(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】表示パネル、および、表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/40 20230101AFI20230816BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230816BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230816BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230816BHJP
H10K 71/50 20230101ALI20230816BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230816BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20230816BHJP
G09F 9/30 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
H10K71/40
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/02
H10K71/50
H10K59/10
H10K77/10
G09F9/30 338
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2019153971
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 真
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0067606(US,A1)
【文献】特開2019-121493(JP,A)
【文献】特開2016-149350(JP,A)
【文献】特開2017-083669(JP,A)
【文献】特開2018-056137(JP,A)
【文献】特開2013-211339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H10K 59/10
H10K 50/10
H05B 33/10
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基板上に発光素子と第2樹脂基板とを形成して発光素子基板を形成し、
第1樹脂基板上に前記発光素子基板を貼付してパネル素子を形成し、
金属膜上に、前記金属膜と接触する複数の接触部を有し、前記複数の接触部の間に、前記金属膜と接しない空隙が存在する接着層を貼付し、
前記接着層上に前記パネル素子を貼付してフレキシブル表示パネルを形成し、
前記フレキシブル表示パネルに高温エージング処理を行う
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記接着層が前記第1樹脂基板と接触する面積は、複数の前記接触部が前記金属膜と接触する面積より広い
ことを特徴とする請求項1に記載の表示パネル
の製造方法。
【請求項3】
前記接着層は、
前記第1樹脂基板と接触する第1接着層と、
複数の前記接触部からなる第2接着層と、を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の表示パネル
の製造方法。
【請求項4】
前記第2樹脂基板は、偏光板である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示パネル
の製造方法。
【請求項5】
前記第1樹脂基板の材料の吸水率は、0.1%以上である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表示パネル
の製造方法。
【請求項6】
前記第1樹脂基板の材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である
ことを特徴とする請求項5に記載の表示パネル
の製造方法。
【請求項7】
前記第1樹脂基板と、前記第2樹脂基板とは、いずれも可撓性基板であり、
前記表示パネルは、フレキシブルパネルである
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の表示パネル
の製造方法。
【請求項8】
前記金属膜の材料はステンレス鋼、アルミニウム、銅の1以上を含む
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の表示パネル
の製造方法。
【請求項9】
前記高温エージング処理は、80℃以上の温度で、2時間以上行われる
ことを特徴とする請求項
1から8のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自己発光素子を複数含む表示パネルに関し、特に、フレキシブルパネルの基板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子(OLED;Organic Light Emitting Diode)、量子ドット発光素子(QLED;Quantum dot Light Emitting Diode)などの自己発光素子を複数含む表示パネルが知られている。自己発光素子は、各種材料の薄膜を積層した構造を有し、平坦化絶縁層に覆われた薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)基板上に、少なくとも、画素電極と、対向電極と、これらに挟まれた発光層とを備える。
【0003】
