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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】テープカッター
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/07 20060101AFI20230816BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B65H35/07 E
B26D1/02 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022501421
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020006130
(87)【国際公開番号】W WO2021166051
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-03-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】野村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114587(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0141338(US,A1)
【文献】実公昭45-027597(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/00-35/10
B26D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープが巻回されてなる巻回粘着テープ体の中空部に配設されるテープカッターであって、
前記粘着テープを切断し得る刃を有したカッター本体と、このカッター本体に対して相対回転可能に支持され外周部が前記巻回粘着テープ体の内周面に係合し得る外輪部材とを備えたものであり、
前記カッター本体が、前記外輪部材により囲まれた空間内に常に配設されたベース体と、前記刃が設けられ前記ベース体に対して出没可能に構成された可動体とを備えているテープカッター。
【請求項2】
粘着テープが巻回されてなる巻回粘着テープ体の中空部に配設されるテープカッターであって、
前記粘着テープを切断し得る刃を有したカッター本体と、このカッター本体に対して相対回転可能に支持され外周部が前記巻回粘着テープ体の内周面に係合し得る外輪部材とを備えたものであり、
前記カッター本体の外周部及び前記外輪部材の内周部の何れか一方に設けられた位置決め用の凸レール部と、他方に設けられ前記凸レール部と係り合う凹溝部とを備えているテープカッター。
【請求項3】
前記凸レール部が前記外輪部材の内周部に設けられたものであり、
前記凹溝部が前記カッター本体に設けられたものである請求項2記載のテープカッター。
【請求項4】
前記凹溝部が、前記凸レール部の一方の側面を案内し得る案内面を備えたものであり、
前記カッター本体が、前記外輪部材に装着される際に前記凸レール部に押圧されて一時的に弾性変形し得る弾性爪を有し、当該弾性爪に前記案内面が設けられている請求項3記載のテープカッター。
【請求項5】
前記外輪部材の外周部に、前記中空部への挿入を促す挿入促進手段が設けられている請求項1、2、3又は4記載のテープカッター。
【請求項6】
前記挿入促進手段が、前記外輪部材の外周部に形成され先端部が前記中空部を臨む内周面に係り合うリブを設けたものである請求項5記載のテープカッター。
【請求項7】
前記カッター本体に、使用者の指が挿入される連通孔が設けられている請求項1、2、3、4、5又は6記載のテープカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープカッターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粘着テープが巻回されてなる巻回粘着テープ体に装着され不使用時はコンパクトな姿勢を採り得るように構成されたテープカッターが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
