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特許7332045データ処理装置、データ処理方法、データ処理プログラムおよび分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法、データ処理プログラムおよび分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G01N30/86 B
G01N30/86 D
G01N30/86 C
G01N30/86 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022527525
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008351
(87)【国際公開番号】W WO2021240939
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020094492
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 雄介
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/032803(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035167(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/105566(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176658(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/092837(WO,A1)
【文献】特開2016-4525(JP,A)
【文献】特開平06-324029(JP,A)
【文献】MATVIYCHUK, Yevgen et al.,An experimental validation of a Bayesian model for quantification in NMR spectroscopy,Journal of Magnetic Resonance,2017年,Vol.285,pp.86-100
【文献】川島 貴大, 庄野 逸,ベイズ的変数選択に基づく分光スペクトル分解,情報処理学会 論文誌 数理モデル化と応用,2019年07月,Vol.12, No.2,pp.34-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/86
JSTPlus/JSRChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行うデータ処理装置であって、
前記測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定する推定部と、
前記推定部で推定した前記ピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出する算出部と、
前記算出部で算出した前記定量指標の予測分布を表示させるように動作可能な表示処理部とを備え
前記算出部は、前記推定部で推定した前記ピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して、互いに関連する前記定量指標に基づく第1、第2予測分布を算出し、
前記表示処理部は、前記第1、第2予測分布の表示態様を変更するように動作可能である、データ処理装置。
【請求項2】
前記複数のピーク波形は、第1ピーク波形と第2ピーク波形とを含み、
前記定量指標は、第1定量指標と第2定量指標とを含み、
前記第1、第2予測分布の表示態様の変更は、前記算出部が、前記第1ピーク波形に対して算出した前記第1予測分布の表示から前記第2ピーク波形に対して算出した前記第2予測分布の表示への変更、および、前記算出部が、前記第1定量指標に基づき算出した前記第1予測分布の表示から前記第2定量指標に基づき算出した前記第2予測分布の表示への変更からなる群より選択される変更を含む、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記算出部は、算出した前記定量指標の予測分布における閾値での分位点を算出し、
前記表示処理部は、前記算出部で算出した前記分位点を表示するように動作可能である、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
ユーザの入力を受ける入力部をさらに備え、
記表示処理部は、前記入力部で入力を受けたユーザの選択に基づき前記第1、第2予測分布の表示態様を変更するように動作可能である、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
ユーザの入力を受ける入力部をさらに備え、
前記表示処理部は、前記入力部で入力を受けた前記閾値以上または前記閾値以下となる確率を、前記分位点として表示させるように動作可能である、請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
ユーザの入力を受ける入力部をさらに備え、
前記表示処理部は、前記入力部で入力を受けた前記閾値に対応する、前記定量指標の予測分布のパーセンタイル点を表示させるように動作可能である、請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記表示処理部は、前記入力部で新たに前記閾値の入力を受けた場合、前記パーセンタイル点を新たに入力を受けた前記閾値に対応させて再表示させるように動作可能である、請求項6に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記定量指標は、少なくともピーク形状の高さ、およびピーク形状の面積を含む、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項9】
前記定量指標の予測分布は、各々のピーク形状に対応する物質の比率の分布を含む、請求項8に記載のデータ処理装置。
【請求項10】
前記推定部は、ベイズ推定により各々のピーク形状の予測分布を推定する、請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項11】
請求項1に記載のデータ処理装置と、
前記試料に対する前記所定の測定を行う測定部とを備える、分析装置。
【請求項12】
試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行うデータ処理方法であって、
前記測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定するステップと、
推定した前記ピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出するステップと、
算出した前記定量指標の予測分布を表示させるステップと
推定した前記ピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して、互いに関連する前記定量指標に基づく第1、第2予測分布を算出するステップと、
前記第1、第2予測分布の表示態様を変更するステップとを備える、データ処理方法。
【請求項13】
算出した前記定量指標の予測分布における閾値での分位点を算出するステップと、
算出した前記分位点を表示するステップとをさらに備える、請求項12に記載のデータ処理方法。
【請求項14】
ユーザの入力を受けるステップと、
