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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】車両のフレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
B62D21/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022563582
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031205
(87)【国際公開番号】W WO2022107410
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2020193313
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】中 浩則
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-16278(JP,U)
【文献】特開2006-219004(JP,A)
【文献】特開2001-55163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延びる一対の中空状のフレームを車幅方向に延びるクロスメンバによって接続して構成され、
前記クロスメンバとの接続部から前記フレームの延長方向に離間した位置に、前記車両のサスペンション装置の支持部を備えた車両のフレーム構造であって、
前記クロスメンバとの接続部において前記フレームの内部を補強するバルクヘッドが、前記フレームの延長方向に互いに離間して複数個備えられ、
複数の前記バルクヘッドのうち前記支持部から遠い第1のバルクヘッドが、前記クロスメンバの部材の前記フレームとの接続位置よりも前記支持部に近づけて配置され
前記車両に設けられた荷箱を前記フレームに固定するマウントブラケットを備え、
前記マウントブラケットは、複数の前記バルクヘッドのうち前記支持部に近い第2のバルクヘッド及び前記クロスメンバの部材と、前記フレームの延長方向で同一位置に配置されていることを特徴とする車両のフレーム構造。
【請求項2】
前記フレームは車幅方向に分割した2個のフレーム部材を固定して形成されており、
前記バルクヘッドは、分割した前記フレーム部材に合わせて車幅方向に分割して形成された板状部材であって、前記クロスメンバとの接続側の前記フレーム部材に固定される第1のバルクヘッド部材と、前記クロスメンバとの接続側とは反対側の前記フレーム部材に固定される第2のバルクヘッド部材とを有し、前記第1のバルクヘッド部材の一部と前記第2のバルクヘッド部材の一部とを重ねて互いに接続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のフレーム構造。
【請求項3】
前記バルクヘッドは、板状部材の上下端部を前記サスペンション装置の支持部側に屈曲してフランジ部が形成され、当該フランジ部と前記フレームの内壁とを重ねて溶接により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のフレーム構造。
【請求項4】
前記バルクヘッドは、板状部材の上下端部を前記サスペンション装置の支持部側に屈曲してフランジ部が形成され、当該フランジ部と前記フレームの内壁とを重ねて溶接により固定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両のフレーム構造。
【請求項5】
前記第1のバルクヘッド部材に前記フランジ部を形成して前記フレーム部材に固定される一方、前記第2のバルクヘッド部材は上下端部を屈曲せずに前記フレームの内壁に付き当てて溶接し固定されていることを特徴とする請求項4に記載の車両のフレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のクロスメンバとの接続部におけるフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ピックアップトラック等の車両には、強度部材として、例えば車幅方向に互いに間隔をおいて一対のサイドフレームが備えられている。更に、この一対のサイドフレームは、略車幅方向に延びるクロスメンバによって接続されている。クロスメンバは、車両前後方向に間隔をおいて複数備えられている場合が多い。
