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特許7332091インドリン-1-カルボキサミド化合物、そのための調製方法及びその医学的使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】インドリン-1-カルボキサミド化合物、そのための調製方法及びその医学的使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20230816BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20230816BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230816BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230816BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
C07D413/14
A61K31/4709
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 123
A61K45/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020564103
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2019086241
(87)【国際公開番号】W WO2019218928
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】201810459147.5
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519063510
【氏名又は名称】北京諾誠健華医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】陳 向陽
(72)【発明者】
【氏名】厖 育成
(72)【発明者】
【氏名】高 英祥
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/032872(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03293177(EP,A1)
【文献】特表2007-518823(JP,A)
【文献】特表2006-508965(JP,A)
【文献】特表2009-539878(JP,A)
【文献】特表2012-511535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物、
【化1】
[式中、
は-ORであり;
、-C(O)NHR であり
は、任意選択で置換されているC1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、フェニル、5~6員ヘテロアリールであり;
は、H、ハロゲン、CN、C1~4アルキルから独立的に選択され;
及びRはそれぞれ、H、ハロゲン、C1~4アルキル、-ORから独立的に選択され;又はR及びRは、結合している炭素原子とともに、O、N、及びSから選択される(1個又は複数の)ヘテロ原子を任意選択で含有する3~7員環を形成し;
及びRはそれぞれ、H、又は任意選択で置換されているC1~4アルキルから独立的に選択され;
任意選択の置換とは、ハロゲン、-CN、-NO、オキソ、-SF、C1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、4~7員ヘテロ環式基、フェニル、5~6員ヘテロアリール、-OR’、-NR’R’’、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’’、-C(O)N(R’)OR’’、-OC(O)R’、-OC(O)NR’R’’、-N(R’)C(O)OR’’、-N(R’)C(O)R’’、-N(R’’’)C(O)NR’R’’、-N(R’)S(O)R’’、-S(O)R’、-S(O)NR’R’’からなる群から選択される置換基による置換を指し、ここで、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ、H、C1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン化C1~4アルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリールから独立的に選択され;同じ窒素原子上のR’及びR’’は、任意選択で、R’及びR’’が結合している窒素原子とともに、O、S、及びNから選択される追加の(1個又は複数の)ヘテロ原子を任意選択で含有する4~7員ヘテロ環式環を形成し、
mは、1又は2である]
又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項2】
、-C(O)NH、又は-C(O)NH-C1~4アルキルから独立的に選択される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項3】
が、-C(O)NH である、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項4】
が、任意選択で置換されているC1~4アルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項5】
が、CH である、請求項4に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項6】
が、H又はFである、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項7】
が、Hである、請求項6に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項8】
及びRがそれぞれ、H又はFから独立的に選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項9】
及びR が、Hである、請求項8に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項10】
【化2】
から選択される、化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物、並びに薬学的に許容できるキャリア及び賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物、及び少なくとも1種の追加の薬剤を含み、前記少なくとも1種の追加の薬剤が、化学療法剤又は免疫調節剤である、薬学的組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の追加の薬剤が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
EGFR媒介疾病を処置及び/又は予防するための医薬品の製造における、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、若しくはその薬学的に許容できる塩、安定同位体誘導体、若しくはこれらの混合物、又は請求項11~13のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項15】
前記VEGFR媒介疾病が腫瘍である、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、血管内皮細胞成長因子受容体(VEGFR)の活性を調整若しくは阻害するための新しいインドリン-1-カルボキサミド化合物、又はその薬学的に許容できる塩、この化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む薬学的組成物、この化合物又はその薬学的に許容できる塩の調製方法、並びにVEGFR媒介関連障害、とりわけ腫瘍を処置及び/又は予防するための医薬品の製造における、この化合物若しくはその薬学的に許容できる塩、又はこの化合物若しくはその薬学的に許容できる塩を含む薬学的組成物の使用、並びにこれらを用いる方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
血管新生は、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、アンジオポエチン、インターロイキン6(IL-6)等を含めた多様な因子によって、種々の信号伝達経路を通じて刺激及び調整される複雑な生理学的プロセスであり、腫瘍の成長及び転移に重要な役割を果たす。例えば、VEGFはその受容体、VEGFR1/2/3に結合して、下流の信号伝達カスケードを誘発し、内皮細胞の増殖、生存、遊走、及び血管透過性を促進する。VEGFR1(FLT1受容体)及びVEGFR2(KDR/FLK1)は主に血管新生に関するものであるが、VEGFR3(FLT4受容体)は主にリンパ管新生に関するものである。VEGFR2はほとんどすべての種類の内皮細胞に広く発現し、一方、VEGFR1/3の発現は、特定の血管支持組織に限られる。