近年、これらの表示パネルにおいて、可撓性を有する基板を用いたフレキシブルな表示装置が提案されている。特許文献1には、可撓性を有する基板上に封止層を介して複数の有機EL素子が配置された有機EL表示パネルが開示されている。このようなフレキシブルな表示パネルを製造するとき、可撓性を有する基板の伸び、曲がり、皺等による位置合わせ精度の低下を抑止するため、一般に、可撓性を有する基板をガラス基板等の剛性を有する基板に張り付けた状態で製造が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0048326号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フレキシブルな表示パネルの利用形態として車両等の他の工業製品や柱や壁などの建造物に組み込む形態があり、そのような利用においては表示パネルを輸送する必要がある。一方で、フレキシブルな表示パネルは剛性が低くそのままでは輸送に適していないが、ガラス基板等に張り付けたままでの輸送は体積や重量が粗大化する課題がある。そこで、フレキシブルな表示パネルに金属膜で補強した樹脂基板を張り付けて一体化し、フレキシブルなまま輸送に適する程度の耐久性を付与することが検討されている。しかしながら、発光素子特性を均一化するために行う高温エージング処理において、金属膜で補強した樹脂基板に気泡の発生や基板の反りが生じることが発明者らの検討により判明した。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属膜と樹脂基板の多層構造を有する表示パネルにおいて、高温エージング処理による気泡の発生や基板の反りを抑止する構造を有する表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る表示パネルの製造方法は、可撓性基板上に発光素子と第2樹脂基板とを形成して発光素子基板を形成し、第1樹脂基板上に前記発光素子基板を貼付してパネル素子を形成し、金属膜上に、前記金属膜と接触する複数の接触部を有し、前記複数の接触部の間に、前記金属膜と接しない空隙が存在する接着層を貼付し、前記接着層上に前記パネル素子を貼付してフレキシブル表示パネルを形成し、前記フレキシブル表示パネルに高温エージング処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記態様の表示パネルの製造方法によれば、第1樹脂基板から接着層を介して表示パネル外部に至るアウトガスの排出経路が存在するため、高温エージング処理において、アウトガスが第1樹脂基板に残留せず気泡の発生を抑止することができる。さらに、接着層と金属膜との間に空隙が存在するため、高温エージング処理による第1樹脂基板の収縮による応力を接着層により緩和して反りを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は、実施の態様の一形態に係る有機EL表示パネル1の模式断面図である。(b)は、実施の態様の一形態に係る第2接着層40の模式断面図である。(c)は、実施の態様の一形態に係る第2接着層40の模式平面図である。
【
図2】実施の形態の一形態に係る発光素子基板70、発光素子層80、偏光板90の模式断面図である。
【
図3】(a)は実施の形態の一形態に係る金属膜30~第1樹脂基板50部分の模式断面図であり、(b)は比較例に係る金属膜30~第1樹脂基板50部分の模式断面図である。
【
図4】(a)は実施の形態の一形態に係る有機EL表示パネル1の高温エージング処理後の応力状態を示す模式断面図であり、(b)、(c)はそれぞれ、比較例に係る表示パネルの高温エージング処理後の応力状態を示す模式断面図である。
【
図5】実施の形態の一形態に係る有機EL表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、ベース樹脂層を準備した状態、(b)は、ベース樹脂層上に金属膜が貼付された状態、(c)は、金属膜上に第2接着層が貼付された状態、(d)は、第2接着層上に第1樹脂基板が貼付された状態を示す。
【
図7】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、保持基板上に発光素子基板が形成された状態、(b)は、発光素子基板上に第1封止層が形成された状態、(c)は、第1封止層上にTFT層と層間絶縁層が形成された状態、(d)は、層間絶縁層上に画素電極が形成された状態を示す。
【
図8】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、層間絶縁層上および画素電極層上に隔壁が形成された状態、(b)は、画素電極上に第1機能層が形成された状態、(c)は、第1機能層上に発光層が形成された状態を示す。
【
図9】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、発光層上および隔壁上に第2機能層が形成された状態、(b)第2機能層上に対向電極が形成された状態、(c)は、対向電極上に第2封止層が形成された状態を示す。
【
図10】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造工程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、第2封止層上に偏光板が貼付された状態、(b)は、第1樹脂基板上に発光素子基板が貼付された状態を示す。
【
図11】実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造工程の一部である有機EL素子の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪開示の態様≫
実施の形態の一態様に係る表示パネルは、金属膜と、前記金属膜上に接着層を介して配された第1樹脂基板と、前記第1樹脂基板上に形成された複数の発光素子と、前記発光素子上に形成された第2樹脂基板とを備え、前記接着層は前記金属膜と接触する複数の接触部を有し、前記複数の接触部の間に、前記金属膜と接しない空隙が存在することを特徴とする。
【0011】
