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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】離型フィルムおよび成型品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230816BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230816BHJP
   B29C 33/68 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
B29C33/68
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022161977
(22)【出願日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】榎本 陽介
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168688(JP,A)
【文献】特開2016-112729(JP,A)
【文献】特開2008-115245(JP,A)
【文献】特開2003-80637(JP,A)
【文献】特開2012-66447(JP,A)
【文献】特開2017-177890(JP,A)
【文献】特開2009-248453(JP,A)
【文献】特開2019-35061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、該第1離型層に積層されたクッション層とを有し、
金属基板上に配置された、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物の表面に、
前記第1離型層側の表面が接するように重ねて用いられる離型フィルムであって、
JIS K 7126-2に準拠して測定された、当該離型フィルムの酸素透過度は、100.0cc/(m ・atm・day)以上160.0cc/(m ・atm・day)以下であることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
前記第1熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂を含む請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂は、結晶性を有し、前記第1離型層は、その結晶化度が10%以上50%以下である請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記クッション層は、前記ポリエステル系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを含む第3熱可塑性樹脂組成物からなる請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記第1離型層は、その平均厚さが7μm以上38μm以下である請求項1または4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記クッション層は、その平均厚さが40μm以上110μm以下である請求項5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
当該離型フィルムは、その平均厚さが50μm以上180μm以下である請求項6に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記第1離型層は、前記クッション層と反対側の表面における10点平均粗さ(Rz)が0.1μm以上20.0μm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項9】
当該離型フィルムは、前記クッション層の前記第1離型層と反対側に積層された、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層を有する請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項10】
請求項1に記載の離型フィルムの前記第1離型層が対象物側になるように、
前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される側の面が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されていることを特徴とする成型品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムおよび成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路が露出したフレキシブル回路基板に対して、カバーレイフィルムを、カバーレイフィルムが備える接着剤層を介して、加熱プレスにより接着してフレキシブルプリント回路基板すなわち積層体を形成する際に、離型フィルムが、一般的に、使用されている。
【0003】
このような離型フィルムを用いたフレキシブルプリント回路基板、換言すればフレキシブル回路基板とカバーレイフィルムとの積層体の形成の際に、離型フィルムには、2つの特性、すなわち、埋め込み性および離型性に優れることが要求されてきた。
【0004】
詳しくは、まず、フレキシブルプリント回路基板には、フレキシブル回路基板へのカバーレイフィルムの積層により、凹部が形成されるが、この凹部に対して、優れた埋め込み性を発揮することが離型フィルムに求められる。
【0005】
より具体的には、フレキシブル回路基板に対するカバーレイフィルムの積層は、カバーレイフィルムが備える接着剤層を介して行われるが、この積層の際に、凹部に対して、離型フィルムが優れた埋め込み性を発揮して、凹部内における接着剤のしみ出しが抑制されることが求められる。
【0006】
また、上記のようなフレキシブル回路基板に対するカバーレイフィルムの積層の後には、形成されたフレキシブルプリント回路基板から、優れた離型性をもって離型フィルムが剥離されることが求められる。
【0007】
より具体的には、形成されたフレキシブルプリント回路基板から、離型フィルムを剥離させる際に、フレキシブルプリント回路基板に対して、離型フィルムが優れた離型性を発揮して、フレキシブルプリント回路基板における折れシワおよび破断の発生が抑制されることが求められる。
【0008】
上記のような2つの特性(埋め込み性および離型性)に優れた離型フィルムとすることを目的に、例えば、特許文献1では、ポリエステル系エラストマー層と、ポリエステル層とを有する離型フィルムが提案されている。
【0009】
ところが、このフレキシブルプリント回路基板として、より優れた電気特性を有するものを製造することを考慮した場合、かかる構成をなす離型フィルムを用いて、フレキシブルプリント回路基板を製造すると、カバーレイフィルムを、フレキシブル回路基板に対して、加熱プレスする際に、離型フィルムとフレキシブル回路基板との間に残存する空気中に含まれる酸素に基づいて、フレキシブル回路基板が備える回路が酸化される。そのため、より優れた電気特性を有するフレキシブルプリント回路基板が得られているとはいえないのが実情であった。
【0010】
また、このような問題は、金属基板上に配置された、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物に対して、離型フィルムを貼付した状態とし、この状態で熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させることで、対象物を用いて成型品を製造する場合等についても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-88351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、凹部に対する離型フィルムの埋め込みから、この凹部から離型フィルムを離型させるまでの間に、この凹部で露出する金属基板が酸化するのを的確に抑制または防止することができる離型フィルム、および、かかる離型フィルムを用いた成型品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、該第1離型層に積層されたクッション層とを有し、
金属基板上に配置された、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成された対象物の表面に、
前記第1離型層側の表面が接するように重ねて用いられる離型フィルムであって、
JIS K 7126-2に準拠して測定された、当該離型フィルムの酸素透過度は、100.0cc/(m ・atm・day)以上160.0cc/(m ・atm・day)以下であることを特徴とする離型フィルム。
【0014】
(2) 前記第1熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂を含む上記(1)に記載の離型フィルム。
【0015】
(3) 前記ポリエステル系樹脂は、結晶性を有し、前記第1離型層は、その結晶化度が10%以上50%以下である上記(1)または(2)に記載の離型フィルム。
【0016】
(4) 前記クッション層は、前記ポリエステル系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを含む第3熱可塑性樹脂組成物からなる上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の離型フィルム。