力を受けたユーザの選択に基づき前記第1、第2予測分布の表示態様を変更するステップとをさらに備える、請求項12に記載のデータ処理方法。
【請求項15】
試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行うデータ処理プログラムであって、コンピュータに、
前記測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定するステップと、
推定した前記ピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出するステップと、
算出した前記定量指標の予測分布を表示させるステップと
推定した前記ピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して、互いに関連する前記定量指標に基づく第1、第2予測分布を算出するステップと、
前記第1、第2予測分布の表示態様を変更するステップとを実行させる、データ処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法、データ処理プログラムおよび分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどの成分分離装置と検出器とを組み合わせた分析装置においては、不純物や類縁物質など複数のピークが重畳することが多い。このため、定量分析に先立ってピークの分離を行う必要がある。クロマトグラフを用いた分析では、個々のピーク形状に、たとえば、ガウス関数や、非特許文献1に示されるBEMG関数といった関数を仮定し、これらを複数個混合させたピーク形状モデルを用いる。たとえば、混合ガウスモデルを用いる場合、想定するピークの本数(クラスタ数)をKとして以下の式(1)の関数で信号波形を表現できると仮定する。
【0003】
【数1】
【0004】
そして、パラメータであるμ,σを最尤推定法などにより推定する。ここで、各ピークの形状は、以下の式(2)で示される。
【0005】
【数2】
【0006】
しかしながら、ピーク同士が重畳している場合、各ピークの形状やピークの面積に関する推定には大きな不確実性が残る。上述の最尤推定を用いて各ピークの面積や高さ(あるいはこれらに比例する成分濃度)を予測すると、予測誤差が大きくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Arase, Shuntaro, et al. "Intelligent peak deconvolution through in-depth study of the data matrix from liquid chromatography coupled with a photo-diode array detector applied to pharmaceutical analysis." Journal of Chromatography A 1469(2016):35-47.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、ピーク分離に際しては、ガウス関数やBEMG関数(非特許文献1)を複数個用意してピーク波形にあてはめることで、重畳したピーク群から一つ一つのピーク形状を推定する。しかしながら、各ピーク形状の推定に際し、ある物質のピーク(「主ピーク」とも称する)と不純物(あるいは類縁物質)のピークとが本質的に区別できない領域が存在する。図1は、主ピークのテーリングと不純物ピークとの関係を示す図である。図1に示すように、テーリングが発生していない主ピークに不純物ピークを重ね合わせたピーク波形は、テーリングが発生した主ピークのピーク波形とほぼ同じ波形となり、これらを区別することができない。このため、ピーク波形の面積を定量分析する場合において面積誤差が生じることになる。さらに、ピーク形状モデルを用いてピーク波形のフィッティングを行う場合、測定したピーク波形に含まれるノイズなどの不確実要素があるため、ピーク波形の面積の定量分析には誤差が生じる。このような事情から、ピーク波形から得られる定量指標にどの程度の誤差が生じ得るのかを評価し、合理的な安全率を確保したいというユーザのニーズがあった。
【0009】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、ピーク波形から得られる定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある局面に従うデータ処理装置は、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行う。データ処理装置は、推定部と、算出部と、表示処理部とを備える。推定部は、測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定する。算出部は、推定部で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出する。表示処理部は、算出部で算出した定量指標の予測分布を表示させるように動作可能である。
【0011】
本開示の別の局面に従うデータ処理方法は、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行う。データ処理方法は、測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定するステップと、推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出するステップと、算出した定量指標の予測分布を表示させるステップとを備える。
【0012】
本開示の別の局面に従うデータ処理プログラムは、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行う。データ処理プログラムは、コンピュータに、測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定するステップと、推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出するステップと、算出した定量指標の予測分布を表示させるステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、データ処理装置は、各々のピーク形状に対する定量指標の予測分布を表示させるように動作可能である。このように、ユーザが定量指標の予測分布を確認することができるため、定量指標に関する統計データを直感的に把握しやすくできるとともに、これらを確認することで定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】主ピークのテーリングと不純物ピークとの関係を示す図である。
図2】データ処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】データ処理の一例を示すフローチャートである。
図4】推定処理の一例を示すフローチャートである。
図5】ピーク本数を2本と仮定した場合のピーク形状の予測分布の表示例を示す図である。
図6】ピーク本数を1本と仮定した場合のピーク形状の予測分布の表示例を示す図である。
図7】ピーク本数を2本と仮定した場合の各ピーク形状の予測分布の表示例を示す図である。
図8】ピーク面積の予測分布の表示例を示す図である。
図9】面積比率の予測分布および分位点の表示例を示す図である。
図10】各ピーク形状の予測分布および分位点の表示例を示す図である。
図11】本実施の形態の変形例に係る分析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
[データ処理装置の機能構成]
