化率を出力する。すなわち、学習モデルは、炉温設定を炉口温度調整率RTf、炉中央温度調整率RTc、炉奥温度調整率RTr、および、成膜時間調整率Rtに従って変化させた場合に、位置a~gに配置されたウエハにそれぞれ成膜される膜厚がどの程度変化するかを示す膜厚変化率RWa~RWgを出力する。そして、予測部160は、ステップS610において取得された膜厚Wa~Wgを初期値として、当該膜厚変化率RWa~RWgをそれぞれ乗算することで、調整後の炉温設定により制御対象20を制御した場合に、位置a~gに配置されたウエハに成膜されるであろう膜厚を予測した複数の予測値Wa´~Wg´を算出する。すなわち、予測部160は、炉内に配置された複数のウエハの各々に成膜される膜厚をそれぞれ予測する。このように、予測部160は、設定値データおよび物理量データを学習データとして制御対象20の設定値と成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、複数の予測値を算出してよい。
【0060】
また、予測部160は、更に、機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、複数の予測値Wa´~Wg´の信頼性を示す指標をそれぞれ算出してよい。ここで、学習モデルは、上述のとおり、ガウス過程回帰により生成されたものであってよい。したがって、予測部160は、このようなガウス過程回帰が従うガウス分布の標準偏差に基づいて、複数の予測値Wa´~Wg´の信頼性を示す指標をそれぞれ算出することができる。ここで、予測部160は、例えば、学習モデルが出力した複数の膜厚変化率RWa~RWgに対応する標準偏差σをそれぞれ1.96倍した値を、複数の予測値Wa´~Wg´の信頼性を示す指標としてそれぞれ算出してよい。なお、これは、一般に、95%信頼区間が平均μ±1.96σによって示されるためである。予測部160は、算出した複数の予測値Wan´~Wgn´、および、複数の予測値Wa´~Wg´の信頼性を示す指標を評価部170へ供給する。
【0061】
ステップS650において、予測装置100は、複数の予測値が基準範囲内であるか否か判定する。例えば、評価部170は、ステップS640において予測された複数の予測値Wa´~Wg´の全てが予め定められた基準の範囲内であるか否か判定する。このようにして、評価部170は、複数の予測値を予め定められた基準に基づいて評価する。ステップS650において複数の予測値Wa´~Wg´の全てが基準範囲内であると判定された場合(Yesの場合)、予測装置100は、処理をステップS660へ進める。
【0062】
ステップS660において、予測装置100は、基準を満たす設定値を記憶する。例えば、評価部170は、ステップS650において複数の予測値Wa´~Wg´の全てが基準範囲内であると判定された調整後の炉口温度Tf´、炉中央温度Tc´、炉奥温度Tr´、および、成膜時間t´を、設定値の候補として記憶する。この際、評価部170は、複数の予測値Wa´~Wg´、および、複数の予測値Wa´~Wg´の信頼性を示す指標を併せて記憶してよい。そして、評価部170は、予測値の評価が終了した旨を設定調整部150へ通知する。
【0063】
一方、ステップS650において複数の予測値Wa´~Wg´の少なくとも1つが基準範囲外であると判定された場合(Noの場合)、予測装置100は、処理をステップ670へ進める。すなわち、評価部170は、ステップS650において複数の予測値Wa´~Wg´の少なくとも1つが基準範囲外であると判定された場合、当該複数の予測値Wa´~Wg´に対応する設定値T´を記憶することなく、予測値の評価が終了した旨を設定調整部150へ通知する。
【0064】
ステップS670において、予測装置100は、全パターンの評価が済んだか否か判定する。例えば、設定調整部150は、炉口温度Tf、炉中央温度Tc、および、炉奥温度Trにおける少なくとも1つの炉温をさらに1度ずつ上げる/下げる、または、成膜時間tをさらに1秒ずつ長くする/短くすることによって、調整し得る全パターンについて設定値を調整する。そして、設定調整部150は、調整後の設定値T´の全パターンについて、予測値の評価が終了した旨を評価部170から通知されたか否かに応じて、全パターンの評価が済んだか否か判定する。
【0065】
ステップS670において全パターンの評価が済んでいないと判定された場合(Noの場合)、予測装置100は、処理をステップS620に戻して、ステップS620からステップS670の処理を繰り返す。これに応じて、設定調整部150は、設定値を再調整する。そして、特徴量抽出部120は、再調整された設定値に基づいて設定値の変化率を抽出する。そして、予測部160は、再調整された設定値に基づいて複数の予測値を算出する。そして、評価部170は、再調整された設定値に基づく複数の予測値を評価する。このようにして、設定調整部150は、特徴量抽出部120、予測部160、および、評価部170と協働して、複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値を探索する。
【0066】
一方、ステップS670において全パターンの評価が済んだと判定された場合(Yesの場合)、予測装置100は、処理をステップS680へ進める。
【0067】