従来のものは、基板に対して立設されたリール軸に対して巻回粘着テープ体の巻芯を摺接させるようにしていた。そのため、従来のものでは、巻回粘着テープ体がリール軸に対して円滑に回転することができず、当該巻回粘着テープ体から粘着テープを円滑に引き出せないという不具合が生じやすいものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平7-16676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、少なくとも、粘着テープを切断し得る刃を有したカッター本体に対して巻回粘着テープ体が円滑に回転し得る構成を有したテープカッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0007】
請求項1に係る発明は、粘着テープが巻回されてなる巻回粘着テープ体の中空部に配設されるテープカッターであって、
前記粘着テープを切断し得る刃を有したカッター本体と、このカッター本体に対して相対回転可能に支持され外周部が前記巻回粘着テープ体の内周面に係合し得る外輪部材とを備えたものであり、前記カッター本体が、前記外輪部材により囲まれた空間内に常に配設されたベース体と、前記刃が設けられ前記ベース体に対して出没可能に構成された可動体とを備えているテープカッターである。
【0008】
請求項2に係る発明は、粘着テープが巻回されてなる巻回粘着テープ体の中空部に配設されるテープカッターであって、前記粘着テープを切断し得る刃を有したカッター本体と、このカッター本体に対して相対回転可能に支持され外周部が前記巻回粘着テープ体の内周面に係合し得る外輪部材とを備えたものであり、前記カッター本体の外周部及び前記外輪部材の内周部の何れか一方に設けられた位置決め用の凸レール部と、他方に設けられ前記凸レール部と係り合う凹溝部とを備えているテープカッターである。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記凸レール部が前記外輪部材の内周部に設けられたものであり、前記凹溝部が前記カッター本体に設けられたものである請求項2記載のテープカッターである。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記凹溝部が、前記凸レール部の一方の側面を案内し得る案内面を備えたものであり、前記カッター本体が、前記外輪部材に装着される際に前記凸レール部に押圧されて一時的に弾性変形し得る弾性爪を有し、当該弾性爪に前記案内面が設けられている請求項3記載のテープカッターである。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記外輪部材の外周部に、前記中空部への挿入を促す挿入促進手段が設けられている請求項1、2、3又は4記載のテープカッターである。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記挿入促進手段が、前記外輪部材の外周部に形成され先端部が前記中空部を臨む内周面に係り合うリブを設けたものである請求項5記載のテープカッターである。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記カッター本体に、使用者の指が挿入される連通孔が設けられている請求項1、2、3、4、5又は6記載のテープカッターである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、粘着テープを切断し得る刃を有したカッター本体に対して巻回粘着テープ体が円滑に回転し得る構成を有したテープカッターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における左側面図。
図3】同実施形態における右側面図。
図4】同実施形態における正面図。
図5図2におけるX-X線断面図。
図6】同実施形態における分解斜視図。
図7】同実施形態における斜視図。
図8】同実施形態における左側面図。
図9】同実施形態における右側面図。
図10】同実施形態における正面図。
図11図8におけるY-Y線断面図。
図12】同実施形態における斜視図。
図13】同実施形態における斜視図。
図14】同実施形態における斜視図。
図15】同実施形態における斜視図。
図16】他の実施形態を示す斜視図。
図17】同実施形態における斜視図。
図18】同実施形態における斜視図。
