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特許7332159消防指令システム、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】消防指令システム、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/90 20180101AFI20230816BHJP
   H04M 3/42 20060101ALI20230816BHJP
   H04M 3/58 20060101ALI20230816BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H04W4/90
H04M3/42 Z
H04M3/58 Z
G08B25/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020020786
(22)【出願日】2020-02-10
(62)【分割の表示】P 2018218404の分割
【原出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020088869
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 悟
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144408(JP,A)
【文献】特開2014-017812(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139409(WO,A1)
【文献】川畑 正昭,消防救急無線通信システムのデジタル化推進,NEC技報,2013年,Vol.66, No.1,p.50-54,https://jpn.nec.com/techrep/journal/g13/n01/pdf/130112.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04M 3/00-11/00
G08B 21/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生した災害事案の消防救急活動を行う消防士に対する消防本部の司令員からの指令を音声情報として送信し、
前記司令員からの前記指令に関する音声情報と前記消防士からの音声情報との送受信動作を制御する消防指令制御装置と、
前記司令員と前記消防士との間で送受信される音声情報を、前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとにそれぞれ異なる消防デジタル無線の周波数を利用して消防デジタル無線通信方式により送受信する動作を制御する消防デジタル無線回線制御装置と、
を有し、
前記消防指令制御装置は、前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとにそれぞれ異なる周波数を用いて前記司令員と前記消防士との間で送受信される音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めて情報共有用音声情報として生成し、
前記情報共有用音声情報を生成する際に、前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとにそれぞれ送受信される上り方向と下り方向との双方向の音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めて上下音声情報として生成した後、前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとのそれぞれの前記上下音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めて前記情報共有用音声情報として生成し、
消防デジタル無線回線制御装置は、生成した該情報共有用音声情報を、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数を用いて、前記消防士が使用する消防デジタル無線用の無線機に対して送信する、
ことを特徴とする消防指令システム。
【請求項2】
前記情報共有用音声情報を、前記災害事案に対する消防団活動を行う地域の消防団の消防団員が使用する消防デジタル無線用の無線機に対して前記情報共有用周波数を用いて送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の消防指令システム。
【請求項3】
前記情報共有用周波数を用いて、前記災害事案に対する消防団活動を行う地域の消防団の消防団員と前記司令員との間で音声情報を送受信する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の消防指令システム。
【請求項4】
前記情報共有用音声情報を生成する際に、前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとに送受信される音声情報の全てではなく、前記司令員により指定された音声情報を選択して、選択された音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めて前記情報共有用音声情報として生成する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の消防指令システム。
【請求項5】
前記情報共有用音声情報を生成する情報共有用音声ミキシング手段を、前記消防指令制御装置内に備えている、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の消防指令システム。
【請求項6】
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとのそれぞれの前記上下音声情報を生成する上下音声情報ミキシング手段を、前記消防デジタル無線回線制御装置内に備え、
かつ、
前記上下音声情報ミキシング手段によって生成された前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとのそれぞれの前記上下音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めて前記情報共有用音声情報として生成する情報共有用音声ミキシング手段を、前記消防指令制御装置内に備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の消防指令システム。
【請求項7】
発生した災害事案の消防救急活動を行う消防士と消防本部の司令員との間で送受信される音声情報を消防デジタル無線通信方式による無線信号を用いて送受信を行い、
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとに、それぞれの前記消防士と前記司令員との間で送受信される上り方向と下り方向との双方の音声情報をミキシングして一つの音声情報を纏めて上下音声情報として生成する上下音声ミキシング回路を有し、
前記上下音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めた情報共有用音声情報を、消防指令制御装置から受信し、前記情報共有用音声情報を、事前に定めた無線周波数を用いて、基地局無線装置へ送出する、
ことを特徴とする消防デジタル無線回線制御装置。
【請求項8】
コンピュータによって各ステップの処理を実行し、
災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとにそれぞれ異なる周波数を割り当てて使用することを決定するステップと、
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとにそれぞれ送受信される上り方向と下り方向との双方向の音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めて上下音声情報として生成するステップと、
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとのそれぞれの前記上下音声情報をミキシングして一つの音声情報に纏めて情報共有用音声情報として生成するステップと、
生成した該情報共有用音声情報を、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数を用いて、消防士が使用する消防デジタル無線用の無線機に対して送信するステップと、
を有していることを特徴とする消防指令送信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防指令システム、消防指令制御装置、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラムに関し、特に、消防デジタル無線回線制御装置を有する消防指令システムにおいて、広域大規模災害発生時の多人数による災害支援活動に関する情報共有を効率的に行う消防指令システム、消防指令制御装置、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