上記態様の表示パネルによれば、第1樹脂基板から接着層を介して表示パネル外部に至るアウトガスの排出経路が存在するため、高温エージング処理において、アウトガスが第1樹脂基板に残留せず気泡の発生を抑止することができる。さらに、接着層と金属膜との間に空隙が存在するため、高温エージング処理による第1樹脂基板の収縮による応力を接着層により緩和して反りを抑止することができる。
【0012】
実施の態様の一形態に係る表示パネルにおいて、前記接着層が前記第1樹脂基板と接触する面積は、複数の前記接触部が前記金属膜と接触する面積より広い、としてもよい。
【0013】
上記態様の表示パネルによれば、接着層と第1樹脂基板との接着力を高め、より堅牢な基板となる。
【0014】
実施の態様の一形態に係る表示パネルにおいて、前記接着層は、前記第1樹脂基板と接触する第1接着層と、複数の前記接触部からなる第2接着層とを備える、としてもよい。
【0015】
上記態様の表示パネルによれば、接着層を事前に成型することが容易となり、効率的に表示パネルを製造することができる。
【0016】
実施の態様の一形態に係る表示パネルにおいて、前記第2樹脂基板は、偏光板である、としてもよい。
【0017】
上記態様の表示パネルによれば、外光反射抑止等の目的で偏光板を用いた表示パネルにおいて、高温エージング処理によるパネルの反りを抑止することができる。
【0018】
実施の態様の一形態に係る表示パネルにおいて、前記第1樹脂基板の材料の吸水率は、0.1%以上である、としてもよい。
【0019】
上記態様の表示パネルによれば、吸水率が高く高温エージング処理による収縮が大きい素材を第1樹脂基板として用いた場合においても、気泡の発生の抑止と反りの抑止とを実現することができる。
【0020】
実施の態様の一形態に係る表示パネルにおいて、前記第1樹脂基板の材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である、としてもよい。
【0021】
上記態様の表示パネルによれば、吸水率が高く高温エージング処理による収縮が大きいPETを第1樹脂基板の材料として用いた場合においても、気泡の発生の抑止と反りの抑止とを実現することができる。
【0022】
実施の態様の一形態に係る表示パネルにおいて、前記第1樹脂基板と、前記第2樹脂基板とは、いずれも可撓性基板であり、前記表示パネルは、フレキシブルパネルである、としてもよい。
【0023】
上記形態の表示パネルによれば、基板の強度を向上し、かつ、気泡や反りを抑止したフレキシブルディスプレイを実現できる。
【0024】
実施の態様の一形態に係る表示パネルにおいて、前記金属膜の材料はステンレス鋼、アルミニウム、銅の1以上を含む、としてもよい。
【0025】
上記形態の表示パネルによれば、基板の強度を向上させるとともに、高温エージング処理における温度のばらつきを抑えることができる。
【0026】
実施の態様の一形態に係る表示パネルの製造方法は、可撓性基板上に発光素子と第2樹脂基板とを形成して発光素子基板を形成し、第1樹脂基板上に前記発光素子基板を貼付してパネル素子を形成し、金属膜上に、前記金属膜と接触する複数の接触部を有し、前記複数の接触部の間に、前記金属膜と接しない空隙が存在する接着層を貼付し、前記接着層上に前記パネル素子を貼付してフレキシブル表示パネルを形成し、前記フレキシブル表示パネルに高温エージング処理を行うことを特徴とする。
【0027】
上記方法によれば、高温エージング処理により第1樹脂基板の形状を安定化させるとともに、第1樹脂基板における気泡の発生や表示パネルの反りを抑止することができる。
【0028】
実施の態様の一形態に係る表示パネルの製造方法において、前記高温エージング処理は、80℃以上の温度で、2時間以上行われる、としてもよい。
【0029】
上記方法により、第1樹脂基板や接着層からのアウトガスが表示パネルの製造後に放出されるのを抑止するとともに、残留応力等を取り除いて表示パネルの形状を安定化させることができる。
【0030】
≪実施の形態≫
1.表示パネルの概略構成
本発明に係る表示パネルの一態様である有機EL表示パネルについて説明する。
【0031】
図1(a)は、実施の形態に係る有機EL表示パネル1の部分断面図である。以下、有機EL表示パネル1の各部構成について説明する。
【0032】
<ベース樹脂層10>
ベース樹脂層10は、フレキシブル基板の第1層となる可撓性の樹脂基板である。ベース樹脂層10の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができる。なお、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSu)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体を用いてもよい。ベース樹脂層10の膜厚は、例えば、250μmから500μmである。本実施の形態では、350μmとした。
【0033】
<第1接着層20>
第1接着層20は、ベース樹脂層10と後述する金属膜30とを接着させるための接着層である。第1接着層20の材料としては、公知の粘着剤を用いることができ、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマーなどを用いることができる。
【0034】
<金属膜30>
金属膜30は、フレキシブル基板の第2層となる可撓性の金属膜である。金属膜30の材料としては、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウムなどを用いることができる。金属膜30は、表示パネル1の強度を向上させる。なお、金属膜30は可撓性を有するため、膜厚は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。本実施の形態では、50μmとした。また、金属膜30はベース樹脂層10および第1樹脂基板50からのアウトガスを伝導させるための穴が設けられていてもよい。
【0035】
<第2接着層40>
第2接着層40は、金属膜30と後述する第1樹脂基板50とを接着させるための接着層である。
図1(b)は、第2接着層40の断面図である。また、