【0003】
VEGFRは、正常なヒト組織では低レベルで発現するが、大部分の腫瘍では高度に発現する。VEGFRは、血管内皮細胞に発現するだけでなく、腫瘍細胞にも発現する。VEGFRは、血管内皮細胞の分裂及び増殖を促進するだけでなく、腫瘍血管新生も誘導し、腫瘍細胞の成長及び転移も促進する。そのため、VEGFRの活性を阻害し、信号変換を遮断することによって、腫瘍血管新生を予防し、それによって腫瘍の成長及び転移を阻害し、腫瘍の成長を制御することができる。したがって、VEGFRは、重要な抗腫瘍標的である。ソラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、アキシチニブ、及びカボザンチニブなど、複数の小分子VEGFR阻害剤が市販されており、フルキンチニブ(fruquintinib)、セジラニブ(cediranib)、及びルシタニブ(lucitanib)など、いくつかは臨床研究が行われている。小分子VEGFR阻害剤の大部分は、様々な臨床効力及び毒性副作用を有するマルチキナーゼ阻害剤であり、腫瘍を患う患者に代替的処置手段を提供する。
【0004】
PD-1/PD-L1のような現在の免疫チェックポイント阻害剤は、多様な腫瘍への良好な臨床効果を示しているが、奏効率をさらに改善する必要がある。PD-1/PD-L1を、VEGFRのようなキナーゼの阻害剤と併用することで、相乗効果が生じて効力を改善することができるかは、多くの生物薬剤企業の注目を引きつけており(国際公開第2015/088847号、国際公開第WO2016/140717号、国際公開第2018/068691号等)、多様な薬剤の併用の臨床試験が開始されている。PD-1とのレンバチニブとの臨床Ib/II結果は、併用療法は単剤療法よりも優れていることを示し、転移性腎細胞腫(ESMO 2017 Congress、要約No.8470)及び子宮体癌(2017 ASCO)の処置において、より高い奏効率を達成した。
単独及び免疫療法との併用での多発性腫瘍の処置における、VEGFR阻害剤によって示される展望に基づいて、本発明は、一般式(I)の新規化合物を設計及び合成し、このような構造を有する化合物は、VEGFRの活性を阻害することにおいて、優秀な効果を呈することを見出した。
【0005】
[発明の概要]
本発明は、VEGFR阻害剤として、一般式(I)によって表される化合物:
【化1】

[式中、
は-ORであり;
は、-OR、又は-C(O)NHRから独立的に選択され;
は、任意選択で置換されているC1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、フェニル、5~6員ヘテロアリールであり;
は、H、ハロゲン、CN、C1~4アルキルから独立的に選択され;
及びRはそれぞれ、H、ハロゲン、C1~4アルキル、-ORから独立的に選択され;又はR及びRは、結合している炭素原子とともに、O、N、及びSから選択される(1個又は複数の)ヘテロ原子を任意選択で含有する3~7員環を形成し;
及びRはそれぞれ、H、又は任意選択で置換されているC1~4アルキルから独立的に選択され;
任意選択の置換とは、ハロゲン、-CN、-NO、オキソ、-SF、C1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、4~7員ヘテロ環式基、フェニル、5~6員ヘテロアリール、-OR’、-NR’R’’、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’’、-C(O)N(R’)OR’’、-OC(O)R’、-OC(O)NR’R’’、-N(R’)C(O)OR’’、-N(R’)C(O)R’’、-N(R’’’)C(O)NR’R’’、-N(R’)S(O)R’’、-S(O)R’、-S(O)NR’R’’からなる群から選択される置換基による置換を指し、ここで、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ、H、C1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン化C1~4アルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリールから独立的に選択され;同じ窒素原子上のR’及びR’’は、任意選択で、R’及びR’’が結合している窒素原子とともに、O、S、及びNから選択される追加の(1個又は複数の)ヘテロ原子を任意選択で含有する4~7員ヘテロ環式環を形成し、
mは、1又は2である]
又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態は、Rが、-OC1~4アルキル、-C(O)NH、又は-C(O)NH-C1~4アルキルから独立的に選択され、好ましくは、Rが-OCHであり、より好ましくは、Rが-C(O)NHである、上の一般式(I)によって表される化合物、又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物に関する。
【0007】
本発明の一実施形態は、Rが、任意選択で置換されているC1~4アルキルであり、好ましくは、RがC1~4アルキルであり、より好ましくは、RがCHである、上の一般式(I)によって表される化合物、又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物に関する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、Rが、H又はFであり、好ましくは、RがHである、上の実施形態のいずれか1つによる化合物、又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物に関する。
【0009】
本発明の別の実施形態は、R及びRがそれぞれ、H又はFから独立的に選択され、好ましくは、R及びRがHである、上の実施形態のいずれか1つによる化合物、又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物に関する。
【0010】
本発明の一実施形態は、化合物が、限定するものではないが、下表から選択される、上の一般式(I)によって表される化合物:
【表1】

又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物に関する。
【0011】
本発明の化合物は、VEGFR2の酵素活性への有意な阻害効果を有し、好ましくは100nM未満のIC50を有し、より好ましくは10nM未満のIC50を有する。
【0012】
本発明の別の態様は、医薬品としての使用のための、又は医学的使用のための、一般式(I)によって表される化合物、又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物に関し、黒色腫、リンパ腫、甲状腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、結腸癌、直腸癌、胃癌、脳癌、膀胱癌、卵巣癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌、神経膠腫等を含むがこれらに限定されないVEGFR媒介関連疾病、とりわけ腫瘍を処置又は予防するために用いられる。そのため、別の態様では、本発明は、治療有効量の本発明の化合物、若しくはその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物、又はこの化合物を含む薬学的組成物を、投与を必要とする患者に投与することを含む、(該腫瘍のような)VEGFR媒介疾病を処置又は予防するための方法を提供する。
【0013】
本発明はさらに、本発明の化合物、若しくはその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物、並びに薬学的に許容できるキャリア及び賦形剤を含む、薬学的組成物に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、腫瘍のようなVEGFR媒介疾病を処置又は予防するための医薬品の製造における、一般式(I)によって表される化合物、若しくはその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物、又は薬学的組成物の使用に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、一般式(I)によって表される化合物、若しくはその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物、並びに少なくとも1種の追加の薬剤を含み、少なくとも1種の追加の薬剤が、化学療法剤又は(免疫チェックポイント阻害剤のような)免疫調節剤である、薬学的組成物に関する。
【0016】
本発明によれば、医薬品は、任意の薬学的剤形であることができ、限定するものではないが、タブレット、カプセル、溶液、凍結乾燥調製物、及び注射が挙げられる。
【0017】
本発明の薬学的配合物は、投薬単位当たりに所定量の活性成分を含有する投薬単位の形態で投与することができる。このような単位は、処置すべき障害、投与方法、並びに患者の年齢、体重、及び状態に応じて、例えば、0.5mg~1g、好ましくは1mg~700mg、特に好ましくは5mg~300mgの本発明の化合物を含有しうる。好ましい投薬単位配合物は、上に指示されるように、1日分若しくは分割用量、又はその対応する割合で活性成分を含有するものである。加えて、このような薬学的配合物は、薬学分野で公知の方法を用いて調製することができる。
