IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日油株式会社の特許一覧

特許7331923ワックス膨張剤およびこれを含有するワックス組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ワックス膨張剤およびこれを含有するワックス組成物
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20230816BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20230816BHJP
   C08K 5/1565 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G03G9/097 365
C08L91/06
C08K5/1565
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021514929
(86)(22)【出願日】2020-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2020016227
(87)【国際公開番号】W WO2020213548
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019080085
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】荻 宏行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健司
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】韓国特許第10-2019-0002226(KR,B1)
【文献】特表2013-543047(JP,A)
【文献】特開2010-280605(JP,A)
【文献】特開2008-266582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
C08L 91/06
C08K 5/1565
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される環状エーテル化合物からなるワックス膨張剤。
【化1】
(式中、Rは炭素数11~23のアルキル基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載のワックス膨張剤およびワックスを含有し、前記ワックス膨張剤の含有量が、前記ワックス100質量部に対し、0.001~0.01質量部であることを特徴とするワックス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワックスに極少量を添加することによりワックスの熱膨張性を高めることができるワックス膨張剤およびこれを含有するワックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ワックスは通常、50~90℃で融解するろう状の化合物であり、高級脂肪酸と高級一価アルコールとからなる固形エステルや、炭化水素であるパラフィンワックスなどが汎用されている。ワックスは耐水性、可塑性、光沢性、不透明性などを示すことから、各種素材の機能性を向上させる目的で添加剤として様々な用途において使用されている。特に、樹脂に添加して樹脂の硬さや、滑り性、撥水性などをコントロールしたり、温度変化による融解挙動を利用して、感温性の機能を付与したりする用途に好適に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルやジペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのワックスを樹脂に添加して、射出成形の際の金型からの離型性を向上させることが提案されている。また同文献には、温度変化や経時変化により樹脂内部からワックスが染み出ることによって、樹脂に離型性が付与されることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、トナー樹脂に対して、炭化水素系ワックスと、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのエステルワックスとを併用することで、印刷工程でのトナーの加熱ローラによる定着において、低温からワックスを染み出させ、離型性を向上させることが提案されている。以降、樹脂内部からのワックスの染み出し易さを「染み出し性」ともいう。
【0005】
さらに、特許文献3には、サーモバルブにパラフィンワックスを流体として使用することが提案され、固体から液体への相転移および各相における熱膨張・収縮に伴う体積変化を利用して、ピストンロッドの弁体と合わせることにより、流体の流量を調整する感熱弁として機能することが開示されている。
【0006】
このように、ワックスは温度変化に伴う体積変化を利用して機能を発揮しており、従来は特定物性のワックスを使用したり、種々のワックスを併用したりすることにより、機能の向上が図られてきた。