図1(c)は、第2接着層40を金属膜30側から平面視した平面模式図である。
【0036】
第2接着層40は、第1樹脂基板50側は略平面となっており、第1樹脂基板50との接触度合いは全面に亘ってほぼ均一である。一方で、第2接着層40は、金属膜30側に凹凸が存在し、矩形状の凸部40aのみが金属膜30と接触し、溝状の凹部40bは金属膜30とは接していない。すなわち、凸部40aが存在する場所においては、第2接着層40は、第1樹脂基板50と金属膜30との両方に接触しているのに対し、凹部40bが存在する場所においては、第1樹脂基板50にのみ接触し金属膜30とは接していない。これにより、第2接着層40と金属膜30との界面において、第2接着層40と金属膜30が接していない空隙が存在している。
【0037】
第2接着層40の材料としては、公知の粘着剤を用いることができ、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマーなどを用いることができる。
なお、凸部40aは必ずしも矩形状である必要はなく、六角柱や円柱など他の形状であってもよい。また、第2接着層40は単一材料で形成される必要はなく、例えば、複数の柱状の粘着層、可撓性樹脂層、べた膜の粘着層、の3層構造であってもよい。
【0038】
なお、第2接着層40と第1樹脂基板50とは全面で接触している必要がなく、第2接着層40と第1樹脂基板50との間に空隙が存在していてもよい。もっとも、第2接着層40と第1樹脂基板50との間に空隙を設ける必要性は低く、接着性を高めるために隙間は、第2接着層40と金属膜30との間より面積が狭いことが好ましい。
【0039】
<第1樹脂層>
第1樹脂基板50は、フレキシブル基板の第3層となる可撓性の樹脂基板であり、後述する発光素子基板70の保持基板である。第1樹脂基板50の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることができる。なお、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSu)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体を用いてもよい。第1樹脂基板50の膜厚は、例えば、50μmから100μmである。本実施の形態では、第1樹脂基板50の膜厚は、75μmである。
【0040】
<第3接着層>
第3接着層60は、第1樹脂基板50と発光素子基板70とを接着させるための接着層である。第3接着層60の材料としては、公知の粘着剤を用いることができ、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマーなどを用いることができる。
【0041】
<発光素子基板>
発光素子基板70は、フレキシブル基板の第4層となる可撓性の樹脂基板であり、後述する発光素子層80を直接担持する基板である。発光素子基板70の材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよく、例えば、ポリイミド(PI)を用いることができる。なお、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSu)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体を用いてもよい。発光素子基板70の膜厚は、例えば、10μmから50μmである。本実施の形態では、発光素子基板70の膜厚は20μmである。
【0042】
<発光素子層>
発光素子層80は、複数の発光素子からなる層である。より具体的には、有機EL素子が行列状に配されてなる。なお、発光素子は量子ドット発光素子など他の自発光素子でもよい。また、各発光素子の配置は行列状に限られず、例えば、平面視すると六角形である発光素子がハニカム状に配置されてもよい。詳細は後述する。
【0043】
<偏光板>
偏光板90は、発光素子から出射される光の調整や、外光の発光素子内での反射抑止のために設けられる層である。偏光板90の材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素化合物分子を吸着配向させたものを使用することができる。なお、偏光板90は、さらにトリアセチルセルロース(TAC)やPETからなる層を保護層として含んでもよい。偏光板90の膜厚は、例えば、100μmから300μmである。本実施の形態では、偏光板90の膜厚は、190μmである。
【0044】
2.発光素子の概略構成
以下、発光素子層80内の有機EL素子について説明する。
【0045】
図2は、実施の形態に係る発光素子層80の部分断面図である。発光素子層80は、例えば、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する有機EL素子で構成される画素を複数備えている。発光素子層80において、各有機EL素子は、前方(偏光板90側)に光を出射するいわゆるトップエミッション型である。
【0046】
図2に示すように、有機EL素子は発光素子基板70上に形成され、第1封止層811、TFT層812、層間絶縁層820、画素電極831、隔壁832、第1機能層833、発光層834、第2機能層835、対向電極836、封止層837、第4接着層840を備える。なお、第1封止層811、TFT層812、層間絶縁層820、第2機能層835、対向電極836、封止層837、第4接着層840は、画素ごとに形成されているのではなく、発光素子層80内の複数の有機EL素子に共通して形成されている。
【0047】
以下、有機EL素子の各部構成について説明する。
【0048】
<第1封止層>
第1封止層811は、発光素子基板70側から水や酸素などの不純物が有機EL素子内へと侵入するのを防ぎ、不純物によるこれらの層の劣化を抑制する機能を有する。第1封止層811の材料は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)を用いることができる。
