(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】原子吸光分光光度計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/31 20060101AFI20230816BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G01N21/31 610A
G01N1/00 101K
(21)【出願番号】P 2021565259
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049826
(87)【国際公開番号】W WO2021124513
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田黒 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 央祐
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-073537(JP,A)
【文献】特開2012-032310(JP,A)
【文献】実開昭61-190856(JP,U)
【文献】特開2017-075946(JP,A)
【文献】特開2017-207421(JP,A)
【文献】特開2015-087265(JP,A)
【文献】特開2015-172509(JP,A)
【文献】米国特許第05304350(US,A)
【文献】特開2007-139704(JP,A)
【文献】特開2004-264044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料注入用の孔部が形成された炉を有し、前記炉内に注入された試料を加熱により原子化する原子化部と、
試料を吸引および吐出するノズルと、
前記ノズルを前記孔部の直上位置に移動させるためのノズル移動機構と、
前記ノズル移動機構を移動させることにより、前記孔部に対する前記ノズルの先端の相対位置を調整可能に構成された位置調整機構と、
前記ノズルの先端が前記孔部の直上に位置している状態において、前記ノズルの先端および前記孔部を撮像視野に含むように配置された、少なくとも1つの撮像部と、
前記少なくとも1つの撮像部による撮像画像を表示するディスプレイ
と、
前記ノズルの先端の反射像を形成する、少なくとも1つの反射鏡とを備え、
前記少なくとも1つの撮像部は、前記少なくとも1つの反射鏡にそれぞれ対応して設置され、対応する前記反射鏡の反射像を取得する、原子吸光分光光度計。
【請求項2】
前記ノズル移動機構は、前記ノズルを支持するアームを有し、前記アームを回動させることにより、前記ノズルを、前記孔部の直上位置と、試料が収容された容器の直上位置との間で移動可能に構成され、
前記少なくとも1つの反射鏡は、前記アームに搭載される、請求項1に記載の原子吸光分光光度計。
【請求項3】
コントローラをさらに備え、
前記コントローラは、
前記少なくとも1つの撮像部
による撮像画像に基づいて前記孔部に対する前記ノズルの先端の相対位置を検出し、
検出された前記相対位置の基準位置に対するずれ量に応じて前記位置調整機構を作動させる、請求項1
または2に記載の原子吸光分光光度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子吸光分光光度計に関する。
【背景技術】
【0002】
実開昭61-190856号公報(特許文献1)には、ファーネス式の原子吸光分光光度計に使用する自動試料注入装置が開示される。特許文献1に記載される自動試料注入装置は、注入機構を有する。注入機構は、円筒形状のグラファイトチューブの側面に形成された小径の孔部(試料注入孔)を通してチューブ内に液体試料を注入するように構成される。具体的には、注入機構のアームは先端にノズルを保持しており、アーム回転軸に固定されている。注入機構は、アーム回転軸の回転運動により、試料が収容された容器の直上の位置から孔部の直上にノズルを移動させた後、アーム回転を停止する。続いて、注入機構は、アームを下降させてノズルの先端を孔部に挿入し、ノズルからチューブ内部に試料を注入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した自動試料注入装置を用いてグラファイトチューブに試料を注入するためには、アームの回動によってノズルがグラファイトチューブの孔部の直上位置に移動するように、孔部に対するノズルの相対位置を予め調整しておく必要がある。
【0005】
従来、この位置調整は、ユーザが目視で孔部の位置を確認し、孔部の直上にノズルの先端が位置するように、水平方向に注入機構を移動させることにより行なわれる。
【0006】
しかしながら、孔部は直径が1~2mm程度と小さいため、ユーザの目視によって孔部の位置を確認するには手間がかかり、結果的にノズルの位置調整は必ずしも容易な作業ではなかった。そのため、分析の準備に長時間を要してしまい、分析作業の効率を低下させるという問題があった。また、ユーザの目視による位置調整では、孔部の直上位置に対するずれが残ってしまう場合があり、位置調整の精度が安定しないことが懸念される。
【0007】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、原子吸光分光光度計において、ノズルの位置調整を容易化できるとともに、位置調整の精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る原子吸光分光光度計は、原子化部と、ノズルと、ノズル移動機構と、位置調整機構と、少なくとも1つの撮像部と、ディスプレイとを備える。原子化部は、試料注入用の孔部が形成された炉を有し、炉内に注入された試料を加熱により原子化する。ノズルは、試料を吸引および吐出する。ノズル移動機構は、ノズルを孔部の直上位置に移動させる。位置調整機構は、ノズル移動機構を移動させることにより、孔部に対するノズルの先端の相対位置を調整可能に構成される。少なくとも1つの撮像部は、ノズルの先端が孔部の直上に位置している状態において、ノズルの先端および孔部を撮像視野に含むように配置される。ディスプレイは、少なくとも1つの撮像部による撮像画像を表示する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、原子吸光分光光度計において、ノズルの位置調整を容易化できるとともに、位置調整の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る原子吸光分光光度計の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した原子化部およびオートサンプラの構成例を示す模式図である。