消防本部は、消防救急に関する緊急事態が発生すると、災害事案として受け付け、該災害事案に関る諸情報を災害事案データとして記録するとともに、該災害事案に対応するための指令情報を当該災害事案に取り組む各消防署や各消防士に対して発出して消防救急活動を行っている。そして、この消防救急活動のさらなる高度化や通信の秘匿性の向上を図るために、近年、消防デジタル無線通信方式への移行が鋭意進められている。この消防デジタル無線通信方式では、消防本部の指令台から各災害地点で活動する消防士に対して司令等の情報を送信する消防救急無線方式として、260MHz帯を使用した無線SCPC(Single Channel Per Carrier)方式を基本として採用している。
【0003】
一方、緊急事態に対する各種の消防救急支援活動を行う地域の消防団に属する消防団員は、該緊急事態に対応中の消防本部との間で携帯電話等により連絡を取り合って、消防本部からの出動指示が届く前に出動のための準備をしたり、災害事案に対する消防救急活動中の状況に関する情報を取得したりしている。
【0004】
また、近年、デジタル無線通信方式を用いた消防指令システムに関して、例えば、特許文献1の特開2010-232965号公報「消防緊急無線システム、基地局装置および消防緊急情報送信方法」や特許文献2の特許第5469152号公報「消防指令システムおよび応援出動方法」等の、各種の具体的な実現方法が活発に提案され、実用化が進んでいる。
【0005】
前記特許文献1に記載の技術は、基地局装置の構成に関する技術を提案していて、災害事案に対応する消防士の消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間で、送受信する音声信号用の無線チャネルを、最適なものに自動的に切り替える仕組みを提案している。而して、該災害事案に関する緊急情報を迅速に送受信することを可能にしている。
【0006】
また、前記特許文献2は、緊急車両の選定・出動に関する技術を提案している。この技術では、消防応援協定を締結した消防本部間で共有するサーバを備える。そして、該サーバは、緊急事案の種別、災害発生地点に応じた緊急車両の選別を行う機能を有する構成としている。而して、緊急車両の選定と出動とを迅速に行うことを可能にしている。
【0007】
また、消防救急活動を指令するための消防指令システムとして、消防デジタル無線通信方式を採用した場合の現状のシステム構成の概要は、図15に示すような構成になっている。図15は、現状の技術における消防指令システムのシステム構成の概要を示すシステム構成図であり、該消防指令システムにおける運用上の課題についても合わせて説明している。図15に示す構成全体を消防指令システム100Aとする。
【0008】
図15に示すように、現状の技術における消防指令システム100Aは、消防指令制御装置10と消防デジタル無線回線制御装置20とを有して構成されている。消防救急活動に関する指令等の情報のやり取りを制御する消防指令制御装置10には、指令台30や消防デジタル無線回線制御装置20等が有線接続される。一方、消防デジタル無線通信方式による無線信号の送受信動作の制御を行う消防デジタル無線回線制御装置20には、各地に配置されている基地局無線装置40が無線接続される。以下の説明においては、基地局無線装置40は、災害地点の近傍に配置されている基地局無線装置として説明している。
【0009】
消防指令制御装置10は、消防指令システム100Aを構成する装置の一つであり、指令台回線・緊急通報用回線・指令回線・消防無線回線等の各種回線を収容し、収容する各回線に対して回線交換を実現する構内交換機の一種である。また、指令台回線を介して消防指令制御装置10に接続される指令台30とは、緊急通報(119番通報)の受付、消防無線回線への指令に関する音声情報の送信および消防無線回線からの音声情報の受信を行うための端末である。
【0010】
また、消防デジタル無線回線制御装置20は、消防指令システム100Aを構成する装置の一つであるが、消防指令制御装置10と基地局無線装置40との間の回線交換を実現する構内交換機の一種である。そして、消防無線回線からの音声情報を、消防指令制御装置10により指定された基地局無線装置40に対して指定された周波数で送信し、基地局無線装置40からの音声情報を消防指令制御装置10に消防無線回線を介して送信する。また、基地局無線装置40は、近傍に位置する消防士の消防デジタル無線送受信端末(無線機すなわち移動局)との間で無線通信を行う機能を有している。
【0011】
なお、消防デジタル無線回線制御装置20は、災害事案ごとに異なる消防デジタル無線の周波数を用いて消防救急に関する音声情報を送受信するために、消防無線回線として、消防指令制御装置10との間に複数本接続している。該消防無線回線は、各災害事案に関する音声情報を消防指令制御装置10と基地局無線装置40との間で送受信する消防無線回線(上り、下り)である。消防無線回線(上り)は、主に、消防本部の司令員の指令台から消防士の消防デジタル無線送受信端末(無線機)へ通信を行う場合に使用される回線である。また、消防無線回線(下り)は、逆に、消防士の消防デジタル無線送受信端末(無線機)から消防本部の司令員の指令台へ向かう通信を行う場合に使用される回線である。ここで、同一災害事案であっても、災害地点ごとに異なる消防無線回線(すなわち災害地点に応じて消防デジタル無線の周波数として異なる周波数の情報を扱う回線)を用いることも可能である。図15に示す例においては、消防無線回線として、同一災害事案の災害地点の発生数に対応して2つの消防デジタル無線の周波数を用いる情報の送受信用として、第1消防無線回線1a、第2消防無線回線1bを接続している。
【0012】
ここで、各消防士が乗車する緊急車両や該消防士が在席する各消防署内に設置された消防デジタル無線送受信端末(無線機)は、同時に送受信することが可能な消防デジタル無線の周波数の個数が1波のみに限られているので、消防デジタル無線回線制御装置20は、或る基地局無線装置40との間で、同時に設定することができる周波数として一つの周波数に限られる。したがって、図15に示すように、同一の災害事案に関する消防無線回線として第1消防無線回線1aと第2消防無線回線1bとの2個の消防無線回線が設定されていたとしても、同時には、消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間で2個の消防無線回線の情報を送受信することができず、いずれか一方の消防無線回線例えば第1消防無線回線1aに絞り込むことが必要である。
【0013】
このため、消防デジタル無線回線制御装置20は、絞り込んだいずれか一方の消防無線回線例えば第1消防無線回線1aに関する情報を指定された消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間で送受信することになる。したがって、他方の無線回線例えば第2消防無線回線1bに関する情報の消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間の送受信は後回しになってしまう。その結果、該他方の消防無線回線例えば第2消防無線回線1bに関する情報の伝送が遅くなってしまう。
【0014】
さらに、地域の消防団活動を行う消防団に関し、例えば、広域大規模災害の場合のように複数の災害地点において災害が発生した場合、複数の災害地点それぞれにおいて消防救急支援活動を行っている消防団員と消防本部の司令員との間の通話は、図16の模式図に示すように、消防無線用の無線回線を用いるのではなく、携帯電話網を経由した携帯電話の無線を用いることになる。したがって、消防団員と司令員との携帯端末に関する通話回線を人手によって設定することが必要になり、十分な消防団活動を行うことが難しくなる。
【0015】
図16は、現状の技術における消消防救急活動に関する情報展開方法の問題点を説明するための模式図である。図16に示すように、広域大規模災害に関する災害事案aの各災害地点すなわち第1災害地点、第2災害地点、第3災害地点それぞれにおいて消防救急活動を実施している消防士は、第1消防無線波、第2消防無線波、第3消防無線波それぞれを活動波として用いて、消防本部(消防署)の司令員との間の通話は行うことができる。しかし、それぞれの災害地点において消防救急活動を実施している消防士は、他の災害地点の様子を把握することができず、他の災害地点の消防士との連携を取ることが難しい。さらに、本災害事案aに関連して消防団活動を行っている消防団員は、消防本部(消防署)の司令員と連絡を取り合おうとすると、携帯電話の手動操作により、携帯電話網を介して発信することが必要になり、迅速な連絡手段にはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開2010-232965号公報
【文献】特許第5469152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上に説明したように、本発明に関連する現状の技術における解決するべき課題は、次の点にある。
【0018】
第1の課題は、現状の消防デジタル無線通信方式の運用方法においては、広域大規模災害発生の場合のように、複数の災害地点が同時に存在し、各災害現場活動者すなわち各消防士の間の災害情報の共有を円滑に行うことができないということである。
【0019】
その理由は、現状の消防デジタル無線通信方式の運用方法として、広域大規模災害発生の場合のように、複数の災害地点が同時に存在している場合には、複数の消防デジタル無線の周波数を利用して、各災害現場活動者それぞれと司令員との間の情報共有を実施しようとしていることにある。つまり、各災害現場活動者は、それぞれ、0~1台の消防デジタル無線送受信端末(無線機)を所持しているものの、該消防デジタル無線送受信端末(無線機)は、同時には、1波の消防デジタル無線の周波数しか情報を送受信することができず、複数の周波数からは同時には情報の送受信ができない。したがって、各災害現場活動者それぞれと司令員との間の情報共有は可能であるものの、他の災害地点で活動中の消防士間同士の間ではそれぞれの情報の迅速な取得が困難である。
