(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/39 20200101AFI20230816BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G06F30/39
H05K3/00 D
(21)【出願番号】P 2021044516
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】奈良 裕太
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-133990(JP,A)
【文献】特開2009-199338(JP,A)
【文献】特開2003-6260(JP,A)
【文献】特開平9-223163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置であって、
動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリと、
前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出する第1算出手段と、
前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出する第2算出手段と、
を備える支援装置。
【請求項2】
前記第1算出手段は、
同一のグループとすることを示す識別情報に基づいて、前記部品をグループごとに一纏めにする配置分布を算出する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記第2算出手段による算出結果に基づいて、前記部品の配置が所望の配置であるかをチェックするチェック手段、
を備える請求項1または請求項2に記載の支援装置。
【請求項4】
前記給電ルートを補正する必要があるか否かを判定する判定手段、
を備える請求項1から請求項3の何れか一項に記載の支援装置。
【請求項5】
動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリを備え、回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置が実行する支援方法であって、
前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出することと、
前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出することと、
を含む支援方法。
【請求項6】
動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリを備え、回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置のコンピュータに、
前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出することと、
前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援装置、支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)、抵抗、キャパシタなどの電子部品を搭載するプリント基板の作成において、電子部品に電力を供給するための電源パターンの設計は重要であり、試行錯誤を重ねて決定される場合が多い。
特許文献1には、関連する技術として、プリント基板における電源配線に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、試行錯誤して行われるプリント基板などの回路基板における電源パターン配線の設計は、長い時間を必要とし、設計者の負担も大きい。そのため、回路基板における電源パターン配線の設計を支援することのできる技術が求められている。
【0005】
本発明の各態様は、上記の課題を解決することのできる支援装置、支援方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、支援装置は、回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置であって、動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリと、前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出する第1算出手段と、前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出する第2算出手段と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様によれば、支援方法は、動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリを備え、回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置が実行する支援方法であって、前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出することと、前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出することと、を含む。