ステップS680において、予測装置100は、推奨する設定値を出力する。例えば、出力部180は、評価された結果に応じて推奨する設定値を出力する。一例として、評価部170は、ステップ660において記憶した設定値の候補の少なくとも1つを出力部180へ供給する。この際、評価部170は、対応する複数の予測値Wa´~Wg´、および、複数の予測値Wa´~Wg´の信頼性を示す指標を併せて出力部180へ供給してよい。そして、出力部180は、評価部170から供給された設定値を推奨する設定値として出力する。すなわち、出力部180は、複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値として探索された設定値を推奨する設定値として出力してよい。この際、出力部180は、更に、推奨する設定値に対応する複数の予測値を、当該複数の予測値の信頼性を示す指標とともにそれぞれ出力してよい。
【0068】
図7は、本実施形態に係る予測装置100による予測結果の一例を示す。本図において、横軸はウエハ位置を示しており、左側が炉口、右側が炉奥を示している。また、本図において、縦軸はそれぞれの位置に配置されたウエハに成膜される膜厚を示している。そして、本図において、白丸のデータ点は、それぞれの位置に配置されたウエハに成膜された膜厚を実際に測定した膜厚の実測値、すなわち、膜厚Wa~Wgを示している。また、本図において、黒丸のデータ点は、それぞれの位置に配置されたウエハに成膜されるであろう膜厚の予測値、すなわち、複数の予測値Wa´~Wg´を示している。
【0069】
本図において白丸で示されるように、炉口付近(位置aおよび位置b)に配置されたウエハに成膜された膜厚の実測値が、下限値を下回っていることが分かる。そこで、本実施形態に係る予測装置100は、炉温設定を設定値Tから設定値T´に調整した場合に、それぞれの位置に配置されたウエハに成膜されるであろう膜厚の変化率を予測する。すなわち、予測装置100は、設定値Tから設定値T´に調整した場合に、本図において白丸で示されるデータがどの程度変化するのかを予測する。これにより、本実施形態に係る予測装置100は、それぞれの位置に配置されたウエハに成膜されるであろう膜厚の予測値Wa´~Wg´を、本図の黒丸で示すように予測することができる。
【0070】
図8は、本実施形態に係る予測装置100による出力の一例を示す。現在のメンテナンス時における炉温設定として、炉口温度Tf=954.7度、炉中央温度Tc=939.3度、炉奥温度Tr=950.3度、および、成膜時間t=3分27秒がそれぞれ設定されていたとする。このような炉温設定に基づいてヒーターを制御した結果、図7の白丸で示されるように、炉口付近に配置されたウエハに成膜された膜厚の実測値が、下限値を下回る結果が得られた。そこで、本実施形態に係る予測装置100は、図6のフローにしたがって、設定値を調整した場合における複数の予測値を予測し、推奨する設定値を出力する。本図においては、予測装置100が、炉口温度Tf´=1026.5度、炉中央温度Tc´=939.3度、炉奥温度=945.1度、および、成膜時間t´=3分57秒を、推奨する炉温設定として出力した場合を示している。この際、予測装置100は、更に、当該推奨する炉温設定に基づいてヒーターを制御した場合に、それぞれの位置に配置されたウエハに成膜されるであろう膜厚を予測した複数の予測値を、本図の黒丸のように併せて出力することができる。また、予測装置100は、複数の予測値に対応する指標(95%信頼区間)を、本図の斜線部のように併せて出力することができる。
【0071】
従来、例えば図7の白丸で示されるように、炉口付近に配置されたウエハに成膜された膜厚の実測値が下限値を下回っている場合、炉口温度の設定値を上昇させることが考えられる。しかしながら、炉口温度の上昇は、炉口付近のウエハのみならず、炉中央付近(例えば、位置c、位置d、および、位置e)や炉奥付近(例えば、位置fおよび位置g)に配置されたウエハに成膜される膜厚にも影響を及ぼし得る。そのため、全ての位置に配置されたウエハに成膜される膜厚を基準範囲内とするために、どのパラメータをどの程度調整すればよいのかを判断するのが困難であった。これにより、作業者は、炉温設定を何度も試行錯誤して再調整する必要があった。
【0072】
これに対して、本実施形態に係る予測装置100は、制御対象20を設定値に基づいて制御したことによる成果物における複数の物理量を予測する。そして、本実施形態に係る予測装置100は、複数の物理量を予測した複数の予測値を評価した結果に応じて推奨する設定値を出力する。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、作業者が設定値を調整する負荷を抑制することができる。例えば、制御対象20がウエハを熱処理する炉内の温度を調整するためのヒーターであり、成果物の物理量がウエハに成膜される膜厚である場合、本実施形態に係る予測装置100は、拡散炉200内に配置された複数のウエハの各々に成膜される膜厚をそれぞれ予測することができる。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、拡散炉200のメンテナンス時間を大幅に短縮させることができ、その分、拡散炉200による半導体製造プロセスの稼働率を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る予測装置100は、設定値データおよび物理量データを学習データとして制御対象20の設定値と成果物の物理量との関係を機械学習することによって生成された学習モデルを用いて、複数の予測値を算出する。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、客観的な根拠に基づいて、複数の予測値を算出することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る予測装置100は、そのような学習モデルを機械学習により生成する。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、学習機能と予測機能とを一体の装置により実現することができる。