【0020】
第2の課題は、地域の消防団と消防本部(消防署)との間の情報共有を円滑に行うことができないことである。
【0021】
その理由は、地域の消防団と消防本部(消防署)との間の情報伝達・連携の手段として、消防デジタル無線用の周波数を用いることができなく、携帯電話による通話を利用せざるを得ないことにある。
【0022】
第3の課題は、広域大規模災害発生の場合のように、複数の災害地点が同時に存在する場合の災害活動においても、あらかじめ決められた一定数以上の消防デジタル無線用の周波数しか割り当てることができないことである。
【0023】
その理由は、消防デジタル無線通信方式に利用可能な周波数は、各消防本部への周波数の割り当て可能な範囲が狭く、各消防本部で限られた周波数帯しか使用することができないことにある。つまり、複数の災害地点が同時に存在する場合において各災害地点の消防救急活動を行う消防士や消防団員それぞれとの連携を図るための通信用として、消防デジタル無線用の周波数を多数割り当ててしまうと、他の災害事案に関する消防救急活動に支障が生じてしまう。
【0024】
(本開示の目的)
本開示の目的は、以上のような課題に鑑み、たとえ、複数の災害地点に同時に災害が発生した場合であっても、各災害地点において消防救急活動を行っている消防士同士の情報共有を可能にし、かつ、消防団活動を行う消防団員との間の情報共有も可能にする消防指令システム、消防指令制御装置、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前述の課題を解決するため、本発明による消防指令システム、消防指令制御装置、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0026】
(1)本発明による消防指令システムは、
発生した災害事案の消防救急活動を行う消防士に対する消防本部の司令員からの指令を音声情報として送信し、
前記司令員からの前記指令に関する音声情報と前記消防士からの音声情報との送受信動作を制御する消防指令制御装置と、
前記司令員と前記消防士との間で送受信される音声情報を、前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する災害地点ごとにそれぞれ異なる消防デジタル無線の周波数を利用して消防デジタル無線通信方式により送受信する動作を制御する消防デジタル無線回線制御装置と、
を有し、
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとにそれぞれ異なる周波数を用いて前記司令員と前記消防士との間で送受信される音声情報の全てをミキシングして一つの音声情報に纏めて情報共有用音声情報として生成し、生成した該情報共有用音声情報を、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数を用いて、前記消防士が使用する消防デジタル無線用の無線機に対して送信する、
ことを特徴とする。
【0027】
(2)本発明による消防指令制御装置は、
発生した災害事案の消防救急活動を行う消防士と消防本部の司令員との間で消防デジタル無線通信方式により送受信される音声情報の送受信動作を制御し、
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとにそれぞれ異なる周波数を用いて前記消防士と前記司令員との間で送受信される音声情報の全てをミキシングして一つの音声情報に纏めて情報共有用音声情報として生成する情報共有用音声ミキシング回路、
を有することを特徴とする。
【0028】
(3)本発明による消防デジタル無線回線制御装置は、
発生した災害事案の消防救急活動を行う消防士と消防本部の司令員との間で送受信される音声情報を消防デジタル無線通信方式による無線信号を用いて送受信を行い、
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとに、それぞれの前記消防士と前記司令員との間で送受信される上り方向と下り方向との双方の音声情報をミキシングして一つの音声情報を纏めて上下音声情報として生成する上下音声ミキシング回路、
を有することを特徴とする。
【0029】
(4)本発明による消防指令送信プログラムは、
コンピュータによって各ステップの処理を実行し、
災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとにそれぞれ異なる周波数を割り当てて使用することを決定するステップと、
前記災害事案ごとまたは同一の前記災害事案に関する前記災害地点ごとにそれぞれ異なる周波数を用いて消防救急活動を行う消防士と消防本部の司令員との間で消防デジタル無線通信方式により送受信される音声情報の全てをミキシングして一つの音声情報に纏めて情報共有用音声情報として生成するステップと、
生成した該情報共有用音声情報を、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数を用いて、前記消防士が使用する消防デジタル無線用の無線機に対して送信するステップと、
を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明の消防指令システム、消防指令制御装置、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラムによれば、主に、以下のような効果を奏することができる。
【0031】
第1の効果は、広域大規模災害発生の場合のように、複数の災害地点が同時に存在している場合であっても、複数の災害地点それぞれにおいて消防救急活動中の災害現場活動者(消防士)それぞれの間で、それぞれの災害情報を円滑に共有することができることにある。
【0032】
その理由は、各災害地点ごとに割り当てられている複数の消防デジタル無線の周波数それぞれを利用して各災害現場活動者(消防士)と司令員との間で送受信している音声情報を全て纏めた情報共有用音声情報を生成する仕組みを有しているからである。そして、生成した情報共有用音声情報を消防デジタル無線の情報共有用周波数としてあらかじめ定めた無線周波数を用いて、各災害現場活動者(消防士)が使用している消防デジタル無線送受信端末(無線機)に対して送出する仕組みを有しているからである。各災害現場活動者(消防士)は、使用している消防デジタル無線送受信端末(無線機)の周波数を該情報共有用周波数に合わせることにより、各災害地点それぞれにおいて災害現場活動者(消防士)と司令員との間で送受信されている全ての音声情報を一挙に取得することが可能であり、他の災害現場活動者(消防士)との間の情報共有を図ることができる。
【0033】
第2の効果は、地域の消防団の消防団員と消防本部の司令員および各災害地点の消防士との間の情報共有を円滑に行う仕組みを提供できることにある。
【0034】
その理由は、地域の消防団の消防団員と消防本部の司令員および各災害地点の消防士との間の情報伝達・連携の手段として、前述した消防デジタル無線の情報共有用周波数を利用することが可能になるからである。
【0035】
第3の効果は、広域大規模災害発生の場合のように、複数の災害地点が同時に存在している場合であっても、限られた無線リソースを最適に利用して、複数の災害地点それぞれにおいて消防救急活動中の情報の共有を図ることが可能になることにある。
【0036】
その理由は、前述した消防デジタル無線の情報共有用周波数を適切に利用可能な個数として設定した任意数使用することにより、各災害地点に対して複数の周波数を仮想的に割り当てることが可能となる仕組みを有しているからである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係る消防指令システムのシステム構成の概要の一例を示すシステム構成図である。
図2】本発明に係る消防指令システムにおける消防救急活動に関する情報展開方法の一例を説明するための模式図である。
図3】本発明に係る消防指令システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
図4】本発明の一実施形態として図3に示した消防指令システムの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図5図4に示すフローチャートの動作の前提となる消防指令システムの通信回線の使用状況を示す模式図である。
図6図4に示すフローチャートのステップS1における消防指令システムの通信回線の使用状況を示す模式図である。
図7図4に示すフローチャートのステップS2における消防指令システムの通信回線の使用状況を示す模式図である。
図8図4に示すフローチャートのステップS3における消防指令システムの通信回線の使用状況を示す模式図である。
図9図4に示すフローチャートのステップS4における消防指令システムの通信回線の使用状況を示す模式図である。
図10図4に示すフローチャートのステップS5における消防指令システムの通信回線の使用状況を示す模式図である。
図11図4に示すフローチャートのステップS6における消防指令システムの通信回線の使用状況を示す模式図である。
図12】現状の消防救急活動における情報展開上の問題点を解決するに当たり想定される第1の解決手段を説明するための説明図である。