図2は、データ処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、本実施の形態に係るデータ処理装置100は、試料測定装置10と接続可能に構成されている。
【0017】
本実施の形態における試料測定装置10は、たとえば、液体クロマトグラフやガスクロマトグラフなどの成分分離装置と検出器とを組み合わせたクロマトグラフ分析装置(LC、GC)である。また、検出器として質量分析装置(MS)を用いたクロマトグラフ質量分析装置(LC/MS、GC/MS)などであってもよい。
【0018】
データ処理装置100は、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行う。測定波形に含まれる各々のピーク形状は、試料に含まれる複数の物質の各々に対応するものである。本実施の形態においては、測定波形は、液体クロマトグラフ分析装置(試料測定装置10)による測定により得られたクロマトグラムの波形を想定している。
【0019】
たとえば、試料にある物質(「主成分」とも称する)と不純物とが含まれる場合、主成分に対応するピーク(「主ピーク」とも称する)と、不純物に対応するピーク(「不純物ピーク」とも称する)とが測定波形中に出現することになる。主ピークと不純物ピークとが近接する場合は、これらを区別することが難しくなる(図1参照)。
【0020】
ここで、データ処理装置100は、ハードディスクと、CPU(Central Processing Unit)と、メモリとを備える。CPUは、ハードディスクに保存されているプログラムをメモリに読み込んで実行し、データ処理装置100の各種機能を実現する。データ処理装置100は、たとえば、パーソナルコンピュータやワークステーションである。
【0021】
また、データ処理装置100は、キーボード111やディスプレイ112を含む周辺機器と接続されている。なお、データ処理装置100は、ディスプレイ112などの入力装置やディスプレイ112などの表示装置を含むものであってもよい。
【0022】
データ処理装置100は、取得部101と、推定部102と、入力部103と、算出部104と、表示処理部105とを備える。これらの各機能は、データ処理装置100のCPUが各種プログラムを実行することで実現される。
【0023】
試料測定装置10は、試料に対する所定の測定を行う。取得部101は、測定波形を取得する。具体的には、取得部101は、試料測定装置10が行った所定の測定によって得られた測定波形を取得する。
【0024】
推定部102は、測定波形に含まれるピーク波形に対して、所定のピーク形状モデルを用いてピーク形状の予測分布を推定する。本実施の形態においては、所定のピーク形状モデルは、後述する「K-混合BEMG関数」である。測定波形は、取得部101が取得した測定波形である。なお、試料測定装置10は、取得部101を備えないものであってもよい。この場合、推定部102は、試料測定装置10が行った所定の測定によって得られた測定波形を直接取得して、推定を行う。
【0025】
本実施の形態においては、推定部102は、ベイズ推定により各々のピーク形状の予測分布を推定する。しかし、これに限らず、ベイズ推定以外の推定手法を用いて推定部102が推定を行うものであってもよい。
【0026】
本実施の形態においては、測定波形に含まれるピーク波形は、近接した複数のピーク波形を含むものとする。つまり、推定部102は、取得部101で取得した測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデル(K-混合BEMG関数)を用いて各々のピーク形状の予測分布を推定する。詳しくは、図5図7を用いて後述する。
【0027】
算出部104は、推定部102で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出する。また、算出部104は、算出した定量指標の予測分布における閾値での分位点を算出する。
【0028】
たとえば、定量指標は、「ピーク形状の面積(「ピーク面積」とも称する)」である。つまり、この場合の定量指標の予測分布は、ピーク面積の予測分布である。また、定量指標は、「ピーク形状間のピーク面積の比率(単に「面積比率」とも称する)であってもよい。この場合の定量指標の予測分布は、面積比率の予測分布であって、「各々のピーク形状に対応する物質の比率の分布」を指し示すものである。また、たとえば、閾値は「0.95」であり、求められた分位点は「20.4%」である。詳しくは、図8図10を用いて後述する。
【0029】
表示処理部105は、算出部104で算出した定量指標の予測分布を表示させるように動作可能である。また、表示処理部105は、算出部104で算出した分位点を表示するように動作可能である。具体的には、表示処理部105は、算出部104で算出した定量指標の予測分布および分位点の少なくとも一方をディスプレイ112に表示させる。その結果、ディスプレイ112には、定量指標の予測分布や分位点が表示される。詳しくは、図8図10を用いて後述する。
【0030】
ここで、ユーザは、キーボード111の操作により各種設定を行ったり、表示の切り替えを行うことが可能である。たとえば、ユーザは、キーボード111の操作により閾値を設定することができる。
【0031】
入力部103は、ユーザの入力を受ける。具体的には、入力部103は、ユーザの操作に基づき閾値(たとえば、0.95)の入力を受ける。算出部104は、入力部103で入力を受けた閾値に基づき、分位点を算出し、それをディスプレイ112に表示する。たとえば、ディスプレイ112は、閾値とともに分位点を表示してもよいし、これらとともに面積比率の予測分布を表示してもよいし(後述の図9参照)、これらとともにピーク形状の予測分布を表示してもよい(後述の図10参照)。
【0032】
また、ユーザは、キーボード111の操作により、ディスプレイ112の表示を切り替えることができる。たとえば、ユーザは、キーボード111の操作により上記の面積比率の予測分布の表示(後述の図9参照)をピーク面積の予測分布の表示(後述の図8参照)に切り替えたり、ピーク形状の予測分布の表示(後述の図10参照)に切り替えたりすることができる。
【0033】
なお、データ処理装置100は、通信インターフェースを介してLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続可能な構成としてもよい。この場合、データ処理装置100は、ネットワークを経由して、試料測定装置10に接続するようにしてもよい。また、データ処理装置100は、ネットワークを経由して、複数台の試料測定装置10に接続するようにしてもよい。
【0034】
このような、取得部101と、推定部102と、入力部103と、算出部104と、表示処理部105とが行う処理は、上述のように、パーソナルコンピュータが行うようにしてもよいが、ネットワーク経由でパーソナルコンピュータに接続されたサーバ装置が行うようにしてもよい。上記処理を行うプログラムは、前者の場合はパーソナルコンピュータにインストールされることになり、後者の場合はサーバ装置にインストールされることになる。上記処理を行うプログラムは、ネットワーク経由でサーバ装置よりダウンロード可能にしてもよいし、記録媒体(たとえば、CDやDVD)に記憶して配布するようにしてもよい。
【0035】
[データ処理のフローチャート]
図3は、データ処理の一例を示すフローチャートである。図3に示すように、データ処理装置100は、データ処理を実行する。データ処理は、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対して行う処理であって、データ処理装置100の取得部101、推定部102、入力部103、算出部104および表示処理部105が実行する一連の処理である。
