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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】燃焼装置およびボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/12 20060101AFI20230816BHJP
   F23J 7/00 20060101ALI20230816BHJP
   F23D 17/00 20060101ALI20230816BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
F23C1/12
F23C99/00 317
F23D17/00 103
F23N5/00 X
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022563235
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2022024360
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2021169141
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】花岡 亮
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110873326(CN,A)
【文献】特開2018-173177(JP,A)
【文献】特開2019-086189(JP,A)
【文献】特開2001-065810(JP,A)
【文献】実開昭58-027612(JP,U)
【文献】特開2001-227711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 1/00-1/12,99/00
F23J 7/00
F23D 1/00-1/06,14/00-14/84,17/00
F23N 1/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉の内部空間に噴射口が臨むアンモニア噴射ノズルと、
前記火炉の前記内部空間に噴射口が臨み、前記アンモニア噴射ノズルを囲むように配置される空気噴射ノズルと、
前記火炉の前記内部空間に噴射口が臨み、前記空気噴射ノズルを囲むように配置される微粉炭噴射ノズルと、
前記アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速を調整する調整機構と、
前記アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速が前記微粉炭噴射ノズルからの微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、前記調整機構の動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速が、前記アンモニア噴射ノズルおよび前記微粉炭噴射ノズルを有するバーナにより形成される火炎において、アンモニアの分解領域と、前記分解領域に対して前記火炎の先端側に位置するNOxの還元領域とが形成される速度になるように、前記調整機構の動作を制御する、
燃焼装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速が前記微粉炭噴射ノズルからの微粉炭の噴射流速の変化に応じて変化して前記微粉炭噴射ノズルからの微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、前記調整機構の動作を制御する、
請求項に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記調整機構は、前記アンモニア噴射ノズルの噴射口の開口面積を調整する機構を含む、
請求項1または2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記アンモニア噴射ノズルには、複数のアンモニア流路が設けられており、
前記調整機構は、前記複数のアンモニア流路のうち、アンモニアが流通する前記アンモニア流路の数を調整する機構を含む、
請求項1または2に記載の燃焼装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の燃焼装置を備えるボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼装置およびボイラに関する。本出願は2021年10月14日に提出された日本特許出願第2021-169141号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の火炉に設けられるバーナにおいて、アンモニアを燃料として噴射するアンモニア噴射ノズルを有するバーナがある。アンモニアを燃料として用いることによって、二酸化炭素の排出量の削減が図られる。例えば、特許文献1には、微粉炭とアンモニアとを燃料として混焼させるバーナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-086189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微粉炭とアンモニアとを燃料として混焼させるバーナでは、バーナの前方に形成される火炎において、窒素酸化物(以下、NOxとも呼ぶ)の発生および還元が行われる。作動条件によっては、NOxの還元が十分に行われず、NOxの排出量が増加するおそれがある。そこで、NOxの排出を抑制するための新たな提案が望まれている。