【
図3】
図1に示した原子化部およびオートサンプラの構成例を示す模式図である。
【
図4】コントローラによるノズルの位置調整の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施の形態2に係る原子吸光分光光度計の概略構成を示す図である。
【
図6】実施の形態3に係る原子吸光分光光度計の概略構成を示す図である。
【
図7】実施の形態4に係る原子吸光分光光度計の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さない。
【0012】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計の概略構成を示す図である。本実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100は、ファーネス式の原子吸光分光光度計である。ファーネス式の原子吸光分光光度計では、グラファイトチューブ内に試料を収容し、該チューブを加熱することによって試料を加熱して原子化する。原子蒸気中に光を通過させて吸光率を測定する。
【0013】
図1を参照して、原子吸光分光光度計100は、光源1と、原子化部2と、分光器3と、オートサンプラ4と、検出器5と、加熱器6と、ドライバ8と、位置調整機構10と、撮像部12と、コントローラ15とを備える。
【0014】
光源1は、元素固有の波長の光を出すランプを有する。ランプは、例えばホロカソードランプである。ホロカソードランプは、輝線スペクトルを含む光を発する。
【0015】
原子化部2は、円筒形状のグラファイトチューブ21を有しており、グラファイトチューブ21内に注入された液体試料を加熱して原子化させるように構成される。グラファイトチューブ21は「炉」の一実施例に対応する。グラファイトチューブ21の側面には、試料注入用の孔部22(試料注入孔)が形成されている。孔部22は、直径が1~2mm程度の円形状を有している。
【0016】
オートサンプラ4は、試料が入れられた試料容器(図示せず)から試料をノズル40で吸引し、原子化部2のグラファイトチューブ21の孔部22に試料を注入する動作を自動的に行なうように構成される。具体的には、オートサンプラ4は、円筒状のノズル40と、ノズル移動機構41とを含む。ノズル40は、図示しないサンプリング流路の先端部分に接続され、液体を吸引および吐出する。サンプリング流路は、例えばフレキシブルチューブで形成されており、ノズル40と反対側にはポンプ作用を引き起こすためのシリンジポンプが接続されている。このシリンジポンプの動作により、ノズル40により液体を吸引および吐出を行なうことができる。
【0017】
ノズル移動機構41は、アーム42と、回転軸43と、モータ44とを有する。アーム42は、ノズル40を支持する。アーム42は、モータ44により回転軸43の周りを回動するとともに、回転軸43に沿って昇降するように構成される。ドライバ8は、モータ44に接続され、コントローラ15からの制御指令に従って、モータ44を駆動する。モータ44によるアーム42の回動により、ノズル40は、図示しない試料容器の直上位置と、グラファイトチューブ21の孔部22の直上位置との間を移動することができる。
【0018】
位置調整機構10は、ノズル移動機構41(アーム42、回転軸43およびモータ44)を移動させることで、ノズル40とグラファイトチューブ21との相対位置を調整可能に構成される。位置調整機構10は、例えば、ノズル移動機構41を光源1の光軸に平行な2軸(X軸およびY軸)に移動させることができるXYステージを含む。
【0019】
加熱器6は、グラファイトチューブ21に電流を流すことにより、グラファイトチューブ21を加熱する。グラファイトチューブ21内の試料が加熱されることにより、試料中の元素が原子化される。
【0020】
分光器3は、入口スリット31と、出口スリット32と、反射鏡33,34と、回折格子35とを有する。
図1に示すように、光源1から発せられた光は、グラファイトチューブ21内を通過し、分光器3に導入される。分光器3に導入された光は、入口スリット31のスリット開口を通過すると、反射鏡33を経由して回折格子35に入射する。回折格子35が回動することによって、特定波長の光が選択的に反射鏡34を経由して出口スリット32のスリット開口を通過する。出口スリット32を通過した特定波長の光は検出器5に到達する。検出器5は、分光器3から特定波長の光を受けると、その受光強度に応じた電気信号をコントローラ15に出力する。
【0021】
なお、図示は省略するが、光源1と原子化部2との間、および、原子化部2と分光器3との間には、それぞれ適当な集光光学系が配設されており、光を適切に集光して次段へ導入するように構成される。
【0022】
コントローラ15は、原子吸光分光光度計100全体を制御する。コントローラ15は、主な構成要素として、プロセッサ150と、メモリ152と、入出力インターフェイス(I/F)154と、通信I/F156とを有する。これらの各部は図示しないバスを介して互いに通信可能に接続される。
【0023】
