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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】車載装置及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20230816BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20230816BHJP
   B60W 40/076 20120101ALI20230816BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W30/10
B60W40/076
G08G1/16 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021552407
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2020038746
(87)【国際公開番号】W WO2021075454
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019188281
(32)【優先日】2019-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】西野 咲子
(72)【発明者】
【氏名】下村 修
(72)【発明者】
【氏名】馬場 厚志
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073578(WO,A1)
【文献】特開2006-193082(JP,A)
【文献】特開2000-16117(JP,A)
【文献】特開2019-156269(JP,A)
【文献】特開2019-119216(JP,A)
【文献】特開2005-149402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも車両の走行時の位置取りを計画する走行計画部(27c,27d,27e,27f,27g,27h)と、
前記走行計画部で計画した前記走行計画を、交通ルールに対応して構成された運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する確認部(28c,28d,28e,28f,28g,28h)とを備え、
前記走行計画部は、前記車両以外の他車両の存在によって前記他車両以外の移動体が前記車両の周辺を監視する周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する状況である死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシに従って、前記車両の位置取りを計画する車載装置。
【請求項2】
前記周辺監視センサは、前記車両の前方及び後方の少なくともいずれかを監視するものであって、
前記走行計画部(27d)は、前記車両と障害物との近接をさけるために前記車両が前記障害物との間に最低限空けるべき安全距離のうちの前記車両の左右方向の安全距離である横方向安全距離を確保可能な範囲で、前記車両の走行位置を走行車線の中央よりもその走行車線の境界側に偏らせることで、前記死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシに従って、前記車両の位置取りを計画する請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記走行計画部は、前記車両がカーブ路を走行中の場合には、前記車両と障害物との近接をさけるために前記車両が前記障害物との間に最低限空けるべき安全距離のうちの前記車両の横方向の安全距離である横方向安全距離を確保可能な範囲で、前記車両の走行位置を走行車線の中央よりもそのカーブ路における内周側に偏らせることで、前記死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシに従って、前記車両の位置取りを計画する請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記周辺監視センサは、前記車両の少なくとも側方を監視するものであって、
前記走行計画部(27e)は、前記車両の走行車線と隣接する隣接車線を走行する前記他車両に対して、前記車両の、前記走行車線に沿った方向である縦方向の位置をずらさせることで、前記死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシに従って、前記車両の位置取りを計画する請求項1~3のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記周辺監視センサは、前記車両の少なくとも側方を監視するものであって、
前記走行計画部(27f)は、前記周辺監視センサによる前記車両の側方の検出範囲のうち、前記車両の走行車線と隣接する隣接車線を走行する前記他車両によって遮蔽されない範囲を、設定される設定範囲以上確保させることで、前記死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシに従って、前記車両の位置取りを計画する請求項1~4のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項6】
前記設定範囲は、前記車両で予定される運転行動に応じて変更される請求項5に記載の車載装置。
【請求項7】
前記走行計画部(27g)は、前記車両と前記他車両としての並走車との位置関係を所定時間以上同一の状態に維持させないことで、前記死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシに従って、前記車両の位置取りを計画する請求項1~6のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項8】
前記車両である自車両以外の他車両である対象他車両に搭載される周辺監視センサの検出範囲のうちの、前記対象他車両及び前記自車両以外の車両の存在によって死角となる死角範囲を特定する死角範囲特定部(254h)を備え、
前記走行計画部(27h)は、前記死角範囲特定部で特定される前記死角範囲に前記自車両が位置する頻度を低下させることで、前記死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシに従って、前記車両の位置取りを計画する請求項1~7のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項9】
前記車両と障害物との間に設定される距離であって、当該距離未満となる場合に、前記車両と前記障害物との近接をさけるための回避行動を自動で行わせることで、前記車両側が事故の責任を負うことを回避するための閾値となる安全距離を設定する安全距離設定部(281a)と、
前記車両の先行車の大きさを特定する先行車特定部(251a)と、
前記先行車特定部で特定した前記先行車の大きさに応じて、前記安全距離設定部で設定する前記車両の前方の前記安全距離を、前記車両の周辺の障害物を検出する周辺監視センサ(5a)の検出範囲のうちの、前記先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下となる距離に調整する安全距離調整部(283a)とを備え、
前記先行車特定部で特定した前記先行車の大きさに応じて、前記安全距離設定部で設定する前記車両の前方の前記安全距離を、前記車両の周辺の障害物を検出する周辺監視センサ(5a)の検出範囲のうちの、前記先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下となる距離に調整することが前記運転ポリシであって、
前記走行計画部(27c)は、前記安全距離調整部での調整を行うことで、前記死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする前記運転ポリシによって、前記運転ポリシに従った前記車両の位置取りを計画する請求項1~8のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項10】
車両と障害物との間に設定される距離であって、当該距離未満となる場合に、前記車両と前記障害物との近接をさけるための回避行動を自動で行わせることで、前記車両側が事故の責任を負うことを回避する閾値となる安全距離を設定する安全距離設定部(281a)と、
前記車両の先行車の大きさを特定する先行車特定部(251a)と、
前記先行車特定部で特定した前記先行車の大きさに応じて、前記安全距離設定部で設定する前記車両の前方の前記安全距離を、前記車両の周辺の障害物を検出する周辺監視センサ(5a)の検出範囲のうちの、前記先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下となる距離に調整する安全距離調整部(283a)とを備える車載装置。
【請求項11】
前記規定範囲は、模範的なドライバの手動運転時において前記周辺監視センサの検出範囲のうちに前記先行車がおさまる頻度が一定以上と推定される角度範囲である請求項9又は10に記載の車載装置。
【請求項12】
前記車両の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定する坂特定部(252a)を備え、
前記安全距離調整部は、前記坂特定部で前記走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定する場合には、前記走行路が前記上り勾配か前記下り勾配かにかかわらず、前記先行車特定部で特定する前記先行車の大きさが大きくなるのに応じて、前記安全距離設定部で設定する前記安全距離を増加させる請求項9~11のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項13】
前記安全距離調整部は、前記車両の周辺の障害物を検出する周辺監視センサの検出範囲のうちの、前記先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下となる前記車両と前記先行車との距離が、前記安全距離設定部で設定している前記安全距離よりも大きくなる場合に、前記先行車特定部で特定する前記先行車の大きさが大きくなるのに応じて、前記安全距離設定部で設定している前記安全距離を増加させる請求項9~12のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項14】
前記安全距離調整部は、前記車両の周辺の障害物を検出する周辺監視センサの検出範囲のうちの、前記先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下となる前記車両と前記先行車との距離が、前記安全距離設定部で設定している前記安全距離以下となる場合には、前記安全距離設定部で設定している前記安全距離を、前記先行車特定部で特定する前記先行車の大きさに応じて変更させない請求項13に記載の車載装置。
【請求項15】
車両と障害物との間に設定される距離であって、当該距離未満となる場合に、前記車両と障害物との近接をさけるための回避行動を自動で行わせることで、前記車両側が事故の責任を負うことを回避する閾値となる安全距離を設定する安全距離設定部(281b)と、
前記車両の周辺車両の大きさを特定する周辺車特定部(253b)と、
前記周辺車特定部で特定する前記周辺車両の大きさに応じて、前記安全距離設定部で設定する前記車両の前方若しくは側方の前記安全距離を、その周辺車両が旋回する際にその周辺車両が占有すると推定される範囲内に前記車両が侵入しない距離に調整する安全距離調整部(283b)とを備える車載装置。
【請求項16】
前記安全距離調整部は、前記周辺車特定部で特定する前記車両の隣接車線の前記周辺車両の大きさに応じて、前記安全距離設定部で設定する前記車両の側方の前記安全距離を、その周辺車両が旋回する際にその周辺車両が占有すると推定される範囲内に前記車両が侵入しない距離に調整する請求項15に記載の車載装置。
【請求項17】
前記車両は自動運転が可能な車両であって、
前記車両と前記障害物との間の距離が、前記安全距離設定部で設定される前記安全距離未満となる場合に、前記車両と前記障害物との近接を避けるための回避行動を自動で行わせる自動運転機能部(29a,29b)を備え、
前記自動運転機能部は、前記安全距離設定部で設定される前記安全距離が前記安全距離調整部で調整される場合には、前記車両と前記障害物との間の距離が、前記安全距離調整部で調整された前記安全距離未満となる場合に、前記回避行動を自動で行わせる請求項9~16のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項18】
前記安全距離設定部で設定する前記安全距離は、予め設定された数学的公式モデルによって算出される、前記車両と前記障害物との間の安全性を評価するための基準となる距離である請求項9~17のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項19】
コンピュータによって実行され、自車両の運転を支援する運転支援方法であって、
前記コンピュータが、
前記自車両以外の他車両の存在によって前記他車両以外の移動体が前記自車両の周辺を監視する周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する状況である死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも前記自車両の走行時の位置取りを計画する計画処理と
計画した前記走行計画を、交通ルールに対応して構成された運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する確認処理と、を実行する運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2019年10月14日に日本に出願された特許出願第2019-188281号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車載装置及び運転支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
例えば、特許文献1には、自動運転において、RSS(Responsibility Sensitive Safety)モデルと呼ばれる数学的公式モデルによって算出される、安全性を評価するための基準となる距離(以下、安全距離)を、他車,歩行者といった障害物との間で最低限保つようにすることが記載されている。特許文献1には、安全距離を満たさなくなる場合に合理的な力で制動をかけない車両側が事故の責任を負うことが記載されている。この先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【0004】
例えば、特許文献2には、レーダ装置のスキャン結果から計算した自車と前方車との車間距離及び相対速度に基づいて、自車の制動を制御する技術が開示されている。特許文献2に開示の技術では、前方車の車種又は車両重量から推定する慣性質量に応じて限界車間距離の設定値を補正し、車間距離の計測値が限界車間距離の設定値よりも小さいときに自車の制動装置を作動状態に制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/115963号
【文献】特開2007-030655号公報
【発明の概要】
【0006】
特許文献1に開示の技術では、自車が前方障害物の側方の通過を行う場合、対向車との安全距離を満たしていれば側方の通過を開始することが可能だが、前方障害物の側方の通過中に対向車との安全距離を満たさなくなると、通過途中で自車が制動をかけて停止しなければならないおそれがある。通過途中に自車が停止すると、障害物と自車とが道路幅方向に並んで停止することで、交通流を妨げるおそれがある。
【0007】
特許文献2に開示の技術では、前方車以外の近接を回避するための改善の余地がある。詳しくは、以下の通りである。
【0008】
特許文献2に開示の技術では、前方車への近接を回避する車間距離を確保することが可能になるものの、前側方からの移動体の飛び出しは想定していない。特許文献2に開示の技術では、前方車の車高,車幅によっては、前方車によってレーダ装置のスキャン範囲が大きく遮られ、前側方からの移動体の飛び出しの検出が遅れる可能性がある。この場合、この移動体を検出できてから制動を行っても、この移動体との近接を回避することが困難になるおそれがある。
【0009】
また、特許文献2に開示の技術では、対向車,並走車の旋回時を想定していない。対向車,並走車の車長によっては、対向車,並走車の旋回時に、対向車,並走車の車体が通過する範囲が大きく異なる場合がある。よって、対向車,並走車の旋回時に対向車,並走車との近接を回避することが困難になるおそれがある。
【0010】
他にも、特許文献2に開示の技術では、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減するための改善の余地がある。詳しくは、以下の通りである。
【0011】
前方車によってレーダ装置のスキャン範囲が大きく遮られる場合、この前方車によるスキャン範囲の死角に位置する移動体の位置を正確に認識することが困難になる。この場合、この死角に位置する移動体との近接を回避するのに適切な自車の走行計画を評価するのが難しくなる。
【0012】
この開示の第1の目的は、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減する車載装置及び運転支援方法を提供することにある。
【0013】
また、この開示の第2の目的は、移動体との近接をより回避しやすくすることを可能にする車載装置及び運転支援方法を提供することにある。
【0014】
また、この開示の第3の目的は、自動運転時に自車と障害物との近接をさけるために自車から最低限空けるべき安全距離を設定する場合であっても、交通流をより妨げにくくしつつ前方の障害物の側方の通過を可能にする車載装置及び運転支援方法を提供することにある。
【0015】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、開示の更なる有利な具体例を規定する。請求の範囲に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
上記第1の目的を達成するために、本開示の第1の車載装置は、運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも車両の走行時の位置取りを計画する走行計画部と、走行計画部で計画した走行計画を、交通ルールに対応して構成された運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する確認部とを備え、走行計画部は、車両以外の他車両の存在によって他車両以外の移動体が車両の周辺を監視する周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する状況である死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、車両の位置取りを計画する。
【0017】
上記第1の目的を達成するために、本開示の第1の運転支援方法は、コンピュータによって実行され、自車両の運転を支援する運転支援方法であって、コンピュータが、自車両以外の他車両の存在によって他車両以外の移動体が自車両の周辺を監視する周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する状況である死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車両の走行時の位置取りを計画する計画処理と、計画した走行計画を、交通ルールに対応して構成された運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する確認処理と、を実行する
【0018】
これらによれば、他車両の存在によって他車両以外の移動体が周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも車両の走行時の位置取りを計画することになる。よって、死角進入状況の発生頻度が低下するような自車の位置取りの走行計画を行うことが可能になる。そして、このような走行計画を、交通ルールに対応して構成された運転ルール判断情報に基づき評価し、この走行計画を許可するかどうか決定するので、移動体をより正確に認識した状態で、運転ルール判断情報に基づいた走行計画を評価できる可能性が高まる。その結果、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0019】
上記第2の目的を達成するために、本開示の第2の車載装置は、車両と障害物との間に設定される距離であって、当該距離未満となる場合に、車両と障害物との近接をさけるための回避行動を自動で行わせることで、車両側が事故の責任を負うことを回避する閾値となる安全距離を設定する安全距離設定部と、車両の先行車の大きさを特定する先行車特定部と、先行車特定部で特定した先行車の大きさに応じて、安全距離設定部で設定する車両の前方の安全距離を、車両の周辺の障害物を検出する周辺監視センサの検出範囲のうちの、先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下となる距離に調整する安全距離調整部とを備える。
【0021】
れによれば、先行車の大きさに応じて、設定する車両の前方の安全距離を、車両の周辺の障害物を検出する周辺監視センサの検出範囲のうちの、先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下となる距離に調整することになる。安全距離は、車両と障害物との間に設定される距離であって、当該距離未満となる場合に、車両と障害物との近接をさけるための回避行動を自動で行わせることで、車両側が事故の責任を負うことを回避する閾値となる距離である。周辺監視センサの検出範囲のうちの、先行車がおさまると推定される角度範囲が規定範囲以下とならないようにすると、先行車によって周辺監視センサの検出範囲が塞がれる範囲を抑えることが可能になる。よって、先行車が、車幅の広い先行車であっても、前側方からの移動体の飛び出しを周辺監視センサで検出しやすくすることが可能になる。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【0022】
上記第2の目的を達成するために、本開示の第3の車載装置は、車両と障害物との間に設定される距離であって、当該距離未満となる場合に、車両と障害物との近接をさけるための回避行動を自動で行わせることで、車両側が事故の責任を負うことを回避する閾値となる安全距離を設定する安全距離設定部と、車両の周辺車両の大きさを特定する周辺車特定部と、周辺車特定部で特定する周辺車両の大きさに応じて、安全距離設定部で設定する車両の前方若しくは側方の安全距離を、その周辺車両が旋回する際にその周辺車両が占有すると推定される範囲内に車両が侵入しない距離に調整する安全距離調整部とを備える。
【0024】
れによれば、周辺車両の大きさに応じて、設定する車両の前方若しくは側方の安全距離を、その周辺車両が旋回する際にその周辺車両が占有すると推定される範囲内に車両が侵入しない距離に調整することになる。安全距離は、車両と障害物との間に設定される距離であって、当該距離未満となる場合に、車両と障害物との近接をさけるための回避行動を自動で行わせることで、車両側が事故の責任を負うことを回避する閾値となる距離である。よって、周辺車両が、車長の長い周辺車両であっても、その周辺車両の旋回の際にその周辺車両に近接することをさけることが可能になる。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】車両用システム1及び自動運転装置2の概略的な構成の一例を示す図である。