車両のサイドフレームのように、強度と軽量化を要求されるフレームは、箱型形状になっているものが多い。更に、例えば特許文献1に記載されているように、クロスメンバの接続部においてサイドフレーム内にバルクヘッドを備えることで、当該接続箇所におけるフレームの強度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2019-89411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両前後方向に延びる一対のサイドフレームには、例えばリーフスプリングのようなサスペンション装置が懸架されている。したがって、サスペンション装置から、このサイドフレームにおける懸架場所に比較的大きな荷重が作用する。
また、ピックアップトラック等のように荷箱を備えた車両については、サイドフレームに荷箱を固定するためのマウントブラケットが複数個所備えられている。したがって、マウントブラケットからサイドフレームにも大きな荷重が作用する場合がある。
【0005】
以上のように、サイドフフレームに比較的大きな荷重が作用する支持部を備えている車両については、これらの荷重を考慮してサイドフレームの強度を確保する必要がある。
特に、クロスメンバとサイドフレームとの接続部の近傍にサスペンション装置の支持部がある場合、特許文献1のようにクロスメンバとサイドフレームとの接続部にバルクヘッドを設けることで、当該接続部におけるフレームの強度が向上するものの、サスペンション装置からの荷重によるサイドフレームの捻じれによって操安性が低下する可能性があり、また車両走行時に繰り返し荷重を受けることに対してバルクヘッドを含むフレームについて耐久性の向上が要求されていた。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、サスペンション装置の支持部近辺にクロスメンバが接続されているサイドフレームにおいて、サイドフレームの捻じれを抑え、操安性を向上させるとともに耐久性を向上させる車両のフレーム構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のフレーム構造は、車両の前後方向に延びる一対のフレームを車幅方向に延びる中空状のクロスメンバによって接続して構成され、前記クロスメンバとの接続部から前記フレームの延長方向に離間した位置に、前記車両のサスペンション装置の支持部を備えた車両のフレーム構造であって、前記クロスメンバとの接続部において前記フレームの内部を補強するバルクヘッドが、前記フレームの延長方向に互いに離間して複数個備えられ、複数の前記バルクヘッドのうち前記支持部から遠い第1のバルクヘッドが、前記クロスメンバの部材の前記フレームとの接続位置より前記支持部に近づけて配置されたことを特徴とする。
【0008】
これにより、クロスメンバとの接続部においてフレームの内部を補強するバルクヘッドが、フレームの延長方向に互いに離間して設けられることで、クロスメンバとの接続部におけるフレームの強度及び剛性を向上させることができる。そして、複数個のバルクヘッドのうち支持部から遠い第1のバルクヘッドがサスペンション装置の支持部に近づけて配置されることで、サスペンション装置の支持部から受ける荷重によるフレームの捻じれを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、前記車両に設けられた荷箱を前記フレームに固定するマウントブラケットを備え、前記マウントブラケットは、複数の前記バルクヘッドのうち前記支持部に近い第2のバルクヘッド及び前記クロスメンバの部材と、前記フレームの延長方向で同一位置に配置されているとよい。
これにより、第2のバルクヘッドによってマウントブラケットの設置位置でのフレームの強度及び剛性を向上させるとともに、マウントブラケットを介して荷箱から受ける荷重を第2のバルクヘッドを介してクロスメンバに分散させることができる。
【0010】
好ましくは、前記フレームは車幅方向に分割した2個のフレーム部材を固定して形成されており、前記バルクヘッドは、分割した前記フレーム部材に合わせて車幅方向に分割して形成された板状部材であって、前記クロスメンバとの接続側の前記フレーム部材に固定される第1のバルクヘッド部材と、前記クロスメンバとの接続側と反対側の前記フレーム部材に固定される第2のバルクヘッド部材とを有し、前記第1のバルクヘッド部材の一部と前記第2のバルクヘッド部材の一部とを重ねて互いに接続して形成されているとよい。
【0011】
これにより、バルクヘッドをフレーム内に容易に設置させることができる。