【0036】
データ処理は、取得処理と、推定処理と、入力処理と、算出処理と、表示処理とを含む。取得処理は取得部101が実行する処理であり、推定処理は推定部102が実行する処理であり、入力処理は入力部103が実行する処理であり、算出処理は算出部104が実行する処理であり、表示処理は表示処理部105が実行する処理である。以下では、ステップを単にSと記載する。
【0037】
CPUは、ハードディスクに保存されているプログラムをメモリに読み込んで実行する。データ処理は、データ処理プログラムの実行により行われる。取得処理は、取得処理プログラムの実行により行われる。推定処理は、推定処理プログラムの実行により行われる。入力処理は、入力処理プログラムの実行により行われる。算出処理は、算出処理プログラムの実行により行われる。表示処理は、表示処理プログラムの実行により行われる。
【0038】
たとえば、取得部101は、試料測定装置10とデータ処理装置100との間で、データ(測定波形)の受け渡しをするための取得処理を行う。取得処理は、取得処理プログラムの実行により行われる。
【0039】
データ処理を開始すると、データ処理装置100は、S11において、取得処理を実行し、処理をS12に進める。取得処理において、取得部101は、試料測定装置10が行った所定の測定によって得られた測定波形を取得する。
【0040】
データ処理装置100は、S12において、推定処理を実行し、処理をS13に進める。推定処理において、図4で示す処理を行う。
【0041】
図4は、推定処理の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、推定処理を開始すると、データ処理装置100は、S21において、ピーク本数を1~N本と仮定した場合のそれぞれについて、測定波形に含まれるピーク波形に対して、ベイズ推定によりピーク形状の予測分布を推定し、処理をS22に進める。
【0042】
データ処理装置100は、S22において、ユーザが指定したピーク本数を設定し、処理をS23に進める。たとえば、S21で算出されたピーク本数=1~N本のそれぞれのピーク形状の予測分布は、ディスプレイ112に表示させてもよい(後述の図5図6参照)。そして、ピーク本数として1~N本のいずれが妥当であるかをユーザが指定する。この場合、たとえば、キーボード111の操作に基づきユーザが指定したピーク本数を設定する。
【0043】
データ処理装置100は、S23において、S22で設定されたピーク本数のピーク形状の予測分布を推定結果として選択し、推定処理を終了する。たとえば、ピーク本数=2本が設定された場合は、データ処理装置100は、ピーク本数=2本のピーク形状の予測分布を推定結果として選択し、S13~S16の処理において、この推定結果を用いる。
【0044】
図3に戻り、データ処理装置100は、S13において、入力処理を実行し、処理をS14に進める。入力処理において、入力部103は、ユーザの入力を受ける。具体的には、入力部103は、ユーザの操作に基づき閾値および表示項目の入力を受ける。「表示項目」は、ユーザが、ディスプレイ112に表示させようとする項目であり、ピーク面積や面積比率などの定量指標であってもよく、分位点などであってもよい。たとえば、表示項目として、定量指標「面積比率」が入力された場合は、ディスプレイ112には面積比率の予測分布が表示される。また、たとえば、閾値は「0.95」である。
【0045】
データ処理装置100は、S14,S15において、算出処理を実行する。S14において、算出部104は、推定部102で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出し、処理をS15に進める。たとえば、定量指標の予測分布として「面積比率の予測分布」が算出される。
【0046】
S15において、算出部104は、定量指標の予測分布における閾値での分位点を求め、処理をS17に進める。たとえば、面積比率の予測分布における閾値(0.95)での分位点として「20.4%」が求められる。なお、S14において分位点の表示が指定されていない場合は、分位点を算出する必要はない。
【0047】
データ処理装置100は、S16において、表示処理を実行し、データ処理を終了する。表示処理において、表示処理部105は、算出部104で算出した定量指標(たとえば、面積比率など)の予測分布および分位点(たとえば、20.4%)の少なくとも一方をディスプレイ112に表示させる。
【0048】
その結果、ディスプレイ112には、定量指標の予測分布や分位点が表示される。たとえば、後述する図8に示すように、ピーク面積の予測分布がディスプレイ112に表示されたり、後述する図9に示すように、面積比率の予測分布とともに、0.95(95%)の確率で、面積比率(=ピーク2のピーク面積/ピーク1のピーク面積)が20.4%未満になることを示す「P(面積[%]<20.4)=0.95」がディスプレイ112に表示されたり、後述する図10に示すように、ピーク形状の予測分布がディスプレイ112に表示される。
【0049】
ここで、ユーザは、キーボード111の操作により閾値を変更したり、表示項目や定量指標を変更する入力を行うことができる。このような変更が行われた場合は、データ処理装置100は、再度、S13からデータ処理を実行するようにすればよい。たとえば、ユーザが閾値を「0.95」から「0.97」に変更した場合は、S13において、閾値=「0.97」が入力される。そして、データ処理装置100は、変更された閾値に基づき、S14,S15の算出処理およびS16の表示処理を実行する。
【0050】
また、ユーザが表示項目を「ピーク面積」から「ピーク高さ」に変更した場合は、S13において、表示項目=「ピーク高さ」が入力される。そして、データ処理装置100は、変更された表示項目に基づき、S14,S15の算出処理およびS16の表示処理を実行する。
【0051】
なお、表示処理部105は、入力部103で入力した閾値以上となる確率を分位点として表示させる処理を行ったり、入力部103で入力した閾値以下となる確率を分位点として表示させる処理を行うものに限らず、入力部103で入力した閾値を超える確率を分位点として表示させる処理を行うものや、入力部103で入力した閾値未満となる確率を分位点として表示させる処理を行うものであってもよい。なお、分位点は、入力した閾値に基づき算出される数値であり、たとえば、何らかの危険度や安全度を示すような統計量である。
【0052】
また、算出部104は、推定部102で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して、互いに関連する定量指標に基づく第1、第2予測分布を算出するようにしてもよい。この場合、表示処理部105は、入力部103で入力を受けたユーザの選択に基づき第1、第2予測分布の表示態様を変更するように動作可能である。
【0053】
「互いに関連する定量指標に基づく第1、第2予測分布」は、定量指標が同じであってもよいし、互いに関連のあるものであればどのようなものであってもよい。たとえば、算出部104は、第1予測分布としてピーク1のピーク面積の予測分布を算出し、第2予測分布としてピーク2のピーク面積の予測分布を算出するものであってもよい。算出部104は、第1予測分布としてピーク1のピーク形状の予測分布を算出し、第2予測分布としてピーク1のピーク面積の予測分布を算出するものであってもよい。算出部104は、第1予測分布としてピーク1のピーク形状の予測分布を算出し、第2予測分布としてピーク2のピーク面積の予測分布を算出するものであってもよい。ただし、たとえば、試料測定装置10が行った所定の測定によって得られた2つの測定波形間で比較するような場合は、互いに関連するものであるとは言えない。