図2】走行環境認識部25で障害物として自車HVの対向車OVを認識してこの対向車OVを特定できる場合の必要範囲Rrの特定の一例について説明するための図である。
図3】走行環境認識部25で障害物として自車HVの対向車を認識しておらず、対向車を特定できない場合の必要範囲Rrの特定の一例について説明するための図である。
図4】自動運転装置2での自動運転関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】車両用システム1a及び自動運転装置2aの概略的な構成の一例を示す図である。
図6】坂道の一例について説明するための図である。
図7】先行車範囲の一例について説明するための図である。
図8】自動運転装置2aでの安全距離調整関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】車両用システム1b及び自動運転装置2bの概略的な構成の一例を示す図である。
図10】周辺車両の旋回時のシチュエーションの一例を説明するための図である。
図11】周辺車両の旋回時のシチュエーションの一例を説明するための図である。
図12】周辺車両の旋回時のシチュエーションの一例を説明するための図である。
図13】周辺車両の旋回時のシチュエーションの一例を説明するための図である。
図14】周辺車両の旋回時のシチュエーションの一例を説明するための図である。
図15】自動運転装置2bでの安全距離調整関連処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図16】車両用システム1c及び自動運転装置2cの概略的な構成の一例を示す図である。
図17】車両用システム1d及び自動運転装置2dの概略的な構成の一例を示す図である。
図18】実施形態10の構成による効果の一例を説明するための図である。
図19】実施形態10の構成による効果の一例を説明するための図である。
図20】実施形態10の構成による効果の一例を説明するための図である。
図21】実施形態10の構成による効果の一例を説明するための図である。
図22】車両用システム1e及び自動運転装置2eの概略的な構成の一例を示す図である。
図23】実施形態11の構成による効果の一例を説明するための図である。
図24】実施形態11の構成による効果の一例を説明するための図である。
図25】車両用システム1f及び自動運転装置2fの概略的な構成の一例を示す図である。
図26】実施形態12の構成による効果の一例を説明するための図である。
図27】実施形態12の構成による効果の一例を説明するための図である。
図28】自車で予定される運転行動に応じて設定範囲を変更する例を説明するための図である。
図29】自車で予定される運転行動に応じて設定範囲を変更する例を説明するための図である。
図30】車両用システム1g及び自動運転装置2gの概略的な構成の一例を示す図である。
図31】車両用システム1h及び自動運転装置2hの概略的な構成の一例を示す図である。
図32】実施形態15の構成による効果の一例を説明するための図である。
図33】実施形態15の構成による効果の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面を参照しながら、開示のための複数の実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、複数の実施形態の間において、それまでの説明に用いた図に示した部分と同一の機能を有する部分については、同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。同一の符号を付した部分については、他の実施形態における説明を参照することができる。また、以下では、左側通行が法制化されている地域を例に挙げて説明を行う。なお、右側通行が法制化されている地域では、左右を逆とすればよい。
【0030】
(実施形態1)
<車両用システム1の概略構成>
以下、本開示の実施形態1について図面を用いて説明する。図1に示す車両用システム1は、自動運転が可能な車両(以下、自動運転車両)で用いられる。車両用システム1は、図1に示すように、自動運転装置2、ロケータ3、地図データベース(以下、地図DB)4、周辺監視センサ5、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1を用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。
【0031】
実施形態1での自動運転車両は、前述したように自動運転が可能な車両であればよい。自動運転の度合い(以下、自動化レベル)としては、例えばSAEが定義しているように、複数のレベルが存在し得る。自動化レベルは、例えばSAEの定義では、以下のようにレベル0~5に区分される。
【0032】
レベル0は、システムが介入せずに運転者が全ての運転タスクを実施するレベルである。運転タスクは、例えば操舵及び加減速とする。レベル0は、いわゆる手動運転に相当する。レベル1は、システムが操舵と加減速とのいずれかを支援するレベルである。レベル2は、システムが操舵と加減速とのいずれをも支援するレベルである。レベル1~2は、いわゆる運転支援に相当する。
【0033】
レベル3は、高速道路等の特定の場所ではシステムが全ての運転タスクを実施可能であり、緊急時に運転者が運転操作を行うレベルである。レベル3では、システムから運転交代の要求があった場合に、運転手が迅速に対応可能であることが求められる。レベル3は、いわゆる条件付き自動運転に相当する。レベル4は、対応不可能な道路,極限環境等の特定状況下を除き、システムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル4は、いわゆる高度自動運転に相当する。レベル5は、あらゆる環境下でシステムが全ての運転タスクを実施可能なレベルである。レベル5は、いわゆる完全自動運転に相当する。レベル3~5は、いわゆる自動運転に相当する。
【0034】
実施形態1での自動運転車両は、例えば自動化レベルがレベル3の自動運転車両であってもよいし、自動化レベルがレベル4以上の自動運転車両であってもよい。また、自動化レベルは切り替え可能であってもよい。一例として、自動化レベル3以上の自動運転と、レベル0の手動運転とに切り替え可能であってもよい。以降では、自動運転車両が少なくとも自動化レベル3以上の自動運転を行う場合を例に挙げて説明を行う。
【0035】
ロケータ3は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサを備えている。GNSS受信機は、複数の測位衛星からの測位信号を受信する。慣性センサは、例えばジャイロセンサ及び加速度センサを備える。ロケータ3は、GNSS受信機で受信する測位信号と、慣性センサの計測結果とを組み合わせることにより、ロケータ3を搭載した自車の車両位置を逐次測位する。車両位置は、例えば緯度経度の座標で表されるものとする。なお、車両位置の測位には、車両に搭載された車速センサから逐次出力される信号から求めた走行距離を用いる構成としてもよい。
【0036】
図DB4は、不揮発性メモリであって、リンクデータ,ノードデータ,道路形状,構造物等の地図データを格納している。リンクデータは、リンクを特定するリンクID、リンクの長さを示すリンク長、リンク方位、リンク旅行時間、リンクの形状情報(以下、リンク形状)、リンクの始端と終端とのノード座標、及び道路属性等の各データから構成される。一例として、リンク形状は、リンクの両端とその間の形状を表す形状補間点の座標位置を示す座標列からなるものとすればよい。道路属性としては、道路名称,道路種別,道路幅員,車線数を表す車線数情報,速度規制値等がある。ノードデータは、地図上のノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノード種別、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID等の各データから構成される。リンクデータは、道路区間別に加え、車線(つまり、レーン)別にまで細分化されている構成としてもよい。
【0037】
車線数情報及び/又は道路種別からは、道路区間(つまり、リンク)が、片側複数車線,片側一車線,中央線がない対面通行の道路等のいずれに該当するか判別可能とすればよい。中央線がない対面通行の道路には、一方通行の道路は含まないことになる。なお、中央線はセンターラインと言い換えることもできる。ここで言うところの中央線がない対面通行の道路は、高速道路,自動車専用道路を除く一般道路のうちの、中央線がない対面通行の道路を示す。
【0038】
地図データは、道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる3次元地図も含んでいてもよい。地図データとして、道路形状及び構造物の特徴点の点群からなる3次元地図を用いる場合、ロケータ3は、GNSS受信機を用いずに、この3次元地図と、道路形状及び構造物の特徴点の点群を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)若しくは周辺監視カメラ等の周辺監視センサ5での検出結果とを用いて、自車位置を特定する構成としてもよい。なお、3次元地図は、REM(RoadExperience Management)によって撮像画像をもとに生成されたものであってもよい。
【0039】
周辺監視センサ5は、自車の周辺を監視する自律センサである。一例として、周辺監視センサ5は、歩行者,人間以外の動物,自車以外の車両等の移動する物体(以下、移動体)、及びガードレール,縁石,樹木,路上落下物等の静止している静止物体といった自車周辺の物体を検出する。他にも、自車周辺の走行区画線等の路面標示も検出する。周辺監視センサ5としては、例えば、自車周囲の所定範囲を撮像する周辺監視カメラ、自車周囲の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等の測距センサがある。
【0040】
車両制御ECU6は、自車の走行制御を行う電子制御装置である。走行制御としては、加減速制御及び/又は操舵制御が挙げられる。車両制御ECU6としては、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECU及びブレーキECU等がある。車両制御ECU6は、自車に搭載された電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力することで走行制御を行う。
【0041】
通信モジュール7は、自車の周辺車両に搭載された車両用システム1の通信モジュール7との間で、無線通信を介して情報の送受信(以下、車車間通信)を行う。通信モジュール7は、路側に設置された路側機との間で、無線通信を介して情報の送受信(以下、路車間通信)を行ってもよい。この場合、通信モジュール7は、路側機を介して、自車の周辺車両に搭載された車両用システム1の通信モジュール7から送信されるその周辺車両の情報を受信してもよい。
【0042】
また、通信モジュール7は、自車の外部のセンタとの間で、無線通信を介して情報の送受信(以下、広域通信)を行ってもよい。広域通信によってセンタを介して車両同士が情報を送受信する場合には、車両位置を含んだ情報を送受信することで、センタにおいてこの車両位置をもとに、一定範囲内の車両同士で車両の情報が送受信されるように調整すればよい。以降では、通信モジュール7は、車車間通信、路車間通信、及び広域通信の少なくともいずれかによって、自車の周辺車両の情報を受信する場合を例に挙げて説明を行う。
【0043】
他にも、通信モジュール7は、地図データを配信する外部サーバから配信される地図データを例えば広域通信で受信し、地図DB4に格納してもよい。この場合、地図DB4を揮発性メモリとし、通信モジュール7が自車位置に応じた領域の地図データを逐次取得する構成としてもよい。
【0044】
車両状態センサ8は、自車の各種状態を検出するためのセンサ群である。車両状態センサ8としては、車速センサ,操舵センサ,加速度センサ,ヨーレートセンサ等がある。車速センサは、自車の車速を検出する。操舵センサは、自車の操舵角を検出する。加速度センサは、自車の前後加速度,横加速度等の加速度を検出する。加速度センサは負方向の加速度である減速度も検出するものとすればよい。ヨーレートセンサは、自車の角速度を検出する。
【0045】
自動運転装置2は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。なお、自動運転装置2の詳細については、以下で述べる。
【0046】
<自動運転装置2の概略構成>
続いて、図1を用いて、自動運転装置2の概略構成を説明する。図1に示すように、自動運転装置2は、自車位置取得部21、センシング情報取得部22、地図データ取得部23、通信情報取得部24、走行環境認識部25、及び自動運転部26を機能ブロックとして備えている。なお、自動運転装置2が実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2が備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2が車載装置に相当する。
【0047】
自車位置取得部21は、ロケータ3で逐次測位する自車の車両位置を取得する。センシング情報取得部22は、周辺監視センサ5で逐次検出する検出結果(つまり、センシング情報)を取得する。
【0048】
地図データ取得部23は、地図DB4に格納されている地図データを取得する。地図データ取得部23は、自車位置取得部21で取得する自車の車両位置に応じて、自車周辺の地図データを取得してもよい。地図データ取得部23は、周辺監視センサ5の検出範囲よりも広い範囲についての地図データを取得することが好ましい。
【0049】
通信情報取得部24は、通信モジュール7で自車の周辺車両の情報を取得する。周辺車両の情報としては、例えば周辺車両の識別情報,速度の情報,加速度の情報,ヨーレートの情報,位置情報等が挙げられる。識別情報は、例えば車両ID等の個々の車両を識別するための情報である。識別情報には、例えば自車が該当する車種,車格等の所定の区分を示す分類情報を含んでいてもよい。
【0050】
走行環境認識部25は、自車位置取得部21で取得する自車の車両位置、センシング情報取得部22で取得するセンシング情報、地図データ取得部23で取得する地図データ、通信情報取得部24で取得する周辺車両の情報等から、自車の走行環境を認識する。一例として、走行環境認識部25は、これらの情報を用いて、自車の周辺物体の位置,形状,移動状態等であったり、自車の周辺の路面標示の位置等であったりを認識し、実際の走行環境を再現した仮想空間を生成する。この走行環境認識部25が障害物特定部に相当する。
【0051】
走行環境認識部25では、センシング情報取得部22で取得したセンシング情報から、自車の周辺物体との距離,自車に対する周辺物体の相対速度,周辺物体の形状及びサイズ等も走行環境として認識するものとすればよい。また、走行環境認識部25は、通信情報取得部24によって周辺車両の情報を取得できる場合には、この周辺車両の情報を用いて走行環境を認識する構成としてもよい。例えば、周辺車両の位置,速度,加速度,ヨーレート等の情報から、周辺車両の位置,速度,加速度,ヨーレート等を認識すればよい。また、周辺車両の識別情報から、周辺車両の最大減速度,最大加速度等の性能情報を認識してもよい。一例として、自動運転装置2の不揮発性メモリに識別情報と性能情報との対応関係を予め格納しておくことで、この対応関係を参照して識別情報から性能情報を認識する構成とすればよい。なお、識別情報として前述の分類情報を用いてもよい。
【0052】
走行環境認識部25は、周辺監視センサ5で検出する周辺物体が移動体であるか静止物体であるかを区別して認識することが好ましい。また、周辺物体の種別も区別して認識することが好ましい。周辺物体の種別については、例えば周辺監視カメラの撮像画像にパターンマッチングを行うことで種別を区別して認識すればよい。種別については、例えばガードレール等の構造物、路上落下物、歩行者、自転車、自動二輪車、自動車等を区別して認識すればよい。周辺物体の種別は、周辺物体が自動車の場合には、車格,車種等とすればよい。周辺物体が移動体であるか静止物体であるかについては、周辺物体の種別に応じて認識すればよい。例えば、周辺物体の種別が構造物,路上落下物の場合は静止物体と認識すればよい。周辺物体の種別が歩行者,自転車,自動二輪車,自動車の場合は移動体と認識すればよい。なお、駐車車両のように直ちに移動する可能性の低い物体は、静止物体として認識してもよい。駐車車両については、停止しており、且つ、画像認識によってブレーキランプが点灯していないことが認識できること等から認識すればよい。
【0053】
自動運転部26は、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26は、図1に示すように、走行計画部27、確認部28、及び自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。
【0054】
走行計画部27は、走行環境認識部25で認識する走行環境を用いて、自動運転によって自車を走行させるための走行計画を生成する。例えば、中長期の走行計画として、経路探索処理を行って、自車位置から目的地へ向かわせるための推奨経路を生成する。また、中長期の走行計画に沿った走行を行うための短期の走行計画として、車線変更の走行計画、レーン中心を走行する走行計画、先行車に追従する走行計画、及び障害物回避の走行計画等が生成される。
【0055】
走行計画部27では、例えば、認識した走行区画線から一定距離又は中央となる経路を走行計画として生成したり、認識した先行車の挙動又は走行軌跡に沿う経路を走行計画として生成したりすればよい。また、走行計画部27は、同一進行方向の隣接車線の空いた領域に自車を車線変更させる経路を走行計画として生成すればよい。走行計画部27は、障害物を回避して走行を維持する経路を走行計画として生成したり、障害物の手前で停車する減速を走行計画として生成したりすればよい。走行計画部27は、機械学習等によって最適と判断される走行計画を生成する構成としてもよい。走行計画部27は、短期の走行計画として、例えば1以上の経路を算出する。例えば、走行計画部27は、短期の走行計画として、算出した経路における速度調整のための加減速の情報も含む構成とすればよい。
【0056】
一例として、走行計画部27は、走行環境認識部25で認識した前方障害物が、自車の走行を妨げる前方障害物(以下、走行阻害物)である場合に、後述する確認部28で安全性を評価しつつ、状況に応じた走行計画を生成すればよい。以下では、走行阻害物を認識して特定した場合を例に挙げて説明を続ける。なお、走行阻害物とは、自車の走行車線内の路上落下物,駐車車両であってもよいし、自車の走行車線内の先行車であってもよい。走行阻害物に該当する先行車とは、渋滞路でないのにもかかわらず、平均車速が走行路の速度規制値と比較して大幅に低い先行車等とすればよい。なお、狭路については、徐行が必要な場合も多いため、先行車を走行阻害物としない構成とすることが好ましい。以下では、自車の走行路が中央線のない対面通行の道路に該当する場合には、先行車といった移動体を走行阻害物と特定せず、駐車車両等の静止物体を走行阻害物と特定するものとして説明を行う。
【0057】
例えば、走行計画部27は、走行環境認識部25で走行阻害物を認識して特定した場合に、自車の走行路に応じた処理を行う。例えば、走行計画部27は、自車の走行路が中央線のない対面通行の道路に該当する場合には、走行阻害物との間に閾値以上の左右方向の距離を確保して、自車の走行車線内を走行できるか否かを判断すればよい。ここで言うところの閾値とは、後述する安全距離として設定可能な下限値とすればよい。下限値は、例えば自車の速度を最低限度に低く抑えて走行する際に設定される安全距離の値等とすればよい。言い換えると、走行計画部27は、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して、自車の走行車線内を走行できるか否かを判断する。なお、閾値は予め設定される固定値としてもよいし、走行阻害物が移動体の場合にはその移動体の挙動に応じて変化する値としてもよい。
【0058】
一例として、走行計画部27は、自車の走行車線の車線幅のうちの走行阻害物で塞がれていない部分の幅が、自車の車幅に前述の閾値を加算した値よりも大きい場合に、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できると判断すればよい。走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できると判断した場合には、自車の走行車線を維持して対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成すればよい。
【0059】
一方、自車の走行車線の車線幅のうちの走行阻害物で塞がれていない部分の幅が、自車の車幅に前述の閾値を加算した値以下の場合に、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断すればよい。自車の車幅の値については、自動運転装置2の不揮発性メモリに予め格納しておいた値を用いる構成とすればよい。走行車線の車線幅については、地図データ取得部23で取得する地図データから特定する構成とすればよい。走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断した場合には、停車する走行計画を生成すればよい。これは、自車の走行路が中央線のない対面通行の道路に該当する場合において、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断する場合には、通行が可能でないためである。この場合、例えば自動運転装置2が自動運転から手動運転へ運転交代させる構成とすればよい。なお、自動運転から手動運転に切り替える場合には、運転交代を要求する通知を事前に行った上で手動運転に移行する構成とすればよい。
【0060】
走行計画部27は、自車の走行路が片側複数車線の道路に該当する場合には、自車の走行車線と同方向の隣接車線に車線変更する走行計画を生成すればよい。走行計画部27は、自車の走行路が片側一車線の道路に該当する場合には、前述したのと同様にして、走行阻害物との間に閾値以上の左右方向の距離を確保して、自車の走行車線内を走行できるか否かを判断すればよい。走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できると判断した場合には、自車の走行車線を維持しつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成すればよい。一方、走行計画部27は、自車の走行路が片側一車線の道路に該当する場合であって、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行できないと判断した場合には、自車の走行車線をはみ出して対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成すればよい。
【0061】
確認部28は、走行計画部27で生成する走行計画の安全性を評価する。一例として、確認部28は、走行計画の安全性の評価をより容易にするために、安全運転の概念を数式化した数学的公式モデルを用いて、走行計画の安全性を評価すればよい。確認部28は、自車と周辺物体との対象間の距離(以下、対象間距離)が、予め設定された数学的公式モデルによって算出される、対象間の安全性を評価するための基準となる距離(以下、安全距離)以上か否かで安全性を評価すればよい。対象間距離は、一例として、自車の前後方向及び左右方向の距離とすればよい。
【0062】
なお、数学的公式モデルは、所定の安全性を担保するためのモデルとして、合理的な人々が同意するような健全性を有するモデルであってよい。数学的公式モデルは、適切な行動を取りさえすれば、交通ルールに対応した運転ルールに自車が従った状態を維持可能であることを意味する。ここで言うところの適切な行動の一例としては、合理的な力での制動が挙げられる。合理的な力での制動とは、例えば、自車にとって可能な最大減速度での制動等が挙げられる。数学的公式モデルによって算出される安全距離は、自車と障害物との近接をさけるために自車が障害物との間に最低限空けるべき距離と言い換えることができる。