【0018】
本発明の薬学的配合物は、任意の所望の好適な方法による投与、例えば、経口(口腔若しくは舌下を含む)、経腸、経鼻、局所(口腔、舌下、若しくは経皮を含む)、経膣、又は非経口(皮下、筋内、静脈内、若しくは皮内を含む)投与に好適でありうる。このような配合物は、薬学分野で公知のすべての方法を用いて、例えば、活性成分を1種若しくは複数の賦形剤、又は1種若しくは複数のアジュバントと組み合わせることによって、調製されうる。
【0019】
[発明の詳細な説明]
反対のことを述べていない限り、明細書及び特許請求の範囲において用いる以下の用語は、以下の意味を有する。
【0020】
本明細書で用いる「Cx~y」という表現は、炭素原子の数の範囲を指し、x及びyは両方とも整数である。例えば、C3~8シクロアルキルは、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、すなわち、3、4、5、6、7、又は8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。「C3~8」は、C3~7、C3~6、C4~7、C4~6、及びC5~6等のような、その中の任意の部分範囲も含むことを理解されたい。
【0021】
「アルキル」とは、1~20個の炭素原子、例えば1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を含有する、飽和した直鎖又は分枝状炭化水素基を指す。アルキル基の非限定例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、及び2-エチルブチルが挙げられる。アルキル基は、任意選択で置換されていてもよい。
【0022】
「シクロアルキル」とは、3~14個の炭素環原子を含有する、飽和環式ヒドロカルビル置換基を指す。シクロアルキル基は、通常は3~8、3~7、又は3~6個の炭素環原子を含有する、単一の炭素環であってもよい。単環式シクロアルキル基の非限定例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが挙げられる。或いは、シクロアルキル基は、デカリニルのような、ともに縮合した二環式又は三環式の環であってもよい。シクロアルキル基は、任意選択で置換されていてもよい。
【0023】
「ヘテロ環式基/ヘテロシクリル又はヘテロ環式環」とは、3~20個の環原子、例えば、3~14、3~12、3~10、3~8、3~6、又は5~6個の環原子を含み、環基の環原子のうちの1つ又は複数は、窒素、酸素、又はS(O)から選択され(式中、mは、0~2の整数)、ただし-O-O-、-O-S-、又は-S-S-の環部分を含まず、残りの環原子は炭素である、飽和した又は部分的に不飽和の、単環式又は多環式環基を指す。好ましくは、3~12個の環原子、より好ましくは3~10個の環原子、より好ましくは4~7個の環原子、最も好ましくは5又は6個の環原子を含み、環原子のうちの1~4個が(1個又は複数の)ヘテロ原子であり、より好ましくは1~3個が(1個又は複数の)ヘテロ原子であり、最も好ましくは1~2個が(1個又は複数の)ヘテロ原子である。単環式ヘテロ環式基の非限定例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ホモピペラジニル、オキサシクロヘキシル、及びアゼチジニルが挙げられる。多環式ヘテロ環式基としては、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロール、オクタヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン、3,8-ジアザビシクロ[3.2.1]オクタン、5-アザスピロ[2.4]ヘプタン、2-オキサ-7-アザスピロ[3.5]ノナンのような、縮合、架橋、又はスピロ多環式ヘテロ環式基が挙げられる。ヘテロ環式基又はヘテロ環式環は、任意選択で置換されていてもよい。
【0024】
「アリール又は芳香環」とは、フェニル及びナフチル、最も好ましくはフェニルのような、6~14個の炭素原子を含有する、好ましくは6~10員の、芳香族単環式又は縮合多環式基を指す。アリール環は、ヘテロアリール、ヘテロ環式、又はシクロアルキル環に縮合してもよく、ここで、親構造に接続した環はアリール環である。非限定例としては、
【化2】

が挙げられる。アリール基又は芳香環は、任意選択で置換されていてもよい。
【0025】
「ヘテロアリール又はヘテロ芳香環」とは、5~14個の環原子を含有するヘテロ芳香族系を指し、1~4個の環原子は、酸素、硫黄、及び窒素を含めたヘテロ原子から選択される。ヘテロアリール基は、好ましくは5~10員である。より好ましくは、ヘテロアリール基は、フリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N-アルキルピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、及びキノリニル等のような、5員又は6員である。ヘテロアリール環は、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアルキル環に縮合してもよく、ここで、親構造に接続した環がヘテロアリール環である。非限定例としては、
【化3】

が挙げられる。ヘテロアリール又はヘテロ芳香環は、任意選択で置換されていてもよい。
【0026】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を指す。
【0027】
「シアノ」とは、-CNを指す。
【0028】
「任意選択の」又は「任意選択で」は、続いて記載される事象又は環境が、その事象又は環境が発生すること、又は発生しないことを含めて、必ずではないが起こりうることを示す。例えば、「任意選択で、アルキル基で置換されているヘテロ環式基」は、アルキル基が、必ずではないが存在してもよいことを示し、この表現は、ヘテロ環式基がアルキル基で置換されている場合と、ヘテロ環式基がアルキル基で置換されていない場合とを含む。
【0029】
「任意選択で置換されている」とは、基の1個又は複数の水素原子、好ましくは5個、より好ましくは1~3個の水素原子が、対応する数の置換基で独立的に置換されていることを指す。言うまでもなく、置換基は、可能な化学的位置におけるもののみであり、当業者は、可能な又は不可能な置換基を、さほどの労力を伴わずに(実験又は理論を通じて)判断することができる。例えば、自由水素を有するアミノ基又はヒドロキシル基は、不飽和(例えばオレフィン性)結合を有する炭素原子と結合する場合、不安定でありうる。置換基としては、限定するものではないが、ハロゲン、-CN、-NO、オキソ、-SF、C1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、4~7員ヘテロシクリル、フェニル、5~6員ヘテロアリール、-OR’、-NR’R’’、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NR’R’’、-C(O)N(R’)OR’’、-OC(O)R’、-OC(O)NR’R’’、-N(R’)C(O)OR’’、-N(R’)C(O)R’’、-N(R’’’)C(O)NR’R’’、-N(R’)S(O)R’’、-S(O)R’(mは1又は2である)、-S(O)NR’R’’等が挙げられ、ここで、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ、H、C1~4アルキル、C3~7シクロアルキル、ハロゲン化C1~4アルキル、4~7員ヘテロシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール等から独立的に選択され;同じ窒素原子上のR’及びR’’は、任意選択で、R’及びR’’が結合している窒素原子とともに、O、S、及びNから選択されるさらなる(1個又は複数の)ヘテロ原子を任意選択で含有する4~7員ヘテロ環を形成する。
【0030】
「異性体」は、同じ分子式を有するが、原子の結合又は空間における原子の配列の性質又は順序が異なる化合物を指す。空間における原子の配列が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。立体異性体としては、光学異性体、幾何異性体、及び配座異性体が挙げられる。
【0031】
本発明の化合物は、光学異性体の形態で存在してもよい。これらの光学異性体は、キラル炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、「R」又は「S」配置のものである。光学異性体としては、エナンチオマー及びジアステレオマーが挙げられる。光学異性体を調製及び単離する方法は、当技術分野において公知である。
【0032】
本発明の化合物は、幾何異性体で存在してもよい。本発明は、炭素-炭素二重結合、炭素-窒素二重結合、シクロアルキル基、又はヘテロ環式基の周りの置換基の分布から生じる、様々な幾何異性体及び幾何異性体の混合物を企図している。炭素-炭素二重結合又は炭素-窒素結合の周りの置換基は、Z又はE配置として指定され、シクロアルキル又はヘテロ環式環の周りの置換基は、シス又はトランス配置として指定される。