図19】同実施形態における斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図1~15を参照して説明する。なお、図1~6は、テープカッターBの可動体2が収容姿勢(L)を採るものを示している。図7~12、及び、14は、テープカッターBの可動体2が切断可能姿勢(K)を採るものを示している。図13は、カッター本体Dの構造を説明するための展開状態の斜視図であり、図15は、テープカッターBの可動体2が収容姿勢(L)と切断可能姿勢(K)との間にある状態の一例を示している。
【0017】
この実施形態のテープカッターBは、収容姿勢(L)と切断可能姿勢(K)とを採り得る刃Pを設けた可動体2を備えている。テープカッターBは、収容姿勢(L)において、粘着テープTが巻回されてなる巻回粘着テープ体Aの中空部Cに、粘着テープTを切断し得る刃Pが収容可能に構成されている。
【0018】
巻回粘着テープ体Aは、巻芯が設けられていないもの、すなわち、コアレスのものとなっている。巻回粘着テープ体Aを構成する粘着テープTは、例えば、マスキングテープである。巻回粘着テープ体Aは、中央部に粘着テープTの存在しない中空部Cを設けた状態で、その中空部Cを囲むようにして所定の長さを有する粘着テープTを巻回積層することにより形成されたものである。コアレスの巻回粘着テープ体Aは、側面視において略円環形状をなしたものである。巻回粘着テープ体Aの幅寸法は、テープカッターBにおける外輪部材Eの幅寸法と略同じ(例えば、15mm)に設定されている。
【0019】
巻回粘着テープ体Aは、中空部Cを臨む内周面nに対していわゆる糊殺し処理が施されている。なお、「糊殺し処理」とは、粘着テープTに塗布された図示しない粘着剤の粘着力を発揮させないようにするための既知の処理であり、例えば、粘着剤の露出を防止するためのテープを添着したり非接着部分を形成し得る印刷を施したりすることにより処理されている。
【0020】
テープカッターBは、刃Pを有したカッター本体Dと、カッター本体Dに対して相対回転可能に支持され外周部Gが巻回粘着テープ体Aの内周面nに係合し得る外輪部材Eとを備えたものである。
【0021】
カッター本体Dは、中空部Cに配設されたベース体1と、刃Pが設けられベース体1に対して相対移動可能すなわちベース体1に対して出没可能に構成され切断可能姿勢(K)において巻回粘着テープ体Aの外周面近傍に刃Pを移動させ得る可動体2とを備えたものである。カッター本体Dは、例えば、図5に示すように、収容姿勢(L)において、その全体が外輪部材Eの中空部esに収容され得るように構成されている。カッター本体Dは、収容姿勢(L)において、側面視において略円形をなしている。
【0022】
カッター本体Dには、可動体2を移動させる際やカッター本体Dを外輪部材Eに対して回転させる際に、使用者の指が挿入され得る連通孔Fが設けられている。ベース体1の外周部Hには、外輪部材Eの内周部に設けられた位置決め用の凸レール部e1と係り合う凹溝部Iが形成されている。凹溝部Iは、凸レール部e1の突出先端面と係合し得る案内底面i3と、凸レール部e1の両外側面と係合し得る一対の案内側面すなわち第一案内側面i1及び第二案内側面i2を有するものである。ベース体1には、可動体2を収容し得る収容空間spが形成されている。
【0023】
ベース体1は、その全体が外輪部材Eにより囲まれた空間すなわち中空部es内に常に配設されている。ベース体1は、図13に示すように、帯状又は板状の連結部材J3を介して相互に連結された第一のベース体構成部J1及び第二のベース体構成部J2を備えている。そして、連結部材J3に対して枢結された第一のベース体構成部J1の内面側と連結部材J3に対して枢結された第二のベース体構成部J2の内面側とを突き合わせることにより、例えば、図6に示されるような一体的な塊状をなしたベース体1が形成されている。
【0024】
第一のベース体構成部J1は、一方側の外側面たる左外側面11sを有するとともに第二のベース体構成部J2と協働して左右方向に貫通した連通孔Fを形成し得る一方すなわち左の連通孔構成部11rを有した左外壁部分11と、第二のベース体構成部J2と協働して外輪部材Eと係り合う外周部Hを形成し得る一方すなわち左周壁部分13とを備えている。
【0025】
左周壁部分13には、部分的に、凸レール部e1の一方の側面を案内し得る第一案内側面i1と、凸レール部e1の他方の側面を案内し得る第二案内側面i2と、第一案内側面i1と第二案内側面i2との間に位置する案内底面i3とを備えている。
【0026】
第一案内側面i1は、図6に示すように、左周壁部分13に設けられた弾性係合体たる弾性爪13aの抜け止め突部13bに形成されている。弾性爪13aは、カッター本体Dが、外輪部材Eに装着される際に当該外輪部材Eの内周面に突設された凸レール部e1に押圧されて一時的に弾性変形し得るものとなっている。換言すれば、カッター本体Dに設けられた弾性爪13aにより、外輪部材Eに装着されたカッター本体Dが当該外輪部材Eから離脱しないようになっている。