【0049】
<TFT層>
TFT層812は、有機EL素子のそれぞれを駆動する回路であり、画素ごとに駆動回路が形成される。
【0050】
<層間絶縁層>
層間絶縁層820は、第1封止層811およびTFT層812上に形成される樹脂層であり、TFT層812の上面の段差を平坦化するためのものである。層間絶縁層820の材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料を用いることができる。
【0051】
<画素電極>
画素電極831は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層820上に形成されている。画素電極831は、画素ごとに設けられ、層間絶縁層820に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層812と電気的に接続されている。
【0052】
本実施形態においては、画素電極831は、陽極として機能する。
【0053】
<隔壁>
隔壁832は、画素電極831の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極831上に形成されている。隔壁832は、それぞれ四角錐台状もしくはそれに類似した形状であり、断面は上方を先細りとする順テーパーの台形状もしくは上に凸のお椀状である。画素電極831上面において隔壁832で被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブピクセルに対応している。すなわち、隔壁832は、サブピクセルごとに設けられた開口部832aを有する。隔壁832は、画素電極831が形成されていない部分では、層間絶縁層820上に形成されている。すなわち、画素電極831が形成されていない部分では、隔壁832の底面は層間絶縁層820の上面と接している。
【0054】
隔壁832は、第1機能層833、および/または発光層834を塗布法で形成する際、塗布されたインクが隣接するサブピクセルのインクと接触しないようにするための構造物として機能する。また、隔壁832は、第1機能層833、および/または発光層834を蒸着法で形成する際、蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。なお、隔壁832は、第1機能層833、発光層834の少なくとも一方を塗布法で形成する場合には、少なくとも頂部が撥液性を有していることが好ましい。
【0055】
<第1機能層>
第1機能層833は、画素電極831から発光層834へのキャリアの注入を促進させる目的で設けられる。本実施の形態では画素電極831は陽極であるため、第1機能層833は、正孔(ホール)の注入性や輸送性を備えることが好ましく、および/または、電子のブロック性を備えることが好ましい。
【0056】
<発光層>
発光層834は、開口部832a内に形成されている。発光層834は、正孔と電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層834の材料としては、公知の材料を利用することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では発光素子が有機EL素子であるため、発光層834は有機発光材料であるとしたが、発光層834として量子ドット発光効果を持つ材料を用いて、発光素子層80を量子ドット発光素子層としてもよい。
【0058】
<第2機能層>
第2機能層835は、対向電極836から発光層834へのキャリアの注入を促進させる目的で設けられる。本実施の形態では対向電極836は陰極であるため、第2機能層835は、電子の注入性や輸送性を備えることが好ましく、および/または、ホールのブロック性を備えることが好ましい。
【0059】
<対向電極>
対向電極836は、複数の画素に共通して第2機能層835上に形成されており、陰極として機能する。
【0060】
対向電極836は、透光性と導電性とを兼ね備えており、金属材料で形成された金属層、金属酸化物で形成された金属酸化物層のうち少なくとも一方を含んでいる。
【0061】
<第2封止層>
対向電極836の上には、第2封止層837が設けられている。第2封止層837は、偏光板90側から不純物(水、酸素)が有機EL素子内部へと侵入するのを防ぎ、不純物によるこれらの層の劣化を抑制する機能を有する。第2封止層837は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0062】
本実施の形態においては、有機EL素子がトップエミッション型であるため、第2封止層837は光透過性の材料で形成されることが必要となる。
【0063】
<第4接着層>
第4接着層840は、有機EL素子の第2封止層837と偏光板90とを接着させるための接着層である。第4接着層840の材料としては、公知の粘着剤を用いることができ、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマーなどを用いることができる。
【0064】
3.第2接着層の効果
以下、実施の形態に係る第2接着層の効果について、気泡発生抑止の観点と反り防止の観点の2点について、比較例と対比して説明する。
【0065】
<気泡発生抑止効果>
以下、実施の形態に係る第2接着層の構成と、べた膜としての比較例との対比により、気泡発生抑止効果について説明する。
【0066】
図3(b)は、比較例1として、第2接着層40と同じ材料からなるべた膜である全面接着層41を第2接着層40に替えて用いた比較例における、金属膜30から第1樹脂基板50までの範囲の模式断面図である。ここで、べた膜とは、略平坦な膜をいい、他の平坦な層と密着した場合であっても、その界面において、中央部から外縁を通って外部に至るアウトガスの排出経路が存在しない膜をいう。発光素子の特性を均一化するため、80℃程度の温度で熱処理を数時間行う「高温エージング処理」が行われる。しかしながら、