図13】現状の消防救急活動における情報展開上の問題点を解決するに当たり想定される第2の解決手段を説明するための説明図である。
図14】現状の消防救急活動における情報展開上の問題点を解決するために本実施形態において実施した解決手段の一例を説明するための説明図である。
図15】現状の技術における消防指令システムのシステム構成の概要を示すシステム構成図である。
図16】現状の技術における消消防救急活動に関する情報展開方法の問題点を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明による消防指令システム、消防指令制御装置、消防デジタル無線回線制御装置および消防指令送信プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことは言うまでもない。
【0039】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、消防デジタル無線回線制御装置を有する消防指令システムにおいて、各災害事案ごとの消防デジタル無線の利用方法を工夫して、限られた無線リソースの範囲内において任意数の無線周波数を割り当てるとともに、各災害事案または同一災害事案の複数の災害地点それぞれにおいて消防救急活動中の消防士それぞれの間で情報を共有することを可能にすることを主要な特徴としている。
【0040】
特に、広域大規模災害発生の場合の災害事案のように、複数の災害地点が同時に存在している場合であっても、限られた無線リソースの範囲内で、各災害地点において消防救急活動中の消防士間の情報共有を効果的に行うことを主要な特徴としている。さらには、限られた無線リソースの範囲内で、各災害地点において消防救急支援活動中の消防団員と消防士・司令員との間の情報共有を効果的に行うことも主要な特徴としている。而して、無線資源の利用の効率化により、複数の災害事案が同時に発生しても、無線周波数が枯渇することを回避することができ、各災害事案における消防救急活動者(消防士、司令員、消防団員)間の情報共有化を図ることができる。
【0041】
本発明の特徴について、図1を用いてさらに具体的に説明する。図1は、本発明に係る消防指令システムのシステム構成の概要の一例を示すシステム構成図であり、図15に示した現状の消防指令システムにおける運用上の課題を解決する技術について説明している。
【0042】
図1に示す本発明に係る消防指令システム100も、図15に示す現状の技術における消防指令システム100Aと同様、消防指令制御装置10と消防デジタル無線回線制御装置20とを有している。消防指令制御装置10は、消防本部の司令員からの指令に関する音声情報と災害地点の消防士からの音声情報との送受信動作を制御する。また、消防デジタル無線回線制御装置20は、消防本部の司令員と災害地点の消防士との間で送受信される音声情報を、災害事案ごとまたは同一の災害事案に関する災害地点ごとにそれぞれ異なる消防デジタル無線の周波数を利用して消防デジタル無線通信方式により送受信する動作を制御する。なお、消防指令制御装置10には、指令台30等が有線接続され、消防デジタル無線回線制御装置20には、災害地点の基地局無線装置40が無線接続される。
【0043】
消防指令制御装置10と消防デジタル無線回線制御装置20とは、図15に示す現状の技術における消防指令システム100Aと同様、消防指令システム100を構成する装置の一つである。また、指令台回線を介して消防指令制御装置10に接続される指令台30も、図15に示す現状の技術における消防指令システム100Aと同様、緊急通報(119番通報)の受付、消防無線回線への指令に関する音声情報の送信および消防無線回線からの音声情報の受信を行うための端末である。また、基地局無線装置40も、図15に示す現状の技術における消防指令システム100Aと同様、消防デジタル無線送受信端末(無線機すなわち移動局)との間で無線通信を行う機能を有している。
【0044】
しかし、図1に示す本発明に係る消防指令システム100においては、消防デジタル無線回線制御装置20と消防指令制御装置10との間を接続する回線構成が、図15に示す現状の技術における消防指令システム100Aの場合とは異なっている。すなわち、消防デジタル無線回線制御装置20は、消防デジタル無線回線制御装置20との間で音声情報を送受信する回線として、図15に示す現状の技術における消防指令システム100Aの場合と同様の回線、すなわち、司令員と災害事案で活動中の消防士との間で音声情報を送受信する消防無線回線(上り、下り)のみを接続しているだけではない。その他に、消防デジタル無線回線制御装置20は、消防デジタル無線回線制御装置20との間で音声情報を送受信する回線として、同一災害事案に関する各災害地点ごとの上下方向の音声情報を纏めて一方向のみに送信する消防無線交信音声引込用回線(下り)、同一災害事案に関する各災害地点の音声情報を共有するために全ての音声情報を纏めて送受信する情報共有用消防無線回線(上り、下り)をさらに接続している。
【0045】
前述したように、消防無線回線(上り、下り)に関しては、図15の場合と同様、主に、消防本部の司令員が使用する指令台と消防救急活動中の消防士が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間の音声情報を送受信する場合に使用される回線であり、災害事案ごとに、消防デジタル無線の異なる周波数が割り当てられる。ただし、同一災害事案であっても、災害地点ごとに異なる周波数が割り当てる場合もある。図1に示す例においては、図15の場合と同様、消防無線回線として、同一災害事案の災害地点に対応して第1消防無線回線1a、第2消防無線回線1bを接続している場合を示している。
【0046】
また、消防無線交信音声引込用回線(下り)は、消防デジタル無線回線制御装置20から消防指令制御装置10に向かって一方向に音声情報を送出する機能を有している回線である。そして、消防無線交信音声引込用回線(下り)は、同一の周波数が割り当てられている同一災害事案ごとにまたは同一災害事案の災害地点ごとに、上り方向の音声信号と下り方向の音声情報とを交信音声情報として一つの音声情報に纏めて、消防指令制御装置10に向かって送出する回線である。
【0047】
図1に示す例においては、消防無線交信音声引込用回線として、第1消防無線交信音声引込用回線2a、第2消防無線交信音声引込用回線2bを接続している。第1消防無線交信音声引込用回線2aには、消防デジタル無線回線制御装置20において第1消防無線回線1aの上り方向と下り方向との音声情報が一つに纏められて消防指令制御装置10に向かって送出され、第2消防無線交信音声引込用回線2bには、消防デジタル無線回線制御装置20において第2消防無線回線1bの上り方向と下り方向との音声情報が一つに纏められて消防指令制御装置10に向かって送出される。
【0048】
なお、消防デジタル無線回線制御装置20は、図1には示していないが、消防指令制御装置10との間で消防無線回線を介して送受信される消防デジタル無線の各周波数における上り方向/下り方向の音声情報をそれぞれの周波数ごとにミキシングして、上り方向/下り方向の音声情報をあたかも一つの音声情報のように扱えるようにする上下音声ミキシング回路を有している。以降、ミキシング後の音声情報のことを‘交信音声情報’と称する。
【0049】
すなわち、第1消防無線回線1aの上り方向と下り方向との音声情報をミキシングして、第1交信音声情報を生成し、第2消防無線回線1bの上り方向と下り方向との音声情報をミキシングして、第2交信音声情報を生成する。しかる後、消防デジタル無線回線制御装置20は、図1に示すように、生成した第1交信音声情報を、第1消防無線交信音声引込用回線2aを介して消防指令制御装置10へ送出し、生成した第2交信音声情報を、第2消防無線交信音声引込用回線2bを介して消防指令制御装置10へ送出する。
【0050】
また、情報共有用消防無線回線(上り、下り)は、消防無線回線が有する機能と同様、主に、消防本部の司令員が使用する指令台と消防救急活動中の消防士が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間の音声情報を送受信する場合に使用される回線である。しかし、情報共有用消防無線回線(上り、下り)は、さらに、情報共有用として、同一災害事案に関する全ての消防無線回線に流れている音声情報を一つに纏めて送受信することも可能な回線である。つまり、情報共有用消防無線回線(上り、下り)は、消防無線回線とは異なり、同一災害事案に関する全ての消防無線回線に流れている音声情報を情報共有用音声情報として一つ音声情報に纏めて、消防デジタル無線回線制御装置20と消防指令制御装置10との間を送受信することが可能な回線である。なお、情報共有用消防無線回線(上り、下り)は、情報共有用音声情報を送信する送信先となる災害地点の数、消防デジタル無線送受信端末(無線機)の個数や災害事案、災害種別、災害地点等を勘案して、任意の個数、あらかじめ用意すれば良い。
【0051】
図1に示す例においては、情報共有用消防無線回線として、第1情報共有用消防無線回線3aを1個だけ接続している。そして、消防指令制御装置10において第1消防無線交信音声引込用回線2aを介して受け取った交信音声情報と第2消防無線交信音声引込用回線2bを介して受け取った交信音声情報とを、同一災害事案に関する全ての音声情報として一つに纏め、情報共有用音声情報として、第1情報共有用消防無線回線3aの上り回線を使って、消防デジタル無線回線制御装置20に送出している。
【0052】