【0027】
第二のベース体構成部J2は、他方側の外側面たる右外側面12sを有するとともに第一のベース体構成部J1と協働して左右方向に貫通した連通孔Fを形成し得る他方すなわち右の連通孔構成部12rを有した右外壁部分12と、第一のベース体構成部J1と協働して外輪部材Eと係り合う外周部Hを形成し得る他方すなわち右周壁部分14とを備えている。
【0028】
右外壁部分12には、ヒンジ部たる第一ヒンジ部m1を介して可動体2が接続している。すなわち、右外壁部分12の内面には、可動体2との接続部が設けられている。
【0029】
右周壁部分14には、部分的に、凸レール部e1の他方の側面を案内し得る第二案内側面i2と、第一案内側面i1と第二案内側面i2との間に位置する案内底面i3とを備えている。
【0030】
可動体2は、図1~6に示すように、ベース体1に形成された収容空間spに収容された収容姿勢(L)と、図7~12、及び、14に示すように、巻回粘着テープ体Aの外面側に刃Pを位置させた切断可能姿勢(K)とを採り得るものである。可動体2は、ベース体1に対して第一ヒンジ部m1を介して連結された中間部材21と、中間部材21に対して第二ヒンジ部m2を介して連結された刃Pを有するカッター部材22とを備えたものである。
【0031】
第一ヒンジ部m1及び第二ヒンジ部m2は、可撓変形し得る薄肉の合成樹脂により形成されたいわゆる樹脂ヒンジと称されるものである。可動体2は、第一ヒンジ部m1及び第二ヒンジ部m2を利用して中間部材21及びカッター部材22を切断可能姿勢(K)と収容姿勢(L)との間で動作可能にしている。 この実施形態では、中間部材21を略矩形板状のものとし、基端部及び先端部にそれぞれ直線状をなす第一ヒンジ部m1及び第二ヒンジ部m2を設けているため、刃Pを巻回粘着テープ体Aの外面に対して略平行をなすように移動可能なものとなっている。例えば、図14<a><b>に示すように、テープカッターBは、巻回粘着テープ体Aにおける粘着テープTの残量の多寡に係わらず、刃Pを巻回粘着テープ体Aの外周面に対して略平行をなすように位置させることができるようになっている。
【0032】
中間部材21は、板状をなし基端部が第一ヒンジ部m1を介してベース体1の第二のベース体構成部J2に接続したものであり、先端部が第二ヒンジ部m2を介してカッター部材22に接続したものである。
【0033】
可動体2が収容姿勢(L)をなす時は、中間部材21が右外壁部分12の内面に沿う姿勢を採りつつ全体が収容空間sp内に位置している。一方で、可動体2が切断可能姿勢(K)をなす時は、中間部材21の先端部が収容空間spよりも外側に位置するとともに中間部材21が右外壁部分12の内面に対して起立する姿勢を採るようになっている。
【0034】
カッター部材22は、基端部が第二ヒンジ部m2と接続する起立壁221と、刃Pが設けられ起立壁221の先端から当該起立壁221と交差する方向すなわち略直交する方向に延出した主壁222とを備えている。
【0035】
起立壁221は、板状をなしている。可動体2が収容姿勢(L)をなす時は、起立壁221が右外壁部分12の内面に対して起立した姿勢を採りつつ全体が収容空間sp内に位置し、可動体2が切断可能姿勢(K)をなす時は起立壁221が巻回粘着テープ体Aの一方すなわち左の外側部近傍に沿う姿勢を採り当該巻回粘着テープ体Aと当接し得ることによりカッター部材22を位置決めし得るものとなっている。
【0036】
主壁222は、板状をなしたものである。可動体2が収容姿勢(L)をなす時は、主壁222はその全体が収容空間sp内に位置するとともに当該主壁222の外面222sがベース体1の左外壁部分11と略面一をなすよう位置し得るものとなっている。
【0037】
一方で、可動体2が切断可能姿勢(K)をなす時は、起立壁221が巻回粘着テープ体Aの一方すなわち左の外側部近傍に沿う姿勢を採り当該巻回粘着テープ体Aと当接し得ることによりカッター部材22を粘着テープTを切断するのに適した位置に位置決めし得るものとなっている。
【0038】
主壁222は、前端部に設けられた刃Pと、後端部に設けられ連通孔Fの一部を形成し得るように湾曲状をなす切欠部Rと、後端部において後方に突設され収納姿勢をなす時にベース体1に設けた係合凹部Vに係合し得る係合凸部Qと、切断可能姿勢(K)をなす時に巻回粘着テープ体Aの他方すなわち右の外側部近傍に位置するように突設された姿勢保持用の突起Uを備えている。