図3(b)に示すような比較例1の構成に対して高温エージング処理を行うと、第1樹脂基板50内や、第1樹脂基板50と第2接着層40との界面等に気泡51が多数発生し、上面の平坦性が失われる課題が発生することが判明した。
【0067】
一方、
図3(a)は、実施の形態に係る金属膜30から第1樹脂基板50までの範囲の模式断面図である。上述したように、第2接着層40は金属膜30側に凹凸が存在し、矩形状の凸部40aのみが金属膜30と接触し、溝状の凹部40bは金属膜30とは接していない。すなわち、第2接着層40と金属膜30との界面において、第2接着層40と金属膜30が接していない空隙が存在している。
図3(a)に示すような実施の形態に係る構成に対して高温エージング処理を行った場合、比較例1とは異なり、気泡51は発生しない。
【0068】
上記事象の要因としては、以下のように考えられる。
【0069】
高温エージング処理では、その前工程までに第1樹脂基板50が取り込んだ水分が、水蒸気として第1樹脂基板50から離脱する。ところが、金属膜30は水分透過性が低いため、第1樹脂基板50の水分は金属膜30側から離脱することができない。また、
図3には図示していないが、発光素子基板70の上方には防水性を有する第1封止層811が存在しているため、第1樹脂基板50の水分は発光素子基板70側から離脱することもできない。したがって、比較例1の構成の場合、第1樹脂基板50から表示パネル外部への水分離脱経路が不十分となり、第1樹脂基板50内部に残存した水分が気化等することで気泡が生じたものと考えられる。
【0070】
一方、実施の形態では、上述したように、第2接着層40は金属膜30とは接触しておらず、第2接着層40と金属膜30との界面において、第2接着層40と金属膜30が接していない空隙が存在している。したがって、第1樹脂基板50の水分が、第2接着層40を経由し、第2接着層40と金属膜30との間の空隙から表示パネル1外部に至る水分離脱経路が存在する。したがって、第2接着層40と金属膜30との界面には気泡が生じないと考えられる。
【0071】
<反り抑止効果>
以下、実施の形態に係る第2接着層の構成と、比較例との対比により、表示パネルの反り抑止効果について説明する。
【0072】
以下の表1は、金属膜30と第1樹脂基板50との間の第2接着層40、および、第1樹脂基板50と発光素子基板70との間の第3接着層60のそれぞれについて、実施の形態の構成、第2接着層40のz方向における向きを逆転させた構成、および、これらそれぞれについて第2接着層40と第3接着層60とを入れ替えた構成における、高温エージング処理後の反りの程度(大小)を示すものである。作製した表示パネルを室温で15分以上放冷し、水平な定盤上に静置し、表示パネルの中央部が定盤に接し、端部が定盤から浮くように置いた。定盤から表示パネル下面における各辺中央部分までの鉛直距離を測定し、その平均値を算出して、高温エージング処理後の反り量とした。
【0073】
【表1】
なお、表1に示す「間隙あり」とは、接着層と基板または金属膜との間に、上述した金属膜30と第2接着層40との間と同様の間隙が設けられていることを指す。また、「平坦」とは、接着層と基板または金属膜との間の隙間が存在しない、または、「間隙あり」より十分に狭いことを示す。また、表1に示す反り「小」とは、表示パネルの反りの状態が、後述する第2接着層40と同じ材料からなるべた膜である全面接着層41を第2接着層40に替えて用いた比較例1と比較して、抑制された状態をいい、「大」とは、比較例1と比較して反りが大きい状態をいう。
【0074】
表1に示すように、いずれの構成も気泡は発生しなかった。その理由は、上述したように、間隙から水分が離脱したためと考えられる。
【0075】
一方で、反り量については、実施例では比較例より小さくなった。具体的には、実施例の反りの程度は、比較例1と比較して、6割程度に抑制されていた。さらに、実施例の反りの程度は、比較例2と比較して、8割程度に抑制されていた。
この事象の要因としては、以下のように考えられる。
【0076】
図4(c)は、第2接着層40と同じ材料からなるべた膜である全面接着層41を第2接着層40に替えて用いた比較例1における、金属膜30から偏光板90までの範囲の模式断面図である。ここで、第1樹脂基板50、発光素子基板70、偏光板90はいずれも樹脂層であるから、高温エージング処理を行うと、水分の離脱によって体積が減少すると考えられる。これに対し、金属膜30は、高温エージング処理の途上では熱膨張によって体積が増加し、高温エージング処理を完了して表示パネル温度が常温に戻ると元の体積に戻ると考えられる。この体積変化の特性の差により、金属膜30側を外側、偏光板90側を内側として丸まるように反りが発生すると考えられる。
【0077】
これに対し、
図4(a)に示す実施の形態では、第2接着層40は金属膜30とは接触しておらず、第2接着層40と金属膜30との界面において、第2接着層40と金属膜30が接していない空隙が存在している。したがって、空隙の存在により、樹脂層と金属膜の体積変化の特性の差が緩和され、反りが抑止されたと考えられる。
【0078】
なお、
図3(b)に示す比較例2では、空隙と樹脂層と金属膜との位置関係が実施の形態とは異なるため、樹脂層と金属膜の体積変化の特性の差が空隙により十分に緩和することができず、反りの抑止効果が不十分であったと考えられる。
【0079】
また、上記の表1に記載の比較例3、比較例4においても、空隙と樹脂層と金属膜との位置関係が実施の形態とは異なるため、樹脂層と金属膜の体積変化の特性の差が空隙により十分に緩和することができず、反りの抑止効果が十分でなかったものと考えられる。すなわち、高温エージング処理によって生じる樹脂層と金属膜の体積変化の特性の差を緩和するように空隙が存在している必要があり、それを実現できる配置の一例が実施の形態であると考えられる。
【0080】
