(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】光変調器キャリア組立体及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0239 20210101AFI20230816BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H01S5/0239
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2020030197
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2019077601
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】平山 雅裕
【審査官】淺見 一喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008887(JP,A)
【文献】特開2004-207609(JP,A)
【文献】特開2001-209017(JP,A)
【文献】特開2015-125153(JP,A)
【文献】特開2013-250441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0143463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号配線パターン及びグランドパターンを有する第1面、及び前記第1面とは反対側に設けられた第2面を有する伝送部材と、
一方の電極パッドが前記信号配線パターンと導電接合され、他方の電極パッドが前記グランドパターンと導電接合され、前記第1面と対向して配置された光変調器と、
前記第1面と前記第2面との間を貫通して設けられ、前記第1面側の一端が前記信号配線パターンと電気的に接続された第1ビアと、
前記第1面と前記第2面との間を貫通して設けられ、前記第1面側の一端が終端抵抗を介して前記グランドパターンと電気的に接続された第2ビアと、
インダクタ成分を有し、前記第1ビアの前記第2面側の他端と前記第2ビアの前記第2面側の他端とを相互に電気的に接続する導体と、
を備える、光変調器キャリア組立体。
【請求項2】
前記導体はワイヤあるいは配線パターンである、請求項1に記載の光変調器キャリア組立体。
【請求項3】
前記信号配線パターンと前記グランドパターンとの間に設けられた第1キャパシタを更に備える、請求項1または請求項2に記載の光変調器キャリア組立体。
【請求項4】
前記第1キャパシタは、前記信号配線パターン及び前記グランドパターンの一方から突き出し、前記信号配線パターン及び前記グランドパターンの他方の縁に沿って延びる配線パターンを含む、請求項3に記載の光変調器キャリア組立体。
【請求項5】
前記第2面上に設けられ、前記第1ビアの前記第2面側の他端と前記第2ビアの前記第2面側の他端との間に直列に接続された第2キャパシタを更に備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光変調器キャリア組立体。
【請求項6】
前記光変調器は半導体レーザチップに集積されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光変調器キャリア組立体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記光変調器キャリア組立体と、
前記光変調器キャリア組立体を収納する筐体と、
を備える、光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器キャリア組立体及び光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高周波信号を入力して光信号を出力するレーザダイオードを備える光モジュールが開示されている。この光モジュールでは、第1の伝送線路と第2の伝送線路とが、互いに平行で異なる一対の平面上をそれぞれ延在している。レーザダイオードは、第1の伝送線路と第2の伝送線路とが延在する一対の平面の間に配置されている。レーザダイオードの一方の電極は、該一方の電極と第1の伝送線路との間に介在する金属ブロックによって第1の伝送線路と電気的に接続される。レーザダイオードの他方の電極は、第2の伝送線路上に載置されており、第2の伝送線路と電気的に接続される。
【0003】
特許文献2には、半導体レーザと半導体電界吸収型(EA)光変調器とが半導体基板上に形成された半導体集積光源を実装基板に実装したレーザモジュールが開示されている。このレーザモジュールは、その表面が実装基板の表面に接面するようにジャンクションダウン実装されている。このとき、レーザモジュールの表面に形成されたEA光変調器駆動電極及びスタッド電極は、実装基板の表面に形成された電極(高周波信号入力が加えられる電極)及び接地用電極にそれぞれ接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-198035号公報
【文献】特開2002-280662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高速光通信の為の光モジュールには、レーザダイオード及び光変調器を有する半導体レーザチップと、光変調器に変調信号を供給する伝送線路(例えばコプレーナ線路)を有する伝送部材とを備えるものがある。このような光モジュールでは、半導体レーザチップと伝送線路とは、例えばワイヤにより互いに接続される。しかしながら、このようにワイヤを用いて半導体レーザチップと伝送線路とを接続すると、ワイヤのインダクタンス成分の影響によってインピーダンスの不整合が発生しやすい。インピーダンスの不整合が生じると、インピーダンス不整合点での信号の反射及び/又は伝送ロスが生じてしまい、伝送特性が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、伝送線路を有する伝送部材を半導体レーザチップと対向させて配置し、伝送線路と半導体レーザチップの電極パッドとを金属バンプを介して互いに接続する方式が考えられる。このような方式によれば、インダクタンス成分を低減し、インピーダンスの不整合を抑制することができる。しかしながら、このような工夫のみでは、近年の光通信の高速化・大容量化に対応する高周波特性を得ることは難しい。本発明は、高周波特性を向上することができる光変調器キャリア組立体及び光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る光変調器キャリア組立体は、信号配線パターン及びグランドパターンを有する第1面、及び第1面とは反対側に設けられた第2面を有する伝送部材と、一方の電極パッドが信号配線パターンと導電接合され、他方の電極パッドがグランドパターンと導電接合され、第1面と対向して配置された光変調器と、第1面と第2面との間を貫通して設けられ、第1面側の一端が信号配線パターンと電気的に接続された第1ビアと、第1面と第2面との間を貫通して設けられ、第1面側の一端が終端抵抗を介してグランドパターンと電気的に接続された第2ビアと、インダクタ成分を有し、第1ビアの第2面側の他端と第2ビアの第2面側の他端とを相互に電気的に接続する導体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様による光変調器キャリア組立体及び光モジュールによれば、高周波特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の光モジュール1の内部構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、発光部11a~11dを拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図4は、発光部11を拡大して示す平面図である。
