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特許7332042電力変換装置の制御装置および電力変換システム
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  • 特許-電力変換装置の制御装置および電力変換システム 図1
  • 特許-電力変換装置の制御装置および電力変換システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】電力変換装置の制御装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230816BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230816BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20230816BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230816BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J3/38 110
H02M7/493
H02M7/48 E
H02M7/48 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022521061
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041771
(87)【国際公開番号】W WO2022097307
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一誠
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/016867(WO,A1)
【文献】特開2016-127796(JP,A)
【文献】特開2017-229166(JP,A)
【文献】特開2019-057996(JP,A)
【文献】特開平07-135779(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054368(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/118271(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02M 7/00 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力変換器の直流側が並列接続されずに前記複数の電力変換器の交流側が並列接続され、前記複数の電力変換器の直流側の正極同士または負極同士が複数の抵抗器を介して共通の電位点に接続された状態において、前記複数の抵抗器のうち制御対象の電力変換器に接続された抵抗器に印可される電圧を認識する電圧認識部と、
前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の直流電圧を制御する制御部と、
を備えた電力変換装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧において予め設定された閾値を超えた分の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の直流電圧を制御する請求項1に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項3】
複数の電力変換器の直流側が並列接続されずに前記複数の電力変換器の交流側が並列接続され、前記複数の電力変換器の直流側の正極同士または負極同士が複数の抵抗器を介して共通の電位点に接続された状態において、
前記複数の抵抗器のうち制御対象の電力変換器に接続された抵抗器に印可される電圧を認識する電圧認識部と、
前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の出力零相電圧を制御する制御部と、
を備えた電力変換装置の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧において予め設定された閾値を超えた分の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の出力零相電圧を制御する請求項3に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項5】
前記複数の電力変換器の直流側の正極同士または負極同士が複数の抵抗器を介して接続される共通の電位点が大地である状態において、前記複数の抵抗器のうち制御対象の電力変換器に接続された抵抗器に印可される電圧を認識する電圧認識部を備えた請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置の制御装置。
【請求項6】
直流側が並列接続されずに交流側が並列接続された複数の電力変換器と、
一端が接地され、他端が前記複数の電力変換器のうち対応した電力変換器の直流側の正極または負極に接続される複数の電力変換装置用抵抗器と、