プロセッサ150は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)などの演算処理部である。プロセッサ150は、メモリ152に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、原子吸光分光光度計100の各部の動作を制御する。具体的には、プロセッサ150は、当該プログラムを実行することによって、後述する原子吸光分光光度計100の処理の各々を実現する。なお、
図1の例では、プロセッサが単数である構成を例示しているが、コントローラ15は複数のプロセッサを有する構成としてもよい。
【0024】
メモリ152は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリによって実現される。メモリ152は、プロセッサ150によって実行されるプログラムまたは、プロセッサ150によって用いられるデータなどを記憶する。
【0025】
入出力I/F154は、プロセッサ150と、光源1、検出器5、加熱器6、ドライバ8および位置調整機構10などの各部との間で各種データを遣り取りするためのインターフェイスである。
【0026】
通信I/F156は、原子吸光分光光度計100と他の装置との間で各種データを遣り取りするためのインターフェイスであり、アダプタまたはコネクタなどにより実現される。なお、通信方式は、無線LAN(Local Area Network)などの無線通信方式であってもよいし、USB(Universal Serial Bus)などを利用した有線通信方式であってもよい。
【0027】
コントローラ15には、ディスプレイ16および操作部18が接続される。ディスプレイ16は、液晶パネルなどで構成される。操作部18は、原子吸光分光光度計100に対するユーザの操作入力を受け付ける。操作部18は、典型的には、タッチパネル、キーボード、マウスなどで構成される。
【0028】
原子吸光分光光度計100において、試料の定量分析時には、オートサンプラ4によりグラファイトチューブ21内に試料を注入した後、加熱器6からグラファイトチューブ21に電流を流すことにより、グラファイトチューブ21を高温(例えば3000℃程度)に加熱する。これにより、試料はグラファイトチューブ21内で乾燥および灰化され、さらに試料中の元素が原子化される。光源1から発せられた光は、グラファイトチューブ21内を通過するとき、試料に含まれる元素に特有の波長の光が強く吸収される。グラファイトチューブ21を通過した光は分光器3で波長分散され、目的とする元素に特有の波長の光が選択されて検出器5に導入される。コントローラ15は、試料の有無による検出器5の受光光度の差から吸収率を算出し、算出された吸収率に基づいて試料を定量分析することができる。
【0029】
原子吸光分光光度計100では、実際の試料の分析に先立ち、グラファイトチューブ21の孔部22(試料注入孔)に対する、オートサンプラ4のノズル40の位置調整が行なわれる。この位置調整は、ノズル40および/またはグラファイトチューブ21が交換されたときに、試料の分析に先立って実行される。以下、ノズル40の位置調整について説明する。
【0030】
図2および
図3は、
図1に示した原子化部2およびオートサンプラ4の構成例を示す模式図である。
図2には、原子化部2の断面が模式的に示されている。
図3には、オートサンプラ4の概略的な平面配置が示されている。
【0031】
図2を参照して、原子化部2は、グラファイトチューブ21と、電極23,24と、窓板26とを有する。電極23,24は、円筒形状のグラファイトチューブ21の両端を保持する。窓板26は、透明の石英板により構成され、グラファイトチューブ21を挟んで光軸方向の両端部に設けられている。
【0032】
グラファイトチューブ21の上側の側面上に位置する電極23には、円形状を有する孔部25が形成されている。孔部25は、グラファイトチューブ21に形成されている孔部22と重なる位置に配置されている。孔部25の直径は、孔部22の直径以上である。なお、グラファイトチューブ21内へのノズル40の挿入を許容するように、孔部22および孔部25の直径はノズル40の外径よりも大きい。
【0033】
図3を参照して、オートサンプラ4は、ノズル移動機構41(アーム42、回転軸43およびモータ44)に加え、ターンテーブル9をさらに有する。ターンテーブル9は、円形状のテーブル92と、テーブル92を回転させるためのモータ90とを含む。テーブル92上には、液体試料が収容された試料容器を含む容器類94a,94b,94c,・・・が載置される。なお、容器類には、空容器、検量線作成用の標準液が収容された容器および希釈系列が収容された容器などが含まれる場合がある。
【0034】
モータ90によりテーブル92を回転させることにより、選択された容器が作業位置Pに移動する。モータ44によりアーム42を回動させてノズル40を作業位置Pに移動させることにより、作業位置Pに移動した容器に対し、ノズル40によって液体の吸引および吐出を行なうことができる。
【0035】
試料の定量分析時には、ノズル40を作業位置Pに移動させて試料容器から試料を吸引した後、アーム42の回動により、ノズル40をグラファイトチューブ21の孔部22の直上位置に移動させる。この位置でノズル40を降下させ、ノズル40の先端を孔部22に挿入し、ノズル40から試料を吐出する。試料の吐出後、再びアーム42の回動により、ノズル40を作業位置Pに戻す。これにより、グラファイトチューブ21内に試料が注入され、原子吸光の分析が行なわれる。
【0036】
なお、複数の試料を連続して分析する場合には、次の試料容器について同様の動作が繰り返し行なわれる。さらに、連続分析の直前、連続分析の途中または連続分析の直後において、洗浄液を用いてノズル40を洗浄する工程を行なうことができる。
【0037】
上述したオートサンプラ4を用いた試料の注入を行なうためには、アーム42の回動によってノズル40がグラファイトチューブ21の孔部22の直上位置に移動するように、孔部22に対するノズル40の相対位置を予め調整しておく必要がある。従来、この位置調整は、ユーザが目視でグラファイトチューブ21の孔部22の位置を確認し、孔部22の直上にノズル40の先端が位置するように、位置調整機構10を作動させて、光軸に平行な2軸(X軸、Y軸)方向にノズル移動機構41を移動させることにより行なわれる。
