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特許7332125粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/78 20060101AFI20230816BHJP
   A23J 3/06 20060101ALI20230816BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20230816BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20230816BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20230816BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C07K14/78
A23J3/06
C12P21/00 Z
A61L15/22 100
A61L15/32 100
A61L15/42 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018189803
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059653
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591219566
【氏名又は名称】青葉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】城戸 浩胤
(72)【発明者】
【氏名】千葉 克則
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-521994(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195198(WO,A1)
【文献】特開平02-086743(JP,A)
【文献】特表2004-534023(JP,A)
【文献】特開2012-237083(JP,A)
【文献】特開平02-171160(JP,A)
【文献】特開2015-051626(JP,A)
【文献】特開平11-169121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00-825
C12P 21/00-08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量30,000以上300,000以下のゼラチンまたはコラーゲンペプチドのみを重合度1~10のオリゴグリセリンの水溶液に溶解させて親水性天然高分子化合物溶液を調製する溶液調製工程と、
前記親水性天然高分子化合物溶液にトランスグルタミナーゼを混合して架橋反応させる架橋反応工程と、
架橋反応させた前記親水性天然高分子化合物溶液を攪拌して泡を生じさせる起泡工程とを有し、
前記起泡工程後の前記親水性天然高分子化合物溶液を凍結乾燥させることを、
特徴とする粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法。
【請求項2】
前記起泡工程において、前記親水性天然高分子化合物溶液をホモミキサーにより回転数5000~20000rpmで5~40分間撹拌することを特徴とする請求項1記載の粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食の多様化が進み、鳥獣肉の内臓である腸や胃(以下、「ホルモン」という)が食材として非常に人気を博し、焼肉、鍋物、炒め物等様々な方法で食されている。ホルモンが食材として好まれる要因のひとつに食感がある。ホルモンは、粘性および弾性の両方を合わせた粘弾性と吸着性のある食感を有し、他の食品にない食感を楽しむことができる。
【0003】
粘弾性の食感を得る技術として、ゼラチンにポリリジンを加え、トランスグルタミナーゼで架橋反応させて改質したゼラチンを作製し、その改質ゼラチンを使用してゼラチン加工品に耐熱性や吸水防止等の特殊な機能を付与する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、油脂、水溶性蛋白、水およびトランスグルタミナーゼを混合して架橋反応を行わせ、所定の固さと風味を有した固形脂を得る技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
菓子類においては、糖質、ゼラチン及び油脂を所定の組成重量比率で含有し、ゼラチンをトランスグルタミナーゼで架橋処理して成る、ホルモン様のコリコリした食感のグミキャンディが知られている(例えば、特許文献3参照)。
食品以外の分野では、組織インプラントの製造技術であって、ゼラチンを水とグリセリンの混合物に溶解させ、その溶液にホルムアルデヒド水溶液を添加して架橋させ、混合物をホモジネートして乾燥させた後、さらにホルムアルデヒド水溶液で架橋させる技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
また、ゼラチン-多価アルコール溶液とトランスグルタミナーゼとを混合し、50℃に暖めてゲル化させる技術が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-79707号公報
【文献】特開平2-128648号公報
【文献】特開2011-130714号公報
【文献】特表2007-537314号公報