【0005】
本開示の目的は、窒素酸化物(NOx)の排出を抑制することが可能な燃焼装置およびボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の燃焼装置は、火炉の内部空間に噴射口が臨むアンモニア噴射ノズルと、火炉の内部空間に噴射口が臨み、アンモニア噴射ノズルを囲むように配置される空気噴射ノズルと、火炉の内部空間に噴射口が臨み、空気噴射ノズルを囲むように配置される微粉炭噴射ノズルと、アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速を調整する調整機構と、アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速が微粉炭噴射ノズルからの微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、調整機構の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速が、アンモニア噴射ノズルおよび微粉炭噴射ノズルを有するバーナにより形成される火炎において、アンモニアの分解領域と、分解領域に対して火炎の先端側に位置するNOxの還元領域とが形成される速度になるように、調整機構の動作を制御する
御装置は、アンモニア噴射ノズルからのアンモニアの噴射流速が微粉炭噴射ノズルからの微粉炭の噴射流速の変化に応じて変化して微粉炭噴射ノズルからの微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、調整機構の動作を制御してもよい
【0007】
調整機構は、アンモニア噴射ノズルの噴射口の開口面積を調整する機構を含んでもよい。
【0008】
アンモニア噴射ノズルには、複数のアンモニア流路が設けられており、調整機構は、複数のアンモニア流路のうち、アンモニアが流通するアンモニア流路の数を調整する機構を含んでもよい。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のボイラは、上記の燃焼装置を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、窒素酸化物(NOx)の排出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係るボイラを示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る燃焼装置を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る調整機構を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態に係るアンモニア噴射ノズルの噴射口の開口面積が図3の例と比べて小さくなった状態を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施形態に係る燃焼装置により形成される火炎について説明するための図である。
図7図7は、比較例に係る燃焼装置により形成される火炎について説明するための図である。
図8図8は、変形例に係る燃焼装置を示す模式図である。
図9図9は、変形例に係るアンモニア噴射ノズルの内部の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るボイラ1を示す模式図である。図1に示すように、ボイラ1は、火炉2と、煙道3と、バーナ4とを備える。
【0014】
火炉2は、燃料を燃焼させて燃焼熱を発生させる炉である。火炉2は、鉛直方向に延在する矩形筒形状等の筒形状を有する。火炉2では、燃料が燃焼することによって、高温の燃焼ガスが発生する。火炉2の底部には、燃料の燃焼によって発生する灰分を外部に排出する排出口2aが設けられている。
【0015】
煙道3は、火炉2で発生した燃焼ガスを排ガスとして外部に案内する通路である。煙道3は、火炉2の上部と接続される。煙道3は、水平煙道3aと、後部煙道3bとを有する。水平煙道3aは、火炉2の上部から水平方向に延在する。後部煙道3bは、水平煙道3aの端部から下方に延在する。
【0016】
ボイラ1は、火炉2の上部等に設置される図示しない過熱器を備えている。過熱器では、火炉2で発生した燃焼熱と水との間での熱交換が行われる。それにより、水蒸気が生成される。また、ボイラ1は、図1で図示されていない再熱器、節炭器または空気予熱器等の各種機器を備え得る。
【0017】
バーナ4は、火炉2の下部の壁部に設けられている。火炉2には、複数のバーナ4が、火炉2の周方向に間隔を空けて設けられている。図1では図示を省略しているが、複数のバーナ4は、火炉2の延在方向である上下方向にも間隔を空けて設けられている。バーナ4は、アンモニアおよび微粉炭を燃料として火炉2内に噴射する。バーナ4から噴射された燃料が燃焼することにより、火炉2内で火炎Fが形成される。火炉2には、バーナ4から噴射された燃料を着火する図示しない着火装置が設けられている
【0018】
図2は、本実施形態に係る燃焼装置100を示す模式図である。図2に示すように、燃焼装置100は、バーナ4と、空気供給部5と、アンモニアタンク6と、調整機構7と、制御装置8とを備える。
【0019】
バーナ4は、火炉2の外部において、火炉2の壁部に取り付けられる。バーナ4は、アンモニア噴射ノズル41と、空気噴射ノズル42と、微粉炭噴射ノズル43とを有する。アンモニア噴射ノズル41は、アンモニアを噴射するノズルである。空気噴射ノズル42は、燃焼用の空気を噴射するノズルである。微粉炭噴射ノズル43は、微粉炭を噴射するノズルである。