【0038】
しかしながら、孔部22は直径が1~2mm程度と小さいため、ユーザの目視によって孔部22の位置を捉えるには手間がかかり、結果的にノズル40の位置調整は必ずしも容易な作業ではなかった。そのため、分析の準備に長時間を要してしまい、分析作業の効率を低下させるという問題があった。また、ユーザの目視による位置調整では、孔部22の直上位置に対するずれが残ってしまう場合があり、位置調整の精度が安定しないことが懸念される。
【0039】
そのため、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100は、孔部22に対するノズル40の相対位置を検出するための構成として、撮像部12を備える。撮像部12は、ノズル40の先端を撮像範囲(撮像視野)に含むように設置される。具体的には、撮像部12は、そのフォーカス位置がノズル40の先端に位置するように設置される。撮像部12は、
図2に示すように、ノズル40の先端が孔部22の直上に位置している状態において、撮像視野にノズル40の先端および孔部22が含まれるように配置される。
【0040】
ここで、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を正しく検出するためには、孔部22の直上位置にできるだけ近づけて撮像部12を配置することが望ましい。そのため、撮像部12を、ノズル40の先端の直上位置に近接させて配置する。
図2の例では、アーム42の、ノズル40の先端の直上位置に近接した部分に撮像部12が搭載されている。これによると、ノズル40の先端が孔部22の直上に位置している状態において、撮像部12を孔部22の直上位置に近接させて配置することができる。
【0041】
撮像部12は、レンズなどの光学系および撮像素子を含む。撮像素子は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどにより実現される。撮像素子は、光学系を介して入射される光を電気信号に変換することによって撮像画像を生成する。撮像部12は、ノズル40の先端を撮像して画像データを生成し、生成した画像データをコントローラ15へ送信する。
【0042】
コントローラ15は、撮像部12から画像データを受信すると、撮像画像をディスプレイ16に表示する。これにより、ユーザは、ディスプレイ16に表示された撮像画像を参照することにより、ノズル40の先端の位置を確認することができる。したがって、ユーザは、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を確認しながら位置調整機構10を作動させることにより、孔部22の直上位置にノズル40の先端が位置するようにノズル移動機構41を移動させることができる。これによると、従来の目視による位置調整に比べて、ノズル40の位置調整作業が容易化される。その結果、分析作業の効率を向上させることができるとともに、ノズル40の位置調整の精度を高めることが可能となる。
【0043】
なお、コントローラ15は、公知の画像処理技術を用いることにより、上述したノズル40の位置調整を自動で行なう構成とすることができる。具体的には、コントローラ15は、撮像部12から画像データを取得すると、画像データから画像処理技術を用いてノズル40の先端と孔部22とを抽出することにより、ノズル40の先端と孔部22との位置関係を取得する。コントローラ15は、ノズル40の先端が予め設定された基準位置に位置するように、位置調整機構10を作動させる。この基準位置は、ノズル40が孔部22の直上に位置している状態でのノズル40の先端と孔部22との相対位置に基づいて設定することができる。これによると、ユーザによる位置調整作業が不要となるため、分析効率をさらに向上させることができる。
【0044】
図4は、コントローラ15によるノズル40の位置調整の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0045】
図4を参照して、最初にステップS01により、コントローラ15は、ノズル移動機構41のアーム42を回動させることにより、ノズル40をグラファイトチューブ21の孔部22の上部にセットする。
【0046】
次に、コントローラ15は、ステップS02により、撮像部12により、ノズル40の先端を撮像する。コントローラ15は、ステップS03では、撮像部12の撮像による画像データに公知の画像処理を施すことにより、ノズル40の先端および孔部22を抽出する。コントローラ15は、抽出結果に基づいて、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を検出する。
【0047】
コントローラ15は、ステップS04により、検出された孔部22とノズル40の先端との相対位置に基づいて、ノズル40の先端の位置の基準位置に対するずれ量を算出する。
【0048】
コントローラ15は、ステップS05に進み、位置調整機構10を作動させることにより、ステップS04で算出されたずれ量に基づいて孔部22に対するノズル40の相対位置を調整する。位置調整機構10は、ずれ量が小さくなる方向にノズル移動機構41を移動させる。ステップS05による調整によってずれ量が所定値以下になると、コントローラ15は、ステップS06により、ノズル40をその位置に固定し、位置調整を終了する。
【0049】
以上説明したように、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100によれば、ノズル40の先端を撮像する撮像部12により、グラファイトチューブ21の孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を検出できるため、孔部22に対するノズル40の相対位置の調整を容易化することができる。これにより、分析作業の効率を向上させることができるとともに、ノズル40の位置調整の精度を高めることが可能となる。