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の別の態様によれば、プログラムは、動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリを備え、回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置のコンピュータに、前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出することと、前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の各態様によれば、回路基板における電源パターン配線の設計を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態による電源パターン設計支援装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における部品の配置及び動作電源電圧毎の部品の配置分布算出結果の一例を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態におけるプリント基板の設計フローの概要の一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態におけるプリント基板の設計フローの詳細の一例を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の給電ルート算出部による給電ルート算出結果の一例を示す第1の図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の給電ルート算出部による給電ルート算出結果の一例を示す第2の図である。
【
図7】本発明の第2実施形態による電源パターン設計支援装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態におけるプリント基板の設計フローの詳細の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態による支援装置の最小構成を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態による最小構成の支援装置の処理フローの一例を示す図である。
【
図11】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態による電源パターン設計支援装置300(支援装置の一例)は、プリント基板(回路基板の一例)上の電源パターン配線を効率的に行うことのできる装置である。
図1は、本発明の第1実施形態による電源パターン設計支援装置300の構成の一例を示す図である。電源パターン設計支援装置300は、
図1に示すように、回路設計CAD100および配置配線設計CAD200を備える。
【0012】
回路設計CAD100は、回路設計を行う(つまり、回路図を作成する)ためのCADである。回路設計CAD100は、
図1に示すように、配置配線設計CAD200に接続される。回路設計CAD100は、制御部110、出力部120、入力部130、部品ライブラリ情報記憶部140、記憶部150、および表示部160を備える。部品ライブラリ情報記憶部140は、
図1に示すように、動作電源電圧情報部1400、消費電流情報部1401、および電源供給情報部1402を備える。
【0013】
制御部110は、回路設計CAD100内の制御を行う。出力部120は、配置配線設計CAD200へ必要となる情報を出力する。ここで必要となる情報とは、部品ライブラリ情報記憶部140の動作電源電圧情報部1400、消費電流情報部1401、および電源供給情報部1402が記憶する情報であり、部品名、部品の種類、部品形状、部品のピン属性、部品識別番号、実装ロケーション、接続情報、信号名等を含む情報である。実装ロケーションとは、後述する表示装置に表示されるCAD上の設計者が決定した基板における配置のことである。
【0014】
入力部130は、配置配線設計CAD200から必要となる情報を入力する。ここで必要となる情報とは、上記出力部120で扱う情報と同じである。部品ライブラリ情報記憶部140は、部品ライブラリデータベース400(部品ライブラリの一例)から必要となる部品ライブラリ情報(すなわち、部品名、部品の種類、部品形状、部品のピン属性等)を取得する。そして、部品ライブラリ情報記憶部140は、動作電源電圧情報部1400において、取得した部品ライブラリ情報に対する部品の動作電源電圧情報を定義する。また、部品ライブラリ情報記憶部140は、消費電流情報部1401において、部品の消費電流情報を定義する。また、部品ライブラリ情報記憶部140は、電源供給情報部1402において、使用部品が電源供給元であるか、それとも電源供給先(すなわち、負荷)であるかを定義する。記憶部150は、入力部130で入力された情報や回路図情報を記憶する。表示部160は、部品ライブラリ情報記憶部140や記憶部150が記憶する情報を表示装置(例えば、ディスプレイ等)に表示させる。
【0015】
配置配線設計CAD200は、配置配線設計を行うためのCADである。配置配線設計CAD200は、
図1に示すように、制御部210、出力部220、入力部230、配置設計処理部240、配線設計処理部250、記憶部260、および表示部270を備える。
【0016】
制御部210は、配置配線設計CAD200内の制御を行う。出力部220は、回路設計CAD100に、必要となる情報を出力する。入力部230は、回路設計CAD100から必要となる情報を入力する。配置設計処理部240は、部品の配置設計の処理を行う。配置設計処理部240は、
図1に示すように、部品配置情報部2400、部品配置分布算出部2401(第1算出手段の一例)、および配置チェック部2402(チェック手段の一例)を備える。
【0017】
部品配置情報部2400は、配置された部品の座標情報を記憶する。部品配置分布算出部2401は、動作電源電圧情報部1400で定義した部品の動作電源電圧情報および部品配置情報部2400の情報に基づき、動作電源電圧毎の部品の配置分布を算出する。
図2は、部品の配置及び動作電源電圧毎の部品の配置分布算出結果の一例を示す図である。例えば、同一の動作電源電圧で一纏めにしたい部品には、同一のグループとすることを示す識別情報を予め付与しておくことにより、部品配置分布算出部2401は、
図2の各点線内に示すように、部品をグループごとに一纏めにすることが可能になる。
【0018】