【
図7】
図7は伝送部材33の裏面33bを示している。
【
図8】
図8は伝送部材33の主面33aを示している。
【
図9】
図9は、伝送部材33のうちEMLチップ31側の部分を拡大して示す図であって、伝送部材33の裏面33bを示す。
【
図10】
図10は、伝送部材33のうちEMLチップ31側の部分を拡大して示す図であって、
図9に示されたX-X断面を示す。
【
図11】
図11は、伝送部材33のうちEMLチップ31側の部分を拡大して示す図であって、伝送部材33の主面33aを示す。
【
図13】
図13は、比較例としての伝送部材100の構成を示す図であって、
図6に対応する断面図である。
【
図14】
図14は、比較例としての伝送部材100の構成を示す図であって、伝送部材100の主面100aを示す平面図である。
【
図15】
図15は、伝送部材100が設けられた場合の発光部の等価回路を示す図である。
【
図16】
図16は、発光部の入出力特性(S21特性)のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図17】
図17は、第1変形例に係る発光部が有する光変調器110を示す平面図である。
【
図18】
図18は、第1変形例の発光部11Aの構成を示す断面図であって、光変調器110の光導波方向と交差する方向における光変調器110、伝送部材32,33、及びサブキャリア30の断面を示している。
【
図19】
図19は、第2変形例を示す図であって、伝送部材のうちEMLチップ31側の部分(裏面33b)を拡大して示す図である。
【
図20】
図20は、第2変形例を示す図であって、
図19に示されたXX-XX線に沿った断面図である。
【
図21】
図21は、第2変形例を示す図であって、コンデンサ42が表面実装タイプである場合を示す。
【
図23】
図23は、第3変形例を示す図であって、EMLチップ31の短手方向におけるEMLチップ31、伝送部材39、及びサブキャリア30の断面を示している。
【
図24】
図24は、第3変形例を示す図であって、伝送部材39の主面39aを示している。
【
図25】
図25は、第3変形例を示す図であって、伝送部材39の裏面39bを示している。
【
図26】
図26は、EMLチップ31に代えて、第1変形例に示された光変調器110が主面39a上に実装された態様を示す図である。
【
図27】
図27は、第4変形例を示す断面図であって、伝送部材のうちEMLチップ31側の部分を拡大して示す。
【
図29】
図29は、EMLチップ31に代えて、第1変形例に示された光変調器110が主面39a上に実装された態様を示す図である。
【
図30】
図30は、コンデンサ42が表面実装タイプである場合の断面図である。
【
図31】
図31は、伝送部材39のうちコンデンサ42側の部分を拡大して示す図であって、伝送部材39の裏面39bを示す。
【
図32】
図32は、EMLチップ31に代えて、第1変形例に示された光変調器110が主面39a上に実装された態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光変調器キャリア組立体は、信号配線パターン及びグランドパターンを有する第1面、及び第1面とは反対側に設けられた第2面を有する伝送部材と、一方の電極パッドが信号配線パターンと導電接合され、他方の電極パッドがグランドパターンと導電接合され、第1面と対向して配置された光変調器と、第1面と第2面との間を貫通して設けられ、第1面側の一端が信号配線パターンと電気的に接続された第1ビアと、第1面と第2面との間を貫通して設けられ、第1面側の一端が終端抵抗を介してグランドパターンと電気的に接続された第2ビアと、インダクタ成分を有し、第1ビアの第2面側の他端と第2ビアの第2面側の他端とを相互に電気的に接続する導体と、を備える。
【0011】
この光変調器キャリア組立体では、伝送部材の信号配線パターンを伝搬した高周波信号が、半導体レーザチップの一方の電極パッドに供給される。これにより、半導体レーザチップの光変調器が作動し、半導体レーザチップのレーザダイオードから出力されたレーザ光を変調する。そして、変調後の光信号が半導体レーザチップから光変調器キャリア組立体の外部へ出力される。
【0012】
この光変調器キャリア組立体では、半導体レーザチップの各電極パッドが伝送部材の信号配線パターン及びグランドパターンと導電接合されるので、ワイヤを介して接続される場合と比較して、インダクタンス成分を低減し、インピーダンスの不整合を抑制することができる。故に、高周波信号の反射及び/又は伝送ロスの発生を抑え、伝送特性の低下を抑制できる。
【0013】
加えて、この光変調器キャリア組立体は、伝送部材の第1面と第2面との間を貫通する第1ビア及び第2ビアを備える。そして、第1ビアの一端は信号配線パターンと電気的に接続され、第2ビアの一端は終端抵抗を介してグランドパターンと電気的に接続され、第1ビア及び第2ビアの他端同士は、インダクタ成分を有する導体を介して互いに電気的に接続される。すなわち、信号配線パターンと終端抵抗との間のインダクタンスが、導体により増大する。これにより、光変調器キャリア組立体の高周波特性(例えばS21特性)を更に向上することができる。また、インダクタ成分を有する導体が半導体レーザチップとは反対側の第2面に配置されることにより、半導体レーザチップの配置を阻害することなく導体を配置できると共に、第1ビア及び第2ビアが有するインダクタ成分もまた、高周波特性の向上に寄与できる。
【0014】
上記の光変調器キャリア組立体において、導体はワイヤであってもよい。導体はワイヤ以外にも金属からなる配線パターンを用いることもできる。これにより、導体のインダクタンスを高め、高周波特性をより効果的に向上することができる。
【0015】
上記の光変調器キャリア組立体は、信号配線パターンとグランドパターンとの間に設けられた第1キャパシタを更に備えてもよい。これにより、高周波特性を更に向上することができる。この場合、第1キャパシタは、信号配線パターン及びグランドパターンの一方から突き出し、信号配線パターン及びグランドパターンの他方の縁に沿って延びる配線パターンを含んでもよい。これにより、簡易な構成によって第1キャパシタを実現することができる。
【0016】
上記の光変調器キャリア組立体は、第2面上に設けられ、第1ビアの第2面側の他端と第2ビアの第2面側の他端との間に直列に接続された第2キャパシタを更に備えてもよい。これにより、導体及び終端抵抗を介してグランドパターンに流れる電流を抑制できるので、光変調器キャリア組立体の消費電力を低減することができる。
【0017】
上記の光変調器キャリア組立体において、光変調器は半導体レーザチップに集積されてもよい。
【0018】
一実施形態に係る光モジュールは、上記いずれかの光変調器キャリア組立体と、光変調器キャリア組立体を収納する筐体と、を備える。この光モジュールによれば、上記いずれかの光変調器キャリア組立体を備えることにより、高周波特性を向上することができる。