【0063】
確認部28は、安全距離設定部281及び範囲特定部282をサブ機能ブロックとして備える。安全距離設定部281は、前述した数学的公式モデルを用いて安全距離を算出し、算出した安全距離を、安全距離として設定する。安全距離設定部281は、少なくとも車両の挙動の情報を用いて安全距離を算出して設定するものとする。安全距離設定部281は、数学的公式モデルとしては、例えばRSS(Responsibility Sensitive Safety)モデルを用いてもよい。
【0064】
安全距離設定部281は、例えば自車の前方及び左右方向の安全距離を設定する。安全距離設定部281は、基準として、自車の前方については、自車の挙動の情報から、例えば自車が最短で停止できる距離を安全距離と算出すればよい。具体例として、自車の速度,最大加速度,最大減速度,応答時間から、自車が現在の車速から応答時間の間に最大加速度で前方に走行した後、最大減速度で減速して停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。ここでの自車の速度,最大加速度,最大減速度は、自車の前後方向についてのものとする。ここでの応答時間は、自動運転によって自車を停止させる際の、制動装置への動作の指示から動作開始までの時間とすればよい。一例として、自車の最大加速度,最大減速度,応答時間については、自動運転装置2の不揮発性メモリに予め格納しておくことで特定可能とすればよい。安全距離設定部281は、自車の前方に移動体は認識していないが静止物体を認識している場合も、この基準としての前方の安全距離を設定すればよい。
【0065】
安全距離設定部281は、自車の前方に移動体を認識している場合は、自車とこの前方の移動体(以下、前方移動体)との挙動の情報から、自車と前方移動体とが接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。ここでは、移動体が自動車である場合を例に挙げて説明を行う。前方移動体としては、先行車,対向車等が挙げられる。具体例として、自車と前方移動体との移動方向が逆方向の場合には、自車と前方移動体との速度,最大加速度,最大減速度,応答時間から、自車と前方移動体とがそれぞれ現在の速度から応答時間の間に最大加速度でそれぞれの前方に走行した後、最大減速度で減速してお互いに接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。一方、自車と前方移動体との移動方向が順方向の場合には、前方移動体が現在の速度から最大減速度で減速するのに対して、自車が現在の速度から応答時間の間に最大加速度で前方に走行した後に最大減速度で減速してお互いに接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。
【0066】
移動体の速度,最大加速度,最大減速度,応答時間は、通信情報取得部24によって取得できる場合には、通信情報取得部24によって取得した情報を安全距離設定部281が用いる構成とすればよい。また、走行環境認識部25で認識できる情報については、走行環境認識部25で認識した情報を用いればよい。他にも、移動体の最大加速度,最大減速度,応答時間について、一般的な車両の値を自動運転装置2の不揮発性メモリに予め格納しておくことで、この一般的な車両の値を安全距離設定部281が用いる構成としてもよい。
【0067】
また、安全距離設定部281は、自車の後方に移動体を認識している場合は、自車とこの後方の移動体(以下、後方移動体)との挙動の情報から、自車と後方移動体とが接触せずに停止できる距離を後方の安全距離と算出してもよい。後方移動体としては、後続車,自車より後方の隣接車線の走行車両(つまり、後側方車)が挙げられる。安全距離設定部281は、例えば前方の安全距離を算出するのと同様にして、後方移動体にとっての安全距離を推算することで、自車の後方の安全距離を設定すればよい。
【0068】
安全距離設定部281は、基準として、自車の左右方向については、自車の挙動情報から、自車が左右方向の速度を最短で0にできるまでに左右方向に移動する距離を安全距離と算出すればよい。例えば、自車の左右方向の速度,最大加速度,最大減速度,応答時間から、自車が現在の左右方向の速度から応答時間の間に最大加速度で左右方向に移動した後、最大減速度で減速して左右方向の速度が0にできるまでに自車が左右方向に移動する距離を、左右方向の安全距離と算出すればよい。ここでの応答時間は、自動運転によって自車を操舵させる際の、操舵装置への動作の指示から動作開始までの時間とすればよい。安全距離設定部281は、自車の左右方向に移動体は認識していないが静止物体を認識している場合も、この基準としての左右方向の安全距離を設定すればよい。
【0069】
安全距離設定部281は、自車の左右方向に移動体を認識している場合は、移動体が存在する方向については、自車と移動体との挙動の情報から、自車と移動体とが接触せずにお互いの左右方向の速度が0にできるまでに左右方向に移動する距離をその方向の安全距離と算出すればよい。具体例として、自車と移動体との速度,最大加速度,最大減速度,応答時間から、自車と移動体とがそれぞれ現在の速度から応答時間の間に最大加速度で左右方向それぞれに走行した後、最大減速度で減速してお互いに接触せずに停止できる距離を左右方向の安全距離と算出すればよい。
【0070】
範囲特定部282は、対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成する場合に、安全距離設定部281で設定している安全距離を自車が対向車との間に少なくとも確保して前方障害物の側方の通過を完了するためにその対向車が位置するべきでないと推定される範囲(以下、必要範囲)を特定する。言い換えると、必要範囲は、その範囲内に対向車が位置しなければ、自車が走行阻害物の側方の通過を完了するまで自車の安全距離内に対向車が侵入せずに済むと推定される範囲である。
【0071】
範囲特定部282は、自車が走行阻害物の側方の通過を完了するまでに、自車から安全距離設定部281で設定している安全距離までの範囲が占めると推定される領域を必要範囲と特定すればよい。自車が走行阻害物の側方の通過を完了するまでの自車の軌跡については、走行計画部27で生成する走行阻害物の側方を通過する走行計画から推定すればよい。安全距離については、自車と対向車との挙動の情報から、前述したのと同様にして設定した値を、自車が走行阻害物の側方の通過を完了するまでの固定の値と仮定して用いればよい。
【0072】
範囲特定部282は、走行環境認識部25で障害物として自車の対向車を認識してこの対向車を特定できるか否かに応じた処理を行う構成とすればよい。この構成について、図2図3を用いて説明を行う。図2図3のHVは自車、PVは走行阻害物、Rrは必要範囲を示す。また、図2のOVが対向車を示す。
【0073】
範囲特定部282は、図2に示すように、走行環境認識部25で障害物として自車HVの対向車OVを認識してこの対向車OVを特定できる場合には、特定した自車の直近の対向車OVの情報を用いて必要範囲Rrを特定すればよい。自車の直近の対向車OVの情報は、センシング情報取得部22で取得したセンシング情報に基づくものであってもよいし、通信情報取得部24で取得する周辺車両の情報に基づくものであってもよい。この場合、範囲特定部282は、自車HVと、特定できている直近の対向車OVとの挙動の情報から算出する実際の対向車OVに対する安全距離を用いて必要範囲Rrを特定する。
【0074】
一方、範囲特定部282は、図3に示すように、走行環境認識部25で障害物として自車HVの対向車を認識しておらず、対向車を特定できていない場合には、予め設定される仮想的な対向車の情報を用いて必要範囲Rrを特定すればよい。この仮想的な対向車の情報は、例えば速度,最大加速度,最大減速度,応答時間等とすればよい。仮想的な対向車の情報としては、一般的な車両の値を自動運転装置2の不揮発性メモリに予め格納しておくことで、この一般的な車両の値を用いる構成とすればよい。なお、速度については、自車の走行路に応じた値とするために、例えば自車の走行路の速度規制値と同じ値を用いてもよい。この場合、範囲特定部282は、自車HVと、仮想的な対向車との挙動の情報から算出する仮想的な対向車に対する安全距離を用いて必要範囲Rrを特定する。
【0075】
確認部28は、対象間距離が、安全距離設定部281で設定された安全距離以上の場合に、走行計画部27で生成する走行計画の安全性有りと評価すればよい。一方、確認部28は、対象間距離が、この安全距離未満の場合に、走行計画部27で生成する走行計画の安全性無しと評価すればよい。確認部28は、安全性有りと評価したことをもとに、走行計画を自動運転機能部29に出力すればよい。一方、確認部28は、安全性無しと評価した走行計画については、自動運転機能部29に出力しない構成とすればよい。
【0076】
確認部28は、例えば安全性有りと評価されるように、安全距離設定部281で設定する安全距離に応じて走行計画を修正してもよいし、走行計画を走行計画部27に修正させてもよい。例えば、走行計画部27で複数の経路の候補が生成される場合に、安全距離を満たす経路を選択する等してもよい。また、安全距離を満たす経路が存在しない場合には、例えば安全性有りと評価される安全距離になるまで自車の速度を下げるように走行計画を修正する等してもよい。他にも、安全距離を満たす経路が存在しない場合に、一時停車するように走行計画を修正して、安全距離を満たす経路が存在する状況になるまで待ってもよい。
【0077】
また、確認部28は、走行計画部27で対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成する場合であって、範囲特定部282で特定する必要範囲に対向車が存在しない場合には、この走行計画を自動運転機能部29に出力する。一方、確認部28は、走行計画部27で対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成する場合であって、範囲特定部282で特定する必要範囲に対向車が存在する場合には、この走行計画を自動運転機能部29に出力しない。一例として、一時停車するように走行計画を修正すればよい。そして、範囲特定部282で特定する必要範囲に対向車が存在しない状況になるまで待つ等すればよい。範囲特定部282で特定する必要範囲に対向車が存在するか否かは、走行環境認識部25での走行環境の認識結果から確認部28が判断すればよい。
【0078】
自動運転機能部29は、確認部28から出力される走行計画に従い、自車の加減速及び/又は操舵を車両制御ECU6に自動で行わせることで、運転者による運転操作の代行(つまり、自動運転)を行わせればよい。自動運転機能部29は、確認部28で自動運転に用いると評価された走行計画に沿った自動運転を行わせる。走行計画が経路の走行の場合には、この経路に沿った自動運転を行わせる。走行計画が停車,減速の場合には、停車,減速を自動で行わせる。自動運転機能部29は、確認部28から出力される走行計画に従い自動運転を行わせることで、自車と周辺物体との近接を避けつつ自動運転を行わせる。
【0079】
<自動運転装置2での自動運転関連処理>
ここで、図4のフローチャートを用いて、自動運転装置2での自動運転に関する処理(以下、自動運転関連処理)の流れの一例について説明を行う。コンピュータによって自動運転関連処理に含まれるステップが実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0080】
図4のフローチャートは、自車の内燃機関又はモータジェネレータを始動させるためのスイッチ(以下、パワースイッチ)がオンになって自動運転が開始される場合に開始する構成とすればよい。また、自車の手動運転と自動運転とを切り替えることができる構成の場合には、自動運転を行う設定となっている状態でパワースイッチがオンされる場合に開始する構成とすればよい。他にも、手動運転中に自動運転を行う設定がオンに切り替えられて自動運転に切り替わる場合に開始する構成としてもよい。図4のフローチャートでは、走行環境認識部25が自車の走行環境を逐次認識しているものとする。また、先行車といった移動体を走行阻害物と特定しない場合を例に挙げて説明を行う。
【0081】
まず、ステップS1では、走行環境認識部25で走行阻害物を認識した場合(S1でYES)には、ステップS2に移る。一方、走行環境認識部25で走行阻害物を認識していない場合(S1でNO)には、ステップS4に移る。走行阻害物は、前述したように、自車の走行を妨げる前方障害物である。
【0082】
ステップS2では、例えば走行計画部27が、走行阻害物との間に閾値以上の左右方向の距離を確保して、自車の走行車線内を走行できる(つまり、車線内走行可能)か否かを判断する。そして、車線内走行可能と判断する場合(S2でYES)には、ステップS3に移る。一方、車線内走行可能でないと判断する場合(S2でNO)には、ステップS5に移る。なお、車線内走行可能か否かの判断は、走行計画部27で行う構成に限らず、例えば確認部28等の自動運転装置2の他の機能ブロックで行う構成としてもよい。
【0083】
ステップS3では、自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路に該当する場合(S3でYES)には、ステップS8に移る。一方、自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路に該当しない場合(S3でNO)には、ステップS4に移る。ここでの自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路に該当しない場合とは、自車の走行路が片側複数車線若しくは片側一車線の道路である場合である。自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路に該当するか否かは、例えば走行環境認識部25で特定すればよい。
【0084】
ステップS4では、走行計画部27が、自車の走行車線を維持しつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成する。ここで、走行計画部27は、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を走行するために自車の減速が必要な場合には、必要な減速を行うように走行計画を生成する。そして、自動運転機能部29は、走行阻害物との間に左右方向の安全距離を確保して自車の走行車線内を自動で走行させ、ステップS14に移る。つまり、自動運転機能部29は、走行環境認識部25で側方の通過が必要な前方障害物を特定した場合であって、車線内走行可能であって、且つ、自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路に該当しない場合には、自車の走行車線を維持しつつ走行阻害物の側方を通過させる走行を自動で行わせる。
【0085】
ステップS5では、自車の走行路が片側複数車線の道路に該当する場合(S5でYES)には、ステップS6に移る。一方、自車の走行路が片側複数車線の道路に該当しない場合(S5でNO)には、ステップS7に移る。自車の走行路が片側複数車線の道路に該当するか否かは、例えば走行環境認識部25で特定すればよい。
【0086】
ステップS6では、走行計画部27が、自車の走行車線と同方向の隣接車線に車線変更する走行計画を生成する。ここで、走行計画部27は、自車と後側方車との距離が、安全距離設定部281で設定する後側方車との安全距離未満となる場合には、後側方車との安全距離以上となるまで待ってから車線変更するように走行計画を生成すればよい。そして、自動運転機能部29は、自車の走行車線と同方向の隣接車線への車線変更を自動で行わせ、ステップS14に移る。つまり、自動運転機能部29は、走行環境認識部25で側方の通過が必要な前方障害物を特定した場合であって、且つ、自車の走行路が片側複数車線である場合には、自車の走行車線と同方向の隣接車線への車線変更を自動で行わせる。
【0087】
ステップS7では、自車の走行路が片側一車線の道路に該当する場合(S7でYES)には、ステップS8に移る。一方、自車の走行路が片側一車線の道路に該当しない場合(S7でNO)には、ステップS13に移る。ここでの自車の走行路が片側一車線の道路に該当しない場合とは、自車の走行路が中央線なしの対面通行若しくは一方通行の道路である場合である。自車の走行路が片側一車線の道路に該当するか否かは、例えば走行環境認識部25で特定すればよい。
【0088】
ステップS8では、範囲特定部282が必要範囲を特定する。例えば範囲特定部282は、必要範囲を特定する時点で安全距離設定部281が設定している安全距離を自車が対向車との間に少なくとも確保して走行阻害物の側方の通過を完了するためにその対向車が位置するべきでないと推定される必要範囲を特定すればよい。
【0089】
ステップS9では、S8で特定する必要範囲に対向車が存在する場合(S9でYES)には、ステップS11に移る。一方、S8で特定する必要範囲に対向車が存在しない場合(S9でNO)には、ステップS10に移る。必要範囲に対向車が存在するか否かは、走行環境認識部25での走行環境の認識結果から例えば確認部28が判断すればよい。
【0090】
ステップS10では、走行計画部27が、走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成する。走行計画部27は、自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路である場合には、自車の走行車線を維持しつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成する。この走行計画は、必要範囲に対向車が存在せず、走行阻害物の側方の通過が完了するまで対向車が自車の安全距離に侵入しないと推定される走行計画である。つまり、自車の走行車線を維持して対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画にあたる。一方、走行計画部27は、自車の走行路が片側一車線の道路である場合には、自車の走行車線をはみ出して走行阻害物の側方を通過する走行計画を生成すればよい。この走行計画は、必要範囲に対向車が存在せず、走行阻害物の側方の通過が完了するまで対向車が自車の安全距離に侵入しないと推定される走行計画である。つまり、自車の走行車線をはみ出して対向車を避けつつ走行阻害物の側方を通過する走行計画にあたる。
【0091】
そして、S10では、自動運転機能部29が、走行阻害物の側方の通過を自動で行わせ、ステップS14に移る。つまり、自動運転機能部29は、走行環境認識部25で側方の通過が必要な前方障害物を特定した場合であって、車線内走行可能であって、自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路に該当する場合であって、且つ、必要範囲に対向車が存在しない場合には、自車の走行車線を維持しつつ走行阻害物の側方の通過を自動で行わせる。また、自動運転機能部29は、走行環境認識部25で側方の通過が必要な前方障害物を特定した場合であって、車線内走行可能でなく、自車の走行路が片側一車線の道路に該当する場合であって、且つ、必要範囲に対向車が存在しない場合には、自車の走行車線をはみ出させて走行阻害物の側方の通過を自動で行わせる。
【0092】
これによれば、走行阻害物の側方の通過中に自車の安全距離に対向車が進入しないと推定されるタイミングで走行阻害物の側方の通過を自動で行わせることが可能になる。よって、走行阻害物の側方の通過中に自車の安全距離を確保できなくなって自車が停止してしまう状況を回避することが可能になる。
【0093】
ステップS11では、走行計画部27が、自車を一時停車させる走行計画を生成する。そして、自動運転機能部29は、走行阻害物の側方の通過を自動で行わせず、自車を一時停車させて、S12に移る。つまり、自動運転機能部29は、走行環境認識部25で側方の通過が必要な前方障害物を特定した場合であって、車線内走行可能であって、自車の走行路が中央線なしの対面通行の道路に該当する場合であって、且つ、必要範囲に対向車が存在する場合には、走行阻害物の側方の通過を自動で行わせず、自車を一時停車させる。また、自動運転機能部29は、走行環境認識部25で側方の通過が必要な前方障害物を特定した場合であって、車線内走行可能でなく、自車の走行路が片側一車線の道路に該当する場合であって、且つ、必要範囲に対向車が存在する場合には、走行阻害物の側方の通過を自動で行わせず、自車を一時停車させる。
【0094】
ステップS12では、S11で一時停車を開始してからの経過時間が規定時間に達するタイムアウトの場合(S12でYES)には、ステップS13に移る。一方、タイムアウトでない場合(S12でNO)には、S8に戻って範囲特定部282が必要範囲を再度特定し直し、処理を繰り返す。ここで言うところの規定時間は、任意に設定可能である。つまり、自動運転機能部29は、走行環境認識部25で側方の通過が必要な静止物体としての前方障害物を特定した場合であって、必要範囲に対向車が存在する場合であって、且つ、自車の走行路が片側一車線の道路若しくは中央線なしの対面通行の道路に該当する場合には、自車を一時停車させ、範囲特定部282で再度特定した必要範囲に対向車が存在しなくなることをもとに、前方障害物の側方の通過を自動で行わせる。
【0095】
これにより、自動運転機能部29は、必要範囲に対向車が存在する場合であっても、必要範囲に対向車が存在しなくなるタイミングを待って、走行阻害物の側方の通過を自動で行わせることが可能になる。従って、走行阻害物の側方の通過中に自車の安全距離に対向車が進入しないと推定されるタイミングで走行阻害物の側方の通過を自動で行わせることが可能でない場合でも、走行阻害物の側方の通過中に自車の安全距離に対向車が進入しないと推定されるタイミングまで待って、走行阻害物の側方の通過を自動で行わせることが可能になる。
【0096】
ステップS13では、自動運転装置2が自動運転から手動運転へ運転交代させ、ステップS14に移る。これにより、自動運転で走行阻害物を避けた通行が困難な場合に、手動運転で走行阻害物を避けた通行が可能になる。なお、S13で自動運転から手動運転に運転交代させる構成に限らない。例えば、自車を遠隔操作可能なセンタとの通信が通信モジュール7を介して可能な場合には、S13でこのセンタに通知を行って、センタ側から自車を遠隔操作して走行阻害物を避けた通行を可能にする構成としてもよい。
【0097】
ステップS14では、自動運転関連処理の終了タイミングであった場合(S14でYES)には、自動運転関連処理を終了する。一方、自動運転関連処理の終了タイミングでなかった場合(S14でNO)には、S1に戻って処理を繰り返す。自動運転関連処理の終了タイミングの一例としては、自車のパワースイッチがオフになった場合,手動運転に切り替わった場合等がある。なお、図4のフローチャートはあくまで一例であって、処理の順番が一部入れ替わっても構わない。
【0098】
なお、図4のフローチャートでは、先行車といった移動体を走行阻害物と特定しない場合を例に挙げて説明を行ったが、先行車といった移動体を走行阻害物と特定する場合には、以下のようにすればよい。例えば、自車の走行路が、中央線のない対面通行の道路に該当する場合には、先行車といった移動体を走行阻害物と特定しない一方、片側複数車線,片側一車線の道路に該当する場合には、先行車といった移動体も駐車車両といった静止物体と同様に走行阻害物と特定すればよい。また、走行阻害物が移動体の場合、S11で自動運転機能部29が移動体である走行阻害物への追従を一定時間継続させた後、S14に移る構成とすればよい。
【0099】
<実施形態1のまとめ>