配置チェック部2402は、ユーザによる操作(例えば、マウス操作)によりCAD上で配置された部品の部品間隔や後述する給電ルート算出部2500の結果より部品配置が期待通り(すなわち、所望の配置)であるかをチェックする。なお、配置チェック部2402によるチェックの具体例については、後述する。
【0019】
配線設計処理部250は、配線設計処理を行う。配線設計処理部250は、給電ルート算出部2500(第2算出手段の一例)、電源パターン幅算出部2501、配線ビア数算出部2502、および電源パターン補正部2503を備える。
【0020】
給電ルート算出部2500は、部品配置分布算出部2401の結果と電源供給情報部1402で定義した部品の電源供給元および供給先情報から給電ルートを算出する。電源パターン幅算出部2501は、給電ルート算出部2500の結果と消費電流情報部1401で定義した部品の消費電流情報から給電に必要な電源パターン幅を算出する。配線ビア数算出部2502は、給電ルート算出部2500の結果と消費電流情報部1401で定義した部品の消費電流情報から給電に必要な配線ビア数を算出する。電源パターン補正部2503は、電源パターン幅算出部2501と配線ビア数算出部2502の結果から電源パターン幅とビア数を補正する。
【0021】
記憶部260は、入力部230で入力された情報や配置配線設計の状態、実装禁止エリア情報、配線禁止襟エリア情報を記憶する。表示部270は、記憶部260の情報や配置設計処理部240、配線設計処理部250で配置配線された結果を表示装置(ディスプレイ等)に表示させる。
【0022】
また、電源パターン設計支援装置300の外部にある部品ライブラリデータベース400は、回路設計CAD100に接続される。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態におけるプリント基板の設計フローの概要について、
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の第1実施形態におけるプリント基板の設計フローの概要の一例を示す図である。プリント基板の設計は、基本設計において装置の仕様を検討し、使用する部品の選定や回路の検討(具体的には、部品のデータシートでスペックを確認等)、電源系統図の検討、プリント基板上の部品の収容性の検討などが行われる(ステップS100)。基本設計が完了すると、詳細設計へ移行する。詳細設計における回路設計では、回路設計CAD100上で回路図が作成される(ステップS101)。回路図が作成されると、回路設計CAD100の情報は、配置配線設計CAD200に出力される。回路設計CAD100の情報を用いて配置配線設計CAD200ではユーザによる操作(例えば、マウス操作)によりCAD上で部品の配置設計が行われる(ステップS102)。そして、配置配線設計CAD200上で配線設計が行われる(ステップS103)。このような設計フローにしたがってプリント基板の設計が進められる。
【0024】
次に、本発明の第1実施形態におけるプリント基板の設計フローの詳細について、
図4~
図6を参照して説明する。まず、回路図の作成から電源パターン設計の完了までの処理について、
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の第1実施形態におけるプリント基板の設計フローの詳細の一例を示す図である。
【0025】
回路設計CAD100は、ステップS100の基本設計の結果に基づいて回路図を作成する処理を実行する。具体的には、回路設計CAD100は、部品ライブラリデータベース400から回路設計や配置設計で使用する部品ライブラリを取得する。そして、回路設計CAD100は、取得した部品ライブラリに対して、動作電源電圧情報、消費電流情報、および電源供給情報を定義する(ステップS200)。回路設計CAD100の制御部110は、部品ライブラリに定義した動作電源電圧情報、消費電流情報、および電源供給情報のほか、部品名、部品の種類、部品形状、部品のピン属性、部品識別番号、実装ロケーション、接続情報、信号名等を含む回路図情報を、記憶部150に記録する。
【0026】
回路設計CAD100の出力部120は、制御部110が記憶部150に記録した回路図情報(すなわち、部品ライブラリに定義した動作電源電圧情報、消費電流情報、および電源供給情報と、部品名、部品の種類、部品形状、部品のピン属性、部品識別番号、実装ロケーション、接続情報、および信号名等とを含む情報)を、配置配線設計CAD200の入力部230に送る(ステップS201)。入力部230は、回路図情報を受け取り、受け取った回路図情報を記憶部260に記録する。
【0027】
配置配線設計CAD200は、記憶部260に記録された回路図情報に基づき、部品の配置設計の処理を実行する(ステップS202)。
【0028】
配線設計処理部250は、部品の配置設計が完了しているか否かを記憶部260に記録されている情報に基づき判定する(ステップS203)。また、部品配置情報部2400には、配置された部品の座標情報が記録される。なお、例えば、CAD上で部品の配置が完了した場合、ユーザ操作により表示装置に表示される完了ボタンを押下することにより、部品の配置設計が完了したことを示す情報が記憶部260に記録されるものとする。そして、配線設計処理部250は、その情報が記憶部260に記録されているか否かによって部品の配置設計が完了しているか否かを判定するものであってよい。
【0029】
部品配置分布算出部2401は、動作電源電圧情報部1400で定義した部品の動作電源電圧情報および部品配置情報部2400の情報に基づき、動作電源電圧毎の部品の配置分布を算出する(ステップS204)。ステップS204の処理において、動作電源電圧情報部1400で定義した部品の動作電源電圧情報および部品配置情報部2400の情報に基づき、動作電源電圧毎の部品の配置分布を算出した結果の表示装置に表示される例は、
図2に示す表示である。
【0030】
給電ルート算出部2500は、部品配置分布算出部2401の結果と電源供給情報部1402で定義した部品の電源供給情報から給電ルートを算出する(ステップS205)。
図5および