【0039】
外輪部材Eは、巻回粘着テープ体Aに対して内嵌し得る形態をなした側面視において円環状をなすものである。外輪部材Eは、ベース体1の外周部Hと係わり合い当該ベース体1に対して相対回転可能に支持されている。
【0040】
外輪部材Eの幅寸法は、可動体2が収容姿勢(L)を採る際のカッター本体Dの幅寸法と略同じ(例えば、15mm)又はカッター本体Dの幅寸法よりも大きく設定されている。
【0041】
外輪部材Eは、その外周部Gが巻回粘着テープ体Aの内周面nに係合し得るものである。外輪部材Eの外周部Gには、巻回粘着テープ体Aの中空部Cへの挿入を促す挿入促進手段Sが設けられている。この実施形態における挿入促進手段Sは、外輪部材Eの外周部Gに形成され先端部stが中空部Cを臨む内周面nに係り合うリブrを設けたものである。
【0042】
外輪部材Eの内周部における左右方向中央部には、カッター本体Dの外周部Hに設けられた凹溝部Iと係り合う位置決め用の凸レール部e1が周方向に連続して設けられている。
【0043】
以下、本実施形態のテープカッターBの作動について概略的に説明する。
【0044】
まず、テープカッターBを、当該テープカッターBに対応するサイズをなす巻回粘着テープ体Aの中空部Cに内嵌させる。テープカッターBを巻回粘着テープ体Aの中空部Cに挿入すると、外輪部材Eに突設されたリブrの先端部stが巻回粘着テープ体Aの内周面nに圧接し、外輪部材Eと巻回粘着テープ体Aとが一体的に回転し得るように連結されることになる。
【0045】
次いで、カッター本体Dの連通孔Fに手指を挿入し、収容姿勢(L)の可動体2におけるカッター部材22の切欠部Rに触れて、カッター部材22をベース体1の収容空間spから外方すなわち切断可能姿勢(K)側に引き出す操作を行う。
【0046】
可動体2を外側に引き出す操作を行うと、まず、カッター部材22の主壁222に突設された係合凸部Qとベース体1に設けられた係合凹部Vとの係わり合いが解かれ、可動体2がベース体1に対して移動可能な状態になる。
【0047】
そして、中間部材21は、第一ヒンジ部m1を介してベース体1に接続しているので、カッター部材22の外方への移動に伴って左外壁部分11から徐々に立ち上がることになる。また、第二ヒンジ部m2を介して中間部材21に接続したカッター部材22は、使用者の引き出し操作によりベース体1から徐々に離れて行き、粘着テープTを切断し得る所定位置すなわち巻回粘着テープ体Aの外面側に移動することになる。
【0048】
可動体2が収容姿勢(L)から動作して切断可能姿勢(K)にまで遷移すると、巻回粘着テープ体Aの左側面側には、カッター部材22の起立壁221が位置するとともに巻回粘着テープ体Aの外周面側にはカッター部材22の主壁222が位置することになる。また、主壁222から下方に突設された姿勢保持用の突起Uは、巻回粘着テープ体Aの右側面側に位置することになり、巻回粘着テープ体Aの右側面部に対して係合し得るものとなっている。
【0049】
換言すれば、切断可能姿勢(K)において、カッター部材22は、起立壁221及び姿勢保持用の突起Uが協働して巻回粘着テープ体Aに対して位置決めされ、主壁222に設けた刃Pが粘着テープTを切断し易い好適な姿勢を採り得るように構成されている。
【0050】
その後、カッター本体Dに対して、外輪部材Eに保持された巻回粘着テープ体Aを回転させつつ粘着テープAの先端部を探し出し、当該巻回粘着テープ体Aから使用者が希望する所定寸法の粘着テープTを引き出す。
【0051】
しかる後に、引き出された粘着テープTを切断可能姿勢(K)にあるカッター部材22の刃Pに引き寄せることにより、当該粘着テープTを刃Pによって切断させる。
【0052】
粘着テープTを切断するための過程を終えると、前述した手順と逆の手順を経て、可動体2を切断可能姿勢(K)から収容姿勢(L)に移行させる。最終的に、カッター部材22の後端部に形成された係合凸部Qを、ベース体1に設けた係合凹部Vに係り合わせることにより、可動体2は収容姿勢(L)を好適に保持されることになる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係るテープカッターBは、粘着テープTが巻回されてなる巻回粘着テープ体Aの中空部Cに配設されるものであり、粘着テープTを切断し得る刃Pを有したカッター本体Dと、このカッター本体Dに対して相対回転可能に支持され外周部Gが巻回粘着テープ体Aの内周面nに係合し得る外輪部材Eとを備えている。