しかし、いずれの場合においても、樹脂の物性や材質の変化に応じて、最適な特性を有するワックスを見出すには困難が伴う。また、種々のワックスを併用する場合、染み出し性をコントロールすることができるものの、数パーセントものワックスを配合する必要があるので、ワックス単体が有している物性に影響を与え、最適なワックス特性を得ることは困難な場合があった。そのため、ワックスに極少量を添加することによりワックスの熱膨張性を高め、温度変化に伴う染み出し性や応答性などをコントロールすることができる添加剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2006-233101号公報
【文献】日本国特開2018-17886号公報
【文献】日本国特開2018-25269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ワックスに極少量を添加することにより、熱を加えた際のワックスの熱膨張率を向上させることができるワックス膨張剤およびこれを含有するワックス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の環状エーテル化合物をワックスに極少量添加することよりワックスの熱膨張性を高めることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、式(I)で表される環状エーテル化合物からなるワックス膨張剤である。
【0011】
【化1】
(式中、Rは炭素数11~23のアルキル基を示す。)
【0012】
また本発明は、本発明のワックス膨張剤およびワックスを含有し、前記ワックス膨張剤の含有量が、前記ワックス100質量部に対し、0.001~0.01質量部であることを特徴とするワックス組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワックス膨張剤によれば、ワックスに極少量を添加することにより、熱を加えた際のワックスの熱膨張率を向上させることができる。これにより、温度変化に伴う染み出し性や応答性などをコントロールすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明のワックス膨張剤は、式(I)で表される環状エーテル化合物、即ち、側鎖にエステル結合を有する5員環の環状エーテル化合物からなる。また本発明のワックス組成物は、式(I)で表される環状エーテル化合物からなるワックス膨張剤およびワックスを含有する。以下、各成分について説明する。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~5」は2以上かつ5以下を表す。
また濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
【0015】
〔ワックス膨張剤〕
本発明で用いられるワックス膨張剤は、式(I)で示される環状エーテル化合物であり、側鎖のRに示される炭素数11~23のアルキル基を有したエーテル化合物である。炭素数11~23のアルキル基は直鎖アルキル基が好ましく、アルキル基の炭素数は、好ましくは13~21であり、より好ましくは15~21である。
【0016】
【化1】
【0017】
式(I)で示される環状エーテル化合物は、例えば、アルコール性水酸基を有する環状アセタール化合物と、Rで示される炭素数11~23のアルキル基を有する一価の飽和脂肪酸とをエステル化反応することによって得ることができる。またアルコール性水酸基を有する環状アセタールは、例えば、分子内に3つ以上の水酸基を有する多価アルコールをアセタール化することによって得られる。また炭素数11~23のアルキル基を有する一価の飽和脂肪酸は、一価の直鎖飽和脂肪酸が好ましい。
【0018】
アセタール化反応に用いられる、水酸基を有する多価アルコールとしては、グリセリンが好適に用いられる。グリセリンを用いてアセタール化反応を行う方法には様々あるが、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂、塩化カルシウムのような酸性触媒を使用する方法が簡便であり好ましい。
【0019】
エステル化反応に用いられる一価の飽和脂肪酸としては、炭素数11~23のアルキル基を有する一価の直鎖飽和脂肪酸が好適に用いられる。アルキル基の炭素数が小さすぎると、ワックスとの相溶性が低下し、膨張効果が得られ難くなることがある。またアルキル基の炭素数が大きすぎると、工業的な供給安定性に問題が生じることがある。アルキル基の炭素数は、好ましくは13~21であり、より好ましくは15~21である。
かかる一価の直鎖飽和脂肪酸の具体例としては、ベヘニン酸(炭素数22)、ステアリン酸(炭素数18)、ミリスチン酸(炭素数14)、ラウリン酸(炭素数12)等が挙げられる。
【0020】
これらを用いてエステル化反応を行う方法には様々あるが、無触媒にて、または塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酸性イオン交換樹脂のようなプロトン酸触媒やルイス酸触媒を用いて、一般的なエステル化反応の手順に従って行なうことができる。さらに、適宜、アルカリ性水溶液による脱酸工程や、吸着処理などの精製処理が行われてもよい。
【0021】
このような方法で合成された式(I)の環状エーテル化合物は、酸価が1.0mgKOH/g以下、水酸基価が5mgKOH/g以下であることが好ましい。より好ましくは、酸価が0. 3mgKOH/g以下、水酸基価が3mgKOH/g以下である。