前記複数の電力変換装置用抵抗器のうち制御対象の電力変換器に接続された電力変換装置用抵抗器に印可される電圧を認識する電圧認識部と、前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の直流電圧を制御する制御部と、を有する複数の制御装置と、
を備えた電力変換システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置の制御装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換システムを開示する。当該電力システムにおいては、複数の電力変換器における直流電圧の差が抑制される。このため、複数の電力変換器の間における横流が抑制され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/190811号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電力変換システムにおいては、複数の電力変換器にそれぞれ対応した複数の制御装置の間において互いの直流電圧の情報をやり取りしたり、共通の制御装置で複数の電力変換器の直流電圧を認識して複数の電力変換器に対して直流電圧指令値を出力したりする必要がある。このため、電力変換システムが複雑になる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、簡素な構成で、複数の電力変換器の間における横流を抑制することができる電力変換装置の制御装置および電力変換システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電力変換装置の制御装置は、複数の電力変換器の直流側が並列接続されずに前記複数の電力変換器の交流側が並列接続され、前記複数の電力変換器の直流側の正極同士または負極同士が複数の抵抗器を介して共通の電位点に接続された状態において、前記複数の抵抗器のうち制御対象の電力変換器に接続された抵抗器に印可される電圧を認識する電圧認識部と、前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の直流電圧を制御する制御部と、を備えた。
【0007】
本開示に係る電力変換装置の制御装置は、複数の電力変換器の直流側が並列接続されずに前記複数の電力変換器の交流側が並列接続され、前記複数の電力変換器の直流側の正極同士または負極同士が複数の抵抗器を介して共通の電位点に接続された状態において、前記複数の抵抗器のうち制御対象の電力変換器に接続された抵抗器に印可される電圧を認識する電圧認識部と、前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の出力零相電圧を制御する制御部と、を備えた。
【0008】
本開示に係る電力変換システムは、直流側が並列接続されずに交流側が並列接続された複数の電力変換器と、一端が接地され、他端が前記複数の電力変換器のうち対応した電力変換器の直流側の正極または負極に接続される複数の電力変換装置用抵抗器と、前記複数の電力変換装置用抵抗器のうち制御対象の電力変換器に接続された電力変換装置用抵抗器に印可される電圧を認識する電圧認識部と、前記電圧認識部により認識された前記電圧に基づいて前記電圧認識部により認識された前記電圧の大きさがより小さくなるように前記制御対象の電力変換器の直流電圧を制御する制御部と、を有する複数の制御装置と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、簡素な構成で、複数の電力変換器の間における横流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1における電力変換装置の制御装置が適用される電力変換システムの構成図である。
図2】実施の形態1における電力変換装置の制御装置が適用される電力変換システムの交流零相成分に着目した等価回路を示す図である。
図3】実施の形態1における電力変換装置の制御装置の制御ブロックを示す図である。
図4】実施の形態1における電力変換装置の制御装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における電力変換装置の制御装置が適用される電力変換システムの構成図である。
【0013】
図1において、複数の直流電源1の各々は、直流電力を出力し得るように設けられる。例えば、複数の直流電源1の各々は、太陽光発電装置である。系統2は、電力会社等に運用される。系統2は、交流電力を出力し得るように設けられる。連系変圧装置3は、直流電源1と系統2との間に接続される。
【0014】
複数の電力変換装置4は、複数の直流電源1にそれぞれ対応して設けられる。複数の電力変換装置4の各々は、対応した直流電源1と連系変圧装置3との間に接続される。複数の電力変換装置4の直流側は、並列接続されない。複数の電力変換装置4の交流側は、並列接続される。
【0015】
複数の抵抗器5は、複数の電力変換装置4にそれぞれ対応して設けられる。複数の抵抗器5の各々の一端は、接地される。複数の抵抗器5の各々の他端は、対応した電力変換装置4の直流側において負極に接続される。
【0016】
例えば、複数の電力変換装置4の各々は、電力変換器6とリアクトル7と制御装置8とを備える。
【0017】