【0054】
このため、粘着テープTを切断し得る刃Pを有したカッター本体Dに対して巻回粘着テープ体Aが円滑に回転し得る構成を有したテープカッターBを提供することができるものとなる。
【0055】
外輪部材Eの内周部に設けられた位置決め用の凸レール部e1と、カッター本体Dの外周部Hに設けられ凸レール部e1と係り合う凹溝部Iとを備えているものである。
【0056】
このため、カッター本体Dに対して外輪部材Eが適切に位置決めされた状態で、外輪部材Eがカッター本体Dに対して相対回転し得るものとなっている。
【0057】
凹溝部Iが、凸レール部e1の一方の側面を案内し得る案内面たる第一案内側面i1を備えたものであり、カッター本体Dが、外輪部材Eに装着される際に凸レール部e1に押圧されて一時的に弾性変形し得る弾性爪13aを有し、当該弾性爪13aに第一案内側面i1が設けられている。
【0058】
このため、外輪部材Eがカッター本体Dに対して好適に装着できるだけでなく、装着後は、カッター本体Dから離脱し難いものとなっている。
【0059】
外輪部材Eの外周部Gに、巻回粘着テープ体Aの中空部Cへの挿入を促す挿入促進手段Sが設けられており、当該挿入促進手段Sが、外輪部材Eの外周部Gに形成され先端部stが巻回粘着テープ体Aの中空部Cを臨む内周面nに係り合うリブrを設けたものである。
【0060】
このため、外輪部材Eを巻回粘着テープ体Aの中空部Cに対して円滑に挿入し得るとともに、挿入後の外輪部材Eが巻回粘着テープ体Aの内周面nに対して好適に係り合って、外輪部材Eと巻回粘着テープ体Aが適切に一体的に回動し得るものとなっている。
【0061】
カッター本体Dに、使用者の指が挿入される連通孔Fが設けられている。このため、使用者は、カッター本体Dを、外輪部材E及び巻回粘着テープ体Aに対して回転させやすいものとなっている。
【0062】
また、本実施形態に係るテープカッターBは、粘着テープTが巻回されてなる巻回粘着テープ体Aの中空部Cに、粘着テープTを切断し得る刃Pを収容可能に構成されたものである。そして、テープカッターBは、中空部Cに配設されたベース体1と、刃Pが設けられベース体1に対して相対移動可能に構成され巻回粘着テープ体Aの外面近傍に刃Pを移動させ得る可動体2とを備えたものである。
【0063】
このため、本実施形態のものであれば、不使用時には巻回粘着テープ体Aの外側面及び外周面に重複することがなく当該巻回粘着テープ体Aの外観を損ねることのないコンパクトな姿勢をなすとともに使用時において手に持ったまま使用し易い構成を有したテープカッターBを提供することができるものとなる。
【0064】
可動体2が、刃Pを巻回粘着テープ体Aの外周面に対して略平行をなすように移動可能である。このため、刃Pは巻回粘着テープ体Aにおける粘着テープTの残量の多寡に係わらず、粘着テープTを切断し得る適切な姿勢を採り得るものとなっている。
【0065】
可動体2が、ベース体1に対して第一ヒンジ部m1を介して連結された中間部材21と、中間部材21に対して第二ヒンジ部m2を介して連結された刃Pを有するカッター部材22とを備えたものである。
【0066】
このため、第一、第二のヒンジ部を設けた構成により、中間部材21及びカッター部材22を安定的な姿勢で動作させることができるものとなっている。
【0067】
カッター部材22が、基端部が第二ヒンジ部m2と接続される起立壁221と、刃Pが設けられ起立壁221の先端から当該起立壁221と交差する方向に延出した主壁222とを備えたものである。このため、カッター部材22は、起立壁221と主壁222とを有することによって、粘着テープTを切断するために、巻回粘着テープ体Aに対して好適に位置決めされ得るものとなっている。
【0068】
可動体2が、ベース体1に形成された収容空間spに収容された収容姿勢(L)と、巻回粘着テープ体Aの外面側に刃Pを位置させた切断可能姿勢(K)とを採り得るものである。
【0069】
このため、収容姿勢(L)ではコンパクトな姿勢をなすとともに切断可能姿勢(K)では粘着テープTを切断し得る好適な姿勢をなすカッター本体Dを提供し得るものとなっている。
【0070】
ベース体1及び可動体2によりカッター本体Dが構成されたものであり、カッター本体Dが、可動体2を移動させる際に使用者の指が挿入される連通孔Fを備えている。このため、カッター本体Dは、コンパクトな姿勢をなしているにもかかわらず、連通孔Fに指を挿入することにより、可動体2を外部に容易に引き出し得るものとなっている。また、連通孔Fを利用して、カッター本体Dを外輪部材Eに対して回転させることも容易に行えるものとなる。