図6のそれぞれは、本発明の第1実施形態の給電ルート算出部2500による給電ルート算出結果の一例を示す図である。ステップS205の処理において、部品配置分布算出部2401の結果と電源供給情報部1402で定義した部品の電源供給情報から給電ルートを算出した結果は、例えば
図5のように表示装置に表示される。
【0031】
配置チェック部2402は、ユーザによる操作(例えば、マウス操作)によりCAD上で配置された部品の部品間隔や給電ルート算出部2500の結果である給電ルート情報から、部品の配置が期待通りであるかをチェックする(ステップS206)。例えば、配置チェック部2402は、部品どうしの間隔が部品を実装した後の基板の修正を考慮した場合の最小の間隔となっている場合、部品の配置が期待通りであると判定する。また、例えば、同一の動作電源電圧で一纏めにしたい部品に予め同一の識別情報を付与したにもかかわらず、同一の識別情報を有する部品間の距離がそのグループに設定したしきい値以上である場合(例えば、
図6に示す例のように、プリント基板の右下の3.3V動作部品が1つあり、しきい値以上距離が離れている場合)、配置チェック部2402は、部品どうしの間隔が部品を実装した後の基板の修正を考慮した場合の最小の間隔となっている場合、部品の配置が期待通りであると判定する。なお、ここで配置されている部品について、製造性、リペア性を考慮し、製造やリペアの作業しやすい部品間隔であるか、実装禁止エリアや配線禁止エリア、機構品等と干渉しないかなど、判定に用いるこれらの情報は予め定義され、記憶部260に記録されているものであってよい。
【0032】
電源パターン幅算出部2501は、給電ルート算出部2500の結果と消費電流情報部1401で定義した部品の消費電流情報より給電に必要な電源パターン幅を算出する(ステップS207)。ここで消費電流値に対する電源パターン幅の一般的な目安は、電源パターン幅1.0mmに対して、許容電流が1Aである。
【0033】
配線ビア数算出部2502は、給電ルート算出部2500の結果と消費電流情報部1401で定義した部品の消費電流情報から、給電に必要な配線ビア数を算出する(ステップS208)。ここで、消費電流値に対する配線ビア径の一般的な目安は、配線ビア径φ0.3mmに対して、許容電流が300mAである。
【0034】
給電ルート算出部2500は、算出した給電ルート情報に、電源パターン幅算出部2501にて算出した電源パターン幅と、配線ビア数算出部2502にて算出した配線ビア数の結果を反映させる(ステップS209)。
【0035】
電源パターン補正部2503は、電源パターンの補正が必要であるか否かを、電源パターン幅に対する許容電流設定値、配線ビア径に対する許容電流設定値、基板の製造バラツキを考慮したマージン設定値、およびその他の配線(つまり、信号を伝播させる配線)との間隔から判定する(ステップS210)。例えば、電源パターン幅に対して、少なくとも満たさなければならない条件を、電源パターン幅に対する許容電流設定値、配線ビア径に対する許容電流設定値、基板の製造バラツキを考慮したマージン設定値、およびその他の配線との間隔による組み合わせで1つ以上(必要に応じて複数)設定しておく。そして、電源パターン補正部2503は、設定された条件の1つでも満足しない場合に、電源パターンの補正が必要であると判定すればよい。
【0036】
電源パターン補正部2503は、電源パターンの補正が必要であると判定した場合(ステップS210においてYES)、電源パターン幅に対する許容電流設定値、配線ビア径に対する許容電流設定値、基板の製造バラツキを考慮したマージン設定値、およびその他の配線との間隔の少なくとも1つを変更することにより、給電ルート、電源パターン幅、および配線ビアの少なくとも1つを補正する(ステップS211)。例えば、電源パターン幅に対する許容電流設定値、配線ビア径に対する許容電流設定値、基板の製造バラツキを考慮したマージン設定値、およびその他の配線との間隔のそれぞれに、給電ルート、電源パターン幅、および配線ビアの修正内容を関連付けて設定しておくことにより、電源パターン補正部2503は、給電ルート、電源パターン幅、および配線ビアの少なくとも1つを補正することが可能となる。また、電源パターン補正部2503は、電源パターンの補正が必要でないと判定した場合(ステップS210においてNO)、処理を終了させる。
【0037】
以上、本発明の第1実施形態による電源パターン設計支援装置300は、回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置であって、部品ライブラリデータベース400と、部品配置分布算出部2401と、給電ルート算出部2500と、を備える。部品ライブラリデータベース400は、動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリである。部品配置分布算出部2401は、動作電源電圧情報と回路基板における部品の配置情報とに基づいて、動作電源電圧ごとの部品の配置分布を算出する。給電ルート算出部2500は、部品の配置分布と、電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出する。
【0038】
こうすることにより、回路基板における電源パターン配線の設計を支援することができる。
【0039】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態による電源パターン設計支援装置300について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態による電源パターン設計支援装置300の構成の一例を示す図である。ここでは、
図1に示す本発明の第1実施形態による電源パターン設計支援装置300との違いについて説明する。本発明の第2実施形態による電源パターン設計支援装置300は、
図1における部品ライブラリデータベース400を電源パターン設計支援装置300内に取り込み、その部品ライブラリデータベース400を、インターネット500を介し、部品メーカサイトへ接続したことである。また、