【0050】
さらに実施の形態1では、撮像部12をアーム42に搭載したことによって、アーム42を回動させてノズル40を作業位置Pに移動させると、ノズル40とともに撮像部12もグラファイトチューブ21から離れ、ターンテーブル9側に移動することになる。すなわち、ノズル移動機構41は、撮像部12の移動機構としても機能し得る。
【0051】
撮像部12を孔部22の直上位置に近づけて設置した場合、グラファイトチューブ21が加熱されて高温になると、撮像部12が過熱されて損傷するおそれがある。したがって、ノズル40の位置調整が終了すると、グラファイトチューブ21から撮像部12を離すための移動機構が必要となる。本実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100では、ノズル移動機構41と撮像部12の移動機構とを共通としたことにより、上述したように、ノズル40をグラファイトチューブ21から遠ざけると、撮像部12とグラファイトチューブ21との間の距離を離すことができる。したがって、撮像部12の移動機構が不要となる。これによると、簡易な構成で、試料の分析時に高温となるグラファイトチューブ21から撮像部12を退避させて撮像部12を過熱から保護することができる。
【0052】
なお、実施の形態1では、撮像部12をアーム42に搭載することにより、アーム42の回動を利用して撮像部12を移動させる構成としたが、原子吸光分光光度計100が撮像部12の移動機構を別途備える構成としてもよい。この場合、撮像部12の移動機構は、孔部22の直上位置に近接し、かつ、ノズル40の先端および孔部22を撮像視野に含むことができる第1の位置と、第1の位置に比べてグラファイトチューブ21から離れた第2の位置との間で撮像部12を移動可能に構成される。
【0053】
[実施の形態2]
上述した実施の形態1では、ノズル40の先端を撮像する撮像部12をアーム42に搭載する構成について例示した。実施の形態2では、撮像部12と反射鏡とを併用してノズル40の先端を撮像する構成について説明する。
【0054】
図5は、実施の形態2に係る原子吸光分光光度計100の概略構成を示す図である。
図5には、原子化部2およびオートサンプラ4の構成例が模式的に示される。
【0055】
実施の形態2に係る原子吸光分光光度計100は、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100と比較して、反射鏡14をさらに備える点が異なる。他の構成については実施の形態1と同じであるため説明は繰り返さない。
【0056】
図5を参照して、実施の形態2に係る原子吸光分光光度計100は、孔部22に対するノズル40の相対位置を検出するための構成として、反射鏡14および撮像部12を備える。反射鏡14は、ノズル40の先端を含む像を反射させることが可能な位置に設置される。
図5に示すように、ノズル40が孔部22の直上に位置している状態において、反射鏡14は、反射像にノズル40の先端および孔部22が含まれるように配置される。
【0057】
反射鏡14は、ノズル40の先端の直上位置に近接させて配置される。
図5の例では、反射鏡14は、アーム42の、ノズル40の先端の直上位置に近接した部分に搭載されている。これによると、ノズル40の先端が孔部22の直上に位置している状態において、反射鏡14を孔部22の直上位置に近接させて配置することができる。
【0058】
撮像部12は、反射鏡14によるノズル40の先端の反射像を取得可能な位置に設置される。
図5に示すように、ノズル40を孔部22の直上位置に移動させると、反射鏡14では、ノズル40の先端と孔部22とを含む反射像が形成される。撮像部12は、反射鏡14の反射像を取得することにより、孔部22に対するノズル40の相対位置を検出することができる。
【0059】
撮像部12は、反射像に基づいてノズル40の先端の画像データを生成し、生成した画像データをコントローラ15へ送信する。コントローラ15は、撮像部12による撮像画像をディスプレイ16に表示する。これにより、ユーザは、ディスプレイ16に表示された撮像画像を参照することにより、ノズル40の先端の位置を確認することができる。よって、実施の形態1と同様に、ユーザは、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を確認しながら位置調整機構10を作動させることにより、孔部22の直上位置にノズル40の先端が位置するようにノズル移動機構41を移動させることができる。
【0060】
あるいは、コントローラ15は、撮像部12から取得した画像データに公知の画像処理を施すことにより、ノズル40の先端と孔部22との相対位置を取得することができる。よって、コントローラ15は、取得した相対位置に基づいて、孔部22に対するノズル40の先端の位置調整を自動で行なうことができる。
【0061】
以上説明したように、実施の形態2に係る原子吸光分光光度計100によれば、反射鏡14を利用して撮像部12はノズル40の先端を撮像することができるため、ユーザは、撮像部12による撮像画像からグラファイトチューブ21の孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を検出することができる。したがって、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100と同様の効果を得ることができる。
【0062】
さらに実施の形態2に係る原子吸光分光光度計100によれば、反射鏡14によるノズル40の先端の反射像を撮像部12が取得する構成としたことにより、撮像部12をグラファイトチューブ21から離して設置することができる。したがって、試料分析時に高温となるグラファイトチューブ21との距離を離して撮像部12を設置できるため、撮像部12を過熱から保護することができる。
【0063】
[実施の形態3]
上述した実施の形態1では、1台の撮像部12を用いてノズル40の先端を撮像する構成について説明したが、複数台の撮像部12を用いてノズル40の先端を多方向から撮像する構成としてもよい。