実施形態1の構成によれば、必要範囲に対向車が存在しない場合に、走行阻害物の側方の通過を自動で行わせることになる。必要範囲は、安全距離設定部281で設定している安全距離を自車が対向車との間に少なくとも確保して走行阻害物の側方の通過を完了するためにその対向車が位置するべきでないと推定される範囲であるので、必要範囲に対向車が存在しない場合には、対向車との間に安全距離を確保して走行阻害物の側方の通過を完了できると推定される。自車と障害物との近接をさけるために自車が障害物との間に最低限空けるべき安全距離を対向車との間に確保して走行阻害物の側方の通過を完了できる場合には、安全距離を確保するために通過中に制動をかけなくてもよくなる。よって、走行阻害物の側方の通過中に停止してしまう状況を回避することが可能になる。その結果、自動運転時に自車と障害物との近接をさけるために自車から最低限空けるべき安全距離を設定する場合であっても、交通流をより妨げにくくしつつ前方の障害物の側方の通過が可能になる。
【0100】
(実施形態2)
実施形態1では、走行計画部27で生成した走行計画の安全性を確認部28で評価する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、走行計画部27が確認部28の機能も有し、確認部28で評価するのと同様な安全性を満たすように走行計画を生成する構成としてもよい。
【0101】
(実施形態3)
実施形態1では、走行環境認識部25が走行阻害物を認識して特定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、走行阻害物の認識は周辺監視センサ5の制御ユニットで行い、周辺監視センサ5での認識結果から走行環境認識部25が走行阻害物を特定する構成としてもよい。また、撮像画像からの障害物の認識等の走行環境の一部の認識を周辺監視センサ5の制御ユニットで行う構成としてもよい。
【0102】
(実施形態4)
<車両用システム1aの概略構成>
以下、本開示の実施形態4について図面を用いて説明する。図5に示す車両用システム1aは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態4では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1aを用いる構成とすればよい。
【0103】
車両用システム1aは、図5に示すように、自動運転装置2a、ロケータ3、地図DB4a、周辺監視センサ5a、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1aを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。ロケータ3、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8については、例えば実施形態1で説明したのと同様とすればよい。
【0104】
図DB4aは、地図データのうちの道路形状のデータとして、例えば縦断勾配のデータも含む点を除けば、実施形態1の地図DB4と同様である。縦断勾配のデータは、少なくとも道路上の地点別のデータとすればよく、例えば地図データの観測点別とすればよい。一例として、横断勾配のデータは、正の値が上りを示し、負の値が下りを示すものとすればよい。
【0105】
周辺監視センサ5aは、少なくとも自車前方の所定範囲を検出範囲とする点を除けば、実施形態1の周辺監視センサ5と同様である。周辺監視センサ5aとしては、カメラを用いてもよいし、ミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等の測距センサを用いてもよい。周辺監視センサ5aの検出範囲は視野と言い換えてもよい。また、周辺監視センサ5aがカメラの場合には画角と言い換えてもよい。周辺監視センサ5aが走査型の測距センサの場合には走査角度と言い換えてもよい。自車前方の検出範囲(以下、前方検出範囲)は、後述する規定範囲よりも少なくとも水平方向に広い範囲であればよい。なお、前方検出範囲は、1種類のセンサによるものに限らない。例えば、前方検出範囲は、検出範囲の異なる複数種類のセンサの検出範囲が組み合わさったものであってもよい。
【0106】
自動運転装置2aは、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。なお、自動運転装置2aの詳細については、以下で述べる。
【0107】
<自動運転装置2aの概略構成>
続いて、図5を用いて、自動運転装置2aの概略構成を説明する。図5に示すように、自動運転装置2aは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22a、地図データ取得部23a、通信情報取得部24、走行環境認識部25a、及び自動運転部26aを機能ブロックとして備えている。なお、自動運転装置2aが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2aが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2aが車載装置に相当する。
【0108】
自車位置取得部21及び通信情報取得部24は、実施形態1の自車位置取得部21及び通信情報取得部24と同様である。センシング情報取得部22aは、周辺監視センサ5aで逐次検出する検出結果(つまり、センシング情報)を取得する。地図データ取得部23aは、地図DB4aに格納されている地図データを取得する。地図データ取得部23aは、自車位置取得部21で取得する自車の車両位置に応じて、自車周辺の地図データを取得してもよい。地図データ取得部23aは、周辺監視センサ5aの検出範囲よりも広い範囲についての地図データを取得することが好ましい。
【0109】
走行環境認識部25aは、自車位置取得部21で取得する自車の車両位置、センシング情報取得部22aで取得するセンシング情報、地図データ取得部23aで取得する地図データ、通信情報取得部24で取得する周辺車両の情報等から、自車の走行環境を認識する。一例として、走行環境認識部25aは、これらの情報を用いて、自車の周辺物体の位置,形状,大きさ,移動状態であったり、自車の周辺の路面標示の位置であったりを認識し、実際の走行環境を再現した仮想空間を生成する。
【0110】
走行環境認識部25aは、周辺監視センサ5aで検出する周辺物体が移動体であるか静止物体であるかを区別して認識することが好ましい。また、走行環境認識部25aは、周辺物体の種別も区別して認識することが好ましい。周辺物体の種別については、例えば周辺監視センサ5aにカメラを含む場合には、カメラでの撮像画像にパターンマッチングを行うことで種別を区別して認識すればよい。種別については、例えばガードレール等の構造物、路上落下物、歩行者、自転車、自動二輪車、自動車等を区別して認識すればよい。周辺物体の種別は、周辺物体が自動車の場合には、車格,車種等とすればよい。周辺物体が移動体であるか静止物体であるかについては、周辺物体の種別に応じて認識すればよい。例えば、周辺物体の種別が構造物,路上落下物の場合は静止物体と認識すればよい。周辺物体の種別が歩行者,自転車,自動二輪車,自動車の場合は移動体と認識すればよい。なお、駐車車両のように直ちに移動する可能性の低い物体は、静止物体として認識してもよい。駐車車両については、停止しており、且つ、画像認識によってブレーキランプが点灯していないことが認識できること等から認識すればよい。
【0111】
走行環境認識部25aでは、センシング情報取得部22aで取得したセンシング情報から、少なくとも前方検出範囲内の周辺物体及び路面標示を認識する。走行環境認識部25aでは、センシング情報取得部22aで取得したセンシング情報から、自車の周辺物体との距離,自車に対する周辺物体の相対速度,周辺物体の形状及び大きさ等も走行環境として認識するものとすればよい。
【0112】
また、走行環境認識部25aは、通信情報取得部24によって周辺車両の情報を取得できる場合には、この周辺車両の情報を用いて走行環境を認識する構成としてもよい。例えば、周辺車両の位置,速度,加速度,ヨーレート等の情報から、周辺車両の位置,速度,加速度,ヨーレート等を認識すればよい。また、周辺車両の識別情報から、車両の大きさを認識したり、最大減速度,最大加速度等の性能情報を認識したりしてもよい。車両の大きさは、車高,車幅,車長等の大きさの値自体であってもよいし、車格といったこれらの値の規模の異なる区分を示すものであってもよい。
【0113】
走行環境認識部25aは、先行車特定部251a及び坂特定部252aをサブ機能ブロックとして備えている。先行車特定部251aは、自車の先行車の大きさを特定する。一例として、自車の先行車については、走行環境認識部25aが、自車の走行車線と同一車線に認識している直近の前方車両を先行車と認識すればよい。先行車特定部251aは、センシング情報取得部22aで取得したセンシング情報から先行車の大きさを特定できる場合には、このセンシング情報から先行車の大きさを特定すればよい。また、先行車特定部251aは、通信情報取得部24によって先行車から取得する情報を用いて先行車の大きさを特定できる場合には、この情報から先行車の大きさを特定すればよい。
【0114】
先行車特定部251aは、走行環境認識部25aで認識した先行車の車格を先行車の大きさとして特定してもよいし、走行環境認識部25aで認識した先行車の車高,車幅を先行車の大きさとして特定してもよい。先行車特定部251aは、走行環境認識部25aで認識した先行車の車種,車格といった分類をもとに、この分類と車高,車幅等の値との対応関係を参照して先行車の車高,車幅等の値を先行車の大きさとして特定してもよい。この場合、この対応関係を予め自動運転装置2aの不揮発性メモリに格納しておくことで、先行車特定部251aが利用可能とすればよい。
【0115】
先行車特定部251aで特定する先行車の大きさは、先行車の車幅におおよその相関を少なくとも有しているものとする。先行車特定部251aで特定する先行車の大きさは、車幅であることが好ましいが、車高,車長,車格等であっても車幅におおよその相関を有しているので、車高,車長,車格等としてもよい。
【0116】
坂特定部252aは、自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定する。坂特定部252aは、例えば地図データ取得部23aで取得する地図データのうちの自車の走行路の縦断勾配のデータから、自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定すればよい。例えば、自車の走行路の縦断勾配が、平坦路と坂道とを区別するための閾値以上の場合に、自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定すればよい。一方、自車の走行路の縦断勾配が、この閾値未満の場合には、自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定しなければよい。坂特定部252aは、自車の走行路が坂道であることを特定すると言い換えることもできる。
【0117】
坂特定部252aは、自車の走行路が上り勾配か下り勾配かを区別して特定してもよいが、区別せずに特定しても構わない。自車の走行路が上り勾配か下り勾配かを区別せずに、自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定する場合には、区別しない分だけ処理負荷を低減することが可能になる。坂特定部252aは、自車の走行路が上り勾配か下り勾配かも区別して特定する場合には、例えば横断勾配の値の正負から区別して特定すればよい。
【0118】
自動運転部26aは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26aは、図5に示すように、走行計画部27a、確認部28a、及び自動運転機能部29aをサブ機能ブロックとして備えている。
【0119】
走行計画部27aは、走行環境認識部25aで認識する走行環境を用いて、自動運転によって自車を走行させるための走行計画を生成する。例えば、中長期の走行計画として、経路探索処理を行って、自車位置から目的地へ向かわせるための推奨経路を生成する。また、中長期の走行計画に沿った走行を行うための短期の走行計画として、車線変更の走行計画、レーン中心を走行する走行計画、先行車に追従する走行計画、障害物回避の走行計画等が生成される。走行計画部27aでの走行計画の生成は、例えば、認識した走行区画線から一定距離又は中央となる経路を算出したり、認識した先行車の挙動又は走行軌跡に沿うように経路を算出したりして生成すればよい。また、走行計画部27aでの走行計画の生成は、機械学習等によって最適と判断される経路を算出することで行う構成としてもよい。走行計画部27aは、短期の走行計画として、1以上の経路を算出する。例えば、走行計画部27aは、短期の走行計画として、算出した経路における速度調整のための加減速の情報も含む構成とすればよい。
【0120】
確認部28aは、走行計画部27aで生成する走行計画の安全性を評価する。一例として、確認部28aは、走行計画の安全性の評価をより容易にするために、実施形態1で述べた数学的公式モデルを用いて、走行計画の安全性を評価すればよい。確認部28aは、自車と周辺物体との対象間の距離(以下、対象間距離)が、予め設定された数学的公式モデルによって算出される、対象間の安全性を評価するための基準となる距離(以下、安全距離)以上か否かで安全性を評価すればよい。対象間距離は、一例として、自車の前後方向及び左右方向のうちの少なくとも前方の距離とすればよい。
【0121】
確認部28aは、安全距離設定部281a及び安全距離調整部283aをサブ機能ブロックとして備える。安全距離設定部281aは、実施形態1の安全距離設定部281と同様とすればよい。安全距離設定部281aは、実施形態1と同様に、数学的公式モデルとしては、例えばRSS(Responsibility Sensitive Safety)モデルを用いればよい。安全距離設定部281aは、少なくとも自車の前方の安全距離を設定する。
【0122】
一例として、安全距離設定部281aは、基準として、自車の前方については、自車の挙動の情報から、例えば自車が最短で停止できる距離を安全距離と算出すればよい。具体例として、自車の速度,最大加速度,最大減速度,応答時間から、自車が現在の車速から応答時間の間に最大加速度で前方に走行した後、最大減速度で減速して停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。ここでの自車の速度,最大加速度,最大減速度は、自車の前後方向についてのものとする。ここでの応答時間は、自動運転によって自車を停止させる際の、制動装置への動作の指示から動作開始までの時間とすればよい。一例として、自車の最大加速度,最大減速度,応答時間については、自動運転装置2aの不揮発性メモリに予め格納しておくことで特定可能とすればよい。安全距離設定部281aは、自車の前方に移動体は認識していないが静止物体を認識している場合も、この基準としての前方の安全距離を設定すればよい。
【0123】
安全距離設定部281aは、自車の先行車を認識している場合は、自車と先行車との挙動の情報から、自車と先行車とが接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。具体例として、自車と先行車との速度,最大減速度,応答時間、及び自車の最大加速度から、先行車が現在の速度から最大減速度で減速するのに対して、自車が現在の速度から応答時間の間に最大加速度で前方に走行した後に最大減速度で減速してお互いに接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。
【0124】
移動体の速度,最大加速度,最大減速度,応答時間は、通信情報取得部24によって取得できる場合には、通信情報取得部24によって取得した情報を安全距離設定部281aが用いる構成とすればよい。また、走行環境認識部25aで認識できる情報については、走行環境認識部25aで認識した情報を用いればよい。他にも、先行車の最大加速度,最大減速度,応答時間について、一般的な車両の値を自動運転装置2aの不揮発性メモリに予め格納しておくことで、この一般的な車両の値を安全距離設定部281aが用いる構成としてもよい。
【0125】
安全距離調整部283aは、安全距離設定部281aで設定する安全距離を調整する。安全距離調整部283aは、坂特定部252aで自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定する場合には、自車の走行路が上り勾配か下り勾配かにかかわらず、先行車特定部251aで特定する先行車の大きさが大きくなるのに応じて、安全距離設定部281aで設定する安全距離を増加させる。つまり、自車の走行路が坂道の場合に、先行車特定部251aで特定する先行車の大きさが大きくなるのに応じて、安全距離設定部281aで設定する安全距離を増加させる。
【0126】
ここで、図6を用いて説明を行う。図6のAが上り勾配の場合の例であって,Bが下り勾配の場合の例である。図6のHVが自車,LVが先行車を示している。自車の走行路が図6のAに示すように上り勾配の場合には、先行車の大きさが大きいほど制動距離が短くなる傾向にある。これは、先行車の大きさが大きいほど車重が重くブレーキ性能も高い傾向にあるためである。よって、安全距離を多めに調整することで近接回避を行い易くすることが好ましい。一方、自車の走行路が下り勾配の場合には、先行車の大きさが大きいほど制動距離が長くなることもあれば、短くなることもある。これは、車重が重くなることで制動距離が長くなることもあれば、積載量が少ない場合はブレーキ性能によって制動距離が短くなることもあるためである。よって、リスク軽減の観点からは、制動距離が短くなる場合に合わせて、安全距離を多めに調整することで近接回避を行い易くすることが好ましい。
【0127】
先行車の大きさに応じて安全距離を増加させる量は、例えば、予め自動運転装置2の不揮発性メモリに格納しておいた先行車の大きさと安全距離の増加量との対応関係を用いて決定すればよい。安全距離の増加量は、例えば先行車の大きさに応じて制動距離が短くなるとした場合に推定される制動距離の減少度合いに比例して増加するようにすればよい。また、坂特定部252aで自車の走行路が上り勾配か下り勾配かを区別して特定する場合には、自車の走行路が上り勾配か下り勾配かで、先行車の大きさに応じて安全距離を増加させる量を変えてもよい。この場合は、先行車の大きさと安全距離の増加量との対応関係として、上り勾配用の対応関係と下り勾配用の対応関係とを使い分けることで実現すればよい。
【0128】
安全距離調整部283aは、先行車特定部251aで特定した先行車の大きさに応じて、安全距離設定部281aで設定する自車の前方の安全距離を、周辺監視センサ5aの検出範囲のうちの、先行車がおさまると推定される角度範囲(以下、先行車範囲)が規定範囲以下となる距離に調整する。ここで言うところの先行車範囲は、先行車の車幅に応じた範囲である。よって、先行車範囲は、例えば水平方向の角度範囲とすることがより好ましい。なお、車体が大きくなるのに応じて、車両の車幅と車高との両方が大きくなるといったおおよその関係が成り立つことも多いので、先行車範囲を鉛直方向の角度範囲とすることも可能である。
【0129】
以下では、図7に示すように、先行車範囲が水平方向の角度範囲である場合を例に挙げて説明を行う。なお、図7のHVが自車,LVが先行車,SRが周辺監視センサ5aの検出範囲,LVRが先行車範囲を示している。
【0130】
先行車の大きさが大きくなるのに応じて車幅も広くなるので、自車と先行車との車間距離が同一であっても、先行車の大きさが大きくなるのに応じて、先行車範囲も広くなる。しかしながら、先行車範囲が広くなると、周辺監視センサ5aの検出範囲のうちの先行車によって遮られる範囲が多くなり、前側方からの移動体の飛び出しの検出が遅れる可能性がある。これに対して、本実施形態では、先行車の大きさにかかわらず、先行車範囲を規定範囲以下に抑え、前側方からの移動体の飛び出しの検出が遅れる状況を生じにくくする。
【0131】
安全距離調整部283aは、先行車特定部251aで特定した先行車の大きさをもとに、先行車範囲が規定範囲以下となる距離(以下、大きさ対応距離)を、例えば、予め自動運転装置2の不揮発性メモリに格納しておいた先行車の大きさと大きさ対応距離との対応関係を用いて特定すればよい。先行車の大きさと大きさ対応距離との対応関係は、実験,シミュレーション等により予め求めておく構成とすればよい。
【0132】
一例として、規定範囲は、模範的なドライバの手動運転時において周辺監視センサ5aの検出範囲のうちに先行車がおさまる頻度が一定以上と推定される角度範囲とすればよい。ここで言うところの模範的なドライバとは、安全運転を行うドライバである。模範的なドライバとは、例えば、先行車の大きさが大きくなるのに応じて、先行車との車間距離を前側方からの移動体の飛び出しに対応できるように広げて運転するドライバである。例えば、規定範囲は、自車前方の20度~40度の角度範囲とすればよい。
【0133】
また、安全距離調整部283aは、大きさ対応距離が、安全距離設定部281aで設定している安全距離未満となる場合には、安全距離設定部281aで設定している安全距離を、先行車特定部251aで特定する先行車の大きさに応じて変更させないことが好ましい。言い換えると、安全距離調整部283aは、大きさ対応距離が、安全距離設定部281aで設定している安全距離未満となる場合には、安全距離設定部281aで設定している安全距離を、大きさ対応距離に調整させないことが好ましい。これは、大きさ対応距離が安全距離設定部281aで設定している安全距離未満になる場合であっても、この安全距離を減らす調整は好ましくないためである。
【0134】
一方、安全距離調整部283aは、大きさ対応距離が、安全距離設定部281aで設定している安全距離以上となる場合には、安全距離設定部281aで設定している安全距離を、先行車特定部251aで特定する先行車の大きさが大きくなるのに応じて増加させればよい。言い換えると、安全距離調整部283aは、大きさ対応距離が、安全距離設定部281aで設定している安全距離以上となる場合には、安全距離設定部281aで設定している安全距離を、大きさ対応距離に調整させればよい。これによれば、大きさ対応距離が安全距離設定部281aで設定している安全距離以上になる場合に限って、この安全距離を大きさ対応距離に調整させて、安全距離に先行車の大きさに応じた余裕を設けることが可能になる。
【0135】
なお、大きさ対応距離が安全距離設定部281aで設定する安全距離未満となり得ないシステムにおいては、大きさ対応距離が安全距離設定部281aで設定する安全距離未満か否かにかかわらず、安全距離を大きさ対応距離に調整させる構成としてもよい。他にも、大きさ対応距離が安全距離設定部281aで設定する安全距離未満となることを許容する場合にも、大きさ対応距離が安全距離設定部281aで設定する安全距離未満か否かにかかわらず、安全距離を大きさ対応距離に調整させる構成としてもよい。
【0136】
確認部28aは、対象間距離が、安全距離設定部281aで設定された安全距離以上の場合に、走行計画部27aで生成する走行計画の安全性有りと評価すればよい。一方、確認部28aは、対象間距離が、この安全距離未満の場合に、走行計画部27aで生成する走行計画の安全性無しと評価すればよい。確認部28aは、安全性有りと評価したことをもとに、走行計画を自動運転機能部29aに出力すればよい。一方、確認部28aは、安全性無しと評価した走行計画については、例えば安全性有りと評価される走行計画に修正して自動運転機能部29aに出力すればよい。つまり、走行計画部27aで算出する経路を自動運転に用いるか否かを、対象間距離が安全距離以上であるか否かによって評価する。
【0137】
自動運転機能部29aは、確認部28aから出力される走行計画に従い、自車の加減速及び/又は操舵を車両制御ECU6に自動で行わせることで、運転者による運転操作の代行(つまり、自動運転)を行わせればよい。自動運転機能部29aは、確認部28aで自動運転に用いると評価された走行計画に沿った自動運転を行わせる。自動運転機能部29aは、対象間距離が、安全距離設定部281aで設定される安全距離未満となる場合に、自車と障害物との近接を避けるための回避行動を自動で行わせる。一例として、自動運転機能部29aは、対象間距離が安全距離未満となる場合には、例えば自車の制動を行わせることで安全距離以上となるようにする。また、自動運転機能部29aは、安全距離設定部281aで設定される安全距離が安全距離調整部283aで調整される場合には、対象間距離が、安全距離調整部283aで調整された安全距離未満となる場合に、自車と障害物との近接を避けるための回避行動を自動で行わせる。