【0054】
また、第1、第2予測分布の表示態様として、第1予測分布のみを表示させるようにしてもよいし、第2予測分布のみを表示させるようにしてもよいし、いずれも表示してもよく、いずれも表示する場合には、一方を大きく表示し他方を小さく表示するようにしてもよい。
【0055】
具体的には、たとえば、S13において、ピーク1のピーク形状の予測分布を表示させるように表示項目を入力し、ディスプレイ112に、ピーク1のみのピーク形状の予測分布を表示させてもよい。また、S13において、ピーク1のピーク形状の予測分布を大きく表示させピーク2のピーク形状の予測分布を小さく表示させるように表示項目を入力し、ディスプレイ112に、ピーク1のピーク形状の予測分布を大きく表示させピーク2のピーク形状の予測分布を小さく表示させるようにしてもよい。
【0056】
[ピーク形状の予測分布]
上述のように、取得部101は、試料測定装置10が行った所定の測定によって得られた測定波形(「信号波形」とも称する)を取得する。推定部102は、取得部101で取得した測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分あ布を、ベイズ推定により推定する。以下、ピーク形状の予測分布の推定や表示に関し、具体的に説明する。
【0057】
本実施の形態においては、クロマトグラムにおいて複数のピークが重畳し、かつ重畳しているピーク本数が未知の場合を想定している。このような場合、一般的に、信号波形からピーク分離を行うには、個々のピークの形状に関するモデルを足し合わせることで信号波形のモデルを作り、そのモデルのパラメータを調整することで信号波形にフィッティングする。
【0058】
本実施の形態においては、測定波形(信号波形)として、LCクロマトグラムを適用する。また、所定のピーク形状モデルとして、BEMG関数を適用する。すなわち、以下の式(3)により、1つのピーク形状が表現できるものとする。
【0059】
【数3】
【0060】
信号波形はこのピークが重畳したものとみなせるので、信号波形モデルはBEMG関数を複数足し合わせることで表現できる。本実施の形態では、K個のBEMG関数を足し合わせたもの(ピーク本数=K本)を「K-混合BEMG関数」と称する。K-混合BEMG関数は、以下の式(4)で示される。ただし、信号に混入するノイズを考慮し、式(4)のように、誤差項εを付加する。誤差項εはゼロ平均で正規分布しているものとし、その分散はパラメータとして信号波形から推定する。
【0061】
【数4】
【0062】
なお、本実施の形態においては、ピーク形状のモデルとしてBEMG関数を適用したが、これに限らない。たとえば、ピーク形状のモデルとしてガウス関数を適用してもよいし、コーシー関数を適用するようにしてもよいし、なんらかのモデル関数で記述できるようなものであればよい。また、誤差項は、xに誤差を追加する以下の式(5)であってもよいし、入力xが誤差に影響する形式の以下の式(6)であってもよい。また、誤差項は正規分布するとしたが、これに限らない。たとえば、その他の確率分布に従うようにしてもよいし、確率分布以外の規則に従うようにしてもよい。
【0063】
【数5】
【0064】
【数6】
【0065】
また、ベイズ推定に際しては、たとえば、No U-Turn Sampler(NUTS)によるサンプリングにより分布推定を実行すればよい。なお、これに限らず、他のサンプリング手法を用いるようにしてもよい。また、たとえば、変分ベイズなどのサンプリング以外のベイズ推定手法を用いてもよい。
【0066】
図1を用いて説明したように、ある物質のピーク(「主ピーク」、「ピーク1」とも称する)と不純物のピーク(「ショルダーピーク」、「ピーク2」とも称する)とが近接する場合、これらのピークを区別することが難しくなる。
【0067】
図1のような場合においては、ピーク本数が1本(主ピークのみ存在)である可能性もあるし、ピーク本数が2本(主ピークおよびショルダーピークが存在)である可能性もある。あるいは、ピーク本数が3本以上である可能性もある。
【0068】
このため、本実施の形態においては、ピーク本数が1本または2本、あるいはそれ以上あることを仮定して、ピーク形状の予測分布を推定する。具体的には、本実施の形態においては、ピーク本数が1本~N本であると仮定した場合のそれぞれについて、ピーク形状の予測分布を推定し、その結果をディスプレイ112に表示可能な構成としている。さらに、各ピーク本数におけるピーク形状の予測分布の対比から、妥当なピーク本数をユーザが判定し、それを設定可能な構成としている。
【0069】
以下、図5図7を用いて、具体例を説明する。図5は、ピーク本数を2本と仮定した場合のピーク形状の予測分布の表示例を示す図である。図6は、ピーク本数を1本と仮定した場合のピーク形状の予測分布の表示例を示す図である。
【0070】
ベイズ推定により推定量として、パラメータの事後分布が得られる。この推定量から、各ピーク形状の予測量(予測分布)を生成する。図5図6は、各パラメータの事後分布から、推定されたピーク形状を描画したものである。ここで、実線は、観測波形を示す。破線で囲われた領域は、推定量(モデルのパラメータの事後分布)から得た信号波形の予測分布の両側95%予測区間を示している。
【0071】
図6に示すように、ピーク本数を1本と仮定した場合(1-混合BEMG関数モデルを適用)は、ピークの右側部分の予測分布が広がっており、大きな誤差が発生していることが確認できる。これに対して、図5に示すように、ピーク本数を2本と仮定した場合(2-混合BEMG関数モデルを適用)は、ピーク本数を1本と仮定した場合に比べて、ピークの右側部分の誤差が小さい。
【0072】
図示しないが、ピーク本数が3本、4本・・・N本である場合のピーク形状の予測分布も表示可能である。そして、ピーク本数=2本が妥当であるとユーザが判断した場合、キーボード111の操作により、ピーク本数=2本であることを設定する。これにより、ピーク本数=2本のピーク形状の予測分布が推定結果として選択される。また、このピーク形状の予測分布に基づき、定量指標の予測分布などが算出されることになる。
【0073】
図7は、ピーク本数を2本と仮定した場合の各ピーク形状の予測分布の表示例を示す図である。ここで、実線は、観測波形(測定波形)を示す。破線で囲われた領域は、ピーク1(主ピーク)形状の95%予測区間を示す。一点鎖線で囲われた領域はピーク2(ショルダーピーク)形状の95%予測区間を示す。図7は、パラメータAi,ui,si,ai,biの事後分布(サンプリングによりベイズ推定を行う場合は事後分布から得たサンプル)をモデルに代入したものであって、誤差項を除いたピーク形状自体の予測分布を示すものである。
【0074】
図7に示すように、ピーク1(主ピーク)の右側に近接してピーク2(ショルダーピーク)が存在していることが分かる。図1の例で言えば、ピーク本数=1本となるのは、主ピークのみが存在するようなケースであり、ピーク本数=2本となるのは、主ピークに加えて不純物ピーク(ショルダーピーク)が存在するようなケースである。ピーク間が近接しておりテーリングが発生するような場合は、テーリングと不純物ピークが重畳するため、不確実性が高くなる。上記に示したように、このような不確実性は、ベイズ推定などの手法を用いた予測分布により評価を行うことができる。
【0075】
以上のように、本実施の形態においては、1~N本のピーク本数のうちいずれが妥当であるかをユーザが目視で確認し、最適なピーク本数をユーザが選択する(設定する)ようにした。しかし、これに限らず、データ処理装置100が最適なピーク本数を選択するようにしてもよい。この場合、情報量規準やベイズファクターなどの基準を用いて自動的に選択するようにしてもよい。たとえば、基準として情報量規準を用いた場合、複数のモデルのいずれかを選択させるような場合、評価値が最も小さくなるものを妥当なモデルとして選択させる。