好ましくは、前記バルクヘッドは、板状部材の上下端部を前記サスペンション装置の支持部側に屈曲してフランジ部が形成され、当該フランジ部と前記フレームの内壁とを重ねて溶接により固定されているとよい。
これにより、バルクヘッドとフレームとを強固に固定することができる。また、フランジ部をサスペンション装置の支持部側に屈曲させることで、バルクヘッドの溶接による接続部(溶接部)をより支持部側に近づけて、バルクヘッドの溶接部における耐久性を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、前記第1のバルクヘッド部材に前記フランジ部を形成して前記フレーム部材に固定される一方、前記第2のバルクヘッド部材は上下端部を屈曲せずに前記フレームの内壁に付き当てて溶接し固定されているとよい。
これにより、第1のバルクヘッド部材と第2のバルクヘッド部材のうち、サスペンション装置の支持部からの荷重により応力が高くなる第1のバルクヘッド部材について、その溶接部における耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両のフレーム構造によれば、サスペンション装置の支持部から遠い第1のバルクヘッドの設置位置を支持部に近づけることで、サスペンション装置の支持部から受ける荷重によるフレームの捻じれを抑制することができる。
これにより、車両の操安性を向上させるとともに、車両走行時に繰り返し荷重を受けることによる第1のバルクヘッド及びその接続部におけるフレームの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の車両の右後部の概略構造を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る車両のフレームの概略構造を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係るサスペンション装置の支持部付近のサイドフレームの斜視図である。
図4】第1の実施形態に係るサイドフレームとクロスメンバとの接続部付近の構造を示す上面図である。
図5】第2の実施形態に係るサイドフレームとクロスメンバとの接続部付近の構造を示す上面図である。
図6】第2の実施形態に係るバルクヘッドの形状を示す縦断面図である。
図7】第2の実施形態に係るバルクヘッドの形状を示す車両後方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の車両1の右後部の概略構造を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る車両1のフレーム2の概略構造を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係るサスペンション装置8の支持部付近をサイドフレーム6の車幅方向外側の前方から視た斜視図である。
【0016】
本発明のフレーム構造を採用する車両1は、例えばピックアップトラックのように、車両後部に荷箱4を備えた車両である。
【0017】
図1、2に示すように、車両1には、車幅方向に間隔をおいて車両前後方向に延びる一対のサイドフレーム5、6を備えている。また、車両1の後輪7の車軸は、リーフスプリング11によるサスペンション装置8によって懸架されている。
【0018】
荷箱4は、フレーム2上に載置され、サイドフレーム5、6に固定されたマウントブラケット3に図示しないボルト及びナットによって固定されている。
【0019】
マウントブラケット3は、サイドフレーム5、6の車幅方向外側に、車両前後方向に互いに間隔をおいて複数備えられている。複数のマウントブラケット3のうち、車両最後方に配置されたマウントブラケット3は、車幅方向に延びて一対のサイドフレーム5、6を接続する最後方のクロスメンバ10の車両前後位置付近に設けられている。
【0020】
クロスメンバ10は、後輪7の車軸を懸架するリーフスプリング11の後端部を支持するシャックル12よりも車両前方の近傍に配置されている。シャックル12は、サイドフレーム5、6の側壁に設けられた挿入穴13に挿入されて、車幅方向に延びる軸線を中心に回動可能にサイドフレーム5、6に支持される。また、シャックル12は、リーフスプリング11の後端部を車幅方向に延びる軸線を中心に回動可能に支持する。
【0021】