【0017】
(5) 前記第1離型層は、その平均厚さが7μm以上38μm以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の離型フィルム。
【0018】
(6) 前記クッション層は、その平均厚さが40μm以上110μm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の離型フィルム。
【0019】
(7) 当該離型フィルムは、その平均厚さが50μm以上180μm以下である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の離型フィルム。
【0020】
(8) 前記第1離型層は、前記クッション層と反対側の表面における10点平均粗さ(Rz)が0.1μm以上20.0μm以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の離型フィルム。
【0021】
(9) 当該離型フィルムは、前記クッション層の前記第1離型層と反対側に積層された、第2熱可塑性樹脂組成物からなる第2離型層を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の離型フィルム。
【0023】
10) 上記(1)ないし()のいずれかに記載の離型フィルムの前記第1離型層が対象物側になるように、
前記対象物上に前記離型フィルムを配置する工程と、前記離型フィルムが配置された前記対象物に対し、加熱プレスを行う工程と、を含み、前記離型フィルムを配置する前記工程において、前記対象物の前記離型フィルムが配置される側の面が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料によって形成されていることを特徴とする成型品の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層と、この第1離型層に積層されたクッション層とを有する離型フィルムにおいて、JIS K 7126-2に準拠して測定された、離型フィルムの酸素透過度が60.0cc/(m・atm・day)以上であることを満足している。そのため、例えば、フレキシブル回路基板とカバーレイフィルムとを用いてフレキシブルプリント回路基板を得る際に、凹部に対する離型フィルムの埋め込みから、この凹部から離型フィルムを離型させるまでの間に、この凹部で露出する、フレキシブル回路基板が備える回路が酸化するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られるフレキシブルプリント回路基板を、より優れた電気特性を有するものとし得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】フレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機の主要部を示す側面図である。
図2図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における各工程を示す縦断面図である。
図3図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における加熱プレス工程を示す縦断面図である。
図4】本発明の離型フィルムの実施形態を示す縦断面図である。
図5図4に示す離型フィルムのA部を部分的に拡大した部分拡大縦断面図である。
図6図4に示す離型フィルムを製造する離型フィルム製造装置を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0027】
なお、以下では、本発明の離型フィルムを用いた、フレキシブルプリント回路基板の製造を、ロールツーロールプレス機を用いて製造する場合を一例に説明する。また、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法を説明するのに先立って、まず、このフレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機について説明する。
【0028】
<ロールツーロールプレス機>
図1は、フレキシブルプリント回路基板の製造に用いられるロールツーロールプレス機の主要部を示す側面図、図2は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における各工程を示す縦断面図、図3は、図1に示すロールツーロールプレス機を用いたフレキシブルプリント回路基板の製造方法における加熱プレス工程を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図3中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
【0029】
ロールツーロールプレス機100(RtoRプレス機)は、離型フィルム10、フレキシブルプリント回路基板200(以下「FPC」と言うこともある。)およびガラスクロス300A、300Bを搬送する搬送手段(図示せず)と、FPC200が備えるフレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220(以下、「CLフィルム」と言うこともある。)とにおいて、離型フィルム10を用いてフレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220を加熱プレスすることで接合する加熱プレス手段50と、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されたFPC200から、離型フィルム10を離型(剥離)させる離型手段60とを備えている。
【0030】
搬送手段は、それぞれ異なる巻出しローラに巻回されたFPC200、離型フィルム10A、10B、および、ガラスクロス300A、300Bを、それぞれ、これらの長手方向に沿って、テンショナ(テンションローラー)の回転により、搬送するとともに、加熱プレス手段50および離型手段60による処理後に、巻取りローラに巻回するものである。
【0031】
なお、各ローラは、それぞれ、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料で構成されている。また、これらのローラは、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いており、互いに離間して配置されている。
【0032】
加熱プレス手段50は、図1に示すように、加熱圧着部52を有している。
加熱圧着部52は、一対の加熱圧着板521を有している。加熱圧着板521は、搬送手段により搬送されるとともに、重ね合わされた状態とされたガラスクロス300A、離型フィルム10A、FPC200、離型フィルム10Bおよびガラスクロス300Bに対向して、その上方および下方に1つずつ配置されている。そして、重ね合わされた状態とされたガラスクロス300A、離型フィルム10A、FPC200、離型フィルム10Bおよびガラスクロス300Bが、加熱圧着板521同士の間を通過する際に、加熱圧着板521により、ガラスクロス300A、300Bと、離型フィルム10A、10Bとを介して、FPC200が加熱しつつ加圧される。したがって、CLフィルム220が備える接着剤層222の硬化反応が、この加熱により進行するため、FPC200において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが接着剤層222を介して接合される。
【0033】
換言すれば、カバーレイ221とフレキシブル回路基板210とが、接着剤層222を介して接合される。また、FPC200の加熱・加圧の際、すなわち、カバーレイ221とフレキシブル回路基板210との接着剤層222を介した接合の際に、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10が埋入されることとなる。そのため、凹部223内における、接着剤層222に由来する接着剤のしみ出しが抑制される(図2(b)参照)。
【0034】
なお、加熱圧着板521により加熱圧着される前において、FPC200は、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを重ね合わせることで積層された状態となってはいるが、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とは、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されていない。そして、加熱圧着板521による圧着により、CLフィルム220が備える接着剤層222がフレキシブル回路基板210に密着し、さらに、この状態で、加熱圧着板521による加熱により、接着剤層222の硬化反応が進行することで、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが接着剤層222を介して接合される。
【0035】
離型手段60は、図1に示すように、加熱プレス手段50に対して、搬送方向の下流側に配置されている。この離型手段60は、FPC200と離型フィルム10A、10Bとを離間させるように構成されている。ここで、加熱プレス手段50が備える加熱圧着部52において、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10が埋入され、これにより、CLフィルム220(FPC200)に離型フィルム10が接合されているが、この離型手段60の作用により、CLフィルム220(FPC200)から離型フィルム10を剥離(離型)させ得るように構成されている(図2(c)参照)。したがって、離型手段60による作用に基づいて、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが接着剤層222を介して接合された構成をなすFPC200が、離型フィルム10から剥離された状態で得られることとなる。