消防デジタル無線回線制御装置20は、受け取った情報共有用音声情報を、消防デジタル無線の周波数のうち第1情報共有用消防無線回線3a用の情報共有用周波数としてあらかじめ定めた周波数を用いて、当該災害事案に対応している各消防士の消防デジタル無線送受信端末(無線機)に対して基地局無線装置40を介して送信する。したがって、各消防士が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)を、該情報共有用周波数に合わせることにより、当該災害事案に関する全ての音声情報すなわち第1消防無線回線1aに関する交信音声情報および第2消防無線回線1bに関する交信音声情報を、纏めて聴取することができる。
【0053】
而して、広域大規模災害のように複数の災害地点で災害が同時に発生しても、無線周波数が枯渇してしまうことなく、各基地局無線装置40は、同一災害事案の全ての災害地点において消防救急活動用として送受信される上り方向および下り方向の音声情報を纏めて受信することができ、同一災害事案に対応する各消防救急活動者(消防士)の間の情報共有化を図ることができる。
【0054】
なお、情報共有用消防無線回線の上り回線は、当該災害事案に対応する消防士だけでなく、当該災害事案に対する消防救急支援活動を行う地域の消防団員においても情報共有を可能にするために、該地域の消防団員が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)に対して当該災害事案に関する情報共有用音声情報を送信するために利用することもできる。
【0055】
さらに、地域の消防団員は、消防デジタル無線の情報共有用周波数を用いて、情報共有用消防無線回線の上り回線と下り回線とを利用することにより、消防本部の司令員との間で、消防救急支援活動に関する情報をやり取りすることも可能である。
【0056】
而して、地域の消防団員は、消防デジタル無線用の消防デジタル無線送受信端末(無線機)を用いて、各災害地点の消防士と司令員との間でやり取りされる全ての音声情報を容易かつ迅速に聴取することが可能になり、かつ、司令員との間で消防救急支援活動に関する情報交換も迅速に行うことができる。
【0057】
図2は、本発明に係る消防指令システムにおける消防救急活動に関する情報展開方法の一例を説明するための模式図である。図2に示すように、本発明に係る消防指令システムにおいては、広域大規模災害の災害事案aに関する各災害地点における消防士と消防本部(消防署)の司令員との通話情報(会話音声)のミキシングを行って、全ての通話情報を一つに纏めた情報共有用音声情報を生成している。
【0058】
図2において、例えば、第2災害地点の消防士が、他の災害地点の様子を把握するために、該消防士が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)の周波数を、司令員との通話用に用いている第2消防無線回線用の周波数(第2消防無線波)の代わりに、情報共有用無線回線用の周波数(情報共有用消防無線波)に切り替えると、情報共有用音声情報を聴取することができ、他の災害地点に関する音声情報を取得することが可能になる。
【0059】
さらに、本災害事案aに関連して消防団活動を行っている地域の消防団員が、各災害地点における消防士の活動状況を把握したい場合には、当該地域の消防団員が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)の周波数を、情報共有用無線回線用の周波数(情報共有用消防無線波)に合わせると、情報共有用音声情報を聴取することにより可能になる。また、消防団員が消防本部(消防署)の司令員と消防救急支援活動に関する連絡を取り合いたい場合には、当該地域の消防団員が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)の周波数を、情報共有用無線回線用の周波数(情報共有用消防無線波)に設定することにより、司令員と簡単に連絡を取り合うことができる。
【0060】
(本発明の実施形態の構成例)
次に、本発明に係る消防指令システムのシステム構成についてその一例を、図3を参照しながら詳細に説明する。図3は、本発明に係る消防指令システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。図3に構成を示すシステム全体を消防指令システム100とする。図3に示すように、消防指令システム100は、消防指令制御装置10と消防デジタル無線回線制御装置20との間を、1ないし複数の消防無線回線と1ないし複数の消防無線交信音声引込用回線と1ないし複数の情報共有用消防無線回線とによって接続されている。
【0061】
なお、図3には示していないが、消防指令制御装置10は、消防本部の指令員が操作する指令台等の消防デジタル無線送受信端末と指令台回線を介して有線接続している。また、消防デジタル無線回線制御装置20には、各地に配置されている基地局無線装置が無線接続される。ここで、基地局無線装置は、各災害事案の災害地点の近傍にも配置されている。そして、消防デジタル無線回線制御装置20は、基地局無線装置を介して、各災害事案の災害地点において消防救急活動中の消防士が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間を無線接続する。
【0062】
複数の消防無線回線は、各災害事案ごとにまたは同一災害事案の災害地点ごとに異なる消防デジタル無線用の周波数が割り当てられる回線であり、図3に示すように、例えば、第1消防無線回線1a、第2消防無線回線1b、…の回線のように1ないし複数の回線からなっている。そして、1ないし複数の消防無線回線は、消防本部において各災害事案の消防指令業務を担務する指令員が使用する端末機と各災害事案の各災害地点にて消防救急活動中の消防士が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間の通話音声情報を送受信するために、消防指令制御装置10と消防デジタル無線回線制御装置20との間を接続している。
【0063】
なお、図3に示すように、消防デジタル無線回線制御装置20は、内部に、上下音声ミキシング回路21を有している。上下音声ミキシング回路21は、消防指令制御装置10との間で各消防無線回線を介して送受信される災害事案ごとまたは同一災害事案の災害地点ごとの消防デジタル無線の各周波数における上り音声情報および下り音声情報を、それぞれの周波数ごとにミキシングし、上り音声情報および下り音声情報をあたかも一つの音声情報のように扱えるように纏める。ミキシング後の音声情報のことを‘交信音声情報’と称する。例えば、上下音声ミキシング回路21は、第1消防無線回線1aの上り方向および下り方向の音声情報をミキシングして、第1交信音声情報を生成し、また、第2消防無線回線1bの上り方向および下り方向の音声情報をミキシングして、第2交信音声情報を生成する。
【0064】
しかる後、消防デジタル無線回線制御装置20は、図3に示すように、それぞれの消防デジタル無線用の周波数ごとに生成した交信音声情報を、1ないし複数の消防無線交信音声引込用回線のうち、それぞれの災害事案または同一災害事案の災害地点ごとに用いている消防デジタル無線用の周波数に対応する消防無線交信音声引込用回線を介して、消防指令制御装置10へ送出する。例えば、第1交信音声情報は、第1消防無線回線1aの消防デジタル無線の周波数に対応する第1消防無線交信音声引込用回線2aを介して消防指令制御装置10へ送出し、第2交信音声情報は、第2消防無線回線1bの消防デジタル無線の周波数に対応する第2消防無線交信音声引込用回線2bを介して消防指令制御装置10へ送出する。
【0065】
消防指令制御装置10は、内部に、情報共有用音声ミキシング回路11を有している。情報共有用音声ミキシング回路11は、消防デジタル無線回線制御装置20から1ないし複数の消防無線交信音声引込用回線それぞれを経由して送出されてくる任意数の交信音声情報の全てをミキシングして一つの音声情報に纏めて情報共有用音声情報として生成する。例えば、第1消防無線交信音声引込用回線2aを介して送出されてくる第1交信音声情報、第2消防無線交信音声引込用回線2bを介して送出されてくる第2交信音声情報をはじめ全ての交信音声情報をミキシングして、一つの音声情報に纏めて、情報を共有することが可能な情報共有用音声情報として生成する。
【0066】
しかる後、消防指令制御装置10は、情報共有用音声ミキシング回路11において生成した情報共有用音声情報を、複数の消防デジタル無線の周波数のうち、あらかじめ定めた任意数の周波数に対応する個数の情報共有用消防無線回線を介して消防デジタル無線回線制御装置20へ送出する。ここで、複数の消防デジタル無線の周波数のうち、あらかじめ定めた任意数の周波数とは、同じ時点で発生している災害事案や災害地点、災害種別、また、消防救急活動中の消防士が使用する無線機、さらには、消防救急支援活動を行う地域の消防団の消防団員が使用する無線機等に応じて決められる個数の周波数である。
【0067】
図3において、例えば、第1交信音声情報と第2交信音声情報とが同一災害事案例えば災害事案aに関する情報であった場合には、情報共有用音声ミキシング回路11において生成した情報共有用音声情報を、複数の情報共有用消防無線回線のうち、該災害事案aに関する情報共有用周波数としてあらかじめ定めた周波数を扱う第1情報共有用消防無線回線3aを経由して消防デジタル無線回線制御装置20へ送出する。
【0068】