【0076】
あるいは、ユーザおよびデータ処理装置100の双方で、ピーク本数の選択を行うようにしてもよい。たとえば、ピーク本数が1~N本である場合のそれぞれのピーク形状の予測分布を表示するとともに、データ処理装置100が選択したピーク本数を表示するようにする。この場合において、ユーザは目視で妥当なピーク本数を決め、このピーク本数がデータ処理装置100が選択したピーク本数と異なる場合は、ユーザが決めたピーク本数に変更可能な構成としてもよい。
【0077】
[定量指標の予測分布と分位点]
上述のように、算出部104は、推定部102で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出する。表示処理部105は、算出部104で算出した定量指標の予測分布をディスプレイ112に表示させる処理を行う。
【0078】
ここで、定量指標は、少なくともピーク形状の高さ(「ピーク高さ」とも称する)、ピーク形状の面積(「ピーク面積」とも称する)を含む。また、ピーク高さまたはピーク面積から算出される物質の濃度(「物質濃度」とも称する)を含んでもよい。「物質濃度」は、試料に含まれる物質であって、各々のピークに対応した物質の濃度である。
【0079】
図8は、ピーク面積の予測分布の表示例を示す図である。図8の例は、図7の例において、ピーク本数=2本である場合の各ピーク形状の予測分布に基づき、定量指標としてピーク面積の予測分布を算出部104で算出し、この予測分布をディスプレイ112に表示させたものである。
【0080】
図8の左側はピーク1(主ピーク)のピーク面積の予測分布、図8の右側は、ピーク2(ショルダーピーク)のピーク面積の予測分布をそれぞれ算出し、その結果をバイオリン図としてプロットしたものである。ここで、縦軸は、ピーク面積を示し、横軸は、ピーク1またはピーク2の確率密度が左右対称に表示されている。
【0081】
ピーク2(ショルダーピーク)のピーク面積は、平均で0.130、中央値で0.113であり、両側95%予測区間は[0.079,0.278]である。図示されるように、分布形状は上下非対称であり、上端は0.5まで伸びているため、極めて大きな値となる可能性があることが視覚的あるいは直感的に分かりやすい。また、図からは、ピーク1の面積は1.0程度、ピーク2の面積は0.1程度であり、ピーク2の面積はピーク1の面積のおよそ1/10程度であろうことが直感的につかみやすい。
【0082】
図示しないが、図8の例と同様に、上述の推定部102で推定したピーク形状の予測分布に基づき、ピーク高さや物質濃度に関しても予測分布を算出して、これらをディスプレイ112に表示させることが可能である。これらの表示は、ユーザの操作により切り替えが可能である。なお、プロットさせる際に、2変数の確率分布があるような場合には、一方の変数が取りうる全ての値に対応する確率を合算して周辺化することにより、他方の確率分布を得て、これをプロットしている。
【0083】
また、定量指標の予測分布は、各々のピーク形状に対応する物質の比率の分布を含む。たとえば、定量指標が「ピーク形状間のピーク高さの比率(単に「高さ比率」とも称する)」である場合、定量指標の予測分布は、高さ比率の予測分布である。定量指標が「ピーク形状間のピーク面積の比率(単に「面積比率」とも称する)」である場合、定量指標の予測分布は、面積比率の予測分布である。定量指標が「物質間の濃度の比率(単に「濃度比率」とも称する)」である場合、定量指標の予測分布は、濃度比率の予測分布である。
【0084】
たとえば、ピーク1およびピーク2が存在する上記例においては、面積比率=「ピーク2のピーク面積/ピーク1のピーク面積」である。面積比率は、ピーク2が不純物である場合、ピーク1に対応する物質に対する不純物の比率を指す。また、面積比率=「ピーク2のピーク面積/(ピーク1のピーク面積+ピーク2のピーク面積)」としてもよい。あるいは、N本のピークがある場合は、面積比率=「あるピークのピーク面積/ピーク1~Nのピーク面積の和」としてもよいし、比較対象とする2つのピークについて、面積比率を求めるようにしてもよい。
【0085】
また、図8のように、ピーク面積を表示する場合は、複数のピークについて同時に表示させるようにしてもよいし、1つ1つ切り替えて表示させるようにしてもよい。次に示す図9のように、面積比率を表示する場合は、複数の面積比率を同時に表示させるようにしてもよいし、1つ1つ切り替えて表示するようにしてもよい。
【0086】
図9は、面積比率の予測分布および分位点の表示例を示す図である。図9では、ヒストグラムとそのカーネル密度推定を示している。
【0087】
上述のように、入力部103は、ユーザの操作に基づき閾値を入力する。算出部104は、推定部102で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出し、さらに、算出した定量指標の予測分布における閾値での分位点を算出する。表示処理部105は、入力部103で入力を受けた閾値以上または閾値以下となる確率を、分位点として表示させるように動作可能である。
【0088】
本例では、定量指標として「面積比率」、閾値として「0.95」が入力されているとする。算出部104は、推定部102で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して面積比率の予測分布を算出し、算出した面積比率の予測分布における閾値(0.95)での分位点を算出する。表示処理部105は、入力部103で入力した閾値(0.95)以上となる確率を、分位点として表示させる。
【0089】
図9の例においては、分位点=「20.4%」が算出され、「P(面積[%]<20.4)=0.95」が表示されている。これにより、0.95(95%)の確率(安全率)で、面積比率(ピーク2のピーク面積/ピーク1のピーク面積)が20.4%未満になることを示している。この例においては、閾値として「0.95」が入力され、それに対して求められた分位点は「20.4%」である。なお、図8の図においては示されないが、ピーク1のピーク面積とピーク2のピーク面積とは、内部データとしては1対1の対応関係がある。このため、面積比率=ピーク2のピーク面積/ピーク1のピーク面積も一意に決定されることになる。
【0090】
あるいは、0.05(5%)の確率で、面積比率が20.4%以上になることを示してもよい。この場合、閾値として「0.05」が入力され、それに対して求められた分位点は「20.4%」になる。表示処理部105は、入力部103で入力した閾値(0.05)以下となる確率を、分位点として表示させる。たとえば、「P(面積[%]≧20.4)=0.05」を表示するようにしてもよい。
【0091】
この場合、言い換えると、ピーク1に対するピーク2(ショルダーピーク)の面積比率が20.4%以上となる確率(危険率)は5%(=1-0.95)になるとも言える。なお、面積比率を閾値として入力させ、危険率を算出させるようにしてもよい。たとえば、ユーザが閾値として「20.4%」を入力した場合に、分位点として危険率=「5%」が算出される。
【0092】
また、表示処理部105は、入力部103で入力を受けた閾値に対応する、定量指標の予測分布のパーセンタイル点を表示させるように動作可能である。本例においては、95%点は0.204である。図9に示すように、パーセンタイル点として95%点を縦破線で表示している。通常の予測区間とは異なり、ベイズ推定における予測区間ではこのような直観的な解釈が可能である。
【0093】
なお、上記例では、ピーク本数は2本であるが、3本以上のピークが存在してもよい。この場合、図8で示したような予測分布がピーク本数分存在することになる。この場合、そのうちの任意の2つのピークを選択し、図9に示したような面積比率の予測分布を表示させるようにしてもよい。