【文献】特表2010-521994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ポリリジンが用いられるという課題があった。特許文献2,3に記載の技術では、油脂が用いられるという課題があった。特許文献4,5に記載の技術では、粘弾性の性質を得ることができないという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、ポリリジンや油脂などを使用せずに、粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドを多価アルコールまたはその誘導体の水溶液に溶解させ、トランスグルタミナーゼにより架橋反応させることにより、粘弾性がありながらも吸着性のある、従来ない食感の組成物が得られ、その食感は凍結乾燥等で水分を99重量%以上除去しても保持されることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明に関する天然高分子化合物組成物は、多価アルコールまたはその誘導体を含む分子量30,000以上300,000以下の架橋した親水性天然高分子化合物を含むことを特徴とする。
本発明に関する天然高分子化合物組成物において、前記多価アルコールまたはその誘導体は重合度1~10のオリゴグリセリンまたはその誘導体から成ることが好ましい。
【0010】
本発明に関する天然高分子化合物組成物は、前記親水性天然高分子化合物の架橋剤を含むことが好ましい。
前記架橋剤はトランスグルタミナーゼを含むことが好ましい。
前記親水性天然高分子化合物は分子量30,000以上100,000以下のゼラチンまたはコラーゲンペプチドから成ることが好ましい。
【0011】
本発明に関する天然高分子化合物組成物は、全重量に対し、前記多価アルコールまたはその誘導体48~68重量%、前記親水性天然高分子化合物25~48重量%、80から130U/gの前記架橋剤0.02~0.13重量%を含むことが好ましい。
本発明に関する天然高分子化合物組成物は、多孔質体から成ることが好ましく、乾燥した多孔質体から成ることが特に好ましい。
【0012】
本発明に係る粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法は、分子量30,000以上300,000以下のゼラチンまたはコラーゲンペプチドのみを重合度1~10のオリゴグリセリンの水溶液に溶解させて親水性天然高分子化合物溶液を調製する溶液調製工程と、前記親水性天然高分子化合物溶液にトランスグルタミナーゼを混合して架橋反応させる架橋反応工程と、架橋反応させた前記親水性天然高分子化合物溶液を攪拌して泡を生じさせる起泡工程とを有し、前記起泡工程後の前記親水性天然高分子化合物溶液を凍結乾燥させることを、特徴とする。
【0013】
前記架橋反応工程において、前記親水性天然高分子化合物溶液に前記トランスグルタミナーゼを0℃以上40℃以下で混合して架橋反応させることが好ましい。
前記起泡工程において、前記親水性天然高分子化合物溶液をホモミキサーにより回転数5000~20000rpmで5~40分間撹拌することが好ましい。
本発明に係る粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法は、前記起泡工程後の前記親水性天然高分子化合物溶液を凍結乾燥させる。
【0014】
本発明に関する食品は、前述の天然高分子化合物組成物を含むことを特徴とする。
本発明に関する医療材料は、前述の天然高分子化合物組成物を含むことを特徴とする。
本発明に関する医療材料としては、例えば、止血材料が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリリジンや油脂などを使用せずに、粘弾性を有する天然高分子化合物組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物、その製造方法、食品および医療材料について説明する。
本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物は、多価アルコールまたはその誘導体を含む分子量30,000以上300,000以下の架橋した親水性天然高分子化合物を含む。
【0017】
多価アルコールまたはその誘導体は、水分を乾燥させると同時に気化してしまわないよう、沸点が100℃以上のもの、より好ましくは150℃以上のもの、さらに好ましくは170℃以上のものが好ましい。多価アルコールまたはその誘導体としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ナノグリセリン、デカグリセリンおよびそれらの脂肪酸誘導体が挙げられる。
【0018】
但し、グリセリンの脂肪酸エステルの鎖長が長くなればなるほど、融点が上がることから、鎖長は短いほうが好ましい、グリセリンの脂肪酸エステルの鎖長は、炭素数が18以下、より好ましくは14以下、さらに好ましくは12以下が好ましい。多価アルコールまたはその誘導体は、重合度1~10のオリゴグリセリンまたはその誘導体から成ることが特に好ましい。
【0019】
親水性天然高分子化合物としては、コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチド、ヒアルロン酸、アルギン酸、キチン、キトサン、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、化工でんぷんなどを例示することができる。特に、親水性天然高分子化合物として、水に溶解させることができ、加工性に優れることから、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドを用いることが好ましく、さらに、抗原性を低減した分子量30,000以上300,000以下のゼラチンまたはコラーゲンペプチドから成ることがより好ましく、分子量30,000以上100,000以下が特に好ましい。
【0020】
親水性天然高分子化合物は、水中で容易に溶解しないよう架橋処理がなされている。架橋方法は、加熱処理や紫外線照射、放射線照射などの物理的方法、グルタルアルデヒドやカルボジイミドなどの架橋剤を用いる化学的方法のいずれでもよいが、酵素を用いる方法が好ましい。酵素としては、安全性が高いことから、トランスグルタミナーゼが好ましい。
本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物は、ポリリジンや油脂などを使用せずに、水分のない状態で、高い粘弾性を有する。
【0021】