そして、消防デジタル無線回線制御装置20は、任意数の情報共有用消防無線回線それぞれを介して消防指令制御装置10から送出されてくる情報共有用音声情報を、消防デジタル無線用の情報共有用周波数として事前に定めた無線周波数を用いて、宛先に該当する無線機が帰属している各基地局無線装置へ送出する。
【0069】
その結果、宛先に該当する無線機が帰属している各基地局無線装置は、消防デジタル無線回線制御装置20から情報共有用周波数を用いて送出されてくる情報共有用音声情報を受け取って、該当する情報共有用周波数を用いて、帰属している各無線機に対して送信することができる。而して、複数の災害事案または同一災害事案に関する複数の災害地点が同時に存在していても、消防デジタル無線用の無線周波数が枯渇してしまうがことなく、消防救急活動中の各消防士および各消防団員は、全ての災害事案または同一災害事案に関する全ての災害地点に関して送受信されている上り方向および下り方向の音声情報を纏めて受信することができ、各災害事案における消防救急活動者の情報共有化を図ることができる。
【0070】
また、図3には図示していないが、情報共有用音声ミキシング回路11の入力側に接続される1ないし複数の消防無線交信音声引込用回線に関しては、前述したように、1ないし複数の消防無線交信音声引込用回線のうち、同一災害事案に関する交信音声情報を出力している複数の消防無線交信音声引込用回線のみを選択して、情報共有用音声ミキシング回路11の入力側に接続して、同一災害事案に関する交信音声情報を一つの音声情報に纏めた情報共有用音声情報として生成することが可能である。
【0071】
さらには、同一災害事案に関する交信音声情報の全てではなく、司令員からの指示に基づいて、同一災害事案に関する交信音声情報を出力している複数の消防無線交信音声引込用回線のうち、指示された消防無線交信音声引込用回線に関する交信音声情報のみを一つの音声情報に纏めた情報共有用音声情報として生成するようにすることも可能である。そして、同一災害事案に関する交信音声情報を出力している複数の消防無線交信音声引込用回線のうち、指示された消防無線交信音声引込用回線に関する交信音声情報のみを一つの音声情報に纏めた情報共有用音声情報を送信する送信先として、司令員は、地域の消防団の消防団員が使用する無線機も対象にすることができる。
【0072】
(本発明の実施形態の動作の説明)
次に、本発明の一実施形態として図3に示した消防指令システム100の動作について、その一例を、図4のフローチャートおよび図5図11の模式図を用いて詳細に説明する。図4は、本発明の一実施形態として図3に示した消防指令システム100の動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図4のフローチャートは、一例として、図2に示した災害事案aとして広域大規模災害が発生した場合を例にして、消防指令システム100がどのように動作した結果、同一災害事案aに関する消防救急活動を行っている各消防救急活動要員(消防士、消防団員)が当該災害事案aに関する情報共有を図ることができたかという点に着目して説明している。ここで、図4のフローチャートの処理をコンピュータによって実行可能な消防指令送信プログラムとして実施することができることは言うまでもない。
【0073】
ここで、図4に示すフローチャートの動作の流れを説明するに当たって、消防指令システム100は、図5に示すような通信回線の使用状況になっているものと仮定する。図5は、図4に示すフローチャートの動作の前提となる消防指令システム100の通信回線の使用状況を示す模式図である。図5に示すように、広域大規模災害の本災害事案aに関する消防救急活動に使用する消防デジタル無線の周波数(すなわち活動波)として、すなわち、各災害地点において消防救急活動中の消防士と司令員との間の通話に用いる消防デジタル無線の周波数として、A/B/C Hzの3つ周波数を使用しているものと仮定する。また、広域大規模災害の本災害事案aに関する地域の消防団等の消防救急活動要員(消防団員等)にも、本災害事案aに関する情報共有を図るために使用する消防デジタル無線の周波数として、あらかじめ定めたD/E Hzの2つの周波数を使用しているものと仮定する。
【0074】
第1災害地点で活動中の消防士は、活動波として周波数A Hzの無線波を使用して、該第1災害地点の近傍に設置されている第1基地局無線装置40aから消防デジタル無線回線制御装置20を経由して、さらに、第1消防無線回線1aおよび消防指令制御装置10を経由して、司令員と通話している。また、第2災害地点で活動中の消防士は、同様に、活動波として周波数B Hzの無線波を使用して、該第2災害地点の近傍に設置されている第2基地局無線装置40bから消防デジタル無線回線制御装置20を経由して、さらに、第2消防無線回線1bおよび消防指令制御装置10を経由して、司令員と通話している。また、第3災害地点で活動中の消防士も、同様に、活動波として周波数C Hzの無線波を使用して、該第3災害地点の近傍に設置されている第3基地局無線装置40cから消防デジタル無線回線制御装置20を経由して、さらに、第3消防無線回線1cおよび消防指令制御装置10を経由して、司令員と通話している。
【0075】
消防デジタル無線回線制御装置20は、内部に備えている上下音声ミキシング回路21において、第1災害地点の消防士と司令員との間の上り方向および下り方向の通話情報を交信音声情報としてミキシングして、周波数A Hzの無線波に対応する第1消防無線交信音声引込用回線2aを介して消防指令制御装置10に送出している。同様に、第2災害地点の消防士と司令員との間、第3災害地点の消防士と司令員との間のそれぞれの上り方向および下り方向の通話情報を交信音声情報としてミキシングして、周波数B Hz、周波数C Hzそれぞれの無線波に対応する第2消防無線交信音声引込用回線2b、第3消防無線交信音声引込用回線2cそれぞれを介して消防指令制御装置10に送出している。
【0076】
また、消防指令制御装置10は、内部に備えている情報共有用音声ミキシング回路11において、第1消防無線交信音声引込用回線2a、第2消防無線交信音声引込用回線2b、第3消防無線交信音声引込用回線2cそれぞれを介して送出されてくる第1災害地点、第2災害地点、第3災害地点それぞれの消防士と司令員との間で交信されている交信音声情報を全て一つに纏めて、情報共有用音声情報として出力する。
【0077】
そして、情報共有用音声ミキシング回路11から出力された情報共有用音声情報は、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数D、E Hzそれぞれの無線波に対応する第1情報共有用消防無線回線3a、第2情報共有用消防無線回線3bそれぞれを介して、消防デジタル無線回線制御装置20に送出される。
【0078】
消防デジタル無線回線制御装置20は、第1情報共有用消防無線回線3a、第2情報共有用消防無線回線3bそれぞれから情報共有用音声情報を受け取ると、当該広域大規模災害aに関連している地域A、地域Bそれぞれの消防団員に通知するために、受け取った情報共有用音声情報を、情報共有用周波数D、E Hzそれぞれの無線波を用いて、第4基地局無線装置40d、第5基地局無線装置40eそれぞれに送信する。第4基地局無線装置40d、第5基地局無線装置40eそれぞれは、受信した情報共有用音声情報を、情報共有用周波数D、E Hzそれぞれの無線波を用いて、地域A、地域Bそれぞれの地域の消防団の消防団員が使用する無線機に通知する。
【0079】
なお、本実施形態においては、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数の個数として、周波数D、E Hzの2個を使用する場合を示しているが、前述したように、対応する災害事案に関する各種の状況に応じて、該個数は任意の数で構わない。
【0080】
また、図3には示していないが、消防デジタル無線回線制御装置20は、消防指令制御装置10から受け取った情報共有用音声情報を、情報共有用周波数D、E Hzそれぞれの無線波を用いて、第1基地局無線装置40a、第2基地局無線装置40b、第3基地局無線装置40cそれぞれに対しても送信している。第1基地局無線装置40a、第2基地局無線装置40b、第3基地局無線装置40cそれぞれは、受信した情報共有用音声情報を、情報共有用周波数D、E Hzそれぞれの無線波を用いて、それぞれの基地局無線装置に帰属している消防士所持の無線機に対して送信する。
【0081】
したがって、第1災害地点、第2災害地点、第3災害地点それぞれにおいて消防救急活動中の消防士が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)の周波数を、情報共有用周波数D、E Hzに合わせれば、第1災害地点、第2災害地点、第3災害地点それぞれにおいて消防救急活動中の各消防士も情報共有用音声情報を聴取することができる。
【0082】
以下に、図4に示すフローチャートにおける動作の流れについて説明する。まず、広域大規模災害が発生すると、消防本部により、広域災害事案aが生成され、図6に示すように、該広域災害事案aに関する消防救助活動用の消防デジタル無線の周波数として 、第1災害地点には、A Hz、第2災害地点には、B Hz、第3災害地点には、C Hzをそれぞれ使用することが決定される(ステップS1)。
【0083】
図6は、図4に示すフローチャートのステップS1における消防指令システム100の通信回線の使用状況を示す模式図である。すなわち、消防本部の司令員と各災害地点で活動中の消防士との間の通話情報は、例えば、第1災害地点の消防士との間の通話の場合は、消防本部の司令員との間の通話用として、消防デジタル無線用の周波数A Hzを使用して、第1基地局無線装置40aから消防デジタル無線回線制御装置20を経由し、さらに、第1消防無線回線1aおよび消防指令制御装置10を経由して、相互に送受信される。