【0036】
以上のようなロールツーロールプレス機100を用いて、フレキシブルプリント回路基板200(FPC200)を製造し得る。以下、このロールツーロールプレス機を用いたFPC200の製造方法について説明する。なお、このFPC200の製造方法に、本発明の成型品の製造方法が適用される。
【0037】
FPC200の製造方法は、本実施形態では、それぞれがシート状をなす、ガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとを、この順で重ね合わされた状態をなす積層体とする第1の工程と、かかる積層体を加熱プレスすることで、FPC200において、フレキシブル回路基板210に対してカバーレイ221(CLフィルム220)を、接着剤層222を介して接合する第2の工程と、FPC200から離型フィルム10(10A、10B)を離型させて、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されているFPC200を得る第3の工程とを有する。
【0038】
以下、これらの各工程について、順次説明する。
(第1の工程)
まず、それぞれがシート状をなす、巻出しローラにそれぞれ巻回されたガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとを、搬送手段による搬送の際に、この順で重ね合わされた状態をなす積層体とする(離型フィルム配置工程、図1図2(a)、図3参照。)。
【0039】
なお、各部材(フィルム)を積層体に積層する方法は特に限定されず、例えば、ロールにより押し付けながら積層してもよいし、プレスにより押し付けながら積層してもよい。また、各部材を積層する順番も、任意に行うことが出来る。例えば、すべての部材を同時に積層してもよいし、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210を事前に積層しておき、その後その他の部材を同時に積層してもよい。
【0040】
また、この第1の工程における前記積層体の形成により、本発明の成型品の製造方法における、対象物(FPC200)上に離型フィルム10を配置する工程が構成される。
【0041】
(第2の工程)
次に、ガラスクロス300Aと、離型フィルム10Aと、FPC200と、離型フィルム10Bと、ガラスクロス300Bとが、この順で重ね合わされた積層体を、加熱プレス手段50(加熱圧着部52)を用いて、加圧しつつ加熱(加熱プレス)することで、接着剤層222がフレキシブル回路基板210に密着した状態で、接着剤層222の硬化反応が進行することから、FPC200において、フレキシブル回路基板210に対してカバーレイ221(CLフィルム220)が、接着剤層222を介して接合された接合体が形成される(加熱プレス工程、図1図2(b)、図3参照。)。
【0042】
そして、この際に、カバーレイ221に離型フィルム10Aが密着しつつ、カバーレイ221に形成される凹部223内に離型フィルム10Aが埋入されることから、凹部223内における、接着剤層222に由来する接着剤のしみ出しが抑制される。
【0043】
なお、FPC200(カバーレイ221)の凹部223に形成される段差は、例えば、FPC200が車載用のものに適用された場合には、その高さが30μm以上100μm以下程度の大きさに設定される。
【0044】
この第2の工程(加熱プレス工程)において、FPC200を加熱する温度は、特に限定されないが、例えば、100℃以上250℃以下であることが好ましく、150℃以上200℃以下であることがより好ましい。
【0045】
また、第2の工程において、FPC200を加圧する際に、加熱圧着部52において設定される圧力は、特に限定されないが、1MPa以上14MPa以下であることが好ましく、より好ましくは5MPa以上14MPa以下に設定される。
【0046】
さらに、前記積層体を搬送する搬送速度は、40mm/sec以上400mm/sec以下であることが好ましく、より好ましくは100mm/sec以上350mm/sec以下に設定される。換言すれば、第2の工程(本工程)において、前記積層体を、加熱プレス手段50を用いて加熱プレスし、剥離工程(次工程)において、前記接合体から離型フィルム10が剥離されるまでの密着時間は、好ましくは1.0sec以上10.0sec以下、より好ましくは4.0sec以上7.0sec以下に設定される。前記搬送速度すなわち前記密着時間を、かかる範囲内に設定することで、効率よくFPC200が製造されているといえる。すなわち、FPC200が優れた生産性をもって製造されているといえる。
【0047】
なお、第2の工程により、本発明の成型品の製造方法における、離型フィルム10が配置された対象物(FPC200)に対し、加熱プレスを行う工程が構成される。また、カバーレイ221(絶縁層)が、半硬化状態の熱硬化性樹脂を含む材料で構成される場合には、対象物(FPC200)の離型フィルム10が配置される側の面を、カバーレイ221が構成する。そして、このカバーレイ221の表面に、第1離型層1側の表面が接するように離型フィルム10が重ねて用いられているため、離型フィルム10により、凹部223が形成されたカバーレイ221の形状を維持して、熱硬化性樹脂を硬化させ得ることから、フレキシブル回路基板210上に、カバーレイ221(成型品)を優れた精度で成型することができる。また、前記密着時間が前記範囲内に設定されているため、離型フィルム10により、凹部223が形成されたカバーレイ221の形状を維持した状態で、カバーレイ221を構成する熱硬化性樹脂の硬化反応を進行させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態においては加熱プレスにより加熱する手段を示したが、必ずしもこの方法に限定されるものではなく、例えば赤外線により加熱してもよいし、加熱ロールによる加熱を行ってもよい。
【0049】
このような第2の工程(加熱プレス工程)から、次工程である第3の工程(離型工程)におけるFPC200からの離型フィルム10の離型までの間において、FPC200に対して離型フィルム10が貼付される。このとき、本発明では、JIS K 7126-2に準拠して測定された、離型フィルム10の酸素透過度が60.0cc/(m・atm・day)以上であることを満足している。したがって、第2の工程(本工程)から第3の工程(次工程)において離型フィルム10を離型させるまでの間に、上記の通り、第2の工程(本工程)おいて、FPC200が加熱プレスされたとしても、凹部223で露出する、フレキシブル回路基板210が備える回路が酸化するのを的確に抑制または防止することができるため、得られるFPC200を、より優れた電気特性を有するものとし得るが、その詳細な説明は後に行うこととする。
【0050】
(第3の工程)
次に、離型手段60において、FPC200から離型フィルム10(10A、10B)を離型させる。すなわち、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210との接合体から、離型フィルム10Aと離型フィルム10Bとを剥離する。これにより、フレキシブル回路基板210に対してCLフィルム220が接合されているFPC200を得る(剥離工程、図1図2(c)図3参照。)。
【0051】
なお、離型手段60としては、特に限定されず、例えば、外側に真空装置を設置し、真空引きすることで剥離する構成のものであってもよいし、前記接合体と離型フィルム10A、10Bの間に空気を送り込むことで剥離する構成のものであってもよいし、接合体と離型フィルム10A、10Bの間に棒を挟みこみ剥離する構成のものであってもよい。
【0052】
その後、カバーレイフィルム220とフレキシブル回路基板210の接合体と、ガラスクロス300A、離型フィルム10A、離型フィルム10B、ガラスクロス300Bをそれぞれの巻取りローラにて巻き取る。
【0053】
このような巻取りにより、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されたFPC200として、巻取りローラに巻き取られた状態で連続的に得られることとなる。
【0054】
以上のように、離型フィルム10を用いたロールツーロールプレス機100による、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法を適用することで、連続的にフレキシブルプリント回路基板200が製造される。
【0055】
なお、上記第3の工程の後に、巻取りローラに巻き取られた状態のフレキシブルプリント回路基板200、または巻き取られたフレキシブルプリント回路基板200を個々の状態に切断した枚葉の状態のものを、オーブンなどで加熱することで、カバーレイ221を構成する熱硬化性樹脂の硬化反応をさらに進行させて、カバーレイ221を硬化させる工程を含んでいてもよい。
【0056】
このフレキシブルプリント回路基板200の製造に用いられる離型フィルム10に、本発明の離型フィルムが適用される。以下、本発明の離型フィルムが適用された、離型フィルム10について、説明する。
【0057】
<離型フィルム10>
図4は、本発明の離型フィルムの実施形態を示す縦断面図、図5は、図4に示す離型フィルムのA部を部分的に拡大した部分拡大縦断面図である。