【0064】
図6は、実施の形態3に係る原子吸光分光光度計100の概略構成を示す図である。
図6には、原子化部2およびオートサンプラ4の構成例が模式的に示される。
【0065】
実施の形態3に係る原子吸光分光光度計100は、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100と比較して、複数の撮像部12A,12Bを備える点が異なる。他の構成については実施の形態1と同じであるため説明は繰り返さない。また撮像部12A,12Bの構成は撮像部12と同じであるため説明は繰り返さない。
【0066】
図6を参照して、撮像部12A,12Bは、ノズル40の先端を撮像視野に含むように配置される。撮像部12A,12Bは、ノズル40の先端が孔部22の直上に位置している状態において、ノズル40の先端および孔部22を撮像視野に含むように配置される。
【0067】
ただし、撮像部12Aと撮像部12Bとは、互いに異なる角度でノズル40の先端を撮像するように配置される。
図6の例では、撮像部12Aと撮像部12Bとはノズル40を中心として対象となる位置に配置されている。撮像部12A,12Bはともにアーム42に搭載されている。
【0068】
撮像部12A,12Bの各々は、ノズル40の先端を撮像して画像データを生成し、生成した画像データをコントローラ15へ送信する。コントローラ15は、撮像部12A,12Bから画像データを受信すると、2枚の撮像画像をディスプレイ16に表示する。
【0069】
ユーザは、ディスプレイ16に表示された2枚の撮像画像を参照することにより、ノズル40の先端の位置を確認することができる。2枚の撮像画像は、互いに異なる角度からノズル40の先端を撮像しているため、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置が異なっている。ユーザは、2枚の撮像画像からそれぞれ取得される2つの相対位置に基づいて、ノズル40の先端の位置を確認することができる。
【0070】
実施の形態1で述べたように、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を正しく検出するためには、孔部22の直上位置に近接して撮像部12を配置することが望ましいが、撮像部12の配置の制約により撮像部12を孔部22の直上位置に近接させることが難しい場合がある。このような場合には、
図6に示すように、複数の撮像部12A,12Bを設置して互いに異なる角度からノズル40の先端を撮像する構成とすることにより、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を多方向から検出し、複数の検出結果から導出される値に基づいて、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を取得することができる。例えば、コントローラ15は、公知の画像処理技術を用いて複数の撮像部12A,12Bによる複数枚の撮像画像を合成し、孔部22の直上位置からノズル40の先端を撮像しているような画像を生成することができる。これによると、ユーザは、ディスプレイ16に表示された合成画像から、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を検出することができる。よって、本実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、ユーザは、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を確認しながら位置調整機構10を作動させることにより、孔部22の直上位置にノズル40の先端が位置するようにノズル移動機構41を移動させることができる。
【0071】
また、コントローラ15は、公知の画像処理技術を用いることにより、ノズル40の位置調整を自動で行なう構成とすることができる。具体的には、コントローラ15は、撮像部12A,12Bの各々から画像データを取得すると、これら2つの画像データを合成することにより、孔部22の直上位置から見た、ノズル40の先端および孔部22の画像を生成する。コントローラ15は、生成した画像に基づいて、ノズル40の先端と孔部22との相対位置を取得し、ノズル40の先端が予め設定された基準位置に位置するように位置調整機構10を作動させる。
【0072】
以上説明したように、実施の形態3に係る原子吸光分光光度計100によれば、各々がノズル40の先端を撮像する複数の撮像部12A,12Bによる撮像画像に基づいて、グラファイトチューブ21の孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を検出することができる。したがって、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100と同様の効果を奏する。
【0073】
また実施の形態3に係る原子吸光分光光度計100によれば、複数の撮像部12A,12Bの移動機構と、ノズル移動機構41とが共通であるため、ノズル40をグラファイトチューブ21から遠ざけると、撮像部12A,12Bとグラファイトチューブ21との間の距離を離すことができる。これによると、簡易な構成で、試料の分析時に高温となるグラファイトチューブ21から撮像部12A,12Bを退避させて撮像部12A,12Bを過熱から保護することができる。
【0074】
なお、実施の形態3では、撮像部12A,12Bをアーム42に搭載することにより、アーム42の回動を利用して撮像部12A,12Bを移動させる構成としたが、原子吸光分光光度計100が撮像部12A,12Bの移動機構を別途備える構成としてもよい。この場合、撮像部12A,12Bの移動機構は、孔部22に近接し、かつ、ノズル40の先端を撮像視野に含むことができる第1の位置と、第1の位置に比べてグラファイトチューブ21から離れた第2の位置との間で撮像部12A,12Bを移動可能に構成される。