【0084】
かくのごとく、消防本部の司令員と広域災害事案aに関する各災害地点において活動中の消防士との間の通話用の消防デジタル無線の周波数が決定されると、消防デジタル無線回線制御装置20は、次に、図7に示すように、各消防無線回線を使用して送受信する音声情報に割り当てた消防デジタル無線用の各周波数(A/B/C Hz)ごとに、内蔵している上下音声ミキシング回路21それぞれを確保して、各上下音声ミキシング回路21それぞれの入力側に、該当する周波数(A/B/C Hz)に関する消防無線回線側からの出力と基地局無線装置側からの出力とを接続する(ステップS2)。
【0085】
図7は、図4に示すフローチャートのステップS2における消防指令システム100の通信回線の使用状況を示す模式図である。その結果、消防本部の司令員と広域災害事案aに関する各災害地点において活動中の消防士との間の上り方向と下り方向との音声情報がそれぞれの消防デジタル無線用の周波数ごとにミキシングされて、各上下音声ミキシング回路21ごとの交信音声情報として、各上下音声ミキシング回路21それぞれから出力される。
【0086】
すなわち、例えば、消防無線用の周波数A Hzを使用して、第1災害地点の消防士と司令員との間の通話経路に関しては、第1基地局無線装置40aからの出力と第1消防無線回線1a側からの出力とを第1上下音声ミキシング回路21aの入力側を接続する。その結果、広域災害事案aに関する第1災害地点において活動中の消防士と消防本部の司令員との間の上り方向と下り方向との音声情報がミキシングされて、消防デジタル無線用の周波数A Hzに該当する第1交信音声情報として第1上下音声ミキシング回路21aから出力されることになる。
【0087】
次に、消防デジタル無線回線制御装置20は、図8に示すように、消防デジタル無線用として割り当てた各周波数(A/B/C Hz)ごとの各上下音声ミキシング回路21それぞれの出力側を、該当する周波数(A/B/C Hz)の消防無線交信音声引込用回線の入力側に接続する(ステップS3)。
【0088】
図8は、図4に示すフローチャートのステップS3における消防指令システム100の通信回線の使用状況を示す模式図である。その結果、各上下音声ミキシング回路21それぞれにおいてミキシングして生成された交信音声情報は、消防デジタル無線用として割り当てた各周波数(A/B/C Hz)ごとに、各上下音声ミキシング回路21それぞれから消防指令制御装置10に送出される。すなわち、例えば、消防無線用の周波数A Hzを使用して、第1災害地点の消防士と司令員との間を接続している通話経路に関しては、第1交信音声情報として、第1上下音声ミキシング回路21aから第1消防無線交信音声引込用回線2aを介して消防指令制御装置10に送出される。
【0089】
消防指令制御装置10は、図9に示すように、内蔵している情報共有用音声ミキシング回路11の入力側に、消防デジタル無線回線制御装置20からの無線交信音声引込用回線の出力側を全て接続する(ステップS4)。したがって、消防デジタル無線用として割り当てた各周波数(A/B/C Hz)ごとの消防無線交信音声引込用回線を介して入力されてくる各交信音声情報は、全て、消防指令制御装置10に内蔵されている情報共有用音声ミキシング回路11に入力される。
【0090】
図9は、図4に示すフローチャートのステップS4における消防指令システム100の通信回線の使用状況を示す模式図である。その結果、広域災害事案aに関して各災害地点において活動中の消防士と消防本部の司令員との間の全ての交信音声情報がミキシングされて、情報共有用音声情報として、情報共有用音声ミキシング回路11から出力される。
【0091】
すなわち、広域災害事案aに関する全ての交信音声情報(つまり、第1、第2、第3災害地点それぞれの消防士と司令員との間の第1交信音声情報、第2交信音声情報、第3交信音声情報)が一つに纏められて、情報共有用音声情報として、情報共有用音声ミキシング回路11から出力される。
【0092】
次に、消防指令制御装置10は、図10に示すように、情報共有用音声ミキシング回路11の出力側に、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数に対応する情報共有用消防無線回線のそれぞれの入力側を接続する(ステップS5)。
【0093】
図10は、図4に示すフローチャートのステップS5における消防指令システム100の通信回線の使用状況を示す模式図である。その結果、情報共有用音声ミキシング回路11においてミキシングして一つに纏められて生成された情報共有用音声情報は、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数それぞれに対応する情報共有用消防無線回線を介して、消防デジタル無線回線制御装置20に送出される。すなわち、例えば、情報共有用周波数として消防無線用の周波数D HzとE Hzとの2個の周波数を割り当てている場合、一つに纏められた情報共有用音声情報は、それぞれの情報共有用周波数D HzとE Hzとに対応する第1情報共有用消防無線回線3aと第2情報共有用消防無線回線3bとを経由して、消防デジタル無線回線制御装置20に送出される。なお、情報共有用周波数および情報共有用消防無線回線の個数は、かかる2個に限るものではなく、任意の個数を設定することができる。
【0094】
最後に、消防指令制御装置10の情報共有用音声ミキシング回路11から送出されてきた情報共有用音声情報を受け取った消防デジタル無線回線制御装置20は、図11に示すように、受け取った情報共有用音声情報を、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数の無線波として、当該広域災害事案aに関連する各消防団員が所在する近傍の基地局無線装置に対して送出される(ステップS6)。
【0095】
図11は、図4に示すフローチャートのステップS6における消防指令システム100の通信回線の使用状況を示す模式図である。その結果、各基地局無線装置それぞれの近傍の無線エリア内に所在している各消防団員は、それぞれが使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)の受信無線周波数を、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防デジタル無線の周波数に合わせれば、各災害地点の消防士と司令員との間の通話情報を聴取することができる。
【0096】
例えば、消防デジタル無線用の周波数D HzとE Hzとの2個が、情報共有用周波数として使用されている場合、図11に示すように、第4基地局無線装置40dの近傍に所在する消防団員は、消防デジタル無線送受信端末(無線機)の受信無線周波数を消防無線用周波数D Hzに合わせれば、第1災害地点の消防士と司令員とが消防デジタル無線の周波数A Hzを使用して交信している音声情報、第2災害地点の消防士と司令員とが消防デジタル無線の周波数B Hzを使用して交信している音声情報、第3災害地点の消防士と司令員とが消防デジタル無線の周波数C Hzを使用して交信している音声情報、の全ての交信音声情報を聴取することができる。
【0097】
なお、情報共有用周波数は、通常の消防デジタル無線の機能を有している周波数であるので、必要に応じて、消防団員が、所持している消防デジタル無線送受信端末(無線機)の通話ボタンのプレス操作を行うことにより、情報共有用周波数例えば消防無線用周波数D Hzを使用して、消防本部の司令員との間でプレストークを行うことも可能である。
【0098】
また、以上の説明においては、情報共有用音声情報を広域災害事案aに関連する消防団員が聴取する場合について説明したが、広域災害事案aの各災害地点において消防救急活動中の消防士も、必要に応じて、それぞれが所持している消防デジタル無線送受信端末(無線機)の受信周波数を、情報共有用周波数に合わせる操作を行うことにより、情報共有用音声情報を聴取することが可能になる。
【0099】
また、以上の説明においては、消防無線回線および消防無線交信音声引込用回線に関する消防デジタル無線の周波数が3個の場合について説明したが、本発明は、かかる個数に限定するものではなく、消防無線回線に関する消防デジタル無線の周波数と消防無線交信音声引込用回線に関する消防デジタル無線の周波数とが同数であれば、任意の個数であって構わない。また、情報共有用周波数としてあらかじめ定めた消防無線の周波数についても、前述したように、2個に限るものではなく、任意の個数であって構わない。
【0100】
さらに、以上の説明においては、上下音声ミキシング回路21を消防デジタル無線回線制御装置20に配置し、情報共有用音声ミキシング回路11を消防指令制御装置10に配置した構成例を示しているが、本発明はかかる構成に限るものではなく、例えば、上下音声ミキシング回路21と情報共有用音声ミキシング回路11との双方を消防デジタル無線回線制御装置20に配置するようにしても良いし、場合によっては、消防指令制御装置10に配置するようにしても良い。さらには、上下音声ミキシング回路21と情報共有用音声ミキシング回路11とを一体化した構成とし、上下音声情報を生成するだけではなく、情報共有用音声情報を一気に生成する音声ミキシング回路(情報共有用音声ミキシング手段)として構成し、消防デジタル無線回線制御装置20に配置するようにしても良いし、場合によっては、消防指令制御装置10に配置するようにしても良い。