【0019】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光変調器キャリア組立体及び光モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、一実施形態の光モジュール1の内部構造を示す斜視図である。
図2は、
図1の一部を拡大して示す平面図である。光モジュール1は、直方体状の筐体2と、フランジを有し円柱状の光結合部3とを備える光モジュール(TOSA;Transmitter Optical SubAssembly)である。光モジュール1は、筐体2内に収納された、N個(Nは2以上の整数)の発光部11a~11d、N個の第1レンズ12a~12d、キャリア13、N個の受光素子(フォトダイオード、PD)14a~14d、N個の第2レンズ15a~15d、光学部品21、及び合波光学系19を備える。一例では、光モジュール1は、4チャネル(N=4)の光モジュールである。発光部11a~11d、第1レンズ12a~12d、キャリア13、第2レンズ15a~15d、光学部品21、及び合波光学系19は、筐体2の内部に設けられたベース部材7の平坦な主面上に配置されている。
【0021】
また、筐体2はフィードスルー2Aを有する。フィードスルー2Aは、筐体2の後壁を貫通している。筐体2の外側のフィードスルー2Aの部分には、外部機器との電気的な接続の為の複数の端子25が、後壁に沿う方向に並んで設けられている。筐体2の内側のフィードスルー2Aの部分には、複数の端子24、及びコプレーナ線路を構成するN本の信号線路23が設けられている。N本の信号線路23及び複数の端子24は、それぞれ対応する端子25と電気的に接続されている。
【0022】
光モジュール1では、光源として機能する発光部11a~11dが各々独立して駆動され、発光部11a~11dが個別に信号光を出力する。発光部11a~11dへの駆動信号は、光モジュール1の外部から提供される。信号光は、駆動信号に応じて変調された光である。発光部11a~11dの詳細な構成については、後述する。第1レンズ12a~12dは、それぞれ発光部11a~11dと光学的に結合されている。発光部11a~11dから出力された信号光は、それぞれ第1レンズ12a~12dに入力する。
【0023】
キャリア13は、信号光の各光軸と交差する方向を長手方向として延びる直方体状の部材であり、第1レンズ12a~12dと第2レンズ15a~15dとの間の光路上に配置されている。なお、キャリア13は、信号光の各光軸に対して傾斜する誘電体多層膜(ビームスプリッタ)を内部に有しており、この誘電体多層膜を信号光が通過する際に、信号光の各一部を分岐する。
【0024】
PD14a~14dは、キャリア13上に搭載され、分岐された信号光の各一部を受光することにより、信号光の光強度を検出する。PD14a~14dは、それらの裏面とキャリア13とが互いに対向するように、キャリア13上に実装されている。PD14a~14dは、誘電体多層膜によって分岐された信号光の一部を、裏面において受ける。第2レンズ15a~15dは、キャリア13を挟んで第1レンズ12a~12dと光学的に結合されている。第1レンズ12a~12dから出力された信号光は、キャリア13を通過し、ビームウエストを形成したのち、再び拡がりつつ光学部品21に入力する。光学部品21は、キャリア13を通過した信号光を透過し、第2レンズ15a~15d以降の反射点からの戻り光を遮断する。光学部品21を通過した信号光は、第2レンズ15a~15dにそれぞれ入力する。
【0025】
合波光学系19は、第2レンズ15a~15dと光学的に結合され、信号光を互いに合波する。
図1に示されるように、合波光学系19は、第1WDMフィルタ16、第2WDMフィルタ17、ミラー18、及び偏波合成器20を含む。ミラー18は、第2レンズ15a及び15bと光学的に結合されている。ミラー18の光反射面は、第2レンズ15a及び15bの光軸上に位置し、これらの光軸に対して傾斜している。第1WDMフィルタ16は、第2レンズ15cと光学的に結合されている。第1WDMフィルタ16の波長選択面は、第2レンズ15cの光軸上に位置し、該光軸に対して傾斜している。第1WDMフィルタ16は、第2レンズ15cからの信号光を透過させるとともに、ミラー18によって反射された信号光を反射する。これにより、第2レンズ15aからの信号光の光路、及び第2レンズ15cからの信号光の光路が互いに一致し、これらの信号光が互いに合波される。
【0026】
第2WDMフィルタ17は、第2レンズ15dと光学的に結合されている。第2WDMフィルタ17の波長選択面は、第2レンズ15dの光軸上に位置し、該光軸に対して傾斜している。第2WDMフィルタ17は、第2レンズ15dからの信号光を透過させるとともに、ミラー18によって反射された、第2レンズ15bからの信号光を反射する。これにより、第2レンズ15bからの信号光の光路と、第2レンズ15dからの信号光の光路とが互いに一致し、これらの信号光が互いに合波される。偏波合成器20は、光透過性の板状の部材である。偏波合成器20は、第1WDMフィルタ16を通過して合波された信号光と、第2WDMフィルタ17を通過して合波された信号光とを合波する。この合波された信号光は、筐体2の前壁に設けられた窓を介して筐体2外に出力される。
【0027】
光結合部3は、レンズ22及びファイバスタブを有する同軸モジュールである。なお、
図1は、光結合部3の光軸に沿った断面を示す。レンズ22は、合波光学系19と光学的に結合される。ファイバスタブは、光ファイバを保持する。レンズ22は、偏波合成器20から出力される信号光を集光して光ファイバの端面に導く。光結合部3は、この信号光の光軸に対して調芯されたのち、筐体2の前壁に溶接により固定される。なお、光結合部3は、外部からの光を遮断する光アイソレータを更に有してもよい。
【0028】
図3は、
図1の発光部11a~11d(以降、これらをまとめて「発光部11」と称する)を拡大して示す斜視図である。
図4は、
図2の発光部11を拡大して示す平面図である。発光部11は、本実施形態における光変調器キャリア組立体の一例である。これらの図に示されるように、発光部11は、サブキャリア30と、サブキャリア30上に並んで搭載されたEML(Electroabsorption Modulator Integrated Laser Diode)チップ31及び伝送部材32と、EMLチップ31上から伝送部材32上にわたって配置されている基板状の伝送部材33とを有する。EMLチップ31は、本実施形態における半導体レーザチップの例である。サブキャリア30は、絶縁体によって構成され、ベース部材7上に搭載されている。EMLチップ31は、サブキャリア30上に設けられているグランドパターン37上に実装され、EMLチップ31の裏面電極(カソード)がグランドパターン37と導電接続される。
【0029】
また、サブキャリア30上に設けられているグランドパターン37上には、デカップリングコンデンサ38が実装されている。デカップリングコンデンサ38の下面電極は、半田等の導電性接着材を介してグランドパターン37と電気的に接続されている。デカップリングコンデンサ38の上面電極は、ワイヤ70を介して、EMLチップ31の電極パッド31fと電気的に接続されている。また、デカップリングコンデンサ38の上面電極は、ワイヤ71を介して、筐体2のフィードスルー2Aに設けられた複数の端子24(