【0075】
さらに実施の形態3に係る原子吸光分光光度計100によれば、複数の撮像画像を合成し、孔部22の直上位置から見たノズル40の先端および孔部22の画像を生成することにより、撮像部の配置が制約される場合であっても、孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を検出することができる。
【0076】
なお、
図6の例では、2台の撮像部12A,12Bを設置する構成について説明したが、撮像部の台数はこれに限られるものではなく、3台以上の撮像部を設置する構成としてもよい。
【0077】
[実施の形態4]
図7は、実施の形態4に係る原子吸光分光光度計100の概略構成を示す図である。
図7には、原子化部2およびオートサンプラ4の構成例が模式的に示される。
【0078】
実施の形態4に係る原子吸光分光光度計100は、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100と比較して、複数の撮像部12A,12Bおよび複数の反射鏡14A,14Bを備える点が異なる。他の構成については実施の形態1と同じであるため説明は繰り返さない。また撮像部12A,12Bの構成は撮像部12と同じであるため説明は繰り返さない。
【0079】
図7を参照して、実施の形態4に係る原子吸光分光光度計100は、孔部22に対するノズル40の位置関係を検出するための構成として、反射鏡14A,14Bおよび撮像部12A,12Bを備える。反射鏡14A,14Bは、ノズル40の先端を含む像を反射させることが可能な位置に設置される。
図7に示すように、反射鏡14A,14Bの各々は、ノズル40が孔部22の直上に位置している状態において、像にノズル40の先端および孔部22が含まれるように配置される。ただし、反射鏡14Aと反射鏡14Bとは、互いに異なる角度でノズル40の先端を含む像を反射するように配置される。
図7の例では、反射鏡14A,14Bはともにアーム42に搭載されている。
【0080】
撮像部12Aは、反射鏡14Aで反射された像を取得可能な位置に設置される。撮像部12Bは、反射鏡14Bで反射された像を取得可能な位置に設置される。
図7に示すように、ノズル40を孔部22の直上位置に移動させると、反射鏡14A,14Bの各々には、ノズル40の先端と孔部22とを含む像が形成される。撮像部12Aは、反射鏡14Aにより反射された像を取得することにより、孔部22に対するノズル40の位置関係を検出することができる。撮像部12Bは、反射鏡14Bにより反射された像を取得することにより、孔部22に対するノズル40の位置関係を検出することができる。
【0081】
撮像部12A,12Bは、ノズル40の先端を撮像して画像データを生成し、生成した画像データをコントローラ15へ送信する。コントローラ15は、撮像部12A,12Bから画像データを受信すると、2枚の撮像画像をディスプレイ16に表示する。
【0082】
ユーザは、ディスプレイ16に表示された2枚の撮像画像を参照することにより、ノズル40の先端の位置を確認することができる。2枚の撮像画像は、互いに異なる角度からノズル40の先端を撮像しているため、孔部22に対するノズル40の先端の位置関係が異なっている。ユーザは、2枚の撮像画像からそれぞれ取得される2つの位置関係に基づいて、ノズル40の先端の位置を確認することができる。
【0083】
撮像部12を孔部22の直上位置に近接させることが難しい場合には、複数の反射鏡14A,14Bおよび複数の撮像部12A,12Bを併用して互いに異なる角度からノズル40の先端を撮像する構成とすることにより、孔部22に対するノズル40の先端の位置関係を多方向から検出し、複数の検出結果から算出される値(例えば、平均値)に基づいて、孔部22に対するノズル40の先端の位置関係を取得することができる。よって、本実施の形態4においても、実施の形態1と同様に、ユーザは、孔部22に対するノズル40の先端の位置関係を確認しながら位置調整機構10を作動させることにより、孔部22の直上位置にノズル40が位置するようにノズル移動機構41を移動させることができる。
【0084】
また、コントローラ15は、公知の画像処理技術を用いることにより、ノズル40の位置調整を自動で行なう構成とすることができる。具体的には、コントローラ15は、撮像部12A,12Bの各々から画像データを取得すると、画像データごとに、画像処理技術を用いてノズル40の先端と孔部22とを抽出する。コントローラ15は、複数の抽出結果に基づいて、ノズル40の先端と孔部22との位置関係を取得し、ノズル40の先端が予め設定された基準位置に位置するように位置調整機構10を作動させる。
【0085】
以上説明したように、実施の形態4に係る原子吸光分光光度計100によれば、各々がノズル40の先端を撮像する複数の撮像部による撮像画像に基づいて、グラファイトチューブ21の孔部22に対するノズル40の先端の相対位置を検出することができる。したがって、実施の形態1に係る原子吸光分光光度計100と同様の効果を奏する。
【0086】
さらに実施の形態4に係る原子吸光分光光度計100によれば、複数の反射鏡14A,14Bによるノズル40の先端の反射像を複数の撮像部12A,12Bがそれぞれ取得する構成としたことにより、複数の撮像部12A,12Bをグラファイトチューブ21から離して設置することができる。したがって、試料分析時に高温となるグラファイトチューブ21との距離を離して撮像部12A,12Bを設置することができるため、撮像部12A,12Bを過熱から保護することができる。
【0087】
なお、
図7の例では、2台の反射鏡14A,14Bおよび2台の撮像部12A,12Bを設置する構成について説明したが、反射鏡および撮像部の台数はこれに限られるものではなく、3台以上の反射鏡および3台以上の撮像部を設置する構成としてもよい。
【0088】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0089】