図1~3に示すように、サイドフレーム5、6は、板金部材をコの字型に屈曲して形成された2個のフレーム部材19、20の両端部を突き合わせて溶接して形成されている。サイドフレーム5、6は、上下断面が箱型断面である中空状になっており、上壁21、下壁22、内側壁23、外側壁24を有している。上壁21及び下壁22に、フレーム部材19、20の突合せ部である溶接線25を有している。
【0022】
クロスメンバ10は、上下断面が箱型断面である中空状になっており、上壁26、下壁27、前壁28、後壁29を有している。クロスメンバ10の車幅方向端部は、サイドフレーム5,6の車幅方向内側の内側壁23に突き当てられて溶接によって固定されている。
【0023】
複数のマウントブラケット3のうち、車両最後方に配置されたマウントブラケット3は、上下断面がコの字型に形成され、上壁30と2個の支持側壁31、32とを有している。マウントブラケット3は、上壁30及び支持側壁31、32がサイドフレーム5、6の外側壁24から車幅方向に垂直に延びるように配置される。マウントブラケット3の上壁30は、サイドフレーム5、6の上壁21と略同一の上下高さで、車両1の水平方向に延びるように配置される。マウントブラケット3の2個の支持側壁31、32は、車両前後方向に互いに間隔を置いて並ぶように配置される。したがって、マウントブラケット3の断面コの字型の開口部が下方に向くように配置されている。
【0024】
マウントブラケット3の支持側壁31、32のサイドフレーム5、6側の端部が車両前後方向外方に垂直に屈曲して外側フランジ部35が夫々設けられている。外側フランジ部35とサイドフレームの外側壁24とは、互いの対向面同士が当接し、外側フランジ部35の外周部が溶接によって外側壁24に固定されている。
【0025】
マウントブラケット3の上壁30には、ボルト穴37が設けられている。そして、当該ボルト穴37に、荷箱4の下部の強度部材に設けられたボルト穴、あるいは荷箱4の下部に固定されたマウントブラケットに設けられたボルト穴とともに、ボルトが挿入されて共締めされることで、マウントブラケット3を介して荷箱4とサイドフレーム5、6とが着脱可能に固定される。
【0026】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るサイドフレーム6とクロスメンバ10との接続部付近の構造を示す上面図である。
【0027】
図4に示すように、車両最後方のクロスメンバ10の後壁29と、車両最後方のマウントブラケット3の車両後方側の支持側壁31とは、車両前後位置が略一致している。また、クロスメンバ10の後壁29及びマウントブラケット3の支持側壁31の車両後方近傍に、サスペンション装置8の支持部であるシャックル12が配置されている。
【0028】
また、サイドフレーム6の車幅方向内側のフレーム部材19は、クロスメンバ10の前壁28と後壁29との間の車両前後位置(分割部38)で、前フレーム部材19aと後フレーム部材19bとに前後に分割されている。フレーム部材19は、前フレーム部材19aと後フレーム部材19bとを分割部38において溶接によって接続して構成されている。
【0029】
サイドフレーム6内には、サイドフレーム6とクロスメンバ10との接続部付近に、サイドフレーム6を補強する複数個(本実施形態では2個)のバルクヘッド50、51が設けられている。バルクヘッド50、51は、サイドフレーム6の延長方向である車両前後方向に互いに離間して配置される。
【0030】
バルクヘッド50、51は、矩形状の厚板部材であって、全周がサイドフレーム6の内壁に溶接されて固定されている。即ち、バルクヘッド50、51は、サイドフレーム6の内壁を支持して、サイドフレーム6の強度及び剛性を向上させる効果を有する。
【0031】
車両後側のバルクヘッド50(第2のバルクヘッド)は、クロスメンバ10の後壁29及びマウントブラケット3の車両後方側の支持側壁31と略同一の車両前後位置に配置されている。
【0032】
一方、車両前側のバルクヘッド51(第1のバルクヘッド)は、クロスメンバ10の前壁28より後方に、即ちクロスメンバ10の前壁28とサイドフレーム6との接続位置よりシャックル12に近づけて配置されている。
【0033】
なお、上記実施形態では、車両の右側のサイドフレーム6の構造について説明したが、車両の左側のサイドフレーム5についても左右対称で同様な構造にすればよい。
【0034】
以上のように、本実施形態では、クロスメンバ10の接続部付近のサイドフレーム6内に、車両前後方向に間隔をおいて2個のバルクヘッド50、51を備えているので、クロスメンバ10の接続部付近のサイドフレーム6の強度及び剛性を向上させることができる。したがって、サイドフレーム6の当該接続部に応力が発生しても、サイドフレーム6の断面の変形を抑えることができる。これにより、サイドフレーム6の捻じれ剛性を向上させ、車両の操安性を向上させることができる。