【0075】
この際、本実施形態に係る予測装置100は、設定値の変化率を入力、物理量の変化率を出力とした学習モデルを生成する。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、設定値と物理量との相対的な関係を学習することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る予測装置100は、ガウス過程回帰により学習モデルを生成する。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、ガウス過程回帰が従うガウス分布の標準偏差等、機械学習で扱われる確率モデルで得られる標準偏差に基づいて、複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ算出することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る予測装置100は、推奨する設定値に加えて、当該設定値に従って制御対象20を制御した場合における複数の予測値、および、当該複数の予測値の信頼性を示す指標をそれぞれ出力する。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、推奨する設定値に従って制御対象20を制御した結果として、どの程度の物理量の成果物が得られることが予測されるのか、また、その予測がどの程度確からしいものであるのかを、作業者に知らしめることができる。したがって、例えば、学習データが増加して学習モデルの予測精度が高くなるにつれ、予測値の信頼性が高くなるように表示されるので、作業者は、学習モデルの予測精度がどのくらい向上しているかを確認しながら作業を実施することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る予測装置100は、複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値を探索し、当該探索された設定値を推奨する設定値として出力する。これにより、本実施形態に係る予測装置100によれば、従来作業者が行っていた試行錯誤を代行することができる。
【0079】
図9は、本実施形態に係る制御装置900のブロック図の一例を、制御対象20が設けられた設備10と共に示す。図9においては、図1と同じ機能および構成を有する部材に対して同じ符号を付すとともに、以下相違点を除き説明を省略する。本実施形態に係る制御装置900は、上述の予測装置100に加えて、推奨する設定値に従って制御対象20を制御する機能を更に有する。すなわち、本実施形態に係る制御装置900は、推奨する設定値に基づく操作量(MV:Manipulated Variable)を制御対象20へ与える。本実施形態に係る制御装置900は、上述の予測装置100が備える機能部に加えて、制御部910を更に備える。
【0080】
制御部910は、推奨する設定値に従って制御対象20を制御する。例えば、推奨する設定値として、炉口温度Tf´=1026.5度、炉中央温度Tc´=939.3度、炉奥温度=945.1度、および、成膜時間t´=3分57秒が出力された場合に、制御部910は、当該設定値に従って拡散炉200における3つのヒーターをフィードバック制御する。これにより、本実施形態に係る制御装置900によれば、推奨する設定値に従って制御対象20を実際に制御することができ、予測機能と制御機能とを一体の装置として実現することができる。なお、制御装置900における予測装置100が備える機能部は、部分的に外部の装置(例えば、制御装置900がインターネットに接続可能な場合、クラウドコンピューティング)により実現されてもよい。すなわち、学習モデルの生成機能(例えば、学習部130)をクラウドコンピューティングにより実現し、制御装置900は、クラウドにおいて生成された学習モデルをダウンロードして、当該ダウンロードした学習モデルを用いて物理量の予測や評価を行い、評価結果に応じた設定値にしたがって制御対象20を制御してもよい。さらに、物理量の予測機能や評価機能(例えば、特徴量抽出部120~出力部180)をもクラウドコンピューティングにより実現し、制御装置900は、クラウドから出力された推奨設定値を取得して、当該取得した推奨設定値にしたがって制御対象20を制御してもよい。
【0081】
なお、上述の実施形態は、様々な形で変更、または、応用されてよい。例えば、メンテナンス前後における拡散炉200に設置される熱電対の位置のずれや、プロセスガスの流量変化量等のデータを取得可能な場合、予測装置100は、このようなデータにおける変化率をも設定値の変化率として加えてもよい。
【0082】