【0138】
<自動運転装置2aでの安全距離調整関連処理>
ここで、図8のフローチャートを用いて、自動運転装置2aでの安全距離の調整に関する処理(以下、安全距離調整関連処理)の流れの一例について説明を行う。コンピュータによって安全距離調整関連処理に含まれるステップが実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0139】
図8のフローチャートは、自車のパワースイッチがオンになって自動運転が開始される場合に開始する構成とすればよい。また、自車の手動運転と自動運転とを切り替えることができる構成の場合には、自動運転を行う設定となっている状態でパワースイッチがオンされる場合に開始する構成とすればよい。他にも、手動運転中に自動運転を行う設定がオンに切り替えられて自動運転に切り替わる場合に開始する構成としてもよい。図8のフローチャートでは、走行環境認識部25aが自車の走行環境を逐次認識しているものとする。
【0140】
まず、ステップS21では、走行環境認識部25aで先行車を認識している場合(S21でYES)には、ステップS23に移る。一方、走行環境認識部25aで先行車を認識していない場合(S21でNO)には、ステップS22に移る。
【0141】
ステップS22では、安全距離設定部281aが、自車の挙動の情報から、例えば自車が最短で停止できる距離を前方の安全距離と算出する。そして、算出した安全距離を自車の前方の安全距離として設定し、ステップS30に移る。一方、ステップS23では、安全距離設定部281aが、自車と先行車との挙動の情報から、自車と先行車とが接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出する。そして、算出した安全距離を自車の前方の安全距離として設定し、ステップS24に移る。
【0142】
ステップS24では、先行車特定部251aが、認識している先行車の大きさを特定する。S24の処理は、S23の処理よりも前に行う構成としてもよい。S24の処理は、走行環境認識部25aでの先行車の認識とともに行われる構成としてもよい。
【0143】
ステップS25では、自車の走行路が坂道の場合(S25でYES)には、ステップS26に移る。一方、自車の走行路が坂道でない場合(S25でNO)には、ステップS27に移る。一例として、坂特定部252aで自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定している場合を、自車の走行路が坂道の場合とすればよい。また、坂特定部252aで自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定していない場合を、自車の走行路が坂道でない場合とすればよい。
【0144】
ステップS26では、安全距離調整部283aが、S24で特定した先行車の大きさが大きくなるのに応じて、安全距離設定部281aで設定している安全距離を増加させる調整を行う。ステップS27では、安全距離調整部283aが、S24で特定した先行車の大きさをもとに、先行車範囲が規定範囲以下となる大きさ対応距離を特定する。
【0145】
ステップS28では、S27で特定した大きさ対応距離が、安全距離設定部281aで設定している安全距離以上となる場合(S28でYES)には、ステップS29に移る。一方、S27で特定した大きさ対応距離が、安全距離設定部281aで設定している安全距離未満となる場合(S28でNO)には、ステップS30に移る。S28で大きさ対応距離と比較する安全距離は、S25で自車の走行路が坂道の場合には、S23で設定した安全距離をS26で調整した安全距離となる。一方、S25で自車の走行路が坂道でない場合には、S28で大きさ対応距離と比較する安全距離は、S23で設定した安全距離となる。
【0146】
ステップS29では、安全距離調整部283aが、安全距離設定部281aで設定している安全距離を、S27で特定した大きさ対応距離に調整する。ステップS30では、安全距離調整関連処理の終了タイミングであった場合(S30でYES)には、安全距離調整関連処理を終了する。一方、安全距離調整関連処理の終了タイミングでなかった場合(S30でNO)には、S21に戻って処理を繰り返す。安全距離調整関連処理の終了タイミングの一例としては、自車のパワースイッチがオフになった場合,手動運転に切り替わった場合等がある。なお、図8のフローチャートはあくまで一例であって、処理の順番が一部入れ替わっても構わない。
【0147】
<実施形態4のまとめ>
実施形態4の構成によれば、先行車の大きさに応じて、設定する自車の前方の安全距離を、周辺監視センサ5aの検出範囲のうちの、先行車がおさまると推定される角度範囲である先行車範囲が規定範囲以下となる大きさ対応距離に調整することになる。安全距離は、車両と障害物との近接をさけるために車両が障害物との間に最低限空けるべき距離であるので、先行車との距離を、少なくとも先行車範囲が規定範囲以下とならない距離にすることが可能になる。先行車範囲が規定範囲以下とならないようにすると、先行車によって周辺監視センサ5aの検出範囲が塞がれる範囲を抑えることが可能になる。よって、先行車が、車幅の広い先行車であっても、前側方からの移動体の飛び出しを周辺監視センサ5aで検出しやすくすることが可能になる。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【0148】
(実施形態5)
実施形態4では、安全距離調整部283aが、坂特定部252aで自車の走行路が上り勾配及び下り勾配のいずれかであることを特定する場合には、先行車特定部251aで特定する先行車の大きさが大きくなるのに応じて、安全距離設定部281aで設定する安全距離を増加させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、坂特定部252aでの特定結果に応じた上述の処理を行わない構成としてもよい。この場合、自動運転装置2aに坂特定部252aを備えない構成としてもよい。また、図8のフローチャートの処理については、S25~S26の処理を省略する構成とすればよい。
【0149】
(実施形態6)
実施形態4では、自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1aを用いる場合を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らない。例えば、自動化レベル2以下の車両で車両用システム1aを用いる構成としてもよい。
【0150】
例えば、自動化レベル1~2の運転支援を行う車両で車両用システム1aを用いる場合には、先行車との車間距離が設定した値となるように加減速を自動で行う際のこの車間距離を前述の安全距離に置き換えて用いる構成とすればよい。この構成であっても、車間距離を先行車の大きさに応じて増加させることで、前側方からの移動体の飛び出しを周辺監視センサ5aで検出しやすくする。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【0151】
また、自動化レベル0の車両で車両用システム1aを用いる場合には、先行車との車間距離が設定した値以下となる場合に注意喚起を行う際のこの車間距離を前述の安全距離に置き換えて用いる構成とすればよい。この構成であっても、注意喚起を行う条件とする車間距離を先行車の大きさに応じて増加させることで、前側方からの移動体の飛び出しをドライバがより早いタイミングで気づきやすくなる。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【0152】
(実施形態7)
以下、本開示の実施形態7について図面を用いて説明する。図9に示す車両用システム1bは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態7では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1bを用いる構成とすればよい。
【0153】
車両用システム1bは、図9に示すように、自動運転装置2b、ロケータ3、地図DB4b、周辺監視センサ5b、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1bを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。ロケータ3、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8については、例えば実施形態1で説明したのと同様とすればよい。
【0154】
図DB4bは、地図データのうちの道路形状のデータとして、例えば曲率のデータも含む点を除けば、実施形態1の地図DB4と同様である。曲率のデータは、少なくとも道路上の例えばリンク別のデータ,形状補間点間のデータ等とすればよい。一例として、曲率のデータは、形状補間点から算出するものであってもよい。
【0155】
周辺監視センサ5bは、自車前方及び/又は自車側方の所定範囲を検出範囲に含む点を除けば、実施形態1の周辺監視センサ5と同様である。以下では、周辺監視センサ5bは、自車前方及び自車側方の所定範囲を検出範囲に含む場合を例に挙げて説明を行う。なお、自車前方の検出範囲は、実施形態4で述べた規定範囲よりも少なくとも水平方向に広い範囲であることが好ましいが、必ずしもこれに限らない。
【0156】
自動運転装置2bは、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。なお、自動運転装置2bの詳細については、以下で述べる。
【0157】
<自動運転装置2bの概略構成>
続いて、図9を用いて、自動運転装置2bの概略構成を説明する。図9に示すように、自動運転装置2bは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22b、地図データ取得部23b、通信情報取得部24、走行環境認識部25b、及び自動運転部26bを機能ブロックとして備えている。なお、自動運転装置2bが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2bが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2bが車載装置に相当する。
【0158】
自車位置取得部21及び通信情報取得部24は、実施形態1の自車位置取得部21及び通信情報取得部24と同様である。センシング情報取得部22bは、周辺監視センサ5bで逐次検出する検出結果(つまり、センシング情報)を取得する。地図データ取得部23bは、地図DB4aの代わりに地図DB4bに格納されている地図データを取得する点を除けば、実施形態4の地図データ取得部23aと同様である。
【0159】
走行環境認識部25bは、一部の処理を除けば、実施形態4の走行環境認識部25aと同様である。センシング情報取得部22aの代わりにセンシング情報取得部22bで取得するセンシング情報を用いる点と、地図データ取得部23aの代わりに地図データ取得部23bで取得する地図データを用いる点とを用いて、実施形態4の走行環境認識部25bと同様に、自車の走行環境を認識する。走行環境認識部25bでは、センシング情報取得部22bで取得したセンシング情報から、少なくとも自車の前方及び側方の検出範囲内の周辺物体及び路面標示を認識する。
【0160】
走行環境認識部25bは、周辺車特定部253bをサブ機能ブロックとして備えている。周辺車特定部253bは、自車の周辺車両の大きさを特定する。周辺車特定部253bは、センシング情報取得部22bで取得したセンシング情報から周辺車両の大きさを特定できる場合には、このセンシング情報から周辺車両の大きさを特定すればよい。また、周辺車特定部253bは、通信情報取得部24によって周辺車両から取得する情報を用いて周辺車両の大きさを特定できる場合には、この情報から周辺車両の大きさを特定すればよい。
【0161】
周辺車特定部253bは、走行環境認識部25bで認識した周辺車両の車格を周辺車両の大きさとして特定してもよいし、走行環境認識部25bで認識した周辺車両の車長を先行車の大きさとして特定してもよい。周辺車特定部253bは、走行環境認識部25bで認識した周辺車両の車種,車格といった分類をもとに、この分類と車長等の値との対応関係を参照して周辺車両の車長等の値を周辺車両の大きさとして特定してもよい。この場合、この対応関係を予め自動運転装置2bの不揮発性メモリに格納しておくことで、周辺車特定部253bが利用可能とすればよい。
【0162】
周辺車特定部253bで特定する周辺車両の大きさは、周辺車両の車長におおよその相関を少なくとも有しているものとする。周辺車特定部253bで特定する周辺車両の大きさは、車長であることが好ましいが、車高,車幅,車格等であっても車長におおよその相関を有しているので、車高,車幅,車格等としてもよい。
【0163】
自動運転部26bは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26bは、図9に示すように、走行計画部27b、確認部28b、及び自動運転機能部29bをサブ機能ブロックとして備えている。
【0164】
走行計画部27bは、走行環境認識部25aの代わりに走行環境認識部25bで認識する走行環境を用いて、自動運転によって自車を走行させるための走行計画を生成する点を除けば、実施形態4の走行計画部27aと同様である。
【0165】
確認部28bは、走行計画部27bで生成する走行計画の安全性を評価する。一例として、確認部28bは、実施形態4で述べたのと同様に、数学的公式モデルを用いて、走行計画の安全性を評価すればよい。本実施形態では、対象間距離は、一例として、自車の前後方向及び左右方向の距離とすればよい。
【0166】
確認部28bは、安全距離設定部281b及び安全距離調整部283bをサブ機能ブロックとして備える。安全距離設定部281bは、実施形態1の安全距離設定部281と同様とすればよい。安全距離設定部281bは、実施形態1と同様に、数学的公式モデルとしては、例えばRSS(Responsibility Sensitive Safety)モデルを用いればよい。安全距離設定部281bは、少なくとも自車の前方及び左右(つまり、側方)の安全距離を設定する。
【0167】
一例として、安全距離設定部281bは、基準として、自車の前方については、実施形態1の安全距離設定部281と同様に、自車の挙動の情報から、例えば自車が最短で停止できる距離を安全距離と算出すればよい。また、安全距離設定部281bは、自車の前方に移動体を認識している場合は、実施形態1の安全距離設定部281と同様に、自車と前方移動体との挙動の情報から、自車と前方移動体とが接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出すればよい。
【0168】
安全距離設定部281bは、基準として、自車の左右方向については、実施形態1の安全距離設定部281と同様に、自車の挙動情報から、自車が左右方向の速度を最短で0にできるまでに左右方向に移動する距離を安全距離と算出すればよい。また、安全距離設定部281bは、自車の左右方向に移動体を認識している場合は、実施形態1の安全距離設定部281と同様に、移動体が存在する方向については、自車と移動体との挙動の情報から、自車と移動体とが接触せずにお互いの左右方向の速度が0にできるまでに左右方向に移動する距離をその方向の安全距離と算出すればよい。
【0169】
安全距離調整部283bは、安全距離設定部281bで設定する安全距離を調整する。安全距離調整部283bは、周辺車特定部253bで特定した周辺車両の大きさに応じて、安全距離設定部281bで設定する自車の前方及び/又は左右の安全距離を、その周辺車両が旋回する際のその周辺車両が占有すると推定される範囲内に自車が侵入しない距離に調整する。
【0170】
一例として、安全距離調整部283bは、周辺車特定部253bで特定した先行車の大きさをもとに、その周辺車両が旋回する際にその周辺車両が占有すると推定される範囲に侵入しないために周辺車両との間に保つべき距離(以下、要確保距離)を特定する。例えば、安全距離調整部283bは、予め自動運転装置2bの不揮発性メモリに格納しておいた周辺車両の大きさと要確保距離との対応関係を用いて要確保距離を特定すればよい。周辺車両の大きさと要確保距離との対応関係は、実験,シミュレーション等により予め求めておく構成とすればよい。
【0171】
周辺車両が旋回する際にその周辺車両が占有すると推定される範囲は、周辺車両の旋回時のシチュエーションによって変化するため、安全距離調整部283bは、複数のシチュエーションを満たすことができるだけの余裕を持った要確保距離を特定すればよい。また、安全距離調整部283bは、周辺車両の旋回時のシチュエーションに応じた要確保距離を特定する構成としてもよい。この場合には、シチュエーション別の周辺車両の大きさと要確保距離との対応関係を用いる構成とすればよい。周辺車両の旋回時のシチュエーションとしては、交差点での旋回,カーブ路での旋回等がある。周辺車両の旋回時のシチュエーションは、周辺車両が右旋回か左旋回かで異なっていることが好ましい。周辺車両の旋回時のシチュエーションは、走行環境認識部25bで認識する走行環境から推定すればよい。なお、カーブ路での旋回については、カーブの曲率半径別に要確保距離を特定してもよい。交差点での旋回については、例えば旋回角度が90度であるものとして要確保距離を特定すればよい。
【0172】
ここで、図10図14を用いて、周辺車両の旋回時のシチュエーションの一例を説明する。図10図14のHVが自車,SVが周辺車両を示している。図10は、自車HVの並走車である周辺車両SVが、交差点での右折のために旋回する場合の例を示している。図10の例では、周辺車両SVの車長によっては、周辺車両SVの車体が周辺車両SVの左方向に大きく振れることで自車HVに近接してしまうおそれがある。図11は、自車HVの対向車である周辺車両SVが、交差点での左折のために旋回する場合の例を示している。図11の例では、周辺車両SVの車長によっては、周辺車両SVの車体が周辺車両SVの右方向に大きく振れることで自車HVに近接してしまうおそれがある。
【0173】
図12は、自車HVの隣接車線に左折して進入する周辺車両SVが、左折のために旋回する場合の例を示している。図12の例では、周辺車両SVの車長によっては、周辺車両SVの車体が周辺車両SVの右方向に大きく振れることで自車HVに近接してしまうおそれがある。図13は、自車HVの隣接車線に右折して進入する周辺車両SVが、右折のために旋回する場合の例を示している。図13の例では、周辺車両SVの車長によっては、周辺車両SVの車体が周辺車両SVの左方向に大きく振れることで自車HVに近接してしまうおそれがある。図14は、自車HVの対向車である周辺車両SVが、左カーブのカーブ路を通行するために旋回する場合の例を示している。図14の例では、周辺車両SVの車長によっては、周辺車両SVの車体が周辺車両SVの右方向に大きく振れることで自車HVに近接してしまうおそれがある。
【0174】
安全距離調整部283bは、要確保距離が、安全距離設定部281bで設定している安全距離未満となる場合には、安全距離設定部281bで設定している安全距離の設定を維持すればよい。これは、安全距離を満たせば、要確保距離も満たすことができるためである。一方、安全距離調整部283bは、要確保距離が、安全距離設定部281bで設定している安全距離以上となる場合には、安全距離設定部281bで設定している安全距離を、要確保距離に調整させればよい。これによれば、要確保距離が安全距離設定部281bで設定している安全距離以上になる場合に限って、この安全距離を要確保距離に調整させて、安全距離に周辺車両の大きさに応じた余裕を設けることが可能になる。
【0175】
安全距離調整部283bは、要確保距離を特定する周辺車両が自車の前方及び左右のうちの複数方向にそれぞれ存在した場合には、安全距離設定部281bで設定しているこれらの方向の安全距離について、対応する方向に特定した周辺車両についての要確保距離を用いてそれぞれ上述の処理を行う構成とすればよい。
【0176】
また、安全距離調整部283bは、要確保距離を特定する周辺車両が自車の前方及び左右のうちの同一方向に複数存在した場合には、安全距離設定部281bで設定しているこの方向の安全距離について、これらの周辺車両についての要確保距離のうち、最も長い要確保距離を用いて上述の処理を行う構成とすればよい。
【0177】
なお、要確保距離を用いて調整する安全距離は、自車の前方及び左右の安全距離としてもよいが、自車の前方及び左右のうちの一部の安全距離に限ってもよい。例えば、図10図14に示したように、周辺車両の旋回時に余裕を持たせるべき安全距離は、自車の左右のうちの周辺車両の存在する側の安全距離である。よって、要確保距離を用いて調整する安全距離を、自車の左右のうちの周辺車両の存在する側の安全距離に限ってもよい。これによれば、周辺車両の旋回時に余裕を持たせるべき方向の安全距離に絞って、要確保距離を用いて安全距離を調整する分だけ、無駄な処理を低減することが可能になる。
【0178】
安全距離調整部283bは、要確保距離を特定した上で必要に応じて安全距離を調整する処理を、一定の周期ごと等の逐次行う構成としてもよいし、特定のトリガを検出した場合に行う構成としてもよい。特定のトリガの例としては、周辺車両の旋回の検出時,周辺車両の旋回の予測時等が挙げられる。これによれば、周辺車両が旋回しない場合にまで上述の処理を行う無駄を省くことが可能になる。
【0179】
一例として、周辺車両の旋回の検出については、走行環境認識部25bで認識する周辺車両のヨーレートが旋回の有無を区別するための閾値以上となったことをもとに安全距離調整部283bが検出すればよい。また、周辺車両の旋回の予測については、走行環境認識部25bで認識する周辺車両の位置が交差点近辺であることをもとに走行環境認識部25bで予測すればよい。他にも、周辺車両の旋回の予測については、走行環境認識部25bで認識する自車の走行区間の曲率がカーブ路を区別するための閾値以上であることをもとに走行環境認識部25bで予測してもよい。以下では、一例として、安全距離調整部283bが、要確保距離を特定した上で必要に応じて安全距離を調整する処理を、特定のトリガを検出した場合に行うものとして説明を行う。
【0180】
確認部28bは、安全距離設定部281aで設定された安全距離の代わりに、安全距離設定部281bで設定された安全距離を用いる点を除けば、実施形態4の確認部28aと同様にして、走行計画部27bで生成する走行計画の安全性を評価する。
【0181】
自動運転機能部29bは、確認部28aから出力される走行計画の代わりに、確認部28bから出力される走行計画を用いる点を除けば、実施形態4の自動運転機能部29aと同様にして自動運転を行わせる。
【0182】
<自動運転装置2bでの安全距離調整関連処理>
ここで、図15のフローチャートを用いて、自動運転装置2bでの安全距離調整関連処理の流れの一例について説明を行う。コンピュータによって安全距離調整関連処理に含まれるステップが実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0183】
図15のフローチャートは、自車のパワースイッチがオンになって自動運転が開始される場合に開始する構成とすればよい。また、自車の手動運転と自動運転とを切り替えることができる構成の場合には、自動運転を行う設定となっている状態でパワースイッチがオンされる場合に開始する構成とすればよい。他にも、手動運転中に自動運転を行う設定がオンに切り替えられて自動運転に切り替わる場合に開始する構成としてもよい。図15のフローチャートでは、走行環境認識部25bが自車の走行環境を逐次認識しているものとする。
【0184】