【0020】
アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43は、円筒形状を有する。空気噴射ノズル42は、アンモニア噴射ノズル41と同軸上に、アンモニア噴射ノズル41を囲むように配置される。微粉炭噴射ノズル43は、空気噴射ノズル42と同軸上に、空気噴射ノズル42を囲むように配置される。アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43によって、三重円筒構造が形成される。アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43の中心軸は、火炉2の壁部に対して交差する。具体的には、アンモニア噴射ノズル41、空気噴射ノズル42および微粉炭噴射ノズル43の中心軸は、火炉2の壁部に対して略直交する。
【0021】
以下、バーナ4の径方向、バーナ4の軸方向、および、バーナ4の周方向を、単に径方向、軸方向および周方向とも呼ぶ。バーナ4における火炉2側(図2中の右側)を先端側と呼び、バーナ4における火炉2側に対する逆側(図2中の左側)を後端側と呼ぶ。
【0022】
アンモニア噴射ノズル41は、本体41aと、供給口41bと、噴射口41cとを含む。本体41aは、円筒形状を有する。本体41aは、バーナ4の中心軸上に延在する。本体41aの肉厚、内径および外径は、軸方向位置によらず略一定である。ただし、本体41aの肉厚、内径および外径は、軸方向位置に応じて変化してもよい。本体41aの後端部に、開口である供給口41bが設けられる。供給口41bは、アンモニアタンク6と接続されている。本体41aの先端部に、開口である噴射口41cが設けられる。噴射口41cは、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口41cは、火炉2の内部空間を向いている。
【0023】
アンモニアは、アンモニアタンク6から供給口41bを介して本体41a内に供給される。矢印A1により示すように、本体41a内に供給されたアンモニアは、本体41a内を流れる。本体41a内を通過したアンモニアは、噴射口41cから火炉2の内部空間に向けて噴射される。このように、アンモニア噴射ノズル41は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。
【0024】
アンモニアタンク6には、アンモニアが液体の状態で貯蔵されている。アンモニアタンク6に貯蔵されるアンモニアは、気化器によって気化される。気化したアンモニアがアンモニア噴射ノズル41に供給されるようになっている。
【0025】
空気噴射ノズル42は、本体42aと、噴射口42bとを含む。本体42aは、円筒形状を有する。本体42aは、アンモニア噴射ノズル41の本体41aと同軸上に、本体41aを囲むように配置される。本体42aは、先端側に進むにつれて先細りする形状を有する。本体42aの後部に、図示しない供給口が設けられる。
【0026】
空気噴射ノズル42の供給口は、図示しない空気供給源と接続されている。例えば、空気噴射ノズル42の供給口は、空気供給源としての大気に露出している。本体42aの先端部に、開口である噴射口42bが設けられる。本体42aの先端部の径方向内側には、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの先端部が位置している。噴射口42bは、本体42aの先端部と、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの先端部との間の円環形状の開口である。噴射口42bは、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口42bは、火炉2の内部空間を向いている。
【0027】
空気は、空気供給源から図示しない供給口を介して本体42a内に供給される。矢印A2により示すように、本体42a内に供給された空気は、本体42aの内周部と、アンモニア噴射ノズル41の本体41aの外周部との間の空間内を流れる。本体42a内を通過した空気は、噴射口42bから火炉2の内部空間に向けて噴射される。このように、空気噴射ノズル42は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。
【0028】
微粉炭噴射ノズル43は、本体43aと、噴射口43bとを含む。本体43aは、円筒形状を有する。本体43aは、空気噴射ノズル42の本体42aと同軸上に、本体42aを囲むように配置される。本体43aは、先端側に進むにつれて先細りする形状を有する。本体43aの後部に、図示しない供給口が設けられる。
【0029】
微粉炭噴射ノズル43の供給口は、図示しない微粉炭供給源と接続されている。本体43aの先端部に、開口である噴射口43bが設けられる。本体43aの先端の軸方向位置は、空気噴射ノズル42の本体42aの先端の軸方向位置と略一致する。噴射口43bは、本体43aの先端部と、空気噴射ノズル42の本体42aの先端部との間の円環形状の開口である。噴射口43bは、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口43bは、火炉2の内部空間を向いている。
【0030】