【0094】
また、ここでは危険率を5%(閾値を0.95)としているが、上述のように、この閾値はユーザが指定することができる。危険率が指定されると、不純物ピークの面積比率について、指定した危険率の範囲で取り得る値を知ることができる。
【0095】
また、表示処理部105は、入力部103で新たに閾値の入力を受けた場合、パーセンタイル点を新たに入力を受けた閾値に対応させて再表示させるように動作可能としてもよい。
【0096】
たとえば、表示処理部105は、閾値として「0.95」が入力部103に入力されて閾値「0.95」に基づきパーセンタイル点を表示させた後に、閾値として「0.97」が入力部103に入力されたときは、閾値「0.97」に基づきパーセンタイル点を表示させてもよい。
【0097】
具体的には、閾値として「0.95」(危険率5%)を設定して図9のような表示を行った後に、閾値を変更(たとえば、「0.97」(危険率3%))して、表示を更新することができる。この場合、たとえば、ユーザは、危険率が5%である場合はショルダーピークの面積比率が20.4%以上となるが、危険率が3%である場合は22%以上となるといったことを検証することができる。また、この場合、パーセンタイル点も変更して表示する。このように、ユーザは、閾値として任意の値を設定・更新することができ、その結果をディスプレイ112に表示させて評価・検証を行うことができる。
【0098】
特に、医薬品における不純物分析の場面において、上記のような評価・検証を行いたいというニーズが強い。医薬品の有効成分に残存している不要な化学物質である医薬品不純物は、所定濃度以上含まれる場合に報告義務がある。また、有効成分と不純物の間、あるいは不純物と不純物の間においてピークが近接するような場合は、上述の通り、特に誤差が発生しやすくなる。このような事情から、不純物の含有率に関し、どの程度の誤差が生じているのかといったリスクを把握したいという強いニーズがある。
【0099】
また、図示しないが、図9の例と同様に、高さ比率や濃度比率に関しても予測分布を算出して、これらをディスプレイ112に表示させることが可能である。また、この場合、閾値に基づき、高さ比率や濃度比率の予測分布のパーセンタイル点や分位点を表示させる。これらの表示は、ユーザの操作により切り替えが可能である。
【0100】
また、図9を用いて説明した分位点の表示は、面積比率の予測分布とともに表示するものに限らない。たとえば、個々のピーク形状の予測分布とともに表示するようにしてもよい。図10は、各ピーク形状の予測分布および分位点の表示例を示す図である。この場合、「定量指標」として「ピーク形状」が表示項目として入力されて、ピーク形状の予測分布(ピークごとの95%予測区間)がディスプレイ112に表示されることになる。
【0101】
図10に示すように、個々のピーク形状の予測分布とともに、「P(面積[%]<20.4)=0.95」を表示している。これにより、0.95(95%)の確率で、ピーク2のピーク面積/ピーク1のピーク面積(面積比率)が20.4%未満になることが示される。
【0102】
以上示したように、ユーザが定量指標の予測分布を確認することができるため、定量指標に関する統計データを直感的に把握しやすくできるとともに、これらを確認することで定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。また、ユーザが定量指標の予測分布における閾値での分位点を確認することができるため、定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。
【0103】
たとえば、定量指標として面積比率を用いることができる。この場合、各ピークの面積誤差を考慮することにより、各ピーク物質について合理的な安全率を確保した定量が可能となる。クロマトグラフでの成分定量においては、各成分の濃度は、通常、ピーク高さやピーク面積に比例するため、成分濃度の予測分布を得る。この予測分布から、各物質が、法令や既約などで定められた閾値を上回る可能性を評価することができる。また、クロマトグラムに適用するピーク関数の数(ピーク本数)も推定対象とした場合、不純物の有無の確率も評価することも可能になる。
【0104】
[分析装置の機能構成について]
図11は、本実施の形態の変形例に係る分析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0105】
本実施の形態においては、図2に示したように、試料測定装置10が試料に対する所定の測定を行い、試料測定装置10が行った所定の測定によって得られた測定波形を、データ処理装置100の取得部101が取得するような構成とした。
【0106】
これに対して、本実施の形態の変形例に係る分析装置1は、データ処理装置100と、測定部11とを備えるように構成した。測定部11は、試料に対する所定の測定を行う。取得部101は、測定部11が行った所定の測定によって得られた測定波形を取得する。
【0107】
すなわち、本実施の形態においては、データ処理装置100とは異なる試料測定装置10が試料に対する所定の測定を行うようにしたが、本実施の形態の変形例においては、分析装置1が備える測定部11が試料に対する所定の測定を行うようにする。
【0108】
この場合、たとえば、図11に示すように、分析装置1は、測定部11と、取得部101と、推定部102と、入力部103と、算出部104と、表示処理部105と、操作部121と、表示部122を備える。
【0109】
分析装置1は、たとえば、上述したクロマトグラフ分析装置(LC、GC)やクロマトグラフ質量分析装置(LC/MS、GC/MS)などである。測定部11は、試料に対する所定の測定を行う装置であり、データ処理装置100は、得られた測定波形に対してデータ処理を行う装置である。つまり、分析装置1は、測定を行う装置とデータ処理を行う装置とのいずれも備える装置である。データ処理装置100は、データ処理を行う基板やモジュールであってもよい。
【0110】
データ処理装置100は、取得部101と、推定部102と、入力部103と、算出部104と、表示処理部105を備えるが、これらが行う処理の内容は、図1図10を用いて説明したものと同様である。データ処理装置100は、データ処理装置100に備えられた操作部121によりユーザからの操作を入力し、データ処理装置100に備えられた表示部122に表示を行う。
【0111】
本実施の形態においては、たとえば、LC分析装置に接続したパーソナルコンピュータに測定波形に対するデータ処理を行うプログラムをインストールすること、あるいは、当該パーソナルコンピュータが、測定波形に対するデータ処理を行うプログラムを実行するサーバ装置と接続することを想定しているが、本実施の形態の変形例においては、LC分析装置自体が測定波形に対するデータ処理を行うプログラムを実行する構成となる。
【0112】
[態様]
上述した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0113】
(第1項)一態様に係るデータ処理装置は、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行う。データ処理装置は、推定部と、算出部と、表示処理部とを備える。推定部は、測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定する。算出部は、推定部で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出する。表示処理部は、算出部で算出した定量指標の予測分布を表示させるように動作可能である。
【0114】