【0033】
本発明の化合物はまた、ケト-エノール互変異性のような、互変異性を呈しうる。
【0034】
本発明は、任意の互変異性形態又は立体異性形態、及びこれらの混合物を含み、化合物の命名又は化学構造式に用いた、互変異性形態又は立体異性形態のいずれか一方に限定されないことを理解されたい。
【0035】
「同位体」は、本発明の化合物中に存在する原子のすべての同位体を含む。同位体は、同じ原子番号を有するが、異なる質量数を有する原子を含む。本発明の化合物への組み込みに好適な同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、及び塩素であり、例えば、限定するものではないが、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clである。同位体標識された本発明の化合物は、一般に、当業者に公知の従来の技法によって、又は付随する実施例に記載されるものと同様の方法によって、非同位体標識試薬の代わりに好適な同位体標識試薬を用いて調製することができる。このような化合物は、例えば、生物活性の決定における標準又は試薬として、多様な潜在的使用を有する。安定同位体の場合、このような化合物は、生物学的、薬理学的、又は薬物動態学的特性を有利に変質させる可能性を有する。
【0036】
「プロドラッグ」は、本発明の化合物を、プロドラッグの形態で投与してもよいことを意味する。プロドラッグは、in vivoにおける生理的条件下、例えば、酸化、還元、又は加水分解等(これらのそれぞれは、酵素を用いて、又は酵素の関与を伴わずに行われる)によって、本発明の生物活性化合物に変換される誘導体である。プロドラッグの例は、エイコサノイルアミノ、アラニルアミノ、ピバロイルオキシメチルアミノのような、本発明の化合物のアミノ基が、アシル化、アルキル化、若しくはリン酸化された化合物、又はアセトキシ、パルミトイルオキシ、ピバロイルオキシ、スクシニルオキシ、フマリルオキシ、アラニルオキシのような、ヒドロキシル基がアシル化、アルキル化、リン酸化された、若しくはホウ酸エステルに変換された化合物、又はカルボキシル基がエステル化、若しくはアミド化された化合物、或いはチオール基が、ペプチドのような、標的及び/又は細胞のサイトゾルに薬剤を選択的に送達するキャリア分子にジスルフィド架橋を形成する化合物である。これらの化合物は、公知の方法によって、本発明の化合物から調製することができる。
【0037】
「薬学的に許容できる塩」とは、無機塩基又は無機酸、及び有機塩基又は有機酸を含めた、薬学的に許容できる塩基又は酸から作製される塩を指す。本発明の化合物が1つ又は複数の酸性基又は塩基性基を含有する場合、本発明は、対応する薬学的に許容できる塩も含む。したがって、酸性基を含有する本発明の化合物は、塩の形態で存在してもよく、本発明によって、例えば、アルカリ金属塩として、アルカリ土類金属塩として、又はアンモニウム塩として、用いてもよい。このような塩のより詳細な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、若しくはアミノ酸のような、アンモニア若しくは有機アミンとの塩が挙げられる。塩基性基を含有する本発明の化合物は、塩の形態で存在してもよく、本発明によって、無機酸又は有機酸との付加塩の形態で用いてもよい。好適な酸の例としては、塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、及び当業者に公知の他の酸が挙げられる。本発明の化合物が、分子中に酸性基と塩基性基との両方を含有する場合、本発明は、言及した塩形態に加えて、内部塩又はベタインを含む。各塩は、当業者に公知の従来の方法によって、例えば、有機若しくは無機の酸若しくは塩基を、溶媒若しくは分散剤中で接触させることによって、又は他の塩とのアニオン交換若しくはカチオン交換によって、得ることができる。
【0038】
「薬学的組成物」とは、本明細書に記載する1種又は複数の化合物、又はその薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物、並びに薬学的に許容できるキャリア及び賦形剤のような、他の構成成分を含む組成物を指す。薬学的組成物は、生物活性を発揮するため、生物への投与を促進すること、及び活性成分の吸収を推進することを意図している。
【0039】
そのため、この出願において、「化合物」、「本発明の化合物」、又は「本発明による化合物」に言及する場合、その薬学的に許容できる塩、プロドラッグ、安定同位体誘導体、異性体、及びこれらの混合物のような、すべての形態の化合物が含まれる。
【0040】
本明細書で用いる場合、「腫瘍」という用語は、良性の腫瘍と(癌のような)悪性の腫瘍とを含む。
【0041】
本明細書で用いる場合、「治療有効量」という用語は、VEGFRの機能を有効に阻害すること、及び/又は疾病を処置若しくは予防することができる、本発明の化合物の量を指す。
【0042】
合成方法
本発明はまた、化合物を調製するための方法を提供する。本発明の一般式(I)の化合物は、以下の例示的方法及び実施例によって調製することができるが、この方法及び実施例は決して、本発明の範囲を限定するものとして解釈するべきではない。本発明の化合物はまた、当業者に公知の合成技法によって合成してもよく、当技術分野において公知の方法と本発明の方法との組み合わせを採用してもよい。反応の各ステップにおいて生成する生成物は、抽出、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー分離等を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の分離技法によって得る。合成に要求される出発材料及び化学試薬は、文献(サイファインダー(SciFinder)において入手可能)によって従来合成することができ、又は購入することができる。
【0043】
本発明の一般式(I)のインドリン-1-カルボキサミド化合物は、方法Aに記載する経路によって合成することができる。インドリンA1から、従来の縮環方法を通じて、例えば、N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)縮環剤を用いて、イソシアネートと反応させ、まずフェニルインドリン-1-カルボキシレートを形成し、次いでアミン等と反応させることによって、尿素A2を生成する;A2を水素化し、脱ベンジル化してA3を得る;A3を、塩基触媒の下、4-クロロキノリンとの置換反応に供して、目的生成物A4を生成する。
方法A
【化4】
【0044】
本発明の一般式(I)のインドリン-1-カルボキサミド化合物は、方法Bに記載する経路によって合成することもできる。N-Boc保護されたインドリンB1を、塩基触媒の下、4-クロロキノリンとの置換反応に供して、B2を生成する;酸によるB2からのBocの除去によって、B3を得る;次いで、B3を尿素縮環に供して、目的生成物A4を生成する。
方法B:
【化5】
【実施例
【0045】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)、又は質量スペクトル分析(MS)によって決定した。NMRは、ブルカー(Bruker)アセンド(ASCEND)-400 NMR分光計によって測定し、定量のための溶媒は、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d)、重水素化クロロホルム(CDCl)、又は重水素化メタノール(CDOD)であり、内部標準は、テトラメチルシラン(TMS)であり、化学シフトは、10-6(ppm)の単位で与えられた。
【0046】
MSは、アジレント(Agilent)SQD(ESI)質量スペクトル分析計(製造業者:アジレント、モデル:6120)を用いて測定した。
【0047】
HPLCは、 アジレント1260 DAD高圧液体クロマトグラフ(ポロシェル(Poroshell)120 EC-C18、50×3.0mm、2.7μmカラム)、又はウォーターズアーク(Waters Arc)高圧液体クロマトグラフ(サンファイア(Sunfire)C18、150×4.6mm、5μmカラム)を用いることによって行った。
【0048】
薄層クロマトグラフィーのシリカゲルプレートとして、チンタオオーシャン(Qingdao Ocean)GF254シリカゲルプレートを用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)に用いたシリカゲルプレートの仕様は、0.15mm~0.2mmであった。薄層クロマトグラフィーの分離及び精製についての仕様は、0.4mm~0.5mmであった。
【0049】
一般に、チンタオオーシャン200~300メッシュシリカゲルを、カラムクロマトグラフィーのためのキャリアとして用いた。
【0050】
本発明の公知の出発材料は、当技術分野において公知の方法によって合成することができ、又はABCR GmbH & Co.KG、アクロスオーガニクス(Acros Organics)、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)、アクセラケムバイオインク(Accela ChemBio inc.)、Beijing Ouhe Technology Co.等から購入することができる。