図2を参照)の何れかと電気的に接続されている。
【0030】
図5は、EMLチップ31の平面図である。EMLチップ31は、光モジュール1の前後方向を長手方向とする直方体状を呈している。一実施例では、EMLチップ31の厚さは100μmであり、長手方向の長さは550μmであり、短手方向の幅は250μmである。EMLチップ31は、レーザダイオードと光変調器とが共通基板上に集積されたモノリシック構造を有する。EMLチップ31は、レーザダイオードのアノード電極31b及び光変調器のアノード電極31cを主面31a上に有する。主面31aの一部は、絶縁膜(例えば窒化シリコン)によって覆われている。レーザダイオードのアノード電極31bは、EMLチップ31の長手方向に沿って延びており、短手方向における主面31aの中央付近に位置し、レーザダイオードのレーザ共振器上に設けられている。光変調器のアノード電極31cは、EMLチップ31の長手方向に沿って延びており、該長手方向に沿ってレーザダイオードのアノード電極31bと並んで配置されている。
【0031】
EMLチップ31は、主面31a上に設けられた金属膜である電極パッド31e及び31fを更に有する。電極パッド31eは、EMLチップ31の短手方向においてアノード電極31cと並んで配置され、アノード電極31cと電気的に接続されている。電極パッド31eの平面形状は例えば矩形状である。電極パッド31eは、高周波の変調信号を受け、該変調信号を光変調器のアノード電極31cに入力する。電極パッド31fは、アノード電極31bと電気的に接続されている。電極パッド31fは、ワイヤ71,70を介してレーザ駆動のための直流バイアス電流を受け、該直流バイアス電流をレーザダイオードのアノード電極31bに入力する。電極パッド31fは、EMLチップ31の長手方向に沿って延びる部分31g、及び、EMLチップ31の短手方向において部分31gの両側に設けられる一対の部分31hを含む。部分31gは、アノード電極31bを覆う。すなわち、部分31gは、EMLチップ31の短手方向における主面31aの中央付近に位置しており、レーザダイオードのレーザ共振器上に設けられている。
【0032】
EMLチップ31は、主面31a上に設けられた金属膜である電極パッド31iを更に有する。電極パッド31iは、光変調器のカソード電極と電気的に接続されている。電極パッド31iは、主面31a上において電極パッド31eとの間にアノード電極31cを挟む位置に設けられている。言い換えると、電極パッド31e,31iはEMLチップ31の短手方向に並んで配置されており、電極パッド31e,31iの間にアノード電極31cが配置されている。電極パッド31iの平面形状は例えば矩形状である。
【0033】
EMLチップ31は、主面31a上に設けられた金属パッド31j,31kを更に有する。金属パッド31j,31kは、光変調器のカソード電極と電気的に接続されていてもよく、接続されていなくてもよい。金属パッド31j,31kはEMLチップ31の長手方向に並んで配置されており、電極パッド31eは金属パッド31j,31kの間に位置する。言い換えると、EMLチップ31の長手方向において、金属パッド31jは電極パッド31eとEMLチップ31の前端との間に配置されており、金属パッド31kは電極パッド31eと電極パッド31fの部分31hとの間に配置されている。金属パッド31j,31kの平面形状は例えば矩形状である。
【0034】
再び
図3及び
図4を参照する。伝送部材32は、EMLチップ31の長手方向(すなわち光モジュール1の前後方向)に沿って延びる配線基板であって、誘電体基板(例えばセラミック基板)の表面に配線パターンが形成されて成る。伝送部材32は、EMLチップ31の短手方向(すなわち光モジュール1の左右方向)においてEMLチップ31と並んで配置されている。伝送部材32は、主面32aを有する。主面32aは、EMLチップ31の短手方向において主面31aと並んで配置されている。主面32aは、コプレーナ線路32bを含む。コプレーナ線路32bは、伝送線路であり、EMLチップ31のアノード電極31cに向けて変調信号を伝送する。具体的には、コプレーナ線路32bは、信号配線パターン32c及びグランドパターン32dを含んで構成される。
【0035】
信号配線パターン32cは、変調信号を導波する導電性金属膜であって、EMLチップ31に沿って延びている。信号配線パターン32cの一端は、EMLチップ31の短手方向から見て電極パッド31eと同じ位置にある。信号配線パターン32cの他端は、
図4に示されるワイヤ72を介して、
図2に示される信号線路23と電気的に接続されている。
図3に示されるように、信号配線パターン32cは、主面32aの法線方向から見て、伝送部材33に重なる部分と、伝送部材33に重ならない部分とを有する。伝送部材33に重なる部分は、信号配線パターン32cの一端を含む部分である。グランドパターン32dは、導電性金属膜であって、信号配線パターン32cを囲むように設けられ、信号配線パターン32cとの間に一定の間隔を有する。グランドパターン32dには基準電位が与えられる。
【0036】
伝送部材33は、伝送部材32の主面32a上からEMLチップ31の主面31a上にわたって、EMLチップ31の短手方向に沿って延びている。伝送部材33は、誘電体からなる基板の表面に配線パターンが形成されてなる配線基板であって、主面31a,32aと対向する平坦な主面(第1面)33aと、主面33aとは反対側の平坦な裏面(第2面)33bとを有する。伝送部材33は、主面33aに設けられた伝送線路(後述)を介して、信号配線パターン32cと電極パッド31eとを電気的に接続する。従って、信号配線パターン32cは、伝送部材33及び電極パッド31eを介して、光変調器のアノード電極31cと電気的に接続される。
【0037】
図6は、
図4のVI-VI線に沿った断面図であって、EMLチップ31の短手方向におけるEMLチップ31、伝送部材32,33、及びサブキャリア30の断面を示している。
図7は伝送部材33の裏面33bを示しており、
図8は伝送部材33の主面33aを示している。また、
図9、
図10及び
図11は、伝送部材33のうちEMLチップ31側の部分を拡大して示す図である。
図9は伝送部材33の裏面33bを示し、
図10は
図9に示されたX-X断面を示し、
図11は伝送部材33の主面33aを示す。
【0038】
図8及び
図11に示されるように、伝送部材33は、主面33aに形成された導電性金属膜である信号配線パターン33c及びグランドパターン33dを有する。信号配線パターン33cは、EMLチップ31の短手方向に延在している。グランドパターン33dは、信号配線パターン33cを囲むように設けられ、信号配線パターン33cとの間に一定の間隔を有する。但し、主面33aのうち信号配線パターン32cと対向する領域にはグランドパターン33dは設けられておらず、従ってグランドパターン33dはその一部が切り欠かれたような形状を有する。信号配線パターン33c及びグランドパターン33dは、伝送線路であるコプレーナ線路33hを構成する。
【0039】
図3及び