このような構成によれば、ユーザが定量指標の予測分布を確認することができるため、定量指標に関する統計データを直感的に把握しやすくできるとともに、これらを確認することで定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。
【0115】
(第2項)第1項に記載のデータ処理装置において、算出部は、算出した定量指標の予測分布における閾値での分位点を算出する。表示処理部は、算出部で算出した分位点を表示するように動作可能である。
【0116】
このような構成によれば、ユーザが定量指標の予測分布における閾値での分位点を確認することができるため、定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。
【0117】
(第3項)第1項または第2項に記載のデータ処理装置において、ユーザの入力を受ける入力部をさらに備える。算出部は、推定部で推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して、互いに関連する定量指標に基づく第1、第2予測分布を算出する。表示処理部は、入力部で入力を受けたユーザの選択に基づき第1、第2予測分布の表示態様を変更するように動作可能である。
【0118】
このような構成によれば、たとえば、第1予測分布のみを表示させたり第2予測分布のみを表示させたりするなど、ユーザの選択に基づき第1、第2予測分布の表示態様を変更することができるため、定量指標に関する統計データを直感的に把握しやすくできる。
【0119】
(第4項)第2項に記載のデータ処理装置において、ユーザの入力を受ける入力部をさらに備える。表示処理部は、入力部で入力を受けた閾値以上または閾値以下となる確率を、分位点として表示させるように動作可能である。
【0120】
このような構成によれば、ユーザの意思により入力された閾値に基づいて算出される分位点に基づく評価を好適に行うことができる。
【0121】
(第5項)第2項に記載のデータ処理装置において、ユーザの入力を受ける入力部をさらに備える。表示処理部は、入力部で入力を受けた閾値に対応する、定量指標の予測分布のパーセンタイル点を表示させるように動作可能である。
【0122】
このような構成によれば、ユーザの意思により入力された閾値に基づいて表示されるパーセンタイル点に基づく評価を好適に行うことができる。
【0123】
(第6項)第5項に記載のデータ処理装置において、表示処理部は、入力部で新たに閾値の入力を受けた場合、パーセンタイル点を新たに入力を受けた閾値に対応させて再表示させるように動作可能である。
【0124】
このような構成によれば、ユーザの意思により変更した閾値に基づき表示されるパーセンタイル点に基づく評価を好適に行うことができる。
【0125】
(第7項)第1~第6項のいずれか1項に記載のデータ処理装置において、定量指標は、少なくともピーク形状の高さ、およびピーク形状の面積を含む。
【0126】
このような構成によれば、たとえば、主成分や不純物など特定の物質を対象とした評価を好適に行うことができる。
【0127】
(第8項)第7項に記載のデータ処理装置において、定量指標の予測分布は、各々のピーク形状に対応する物質の比率の分布を含む。
【0128】
このような構成によれば、たとえば、主成分に対して不純物が含まれる比率や不純物同士の比率に関する評価を好適に行うことができる。
【0129】
(第9項)第1~第8項のいずれか1項に記載のデータ処理装置において、推定部は、ベイズ推定により各々のピーク形状の予測分布を推定する。
【0130】
このような構成によれば、定量指標に関する評価を好適に行うことができる。
(第10項)分析装置は、第1~第9項のいずれか1項に記載のデータ処理装置と、試料に対する所定の測定を行う測定部とを備える。
【0131】
このような構成によれば、一つの装置(分析装置)のみで、試料に対する所定の測定および定量指標に関する評価を行うことができる。
【0132】
(第11項)一態様に係るデータ処理方法は、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行う。データ処理方法は、測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定するステップと、推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出するステップと、算出した定量指標の予測分布を表示させるステップとを備える。
【0133】
このような構成によれば、ユーザが定量指標の予測分布を確認することができるため、定量指標に関する統計データを直感的に把握しやすくできるとともに、これらを確認することで定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。
【0134】
(第12項)第11項に記載のデータ処理方法において、算出した定量指標の予測分布における閾値での分位点を算出するステップと、算出した分位点を表示するステップとをさらに備える。
【0135】
このような構成によれば、ユーザが定量指標の予測分布における閾値での分位点を確認することができるため、定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。
【0136】
(第13項)第11項または第12項に記載のデータ処理方法において、ユーザの入力を受けるステップと、推定した前記ピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して、互いに関連する定量指標に基づく第1、第2予測分布を算出するステップと、入力を受けたユーザの選択に基づき第1、第2予測分布の表示態様を変更するステップとをさらに備える。
【0137】
このような構成によれば、たとえば、第1予測分布のみを表示させたり第2予測分布のみを表示させたりするなど、ユーザの選択に基づき第1、第2予測分布の表示態様を変更することができるため、定量指標に関する統計データを直感的に把握しやすくできる。
【0138】
(第14項)一態様に係るデータ処理プログラムは、試料に対する所定の測定によって得られた測定波形に対してデータ処理を行う。データ処理プログラムは、コンピュータに、測定波形に含まれる近接した複数のピーク波形の各々に対して、所定のピーク形状モデルを用いて各々のピーク形状の予測分布を推定するステップと、推定したピーク形状の予測分布に基づき、各々のピーク波形に対して定量指標の予測分布を算出するステップと、算出した定量指標の予測分布を表示させるステップとを実行させる。
【0139】
このような構成によれば、ユーザが定量指標の予測分布を確認することができるため、定量指標に関する統計データを直感的に把握しやすくできるとともに、これらを確認することで定量指標に対して誤差を考慮して合理的な安全率を確保することができる。
【0140】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本開示は、たとえば、クロマトグラフなどの測定波形が近接した複数のピーク波形を含むことで、複数のピークの重畳によりピーク分離が重要となる場合において、試料に含まれる各物質のピーク面積(あるいはピーク高さや濃度)を定量するとともに、その頑健性を評価する(定量指標に関する評価をする)ために利用される。
【符号の説明】
【0142】
1 分析装置、10 試料測定装置、11 測定部、100 データ処理装置、101 取得部、102 推定部、103 入力部、104 算出部、105 表示処理部、111 キーボード、112 ディスプレイ、121 操作部、122 表示部。
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