離型フィルム10は、図4に示すように、本実施形態において、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とがこの順で積層された積層体で構成されており、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、第1離型層1側の表面が接するように重ねて用いられる。
【0058】
そして、この離型フィルム10として、本発明では、JIS K 7126-2に準拠して測定された、離型フィルム10の酸素透過度が60.0cc/(m・atm・day)以上であるものが用いられる。
【0059】
ここで、前述したように、離型フィルム10を用いたフレキシブルプリント回路基板200の製造方法では、離型フィルム10の凹部223に対する埋め込み性と、フレキシブルプリント回路基板200からの離型性との両立が図られることが求められ、さらに、FPC200として、より優れた電気特性を有するものが製造されることが求められる。
【0060】
しかしながら、第2の工程(本工程)から第3の工程(次工程)において離型フィルム10を離型させるまでの間に、上記の通り、第2の工程(本工程)おいて、FPC200を加熱プレスする際に、離型フィルム10とFPC200との間に残存する空気中に含まれる酸素に基づいて、フレキシブル回路基板210が備える回路が酸化されるため、より優れた電気特性を有するFPC200を得ることができないという問題があった。
【0061】
かかる問題点に対応して、本発明では、離型フィルム10として、上記の通り、JIS K 7126-2に準拠して測定された、離型フィルム10の酸素透過度が60.0cc/(m・atm・day)以上であるものが選択されている。すなわち、離型フィルム10として、厚さ方向に対する酸素透過度に優れたものが選択されている。したがって、第2の工程(本工程)から第3の工程(次工程)において離型フィルム10を離型させるまでの間に、上記の通り、第2の工程(本工程)おいて、FPC200を加熱プレスする際に、離型フィルム10とFPC200との間に残存する酸素を、この離型フィルム10を介して透過させることができる。そのため、FPC200の加熱プレスの際に、FPC200が加熱されたとしても、凹部223で露出する、フレキシブル回路基板210が備える回路が酸化するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、得られるFPC200を、より優れた電気特性を有するものとし得る。
【0062】
以下、この離型フィルム10を構成する各層について説明する。
<クッション層3>
まず、クッション層3について説明する。このクッション層3は、第1離型層1と第2離型層2との間の中間層として配置されている。
【0063】
このクッション層3は、第3熱可塑性樹脂組成物からなり、この第3熱可塑性樹脂組成物は、離型フィルム10に凹部223に対する埋め込み性を付与しつつ、離型フィルム10の酸素透過度を前記下限値以上に設定することを目的に、本発明では、複数種の熱可塑性樹脂を含有しているものが好ましく用いられる。
【0064】
複数種の熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ、ポリオレフィン系樹脂同士の組み合わせ、および、ポリアミド系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせ等が挙げられるが、中でも、ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせを選択することで、離型フィルム10の酸素透過度を比較的容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0065】
ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらのうちの2種以上を組み合わせて用いる場合、このポリエステル系樹脂は、これらのブレンド体であってもよいし、共重合体であってもよい。これらの中でも、ポリエステル系樹脂は、特に、ポリブチレンテレフタレートであるのが好ましい。これにより、クッション層3に優れた凹部223に対する追従性を付与することができる。また、第1離型層1を構成する第1熱可塑性樹脂組成物に、ポリブチレンテレフタレートが含まれる場合、クッション層3を、第1離型層1に対して優れた密着性を発揮するものとし得る。さらに、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0066】
さらに、このポリエステル系樹脂は、結晶性を示すが、クッション層3において、その結晶化が抑制または防止されていることが好ましい。これにより、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0067】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのようなポリエチレン、ポリプロプレン等のα-オレフィン系重合体、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン等を重合体成分として有する、エチレンとヘキセンとの共重合体、エチレンとオクテンとの共重合体、α-オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体のようなα-オレフィン系共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体(エチレン酢酸ビニル共重合体)およびエチレンと(メタ)アクリル酸との共重合体(エチレン(メタ)アクリル酸共重合体)のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、クッション層3に優れた凹部223に対する追従性を付与することができる。また、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0068】
ポリエステル系樹脂とポリオレフィン系樹脂との組み合わせとする場合、この第3熱可塑性樹脂組成物における、ポリエステル系樹脂の含有量は、5重量%以上であることが好ましく、8重量%以上40重量%以下であることがより好ましい。これにより、離型フィルム10に優れた凹部223に対する追従性を付与することができる。また、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0069】
また、クッション層3を構成する第3熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料(熱可塑性樹脂)の他に、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、着色剤、安定剤のような添加剤が含まれていてもよい。
【0070】
さらに、このクッション層3の150℃における貯蔵弾性率E’は、0.1MPa以上であるのが好ましく、0.5MPa以上150MPa以下であるのがより好ましく、1.0MPa以上100MPa以下であるのがさらに好ましい。クッション層3の150℃における貯蔵弾性率E’を、上記のように設定することで、前記第2の工程における、凹部223に対する離型フィルム10の埋め込みの際に、離型フィルム10の縁部から、クッション層3の一部がはみ出し、FPC200に付着するのを、的確に抑制または防止することができる。したがって、FPC200の汚染を、的確に抑制または防止することができる。また、前記第3の工程における、離型フィルム10の引き剥がしを、容易に行うことが可能となる。
【0071】
なお、クッション層3の150℃における貯蔵弾性率E’は、例えば、JIS K7244-4に準拠して、幅4mm、長さ20mmのクッション層3を用意し、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、「DMA7100」)を用いて、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minとして測定することで得ることができる。
【0072】
さらに、このクッション層3は、その平均厚さTkが40μm以上110μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上90μm以下に設定される。これにより、離型フィルム10の酸素透過度を、比較的容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0073】
<第1離型層1>
次に、第1離型層1について説明する。この第1離型層1は、クッション層3の一方の面側に積層されている。
【0074】
第1離型層1は、可撓性を備え、前述した、離型フィルム10を用いたフレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、この第1離型層1が接触するように、離型フィルム10が重ね合わされる。そして、この製造方法の前記第2の工程において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを、接着剤層222を介して接合する際に、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とで形成される凹部223の形状に追従して、押し込まれる層であり、離型フィルム10が破断するのを防止する保護(緩衝)材として機能するものである。さらに、第1離型層1は、前記第3の工程において、CLフィルム220(FPC200)からの離型フィルム10の優れた離型性を発揮させるための接触層としての機能を有している。