まず、ステップS41では、走行環境認識部25bで周辺車両を認識している場合(S41でYES)には、ステップS43に移る。一方、走行環境認識部25bで周辺車両を認識していない場合(S41でNO)には、ステップS42に移る。
【0185】
ステップS42では、安全距離設定部281bが、自車の挙動の情報から安全距離を算出する。S42では、自車が最短で停止できる距離を前方の安全距離と算出する。また、S42では、自車が左右方向の速度を最短で0にできるまでに左右方向に移動する距離を安全距離と算出する。そして、算出した安全距離を自車の前方及び左右の安全距離として設定し、ステップS49に移る。
【0186】
一方、ステップS43では、安全距離設定部281bが、自車と認識している周辺車両との挙動の情報から安全距離を算出する。S43では、周辺車両が自車の前方移動体の場合には、自車と前方移動体とが接触せずに停止できる距離を前方の安全距離と算出する。S43では、周辺車両が自車の左右方向の移動体の場合には、自車と移動体とが接触せずにお互いの左右方向の速度が0にできるまでに左右方向に移動する距離をその方向の安全距離と算出する。S43では、周辺車両を認識していない方向の安全距離については、S42と同様にして算出すればよい。そして、S43では、算出した安全距離を安全距離として設定し、ステップS44に移る。
【0187】
ステップS44では、周辺車特定部253bが、認識している周辺車両の大きさを特定する。S44の処理は、S43の処理よりも前に行う構成としてもよい。S44の処理は、走行環境認識部25bでの周辺車両の認識とともに行われる構成としてもよい。
【0188】
ステップS45では、特定のトリガを検出した場合(S45でYES)には、ステップS46に移る。一方、特定のトリガを検出していない場合(S45でNO)には、ステップS49に移る。特定のトリガとは、例えば周辺車両の旋回の検出時,周辺車両の旋回の予測時等である。特定のトリガとは、図10図15を用いて説明したシチュエーションのうちの少なくとも一部のシチュエーションの検出若しくは予測時であってもよい。一例として、走行環境認識部25bで認識する走行環境を用いて、安全距離調整部283bが特定のトリガの検出を行う構成とすればよい。
【0189】
ステップS46では、安全距離調整部283bが、S44で特定した周辺車両の大きさをもとに、要確保距離を特定する。安全距離調整部283bは、S45で特定のトリガとして検出したシチュエーションにも応じて、前述したように要確保距離を特定してもよい。
【0190】
ステップS47では、S46で特定した要確保距離が、安全距離設定部281bで設定している安全距離以上となる場合(S47でYES)には、ステップS48に移る。一方、S46で特定した要確保距離が、安全距離設定部281bで設定している安全距離未満となる場合(S47でNO)には、ステップS49に移る。ステップS48では、安全距離調整部283bが、安全距離設定部281bで設定している安全距離を、S46で特定した要確保距離に調整する。
【0191】
ステップS49では、安全距離調整関連処理の終了タイミングであった場合(S49でYES)には、安全距離調整関連処理を終了する。一方、安全距離調整関連処理の終了タイミングでなかった場合(S49でNO)には、S41に戻って処理を繰り返す。安全距離調整関連処理の終了タイミングの一例としては、自車のパワースイッチがオフになった場合,手動運転に切り替わった場合等がある。なお、図15のフローチャートはあくまで一例であって、処理の順番が一部入れ替わっても構わない。
【0192】
<実施形態7のまとめ>
実施形態7の構成によれば、周辺車両の大きさに応じて、設定する車両の前方若しくは側方の安全距離を、その周辺車両が旋回する際にその周辺車両が占有すると推定される範囲内に車両が侵入しない距離に調整することになる。安全距離は、車両と障害物との近接をさけるために車両が障害物との間に最低限空けるべき距離であるので、周辺車両が旋回する場合であっても、その周辺車両との間に接触しないだけの距離を空けることが可能になる。よって、周辺車両が、車長の長い周辺車両であっても、その周辺車両の旋回の際にその周辺車両に近接することをさけることが可能になる。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【0193】
(実施形態8)
実施形態7では、自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1bを用いる場合を例に挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らない。例えば、自動化レベル2以下の車両で車両用システム1bを用いる構成としてもよい。
【0194】
例えば、自動化レベル1~2の運転支援を行う車両で車両用システム1bを用いる場合には、周辺車両との前方及び/又は側方の車間距離が設定した値となるように加減速及び/又は操舵を自動で行う際のこの車間距離を前述の安全距離に置き換えて用いる構成とすればよい。この構成であっても、周辺車両との車間距離を周辺車両の大きさに応じて増加させることで、その周辺車両の旋回の際にその周辺車両に近接することをさけることが可能になる。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【0195】
また、自動化レベル0の車両で車両用システム1bを用いる場合には、周辺車両との前方及び/又は側方の車間距離が設定した値以下となる場合に注意喚起を行う際のこの車間距離を前述の安全距離に置き換えて用いる構成とすればよい。これによれば、注意喚起を行う条件とする車間距離を周辺車両の大きさに応じて増加させることで、注意喚起に従って運転手が空ける周辺車両との車間距離を、周辺車両の大きさに応じて増加させることが可能になる。よって、周辺車両との車間距離を周辺車両の大きさに応じて増加させることで、その周辺車両の旋回の際にその周辺車両に近接することをさけることが可能になる。その結果、移動体との近接をより回避しやすくすることが可能になる。
【0196】
(実施形態9)
<車両用システム1cの概略構成>
以下、本開示の実施形態9について図面を用いて説明する。図16に示す車両用システム1cは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態9では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1cを用いる構成とすればよい。
【0197】
車両用システム1cは、図16に示すように、自動運転装置2c、ロケータ3、地図DB4a、周辺監視センサ5a、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1aを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。車両用システム1cは、自動運転装置2aの代わりに自動運転装置2cを含む点を除けば、実施形態4の車両用システム1aと同様である。
【0198】
自動運転装置2cは、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備え、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで自動運転に関する処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラム及びデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリ又は磁気ディスクなどによって実現される。なお、自動運転装置2cの詳細については、以下で述べる。
【0199】
<自動運転装置2cの概略構成>
続いて、図16を用いて、自動運転装置2aの概略構成を説明する。図16に示すように、自動運転装置2aは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22a、地図データ取得部23a、通信情報取得部24、走行環境認識部25a、及び自動運転部26cを機能ブロックとして備えている。自動運転装置2cは、自動運転部26aの代わりに自動運転部26cを備える点を除けば、実施形態4の自動運転装置2aと同様である。なお、自動運転装置2cが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2cが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2aが車載装置に相当する。
【0200】
自動運転部26cは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26cは、図16に示すように、走行計画部27c、確認部28c、及び自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。自動運転部26cは、走行計画部27a及び確認部28aの代わりに走行計画部27c及び確認部28cを備える点と、自動運転機能部29aの代わりに自動運転機能部29を備える点とを除けば、実施形態4の自動運転部26aと同様である。コンピュータによって走行計画部27a及び確認部28aの処理が実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0201】
走行計画部27cは、運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車の走行時の位置取りを計画する点を除けば、実施形態4の走行計画部27aと同様である。走行計画部27cでも、走行環境認識部25aで認識する走行環境を用いて、自動運転によって自車を走行させるための走行計画を生成する点は、走行計画部27aと同様である。運転ポリシとは、車両の制御行動を定義する戦略および規則の少なくともいずれかである。運転ポリシは、走行における車両の位置取りを計画するための指針と言い換えることができる。運転ポリシは、環境認識の結果からの、車両制御の加速度指令値への写像と言い換えることもできる。運転ポリシの概念は、後述する運転ルール判断情報の評価に基づく走行計画の許可及び却下を含むように拡張されてもよい。
【0202】
走行計画部27cは、自車以外の他車両の存在によってその他車両以外の移動体が周辺監視センサ5aの検出範囲の死角に位置する状況(以下、死角進入状況)の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシ(以下、死角低減運転ポリシ)に従って、自車の走行時の位置取りを計画するものとする。本実施形態の例では、死角低減運転ポリシは、後述する安全距離調整部283aでの調整を行うことで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシであるものとする。死角進入状況は、必ずしも移動体の全体が周辺監視センサ5aの検出範囲の死角に位置する状況に限るものでない。例えば、走行環境認識部25aでの移動体の認識を行うことができなくなる程度に、移動体の一部が周辺監視センサ5aの検出範囲の死角に位置する状況も含む。
【0203】
確認部28cは、実施形態4の確認部28aと同様にして、走行計画部27cで生成する走行計画の安全性を評価する。実施形態4で述べたように、確認部28cは、実施形態1で述べた数学的公式モデルを用いて、走行計画の安全性を評価すればよい。数学的公式モデルとしては、例えばRSSモデルを用いればよい。確認部28cは、実施形態4の確認部28aと同様の、安全距離設定部281a及び安全距離調整部283aをサブ機能ブロックとして備える。
【0204】
確認部28cは、走行計画を運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する点を除けば、実施形態4の確認部28aと同様である。この評価は、単に、走行計画に沿って走行する自車が運転ルールに従うであろうか、あるいは逸脱するであろうかの判断結果を示す評価であってもよい。この評価は、走行計画に沿って走行する自車が運転ルールから逸脱する可能性を数値的に示す評価であってもよい。
【0205】
運転ルール判断情報は、運転ルールに、走行計画に沿って走行する自車が従うであろうか、逸脱するであろうかを判断する情報である。運転ルール判断情報は、確認部28cが評価を実行するプロセスにおいて参照可能なデータとして、メモリに記憶されていてもよい。確認部28cが評価を実行するプロセスが、ニューラルネットワークなどを含む学習済みモデルにより実現される場合には、運転ルール判断情報は、この学習済みモデルに組み込まれていてもよい。この場合に、運転ルールは、学習済みモデルの学習時に用いる教師データとして与えられていてもよい。運転ルールは、縦方向速度規則、縦方向位置規則、横方向速度規則、横方向位置規則、運転方向の優先権の規則、信号機に基づく規則、交通標識に基づく規則、およびルートの優先権の規則のうち、少なくとも1つを含むことができる。運転ルールは、交通ルールに対応して構成されてよい。交通ルール対応した構成の例として、運転ルールは、交通ルールに対して看過できないような矛盾を抱えず、交通ルールとの整合性を有していてもよい。交通ルール対応した構成の他の例として、運転ルールは、交通ルールそのものであってもよい。また、運転ルールは、上述の実施形態1に説明された数学的公式モデルの実装であってもよい。交通ルールには、走行区域別のルールと、走行区域によらないルールとが含まれるものとすればよい。走行区域別のルールとしては、走行区域別の交通ルールが挙げられる。交通ルールは法令などにより定められていてもよい。交通ルールは、自車に搭載されるデータベースに格納されたものを取得してもよいし、通信モジュール7を介して自車の外部から取得してもよい。交通ルールを取得する場合には、ロケータ3で測位した車両位置周辺の走行区域の交通ルールを取得すればよい。走行区域によらないルールとしては、例えば信号灯色に応じて走行可否が定まるルール等がある。
【0206】
また、運転ルールには、車間距離を安全距離以上に保つというルールを含んでもよい。この場合、安全距離として安全距離調整部283aで調整した安全距離を用いればよい。車間距離を安全距離以上に保つというルールは、安全エンベロープに違反していない状態を保つというルールの一例である。安全エンベロープは、自動運転車両の周囲の物理ベースのマージンを定義する。安全エンベロープの概念によれば、自動運転車両は、自車の周囲に1つ以上の境界をもち、これらの境界の1つ以上の違反が自動運転車両による異なる応答を引き起こす。
【0207】
走行計画部27cは、前述したように、安全距離調整部283aでの調整を行うことで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、自車の走行時の位置取りを計画する。このような運転ポリシによる位置取りは、周辺監視センサ5aを用いた自車の周辺の移動体の認識状況の改善及び認識精度を向上に寄与する。すなわち、本実施形態の運転ポリシは、確認部28cによる運転ルール判断情報の評価にて、走行計画に沿って走行する自車の周辺での、移動体の存在する蓋然性を有する死角領域(未確認領域)が低減されたシーンを提供する。このようにして、確認部28cが運転ルール判断情報に基づく評価を実行する際の判断精度を高めることができる。走行計画部27cは、自車が先行車に対して、安全距離調整部283aで調整される安全距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画する。
【0208】
確認部28cは、走行計画部27cで計画した走行計画が、運転ルールを満たしている場合には、この走行計画を許可すると決定する。そして、確認部28cは、許可すると決定した走行計画を自動運転機能部29に出力する。一方、確認部28cは、走行計画部27cで計画した走行計画が、運転ルールを満たしていない場合には、この走行計画を許可しないと決定する。そして、確認部28cは、許可しないと決定した走行計画については、自動運転機能部29に出力しない。確認部28cは、走行計画部27cで計画した走行計画を許可しないと決定した場合には、走行計画部27cで走行計画を修正させればよい。
【0209】
自動運転機能部29は、確認部28から出力される走行計画に従う代わりに確認部28cから出力される走行計画に従う点を除けば、実施形態1の自動運転機能部29と同様である。
【0210】
<実施形態9のまとめ>
実施形態9の構成によれば、他車両の存在によって他車両以外の移動体が周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、死角進入状況の発生頻度が低下するような自車の位置取りの走行計画を行うことが可能になる。そして、このような走行計画を、交通ルールに対応して構成された運転ルール判断情報に基づき評価し、この走行計画を許可するかどうか決定するので、自車周辺の移動体をより正確に認識した状態で、運転ルール判断情報に基づいた走行計画を評価できる可能性が高まる。その結果、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0211】
また、実施形態9の構成によれば、先行車の大きさに応じて、自車の前方の安全距離を、周辺監視センサ5aの検出範囲のうちの、先行車がおさまると推定される角度範囲である先行車範囲が規定範囲以下となる大きさ対応距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、周辺監視センサ5aの検出範囲のその先行車による死角を減らし、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。従って、死角進入状況の発生頻度を低下させることで、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0212】
なお、実施形態9の構成と、実施形態5及び/又は実施形態6の構成とを組み合わせた構成としてもよい。また、実施形態9では、走行計画部27cが安全距離設定部281a及び安全距離調整部283aの機能も有し、安全距離調整部283aで調整される安全距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画する構成としてもよい。
【0213】
(実施形態10)
また、実施形態9で述べたのと異なる死角低減運転ポリシに従って、自車の走行時の位置取りを計画することで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする、以下の実施形態10の構成としてもよい。
【0214】
<車両用システム1dの概略構成>
以下、実施形態10について図面を用いて説明する。図17に示す車両用システム1dは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態10では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1dを用いる構成とすればよい。
【0215】
車両用システム1dは、図17に示すように、自動運転装置2d、ロケータ3、地図DB4、周辺監視センサ5a、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1dを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。車両用システム1dは、自動運転装置2cの代わりに自動運転装置2dを含む点と、地図DB4aの代わりに地図DB4を含む点とを除けば、実施形態9の車両用システム1cと同様である。
【0216】
図DB4は、実施形態1の地図DB4と同様である。自動運転装置2dは、実行する処理が異なる点を除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2dの詳細については、以下で述べる。
【0217】
<自動運転装置2dの概略構成>
続いて、図17を用いて、自動運転装置2dの概略構成を説明する。図17に示すように、自動運転装置2dは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22a、地図データ取得部23、通信情報取得部24、走行環境認識部25d、及び自動運転部26dを機能ブロックとして備えている。自動運転装置2dは、地図データ取得部23aの代わりに地図データ取得部23を備える点と、走行環境認識部25の代わりに走行環境認識部25dを備える点と、自動運転部26cの代わりに自動運転部26dを備える点とを除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2dが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2dが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2dが車載装置に相当する。
【0218】
地図データ取得部23は、実施形態1の地図データ取得部23と同様である。走行環境認識部25dは、センシング情報取得部22で取得したセンシング情報の代わりに、センシング情報取得部22aで取得したセンシング情報を用いる点を除けば、実施形態1の走行環境認識部25と同様である。走行環境認識部25dは、自車の周辺の路面標示の位置として、車線を区分する区画線(以下、単に区画線)の位置を認識することで、区画線に対する自車及び他車の位置を認識する。また、走行環境認識部25dは、地図データ中の道路形状の情報若しくはセンシング情報から認識した区画線の形状をもとに、自車の走行路が直線路かカーブ路かの認識も行えばよい。
【0219】
自動運転部26dは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26dは、図17に示すように、走行計画部27d、確認部28d、及び自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。自動運転部26dは、走行計画部27c及び確認部28cの代わりに走行計画部27d及び確認部28dを備える点を除けば、実施形態9の自動運転部26cと同様である。コンピュータによって走行計画部27d及び確認部28dの処理が実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0220】
確認部28dは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画部27dで生成する走行計画の安全性を評価する。確認部28dは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画を運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する。確認部28dは、安全距離設定部281dをサブ機能ブロックとして備える。
【0221】
安全距離設定部281dは、少なくとも自車の左右方向の安全距離を設定する点を除けば、実施形態1の安全距離設定部281と同様である。自車の左右方向は、自車の横方向と言い換えることもできる。以降では、自車の左右方向の安全距離を横方向安全距離と呼ぶ。
【0222】
走行計画部27dは、自車の走行時の位置取りを計画する際に従う死角低減運転ポリシが異なる点を除けば、実施形態9の走行計画部27cと同様である。走行計画部27dは、横方向安全距離を確保可能な範囲で、自車の走行位置を走行車線の中央よりもその走行車線の境界側に偏らせることで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、自車の位置取りを計画する。なお、この処理は、走行環境認識部25dで自車の先行車を認識できていることを条件として行う構成としてもよい。言い換えると、この処理は、周辺監視センサ5aの検出範囲内に自車の先行車を検出していることを条件として行う構成としてもよい。横方向安全距離については、安全距離設定部281dで設定した横方向安全距離を用いればよい。
【0223】
走行計画部27dは、例えば走行環境認識部25dで自車の走行路が直線路と認識している場合には、横方向安全距離を確保可能な範囲で、自車の走行車線の左右の境界のうちのいずれに偏らせる構成としてもよい。一例としては、自車の走行車線の左右の境界のうちのいずれに偏らせるが固定されていてもよい。