図8に示されるように、信号配線パターン33c上には、金属バンプ52,53が設けられている。金属バンプ52は信号配線パターン33c上におけるEMLチップ31側の一端寄りに配置されており、金属バンプ53は信号配線パターン33c上における伝送部材32側の他端寄りに配置されている。金属バンプ52は、伝送部材33の信号配線パターン33cと、EMLチップ31の電極パッド31eとの間に挟まれており、信号配線パターン33cと電極パッド31eとが金属バンプ52を介して互いに導電接合される。また、金属バンプ53は、伝送部材33の信号配線パターン33cと、伝送部材32の信号配線パターン32cとの間に挟まれており、これらの信号配線パターン32c,33cが金属バンプ53を介して互いに導電接合される。金属バンプ52,53は、例えばAuバンプである。なお、導電接合の方式は金属バンプに限られず、例えばはんだを用いてもよい。
【0040】
図3及び
図8に示されるように、グランドパターン33d上には、金属バンプ51、複数の金属バンプ54、及び一対の金属バンプ55が設けられている。金属バンプ51はグランドパターン33d上におけるEMLチップ31側の一端寄りに配置されており、複数の金属バンプ54はグランドパターン33d上における伝送部材32側の他端寄りに分散して配置されている。一対の金属バンプ55は、金属バンプ52を間に挟む位置に配置されている。金属バンプ51は、伝送部材33のグランドパターン33dと、EMLチップ31の電極パッド31iとの間に挟まれており、グランドパターン33dと電極パッド31iとが金属バンプ51を介して互いに導電接合される。また、複数の金属バンプ54は、伝送部材33のグランドパターン33dと、伝送部材32のグランドパターン32dとの間に挟まれており、これらのグランドパターン32d,33dが複数の金属バンプ54を介して互いに導電接合される。また、一対の金属バンプ55は、伝送部材33のグランドパターン33dと、EMLチップ31の金属パッド31j,31kとの間に挟まれており、グランドパターン33dと金属パッド31j,31kとが一対の金属バンプ55を介して互いに導電接合される。金属バンプ51,54,55は、例えばAuバンプである。なお、導電接合の方式は金属バンプに限られず、例えばはんだを用いてもよい。
【0041】
信号配線パターン33cは、信号配線パターン32cから受けた高周波の変調信号を、光変調器の電極パッド31eに向けて伝送する。これにより、EMLチップ31の光変調器が作動し、EMLチップ31のレーザダイオードから出力されたレーザ光を変調する。そして、変調後の光信号がEMLチップ31から出力される。
【0042】
伝送部材33は、主面33aと裏面33bとの間を貫通して設けられた導電性の第1ビア34及び第2ビア35を更に有する。第1ビア34は、信号配線パターン33cの一端寄りであって、伝送部材33の厚さ方向から見て信号配線パターン33cと重なる位置に設けられている。本実施形態では、信号配線パターン33cの延在方向において、第1ビア34は金属バンプ52に対して金属バンプ53とは反対側に位置する。言い換えると、信号配線パターン33cの延在方向において、金属バンプ52は第1ビア34と金属バンプ53との間に位置する。従って、金属バンプ53から第1ビア34までの通電距離は、金属バンプ53から金属バンプ52までの通電距離よりも長くなっている。第1ビア34の主面33a側の一端は、信号配線パターン33cと電気的に接続(例えば接触)している。第1ビア34の裏面33b側の他端は、裏面33b上に設けられた導電性金属膜である金属パッド33eと電気的に接続(例えば接触)している。
【0043】
第2ビア35は、伝送部材33の厚さ方向から見てグランドパターン33dの外側に設けられている。第2ビア35の主面33a側の一端は、主面33a上に設けられた導電性金属膜である金属パッド33fと電気的に接続(例えば接触)している。第2ビア35の裏面33b側の他端は、裏面33b上に設けられた導電性金属膜である金属パッド33gと電気的に接続(例えば接触)している。本実施形態では、第2ビア35は第1ビア34に対して信号配線パターン33cの延在方向に並んで配置されている。伝送部材33は、インピーダンスマッチング用の終端抵抗43を裏面33b上に有する。終端抵抗43は金属パッド33fとグランドパターン33dとの間に位置しており、金属パッド33fとグランドパターン33dとは終端抵抗43を介して互いに電気的に接続されている。すなわち、第2ビア35の主面33a側の一端は、終端抵抗43を介してグランドパターン33dと電気的に接続されている。
【0044】
伝送部材33は、裏面33b上に設けられた細長形状の導体41を更に有する。導体41は、インダクタ成分を有し、第1ビア34の裏面33b側の他端と、第2ビア35の裏面33b側の他端とを相互に電気的に接続する。一例では、導体41はワイヤである。或いは、導体41は分布定数線路などの配線パターンであってもよく、ワイヤ及び分布定数線路が組み合わされて構成されてもよい。具体的には、導体41の一端は金属パッド33eに接続され、導体41の他端は金属パッド33gに接続されている。導体41がワイヤである場合、その直径は例えば18μm~38μmであり、より好適には20μm~25μmである。導体41の長さは例えば0.4mm~1.0mmであり、より好適には0.4mm~0.8mmである。
【0045】
図11に示されるように、伝送部材33は、一対の容量性分布定数回路36(第1キャパシタ)を更に有する。これらの容量性分布定数回路36は、主面33a上において、信号配線パターン33cとグランドパターン33dとの間に設けられている。本実施形態では、容量性分布定数回路36は配線パターンであるスタブ36aを含む。スタブ36aは、容量性の分布定数整合回路を構成する。具体的には、スタブ36aは、信号配線パターン33c及びグランドパターン33dの一方(図では信号配線パターン33c)から突き出し、信号配線パターン33c及びグランドパターン33dの他方(図ではグランドパターン33d)の縁に沿って延びている。このスタブ36aとグランドパターン33d(若しくは信号配線パターン33c)との間には一定の隙間が設けられており、寄生容量によって容量性分布定数回路36が実現される。
【0046】
なお、寸法例としては、伝送部材33の厚さT1は例えば0.1mmであり、伝送部材33の長さL1は例えば0.6mmであり、伝送部材33の幅W1は例えば0.25mmである。また、信号配線パターン33cの幅W2は例えば40μmであり、スタブ36aの幅W3は例えば20μmであり、スタブ36aと信号配線パターン33cとの隙間の幅W4、及びスタブ36aとグランドパターン33dとの隙間の幅W5は例えば15μmである。信号配線パターン33c及びグランドパターン33dに沿った方向における容量性分布定数回路36の長さL2は例えば300μmである。信号配線パターン33cの延在方向における信号配線パターン33cとグランドパターン33dとの隙間の幅W6は例えば70μmであり、同方向と直交する方向における信号配線パターン33cとグランドパターン33dとの隙間の幅W7は例えば50μmである。
【0047】
以上に説明した、本実施形態の光モジュール1が備える発光部11(光変調器キャリア組立体)によって得られる作用効果について説明する。発光部11では、EMLチップ31の電極パッド31eが伝送部材33の信号配線パターン33cと導電接合され、電極パッド31iが伝送部材33のグランドパターン33dと導電接合されるので、ワイヤを介して接続される場合と比較して、インダクタンス成分を低減し、インピーダンスの不整合を抑制することができる。故に、高周波信号の反射及び/又は伝送ロスの発生を抑え、伝送特性の低下を抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、第1ビア34及び第2ビア35が伝送部材33に設けられている。そして、第1ビア34の一端は信号配線パターン33cと電気的に接続され、第2ビア35の一端は終端抵抗43を介してグランドパターン33dと電気的に接続され、第1ビア34及び第2ビア35の他端同士は、インダクタ成分を有する導体41を介して互いに電気的に接続されている。すなわち、信号配線パターン33cと終端抵抗43との間のインダクタンスが、導体41により増大する。