【0071】
ベース体1の外周部Hと係わり合い当該ベース体1に対して相対回転可能に支持された外輪部材Eを備えたものである。そして、外輪部材Eの外周部Gが巻回粘着テープ体Aの内周面nに係合し得るものである。このため、カッター本体Dに対して、巻回粘着テープ体Aを回転させることができ、可動体2の刃Pによって粘着テープTを所望の位置で好適に切断得るものとなっている。
【0072】
テープカッターBは、刃Pが収容姿勢(L)にある場合は、巻回粘着テープ体Aの外側部の全域及び外周部の全域を外部に露出させることができるようになっている。このため、テープカッターBに装着される巻回粘着テープ体Aの外観的特徴を使用者に対して視認させやすいものとなっている。
【0073】
例えば、巻回粘着テープ体Aの粘着テープ体Tが、外面に種々の絵柄等の印刷表示が設けられやすいマスキングテープであれば、本実施形態のテープカッターBを適用することが好適である。すなわち、テープカッターBは、マスキングテープの印刷表示を外部から視認可能な状態に維持しやすいため、マスキングテープの印刷表示に基づく好適な外観を提供しつつ、必要時において当該マスキングテープを切断し得る操作を実施することができるものとなる。
【0074】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0075】
他の実施形態であるテープカッターBについて、図16~19を参照して説明する。
【0076】
この実施形態のテープカッターBは、上述した実施形態と比較して、主として、可動体2におけるカッター部材22の構成、及び、外輪部材Eのカッター本体Dに対する幅が相違したものとなっている。
【0077】
カッター部材22における主壁222の外面222sには、湾曲状の切欠部Rに沿うように、使用者の手指を掛けやすくするための突起Wが設けられている。また、カッター部材22は、起立壁221の反対側に位置する主壁222の端縁から当該主壁222に対して略直交する方向に突設された姿勢保持用の延出壁Uを備えており、その外面には、収容姿勢(L)においてベース体1と係合し得る係合凸部Qが設けられている。すなわち、延出壁Uに突設された係合凸部Qは、収容姿勢(L)をなす時にベース体1に設けた係合凹部Vに係合し得るものとなっている。
【0078】
外輪部材Eは、カッター本体Dの幅寸法よりも小さく設定されている。
【0079】
以上に述べた他の実施形態であっても、所期の目的を達成し得るものとなっている。
【0080】
巻回粘着テープ体は、マスキングテープに限られるものではない。
【0081】
また、巻回粘着テープ体は、コアレスのものでなくてもよく、巻芯を有したものであってもよい。
【0082】
外輪部材の内周部に凹溝部が設けられたものであり、当該凹溝部に係り合う凸部又は凸レール部がカッター本体に設けられたものであってもよい。
【0083】
テープカッターを構成するカッター本体や外輪部材の大きさは、装着すべき巻回粘着テープ体Aの大きさに応じて適宜設定され得るものであることはいうまでもない。
【0084】
可動体は、二以上の複数のヒンジ部を設けたものであってもよい。また、可動体には、両端部にヒンジ部を配した板状ないしブロック状の中間部材を複数設けるようにしてもよい。
【0085】
可動体は、刃を設けたカッター部材とベース体との間を繋ぐ可撓性を有した紐状、帯状、又は、ワイヤー状の中間部材を設けたものとしてもよい。
【0086】
刃を有する可動体は、ベース体の左側において収容姿勢と切断可能姿勢との間で移動し得るものには限られず、ベース体の右側において収容姿勢と切断可能姿勢との間で移動し得るものであってもよい。
【0087】
外輪部材は、必ずしも側面視において円環状をなすものに限られるものではなく、円環状とは異なる異形状のものであってもよい。
【0088】
外輪部材の幅寸法は、カッター本体の幅寸法と略同じ寸法に設定されたものであってもよいし、カッター本体の幅寸法よりも小さく設定されたものであってもよい。
【0089】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0090】
A…巻回粘着テープ体
B…テープカッター
D…カッター本体
E…外輪部材
T…粘着テープ
1…ベース体
2…可動体
P…刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図19