【0075】
したがって、離型フィルム10を、前記第2の工程において、FPC200に形成された凹部223に、接着剤層222に由来する接着剤がしみ出すのを的確に抑制または防止することができる。また、前記第2の工程における、フレキシブル回路基板210とCLフィルム220とが、CLフィルム220が備える接着剤層222を介して接合されたFPC200の形成の後に、前記第3の工程において、FPC200から離型フィルム10を剥離させる際に、FPC200に、伸びおよび破断が生じるのを的確に抑制または防止することができる。また、クッション層3を構成する第3熱可塑性樹脂組成物に、ポリエステル系樹脂が含まれる場合、第1離型層1を、クッション層3に対して優れた密着性を発揮するものとし得る。
【0076】
また、第1離型層1は、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、この第1離型層1が接触している。したがって、この製造方法の前記第2の工程において、FPC200を加熱プレスする際に、加熱圧着板521からの熱を、CLフィルム220に伝達する機能をも有している。
【0077】
この第1離型層1は、第1熱可塑性樹脂組成物からなる。また、この第1熱可塑性樹脂組成物は、例えば、主としてポリエステル系樹脂を含有することが好ましい。これにより、第1離型層1に、前述した機能を比較的容易に付与することができる。さらに、離型フィルム10の酸素透過度を比較的容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0078】
また、ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前述した第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様のものを用いることができ、中でも、特に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であるのが好ましい。これにより、ポリエステル系樹脂を用いることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。また、クッション層3を構成する第3熱可塑性樹脂組成物に、ポリブチレンテレフタレートが含まれる場合、第1離型層1を、クッション層3に対して優れた密着性を発揮するものとし得る。さらに、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0079】
さらに、ポリエステル系樹脂は、結晶性を示すが、このポリエステル系樹脂で構成される第1離型層1は、その結晶化が抑制されていることが好ましく、具体的には、その結晶化度が10%以上50%以下程度であることが好ましく、10%以上35%以下程度であることがより好ましい。これにより、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0080】
なお、離型層1、2およびクッション層3におけるポリエステル系樹脂のような結晶性を示す樹脂材料の結晶化は、例えば、後述する離型フィルム10の製造方法において、溶融状態または軟化状態の帯状のフィルム10’を冷却する際の冷却温度を、下記範囲内に設定することで行うことができる。
【0081】
また、第1熱可塑性樹脂組成物は、主としてポリエステル系樹脂で構成される場合、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂が含まれていてもよく、この熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル1-ペンテンのようなポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレンのようなポリスチレン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
また、第1熱可塑性樹脂組成物は、前述した熱可塑性樹脂の他に、さらに、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0083】
無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウイスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アンチモン酸化物、Eガラス、Dガラス、Sガラス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
また、有機粒子としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン粒子、アクリル粒子、ポリイミド粒子、ポリエステル粒子、シリコーン粒子、ポリプロピレン粒子、ポリエチレン粒子、フッ素樹脂粒子およびコアシェル粒子等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
さらに、無機粒子および有機粒子は、その平均粒子径が3μm以上20μm以下であるのが好ましく、5μm以上20μm以下であるのがより好ましい。これにより、第1熱可塑性樹脂組成物中に、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも一方が含まれる場合に、第1離型層1のクッション層3と反対側の表面における表面粗さを、後述する範囲内に比較的容易に設定することができる。
【0086】
第1離型層1は、その表面に凹凸形状を有する場合、前記表面における10点平均粗さ(Rz)が0.1μm以上20.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上10.0μm以下であることがより好ましい。これにより、離型フィルム10を、FPC200(フレキシブル回路基板210)から離型させる際に、この離型を優れた離型性をもって実施することができる。なお、前記10点平均粗さ(Rz)は、JIS B 0601-1994に準拠して測定することができる。
【0087】
また、かかる構成をなす第1離型層1は、その150℃における貯蔵弾性率E’が50MPa以上であるのが好ましく、50MPa以上1000MPa以下であるのがより好ましく、50MPa以上300MPa以下であるのがさらに好ましい。これにより、第1離型層1に、前述した第1離型層1としての機能を確実に付与することができる。
【0088】
なお、第1離型層1の150℃における貯蔵弾性率E’は、JIS K7244-4に準拠して、幅4mm、長さ20mmの第1離型層1を用意し、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、「DMA7100」)を用いて、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minとして測定することで得ることができる。
【0089】
また、この第1離型層1は、その平均厚さT1が好ましくは7μm以上38μm以下に設定され、より好ましくは10μm以上30μm以下に設定される。これにより、第1離型層1の平均厚さが適切な範囲内に設定されるため、第1離型層1に、前述した第1離型層1としての機能をより確実に付与することができる。また、離型フィルム10の酸素透過度を、比較的容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0090】
なお、第1離型層1の厚さは、上記の通り、第1離型層1のクッション層3と反対側の表面が凹凸形状を有する場合、凸部では凸部を含む位置、また、凹部では凹部を含む位置で、それぞれ、その厚さを測定することとする。
【0091】
また、第1離型層1を構成する第1熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料、無機粒子、有機粒子の他に、前記第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様の添加剤が含まれていてもよい。
【0092】
<第2離型層2>
次に、第2離型層2について説明する。この第2離型層2は、クッション層3の他方の面側、すなわち、クッション層3の第1離型層1と反対の面側に積層されている。
【0093】
第2離型層2は、可撓性を備え、前述した、離型フィルム10を用いたフレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、FPC200が備えるCLフィルム220に対して、第1離型層1が接触するように、離型フィルム10が重ね合わされ、そして、この製造方法の前記第2の工程において、重ね合わされているフレキシブル回路基板210とCLフィルム220とを、接着剤層222を介して接合する際に、加熱圧着板521からの力を、クッション層3に伝達する層として機能するものである。さらに、第2離型層2は、前記第3の工程において、ガラスクロス300と離型フィルム10との間で優れた離型性を発揮させるための接触層としての機能を有している。
【0094】
また、フレキシブルプリント回路基板200の製造方法において、加熱圧着板521に対して、第2離型層2がガラスクロス300を介して接触している。したがって、この製造方法の前記第2の工程において、FPC200を加熱プレスする際に、加熱圧着板521からの熱を、クッション層3に伝達する機能をも有している。
【0095】