【0035】
サイドフレーム6とクロスメンバ10との接続部付近に設けられた2個のバルクヘッド50、51のうち、車両後方側のバルクヘッド50は、クロスメンバ10の後壁29と車両前後方向が略同一位置に配置されるので、クロスメンバ10の後壁29とサイドフレーム6との接続部付近のサイドフレーム6の強度及び剛性を向上させることができる。
【0036】
車両後方側のバルクヘッド50は、マウントブラケット3の車両後方側の支持側壁31と略同一の車両前後位置に配置されているので、荷箱4からマウントブラケット3を介してサイドフレーム6の外側壁24に作用する荷重によるサイドフレーム6の変形を抑制することができる。また、車両後方側のバルクヘッド50と、マウントブラケット3の車両後方側の支持側壁31と、クロスメンバ10の後壁29とが、バルクヘッド50によって一直線に繋ぐように配置されているので、荷箱4からマウントブラケット3を介してサイドフレームに作用する荷重がクロスメンバ10に分散され、サイドフレーム6の変形を更に抑制することができる。更には、サスペンション装置8のリーフスプリング11からシャックル12を介して入力する荷重についても、車両後方側のバルクヘッド50を設けることで、サイドフレーム6とクロスメンバ10に分散させることができる。
【0037】
一方、車両前側のバルクヘッド51は、クロスメンバ10の前壁28より後方に配置されている。ここで、車両前側のバルクヘッド51をクロスメンバ10の前壁28と車両前後方向同一位置に配置すると、クロスメンバ10の前壁28とサイドフレーム6との接続部付近のサイドフレーム6の変形を効果的に抑えることが可能である。しかしながら、クロスメンバ10の前壁28は、後壁29よりもサスペンション装置8の支持部であるシャックル12から遠く位置しているので、車両走行時にシャックル12から繰り返し入力する荷重によるサイドフレーム6の捻じれにより、バルクヘッド51、その溶接部、更には、バルクヘッド51付近のサイドフレーム6の耐久性が低下する可能性がある。
【0038】
これに対し、本実施形態では、クロスメンバ10の接続部近傍に設けられた2個のバルクヘッド50、51のうち、シャックル12に遠い前側のバルクヘッド51については、クロスメンバ10の前壁28より後方に位置させてシャックル12に近づけるように配置することで、シャックル12から入力する荷重によるバルクヘッド51及びその付近のサイドフレーム6の変形を抑え、バルクヘッド51を含むサイドフレーム6の耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、クロスメンバ10の接続位置付近のサイドフレーム6の車幅方向内側のフレーム部材19に分割部38を有しているが、前側のバルクヘッド51を後方に位置させて分割部38に近づけることで、シャックル12から入力する荷重による分割部38付近のサイドフレーム6の変形を抑制して、分割部38及びその付近のサイドフレーム6の耐久性を向上させることができる。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るサイドフレーム6とクロスメンバ10との接続部付近の構造を示す上面図である。図6は、第2の実施形態に係るバルクヘッド51の形状を示す縦断面図である。図7は、第2の実施形態に係るバルクヘッド51の形状を示す車両後方から視た図である。なお、図6は、図5中に記載されたA-A部の縦断面図である。図7は、図5中に記載されたB-B部の縦断面図である。
【0041】
図5~7に示すように、本発明の第2の実施形態に係るサイドフレーム6では、バルクヘッド50、51の形状が第1の実施形態と異なる。
【0042】
車両前側のバルクヘッド51は、分割したフレーム部材19,20に合わせて車幅方向に分割して形成された板状部材である。すなわち、バルクヘッド51は、車幅方向内側のフレーム部材19に固定される内側バルクヘッド部材51a(第1のバルクヘッド部材)と、車幅方向外側のフレーム部材20に固定される外側バルクヘッド部材51b(第2のバルクヘッド部材)と、により構成された二分割構造になっている。内側バルクヘッド部材51aは、2個のフレーム部材19、20のうちクロスメンバ10の接続側に配置されたフレーム部材19の内部に配置され、フレーム部材19の内壁面に三方が当接して溶接により固定されている。外側バルクヘッド部材51bは、2個のフレーム部材19、20のうちクロスメンバ10の接続側とは反対側に配置されたフレーム部材20の内部に配置され、フレーム部材20の内壁面に三方が当接して溶接により固定されている。内側バルクヘッド部材51aと外側バルクヘッド部材51bとは一部が重ね合って重ね部53を構成し、当該重ね部53において溶接により互いに接続されている。