【0051】
別段の定めがない限り、反応は、アルゴン又は窒素雰囲気下で行った。
【0052】
アルゴン又は窒素雰囲気とは、反応フラスコが、約1L体積のアルゴン又は窒素バルーンに接続されていることを意味する。
【0053】
水素雰囲気とは、反応ボトルが、約1L体積の水素バルーンに接続されていることを意味する。
【0054】
水素化反応は通常、排気し、水素で充填し、排気と充填とを3回繰り返す。
【0055】
マイクロ波反応については、ケムディスカバー(CEM Discover)-SPマイクロ波反応器を用いた。
【0056】
実施例に別段の定めがない限り、反応温度は室温であり、温度範囲は20℃~30℃であった。
【0057】
実施例において、反応の進行は、アジレント液体クロマトグラフ/質量スペクトル分析計(1260/6120)によって監視した。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によっても監視することができ、用いた展開溶媒は、A:ジクロロメタンとメタノールとの系;B:石油エーテルと酢酸エチルとの系であり、溶媒の体積比は、化合物の極性に基づいて調節した。
【0058】
カラムクロマトグラフィーによって化合物を精製するために用いた溶出系、及び薄層クロマトグラフィーのための展開溶媒系としては、A:ジクロロメタンとメタノールとの系;B:石油エーテルと酢酸エチルとの系が挙げられ、溶媒の体積比は、化合物の極性に基づいて調節した。溶媒の体積比は、少量のトリエチルアミン、及び酸性若しくはアルカリ性試薬を加えること、又は他の溶媒系を用いることによって、調節することもできる。化合物はまた、ウォーターズ質量スペクトル分析計によって手引きされる自動調製システム(質量検出器:SQD2)を用いて精製し、逆相高圧カラム(エックスブリッジ(XBridge)-C18、19×150mm、5μm)を、化合物の極性に応じて、適当なアセトニトリル/水(0.1%トリフルオロ酢酸若しくはギ酸を含有)、又はアセトニトリル/水(0.05%アンモニアを含有)勾配によって、20mL/分の流量で溶出した。
【0059】
実施例1及び2
4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド1
4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-ヒドロキシキノリン-6-カルボキサミド2
【化6】
【0060】
ステップ1
5-(ベンジルオキシ)インドリン
化合物5-(ベンジルオキシ)インドール1a(1.06g、4.75mmol)を、酢酸(10mL)に溶解させ、次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(447mg、7.12mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、混合物を、1N水酸化リチウム溶液によってpH=8に調節し、次いで、酢酸エチル(50mL×3)によって抽出した。有機相同士を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、減圧下で濾液から溶媒を除去した。残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=20/1)によって精製して、目的生成物5-(ベンジルオキシ)インドリン1b(883mg、黄色油)、収率88%を得た。
MS m/z (ESI): 226[M+1]
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 7.45 - 7.28 (m, 5H), 6.85- 6.81 (m, 1H), 6.68 (dd, J = 8.4, 2.5 Hz, 1H), 6.63 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 4.99(s, 2H), 3.56 (t, J = 8.3 Hz, 2H), 3.01 (t, J = 8.3 Hz, 2H).
【0061】
ステップ2
5-(ベンジルオキシ)-N-シクロプロピルインドリン-1-カルボキサミド
シクロプロピルアミン(46mg、0.8mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解させ、次いで、N,N’-カルボニルジイミダゾール(156mg、0.96mmol)を加え、次いで、混合物を65℃に加熱し、2時間撹拌した。室温に冷却した後、5-(ベンジルオキシ)インドリン1b(113mg、0.5mmol)を加え、次いで、温度を65℃に再び上昇させ、2時間撹拌した。室温に冷却した後、混合物を水によってクエンチし、次いで、酢酸エチル(20mL×3)によって抽出した。有機相同士を合わせ、水(20mL×2)及び飽和食塩水(20mL)によって続けて洗浄し、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、減圧下で濾液から溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/1~1/2)によって精製して、目的生成物5-(ベンジルオキシ)-N-シクロプロピルインドリン-1-カルボキサミド1c(124mg、白色固体)、収率80%を得た。
MS m/z (ESI): 309[M+1]
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 7.79 (d, J = 8.5 Hz, 1H),7.45 - 7.28 (m, 5H), 6.82 - 6.74 (m, 2H), 5.01 (s, 2H), 4.75 (s, 1H), 3.83 (t,J = 8.6 Hz, 2H), 3.11 (t, J = 8.5 Hz, 2H), 2.72 (tt, J = 7.0, 3.7 Hz, 1H), 0.81- 0.75 (m, 2H), 0.57 - 0.51 (m, 2H).
【0062】
ステップ3
N-シクロプロピル-5-ヒドロキシインドリン-1-カルボキサミド
化合物5-(ベンジルオキシ)-N-シクロプロピルインドリン-1-カルボキサミド1c(530mg、1.72mmol)を、メタノール(30mL)に溶解させ、次いで、炭素(110mg)上の10%パラジウムを加えた。混合物を水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応が完了した後、反応物を濾過し、減圧下で濾液から溶媒を除去して、目的生成物N-シクロプロピル-5-ヒドロキシインドリン-1-カルボキサミド1d(308mg、白色固体)、収率82%を得た。
MS m/z (ESI): 219[M+1]
【0063】
ステップ4
4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド及び4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-ヒドロキシキノリン-6-カルボキサミド
化合物N-シクロプロピル-5-ヒドロキシインドリン-1-カルボキサミド1d(110mg、0.5mmol)、4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド(118mg、0.5mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(97mg、0.75mmol)、及びN-メチルピロリジノン(0.2mL)を混合し、マイクロ波反応器で130℃に加熱し、35分間撹拌した。室温に冷却した後、逆相分取高速液体クロマトグラフィーによって混合物を精製して、目的生成物4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド1(64mg、橙色固体)、収率14%;及び4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-ヒドロキシキノリン-6-カルボキサミド2(22.3mg、橙色固体)、収率5%を得た。
4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド1
MS m/z (ESI): 419[M+1]
1H NMR(400 MHz, CD3OD) δ 9.05 (s, 1H), 8.86 (d, J= 6.8 Hz, 1H), 8.07 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.20 (d, J = 2.3 Hz,1H), 7.13 (dd, J = 8.7, 2.5 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 4.22 (s, 3H),4.00 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 3.27 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 2.70 - 2.63 (m, 1H),0.80-0.75 (m, 2H), 0.63 - 0.56 (m, 2H).