第2離型層2は、第2熱可塑性樹脂組成物からなる。また、この第2熱可塑性樹脂組成物は、前記第1熱可塑性樹脂組成物と同様に、主としてポリエステル系樹脂を含有することが好ましい。これにより、第2離型層2に、前述した機能を確実に付与することができる。さらに、離型フィルム10の酸素透過度を比較的容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0096】
また、ポリエステル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、前述した第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様のものを用いることができ、中でも、特に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であるのが好ましい。これにより、ポリエステル系樹脂を用いることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。さらに、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0097】
さらに、ポリエステル系樹脂は、結晶性を示すが、このポリエステル系樹脂で構成される第2離型層2は、その結晶化が抑制されていることが好ましく、具体的には、その結晶化度が10%以上50%以下程度であることが好ましく、10%以上35%以下程度であることがより好ましい。これにより、離型フィルム10の酸素透過度をより容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0098】
なお、第2熱可塑性樹脂組成物は、主としてポリエステル系樹脂で構成される場合、ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂が含まれていてもよく、この熱可塑性樹脂としては、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0099】
また、第2熱可塑性樹脂組成物は、前述した熱可塑性樹脂の他に、さらに、無機粒子および有機粒子のうちの少なくとも1種を含むものであってもよい。
【0100】
無機粒子および有機粒子としては、特に限定されないが、前記第1熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様のものを用いることができる。
【0101】
かかる構成をなす第2離型層2は、その150℃における貯蔵弾性率E’が50MPa以上であるのが好ましく、50MPa以上1000MPa以下であるのがより好ましい。これにより、第2離型層2に、前述した機能を確実に付与することができる。
【0102】
また、この第2離型層2は、その平均厚さT2が好ましくは7μm以上38μm以下に設定され、より好ましくは10μm以上30μm以下に設定される。これにより、第2離型層2に、前述した機能をより確実に付与することができる。また、離型フィルム10の酸素透過度を、比較的容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0103】
さらに、第2離型層2を構成する第2熱可塑性樹脂組成物には、前述した樹脂材料、無機粒子、有機粒子の他に、前記第3熱可塑性樹脂組成物で挙げたのと同様の添加剤が含まれていてもよい。
【0104】
また、第1離型層1と第2離型層2とにおいて、第1熱可塑性樹脂組成物と第2熱可塑性樹脂組成物とは、同一であっても異なっていても良いが、代替性を有すると言う観点からは、同一もしくは同質であることが好ましい。さらに、第1離型層1と第2離型層2とにおいて、その平均厚さは、同一であっても異なっていてもよい。
【0105】
以上のような第1離型層1とクッション層3と第2離型層2とが積層された構成をなす離型フィルム10において、その平均厚さTtは、50μm以上180μm以下であることが好ましく、80μm以上150μm以下であることがより好ましい。これにより、離型フィルム10の酸素透過度を、比較的容易に前記下限値以上に設定することができる。
【0106】
ここで、JIS K 7126-2に準拠して測定された、離型フィルム10の酸素透過度は、60.0cc/(m・atm・day)以上であればよいが、100.0cc/(m・atm・day)以上であることが好ましく、120.0cc/(m・atm・day)以上160.0cc/(m・atm・day)以下であることがより好ましい。離型フィルム10の酸素透過度を、上記の通り設定することで、第2の工程から第3の工程において離型フィルム10を離型させるまでの間に、第2の工程おいて、FPC200を加熱プレスする際に、離型フィルム10とFPC200との間に残存する酸素を、この離型フィルム10を介して透過させることができる。そのため、FPC200の加熱プレスの際に、FPC200が加熱されたとしても、凹部223で露出する、フレキシブル回路基板210が備える回路が酸化するのを的確に抑制または防止することができる。
【0107】
本発明において、離型フィルム10の酸素透過度は、JIS K 7126-2に規定されたプラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法の等圧法に準拠して、温度23℃、相対湿度0%RHの条件下で測定される。
【0108】
また、JIS K 7129(B法)に準拠して測定された、離型フィルム10の水蒸気透過度は、1.0g/m・day(25℃・90%RH)超であるのが好ましく、1.4g/m・day(25℃・90%RH)以上であることがより好ましく、1.7g/m・day(25℃・90%RH)以上3.0g/m・day(25℃・90%RH)以下であることがさらに好ましい。離型フィルム10の水蒸気透過度を、上記の通り設定することで、第2の工程から第3の工程において離型フィルム10を離型させるまでの間に、第2の工程おいて、FPC200を加熱プレスする際に、離型フィルム10とFPC200との間に残存する空気中に含まれる水蒸気を、この離型フィルム10を介して透過させることができる。そのため、FPC200の加熱プレスの際に、FPC200の加熱下において、フレキシブル回路基板210やカバーレイ221の構成材料として含まれるポリイミドのような樹脂材料が、水蒸気を吸湿するのを的確に抑制または防止し得る。したがって、フレキシブル回路基板210が備える回路に対する半田付け時において、吸湿された水蒸気に由来する気泡がフレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220との間で発生するのが、的確に抑制または防止される。そのため、得られるFPC200を、フレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220との間における剥離の発生が的確に抑制または防止されたより信頼性に優れたものとし得る。
【0109】
なお、離型フィルム10は、本実施形態では、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とが、この順で積層された積層体で構成されるが、かかる構成に限定されず、例えば、第1離型層1とクッション層3との間、および、第2離型層2とクッション層3との間の少なくとも一方に配置された、接着剤層のような中間層を備える積層体で構成されるものであってもよい。
【0110】
また、離型フィルム10は、前記第3の工程において、ガラスクロス300と離型フィルム10との間で優れた離型性を維持し得るのであれば、ガラスクロス300に接触する第2離型層2が、省略されたものであってもよい。
【0111】
<離型フィルム10の製造方法>
上述した構成をなす離型フィルム10は、例えば、以下のような製造方法により製造し得る。以下、離型フィルム10の製造方法の説明に先立って、まずは、離型フィルム製造装置について説明する。
【0112】
図6は、図4に示す離型フィルム10を製造する離型フィルム製造装置を模式的に示した側面図ある。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0113】
図6に示す離型フィルム製造装置1000は、フィルム供給部600と、フィルム成形部700とを有している。
【0114】
フィルム供給部600は、本実施形態では、押出機610と、押出機610の溶融樹脂吐出部に配管を介して接続されたTダイ620とで構成されている。このTダイ620により、溶融状態または軟化状態の帯状のフィルム10’がフィルム成形部700に供給される。
【0115】
Tダイ620は、共押出法で溶融状態または軟化状態のフィルム10’を帯状のフィルムとした状態で押し出す押出成形部である。Tダイ620には、前述した離型フィルム10を構成する各層の構成材料が溶融状態で、順次装填されることなり、この溶融状態の材料をTダイ620から押し出すことで、帯状をなすフィルム10’が連続的に送り出される。
【0116】
フィルム成形部700は、タッチロール710と、冷却ロール720と、後段冷却ロール730とを有している。これらのロールは、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらのロールの回転により、冷却され、連続的に送り出されるようになっている。このフィルム成形部700に、溶融状態または軟化状態のフィルム10’を連続的に送り込むことにより、フィルム10’の表面が平坦化されるとともに、フィルム10’が所望の厚さに設定されて冷却される。そして、押出機610(Tダイ620)に装填する、離型フィルム10を構成する各層の構成材料を適宜選択することにより、冷却されたフィルム10’として、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とがこの順で積層された積層体で構成された離型フィルム10を得ることができる。