微粉炭は、微粉炭を搬送するための空気とともに、微粉炭供給源から図示しない供給口を介して本体43a内に供給される。矢印A3により示すように、本体43a内に供給された微粉炭は、本体43aの内周部と、空気噴射ノズル42の本体42aの外周部との間の空間内を空気とともに流れる。本体43a内を通過した微粉炭は、噴射口43bから火炉2の内部空間に向けて噴射される。このように、微粉炭噴射ノズル43は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。
【0031】
空気供給部5は、バーナ4により形成される火炎Fに対して、径方向外側から燃焼用の空気を供給する。空気供給部5は、バーナ4の先端部と火炉2との間を覆うように配置される。空気供給部5には、空気が流通する流路51が形成されている。流路51は、バーナ4と同軸の円筒形状に形成される。流路51は、図示しない空気供給源と接続されている。流路51のうち火炉2側の端部には、噴射口52が形成されている。
【0032】
矢印A4により示すように、空気供給源から空気供給部5に供給された空気は、流路51を通過し、噴射口52から火炉2の内部空間に向けて噴射される。噴射口52は、火炉2の内部空間に臨む。つまり、噴射口52は、火炉2の内部空間を向いている。このように、空気供給部5は、火炉2の内部空間に向けて設けられる。空気供給部5の噴射口52から噴射される空気は、周方向に旋回しながら、火炉2の内部空間に向けて進む。
【0033】
調整機構7は、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速を調整するための機構である。アンモニアの噴射流速は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cから噴射されるアンモニアの流速である。本実施形態では、調整機構7は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を調整することによって、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速を調整する。図3を参照して、調整機構7の詳細について説明する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る調整機構7を示す模式図である。図3に示すように、アンモニア噴射ノズル41の先端部には、可変部41dが設けられる。可変部41dが変形することによって、噴射口41cの開口面積が変化する。例えば、可変部41dは、周方向に離隔した複数の部材を含み、各部材の先端が後端よりも径方向内側に位置する傾斜姿勢となるように変形できる。このような可変部41dとしては、例えば、コンバージェンス・ダイバージェンス・ノズルと同様の構造が採用され得る。
【0035】
調整機構7は、駆動装置71を有する。駆動装置71は、アンモニア噴射ノズル41の可変部41dを変形させる。例えば、駆動装置71は、可変部41dの後端に設けられ、動力を発生させるモータ等の動力源を含む。そして、駆動装置71は、可変部41dの後端を中心として可変部41dを回動させることによって、可変部41dの姿勢を変化させることができる。調整機構7は、駆動装置71によりアンモニア噴射ノズル41の可変部41dを変形させることによって、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を調整することができる。
【0036】
図4は、本実施形態に係るアンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積が図3の例と比べて小さくなった状態を示す模式図である。図4の例では、図3の例と比べて、可変部41dの先端の径方向位置が径方向内側に移動するように、可変部41dが変形している。それにより、可変部41dの形状は、先端側に進むにつれて先細りする形状となっている。例えば、図4の可変部41dの形状は、円錐台形状となっている。ゆえに、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積が小さくなる。
【0037】
アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積が小さいほど、噴射口41cから噴射されるアンモニアの流速は速くなる。ゆえに、調整機構7は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を調整することによって、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速を調整することができる。このように、調整機構7によれば、アンモニアの噴射流速を調整することが適切に実現される。
【0038】
図2中の制御装置8は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含み、燃焼装置100全体を制御する。特に、制御装置8は、調整機構7の動作を制御する。具体的には、制御装置8は、調整機構7の駆動装置71を制御することによって、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を調整し、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速を調整することができる。
【0039】
図5は、本実施形態に係る制御装置8が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示す処理フローは、例えば、予め設定された時間間隔で繰り返し実行される。後述するように、図5の処理例は、あくまでも一例に過ぎず、制御装置8が行う処理はこの例に限定されない。