図7の部品ライブラリ情報記憶部140にパラメータ変更部1403の機能を持たせたことである。
【0040】
部品ライブラリデータベース400は、インターネット500を介し、部品メーカサイトへ接続しており、部品メーカサイトに登録や公開されている部品ライブラリ、部品のデータシートにアクセスして、部品の動作電源電圧情報や消費電流情報を取得することが可能である。また、パラメータ変更部1403は、部品ライブラリデータベース400から部品ライブラリ情報を取得し、部品の動作電源電圧情報と消費電流情報について回路で使用する値に変更することが可能である。また、パラメータ変更部1403は、電源パターン設計を最適化するために消費電流について、使用する部品や回路の動作率(使用率)を消費電流値に換算することも可能である。
【0041】
図8は、本発明の第2実施形態におけるプリント基板の設計フローの詳細の一例を示す図である。具体的には、
図8は、部品ライブラリ情報をインターネット500経由でメーカから取得し、実際に使用する部品の動作電源電圧情報と消費電流情報を変更(最適化)するまでの処理フローを示している。ここでは、
図4に示す処理フローと異なる点について説明する。
【0042】
部品ライブラリデータベース400は、インターネット500を介して、部品メーカサイトへアクセスし、部品メーカサイトから使用する部品のデータシートや部品ライブラリ情報を取得する(ステップS300)。
【0043】
パラメータ変更部1403は、部品メーカから取得した部品ライブラリ情報に対して、回路仕様や回路(部品)の動作率から動作電源電圧情報と消費電流情報を最適化する(ステップS301)。ステップS301以降の処理フローは、
図4のステップS201の処理に続く。
【0044】
以上、本発明の第2実施形態による電源パターン設計支援装置300について説明した。設計者は、さまざまなメーカの部品を使用するため、特定のメーカだけではなく、広く部品の情報を入手する必要があり、また設計では常に部品の情報を最新の状態にしておかなければならない。電源パターン設計支援装置300により、インターネットを経由し、部品メーカサイトにアクセスし、部品ライブラリを汎用的に使用することができるデータベース(プラットフォーム)を構築することができ、部品ライブラリ情報のデータ取得や管理を効率的に行えるようになる。その結果、プリント基板の設計において、常に最新の情報を使用できるため、品質の確保や向上が可能となる。
【0045】
図9は、本発明の実施形態による支援装置300の最小構成を示す図である。支援装置300は、回路基板における電源パターンの設計を支援する支援装置である。支援装置300は、
図9に示すように、部品ライブラリ400、第1算出手段2401、および第2算出手段2500を備える。
【0046】
部品ライブラリ400は、動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義したライブラリである。第1算出手段2401は、前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出する。第2算出手段2500は、前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出する。
【0047】
次に、本発明の実施形態による最小構成の支援装置300による処理について説明する。ここでは、
図10に示す処理フローについて説明する。
【0048】
動作電源電圧情報と、消費電流情報と、電源電圧の供給元および供給先を示す電源供給情報とを定義した部品ライブラリ400を備える支援装置300において、第1算出手段2401は、前記動作電源電圧情報と前記回路基板における部品の配置情報とに基づいて、前記電源電圧ごとの前記部品の配置分布を算出する(ステップS1)。第2算出手段2500は、前記部品の配置分布と、前記電源供給情報とに基づいて、給電ルートを算出する(ステップS2)。
【0049】
以上、本発明の実施形態による最小構成の支援装置300について説明した。この支援装置300により、回路基板における電源パターン配線の設計を支援することができる。
【0050】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0051】
本発明の実施形態について説明したが、上述の支援装置300、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図11は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、
図11に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述の支援装置300、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0052】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0053】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【符号の説明】
【0055】
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
100・・・回路設計CAD
110、210・・・制御部
120、220・・・出力部
130、230・・・入力部
140・・・部品ライブラリ情報記憶部
150、260・・・記憶部
160、270・・・表示部
200・・・配置配線設計CAD
240・・・配置設計処理部
250・・・配線設計処理部
300・・・電源パターン設計支援装置
400・・・部品ライブラリデータベース
1400・・・動作電源電圧情報部
1401・・・消費電流情報部
1402・・・電源供給情報部
2400・・・部品配置情報部
2401・・・部品配置分布算出部
2402・・・配置チェック部
2500・・・給電ルート算出部
2501・・・電源パターン幅算出部
2502・・・配線ビア数算出部
2503・・・電源パターン補正部