電力変換器6は、直流電源1からの直流電力を交流電力に変換し得るように設けられる。例えば、リアクトル7は、電力変換器6からの交流電力の高調波を吸収し得るように設けられる。制御装置8は、電圧認識部8aと制御部8bとを備える。
【0018】
電圧認識部8aは、制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧を認識する。例えば、電圧認識部8aは、図示されない電圧検出部の検出値に基づいて制御対象の電力変換器6の直流負極と接地の間の電圧を認識する。制御部8bは、電圧認識部8aにより認識された直流電圧に基づいて制御対象の電力変換器6を制御する。
【0019】
例えば、制御部8bは、電圧認識部8aにより認識された直流側の対地電圧に基づいて制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧がより小さくなるように制御対象の電力変換器6の直流電圧を制御する。例えば、制御部8bは、電圧認識部8aにより認識された直流側の対地電圧に基づいて制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧がより小さくなるように制御対象の電力変換器6の出力零相電圧を制御する。
【0020】
次に、図2を用いて、制御装置8による電力変換器6の制御の概要を説明する。
図2は実施の形態1における電力変換装置の制御装置が適用される電力変換システムの交流零相成分に着目した等価回路を示す図である。
【0021】
第i電力変換器6の直流側の負極の対地電圧viNGは、次の(1)式で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
(1)式において、vidcは、第i電力変換器6の直流電圧である。visocは、第i電力変換器6の直流側の仮想中性点に対する並列接続点の出力零相電圧である。
【0024】
また、次の(2)式と(3)式とが成立する。
【0025】
【数2】
【0026】
【数3】
【0027】
(2)式は、第i電力変換器6以外の直流側仮想中性点電位に対する並列接続点の出力零相電圧の平均値を表す。(3)式は、第i電力変換器6以外の直流電圧の平均値を表す。
【0028】
通常、零相電圧visocは、直流電圧よりも小さい。複数の電力変換器6の間において、零相電圧visocの差は小さい。このため、任意の第i電力変換器6に対し、(1)式において、右辺第2項が支配的となる。
【0029】
(1)式の右辺第2項において、次の(4)式は定数である。
【0030】
【数4】
【0031】
(1)式の右辺第2項において、次の(5)式は第i電力変換器6以外の直流電圧の平均値である。
【0032】
【数5】
【0033】
制御装置8は、電圧認識部8aを用いて対地電圧viNGを認識する。例えば、制御装置8は、第i電力変換器6の対地電圧viNGがより小さくなるように第i電力変換器6の直流電圧vidcを制御する。例えば、制御装置8は、第i電力変換器6の対地電圧viNGがより小さくなるように第i電力変換器6の出力零相電圧visocを制御する。
【0034】
次に、図3を用いて、制御装置8による電力変換器6の制御の詳細を説明する。
図3は実施の形態1における電力変換装置の制御装置の制御ブロックを示す図である。
【0035】
図3に示されるように、制御装置8は、第1制御ブロック9と第2制御ブロック10と第3制御ブロック11と第4制御ブロック12と第5制御ブロック13とを備える。
【0036】
第1制御ブロック9は、第i電力変換器6の直流電圧vidcの値の情報の入力を受け付ける。第1制御ブロック9は、第i電力変換器6の直流電流iidcの値の情報の入力を受け付ける。第1制御ブロック9は、直流電圧Vidcの値と直流電流iidcの値とに基づいたMPPT制御を行う際の第1暫定電圧指令値vdc_MPPT の情報を出力する。
【0037】
第2制御ブロック10は、第i電力変換器6の対地電圧viNGの値の情報の入力を受け付ける。第2制御ブロック10は、対地電圧ViNGの値に応じた第1出力値と第2出力値f_deadbandとを出力する。第i電力変換器6の対地電圧ViNGの絶対値が予め設定された閾値vNGdb以下の場合、第2出力値f_deadbandは0となる。また、第1出力値は0となる。第i電力変換器6の対地電圧viNGの絶対値が予め設定された閾値(デッドバンド)vNGdbよりも大きい場合、第2出力値f_deadbandは1となる。また、第1出力値は、第i電力変換器6の対地電圧viNGの絶対値と、予め設定された閾値(デッドバンド)vNGdbとの差に絶対値が等しく、符号が第i電力変換器6の対地電圧viNGのそれに等しい値となる。
【0038】
第3制御ブロック11は、第1制御ブロック9からの第1暫定電圧指令値vdc_MPPT の情報の入力を受け付ける。第3制御ブロック11は、第2制御ブロック10からの第2出力値f_deadbandの情報の入力を受け付ける。第3制御ブロック11は、第2出力値f_deadbandが0のとき、第1暫定電圧指令値vdc_MPPT の値をそのまま出力する。第3制御ブロック11は、第2制御ブロック10からの第2出力値f_deadbandが0から1に変化したときの第1暫定電圧指令値vdc_MPPT の値を記憶し、第2制御ブロック10からの第2出力値f_deadbandが次に0になるまでの間、記憶した第1暫定電圧指令値vdc_MPPT の値を出力する。