なお、酸価はJOCS(日本油化学会)2.3.1-96に準拠して、水酸基価はJOCS(日本油化学会)2.3.6.2-96に準拠して、それぞれ測定することができる。
【0022】
式(I)で示される環状エーテル化合物は、1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。また、エステル化反応に用いられる一価の飽和脂肪酸としてパーム油などの混合脂肪酸を用いて得られた、アルキル基の炭素数が異なる2種以上の環状エーテル化合物の混合物を用いることもできる。
【0023】
〔ワックス〕
本発明で用いられるワックスは、透明融点50~100℃で融解するろう状の化合物であり、例えば、パラフィン、脂肪酸エステル、アミドエステル等のワックスが挙げられる。透明融点については、好ましくは70~90℃である。ワックスについては、好ましくは脂肪酸エステルである。
なお、透明融点はJOCS(日本油化学会)2. 2. 4. 1またはJIS K-0064(日本工業規格)に準拠して測定することができる。
【0024】
本発明における脂肪酸エステルとしては、脂肪酸とアルコールとのエステルであれば特に制限はないが、脂肪酸として一価の直鎖飽和脂肪酸を用いた脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸の炭素数は、16~22が好ましく、18~22がより好ましい。これらの中でも、ステアリン酸(炭素数18)、ベヘニン酸(炭素数22)が特に好ましく、ベヘニン酸がさらに好ましい。
アルコールとしては、1~6価の飽和脂肪族アルコールが好ましく、4~6価の炭素数5~10のものがより好ましい。それらの中でも、ペンタエリスリトール(4価の炭素数5のアルコール)、ジペンタエリスリトール(6価の炭素数10のアルコール)が特に好ましく、ペンタエリスリトールがさらに好ましい。
脂肪酸エステルの製造方法としては、例えば、上記一価の直鎖飽和脂肪酸と、上記のアルコールとからの脱水縮合反応を利用する方法が挙げられる。反応を効率よく進めるために、触媒を利用しても良い。反応温度は180~250℃が好ましく、減圧下で反応を行なってもよい。また、反応の後、脱酸や水洗などにより精製しても良い。
【0025】
ワックスは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。また、一価の直鎖飽和脂肪酸としてパーム油などの混合脂肪酸を用いて得られた脂肪酸エステルの混合物を用いることもできる。
【0026】
〔ワックス組成物〕
本発明のワックス組成物は、上記ワックス膨張剤および上記ワックスを含有する。ワックス膨張剤の含有量は、ワックス100質量部に対し、0.001~0.01質量部であり、好ましくは0.001~0.008質量部である。ワックス膨張剤の含有量が多すぎると、例えば、トナー用ワックスの場合、得られるワックス組成物の樹脂に対する相溶性が高まり、染み出し性に悪影響を及ぼすことがある。
【0027】
本発明のワックス組成物は公知の方法により製造することができる。例えば、ワックス膨張剤およびワックスを加熱溶融して均一に混合することにより製造することができる。
【0028】
本発明のワックス組成物は、例えばトナー中に配合することができる。トナーは、一般には、バインダー樹脂、着色剤、外添剤、帯電制御剤などとともに配合され、通常の製法によって製造される。トナー中における本発明のワックス組成物の配合量は、バインダー樹脂100質量部に対して、通常、0.1~40質量部である。
【実施例
【0029】
以下に本発明のワックス膨張剤の製造例を示し、本発明を更に具体的に説明する。
なお、以下の実施例および比較例において「%」は質量基準を意味する。
【0030】
<合成例1:ワックス膨張剤の合成方法>
式(I)で表されるエステル置換基を有する環状エーテル化合物からなるワックス膨張剤の合成は以下のように実施した。
【0031】
[環状アセタール化合物の合成]
温度計、窒素導入管、攪拌機および冷却管油水分離管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、グリセリン250g(2.7mol)、アセトン522g(0.9mol)とトルエン800mLを注入し、次いでメタンスルホン酸26g(0.3mol)を加えて還流し、留出する水を除去しながら30時間反応を行った。続いて、水酸化カリウム水溶液を加えて中和し、イオン交換水で5回水洗いした後、トルエンを減圧留去し、4-ヒドロキシメチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランを298g得た。
【0032】
[ワックス膨張剤(A1)の合成]
温度計、窒素導入管、攪拌機および冷却管油水分離管を取り付けた1Lの4つ口フラスコに、上記の4-ヒドロキシメチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン298g(2.3mol)を注入し、そこにベヘニン酸392g(1. 4mol)を加え、以後に述べるエステルワックス化合物の合成方法と同様の操作を行うことにより、491gのワックス膨張剤(A1)を得た。得られたワックス膨張剤(A1)の酸価、水酸基価および透明融点を表1に示す。
なお、酸価、水酸基価および透明融点は本明細書に記載の方法に準拠して測定した。
【0033】
[ワックス膨張剤(A2)~(A5)の合成]