4-((1-(シクロプロピルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-ヒドロキシキノリン-6-カルボキサミド2
MS m/z (ESI): 405[M+H]
1H NMR(400 MHz, CD3OD) δ 9.26 (s, 1H), 8.81 (d, J= 6.8 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.45 (s, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.14 (dd,J = 8.8, 2.5 Hz, 1H), 6.90 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 4.00 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 3.27(t, J = 8.7 Hz, 2H), 2.70 - 2.63 (m, 1H), 0.81 - 0.74 (m, 2H), 0.62 - 0.56 (m,2H).
【0064】
実施例3
7-メトキシ-4-((1-(メチルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)キノリン-6-カルボキサミド
【化7】
【0065】
ステップ1
tert-ブチル5-(ベンジルオキシ)インドリン-1-カルボキシレート
化合物5-(ベンジルオキシ)インドリン1b(2g、8.88mmol)を、ジクロロメタン(80mL)に溶解させ、0℃に冷却した後、トリエチルアミン(1.35g、13.32mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(217mg、1.776mmol)、及びジ-tert-ブチルジカーボネート(2.13g、9.76mmol)を順次加えた。0℃で2時間撹拌した後、減圧下で溶媒を除去し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=2/1)によって精製して、目的生成物tert-ブチル5-(ベンジルオキシ)インドリン-1-カルボキシレート3a(2.42g、白色固体)、収率42%を得た。
MS m/z (ESI): 270[M+1-56]
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 7.74 (s, 1H), 7.44 - 7.28(m, 5H), 6.80 (s, 1H), 6.77 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 5.02 (s, 2H), 3.96 (s, 2H),3.04 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 1.55 (s, 9H).
【0066】
ステップ2
tert-ブチル5-ヒドロキシインドリン-1-カルボキシレート
化合物tert-ブチル5-(ベンジルオキシ)インドリン-1-カルボキシレート3a(2.42g、7.44mmol)を、メタノール(80mL)に溶解させ、次いで、炭素(1.2g)上の10%パラジウムを加え、混合物を水素雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応が完了した後、反応物を濾過し、減圧下で濾液から溶媒を除去して、目的生成物tert-ブチル5-ヒドロキシインドリン-1-カルボキシレート3b(1.65g、灰色固体)、収率95%を得た。
MS m/z (ESI): 180[M+1-56]
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 7.69 (s, 1H), 6.67 (s,1H), 6.62 (dd, J = 8.6, 2.2 Hz, 1H), 4.81 (s, 1H), 3.96 (s, 2H), 3.03 (t, J =8.6 Hz, 2H), 1.55 (s, 9H).
【0067】
ステップ3
tert-ブチル5-((6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキシレート
化合物tert-ブチル5-ヒドロキシインドリン-1-カルボキシレート3b(590mg、2.5mmol)、4-クロロ-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド(590mg、2.5mmol)、カリウムtert-ブトキシド(340mg、3mmol)、及びジメチルスルホキシド(10mL)を混合し、65℃に加熱し、16時間撹拌した。室温に冷却した後、水(50mL)を加えた。20分間撹拌した後、反応物を濾過し、固体を空気中で乾燥させて、目的生成物tert-ブチル5-((6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキシレート3c(1.01g、灰色固体)、収率93%を得た。
MS m/z (ESI): 436[M+1]
1H NMR(400 MHz, CDCl3) δ 9.31 (s, 1H), 8.62 (d, J= 5.4 Hz, 1H), 7.92 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.59 (s, 1H), 6.97 (d, J = 6.4 Hz,2H), 6.47 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 5.91 (s, 1H), 4.13 (s, 3H), 4.06 (t, J = 8.4 Hz,2H), 3.13 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 1.58 (s, 9H).
【0068】
ステップ4
4-(インドリン-5-オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド
化合物tert-ブチル5-((6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキシレート3c(1.01g、2.32mmol)を、ジクロロメタン(20mL)に溶解させ、次いで、トリフルオロ酢酸(8mL)を滴加した。室温で2時間撹拌した後、減圧下で溶媒を除去した。残留物を飽和重炭酸ナトリウム溶液(50mL)に分散させ、次いで、ジクロロメタン(50mL×3)によって抽出した。有機相同士を合わせ、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、減圧下で濾液から溶媒を除去した。残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=10/1)によって精製して、目的生成物4-(インドリン-5-オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド3d(713mg、黄色固体)、収率92%を得た。
MS m/z (ESI): 336[M+1]
【0069】
ステップ5
4-ニトロフェニル5-((6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキシレート
化合物4-(インドリン-5-オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド3d(107mg、0.32mmol)を、テトラヒドロフラン(5mL)に溶解させ、0℃に冷却した後、p-ニトロフェニルクロロホルメート(64mg、0.32mmol)を加えた。室温で30分撹拌した後、反応物を飽和重炭酸ナトリウム溶液(20mL)によってクエンチし、次いで、ジクロロメタン(20mL×2)によって抽出した。有機相同士を合わせ、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、減圧下で濾液から溶媒を除去した。残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=50/1)によって精製して、目的生成物4-ニトロフェニル5-((6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキシレート3e(110mg、白色固体)、収率69%を得た。
MS m/z (ESI): 501[M+1]
【0070】
ステップ6
7-メトキシ-4-((1-(メチルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)キノリン-6-カルボキサミド
化合物4-ニトロフェニル5-((6-カルバモイル-7-メトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキシレート3e(110mg、0.22mmol)を、テトラヒドロフラン(8mL)に溶解させ、次いで、テトラヒドロフラン中のメチルアミン(2M、2mL、4mmol)を加え、混合物を封管中、80℃で1時間加熱した。室温に冷却した後、減圧下で溶媒を除去し、逆相分取高速液体クロマトグラフィーによって残留物を精製して、目的生成物7-メトキシ-4-((1-(メチルカルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)キノリン-6-カルボキサミド3(42mg、黄色固体)、収率44%を得た。
MS m/z (ESI): 393[M+1]
1H NMR(400 MHz, CD3OD) δ 9.06 (s, 1H), 8.87 (d, J= 6.8 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.58 (s, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.13 (dd,J = 8.6, 2.3 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 4.23 (s, 3H), 4.03 (t, J = 8.7Hz, 2H), 3.28 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 2.86 (s, 3H).