【0039】
第4制御ブロック12は、第2制御ブロック10からの第1出力値の情報の入力を受け付ける。第4制御ブロック12は、第2制御ブロック10からの第1出力値が0に近づくようにPI制御した値を出力する。
【0040】
第5制御ブロック13は、第1制御ブロック9からの第1暫定電圧指令値vdc_MPPT の情報の入力を受け付ける。第5制御ブロック13は、第3制御ブロック11からの出力値と第4制御ブロック12からの出力値とを合算した第2暫定電圧指令値vdc_NG の情報の入力を受け付ける。第5制御ブロック13は、第2制御ブロック10からの第2出力値f_deadbandの情報の入力を受け付ける。第2制御ブロック10からの第2出力値f_deadbandが0である場合、第5制御ブロック13は、第1暫定電圧指令値vdc_MPPT を電圧指令値vdc として第i電力変換器6の直流電圧を制御する。第2制御ブロック10からの第2出力値f_deadbandが1である場合、第5制御ブロック13は、第2暫定電圧指令値vdc_NG を電圧指令値vdc として第i電力変換器6の直流電圧を制御する。
【0041】
この場合、第i電力変換器6の対地電圧viNGは、予め設定された閾値vNGdb以下に制御される。その結果、第i電力変換器6と第i電力変換器6以外の電力変換器6との差が小さくなる。具体的には、以下の(6)式で表される値が小さくなる。
【0042】
【数6】
【0043】
以上で説明した実施の形態1によれば、制御装置8は、制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧に基づいて制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧がより小さくなるように制御対象の電力変換器6の直流電圧を制御する。このため、複数の電力変換器6の間の直流電圧の差を小さくすることができる。その結果、複数の電力変換器6の間において直流側の浮遊容量を伝う横流を抑制することができる。また、直流電源1が太陽光発電装置である場合、負極が抵抗器を介して接地され、太陽電池の負極に印可される負の対地電圧が抑制されることで、PID現象により太陽電池が劣化することを抑制できる。
【0044】
この際、制御装置8は、自身が直接の制御対象とする電力変換器6の直流側の対地電圧に基づいて制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧がより小さくなるように制御対象の電力変換器6の直流電圧を制御するが、自身が直接の制御対象としない他の電力変換器6の直流側の対地電圧や直流電圧の値を認識する必要はない。したがって、複数の電力変換装置4の間での通信、異なる電力変換器6の直流電圧の測定等は不要である。このため、簡素な構成で、複数の電力変換器6の間における横流を抑制することができる。
【0045】
例えば、制御装置8は、制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧において予め設定された閾値を超えた分がより小さくなるように制御対象の電力変換器6の直流電圧を制御する。このため、複数の電力変換装置4の各々において、対地電圧の大きさが問題にならない範囲でMPPT制御を行うことができる。
【0046】
また、制御装置8は、制御対象の電力変換器6の直流電圧に基づいて制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧がより小さくなるように制御対象の電力変換器6の出力零相電圧を制御する。このため、複数の電力変換器6の間の直流電圧の差を小さくすることができる。その結果、複数の電力変換器6の間における横流を抑制することができる。この際、複数の電力変換装置4の各々において、MPPT制御のために直流電圧制御を自由に行うことができる。
【0047】
例えば、制御装置8は、制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧において予め設定された閾値を超えた分がより小さくなるように制御対象の電力変換器6の出力零相電圧を制御する。この場合も、複数の電力変換器6の間における横流を抑制することができる。この際、複数の電力変換装置4の各々において、MPPT制御のために直流電圧制御を自由に行うことができる。
【0048】
また、直流側の対地電圧がより小さくなることで、抵抗器5の最大電圧が下がる。抵抗器5の最大電圧が下がることで、抵抗器5の消費電力が抑制される。このため、抵抗器5を小型化することができる。
【0049】
また、直流側の対地電圧がより小さくなるように電力変換器6が制御されない場合は、抵抗器5の抵抗値を大きくすればよい。この場合も、簡素な構成で、複数の電力変換器6の間において接地線を介した横流を抑制することができる。
【0050】
また、各々の一端が複数の電力変換器6の負極に接続される複数の抵抗器5において、電力変換器6の負極に接続されない他方の一端を接地せずに、代わりに複数の電力変換装置4のすべてに対して共通の任意の電位点に接続し、制御装置8は電圧認識部8aによって、制御対象の電力変換器6の直流側の対地電圧の代わりに前記の抵抗器に印可される電圧を認識し、制御装置8は電圧認識部8aが認識した電圧に基づいて電圧認識部8aが認識した電圧の大きさがより小さくなるように制御対象の電力変換器6の直流電圧または出力零相電圧を制御するようにしても良い。この場合でも、電圧認識部8aが認識する電圧は、(1)式の右辺に等しくなり、同様に複数の電力変換器6の間の直流電圧の差を小さくすることができる。その結果、複数の電力変換器6の間における横流を抑制することができる。