(第1項)一態様に係る原子吸光分光光度計は、原子化部と、ノズルと、ノズル移動機構と、位置調整機構と、少なくとも1つの撮像部と、ディスプレイとを備える。原子化部は、試料注入用の孔部が形成された炉を有し、炉内に注入された試料を加熱により原子化する。ノズルは、試料を吸引および吐出する。ノズル移動機構は、ノズルを孔部の直上位置に移動させる。位置調整機構は、ノズル移動機構を移動させることにより、孔部に対するノズルの先端の相対位置を調整可能に構成される。少なくとも1つの撮像部は、ノズルの先端が孔部の直上に位置している状態において、ノズルの先端および孔部を撮像視野に含むように配置される。ディスプレイは、少なくとも1つの撮像部による撮像画像を表示する。
【0090】
第1項に記載の原子吸光分光光度計によれば、ノズルの先端を撮像する少なくとも1つの撮像部により、炉の孔部に対するノズルの先端の相対位置を検出できるため、孔部に対するノズルの相対位置の調整を容易化することができる。これにより、分析作業の効率を向上させることができるとともに、ノズルの位置調整の精度を高めることが可能となる。
【0091】
(第2項)第1項に記載の原子吸光分光光度計は、少なくとも1つの撮像部を、孔部の直上位置に近接した第1の位置と、第1の位置と比べて炉から離れた第2の位置との間で移動させるための移動機構をさらに備える。
【0092】
第2項に記載の原子吸光分光光度計によれば、ノズルの位置調整が終了した後、移動機構によって炉と各撮像部との間の距離を離すことができる。これにより、試料の分析時に高温となる炉から少なくとも1つの撮像部を退避させて少なくとも1つの撮像部を過熱から保護することができる。
【0093】
(第3項)第2項に記載の原子吸光分光光度計において、ノズル移動機構は、ノズルを、孔部の直上位置と、試料が収容された容器の直上位置との間で移動可能に構成される。撮像部の移動機構は、ノズル移動機構と共通である。
【0094】
第3項に記載の原子吸光分光光度計によれば、ノズル移動機構と少なくとも1つの撮像部の移動機構とが共通であるため、ノズルを炉から遠ざけることで、各撮像部と炉との間の距離を離すことができる。したがって、撮像部の移動機構が不要となる。これによると、簡易な構成で、試料の分析時に高温となる炉から少なくとも1つの撮像部を退避させることができる。
【0095】
(第4項)第3項に記載の原子吸光分光光度計において、ノズル移動機構は、ノズルを支持するアームを有する。ノズル移動機構は、アームを移動させることにより、ノズルを、孔部の直上位置と、試料が収容された容器の直上位置との間で移動可能に構成される。少なくとも1つの撮像部は、アームに搭載される。
【0096】
第4項に記載の原子吸光分光光度計によれば、アームの移動によってノズルを孔部の直上位置から移動させることにより、各撮像部と炉との間の距離を離すことができる。よって、簡易な構成で、試料の分析時に高温となる炉から少なくとも1つの撮像部を退避させることができる。
【0097】
(第5項)第1項に記載の原子吸光分光光度計は、少なくとも1つの反射鏡をさらに備える。少なくとも1つの反射鏡は、ノズルの先端の反射像を形成する。少なくとも1つの撮像部は、前記少なくとも1つの反射鏡にそれぞれ対応して設置され、対応する反射鏡の反射像を取得する。
【0098】
第5項に記載の原子吸光分光光度計によれば、少なくとも1つの反射鏡を利用して少なくとも1つの撮像部はノズルの先端を撮像することができるため、少なくとも1つの撮像部による撮像画像から炉の孔部に対するノズルの先端の相対位置を検出することができる。したがって、孔部に対するノズルの相対位置の調整を容易化することができる。また、少なくとも1つの反射鏡によるノズルの先端の反射像を少なくとも1つの撮像部がそれぞれ取得する構成としたことにより、少なくとも1つの撮像部を炉から離して設置することができる。したがって、試料分析時に高温となる炉との距離を離して少なくとも1つの撮像部を設置することができるため、各撮像部を過熱から保護することができる。
【0099】
(第6項)第5項に記載の原子吸光分光光度計において、ノズル移動機構は、ノズルを支持するアームを有する。ノズル移動機構は、アームを移動させることにより、ノズルを、孔部の直上位置と、試料が収容された容器の直上位置との間で移動可能に構成される。少なくとも1つの反射鏡は、アームに搭載される。
【0100】
第6項に記載の原子吸光分光光度計によれば、アームの移動によってノズルを孔部の直上位置から移動させることにより、各反射鏡と炉との間の距離を離すことができる。よって、簡易な構成で、試料の分析時に高温となる炉から少なくとも1つの反射鏡を退避させることができる。
【0101】
(第7項)第1項から第6項に記載の原子吸光分光光度計は、コントローラをさらに備える。コントローラは、少なくとも1つの撮像部よる撮像画像に基づいて孔部に対する前記ノズルの先端の相対位置を検出する。コントローラは、検出された相対位置の基準位置に対するずれ量に応じて位置調整機構を作動させる。
【0102】
第7項に記載の原子吸光分光光度計によれば、ユーザによるノズルの位置調整作業が不要となるため、分析効率をさらに向上させることができる。
【0103】
なお、上述した実施の形態1~4および変更例について、明細書内で言及されていない組み合わせを含めて、不都合または矛盾が生じない範囲内で、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1 光源、2 原子化部、3 分光器、4 オートサンプラ、5 検出器、6 加熱器、8 ドライバ、9 ターンテーブル、10 位置調整機構、12,12A,12B 撮像部、14,14A,14B,33,34 反射鏡、15 コントローラ、16 ディスプレイ、18 操作部、21 グラファイトチューブ、22,25 孔部、23,24 電極、26 窓板、31 入口スリット、32 出口スリット、35 回折格子、40 ノズル、41 ノズル移動機構、42 アーム、43 回転軸、44,90 モータ、92 テーブル、100 原子吸光分光光度計、150 プロセッサ、152 メモリ、154 入出力I/F、156 通信I/F。