【0040】
図5に示す処理フローが開始すると、ステップS101において、制御装置8は、微粉炭噴射ノズル43からの微粉炭の噴射流速を取得する。微粉炭の噴射流速は、微粉炭噴射ノズル43の噴射口43bから噴射される微粉炭の流速である。
【0041】
微粉炭噴射ノズル43に供給される搬送用の空気の供給量は、火炉2における要求燃焼量に応じて変化する。それにより、微粉炭の噴射流速は、火炉2における要求燃焼量に応じて変化する。例えば、微粉炭の噴射流速は、火炉2における要求燃焼量が大きくなるにつれて速くなる。火炉2における要求燃焼量は、ボイラ1の要求負荷または要求発電量と相関を有する。
【0042】
制御装置8は、例えば、微粉炭噴射ノズル43に供給される搬送用の空気の供給量を制御する装置から、搬送用の空気の供給量を取得する。そして、制御装置8は、搬送用の空気の供給量に基づいて、微粉炭の噴射流速を取得できる。制御装置8が、微粉炭噴射ノズル43に供給される搬送用の空気の供給量を制御してもよい。
【0043】
ステップS101の次に、ステップS102において、制御装置8は、アンモニアの噴射流速が微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、調整機構7を制御する。例えば、制御装置8は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積が微粉炭の噴射流速に応じて変化するように、調整機構7の駆動装置71を制御する。それにより、アンモニアの噴射流速を微粉炭の噴射流速よりも速くすることができる。
【0044】
制御装置8は、アンモニアの噴射流速に影響を与えるパラメータのうち、噴射口41cの開口面積以外のパラメータを加味して、調整機構7を制御することが好ましい。例えば、アンモニア噴射ノズル41へのアンモニアの供給量は、火炉2における要求燃焼量に応じて変化し得る。ゆえに、制御装置8は、微粉炭の噴射流速に加えて、アンモニア噴射ノズル41へのアンモニアの供給量に基づいて、調整機構7を制御することが好ましい。それにより、アンモニアの噴射流速を微粉炭の噴射流速よりも速くすることが、より適切に実現される。
【0045】
上記では、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を微粉炭の噴射流速に応じて変化させる例を説明した。ただし、制御装置8は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を、微粉炭の噴射流速以外のパラメータに応じて変化させてもよい。例えば、制御装置8は、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を、火炉2における要求燃焼量、ボイラ1の要求負荷、または、ボイラ1の要求発電量に応じて変化させてもよい。
【0046】
上記のように、本実施形態に係る燃焼装置100では、制御装置8は、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速が微粉炭噴射ノズル43からの微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、調整機構7の動作を制御する。アンモニアの噴射流速と微粉炭の噴射流速との大小関係によって、バーナ4の前方に形成される火炎Fの形状、および、火炎F内で生じる現象が異なる。以下、図6および図7を参照して、火炎Fの形状、および、火炎F内で生じる現象について説明する。
【0047】
図6は、本実施形態に係る燃焼装置100により形成される火炎Fについて説明するための図である。つまり、図6に示す火炎Fは、アンモニアの噴射流速が微粉炭の噴射流速よりも速い場合の火炎である。
【0048】
図6の例では、火炎Fは、バーナ4の中心軸上に延在する細長形状を有する。火炎Fの表層近傍では、破線矢印A5により示すように、空気供給部5から噴射された空気の流れが形成される。微粉炭噴射ノズル43から噴射された微粉炭は、空気供給部5から噴射された空気の流れに引っ張られ、火炎Fの表層近傍を流れる。ゆえに、微粉炭噴射ノズル43から噴射された微粉炭は、火炎Fの表層近傍において、破線矢印A6により示すように、破線矢印A5により示す空気の流れに沿って流れる。それにより、火炎Fの表層近傍の領域R1において、微粉炭が燃焼し、NOxが発生する。領域R1は、微粉炭の燃焼領域である。
【0049】
図6の例では、アンモニアの噴射流速が微粉炭の噴射流速よりも速い。ゆえに、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアは、空気供給部5から噴射された空気の流れに引っ張られにくいので、実線矢印A7により示すように、火炎Fの中心をバーナ4の軸方向に流れる。アンモニアの流れ方向は、実際には、種々の方向を取り得るが、主たる方向はバーナ4の軸方向となる。それにより、火炎Fの中心側の酸素が少ない領域R2において、アンモニア(NH)がNH、NH、Nに分解される。領域R2は、領域R1に対して径方向内側に位置する。領域R2は、アンモニアの分解領域である。領域R2は、バーナ4の中心軸上に延在する細長形状を有する。
【0050】
そして、火炎Fの先端側の領域R3において、NOxがNH、NH、Nによって還元される。領域R3は、領域R2に対して、前側に位置する。領域R3は、NOxの還元領域である。
【0051】
図7は、比較例に係る燃焼装置により形成される火炎Fについて説明するための図である。比較例では、本実施形態と異なり、アンモニアの噴射流速が微粉炭の噴射流速よりも遅い。つまり、図7に示す火炎Fは、アンモニアの噴射流速が微粉炭の噴射流速よりも遅い場合の火炎である。