また、上述の説明では、拡散炉200におけるメンテナンス時に本実施形態に係る予測技術を適用する場合を一例として示したが、本実施形態に係る予測技術は、製造プロセス時にも適用されてもよい。一般に、製造プロセスでは、メンテナンス時に調整された炉温設定を用いて成膜作業が実施される。しかしながら、製造中にチューブ内に粒子等が蓄積されていくことによって、調整された炉温設定に対する膜厚の成長度が弱くなり、段々と膜厚が予め定められた基準の範囲を下回る可能性が高くなっていく。特に、定期メンテナンスを実施する直前には、膜厚が基準範囲の下限値を下回る可能性がより高くなり、製品の歩留まり率が下がってしまう現象が生じる。
【0083】
そこで、本実施形態に係る予測技術を製造プロセス中における炉温設定調整作業にも適用してよい。製造プロセス中に、本実施形態に係る予測技術による炉温設定調整作業を定期的に実施することで、膜厚成長度の低下を補完した炉温設定に更新することができる。なお、このような製造プロセス中における炉温設定調整作業は、定期的に実施されることに代えて、または、加えて、イベントトリガで(例えば、膜厚成長度の低下を検知した場合、または、製品の歩留まり率が予め定められた閾値を下回った場合に)実施されてもよい。
【0084】
また、上述の説明では、本実施形態に係る予測技術を、拡散炉200においてウエハに成膜される膜厚の予測に適用した場合を一例として示した。しかしながら、これに限定されるものではない。本実施形態に係る予測技術は、毎回目標値が変わるようなケースや、ユーザならではの経験にしたがって制御対象20に設定値を与えているケース等に応用されてよい。
【0085】
例えば、本実施形態に係る予測技術を用いることにより、外気から取り込んだ空気を使用してクリーンルーム内の温度や湿度を一定に制御する際に、外気の温度や湿度変化の状況からLPGガスをどの程度昇温すべきかや、冷却水でどの程度冷却すべきかなどの目標設定が提案されてもよい。
【0086】
また、例えば、本実施形態に係る予測技術を用いることにより、機器のキャリブレーション時にセンサのオフセット量や現在の機器の状況などを学習し、推奨されたパラメータ設定調整量でキャリブレーションが実施されてもよい。一例として、工場に設置された監視カメラをキャリブレーションするにあたって、本実施形態に係る予測技術を用いることにより、ピントやレンズの歪み等を予測し、当該予測結果に応じて推奨される設定調整量で監視カメラの内部パラメータを調整してもよい。
【0087】
また、上述の説明では、予測装置100が複数の予測値の指標を出力に用いる場合のみ示したが、これに限定されるものではない。予測装置100は、複数の予測値の指標を設定値T´の評価基準として用いてもよい。すなわち、複数の予測値の全てが予め定められた基準を満たす設定値が、設定値の候補として複数記憶されている場合に、評価部170は、当該指標に基づいて一つの設定値を選択してもよい。この際、評価部170は、例えば、複数の予測値の指標が予め定められた閾値を超える場合に、当該複数の予測値に対応する設定値を推奨すべき設定値の候補から除外してもよい。また、評価部170は、複数の予測値および当該複数の予測値の指標に基づいて設定値をスコア化し、スコアの最も高い設定値を推奨すべき設定値として選択してもよい。この場合、評価部170は、予測値が指定値に近い程スコアが高くなり、かつ、指標が小さい程スコアが高くなる関数を用いてよい。
【0088】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0089】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0090】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0091】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0092】
図10は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ9900の例を示す。コンピュータ9900にインストールされたプログラムは、コンピュータ9900に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ9900に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ9900に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU9912によって実行されてよい。
【0093】
本実施形態によるコンピュータ9900は、CPU9912、RAM9914、グラフィックコントローラ9916、およびディスプレイデバイス9918を含み、それらはホストコントローラ9910によって相互に接続されている。コンピュータ9900はまた、通信インターフェイス9922、ハードディスクドライブ9924、DVDドライブ9926、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ9920を介してホストコントローラ9910に接続されている。コンピュータはまた、ROM9930およびキーボード9942のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ9940を介して入/出力コントローラ9920に接続されている。
【0094】