【0049】
図12は、本実施形態の発光部11の等価回路を示す図である。EMLチップ31の光変調器には、入力側の容量性分布定数回路36の2つのスタブ36aが付加され、信号配線パターン33cが金属バンプ52のインダクタンスを介して接続されている。終端抵抗43とEMLチップ31の光変調器との間には、ビア34,35のインダクタンスを介して、導体41のインダクタンスが接続されている。終端抵抗43は、金属バンプ51のインダクタンスを介して、EMLチップ31の光変調器のカソード電極に接続されている。このカソード電極は、EMLチップ31の裏面電極に繋がっている。また、EMLチップ31の裏面電極に繋がっていない場合には、サブキャリア30と電気的に絶縁されている。図には、グランドパターン33d、金属パッド33e及び33gも併せて示されている。金属バンプ51,52のインダクタンスは、一例では0.15nHである。
【0050】
図13及び
図14は、比較例としての伝送部材100の構成を示す図である。
図13は
図6に対応する断面図であり、
図14は伝送部材100の主面100aを示す平面図である。この伝送部材100は、本実施形態の伝送部材33と同様のコプレーナ線路33h(信号配線パターン33c及びグランドパターン33d)を主面100aに有している。但し、終端抵抗43は信号配線パターン33cとグランドパターン33dとの間に配置され、信号配線パターン33cの一端が終端抵抗43を介してグランドパターン33dに接続されている。また、この伝送部材100は、第1ビア34、第2ビア35、容量性分布定数回路36、及び導体41を有していない。
図15は、この伝送部材100が設けられた場合の発光部の等価回路を示す図である。
図15に示すように、EMLチップ31の光変調器には信号配線パターン33cが金属バンプ52のインダクタンスを介して接続されている。信号配線パターン33cは終端抵抗43に接続され、終端抵抗43は、金属バンプ51のインダクタンスを介して、EMLチップ31の光変調器のカソード電極に接続されている。
【0051】
図16は、発光部の入出力特性(S21特性)のシミュレーション結果を示すグラフである。
図16において、横軸は信号周波数(単位:GHz)を表し、縦軸は入出力比(単位:dB)を表す。なお、このシミュレーションにおいては、終端抵抗43を50Ωとし、容量性分布定数回路36の容量を0.05pFとし、導体41のインダクタンスを0.4nH(導体41のワイヤ長0.4mmに相当)とした。図中において、グラフG1は
図12に示された本実施形態の等価回路に基づいており、グラフG3は
図15に示された比較例の等価回路に基づいている。また、グラフG2は本実施形態の等価回路から容量性分布定数回路36を除いた場合を示す。
【0052】
図16のグラフG3に示されるように、比較例の構成(
図14)では、信号周波数が34GHzを超えると、入出力比が-3dBを下回ってしまう。これに対し、グラフG1に示されるように、本実施形態の構成(
図6ないし
図11)では、信号周波数が45GHzを超えるまで、-3dB以上の入出力比を維持することができる。このように、本実施形態によれば、発光部11の高周波特性(例えばS21特性)を向上することができ、例えば50GHzといった高周波信号を入力可能な発光部11を実現できる。なお、グラフG2に示されるように、容量性分布定数回路36を設けない場合であっても、信号周波数が39GHzを超えるまで-3dB以上の入出力比を維持することができ、比較例に対して高周波特性を向上することができる。
【0053】
また、本実施形態のように、インダクタ成分を有する導体41がEMLチップ31とは反対側の裏面33bに配置されることにより、EMLチップ31の配置を阻害することなく導体41を配置することができる。加えて、第1ビア34及び第2ビア35が有するインダクタ成分もまた、高周波特性の向上に寄与できる。
【0054】
本実施形態のように、導体41はワイヤであってもよい。導体41は、ワイヤ以外にも金属からなる配線パターンを用いることもできる。これにより、導体41のインダクタンスのQ値を高め、高周波特性をより効果的に向上することができる。
【0055】
本実施形態のように、信号配線パターン33cとグランドパターン33dとの間に容量性分布定数回路36が設けられてもよい。
図16のグラフG1とグラフG2との比較から明らかなように、これによって高周波特性を更に向上することができる。また、この場合、容量性分布定数回路36では、信号配線パターン33cから突き出したスタブ36a及びグランドパターン33dにより容量性回路が形成される。
【0056】
本実施形態の光モジュール1は、発光部11(光変調器キャリア組立体)を備える。従って、本実施形態の光モジュール1によれば、高周波特性を向上することができる。
【0057】
(第1変形例)
図17は、上記実施形態の第1変形例に係る発光部が有する光変調器110を示す平面図である。本変形例の光変調器110は、上記実施形態のEMLチップ31のうちレーザダイオードを除いた構成を有する。すなわち、光変調器110は、アノード電極31cを主面31a上に有する。主面31aの一部は、絶縁膜(例えば窒化シリコン)によって覆われている。アノード電極31cは、光変調器110の光導波方向に沿って延びている。光変調器110は、主面31a上に設けられた金属膜である電極パッド31eを更に有する。電極パッド31eは、光変調器110の光導波方向と交差する方向においてアノード電極31cと並んで配置され、アノード電極31cと電気的に接続されている。上記実施形態と同様に、電極パッド31eは、高周波の変調信号を受け、該変調信号をアノード電極31cに入力する。
【0058】
光変調器110は、主面31a上に設けられた金属膜である電極パッド31iを更に有する。電極パッド31iは、光変調器110のカソード電極と電気的に接続されている。電極パッド31iは、主面31a上において電極パッド31eとの間にアノード電極31cを挟む位置に設けられている。言い換えると、電極パッド31e,31iは光変調器110の光導波方向と交差する方向に並んで配置されており、電極パッド31e,31iの間にアノード電極31cが配置されている。光変調器110は、主面31a上に設けられた金属パッド31jを更に有する。金属パッド31jは、光変調器110のカソード電極と電気的に接続されていてもよく、接続されていなくてもよい。また、光変調器110のカソード電極は、裏面電極に繋がっていてもよく、裏面電極に繋がっていなくてもよい。金属パッド31jは、光変調器110の光導波方向において電極パッド31eと並んで配置されている。一実施例では、光変調器110の厚さは100μmであり、光導波方向における光変調器110の長さは250μmであり、光導波方向と交差する方向における光変調器110の幅は200μmである。
【0059】