なお、本実施の形態では、第1樹脂基板50の素材として吸水率が0.3%である吸水性素材であるPETを用いたが反りを抑止できた。したがって、実施の形態に係る表示パネルによれば、第1樹脂層の材料として吸水率が高い素材を使用することができ、吸水率が0.1%以上の材料を用いても反りの発生を抑止することができると考えられる。
【0081】
4.まとめ
以上説明したように、実施の形態に係る表示パネルによれば、高温エージング処理を行った場合の気泡の発生および反りの発生を抑止することができる。したがって、平坦性の高い高品質な表示パネルの製造が可能となる。また、上記構成によれば、第1樹脂層の材料として吸水率が0.1%以上の材料を用いても気泡の発生および反りの発生を抑止することができる。したがって、第1樹脂層の材料の選択の範囲を広げることができ、表示パネルのフレキシブル基板として適した特性を有する材料であれば、吸水率の高い材料を用いることができる。
【0082】
5.表示パネルの製造方法
以下、実施の形態の一態様である表示パネルの製造方法として、有機EL表示パネルの製造方法について説明する。
図6から
図10は、有機EL表示パネル1の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。また、
図5は、有機EL表示パネル1の製造方法を示すフローチャートである。
【0083】
(1)ベース樹脂層10と金属膜30の貼付
まず、
図6(a)に示すように、ベース樹脂層10を準備する(ステップS10)。次に、ベース樹脂層10上に第1接着層20を形成し、第1接着層20上に金属膜30を貼付する(ステップS20、
図6(b))。なお、第1接着層20の形成は、ベース樹脂層10上に第1接着層20の材料を塗布する方法でもよいし、予めフィルム状に形成した第1接着層20を貼付してもよい。
【0084】
(2)第2接着層40の貼付
次に、
図6(c)に示すように、金属膜30上に第2接着層40を貼付する(ステップS30)。具体的には、予めフィルム状に成型した第2接着層40を金属膜30上に貼付する。
【0085】
(3)第1樹脂基板50の貼付
次に、
図6(d)に示すように、第2接着層上に第1樹脂基板50を貼付する(ステップS40)。
【0086】
(4)保持基板100上に発光素子基板70を貼付
次に、
図7(a)に示すように、保持基板100上に発光素子基板70を貼付する(ステップS50)。保持基板100は、例えば、ガラス基板などの剛体基板を用いることができる。なお、保持基板100は、後述するステップS210においてレーザー光を使用する場合には、光透過性の基板であることが好ましい。発光素子基板70の貼付は、例えば、発光素子基板70の材料をスピンコート法などにより塗布することで行うことができる。
【0087】
(5)発光素子基板70上に発光素子を形成
次に、発光素子基板70上に発光素子である有機EL素子を形成する(ステップS100)。
図11は、有機EL素子の製造方法を示すフローチャートである。
【0088】
(i)第1封止層811の形成
まず、
図7(b)に示すように、発光素子基板70上に第1封止層811を形成する(ステップS110)。第1封止層811は、例えば、CVD法またはスパッタリング法により発光素子基板70上に均一に成膜する。
【0089】
(ii)TFT層812、層間絶縁層820の形成
次に、第1封止層811上にTFT層812を形成する(ステップS120)。TFT層812の形成は、公知のTFTの製造方法により行うことができる。
【0090】
次に、TFT層812上に層間絶縁層820を形成する(
図7(c)、ステップS130)。層間絶縁層820は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
【0091】
次に、層間絶縁層820における、TFT層812のソース電極上の箇所にドライエッチングを行い、コンタクトホールを生成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の底面が露出されるように形成される。
【0092】
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層812上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
【0093】
(iii)画素電極831の形成
次に、
図7(d)に示すように、層間絶縁層812上に画素電極831を形成する(ステップS141)。画素電極831の形成は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法を用いて画素電極831の材料を層間絶縁層812上に均一に成膜した後、フォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングすることでなされる。
【0094】
(iv)隔壁832の形成
次に、
図8(a)に示すように、層間絶縁層812上の画素電極831間間隙に隔壁832を形成する(ステップS142)。隔壁832の形成は、例えば、感光性材料であるフェノール樹脂を溶媒に溶解させた溶液をスピンコート法などを用いて一様に塗布した後、パターン露光と現像によりパターニングすることでなされる。
【0095】
(v)第1機能層833の形成
次に、
図8(b)に示すように、隔壁832間の開口部832aに存在する画素電極831上に第1機能層833を形成する(ステップS143)。第1機能層833の形成は、例えば、第1機能層833の材料を含むインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出して塗布し、焼成(乾燥)を行うことでなされる。または、第1機能層833の形成は、例えば、開口部832aに対応する蒸着マスクを隔壁832上に載置し、第1機能層833の材料を真空蒸着法、PVD法、CVD法などで成膜することでなされる、としてもよい。なお、第1機能層833が多層構造である場合には、全ての層を塗布方式で成膜してもよいし、全ての層を蒸着方式で成膜してもよいし、または、一部の層を塗布方式で成膜し、残りの層を蒸着方式で成膜してもよい。
【0096】