【0224】
直線路においては、自車の走行位置を走行車線の中央よりもその走行車線の境界側に偏らせることで、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。ここで、図18及び図19を用いて、この効果について説明を行う。図18及び図19のHVが自車,LVが先行車,PVが先行車にさらに先行する先先行車,OVが対向車を示す。図18及び図19のSRが周辺監視センサ5aの検出範囲を示す。図18及び図19のHBSが検出範囲SRのうちの先行車LVによって死角となる範囲を示す。
【0225】
図18に示すように、直進路において、先行車LVの存在によって、先先行車PVの全体が、自車HVの周辺監視センサ5aの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する場合がある。このような場合であっても、図19に示すように、自車HVの走行位置を走行車線の境界側に偏らせることで、先先行車PVの全体が、周辺監視センサ5aの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する状況を回避することが可能になる。自車HVの走行位置を走行車線の境界側に偏らせる自車HVの位置取りは、例えば対向車OVに対して横方向安全距離を確保する範囲内でその境界側に最も近接する位置を計画すればよい。
【0226】
走行計画部27dは、走行環境認識部25dで自車の走行路がカーブ路と認識している場合には、横方向安全距離を確保可能な範囲で、自車の走行位置を走行車線の中央よりもそのカーブ路における内周側に偏らせる構成とすることが好ましい。
【0227】
カーブ路においては、自車の走行位置をカーブ路の内周側に偏らせることで、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。ここで、図20及び図21を用いて、この効果について説明を行う。図20及び図21の図番が示す対象については、図18及び図19と同様である。
【0228】
図20に示すように、カーブ路において、先行車LVの存在によって、先先行車PVの全体が、自車HVの周辺監視センサ5aの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する場合がある。このような場合であっても、図21に示すように、自車HVの走行位置を走行車線の境界のうちのカーブ路の内周側の境界に偏らせることで、先先行車PVの全体が、周辺監視センサ5aの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する状況を回避することが可能になる。自車HVの走行位置を走行車線の境界のうちのカーブ路の内周側に偏らせる自車HVの位置取りは、例えば対向車OVに対して横方向安全距離を確保する範囲内でその境界側に最も近接する位置を計画すればよい。
【0229】
確認部28dは、走行計画部27dで計画した走行計画が、運転ルールを満たしている場合には、この走行計画を許可すると決定する。そして、確認部28dは、許可すると決定した走行計画を自動運転機能部29に出力する。一方、確認部28dは、走行計画部27dで計画した走行計画が、運転ルールを満たしていない場合には、この走行計画を許可しないと決定する。そして、確認部28dは、許可しないと決定した走行計画については、自動運転機能部29に出力しない。確認部28dは、走行計画部27dで計画した走行計画を許可しないと決定した場合には、走行計画部27dで走行計画を修正させればよい。
【0230】
<実施形態10のまとめ>
実施形態10の構成によれば、実施形態9と同様に、他車両の存在によって他車両以外の移動体が周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、実施形態9と同様に、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0231】
また、実施形態10の構成によれば、自車の走行位置を走行車線の中央よりもその走行車線の境界側に偏らせることで、周辺監視センサ5aの検出範囲のうちの先行車による死角を減らし、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。よって、死角進入状況の発生頻度を低下させることで、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0232】
また、実施形態10の構成では、周辺監視センサ5aの検出範囲が少なくとも自車の前方である場合の例を挙げたが、必ずしもこれに限らない。例えば、周辺監視センサ5aの検出範囲が自車の後方である場合にも同様にして適用することができる。この場合には、自車の走行位置を走行車線の中央よりもその走行車線の境界側に偏らせることで、周辺監視センサ5aの検出範囲のうちの直近の後続車による死角を減らし、死角進入状況の発生頻度を低下させることを可能にすればよい。
【0233】
なお、実施形態10の構成と、実施形態6の構成とを組み合わせた構成としてもよい。また、実施形態10では、走行計画部27dが安全距離設定部281dの機能も有し、安全距離設定部281dで設定した安全距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画する構成としてもよい。
【0234】
(実施形態11)
また、実施形態9,10で述べたのと異なる死角低減運転ポリシに従って、自車の走行時の位置取りを計画することで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする、以下の実施形態11の構成としてもよい。
【0235】
<車両用システム1eの概略構成>
以下、実施形態11について図面を用いて説明する。図22に示す車両用システム1eは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態11では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1eを用いる構成とすればよい。
【0236】
車両用システム1eは、図22に示すように、自動運転装置2e、ロケータ3、地図DB4、周辺監視センサ5e、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1eを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。車両用システム1eは、自動運転装置2cの代わりに自動運転装置2eを含む点と、周辺監視センサ5aの代わりに周辺監視センサ5eを含む点と、地図DB4aの代わりに地図DB4を含む点とを除けば、実施形態9の車両用システム1cと同様である。
【0237】
周辺監視センサ5eは、少なくとも自車側方の所定範囲を検出範囲とする点を除けば、実施形態1の周辺監視センサ5と同様である。自車側方の検出範囲(以下、側方検出範囲)は、自車の左右の少なくともいずれかの側方の所定範囲とすればよい。なお、側方検出範囲は、1種類のセンサによるものに限らない。例えば、側方検出範囲は、検出範囲の異なる複数種類のセンサの検出範囲が組み合わさったものであってもよい。
【0238】
図DB4は、実施形態1の地図DB4と同様である。自動運転装置2eは、実行する処理が異なる点を除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2eの詳細については、以下で述べる。
【0239】
<自動運転装置2eの概略構成>
続いて、図22を用いて、自動運転装置2eの概略構成を説明する。図22に示すように、自動運転装置2eは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22e、地図データ取得部23、通信情報取得部24、走行環境認識部25e、及び自動運転部26eを機能ブロックとして備えている。自動運転装置2eは、センシング情報取得部22aの代わりにセンシング情報取得部22eを備える点と、地図データ取得部23aの代わりに地図データ取得部23を備える点と、走行環境認識部25aの代わりに走行環境認識部25eを備える点と、自動運転部26cの代わりに自動運転部26eを備える点とを除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2eが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2eが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2eが車載装置に相当する。
【0240】
センシング情報取得部22eは、周辺監視センサ5aの代わりに周辺監視センサ5eで検出されるセンシング情報を取得する点を除けば、実施形態9のセンシング情報取得部22aと同様である。地図データ取得部23は、実施形態1の地図データ取得部23と同様である。
【0241】
走行環境認識部25eは、自車位置取得部21で取得する自車の車両位置、センシング情報取得部22eで取得するセンシング情報、地図データ取得部23で取得する地図データ、通信情報取得部24で取得する周辺車両の情報等から、実施形態1の走行環境認識部25と同様にして、自車の走行環境を認識する。走行環境認識部25eでは、センシング情報取得部22eで取得したセンシング情報から、少なくとも側方検出範囲内の周辺物体及び路面標示を認識する。
【0242】
自動運転部26eは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26eは、図22に示すように、走行計画部27e、確認部28e、及び自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。自動運転部26eは、走行計画部27c及び確認部28cの代わりに走行計画部27e及び確認部28eを備える点を除けば、実施形態9の自動運転部26cと同様である。コンピュータによって走行計画部27e及び確認部28eの処理が実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0243】
走行計画部27eは、自車の走行時の位置取りを計画する際に従う死角低減運転ポリシが異なる点を除けば、実施形態9の走行計画部27cと同様である。走行計画部27eは、自車の走行車線と隣接する隣接車線を走行する他車両に対して、自車の縦方向の位置をずらさせる運転ポリシに従って、自車の位置取りを計画する。縦方向とは、自車の走行車線に沿った方向である。隣接車線を走行する他車両の位置については、走行環境認識部25eで逐次認識する位置を用いればよい。また、隣接車線を走行する他車両に対して自車の縦方向の位置をずらさせる方向については、自車の前後の車両との前述した安全距離を確保可能な方向にずらすことが好ましい。
【0244】
隣接車線を走行する他車両に対して自車の縦方向の位置をずらさせることで、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。ここで、図23及び図24を用いて、この効果について説明を行う。図23及び図24のHVが自車,SSVが隣接車線の並走車,VVが隣接車線にさらに隣接する車線を走行する周辺車両を示す。図23及び図24のSRが周辺監視センサ5eの検出範囲を示す。図23及び図24のHBSが検出範囲SRのうちの並走車SSVによって死角となる範囲を示す。
【0245】
図23に示すように、並走車SSVの存在によって、隣接車線の自車線とは逆側に隣接する車線を走行する周辺車両VVの全体が、自車HVの周辺監視センサ5eの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する場合がある。このような場合であっても、図24に示すように、自車HVの走行位置を並走車SSVに対して縦方向にずらさせることで、周辺車両VVの全体が、周辺監視センサ5eの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する状況を回避することが可能になる。自車HVの縦方向の位置をずらさせる自車HVの位置取りは、例えば自車HVの前後の車両に対して安全距離を確保する範囲内でずらさせる位置を計画すればよい。
【0246】
走行計画部27eでの、隣接車線を走行する他車両に対して自車の縦方向の位置をずらさせる位置取りを行う処理は、自車が片側3車線以上の道路を走行中であって、且つ、この片側3車線以上の車線のうちの2車線以上が自車線の隣に連続して存在していることを条件として行う構成としてもよい。これによれば、並走車によって死角となる可能性のある、自車と同一方向の車線を走行する周辺車両をより正確に認識することが可能になる。なお、走行計画部27eでの、隣接車線を走行する他車両に対して自車の縦方向の位置をずらさせる位置取りを行う処理は、自車線に隣接車線が存在していることを条件として行う構成としてもよい。この場合には、並走車によって死角となる可能性のある、例えば歩道等に位置する移動体もより正確に認識することが可能になる。
【0247】
確認部28eは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画部27eで生成する走行計画の安全性を評価する。確認部28eは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画を交通ルールからの逸脱可能性に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する。確認部28eは、例えば安全距離設定部281をサブ機能ブロックとして備えればよい。
【0248】
確認部28eは、走行計画部27eで計画した走行計画が、運転ルールを満たしている場合には、この走行計画を許可すると決定する。そして、確認部28eは、許可すると決定した走行計画を自動運転機能部29に出力する。一方、確認部28eは、走行計画部27eで計画した走行計画が、運転ルールを満たしていない場合には、この走行計画を許可しないと決定する。そして、確認部28eは、許可しないと決定した走行計画については、自動運転機能部29に出力しない。確認部28eは、走行計画部27eで計画した走行計画を許可しないと決定した場合には、走行計画部27eで走行計画を修正させればよい。
【0249】
<実施形態11のまとめ>
実施形態11の構成によれば、実施形態9と同様に、他車両の存在によって他車両以外の移動体が周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、実施形態9と同様に、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0250】
また、実施形態11の構成によれば、隣接車線を走行する他車両に対して自車の縦方向の位置をずらさせる位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、周辺監視センサ5eの検出範囲の並走車による死角を減らし、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。そして、死角進入状況の発生頻度を低下させることで、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0251】
なお、実施形態11の構成と、実施形態6の構成とを組み合わせた構成としてもよい。また、実施形態11では、走行計画部27eが安全距離設定部281の機能も有し、安全距離設定部281で設定した安全距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画する構成としてもよい。
【0252】
(実施形態12)
また、実施形態9~11で述べたのと異なる死角低減運転ポリシに従って、自車の走行時の位置取りを計画することで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする、以下の実施形態12の構成としてもよい。
【0253】
<車両用システム1fの概略構成>
以下、実施形態12について図面を用いて説明する。図25に示す車両用システム1fは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態12では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1fを用いる構成とすればよい。
【0254】
車両用システム1fは、図25に示すように、自動運転装置2f、ロケータ3、地図DB4、周辺監視センサ5e、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1fを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。車両用システム1fは、自動運転装置2eの代わりに自動運転装置2fを含む点を除けば、実施形態11の車両用システム1eと同様である。
【0255】
自動運転装置2fは、実行する処理が異なる点を除けば、実施形態11の自動運転装置2eと同様である。なお、自動運転装置2fの詳細については、以下で述べる。
【0256】
<自動運転装置2fの概略構成>
続いて、図25を用いて、自動運転装置2eの概略構成を説明する。図22に示すように、自動運転装置2fは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22e、地図データ取得部23、通信情報取得部24、走行環境認識部25e、及び自動運転部26fを機能ブロックとして備えている。自動運転装置2eは、自動運転部26eの代わりに自動運転部26fを備える点を除けば、実施形態11の自動運転装置2eと同様である。なお、自動運転装置2fが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2eが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2fが車載装置に相当する。
【0257】
自動運転部26fは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26fは、図25に示すように、走行計画部27f、確認部28f、及び自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。自動運転部26fは、走行計画部27e及び確認部28eの代わりに走行計画部27f及び確認部28fを備える点を除けば、実施形態11の自動運転部26eと同様である。コンピュータによって走行計画部27f及び確認部28fの処理が実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0258】
走行計画部27fは、自車の走行時の位置取りを計画する際に従う死角低減運転ポリシが異なる点を除けば、実施形態11の走行計画部27eと同様である。走行計画部27fは、側方検出範囲のうち、自車の走行車線と隣接する隣接車線を走行する他車両(つまり、並走車)によって遮蔽されない範囲を、設定される設定範囲以上確保させる運転ポリシに従って、自車の位置取りを計画する。設定範囲は、例えば固定としてもよい。設定範囲は任意に設定可能な値であって、例えば側方検出範囲の100%の範囲としてもよいし、100%未満の範囲としてもよい。例えば側方検出範囲の50%とは、周辺監視センサ5eの側方検出範囲が水平110度の角度範囲の場合、水平55度分の角度範囲にあたる。側方検出範囲のうちの並走車によって遮蔽されない範囲を、以降では非遮蔽範囲と呼ぶものとする。
【0259】
走行計画部27fは、自車に対する周辺監視センサ5eの設置位置、周辺監視センサ5aの側方検出範囲、及び自車に対する並走車の位置を用いて、非遮蔽範囲を設定範囲以上確保する自車の位置取りを計画する。一例としては、自車の実際の位置を原点とする路面座標系に、走行環境認識部25eで認識された並走車の位置する領域と自車の側方検出範囲とを配置する。そして、自車の位置を原点から自車の走行車線に沿った縦方向にずらして、自車の側方検出範囲のうちの非遮蔽範囲が設定範囲以上確保される位置を探索し、探索した位置に自車の位置取りを行うように計画すればよい。また、自車の縦方向の位置をずらさせる方向については、自車の前後の車両との前述した安全距離を確保可能な範囲内でずらすことが好ましい。
【0260】
側方検出範囲のうちの並走車によって遮蔽されない非遮蔽範囲を設定範囲以上確保させることで、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。ここで、図26及び図27を用いて、この効果について説明を行う。図26及び図27のHVが自車,SSVが隣接車線の並走車,VVが隣接車線にさらに隣接する車線を走行する周辺車両を示す。図26及び図27のSRが周辺監視センサ5eの検出範囲を示す。図26及び図27のHBSが検出範囲SRのうちの並走車SSVによって死角となる範囲を示す。図26及び図27のORが非遮蔽範囲を示す。なお、後述する図28図29についても同様である。
【0261】
図26に示すように、並走車SSVの存在によって、隣接車線の自車線とは逆側に隣接する車線を走行する周辺車両VVの全体が、自車HVの周辺監視センサ5eの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する場合がある。このような場合であっても、図27に示すように、自車HVの走行位置を、非遮蔽範囲を設定範囲以上確保させる位置にさせることで、周辺車両VVの全体が、周辺監視センサ5eの検出範囲SRの死角となる範囲HBSに位置する状況を回避することが可能になる。
【0262】
走行計画部27fでの、自車HVの走行位置を、非遮蔽範囲を設定範囲以上確保させる位置にさせる処理は、自車が片側3車線以上の道路を走行中であって、且つ、この片側3車線以上の車線のうちの2車線以上が自車線の隣に連続して存在していることを条件として行う構成としてもよい。これによれば、並走車によって死角となる可能性のある、自車と同一方向の車線を走行する周辺車両をより正確に認識することが可能になる。なお、走行計画部27fでの、自車HVの走行位置を、非遮蔽範囲を設定範囲以上確保させる位置にさせる処理は、自車線に隣接車線が存在していることを条件として行う構成としてもよい。この場合には、並走車によって死角となる可能性のある、例えば歩道等に位置する移動体もより正確に認識することが可能になる。
【0263】
また、設定範囲は、自車で予定される運転行動に応じて変更されることが好ましい。これによれば、自車で予定される運転行動に応じて望ましい非遮蔽範囲が異なる場合にも、自車で予定される運転行動に応じて望ましい非遮蔽範囲を確保する設定範囲をより正確に設定可能となる。
【0264】
例えば、自車で予定される運転行動が、自車線を走行し続ける道なりの走行の場合には、自車との近接に注意すべき移動体は、自車に比較的近い範囲の移動体に限られる。よって、自車で予定される運転行動が道なりの走行の場合には、図28に示すように、自車HVに比較的近い周辺車両VVは検出可能となる程度に、比較的狭い非遮蔽範囲ORが確保できさえすればよいと考えられる。従って、自車で予定される運転行動が道なりの走行の場合には、比較的狭い設定範囲を設定すればよい。例えば、側方検出範囲の50%を設定範囲と設定すればよい。
【0265】
一方、自車で予定される運転行動が、周辺監視センサ5eでセンシングを行う方向への進路変更の場合には、自車との近接に注意すべき移動体は、自車から比較的遠い範囲の移動体まで対象となる。よって、自車で予定される運転行動が上述の進路変更の場合には、図29に示すように、自車HVから比較的遠い周辺車両VVも検出可能となるように、比較的広い非遮蔽範囲ORを確保する必要があると考えられる。従って、自車で予定される運転行動が上述の進路変更の場合には、道なりの走行に比べて広い設定範囲を設定すればよい。例えば、側方検出範囲の80%を設定範囲と設定すればよい。進路変更には、右左折,車線変更等が含まれる。
【0266】