図18は、本変形例の発光部11Aの構成を示す断面図であって、光変調器110の光導波方向と交差する方向における光変調器110、伝送部材32,33、及びサブキャリア30の断面を示している。なお、伝送部材32,33、及びサブキャリア30の構成は、金属パッド31k(
図5参照)に対応する金属バンプ55が設けられない点を除いて、上記実施形態と同様である。
【0060】
上記実施形態又は後述する各変形例において、本変形例のように、発光部(光変調器キャリア組立体)は、光変調器及びレーザダイオードが修正された構成を有するEMLチップ31に代えて、光変調器110を備えてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、本変形例の場合、光変調器110に連続光(Continuous Wave Light)を入力するレーザダイオードが光変調器110の後方に別途設けられる。光変調器110はレーザダイオードから出力されたレーザ光を変調し、変調後の光信号が光変調器110から出力される。
【0061】
(第2変形例)
図19、
図20及び
図21は、上記実施形態の第2変形例を示す図であって、伝送部材のうちEMLチップ31側の部分を拡大して示す図である。
図19は裏面33bを示す平面図であり、
図20は
図19に示されたXX-XX線に沿った断面図である。本変形例と上記実施形態とが相違する点は、第2キャパシタの有無である。すなわち、本変形例の発光部(光変調器キャリア組立体)は、上記実施形態の構成に加えて、伝送部材33の裏面33b上に設けられたコンデンサ42(第2キャパシタ)を更に備える。コンデンサ42は、第1ビア34の裏面33b側の他端と、第2ビア35の裏面33b側の他端との間に直列に接続されている。すなわち、コンデンサ42の一方の電極42aには導体41が接続されており、コンデンサ42の他方の電極42bは金属パッド33eに導電接合されている。なお、コンデンサ42の寸法は、例えば幅0.38mm、長さ0.38mmである。
【0062】
EMLチップ31の光変調器には、入力側の容量性分布定数回路36(
図11を参照)が付加された信号配線パターン33cが、金属バンプ52のインダクタンスを介して接続されている。
図19及び
図20に示すように、終端抵抗43とEMLチップ31の光変調器との間には、ビア34,35のインダクタンスを介して、導体41のインダクタンスとコンデンサ42とが接続されている。終端抵抗43は、金属バンプ51のインダクタンスを介して、EMLチップ31の光変調器のカソード電極に接続されている。なお、EMLチップ31の光変調器のカソード電極は、裏面電極に繋がっていてもよく、裏面電極に繋がっていなくてもよい。図には、グランドパターン33d、金属パッド33e及び33gも併せて示されている。
図21は、コンデンサ42が表面実装タイプ(SMD;Surface Mount Device)の積層セラミックコンデンサである場合を示し、コンデンサ42の左右の両端に電極42a,42bが設けられている。電極42aは金属パッド33eに導電接合され、電極42bは金属パッド33eに対して離間した金属パッド33jに導電接合されている。この場合、導体41は金属パッド33jと金属パッド33gとの間に接続される。
図22は、本変形例の等価回路を示す図である。本変形例では、
図12に示された等価回路に加えて、金属パッド33eと導体41との間にコンデンサ42が接続されている。なお、SMDである場合のコンデンサ42の寸法は、例えば幅0.2mm、長さ0.4mmである。
【0063】
本変形例のように、発光部(光変調器キャリア組立体)はコンデンサ42を更に備えてもよい。この場合、導体41のインダクタ成分及び終端抵抗43を介してグランドパターン33dに流れる電流をコンデンサ42により抑制できるので、消費電力を低減することができる。
【0064】
(第3変形例)
図23、
図24及び
図25は、上記実施形態の第3変形例を示す図であって、伝送部材のうちEMLチップ31側の部分を拡大して示す図である。
図23は、EMLチップ31の短手方向におけるEMLチップ31、伝送部材39、及びサブキャリア30の断面を示している。
図24は伝送部材39の主面39aを示しており、
図25は伝送部材39の裏面39bを示している。上記実施形態の発光部11は、伝送部材32,33に代えて、本変形例の伝送部材39を備えてもよい。
【0065】
伝送部材39は、EMLチップ31の短手方向に沿って延びる配線基板であり、主面39aと、主面39aとは反対側の裏面39bとを有する。裏面39bの一部はサブキャリア30と対向しており、主面39a上にはEMLチップ31がフリップチップ実装されている。すなわち、EMLチップ31の主面31aは主面39aと対向しており、EMLチップ31の電極パッド31e,31iは主面39a上の配線パターンと導電接合されている。なお、主面39aの法線方向から見て、EMLチップ31はサブキャリア30と重ならない主面39aの領域上に配置されている。
【0066】
具体的には、
図24に示されるように、伝送部材39の主面39aには、導電性金属膜である信号配線パターン39c及びグランドパターン39dが設けられている。信号配線パターン39cは、EMLチップ31の短手方向に延在しており、主面39a上において、EMLチップ31と対向する領域からサブキャリア30上の領域にわたって延びている。グランドパターン39dは、信号配線パターン39cを囲むように設けられ、信号配線パターン39cとの間に一定の間隔を有する。信号配線パターン39c及びグランドパターン39dは、伝送線路であるコプレーナ線路39hを構成する。
【0067】
信号配線パターン39c上には、金属バンプ52が設けられている。金属バンプ52は、信号配線パターン39c上におけるEMLチップ31側の一端寄りに配置されている。金属バンプ52は、伝送部材39の信号配線パターン39cと、EMLチップ31の電極パッド31e(
図5を参照)との間に挟まれており、信号配線パターン39cと電極パッド31eとが金属バンプ52を介して互いに導電接合される。また、グランドパターン39d上には、金属バンプ51が設けられている。金属バンプ51は、グランドパターン39d上におけるEMLチップ31側の一端寄りに配置されている。金属バンプ51は、伝送部材39のグランドパターン39dと、EMLチップ31の電極パッド31i(
図5を参照)との間に挟まれており、グランドパターン39dと電極パッド31iとが金属バンプ51を介して互いに導電接合される。なお、導電接合の方式は金属バンプに限られず、例えばはんだを用いてもよい。信号配線パターン39cの他端は、例えば
図4に示されるワイヤ72と同様にして、
図2に示される信号線路23と電気的に接続される。
【0068】
伝送部材39は、上記実施形態の伝送部材33と同様に、主面39aと裏面39bとの間を貫通して設けられた導電性の第1ビア34及び第2ビア35を更に有する。伝送部材39の厚さ方向から見て、第1ビア34及び第2ビア35は、サブキャリア30と重ならない領域に設けられている。
【0069】
第1ビア34は、信号配線パターン39cの一端寄りであって、伝送部材39の厚さ方向から見て信号配線パターン39cと重なる位置に設けられている。本変形例では、信号配線パターン39cの延在方向において、第1ビア34は金属バンプ52に対して他端側に位置する。従って、信号配線パターン39cの他端から第1ビア34までの通電距離は、信号配線パターン39cの他端から金属バンプ52までの通電距離よりも長くなっている。第1ビア34の主面39a側の一端は、信号配線パターン39cと電気的に接続(例えば接触)している。第1ビア34の裏面39b側の他端は、裏面39b上に設けられた導電性金属膜である金属パッド39eと電気的に接続(例えば接触)している。