(vi)発光層834の形成
次に、
図8(c)に示すように、隔壁832間の開口部832aに存在する第1機能層833上に発光層834を形成する(ステップS144)。発光層834の形成は、例えば、発光層834の材料を含むインクを、インクジェットヘッドのノズルから吐出して塗布し、焼成(乾燥)を行うことでなされる。または、発光層834の形成は、例えば、開口部832aに対応する蒸着マスクを隔壁832上に載置し、発光層834の材料を真空蒸着法、PVD法、CVD法などで成膜することでなされる、としてもよい。
【0097】
(vii)第2機能層835の成膜
次に、
図9(a)に示すように、発光層834および隔壁832上に、第2機能層835を形成する(ステップS145)。第2機能層835の形成は、例えば、第2機能層835の材料を真空蒸着法、PVD法、CVD法などで成膜することでなされる。
【0098】
(viii)対向電極836の成膜
次に、
図9(b)に示すように、第2機能層835上に、対向電極836を形成する(ステップS146)。対向電極836の形成は、例えば、対向電極836の材料を真空蒸着法、スパッタリング法などで成膜することでなされる。
【0099】
(ix)第2封止層837の成膜
次に、
図9(c)に示すように、対向電極836上に、第2封止層837を形成する(ステップS150)。第2封止層837の形成は、例えば、第2封止層837の材料をCVD法、スパッタリング法などで成膜することでなされる。
【0100】
(x)偏光板90の貼付
次に、
図10(a)に示すように、第2封止層837上に、第4接着層840を介して偏光板90を貼付する(ステップS160)。具体的には、例えば、第2封止層837上にディスペンサーで第4接着層840の材料を塗布し、予めシート状に成型した偏光板90を貼付する。
【0101】
以上により、有機EL素子が完成する。
【0102】
以下、
図5に戻って表示パネルの製造方法について説明を続ける。
【0103】
(6)保持基板100から発光素子基板70を剥離
次に、保持基板100から発光素子基板70を剥離し、発光素子基板70、発光素子層80、偏光板90からなる発光素子ユニット700を分離する(ステップS210)。発光素子基板70の剥離は、例えば、保持基板100がガラス基板である場合には、保持基板100の下側から保持基板100を透過して発光素子基板70の保持基板100側界面にレーザーを照射することでなされる。
【0104】
(7)第1樹脂基板50上に発光素子ユニット700を貼付
次に、
図6(d)で示すベース樹脂層10~第1樹脂基板50の積層構造に、発光素子ユニット700を貼付する(
図10(b)、ステップS220)。具体的には、第1樹脂基板50上に第3接着層60を形成し、第3接着層60上に発光素子ユニット700を貼付することでなされる。なお、第3接着層60の形成は、第1樹脂基板50上に第3接着層60の材料を塗布することでなされてもよいし、予めシート状に成型した第3接着層60を第1樹脂基板50上に貼付するとしてもよい。
【0105】
(8)高温エージング
最後に、ステップS220で形成した表示パネルを高温エージング処理する(ステップS230)。高温エージング処理は、例えば、80℃で2時間行われる。
【0106】
以上の工程を経ることにより、表示パネル1が完成する。
【0107】
以上、ステップS40の第1樹脂基板50より下の層を作成した後、引き続き、ステップS50の発光素子基板70より上の層を作成する手順で説明したが、ステップS40までの第1樹脂基板50より下の層を作成する工程と、ステップS50からステップS210までの、保持基板100から発光素子基板70を剥離する工程までを並行して作成し、ステップS220の第1樹脂基板50上に発光素子ユニット700を貼付する工程に進むこととしてもよい。
【0108】
6.補足
(1)上記実施の形態においては、発光素子基板70をベース樹脂層10、金属膜30、第1樹脂基板50の積層構造上に貼付するものとしたが、積層構造はこれに限られず、例えば、ベース樹脂層10を含まず金属膜30と第1樹脂基板50との積層構造であってもよいし、金属膜を複数含む積層構造であってもよい。
【0109】
(2)上記実施の形態においては、ベース樹脂層10と金属膜30とを接着する第1接着層20が両面ともべた膜である構成であるとしたが、第2接着層40と同様、金属膜30側に空隙が存在する構成であるとしてもよい。本構成により、ベース樹脂層10に気泡が発生することを抑止することができる。
【0110】
(3)上記実施の形態においては、発光素子層80上に偏光板90を設けるとしたが、さらに、偏光板90上にカラーフィルタ層を設けるとしてもよい。
【0111】
(4)上記実施の形態においては、表示パネル1はいわゆるフレキシブルな表示パネルであるとしたが、これに限られず、樹脂層と金属層との積層構造からなる基板を有するディスプレイであればよく、フレキシブルでない表示パネルであってもよい。
【0112】
(5)上記実施の形態においては、表示パネルの例として塗布型の有機EL表示パネルについて説明したが、表示パネルは、例えば、蒸着型の有機EL表示パネルであってもよいし、他の自発光パネルであってもよい。また、トップエミッション型に限られず、ボトムエミッション型ないし透過型の液晶表示パネルであってもよい。
【0113】
(6)以上、本開示に係る表示パネル、および、表示パネルの製造方法について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、金属膜と樹脂層との複合基板を構成要素として含む表示パネルおよびその製造方法において、樹脂層の気泡発生や基板の反りを抑止することに有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 有機EL表示パネル
10 ベース樹脂層
20 第1接着層
30 金属膜
40 第2接着層(接着層)
50 第1樹脂基板
60 第3接着層
70 発光素子基板
80 発光素子層
90 偏光板(第2樹脂基板)
100 保持基板