【0052】
図7の例では、火炎Fは、図6の例と比べて、径方向に拡がった形状を有する。図6の例と同様に、破線矢印A5および破線矢印A6により示すように、空気供給部5から噴射された空気、および、微粉炭噴射ノズル43から噴射された微粉炭は、火炎Fの表層近傍を流れる。火炎Fの表層近傍の領域R1において、微粉炭が燃焼し、NOxが発生する。
【0053】
図7の例では、アンモニアの噴射流速が微粉炭の噴射流速よりも遅い。ゆえに、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアは、空気供給部5から噴射された空気の流れに引っ張られやすい。よって、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアの大部分は、実線矢印A7により示すように、破線矢印A5により示す空気の流れに沿って流れる。それにより、火炎Fの中心から表層側に離れた酸素が多い領域R4において、アンモニアが燃焼し、NOxが発生する。領域R4は、アンモニアの燃焼領域である。
【0054】
アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアの一部は、酸素が少ない火炎Fの中心側において、NH、NH、Nに分解される。そして、火炎Fの先端側の領域R3において、NOxがNH、NH、Nによって還元される。
【0055】
図7に示す比較例では、図6の例と異なり、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアの大部分が燃焼し、NOxが発生する。ゆえに、微粉炭の燃焼により生じるNOxに加えて、アンモニアの燃焼によってもNOxが発生する。よって、NOxの発生量が多くなる。また、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアの大部分は、燃焼するので、分解されない。ゆえに、アンモニアの分解により生成されるNH、NH、Nの量が少なくなる。したがって、NOxの還元が十分に行われず、NOxの排出量が増加してしまう。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、制御装置8は、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速が微粉炭噴射ノズル43からの微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、調整機構7の動作を制御する。それにより、図6の例のように、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアを、火炎Fの中心側の酸素が少ない領域R2に送り、分解させることができる。ゆえに、アンモニアの燃焼によるNOxの発生が抑制され、アンモニアの分解が促進される。よって、NOxが効果的に還元され、NOxの排出が抑制される。
【0057】
アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速が微粉炭噴射ノズル43からの微粉炭の噴射流速に対して過度に速くなると、バーナ4の前方に形成される火炎Fの形状、および、火炎F内で生じる現象が図6の例から乖離するおそれがある。例えば、アンモニア噴射ノズル41から噴射されたアンモニアが、十分に分解されない状態で、アンモニアの分解領域である領域R2よりも前方まで到達することが考えられる。この場合、アンモニアの分解により生成されるNH、NH、Nの量が少なくなり、NOxの排出を抑制する効果が低下し得る。ゆえに、制御装置8は、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速が、微粉炭噴射ノズル43からの微粉炭の噴射流速よりも速く、かつ、上限速度以下になるように、調整機構7の動作を制御することが好ましい。上限速度は、例えば、微粉炭の噴射流速に対して所定の割合だけ速い速度である。
【0058】
さらに、本実施形態では、図6の例のように、燃焼装置100により形成される火炎Fが細長形状を有する。それにより、微粉炭が酸素と触れ合う時間が長くなるので、微粉炭の燃焼が促進される。ゆえに、未燃の燃料の発生および排出が抑制される。
【0059】
図8は、変形例に係る燃焼装置100Aを示す模式図である。図8に示すように、燃焼装置100Aは、上述した燃焼装置100に対して調整機構7を調整機構7Aに置き換えた例である。
【0060】
燃焼装置100Aのアンモニア噴射ノズル41Aでは、上述した燃焼装置100のアンモニア噴射ノズル41と比較して、内部構造が異なる。図9は、変形例に係るアンモニア噴射ノズル41Aの内部の様子を示す断面図である。具体的には、図9は、アンモニア噴射ノズル41Aの中心軸に直交する図8中のX-X断面における断面図である。
【0061】
図9に示すように、アンモニア噴射ノズル41Aの本体41a内には、複数の供給管41eが設けられている。図9の例では、供給管41eの数が6つである。ただし、供給管41eの数が6つ以外であってもよい。供給管41eは、円筒形状等の筒形状を有する。供給管41eは、本体41aの軸方向に延在する。図9の例では、供給管41eは、本体41aの周方向に等間隔に配置されている。ただし、本体41a内における各供給管41eの配置は、図9の例に限定されない。アンモニアタンク6から本体41a内に供給されたアンモニアは、各供給管41eの内部空間であるアンモニア流路41fを通過して、噴射口41cから噴射される。このように、アンモニア噴射ノズル41には、複数のアンモニア流路41fが設けられている。