【0117】
以上のような離型フィルム製造装置1000を用いた離型フィルム10の製造方法により、離型フィルム10が製造される。
【0118】
離型フィルム製造装置1000を用いた離型フィルム10の製造方法は、押出工程と、成形工程と、冷却工程とを有している。
【0119】
<1A>まず、帯状をなす溶融状態または軟化状態のフィルム10’を押し出す(押出工程)。
【0120】
この押出工程では、押出機610に、離型フィルム10を構成する各層の構成材料が順次装填される。また、離型フィルム10を構成する各層の構成材料は、押出機610内において、溶融または軟化した状態となっている。
【0121】
<2A>次に、フィルム10’の表面を平坦化するとともに、フィルム10’を所定の厚さに設定する(成形工程)。本工程は、タッチロール710と、冷却ロール720との間で行われる。
【0122】
<3A>次に、フィルム10’の表面を冷却する(冷却工程)。本工程は、冷却ロール720と、後段冷却ロール730との間で行われる。
【0123】
これら冷却ロール720および後段冷却ロール730で、フィルム10’の表面を冷却する冷却温度は、好ましくは20℃以上120℃以下程度、より好ましくは40℃以上90℃以下程度に設定される。これにより、第1離型層1、クッション層3および第2離型層2に、それぞれ、ポリエステル系樹脂のような結晶性を示す樹脂材料が含まれる場合、この樹脂材料の結晶化を的確に抑制または防止することができる。
【0124】
なお、冷却ロール720と、後段冷却ロール730とは、いずれか一方が冷却手段を備えており、一方のロールにおいて、フィルム10’が冷却される構成をなしていてもよい。
【0125】
以上のような工程<1A>~工程<3A>について、押出機610に装填する、離型フィルム10を構成する各層の構成材料を適宜選択して実施することで、第1離型層1と、クッション層3と、第2離型層2とがこの順で積層された積層体で構成された離型フィルム10を得ることができる。
【0126】
以上、本発明の離型フィルムおよび成型品の製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0127】
例えば、前記実施形態では、本発明の離型フィルムを、加熱冷却板同士の間に配置されたフレキシブルプリント回路基板を1段に積層して製造するプレス成型法に適用する場合について説明したが、積層されるフレキシブルプリント回路基板の数は、1段に限定されず、2段以上であってもよい。
【0128】
また、本発明の離型フィルムを、加熱冷却板同士の間に配置されたフレキシブルプリント回路基板に対してロールツーロールプレス機を用いて加圧する場合に適用されることとしたが、これに限定されず、フレキシブルプリント回路基板に対する加圧は、例えば、プレス成型法を用いて実施することもできるし、さらには、真空圧空成形法を用いて実施することもできる。
【実施例
【0129】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0130】
1.原材料の準備
離型フィルムを製造するための原材料として、それぞれ、以下のものを用意した。
【0131】
・熱可塑性樹脂材料
低密度ポリエチレン(LDPE、宇部丸善社製、「R300」)
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、三井ダウポリケミカル社製、「P1403」)
ポリブチレンテレフタレート(PBT、長春石油化学社製、「1100-630S」)
共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT、三菱エンジニアリングプラスチック社製、「5505S」)
ポリプロピレン(PP、住友化学社製、「FH1016」)
グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG、SELENIS社製、「NF411」)
【0132】
2.離型フィルムの製造
<実施例1>
まず、第1熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物として、それぞれ、ポリブチレンテレフタレート(PBT、1100-630S)で構成されるものを用意した。また、第3熱可塑性樹脂組成物として、ポリブチレンテレフタレート(PBT、1100-630S)15重量部と、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、P1403)35重量部と、低密度ポリエチレン(LDPE、R300)30重量部と、ポリプロピレン(PP、FH1016)20重量部とで構成されるものを用意した。
【0133】
次いで、離型フィルム製造装置1000を用いた共押出Tダイ法により、第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物を共押し出ししてフィルム化することにより、第1離型層1とクッション層3と第2離型層2とがこの順で積層された積層体を形成することで実施例1の離型フィルム10を得た。
【0134】
なお、離型フィルム製造装置1000を用いて、第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物をフィルム化する際の冷却ロール720および後段冷却ロール730による冷却温度は、60℃に設定した。
【0135】
また、得られた離型フィルム10において、第1離型層1の平均厚さT1は20μm、クッション層3の平均厚さTkは80μm、第2離型層2の平均厚さT2は20μmであった。
【0136】
さらに、離型フィルム10について、その酸素透過度を、酸素透過率測定装置(MOCON社製、「OX-TRAN 2/22L」)を用いて、JIS K 7126-2に規定されたプラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法の等圧法に準拠して、温度23℃、相対湿度0%RHの条件下で測定したところ100.0cc/(m・atm・day)であった。
【0137】
また、離型フィルム10について、その水蒸気透過度を、水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、「PERMATRAN-W3/34」)を用いて、K 7129(B法)に準拠して、温度25℃、相対湿度90%RHの条件下で測定したところ2.5g/m・day(25℃・90%RH)であった。
【0138】
さらに、第1離型層1、およびクッション層3について、それぞれ、150℃における貯蔵弾性率E’を、動的粘弾性測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、「DMA7100」)を用いて、引っ張りモード、周波数1Hz、昇温速度5℃/minとして測定したところ160MPaおよび16MPaであった。
【0139】
また、第1離型層1について、クッション層3と反対側で露出する表面における10点平均粗さ(Rz)を、表面粗さ測定装置(ミツトヨ社製、「SURFTST SJ-210」)を用いて測定したところ5μmであった。
【0140】
また、第1離型層1、および第2離型層2について、それぞれ、結晶化度を、薄膜評価用試料水平型X線回折装置(リガク社製、「Smart Lab」)を用いて、広角X線回折法により分析したところ33%および35%であった。
【0141】
なお、広角X線回折法による分析に基づく、第1離型層1および第2離型層2の結晶化度の算出は、以下のようにして行った。すなわち、薄膜評価用試料水平型X線回折装置により測定された回折測定プロットに、2θ=12.0°~28.18°の範囲内において直線状のベースラインを引いた後に、結晶質相および非晶質相に対してそれぞれガウス関数としてフィッティングを行い、これにより得られた結晶質相のピーク総面積および非晶質相のピーク総面積に基づいて、下記式Aを用いることで、第1離型層1および第2離型層2の結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=
結晶質相のピーク総面積/
(結晶質相のピーク総面積+非晶質相のピーク総面積)×100 … A
【0142】
また、薄膜評価用試料水平型X線回折装置における測定条件は、以下に示すように設定した。
X線源…CuKα線、管電圧…45kV-200mA、入射光学系…集中法、測定範囲…5-80°、測定間隔…0.02°、走査速度…5.0°/min、走査方法…Out-of-Plane法
【0143】
<実施例2~4、比較例1>
離型フィルム製造装置1000を用いて、第1熱可塑性樹脂組成物、第3熱可塑性樹脂組成物および第2熱可塑性樹脂組成物をフィルム化する際の冷却ロール720および後段冷却ロール730による冷却温度を、表1のように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、離型フィルム10の酸素透過度が表1に示すようになっている実施例2~4、比較例1の離型フィルム10を得た。
【0144】
<実施例5、6、比較例2>
第1熱可塑性樹脂組成物、第2熱可塑性樹脂組成物および第3熱可塑性樹脂組成物として、表1に示すものを用いて、平均厚さが表1に示すようになっている、第1離型層1、クッション層3および第2離型層2を成膜したこと以外は、前記実施例1と同様にして、離型フィルム10の厚さ方向における酸素透過度が表1に示すようになっている実施例5、6、比較例2の離型フィルム10を得た。
【0145】
3.評価
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、以下の評価を行った。