確認部28fは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画部27fで生成する走行計画の安全性を評価する。確認部28fは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画を運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する。確認部28fは、例えば安全距離設定部281をサブ機能ブロックとして備えればよい。
【0267】
確認部28fは、走行計画部27eで計画した走行計画が、運転ルールを満たしている場合には、この走行計画を許可すると決定する。そして、確認部28fは、許可すると決定した走行計画を自動運転機能部29に出力する。一方、確認部28fは、走行計画部27fで計画した走行計画が、運転ルールを満たしていない場合には、この走行計画を許可しないと決定する。そして、確認部28fは、許可しないと決定した走行計画については、自動運転機能部29に出力しない。確認部28fは、走行計画部27fで計画した走行計画を許可しないと決定した場合には、走行計画部27fで走行計画を修正させればよい。
【0268】
<実施形態12のまとめ>
実施形態12の構成によれば、実施形態9と同様に、他車両の存在によって他車両以外の移動体が周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、実施形態9と同様に、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0269】
また、実施形態12の構成によれば、側方検出範囲のうちの並走車によって遮蔽されない範囲を設定範囲以上確保させる位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、周辺監視センサ5eの検出範囲の並走車による死角を減らし、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。そして、死角進入状況の発生頻度を低下させることで、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0270】
なお、実施形態12の構成と、実施形態6の構成とを組み合わせた構成としてもよい。また、実施形態12では、走行計画部27fが安全距離設定部281の機能も有し、安全距離設定部281で設定した安全距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画する構成としてもよい。
【0271】
(実施形態13)
実施形態12では、自車で予定される運転行動に応じて、側方検出範囲のうちの非遮蔽範囲として確保する範囲を変更する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自車で予定される運転行動に応じて、周辺車両で遮蔽されないように確保するセンシング範囲を変更する構成(以下、実施形態13)としてもよい。
【0272】
実施形態13では、周辺監視センサ5eのセンシング範囲が、少なくとも自車の前方から側方にかけての範囲である場合を例に挙げて説明を行う。自車で予定される運転行動が車線変更の場合には、走行計画部27fが、少なくとも自車の側方のセンシング範囲が周辺車両で遮蔽されない位置に位置取りを計画すればよい。自車で予定される運転行動がカーブ路の走行の場合には、走行計画部27fが、少なくとも自車の斜め前方のセンシング範囲が周辺車両で遮蔽されない位置に位置取りを計画すればよい。自車で予定される運転行動が追い越し車線での追い越しの場合には、走行計画部27fが、少なくとも自車の前方のセンシング範囲が周辺車両で遮蔽されない位置に位置取りを計画すればよい。自車で予定される運転行動が渋滞における走行の場合には、走行計画部27fが、少なくとも自車の側方のセンシング範囲が周辺車両で遮蔽されない位置に位置取りを計画すればよい。
【0273】
なお、上述した例については、センシング範囲が周辺車両で遮蔽されない位置に位置取りを計画する構成に限らず、センシング範囲が周辺車両で遮蔽される範囲が一定以下となる位置に位置取りを計画する構成としてもよい。また、実施形態13の構成は、実施形態12以外の構成と組み合わせてもよい。
【0274】
(実施形態14)
また、実施形態9~12で述べたのと異なる死角低減運転ポリシに従って、自車の走行時の位置取りを計画することで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする、以下の実施形態14の構成としてもよい。
【0275】
<車両用システム1gの概略構成>
以下、実施形態14について図面を用いて説明する。図30に示す車両用システム1gは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態14では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1gを用いる構成とすればよい。
【0276】
車両用システム1gは、図30に示すように、自動運転装置2g、ロケータ3、地図DB4、周辺監視センサ5、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1gを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。車両用システム1gは、自動運転装置2cの代わりに自動運転装置2eを含む点と、周辺監視センサ5aの代わりに周辺監視センサ5を含む点と、地図DB4aの代わりに地図DB4を含む点とを除けば、実施形態9の車両用システム1cと同様である。
【0277】
周辺監視センサ5は、実施形態1の周辺監視センサ5と同様である。地図DB4は、実施形態1の地図DB4と同様である。自動運転装置2gは、実行する処理が異なる点を除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2gの詳細については、以下で述べる。
【0278】
<自動運転装置2gの概略構成>
続いて、図30を用いて、自動運転装置2gの概略構成を説明する。図30に示すように、自動運転装置2gは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22、地図データ取得部23、通信情報取得部24、走行環境認識部25、及び自動運転部26gを機能ブロックとして備えている。自動運転装置2gは、センシング情報取得部22aの代わりにセンシング情報取得部22を備える点と、地図データ取得部23aの代わりに地図データ取得部23を備える点と、走行環境認識部25aの代わりに走行環境認識部25eを備える点と、自動運転部26cの代わりに自動運転部26gを備える点とを除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2gが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2gが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2gが車載装置に相当する。
【0279】
センシング情報取得部22は、実施形態1のセンシング情報取得部22と同様である。地図データ取得部23は、実施形態1の地図データ取得部23と同様である。走行環境認識部25は、実施形態1の走行環境認識部25と同様である。
【0280】
自動運転部26gは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26gは、図30に示すように、走行計画部27g、確認部28g、及び自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。自動運転部26gは、走行計画部27c及び確認部28cの代わりに走行計画部27g及び確認部28gを備える点を除けば、実施形態9の自動運転部26cと同様である。コンピュータによって走行計画部27g及び確認部28gの処理が実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0281】
走行計画部27gは、自車の走行時の位置取りを計画する際に従う死角低減運転ポリシが異なる点を除けば、実施形態9の走行計画部27cと同様である。走行計画部27gは、自車と自車以外の他車両との位置関係を所定時間以上同一の状態に維持させない運転ポリシに従って、自車の位置取りを計画する。ここで言うところの所定時間とは、任意に設定可能な時間とすればよい。
【0282】
自車と自車以外の他車両との位置関係を所定時間以上同一の状態に維持させないことで、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。ここで、前述した図23及び図24を用いて、この効果について説明を行う。ここでは、図23及び図24のSRを、自車HVの周辺監視センサ5の検出範囲であるものとして説明を行う。図23に示すように、自車HVと並走車SSVと位置関係として、並走車SSVの存在によって自車HVの周辺監視センサ5の検出範囲SRの死角となる範囲HBSが広くなってしまう位置関係がある。並走車SSVに対するこのような位置関係を自車HVが維持し続ける場合、この死角で周辺車両VVが認識できなくなる状況が生じやすくなってしまう。これに対して、図24に示すように、並走車SSVに対する自車HVの位置関係が変化するように自車HVの走行位置を変化させることで、並走車SSVの存在によって自車HVの周辺監視センサ5の検出範囲SRの死角となる範囲HBSを狭くすることが可能になる。これにより、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。なお、自車HVと並走車SSVとの走行位置を変化させる位置取りは、自車HVの前後の車両に対して安全距離を確保する範囲内でずらさせる位置を計画すればよい。
【0283】
自車と他車両との位置関係を所定時間以上同一の状態に維持させないようにする場合には、他車両に対する自車の位置取りを縦方向に変化させてもよいし、横方向に変化させてもよい。
【0284】
確認部28gは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画部27gで生成する走行計画の安全性を評価する。確認部28gは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画を運転ルール判断情報に基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する。確認部28gは、例えば安全距離設定部281をサブ機能ブロックとして備えればよい。
【0285】
確認部28gは、走行計画部27gで計画した走行計画が、運転ルールを満たしている場合には、この走行計画を許可すると決定する。そして、確認部28gは、許可すると決定した走行計画を自動運転機能部29に出力する。一方、確認部28gは、走行計画部27gで計画した走行計画が、運転ルールを満たしていない場合には、この走行計画を許可しないと決定する。そして、確認部28gは、許可しないと決定した走行計画については、自動運転機能部29に出力しない。確認部28gは、走行計画部27gで計画した走行計画を許可しないと決定した場合には、走行計画部27gで走行計画を修正させればよい。
【0286】
<実施形態14のまとめ>
実施形態14の構成によれば、実施形態9と同様に、他車両の存在によって他車両以外の移動体が周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、実施形態9と同様に、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0287】
また、実施形態14の構成によれば、自車と自車以外の他車両との位置関係を所定時間以上同一の状態に維持させない位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、自車と他車両との位置関係が、他車両によって生じる周辺監視センサ5の検出範囲の死角が大きくなる位置関係であっても、この状態が維持されないようにし、死角を減らすことが可能になる。従って、死角進入状況の発生頻度を低下させ、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0288】
なお、実施形態14の構成と、実施形態6の構成とを組み合わせた構成としてもよい。また、実施形態14では、走行計画部27gが安全距離設定部281の機能も有し、安全距離設定部281で設定した安全距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画する構成としてもよい。
【0289】
(実施形態15)
また、実施形態9~12,14で述べたのと異なる死角低減運転ポリシに従って、自車の走行時の位置取りを計画することで、死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする、以下の実施形態15の構成としてもよい。
【0290】
<車両用システム1hの概略構成>
以下、実施形態15について図面を用いて説明する。図31に示す車両用システム1hは、自動運転車両で用いられる。ここで言うところの自動運転車両とは、実施形態1で述べたのと同様である。実施形態15では、例えば自動化レベル3以上の自動運転を行う自動運転車両で車両用システム1hを用いる構成とすればよい。
【0291】
車両用システム1hは、図31に示すように、自動運転装置2h、ロケータ3、地図DB4、周辺監視センサ5、車両制御ECU6、通信モジュール7、及び車両状態センサ8を含んでいる。車両用システム1gを用いる車両は、必ずしも自動車に限るものではないが、以下では自動車に用いる場合を例に挙げて説明を行う。車両用システム1hは、自動運転装置2cの代わりに自動運転装置2hを含む点と、周辺監視センサ5aの代わりに周辺監視センサ5を含む点と、地図DB4aの代わりに地図DB4を含む点とを除けば、実施形態9の車両用システム1cと同様である。
【0292】
周辺監視センサ5は、実施形態1の周辺監視センサ5と同様である。地図DB4は、実施形態1の地図DB4と同様である。自動運転装置2hは、実行する処理が異なる点を除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2hの詳細については、以下で述べる。
【0293】
<自動運転装置2hの概略構成>
続いて、図31を用いて、自動運転装置2hの概略構成を説明する。図31に示すように、自動運転装置2hは、自車位置取得部21、センシング情報取得部22、地図データ取得部23、通信情報取得部24h、走行環境認識部25h、及び自動運転部26hを機能ブロックとして備えている。自動運転装置2hは、センシング情報取得部22aの代わりにセンシング情報取得部22を備える点と、通信情報取得部24の代わりに通信情報取得部24hを備える点と、地図データ取得部23aの代わりに地図データ取得部23を備える点と、走行環境認識部25aの代わりに走行環境認識部25hを備える点と、自動運転部26cの代わりに自動運転部26hを備える点とを除けば、実施形態9の自動運転装置2cと同様である。なお、自動運転装置2hが実行する機能の一部又は全部を、一つ或いは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、自動運転装置2hが備える機能ブロックの一部又は全部は、プロセッサによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の組み合わせによって実現されてもよい。この自動運転装置2hが車載装置に相当する。
【0294】
センシング情報取得部22は、実施形態1のセンシング情報取得部22と同様である。地図データ取得部23は、実施形態1の地図データ取得部23と同様である。
【0295】
通信情報取得部24hは、周辺車両の情報として、周辺車両に搭載される周辺監視センサの設置位置,センシング範囲の情報等も取得する点を除けば、実施形態1の通信情報取得部24と同様である。
【0296】
走行環境認識部25hは、自車の走行環境として、自車に対する周辺車両(以下、対象他車両)のセンシング範囲、及びそのセンシング範囲のうちのその対象他車両及び自車以外の車両の存在によって死角となる範囲(以下、死角範囲)も認識する点を除けば、実施形態1の走行環境認識部25と同様である。走行環境認識部25hは、死角範囲特定部254hをサブ機能ブロックとして備えている。死角範囲特定部254hは、上述した死角範囲を特定する。
【0297】
死角範囲特定部254hは、例えば以下のようにして死角範囲を特定すればよい。死角範囲特定部254hは、例えばセンシング情報取得部22で取得したセンシング情報から、自車の位置に対する、自車以外の他車両の位置する領域を特定する。また、死角範囲特定部254hは、特定した他車両の位置と、通信情報取得部24hで取得したその他車両に搭載される周辺監視センサの設置位置,センシング範囲の情報とから、自車の位置に対する、他車両のセンシング範囲の領域を特定する。そして、他車両の位置する領域と他車両のセンシング範囲の領域との情報を用いて、前述の死角範囲を特定する。
【0298】
自動運転部26hは、運転者による運転操作の代行に関する処理を行う。自動運転部26hは、図31に示すように、走行計画部27h、確認部28h、及び自動運転機能部29をサブ機能ブロックとして備えている。自動運転部26hは、走行計画部27h及び確認部28hの代わりに走行計画部27h及び確認部28hを備える点を除けば、実施形態9の自動運転部26cと同様である。コンピュータによって走行計画部27h及び確認部28hの処理が実行されることが、運転支援方法が実行されることに相当する。
【0299】
走行計画部27hは、自車の走行時の位置取りを計画する際に従う死角低減運転ポリシが異なる点を除けば、実施形態9の走行計画部27cと同様である。走行計画部27hは、対象他車両のセンシング範囲のうちのその対象他車両及び自車以外の車両の存在によって死角となる死角範囲に自車が位置する頻度を低下させる運転ポリシに従って、自車の位置取りを計画する。走行計画部27hは、死角範囲特定部254hで特定される死角範囲外への自車の位置取りが可能な場合には、その死角範囲外への自車の位置取りを計画すればよい。走行計画部27hは、自車の周辺に複数台の周辺車両についての死角範囲が存在する場合、自車が位置する死角範囲が最小となる自車の位置取りを計画すればよい。
【0300】
対象他車両のセンシング範囲のうちのその対象他車両及び自車以外の車両の存在によって死角となる死角範囲に自車が位置する頻度を低下させることで、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。ここで、図32及び図33を用いて、この効果について説明を行う。図32及び図33のHVが自車,SSVが隣接車線の並走車,VVが隣接車線にさらに隣接する車線を走行する周辺車両を示す。図32及び図33のSRが自車HVの周辺監視センサ5の検出範囲を示す。図32及び図33のHBSが検出範囲SRのうちの並走車SSVによって死角となる範囲を示す。図32及び図33のVSRが周辺車両VVの周辺監視センサの検出範囲(つまり、センシング範囲)を示す。図32及び図33のVHBSが検出範囲VSRのうちの並走車SSVによって死角となる範囲を示す。
【0301】
図32に示すように、自車HVが周辺車両VVのセンシング範囲のうちの並走車SSVによる死角範囲VHBSに位置する場合、周辺車両VVも、自車HVの周辺監視センサ5の検出範囲のうちの並走車SSVによる死角範囲HBSに位置する可能性が高くなる。これに対して、図33に示すように、自車HVが周辺車両VVのセンシング範囲のうちの、並走車SSVによる死角範囲VHBSの範囲外に位置するように自車HVの走行位置を変化させることで、周辺車両VVも、自車HVの周辺監視センサ5の検出範囲のうちの、並走車SSVによる死角範囲HBSの範囲外に位置するようになる可能性が高まる。これにより、死角進入状況の発生頻度を低下させることが可能になる。なお、自車HVの走行位置を変化させる位置取りは、自車HVの前後左右の車両に対して安全距離を確保する範囲内でずらさせる位置を計画すればよい。
【0302】
確認部28hは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画部27hで生成する走行計画の安全性を評価する。確認部28hは、実施形態9の確認部28cと同様にして、走行計画を運転ルールに基づき評価し、この評価に基づいてこの走行計画を許可するかどうか決定する。確認部28hは、例えば安全距離設定部281をサブ機能ブロックとして備えればよい。
【0303】
確認部28hは、走行計画部27hで計画した走行計画が、運転ルールを満たしている場合には、この走行計画を許可すると決定する。そして、確認部28hは、許可すると決定した走行計画を自動運転機能部29に出力する。一方、確認部28hは、走行計画部27hで計画した走行計画が、運転ルールを満たしていない場合には、この走行計画を許可しないと決定する。そして、確認部28hは、許可しないと決定した走行計画については、自動運転機能部29に出力しない。確認部28hは、走行計画部27hで計画した走行計画を許可しないと決定した場合には、走行計画部27hで走行計画を修正させればよい。
【0304】
<実施形態15のまとめ>
実施形態15の構成によれば、実施形態9と同様に、他車両の存在によって他車両以外の移動体が周辺監視センサの検出範囲の死角に位置する死角進入状況の発生頻度を低下させるようにする運転ポリシに従って、走行計画として少なくとも自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、実施形態9と同様に、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0305】
また、実施形態15の構成によれば、対象他車両のセンシング範囲のうちのその対象他車両及び自車以外の車両の存在によって死角となる死角範囲に自車が位置する頻度を低下させる位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画することになる。よって、前述したように死角進入状況の発生頻度を低下させ、自車の潜在的な交通ルールからの逸脱可能性を低減することが可能になる。
【0306】
なお、実施形態15の構成と、実施形態6の構成とを組み合わせた構成としてもよい。また、実施形態15では、走行計画部27hが安全距離設定部281の機能も有し、安全距離設定部281で設定した安全距離を確保した位置取りとなるように、自車の走行時の位置取りを計画する構成としてもよい。
【0307】
(実施形態16)
前述の実施形態では、デフォルトの安全距離を数学的公式モデルによって算出する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、デフォルトの安全距離を数学的公式モデル以外で算出する構成としてもよい。例えばTTC(Time To Collision)等の他の指標によって自車及び自車周辺の移動体の挙動の情報を用いて安全距離設定部281,281a,281bが安全距離を算出する構成としてもよい。
【0308】
(実施形態17)
前述の実施形態では、自動運転装置2,2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hと車両制御ECU6とが別体である構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自動運転装置2,2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hが車両制御ECU6の機能も担う構成としてもよい。また、自動運転装置2,2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hがロケータ3の機能も担う構成としてもよい。
【0309】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
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