【0062】
図8中の調整機構7Aは、複数のアンモニア流路41fのうち、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数を調整することによって、アンモニア噴射ノズル41Aからのアンモニアの噴射流速を調整する。
【0063】
具体的には、調整機構7Aは、切替弁71Aを有する。切替弁71Aは、アンモニアタンク6とアンモニア噴射ノズル41Aとを接続する流路に設けられる。切替弁71Aは、各供給管41eについて、アンモニアタンク6からアンモニアが供給される状態と、アンモニアタンク6からアンモニアが供給されない状態とを切り替える。つまり、切替弁71Aは、複数の供給管41eのうち、アンモニアの供給先となる供給管41eを切り替える。それにより、複数のアンモニア流路41fのうち、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数が調整される。
【0064】
複数のアンモニア流路41fのうち、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数が小さいほど、アンモニア噴射ノズル41における流路断面積の合計値が小さくなるので、噴射口41cから噴射されるアンモニアの流速は速くなる。例えば、複数のアンモニア流路41fのうちの一部のアンモニア流路41fのみをアンモニアが流通する場合、全てのアンモニア流路41fをアンモニアが流通する場合と比べて、噴射口41cから噴射されるアンモニアの流速は速くなる。ゆえに、調整機構7Aは、複数のアンモニア流路41fのうち、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数を調整することによって、アンモニア噴射ノズル41Aからのアンモニアの噴射流速を調整することができる。このように、調整機構7Aによれば、アンモニアの噴射流速を調整することが適切に実現される。
【0065】
燃焼装置100Aにおいても、上述した燃焼装置100と同様に、制御装置8は、アンモニアの噴射流速が微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、調整機構7Aを制御する。例えば、制御装置8は、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数が微粉炭の噴射流速に応じて変化するように、調整機構7Aの切替弁71Aを制御する。それにより、アンモニアの噴射流速を微粉炭の噴射流速よりも速くすることができる。ゆえに、上述した燃焼装置100と同様に、NOxの排出が抑制される。また、未燃の燃料の発生および排出が抑制される。
【0066】
制御装置8は、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数を、微粉炭の噴射流速以外のパラメータに応じて変化させてもよい。例えば、制御装置8は、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数を、火炉2における要求燃焼量、ボイラ1の要求負荷、または、ボイラ1の要求発電量に応じて変化させてもよい。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
上記では、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速を調整する調整機構の例として、調整機構7および調整機構7Aを説明した。ただし、アンモニア噴射ノズル41からのアンモニアの噴射流速を調整する機能を有する機構であれば、調整機構7および調整機構7A以外の機構が用いられてもよい。また、アンモニア噴射ノズル41の噴射口41cの開口面積を調整する調整機構7と、複数のアンモニア流路41fのうち、アンモニアが流通するアンモニア流路41fの数を調整する調整機構7Aとが併用されてもよい。
【0069】
上記では、燃焼装置100、100Aが、ボイラ1の火炉2に設けられる例を説明した。ただし、燃焼装置100、100Aが用いられる火炉は、燃料を燃焼させて燃焼熱を発生させる炉であればよい。燃焼装置100、100Aは、ボイラ1以外の設備の様々な火炉に用いられ得る。
【0070】
本開示は、ボイラ等に用いられる燃焼装置による燃焼の安定化、および、燃焼装置の補修頻度の低減に資するので、例えば、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」および目標13「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0071】
1:ボイラ 2:火炉 7:調整機構 7A:調整機構 8:制御装置 41:アンモニア噴射ノズル 41A:アンモニア噴射ノズル 41c:噴射口 41f:アンモニア流路 43:微粉炭噴射ノズル 43b:噴射口 100:燃焼装置 100A:燃焼装置
【要約】
燃焼装置(100)は、火炉(2)の内部空間に噴射口(41c)が臨むアンモニア噴射ノズル(41)と、火炉(2)の内部空間に噴射口(43b)が臨む微粉炭噴射ノズル(43)と、アンモニア噴射ノズル(41)からのアンモニアの噴射流速を調整する調整機構(7)と、アンモニア噴射ノズル(41)からのアンモニアの噴射流速が微粉炭噴射ノズル(43)からの微粉炭の噴射流速よりも速くなるように、調整機構(7)の動作を制御する制御装置(8)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9