【0071】
実施例4
4-((1-((4-フルオロフェニル)カルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド
【化8】

化合物p-ニトロフェニルクロロホルメート(40mg、0.2mmol)を、テトラヒドロフラン(5mL)に溶解させ、0℃に冷却した後、4-フルオロアニリン(22mg、0.2mmol)を加えた。室温に温め、1時間撹拌した後、4-(インドリン-5-オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド3d(70mg、0.21mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(97mg、0.75mmol)を加え、次いで、マイクロ波反応器で混合物を80℃に加熱し、1時間撹拌した。室温に冷却した後、減圧下で溶媒を除去し、逆相分取高速液体クロマトグラフィーによって残留物を精製して、目的生成物4-((1-((4-(フルオロフェニル)カルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド4(24mg、黄色固体)、収率23%を得た。
MS m/z (ESI): 473[M+1]
1H NMR(400 MHz, CD3OD) δ 9.06 (s, 1H), 8.89 (d, J= 6.8 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.54 - 7.47 (m, 2H),7.26 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.16 (dd, J = 8.8, 2.5 Hz, 1H), 7.09 (t, J = 8.8 Hz,2H), 7.02 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 4.27 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 4.23 (s, 3H), 3.37 (t,J = 8.6 Hz, 2H).
【0072】
実施例5
N-シクロプロピル-5-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキサミド
【化9】

化合物N-シクロプロピル-5-ヒドロキシインドリン-1-カルボキサミド1d(200mg、0.917mmol)、4-クロロ-6,7-ジメトキシキノリン(200mg、0.897mmol)、カリウムtert-ブトキシド(300mg、2.75mmol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(3mL)を混合し、70℃に加熱し、12時間撹拌した。室温に冷却した後、逆相分取高速液体クロマトグラフィーによって混合物を精製して、目的生成物N-シクロプロピル-5-((6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)オキシ)インドリン-1-カルボキサミド1(50mg、黄色固体)、収率13%を得た。
MS m/z (ESI): 406[M+1]
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 8.80 (d, J = 6.7 Hz,1H), 8.00 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.73 - 7.68 (m, 1H), 7.22 (d, J =2.4 Hz, 1H), 7.12 (dd, J = 8.7, 2.5 Hz, 1H), 6.85 (s, 1H), 6.84 (s, 1H), 4.04(s, 3H), 4.04 (s, 3H), 3.93 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 3.16 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 2.66- 2.57 (m, 1H), 0.67 - 0.60 (m, 2H), 0.54 - 0.47 (m, 2H).
【0073】
実施例6
7-メトキシ-4-((1-((5-メチルイソオキサゾール-3-イル)カルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)キノリン-6-カルボキサミド
【化10】

化合物5-メチルイソオキサゾール-3-アミン(98mg、1.0mmol)を、無水テトラヒドロフラン(2mL)に溶解させ、次いで、ピリジン(0.2mL)及びフェニルクロロホルメート(156mg、1.0mmol)を順次加えた。室温で2時間撹拌した後、減圧下で溶媒を除去した。残留物を酢酸エチル(20mL)に溶解させ、水(5mL×2)によって洗浄し、次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、減圧下で濾液から溶媒を除去して、オフホワイト固体を得た。この固体及び4-(インドリン-5-オキシ)-7-メトキシキノリン-6-カルボキサミド3d(80mg、0.24mmol)を、N,N-ジメチルホルムアミド(1mL)にともに溶解させ、次いで、4-ジメチルアミノピリジン(1mg、0.082mmol)を加えた。室温で40時間撹拌した後、減圧下で溶媒を除去し、逆相分取高速液体クロマトグラフィーによって残留物を精製して、目的生成物7-メトキシ-4-((1-((5-メチルイソオキサゾール-3-イル)カルバモイル)インドリン-5-イル)オキシ)キノリン-6-カルボキサミド6(47mg、黄色固体)、収率43%を得た。
MS m/z (ESI): 460[M+1]
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 9.80 (s, 1H), 8.96 (d,J = 6.4 Hz, 1H), 8.75 (s, 1H), 8.02 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.90 (s,1H), 7.76 (s, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.20 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.86 (d, J = 6.4 Hz,1H), 6.61 (s, 1H), 4.23 (t, J = 8.3 Hz, 2H), 4.09 (s, 3H), 3.24 (t, J = 8.1 Hz,2H), 2.39 (s, 3H).
【0074】
生物学的実験
VEGFR1活性阻害試験
in vitroキナーゼアッセイを用いて、VEGFR1活性への本発明の化合物の効果を評価した。
実験方法を以下にまとめる。
【0075】
均一系時間分解蛍光(HTRF)キナーゼ検出キット(シスバイオ(Cisbio)、カタログ番号62TK0PEC)を用いて、キナーゼ反応における基質のリン酸化レベルを検出することによって、VEGFR1のin vitro活性を判定した。反応緩衝剤は、キットにおいて提供される酵素反応緩衝剤(1×)、5mMのMgCl、1mMのMnCl、1mMのDTTを含有する。ヒト化組み換えVEGFR1タンパク質(カタログ番号PV3666)をサーモフィッシュ(ThermoFish)から購入し、反応緩衝剤によって、0.3ng/μLキナーゼ溶液に希釈した。基質反応溶液は、反応緩衝剤によって希釈された、1μMのビオチン標識チロシンキナーゼ基質、及び0.8μMのATPを含む。アッセイ緩衝剤は、反応緩衝剤によって希釈された、0.1ng/μLのEu3+標識ケージ抗体、及び0.125μMのストレプトアビジン標識XL665を含む。
【0076】
化合物を100%DMSOに溶解させて10μMに希釈し、次いで、0.61nMの最低濃度まで、DMSOによる4倍系列希釈を実行し、各濃度点を、反応緩衝剤によって40倍に希釈した。
【0077】