本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物は、全重量に対し、多価アルコールまたはその誘導体48~68重量%、親水性天然高分子化合物25~48重量%、80から130U/gの架橋剤0.02~0.13重量%を含むことが好ましい。架橋剤がトランスグルタミナーゼから成る場合、トランスグルタミナーゼを0.15~0.13重量%を含むことが好ましい。この配合比率の場合、本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物は、ポリリジンや油脂などを使用せずに、水分のない状態で、高い粘弾性および吸着性を有する。この高い粘弾性および吸着性は、例えれば、もちを焼いた時の内側のべたべた感のような性質である。
【0022】
分子量30,000以上300,000以下の架橋した親水性天然高分子化合物のみの場合、乾燥状態では非常に脆く、吸着性がない。それに対し、多価アルコールまたはその誘導体を含む分子量30,000以上300,000以下の架橋した親水性天然高分子化合物は、乾燥状態で粘性があり、多価アルコールまたはその誘導体を含ませることによりゲル強度が格段に向上する。特に、親水性天然高分子化合物がコラーゲン、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドでトランスグルタミナーゼを含む場合、その効果は顕著である。多価アルコールまたはその誘導体と、ゼラチンまたはコラーゲンペプチドと、トランスグルタミナーゼとの組成物は、医療材料として用いたとき、生体組織の水分を吸水し、ヒドロゲル状になり、高い密着、圧着効果を奏する。
【0023】
天然高分子化合物組成物は、水分を除去したものでも除去しないものでもよい。水分を除去する場合、95重量%以上除去して水分が5重量%未満のものとすることができ、99重量%以上除去して水分が1重量%未満のものとすることもできる。
天然高分子化合物組成物は、多孔質体から成ることが好ましく、乾燥した多孔質体から成ることが特に好ましい。多孔質体は、表面に吸水を容易にする微少な孔などが多数存在する構造であり、起泡または発泡による気泡を含んだ構造から成っても、編物、織物、不織布のような繊維構造から成ってもよい。多孔質にすることにより、水分を吸水した後のゲル強度が強化され、組成物の強度を上げることができる。また、多孔質体とすることにより、食品や生体組織に所定の期間、密着、固定させることができる。
【0024】
本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物の製造方法は、親水性天然高分子化合物を多価アルコールまたはその誘導体の水溶液に溶解させて親水性天然高分子化合物溶液を調製する溶液調製工程と、前記親水性天然高分子化合物溶液に架橋剤を混合して架橋反応させる架橋反応工程と、架橋反応させた前記親水性天然高分子化合物溶液を攪拌して泡を生じさせる起泡工程とを、有する。
【0025】
溶液調整工程で、多価アルコールまたはその誘導体の水溶液の濃度は5~50重量%が好ましい。
架橋反応工程では、親水性天然高分子化合物溶液に架橋剤を0℃以上40℃以下で混合して架橋反応させることが好ましい。多価アルコールまたはその誘導体と、親水性天然高分子化合物と、架橋剤との配合比率としては、前述の配合比率が好ましい。
【0026】
一般に、高分子化合物多孔質体の製造方法の一つとして、高分子化合物を水などの溶媒に溶解した後に、この溶液を凍結乾燥する方法がある。しかし、この操作のみでは気泡含有状態にはならない。
【0027】
本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物の製造方法では、起泡工程後、親水性天然高分子化合物溶液を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。乾燥工程では、親水性天然高分子化合物溶液から水分を95重量%以上、特に99重量%以上除去することが好ましい。乾燥方法としては、凍結真空乾燥が好ましい。起泡工程後の凍結乾燥により、気泡を含有した天然高分子化合物組成物を製造することができる。凍結乾燥は、起泡工程後、多孔質構造を維持するよう速やかに行い、凍結後、速やかに真空乾燥を行うことが好ましい。起泡工程では、泡を均質化するため、攪拌速度と攪拌時間等を調節することが好ましい。
【0028】
特に、親水性天然高分子化合物溶液をホモミキサーにより回転数5000~20000rpmで5~40分間撹拌することが好ましい。この場合、天然高分子化合物組成物の多孔質体の孔径は、0.3μm~100μmとなる。本発明の実施の形態の天然高分子化合物組成物は、孔径が1μm~30μmの範囲のものが好ましい。孔径が0.3μmより小さいと生体組織の水が天然高分子化合物組成物に吸い込まれにくく、天然高分子化合物組成物が切れやすくなる。一方、100μmを超えると、天然高分子化合物組成物の多孔質体の強度が下がり過ぎて破れやすくなる。
【0029】
本発明の実施の形態の食品は、前述の天然高分子化合物組成物を含む。本発明の実施の形態の食品は、天然高分子化合物組成物により、高い粘弾性のある独特の食感を有する。本発明の実施の形態の食品には、調味料、賦形剤、蛋白質、キレート剤、乳化剤、着色剤、酸味料、香料、その他の食品添加物が混合されてもよい。食品としては、例えば、グミやもち菓子、代替肉などが挙げられる。
【0030】
本発明の実施の形態の食品は、しっかり噛むことができ、満腹感が得やすいことからダイエット食としての用途や、咀嚼力を鍛える咀嚼トレーニングとしての用途に適している。また、食品への吸着性を高めた配合比率とした場合には、品質保持材の用途もある。
本発明の実施の形態の医療材料は、前述の天然高分子化合物組成物を含む。医療材料としては、例えば、止血材料が挙げられる。本発明の実施の形態の医療材料は、天然高分子化合物組成物により、高い粘弾性を有する。
【実施例