CPU9912は、ROM9930およびRAM9914内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ9916は、RAM9914内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU9912によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス9918上に表示されるようにする。
【0095】
通信インターフェイス9922は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ9924は、コンピュータ9900内のCPU9912によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVDドライブ9926は、プログラムまたはデータをDVD-ROM9901から読み取り、ハードディスクドライブ9924にRAM9914を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0096】
ROM9930はその中に、アクティブ化時にコンピュータ9900によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ9900のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ9940はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ9920に接続してよい。
【0097】
プログラムが、DVD-ROM9901またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ9924、RAM9914、またはROM9930にインストールされ、CPU9912によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ9900に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ9900の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0098】
例えば、通信がコンピュータ9900および外部デバイス間で実行される場合、CPU9912は、RAM9914にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス9922に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス9922は、CPU9912の制御下、RAM9914、ハードディスクドライブ9924、DVD-ROM9901、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0099】
また、CPU9912は、ハードディスクドライブ9924、DVDドライブ9926(DVD-ROM9901)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM9914に読み取られるようにし、RAM9914上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU9912は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0100】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU9912は、RAM9914から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM9914に対しライトバックする。また、CPU9912は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU9912は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0101】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ9900上またはコンピュータ9900近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ9900に提供する。
【0102】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0103】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0104】
10 設備
20 制御対象
100 予測装置
110 データ取得部
120 特徴量抽出部
130 学習部
140 学習モデル保存部
150 設定調整部
160 予測部
170 評価部
180 出力部
200 拡散炉
900 制御装置
910 制御部
9900 コンピュータ
9901 DVD-ROM
9910 ホストコントローラ
9912 CPU
9914 RAM
9916 グラフィックコントローラ
9918 ディスプレイデバイス
9920 入/出力コントローラ
9922 通信インターフェイス
9924 ハードディスクドライブ
9926 DVDドライブ
9930 ROM
9940 入/出力チップ
9942 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10