【0146】
3-1.回路の酸化に基づく変色性
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、幅270mmのものとし、そして、フレキシブル回路基板210(日鉄ケミカル&マテリアル社製、「MB12-12-12REG」)に、カバーレイフィルム220(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、このカバーレイフィルム220が備える接着剤層222をフレキシブル回路基板210側にして貼付することで形成される、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるFPC200(積層体)とした後に、離型フィルム10を、図3に示すように積層されたFPC200に対して、RtoRプレス機(TRM社製、「RR Q-CURE 100TON CONTINUOUS LAMINATOR」)を用いて、180℃、110kg/cm、150secの設定条件で押し込んだ。その後、離型手段60としてFPC200と離型フィルム10の間に棒を挟み込み剥離する構成を適用し、搬送速度200mm/s、送り量500mm、加熱圧着板521から離型手段60までの距離を50mmとし、離型フィルム10を引き剥がした。そして、FPC200の凹部223で露出する回路の酸化に基づく変色の程度を目視にて確認し、以下の基準に従って評価した。
【0147】
[評価基準]
◎:回路に酸化に基づく変色が認められない。
○:回路に酸化に基づく変色が若干認められるものの、
回路の電気特性に影響をおよぼすものではない。
×:回路に酸化に基づく明らかな変色が認められ、
回路の電気特性に影響をおよぼすものである。
【0148】
3-2.ポリイミド基板の半田耐性
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、幅270mmのものとし、そして、フレキシブル回路基板210に、カバーレイフィルム220(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、このカバーレイフィルム220が備える接着剤層222をフレキシブル回路基板210側にして貼付することで形成される、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるFPC200(積層体)とした後に、離型フィルム10を、図3に示すように積層されたFPC200に対して、RtoRプレス機(TRM社製、「RR Q-CURE 100TON CONTINUOUS LAMINATOR」)を用いて、180℃、110kg/cm、150secの設定条件で押し込んだ。その後、離型手段60としてFPC200と離型フィルム10の間に棒を挟み込み剥離する構成を適用し、搬送速度200mm/s、送り量500mm、加熱圧着板521から離型手段60までの距離を50mmとし、離型フィルム10を引き剥がした。
【0149】
次いで、JPCA規格JPCA-DG04に準拠して、RtoRプレス機を用いてプレスしたFPC200を、110℃、1hrの条件下で乾燥させた。その後、FPC200を、260℃に加熱された半田液中に10sec間浸漬させた後に、半田液中から取り出した。そして、フレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220との間における気泡の発生の有無を目視にて確認し、以下の基準に従って評価した。なお、各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、上記の通りとして、FPC200を得る試験を、100回繰り返して実施した。
【0150】
[評価基準]
◎: フレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220との間に気泡が発生しない。
○: フレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220との間に気泡が発生する確率が1%未満である。
×: フレキシブル回路基板210とカバーレイフィルム220との間に気泡が発生する確率が1%以上である。
【0151】
3-3.離型フィルムの埋め込み性
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、幅270mmのものとし、そして、フレキシブル回路基板210に、カバーレイフィルム220(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、このカバーレイフィルム220が備える接着剤層222をフレキシブル回路基板210側にして貼付することで形成される、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるFPC200(積層体)とした後に、離型フィルム10を、図3に示すように積層されたFPC200に対して、RtoRプレス機(TRM社製、「RR Q-CURE 100TON CONTINUOUS LAMINATOR」)を用いて、180℃、110kg/cm、150secの設定条件で押し込んだ。その後、FPC200と離型フィルム10との積層体とした状態で、この積層体を厚さ方向に裁断(カット)した後に、離型フィルム10の一端を持ち離型フィルム10を引き剥がした。離型フィルム10の一端を把持して引き剥がした際の、FPC200の凹部における平面視での接着剤の最大しみ出し量を測定し、以下の基準に従って評価した。
【0152】
[評価基準]
◎:最大しみ出し量が55mm未満である。
○:最大しみ出し量が55以上65mm未満である。
×:最大しみ出し量が65mm以上である。
【0153】
3-4.離型フィルムの離型性
各実施例および各比較例の離型フィルム10について、それぞれ、幅270mmのものとし、そして、フレキシブル回路基板210に、カバーレイフィルム220(有沢製作所社製、「CMA0525」)を、このカバーレイフィルム220が備える接着剤層222をフレキシブル回路基板210側にして貼付することで形成される、ピッチ50μm、幅50μm、高さ18μmの凹凸を備えるFPC200(積層体)とした後に、離型フィルム10を、図3に示すように積層されたFPC200に対して、RtoRプレス機(TRM社製、「RR Q-CURE 100TON CONTINUOUS LAMINATOR」)を用いて、180℃、110kg/cm、150secの設定条件で押し込んだ。その後、離型手段60としてFPC200と離型フィルム10の間に棒を挟み込み剥離する構成を適用し、搬送速度200mm/s、送り量500mm、加熱圧着板521から離型手段60までの距離を50mmとし、離型フィルム10を引き剥がした。その際の、離型フィルム10の引き剥がし易さ(離型性)について、以下の基準に従って評価した。
【0154】
[評価基準]
○:離型フィルム引き剥がし時に、剥離可能である。
×:離型フィルム引き剥がし時に、クッション層同士が融着して剥離が困難である。
【0155】
3-5.まとめ
前記3-1.回路の酸化に基づく変色性、前記3-2.ポリイミド基板の半田耐性、前記3-3.離型フィルムの埋め込み性、および前記3-4.離型フィルムの離型性、において得られた評価結果を表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
表1に示すように、各実施例では、離型フィルム10の酸素透過度が60.0cc/(m・atm・day)以上であることを満足しており、その結果、FPC200の凹部223で露出する回路における、酸化に基づく変色が抑制されている結果を示した。
【0158】
これに対して、各比較例では、離型フィルム10の酸素透過度が60.0cc/(m・atm・day)以上であることを満足しておらず、これに起因して、FPC200の凹部223で露出する回路において、酸化に基づく変色が明らかに認められる結果を示した。
【符号の説明】
【0159】
1 第1離型層
2 第2離型層
3 クッション層
10 離型フィルム
10A 離型フィルム
10B 離型フィルム
10’ フィルム
50 加熱プレス手段
52 加熱圧着部
60 離型手段
100 ロールツーロールプレス機
200 フレキシブルプリント回路基板(FPC)
210 フレキシブル回路基板
220 カバーレイフィルム(CLフィルム)
221 カバーレイ
222 接着剤層
223 凹部
300A ガラスクロス
300B ガラスクロス
521 加熱圧着板
600 フィルム供給部
610 押出機
620 Tダイ
700 フィルム成形部
710 タッチロール
720 冷却ロール
730 後段冷却ロール
1000 離型フィルム製造装置
T1 第1離型層の平均厚さ
T2 第2離型層の平均厚さ
Tk クッション層の平均厚さ
Tt 離型フィルムの平均厚さ
【要約】
【課題】凹部に対する離型フィルムの埋め込みから、この凹部から離型フィルムを離型させるまでの間に、この凹部で露出する金属基板が酸化するのを的確に抑制または防止することができる離型フィルム、および、かかる離型フィルムを用いた成型品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の離型フィルム10は、第1熱可塑性樹脂組成物からなる第1離型層1と、この第1離型層1に積層されたクッション層3とを有し、JIS K 7126-2に準拠して測定された、離型フィルム10の酸素透過度が60.0cc/(m・atm・day)以上であることを満足する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6