原料アルコールとしての4-ヒドロキシメチル-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソランと、表1に示す原料直鎖飽和脂肪酸とを用い、ワックス膨張剤(A1)の合成法に準じてワックス膨張剤(A2)~(A5)の合成を行った。なお、ワックス膨張剤(A1)と同様に、各ワックス膨張剤(A2)~(A5)の酸価、水酸基価、透明融点をそれぞれ表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
<合成例2:エステルワックス化合物の合成方法>
[ワックス(B1)の合成]
温度計、窒素導入管、攪拌羽および冷却管を取り付けた2Lの4つ口フラスコに、ペンタエリスリトールを260g(1.9mol)、ベヘニン酸を2732g(9. 6mol)加え、窒素気流下、220℃で反応させた。得られたエステル粗生成物は2759gであり、酸価が9.4mgKOH/gであった。
本エステル粗生成物にトルエン570gおよび2-プロパノール89gを入れ、エステル粗生成物の残存酸価の2.0倍当量に相当する量の水酸化カリウムを含む10%水酸化カリウム水溶液を加え、70℃で30分間攪拌した。その後、30分間静置して水層部(下層)を分離・除去した。排水のpHが中性になるまで水洗を4回繰り返した。残ったエステル層の溶剤を180℃、1kPaの減圧条件下で留去し、濾過を行い、ワックス(B1)を2500g得た。脱酸に供したエステル化粗生成物に対する収率は90%であった。得られたワックス(B1)の酸価、水酸基価および透明融点を表2に示す。
なお、酸価、水酸基価および透明融点は本明細書に記載の方法に準拠して測定した。
【0036】
[ワックス(B2)~(B4)の合成]
表2に示す原料アルコールと原料直鎖飽和脂肪酸を用い、ワックス(B1)の合成法に準じてワックス(B2)~(B4)の合成を行った。なお、ワックス(B1)と同様に、各ワックス(B2)~(B4)の酸価、水酸基価、透明融点をそれぞれ表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
〔測定方法〕
本発明において用いた各種評価法を次に示す。
(1)酸価:JOCS(日本油化学会)2.3.1-96に準拠した。
(2)水酸基価:JOCS(日本油化学会)2.3.6.2-96に準拠した。
(3)透明融点:JOCS(日本油化学会)2.2.4.1またはJIS K-0064(日本工業規格)に準拠した。
(4)平均線膨張係数:試料を融点温度で完全に融解させ、アルミカップに排出して冷却固化した。試料について、(縦×横×高さ)が0.5cm×0.5cm×0.3cmになるように上面と下面を平滑に成型した。熱機械分析装置(TMA/SS6100、セイコーインスツル(株)製)により、先端径1mmの針入プローブを用いて、窒素ガス雰囲気下、2℃/minの昇温条件で測定を行った。30℃の膨張率値%と40℃の膨張率値%をプロットして平均線膨張係数を求めた。
(5)ワックス膨張剤の含有量測定:FID検出機を備えたガスクロマトグラフ((株)島津製作所製「NexisGC-2030」)を用いた。カラムとしては、GCカラム(フロンティア・ラボ(株)製「Ultra ALLOY UA-1(MS/ HT)」、固定相:ジメチルポリシロキサン、長さ:15m、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm)を用いた。
(ガスクロマトグラフ)
・キャリアガス:ヘリウム(He)ガス
・キャリア流量:線速度40cm/sec
・気化室、検出器温度:440℃
・昇温条件:100℃から速度10℃/minで440℃まで昇温し、440℃で16分間保持した。
【0039】
<ワックス組成物の調製および評価>
(実施例1)
攪拌羽、窒素導入管を取り付けた0. 3L容器のセパラブルフラスコに、ワックス膨張剤(A1)を0.002g、ワックス(B1)を199.998g加え、窒素気流下、150℃で1時間攪拌した。その後、冷却、固化、粉砕を経て、ワックス組成物を得た。
得られたワックス組成物の平均線膨張係数を熱機械分析装置(セイコーインスツル(株)製:TMA/SS6100)により評価した。なお、ワックス膨張剤の含有量は、ガスクロマトグラフで定量することができる。
【0040】
(実施例2~7、比較例1~2)
表1に示すワックス膨張剤および表2に示すワックスを用いて、実施例1と同様にしてワックス組成物を得た。得られたワックス組成物の平均線膨張係数を熱機械分析装置(セイコーインスツル(株)製:TMA/SS6100)により評価した。なお、ワックス膨張剤の含有量は、ガスクロマトグラフで定量することができる。
【0041】
【表3】
【0042】
表3の結果より、実施例1~7のワックス組成物は、ワックス膨張剤Aを所定量含有することによって、平均線膨張係数を少なくとも1.9(10-4/℃)に上昇させることが確認された。これにより、ワックスを熱膨張させることで、染み出し性を向上させることができ、離型性などの機能を高める効果が得られる。
【0043】
実施例1~7に対し、比較例1ではワックス膨張剤(A1)を含有していないので、平均線膨張係数が低かった。
比較例2においてはワックス膨張剤(A5)の式(I)におけるRの炭素数が9であり、本発明規定の下限値である炭素数11よりも小さいので、添加効果が十分には得られなかった。
【0044】
〔関連出願〕
本願は、2019年4月19日出願の日本国特許出願(特願2019-080085)に基づく優先権の利益を享受し、その全ての内容が参照によりここに組み込まれる。