【0051】
なお、第i電力変換器6の対地電圧viNGに関し、(1)式は、以下のように導出される。
【0052】
第i電力変換器6の出力零相電位vioは、次の(7)式で定義される。
【0053】
【数7】
【0054】
第i電力変換器6の零相電流iioは、次の(8)式で定義される。
【0055】
【数8】
【0056】
並列接続点の零相電位vsoは、次の(9)式で定義される。
【0057】
【数9】
【0058】
直流側仮想中性点電位vidcは、次の(10)式で定義される。
【0059】
【数10】
【0060】
(10)式において、viPは、第i電力変換器6の直流正極電位である。viNは、第i電力変換器6の直流負極電位である。vidcは、第i電力変換器6の直流電圧である。
【0061】
この場合、第i電力変換器6の直流側仮想中性点に対する並列接続点の零相電圧visocは、次の(11)式で表される。
【0062】
【数11】
【0063】
(11)式が変形されることで、次の(12)式が得られる。
【0064】
【数12】
【0065】
(12)式から、次の(13)式が得られる。
【0066】
【数13】
【0067】
(13)式において、viNGは、第i電力変換器6の直流負極の対地電圧である。vsoGは、第i電力変換器6の交流側並列接続点の対地零相電圧である。
【0068】
抵抗器5に関し、次の(14)式が成立する。
【0069】
【数14】
【0070】
(14)式において、Rは、抵抗器5の抵抗値である。iiGは、抵抗器5に流れる電流である。
【0071】
キルヒホッフの法則より、次の(15)式が成立する。
【0072】
【数15】
【0073】
(14)式と(15)式とから、次の(16)式が得られる。
【0074】
【数16】
【0075】
(13)式において、i=1、2、・・・、mについての両辺の和から、次の(17)式が得られる。
【0076】
【数17】
【0077】
(16)式と(17)式とから、次の(18)式が得られる。
【0078】
【数18】
【0079】
(13)式と(18)式とから、次の(19)式が得られる。
【0080】
【数19】
【0081】
(19)式が変形されることで、次の(20)式が得られる。
【0082】
【数20】
【0083】
ここで、次の(21)式を定義する。
【0084】
【数21】
【0085】
(21)式から、次の(22)式が得られる。
【0086】
【数22】
【0087】
(14)式と(22)式とから、(1)式が導出される。
【0088】
次に、図4を用いて、制御装置8の例を説明する。
図4は実施の形態1における電力変換装置の制御装置のハードウェア構成図である。
【0089】
制御装置8の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0090】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、制御装置8の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置8の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0091】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置8の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置8の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0092】
制御装置8の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、制御部8bの機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、制御部8bの機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0093】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置8の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本開示の電力変換装置は、電力変換システムに利用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 直流電源、 2 系統、 3 連系変圧装置、 4 電力変換装置、 5 抵抗器、 6 電力変換器、 7 リアクトル、 8 制御装置、 8a 電圧認識部、 8b 制御部、 9 第1制御ブロック、 10 第2制御ブロック、 11 第3制御ブロック、 12 第4制御ブロック、 13 第5制御ブロック、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア
図1
図2
図3
図4