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を6:2:0.01の組成重量比で準備した。ゼラチン粉末は、分子量30,000以上300,000以下のものを用いた。トランスグルタミナーゼは、酵素活性86U/gのものを用いた。グリセリン:ゼラチン粉末:水の重量比が6:2:4の水溶液を作製し、この水溶液を25℃に保ち、トランスグルタミナーゼを添加した。この混合水溶液を冷蔵庫に入れ、5℃で一昼夜反応させた。その後、ホモミキサーを用いて、回転数18000rpmで10分間撹拌し、均質化した。撹拌後の溶液をシャーレに流延し、-80℃の冷凍庫に6時間入れてゼラチン水溶液を凍結させた後、凍結乾燥機中で48時間、凍結乾燥処理した。こうして、架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0033】
(比較例1)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を0:2:0.01の組成重量比で準備した点を除き、実施例1と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体を作製した。
【0034】
(比較例2)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を6:2:0の組成重量比で準備した点を除き、実施例1と同様の方法でゼラチン多孔質体を作製した。
【0035】
(実施例2)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を6:2:0.01の組成重量比で準備した。グリセリン:ゼラチン粉末:水の重量比が6:2:4の水溶液を作製し、この水溶液を25℃に保ち、トランスグルタミナーゼを添加した。この混合水溶液をシャーレに流延し、-80℃の冷凍庫に6時間入れてゼラチン水溶液を凍結させた後、凍結乾燥機中で48時間、凍結乾燥処理した。こうして、架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0036】
(実施例3)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を1.2:2:0.01の組成重量比で準備した点を除き、実施例1と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0037】
(実施例4)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を10:2:0.01の組成重量比で準備した点を除き、実施例1と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0038】
(実施例5)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を6:2:0.025の組成重量比で準備した点を除き、実施例1と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0039】
(実施例6)
グリセリン:ゼラチン粉末(ニッピ社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を6:2:0.002の組成重量比で準備した点を除き、実施例1と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0040】
(実施例7)
ゼラチン粉末(ニッピ社製)の代わりにペプチドコラーゲン(ニッピ社製:分子量30000)を用いた点を除き、実施例2と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0041】
(実施例8)
グリセリン:ヒドロキシプロピルセルロース(ダウケミカル社製):トランスグルタミナーゼ(味の素社製)を6:0.5:0.01の組成重量比で準備した点を除き、実施例2と同様の方法で架橋天然高分子多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0042】
(比較例3)
ゼラチン粉末(ニッピ社製)の代わりにペプチドコラーゲン(ニッピ社製:分子量10000以下)を用いた点を除き、実施例2と同様の方法で天然高分子化合物組成物を作製した。
【0043】
(実施例9)
グリセリンの代わりにプロピレングリコールを用いた点を除き、実施例2と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0044】
(比較例4)
グリセリンの代わりにエタノールを用いた点を除き、実施例2と同様の方法で天然高分子化合物組成物を作製した。
【0045】
(実施例10)
グリセリンの代わりにデカグリセリンモノラウリン酸エステル(三菱ケミカルフーズ社製)を用いた点を除き、実施例2と同様の方法で架橋ゼラチン多孔質体から成る天然高分子化合物組成物を作製した。
【0046】
(比較例5)
グリセリンの代わりにデカグリセリンオレイン酸エステルを用いた点を除き、実施例2と同様の方法で天然高分子化合物組成物を作製した。
【0047】
実施例1~6および比較例1,2でそれぞれ作製したものについて、乾燥時と吸水時の状態観察と物性評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すとおり、比較例1~5ではいずれも粘弾性がなく、脆かったり固まらなかったりしたのに対し、実施例1~10ではいずれも粘弾性があった。実施例1~10は、いずれもしっかり噛むことができ、ホルモン様の独特の食感を有していた。実施例1~10は、いずれも食品として食することができた。
【0050】
実施例1~6および比較例1,2でそれぞれ作製したものについて、豚レバーへの吸着性試験を行った。
、実施例1~6および比較例1,2でそれぞれ作製したものから1cm×1cmの大きさの試験材料を準備し、豚レバーの切り身(200g程度)に対する吸着性を調べた。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2に示すとおり、比較例1では吸着せず、比較例2では吸着しにくかったのに対し、実施例1では吸着しやすくかつ粘弾性を有し、実施例2では千切れるものの吸着性を有し、実施例4では吸着性を有し、千切れにくかった。但し、実施例3,5,6では吸着しにくかった。従って、生体組織への吸着性には、グリセリンとゼラチン粉末とトランスグルタミナーゼとの配合比率が関係していると考えられる。