【0070】
第2ビア35は、伝送部材39の厚さ方向から見てグランドパターン39dの外側に設けられている。第2ビア35の主面39a側の一端は、主面39a上に設けられた導電性金属膜である金属パッド39fと電気的に接続(例えば接触)している。第2ビア35の裏面39b側の他端は、裏面39b上に設けられた導電性金属膜である金属パッド39gと電気的に接続(例えば接触)している。本変形例においても、第2ビア35は第1ビア34に対して信号配線パターン39cの延在方向に並んで配置されている。伝送部材39は、インピーダンスマッチング用の終端抵抗43を裏面39b上に有する。終端抵抗43は金属パッド39fとグランドパターン39dとの間に位置しており、金属パッド39fとグランドパターン39dとは終端抵抗43を介して互いに電気的に接続されている。すなわち、第2ビア35の主面39a側の一端は、終端抵抗43を介してグランドパターン39dと電気的に接続されている。
【0071】
伝送部材39は、裏面39b上に設けられた細長形状の導体41を更に有する。導体41は、インダクタ成分を有し、第1ビア34の裏面39b側の他端と、第2ビア35の裏面39b側の他端とを相互に電気的に接続する。一例では、導体41はワイヤである。或いは、導体41は集中定数線路であってもよく、ワイヤ及び集中定数線路が組み合わされて構成されてもよい。裏面39bの法線方向から見て、導体41は、サブキャリア30と重ならない領域に配置されている。具体的には、導体41の一端は金属パッド39eに接続され、導体41の他端は金属パッド39gに接続されている。導体41がワイヤである場合、その長さは例えば0.4~0.8mmである。
【0072】
なお、本変形例においても、伝送部材39は、上記実施形態の容量性分布定数回路36に相当するキャパシタを、信号配線パターン39cとグランドパターン39dとの間に有してもよい。その場合、等価回路は上記実施形態(
図12を参照)と同様となる。
【0073】
本変形例において、信号配線パターン39cは、高周波の変調信号を光変調器の電極パッド31eに向けて伝送する。これにより、EMLチップ31の光変調器が作動し、EMLチップ31のレーザダイオードから出力されたレーザ光を変調する。そして、変調後の光信号がEMLチップ31から出力される。
【0074】
本変形例のように、伝送部材39の主面39aがサブキャリア30とは反対側に配置され、EMLチップ31が主面39a上にフリップチップ実装されてもよい。そして、導体41はサブキャリア30と同じ側に配置されてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、
図26に示されるように、EMLチップ31に代えて、第1変形例に示された光変調器110が主面39a上に実装されてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(第4変形例)
図27は、上記実施形態の第4変形例を示す図であって、伝送部材のうちEMLチップ31側の部分を拡大し、EMLチップ31の短手方向におけるEMLチップ31、伝送部材39、及びサブキャリア30の断面を示している。本変形例と上記第3変形例とが相違する点は、第2キャパシタの有無である。すなわち、本変形例の発光部(光変調器キャリア組立体)は、上記第3変形例の構成に加えて、伝送部材39の裏面39b上に設けられたコンデンサ42(第2キャパシタ)を更に備える。コンデンサ42は、第1ビア34の裏面39b側の他端と、第2ビア35の裏面39b側の他端との間に直列に接続されている。すなわち、コンデンサ42の一方の電極42aには導体41が接続されており、コンデンサ42の他方の電極42bは金属パッド39gに導電接合されている。
【0076】
EMLチップ31には、入力側の容量性分布定数回路36(
図11を参照)が付加された信号配線パターン39cが、金属バンプ52のインダクタンスを介して接続されている。終端抵抗43とEMLチップ31の光変調器との間には、ビア34,35のインダクタンスを介して、導体41のインダクタンスとコンデンサ42とが直列に接続されている。終端抵抗43は、金属バンプ51のインダクタンスを介して、EMLチップ31の光変調器のカソード電極に接続されている。なお、EMLチップ31の光変調器のカソード電極は、裏面電極に繋がっていてもよく、裏面電極に繋がっていなくてもよい。
図28は、本変形例の等価回路を示す図である。本変形例では、
図12に示された等価回路に加えて、導体41と金属パッド39gとの間にコンデンサ42が接続されている。
【0077】
本変形例によれば、第2変形例と同様に、導体41のインダクタ成分及び終端抵抗43を介してグランドパターン39dに流れる電流をコンデンサ42により抑制できるので、消費電力を低減することができる。なお、
図29に示されるように、EMLチップ31に代えて、第1変形例に示された光変調器110が主面39a上に実装されてもよい。この場合であっても、本変形例の効果を好適に奏することができる。
【0078】
また、本変形例において、コンデンサ42は表面実装タイプ(SMD)の積層セラミックコンデンサであってもよい。
図30は、コンデンサ42が表面実装タイプである場合の断面を示す。
図31は、伝送部材39のうちコンデンサ42側の部分を拡大して示す図であって、伝送部材39の裏面39bを示す。この例では、コンデンサ42の左右の両端に電極42a,42bが設けられている。電極42aは、裏面39b上に設けられた金属パッド39iに導電接合され、電極42bは金属パッド39iに対して離間した金属パッド39gに導電接合されている。この場合、導体41は、金属パッド39iと金属パッド39eとの間に接続される。このような場合であっても、本変形例の効果を好適に奏することができる。また、この例においても、
図32に示されるように、EMLチップ31に代えて、第1変形例に示された光変調器110が主面39a上に実装されてもよい。この場合であっても、本変形例の効果を好適に奏することができる。
【符号の説明】
【0079】
1…光モジュール、2…筐体、2A…フィードスルー、3…光結合部、7…ベース部材、11,11A,11a~11d…発光部(光変調器キャリア組立体)、12a~12d…第1レンズ、13…キャリア、15a~15d…第2レンズ、16…第1WDMフィルタ、17…第2WDMフィルタ、18…ミラー、19…合波光学系、20…偏波合成器、21…光学部品、22…レンズ、23…信号線路、24,25…端子、30…サブキャリア、31…EMLチップ、31a…主面、31b,31c…アノード電極、31e,31f,31i…電極パッド、31j,31k…金属パッド、32,33,39…伝送部材、32a,33a,39a…主面、32b…コプレーナ線路、32c,33c,39c…信号配線パターン、32d,33d,39d…グランドパターン、33b,39b…裏面、33e,33f,33g,33j,39e,39f,39g,39i…金属パッド、33h,39h…コプレーナ線路、34…第1ビア、35…第2ビア、36…容量性分布定数回路、36a…スタブ、37…グランドパターン、38…デカップリングコンデンサ、41…導体、42…コンデンサ、43…終端抵抗、51~54…金属バンプ、70,71,72…ワイヤ、100…伝送部材、100a…主面、110…光変調器、N1…ノード。