【0101】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下のような効果を奏することができる。
【0102】
第1の効果は、広域大規模災害発生の場合のように、複数の災害地点が同時に存在している場合であっても、複数の災害地点それぞれにおいて消防救急活動中の災害現場活動者(消防士)それぞれの間で、それぞれの災害情報を円滑に共有することができることにある。
【0103】
その理由は、各災害地点ごとに割り当てられている複数の消防デジタル無線の周波数それぞれを利用して各災害現場活動者(消防士)と司令員との間で送受信している音声情報を全て纏めた情報共有用音声情報を生成する仕組みを有しているからである。そして、生成した情報共有用音声情報を消防デジタル無線の情報共有用周波数としてあらかじめ定めた無線周波数を用いて、各災害現場活動者(消防士)が使用している消防デジタル無線送受信端末(無線機)に対して送出する仕組みを有しているからである。各災害現場活動者(消防士)は、使用している消防デジタル無線送受信端末(無線機)の周波数を該情報共有用周波数に合わせることにより、各災害地点それぞれにおいて災害現場活動者(消防士)と司令員との間で送受信されている全ての音声情報を一挙に取得することが可能であり、他の災害現場活動者(消防士)との間の情報共有を図ることができる。
【0104】
第2の効果は、地域の消防団の消防団員と消防本部の司令員および各災害地点の消防士との間の情報共有を円滑に行う仕組みを提供できることにある。
【0105】
その理由は、地域の消防団の消防団員と消防本部の司令員および各災害地点の消防士との間の情報伝達・連携の手段として、前述した消防デジタル無線の情報共有用周波数を利用することが可能になるからである。
【0106】
第3の効果は、広域大規模災害発生の場合のように、複数の災害地点が同時に存在している場合であっても、限られた無線リソースを最適に利用して、複数の災害地点それぞれにおいて消防救急活動中の情報の共有を図ることが可能になることにある。
【0107】
その理由は、前述した消防デジタル無線の情報共有用周波数を適切に利用可能な個数として設定した任意数使用することにより、各災害地点に対して複数の周波数を仮想的に割り当てることが可能となる仕組みを有しているからである。
【0108】
前述した本実施形態における効果について、図12図13図14を用いてさらに補足して説明する。
【0109】
図12図13図14は、いずれも、現状の消防救急活動における情報展開上の問題点を解決する手段を表現したものであるが、説明を簡単にするために、同時に発生している災害事案数は事案A、事案Bの二種類であり、それぞれの災害事案ごとに、それぞれの災害事案に従事する消防士およびそれぞれの事案に関連する地域の消防団員が存在しているものとする。また、事案A、事案Bそれぞれの消防活動を行っている消防士それぞれが使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)と消防本部(消防署)との間で送受信する無線波(すなわち活動波)は、第1消防無線波(第1消防無線回線用の周波数)、第2消防無線波(第2消防無線回線用の周波数)の二つの消防デジタル無線用の周波数を用いるものとする。
【0110】
ここで、図12は、現状の消防救急活動における情報展開上の問題点を解決するに当たり想定される第1の解決手段を説明するための説明図である。図13は、現状の消防救急活動における情報展開上の問題点を解決するに当たり想定される第2の解決手段を説明するための説明図である。また、図14は、現状の消防救急活動における情報展開上の問題点を解決するために本実施形態において実施した解決手段の一例を説明するための説明図である。
【0111】
図12に示す第1の解決手段は、消防本部(消防署)と地域の消防団との間の通話手段を、現状の携帯電話による通話方式から消防デジタル無線の通話方式に置き換えて、使用する消防デジタル無線の周波数も、消防団との通話専用の周波数として、事案Aに関連する消防団用には第3消防無線波(第3消防無線回線用の周波数)を、事案Bに関連する消防団用には第4消防無線波(第4消防無線回線用の周波数)をそれぞれ割り当てるものである。図12の場合の運用方法に関しては、現状の運用方法とほぼ同等であるが、特徴として以下が挙げられる。
【0112】
消防本部(消防署)の指令台と各消防デジタル無線送受信端末(無線機)との間の双方向音声通話は、同一の各無線周波数の配下でのみ通話音声の送受信が可能であるため、消防本部(消防署)から、事案Aに関連する消防団員、事案Bに関連する消防団員それぞれへの情報伝達(情報展開)は、人手を介して、消防本部(消防署)の指令員の口頭により行うことが必要である。また、使用する消防デジタル無線用の周波数の総量は、現状の場合の2倍になる。すなわち、図12に示すように、総無線数は、活動波数の2倍になる。
【0113】
次に、図13に示す第2の解決手段は、消防本部(消防署)と地域の消防団との通話手段を、携帯電話から消防デジタル無線に置き換える他、さらに、該通話手段として、各災害事案に関連する消防団にも、各災害事案の消防活動に従事する消防士が消防救急活動用に利用している活動波である消防デジタル無線用の周波数を割り当てるものである。図13の場合の特徴として以下がある。
【0114】
各災害事案に関連する消防団員が、それぞれの災害事案の消防救急活動している消防士と消防本部(消防署)の司令員との間の音声情報を直接聴取することが可能になる。しかし、消防団員が使用する消防デジタル無線送受信端末(無線機)の通話ボタンをプレス操作することによって送信される該消防団員の音声情報まで、消防救急活動中の消防士に聴取される状態になってしまうため、現場で活動中の消防士の消防救急活動に影響を与える可能性がある。なお、図13の場合は、各災害事案において消防士が使用している消防デジタル無線用の周波数を消防団用としても利用するので、使用する消防デジタル無線用の周波数の総量は、現状の場合の同じである。すなわち、図13に示すように、総無線数は活動波数と同じである。
【0115】
次に、図14は、本発明の実施形態として説明した解決手段の一例を示すものであり、特徴として以下がある。
【0116】
本実施形態においては、消防活動用として用いる活動波である第1消防無線波(第1消防無線回線用の周波数)、第2消防無線波(第2消防無線回線用の周波数)の音声情報すなわち各災害事案ごとの消防デジタル無線用周波数の音声情報を全てミキシングして、情報共有用音声情報として生成する。そして、生成した情報共有用音声情報を情報共有用周波数としてあらかじめ定めた無線周波数(情報共有用消防無線波)を用いて、それぞれの災害事案に関連する消防団に送信している。したがって、各災害事案に関連する消防団員それぞれの消防デジタル無線送受信端末(無線機)において、情報共有用周波数に相当する消防デジタル無線の周波数を利用すれば、該情報共有用音声情報(第1消防無線波、第2消防無線波を用いた消防活動用の全ての音声情報)を自動的に聴取することができる。
【0117】
さらには、各災害事案の消防活動を行っている消防士の消防デジタル無線送受信端末(無線機)においても、該情報共有用周波数を利用すれば、自動的に該情報共有用音声情報を聴取することができる。また、情報共有用無線波(情報共有用周波数)を用いる情報共有用音声情報が、各災害事案毎の消防活動用の音声情報を扱う第1消防無線波、第2消防無線波にまで流出してしまうことを完全に防止することができる。
【0118】
また、消防本部(消防署)の指令員は、消防団員に聞かせたい災害事案や災害地点に対応する消防士と司令員との間の音声情報のみを指定して、該当する消防団員に聴取させることも可能である。なお、消防団員の消防デジタル無線送受信端末(無線機)の通話ボタンのプレス操作によって送信される該消防団員の音声情報は、消防団員と消防本部の指令員にのみ聴取させることが可能であり、現場で活動中の消防士に聴取されることはない。
【0119】
なお、図14の場合、使用する消防無線用の周波数の総量は、情報共有用音声情報を送受信するための情報共有用周波数が必要になるので、現状の場合よりも少なくとも1個だけ多くなる。すなわち、図14に示すように、総無線数は、活動波数に対して少なくとも‘+1’だけ加算した数になる。また、情報共有用周波数の個数は、前述したように、必要に応じて、1以上の任意の個数にすることが可能である。
【0120】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0121】
1a 第1消防無線回線
1b 第2消防無線回線
1c 第3消防無線回線
2a 第1消防無線交信音声引込用回線
2b 第2消防無線交信音声引込用回線
2c 第3消防無線交信音声引込用回線
3a 第1情報共有用消防無線回線
3b 第2情報共有用消防無線回線
10 消防指令制御装置
11 情報共有用音声ミキシング回路
20 消防デジタル無線回線制御装置
21 上下音声ミキシング回路
21a 第1上下音声ミキシング回路
21b 第2上下音声ミキシング回路
21c 第3上下音声ミキシング回路
30 指令台
40 基地局無線装置
40a 第1基地局無線装置
40b 第2基地局無線装置
40c 第3基地局無線装置
40d 第4基地局無線装置
40e 第5基地局無線装置
100 消防指令システム
100A 消防指令システム
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
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図16