4μLの化合物溶液と2μLのVEGFR1キナーゼ溶液とを、384ウェル検出プレート(コーニング(Corning)、カタログ番号4512)に加え、均一に混合し、室温で15分間インキュベートした。次いで、4μLの基質反応溶液を加え、反応混合物を室温で50分間インキュベートした。次いで、反応物の体積に等しい10μLのアッセイ緩衝剤を加え、均一に混合し、室温で30分間静置し、次いで、エンビジョン(Envision)プレートリーダー(パーキンエルマー(Perkin Elmer))によって、620nm及び665nmの波長において、反応の進行を検出した。665/620の比は、基質のリン酸化度と正の相関があることによって、VEGFR1キナーゼの活性を検出する。この実験において、VEGFR1キナーゼタンパク質を含まない群を、陰性対照(100%阻害)として用い、VEGFR1キナーゼタンパク質を含むが、化合物を含まない群を、陽性対照(0%阻害)として用いた。化合物のVEGFR1活性への阻害パーセンテージは、次の式を用いて計算することができる。
阻害のパーセンテージ=100-100×(特定の濃度における試験化合物の信号値-陰性対照の信号値)/(陽性対照の信号値-陰性対照の信号値)
【0078】
化合物のIC50値は、次の式を通じて、エックスエルフィット(XLfit)(アイディービジネスソリューションズエルティーディー(ID Business Solutions Ltd.)、UK)ソフトウェアによって、8つの濃度点から計算する。
Y=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+10^((logIC50-X)×傾斜係数))
式中、Yは阻害パーセンテージであり、Xは試験化合物の濃度の対数であり、ボトムは最大阻害パーセンテージであり、トップは最小阻害パーセンテージであり、傾斜係数は曲線の傾斜率である。
【0079】
VEGFR2活性阻害試験
in vitroキナーゼアッセイを用いて、VEGFR2活性への本発明の化合物の効果を評価した。
実験方法を以下にまとめる。
【0080】
均一系時間分解蛍光(HTRF)キナーゼ検出キット(シスバイオ、カタログ番号62TK0PEC)を用いて、キナーゼ反応における基質のリン酸化レベルを検出することによって、VEGFR2のin vitro活性を判定した。反応緩衝剤は、キットにおいて提供される酵素反応緩衝剤(1×)、5mMのMgCl、1mMのMnCl、1mMのDTT、0.01%のBSA、及び0.005%のトゥイーン(Tween)20を含有する。ヒト化組み換えVEGFR2タンパク質(カタログ番号10012-H20B1)をシノバイオロジカルインク(Sino Biological Inc.)から購入し、反応緩衝剤によって、0.3ng/μLキナーゼ溶液に希釈した。基質反応溶液は、反応緩衝剤によって希釈された、0.3μMのビオチン標識チロシンキナーゼ基質、及び3.5μMのATPを含む。アッセイ緩衝剤は、反応緩衝剤によって希釈された、0.1ng/μLのEu3+標識ケージ抗体、及び18.75nMのストレプトアビジン標識XL665(シスバイオ、カタログ番号610SAXLB)を含む。
【0081】
化合物を100%DMSOに溶解させて10μMに希釈し、次いで、0.61nMの最低濃度まで、DMSOによる4倍系列希釈を実行し、各濃度点を、反応緩衝剤によって40倍に希釈した。
【0082】
4μLの化合物溶液と2μLのVEGFR2キナーゼ溶液とを、384ウェル検出プレート(コーニング、カタログ番号4512)に加え、均一に混合し、室温で15分間インキュベートした。次いで、4μLの基質反応溶液を加え、反応混合物を室温で30分間インキュベートした。次いで、反応物の体積に等しい10μLのアッセイ緩衝剤を加え、均一に混合し、室温で30分間静置し、次いで、エンビジョンプレートリーダー(パーキンエルマー)によって、620nm及び665nmの波長において、反応の進行を検出した。665/620の比は、基質のリン酸化度と正の相関があることによって、VEGFR2キナーゼの活性を検出する。この実験において、VEGFR2キナーゼタンパク質を含まない群を、陰性対照(100%阻害)として用い、VEGFR2キナーゼタンパク質を含むが、化合物を含まない群を、陽性対照(0%阻害)として用いた。化合物のVEGFR2活性への阻害パーセンテージは、次の式を用いて計算することができる。
阻害のパーセンテージ=100-100×(特定の濃度における試験化合物の信号値-陰性対照の信号値)/(陽性対照の信号値-陰性対照の信号値)
【0083】
化合物のIC50値は、次の式を通じて、エックスエルフィット(アイディービジネスソリューションズエルティーディー、UK)ソフトウェアによって、8つの濃度点から計算する。
Y=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+10^((logIC50-X)×傾斜係数))
式中、Yは阻害パーセンテージであり、Xは試験化合物の濃度の対数であり、ボトムは最大阻害パーセンテージであり、トップは最小阻害パーセンテージであり、傾斜係数は曲線の傾斜率である。
【0084】
VEGFR3活性阻害試験
in vitroキナーゼアッセイを用いて、VEGFR3活性への本発明の化合物の効果を評価した。
実験方法を以下にまとめる。
【0085】
HTRFキナーゼ検出キット(シスバイオ、カタログ番号62TK0PEC)を用いて、キナーゼ反応における基質のリン酸化レベルを検出することによって、VEGFR3のin vitro活性を判定した。反応緩衝剤は、キットにおいて提供される酵素反応緩衝剤(1×)、5mMのMgCl、1mMのMnCl、1mMのDTT、及び0.01%のトゥイーン20を含有する。ヒト化組み換えVEGFR3タンパク質(カタログ番号08-190)をカルナバイオサイエンス(Carna Biosciences)から購入し、反応緩衝剤によって、0.05ng/μLキナーゼ溶液に希釈した。基質反応溶液は、反応緩衝剤によって希釈された、0.13μMのビオチン標識チロシンキナーゼ基質、及び0.4μMのATPを含む。アッセイ緩衝剤は、反応緩衝剤によって希釈された、0.1ng/μLのEu3+標識ケージ抗体、及び8.13nMのストレプトアビジン標識XL665を含む。
【0086】
化合物を100%DMSOに溶解させて10μMに希釈し、次いで、0.61nMの最低濃度まで、DMSOによる4倍系列希釈を実行し、各濃度点を、反応緩衝剤によって40倍に希釈した。
【0087】
4μLの化合物溶液と2μLのVEGFR3キナーゼ溶液とを、384ウェル検出プレート(コーニング、カタログ番号4512)に加え、均一に混合し、室温で15分間インキュベートした。次いで、4μLの基質反応溶液を加え、反応混合物を室温で40分間インキュベートした。次いで、反応物の体積に等しい10μLのアッセイ緩衝剤を加え、均一に混合し、室温で30分間静置し、次いで、エンビジョンプレートリーダー(パーキンエルマー)によって、620nm及び665nmの波長において、反応の進行を検出した。665/620の比は、基質のリン酸化度と正の相関があることによって、VEGFR3キナーゼの活性を検出する。この実験において、VEGFR3キナーゼタンパク質を含まない群を、陰性対照(100%阻害)として用い、VEGFR3キナーゼタンパク質を含むが、化合物を含まない群を、陽性対照(0%阻害)として用いた。化合物のVEGFR3活性への阻害パーセンテージは、次の式を用いて計算することができる。
阻害のパーセンテージ=100-100×(特定の濃度における試験化合物の信号値-陰性対照の信号値)/(陽性対照の信号値-陰性対照の信号値)
【0088】
化合物のIC50値は、次の式を通じて、エックスエルフィット(アイディービジネスソリューションズエルティーディー、UK)ソフトウェアによって、8つの濃度点から計算する。
Y=ボトム+(トップ-ボトム)/(1+10^((logIC50-X)×傾斜係数))
式中、Yは阻害パーセンテージであり、Xは試験化合物の濃度の対数であり、ボトムは最大阻害パーセンテージであり、トップは最小阻害パーセンテージであり、傾斜係数は曲線の傾斜率である。
【0089】
いくつかの例示的実施例化合物についての活性データを、以下に列記する。
【0090】
【表2】
【0091】
本発明の実施例化合物はそれぞれ、VEGFRの活性への有意な阻害効果を有する。