【0043】
車両後側のバルクヘッド50も、車両前側のバルクヘッド51と同様に、分割したフレーム部材19,20に合わせて車幅方向に分割して形成された板状部材である。すなわち、バルクヘッド50は、内側バルクヘッド部材50aと外側バルクヘッド部材50bとを接続して構成されている。
【0044】
更に、車両前側のバルクヘッド51の内側バルクヘッド部材51aには、板状部材の上端部及び下端部がシャックル12に向けて車両後方側に屈曲して形成されたフランジ部54、54が夫々設けられている。このフランジ部54、54とサイドフレーム6の上壁21及び下壁22は、互いに重ね合わせて溶接されることによって固定されている。
【0045】
なお、車両前側のバルクヘッド51の外側バルクヘッド部材51bは、上端部及び下端部が屈曲せずにフランジ部54が設けられておらず、上端部及び下端部がサイドフレーム6の上壁21及び下壁22の内壁面に突き合わせ溶接により固定されている。
【0046】
以上のように、第2実施形態では、バルクヘッド50、51が、車幅方向に分割した構造のサイドフレーム6と同様に、車幅方向に分割した構造になっている。したがって、フレーム部材19、20を突き合わせ溶接してサイドフレーム6を作成する前に、フレーム部材19、20に内側バルクヘッド部材50a、51a及び外側バルクヘッド部材50b、51bを溶接により夫々あらかじめ固定することができる。そして、フレーム部材19、20を突き合わせ溶接する際に、例えばフレーム部材19、20に設けられた穴から内側バルクヘッド部材50a、51aと外側バルクヘッド部材50b、51bとの重ね部53を溶接することで、バルクヘッド50、51を容易に設置することができる。
【0047】
また、サイドフレーム6のフレーム部材19、20のうち、クロスメンバ10が接続される車幅方向内側のフレーム部材19は、クロスメンバ10によりサイドフレーム6のねじれを抑制することから、車幅方向外側のフレーム部材20よりも応力が高く発生し、耐久性が強く要求される。また、上記のように車両前側のバルクヘッド51についても、シャックル12からの荷重に対して耐久性が強く要求される。そこで、車両前側のバルクヘッド51の内側バルクヘッド部材51aにフランジ部54が設けられていることで、サイドフレーム6の上壁21及び下壁22を強固に支持及び固定することができ、バルクヘッド51及びサイドフレーム6の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0048】
本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
例えば、第2実施形態においては、車両前側のバルクヘッド51における内側バルクヘッド部材51aのみにフランジ部54が設けられているが、その他のバルクヘッド部材51b、50a、50bにフランジ部54が設けてもよい。また、第1実施形態のバルクヘッド50、51にフランジ部54を設けてもよい。
【0049】
また、例えば車両前側のバルクヘッド51及び車両後側のバルクヘッド50のうち、いずれか一方を、第2実施形態のような分割構造にしてもよい。
【0050】
また、サイドフレーム5、6、クロスメンバ10、バルクヘッド50、51、マウントブラケット3等の詳細な構造については、適宜変更してもよい。
【0051】
本出願は、2020年11月20日出願の日本特許出願2020-193313に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
3 マウントブラケット
4 荷箱
5、6 サイドフレーム(フレーム)
8 サスペンション装置
10 クロスメンバ
12 シャックル(支持部)
19、20 フレーム部材
50 バルクヘッド(第2のバルクヘッド)
51 バルクヘッド(第1のバルクヘッド)
51a 内側バルクヘッド部材(第1のバルクヘッド部材)
51b 外側バルクヘッド部材(第2のバルクヘッド部材)
54 フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7