(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】眼科用アトロピン組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/46 20060101AFI20230816BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20230816BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230816BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230816BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230816BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230816BHJP
【FI】
A61K31/46
A61P27/10
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/18
(21)【出願番号】P 2021056894
(22)【出願日】2021-03-30
(62)【分割の表示】P 2019129396の分割
【原出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-04-06
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521475864
【氏名又は名称】ヴィルマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VYLUMA INC.
【住所又は居所原語表記】1019 US HIGHWAY 202‐206, BRIDGEWATER, NJ 08807, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ナヴニート・ピュリ
(72)【発明者】
【氏名】プレム・サガール・アカサプ
(72)【発明者】
【氏名】イルファン・エイ・モハンメッド
(72)【発明者】
【氏名】クマレッシュ・ソッピマス
(72)【発明者】
【氏名】ユーリ・ヴィ・イリチェフ
(72)【発明者】
【氏名】タオ・ツァン
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特許第6865476(JP,B2)
【文献】特開2007-308398(JP,A)
【文献】特開平01-203320(JP,A)
【文献】国際公開第2015/200361(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/205069(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/46
A61P 27/10
A61K 47/12
A61K 47/02
A61K 47/38
A61K 47/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D
2Oおよび低強度緩衝液を含まず、低用量アトロピンまたはその薬学的に許容される塩、等張化剤、粘度調整剤を含む水溶液を含む、貯蔵安定性の、防腐剤を含まない眼科用アトロピン組成物であって、
前記低用量アトロピン
またはその薬学的に許容される塩が、0.05重量%またはそれ未満の濃度で存在し、
前記眼科用アトロピン組成物が5.0~6.0のpHを有し、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後に、前記アトロピンの分解により、0.28%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製され、
前記眼科用アトロピン組成物が、実質的に防腐剤を含まない、組成物。
【請求項2】
前記低用量アトロピン
またはその薬学的に許容される塩が、0.01重量%またはそれ未満の濃度で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記
低用量アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.01重量%~0.02重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記
低用量アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.001重量%~0.01重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記
低用量アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が、硫酸アトロピンである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記眼科用アトロピン組成物が、5.5~6.0のpHを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記眼科用アトロピン組成物が、5.5(+/-0.2)のpHを有する請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
キレート剤をさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記キレート剤が、ビカルボン酸、トリカルボン酸およびアミノポリカルボン酸からなる群から選択され、0.01重量%(+/-20%理論値)の量で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記等張化剤が、グリセロール、チオグリセロール、マンニトール、ラクトース、デキストロース、または、塩である請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記等張化剤が、260mOsm/kg~340mOsm/kgの範囲に前記組成物のオスモル濃度に調整する請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記等張化剤が、塩化ナトリウムであり、前記等張化剤が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.2重量%~1.1重量%の量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘度調整剤が、前記組成物の粘度を5cP~50cP(センチポアズ)の動粘度に調整する請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記
低用量アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.001重量%~0.01重量%の量で存在し、前記眼科用アトロピン組成物が、5.5~6.0のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記
低用量アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.001重量%~0.01重量%の量で存在し、前記眼科用アトロピン組成物が、前記眼科用アトロピン組成物の0.01重量%(+/-20%理論値)の量でキレート剤をさらに含み、前記眼科用アトロピン組成物が5.5~6.0のpHを有する請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同時継続中の米国仮特許出願第62/505,027号(2017年5月11日提出)に対する優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明の分野は、眼科用アトロピン組成物であり、特に、D2Oを含まず、低用量アトロピンまたはその薬学的に許容される塩、等張化剤、粘度調整剤を含む水溶液を含む、貯蔵安定の、防腐剤を含まない眼科用アトロピン組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景の記述は、本発明の理解に有用な情報を含む。本明細書で提供される情報のいずれかが先行技術であるか、または現在請求している発明と関連していること、または具体的または暗示的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
本明細書中のすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参照により援用されると示されているのと同じ程度に、参照により援用される。援用された参考文献における用語の定義または使用が本明細書で提供されるその用語の定義に矛盾しているかまたは反する場合、本明細書で提供されるその用語の定義が適用され、参考文献におけるその用語の定義は適用されない。
【0005】
アトロピンは、トロパ酸のトロピンエステルであり、一般に硫酸塩として入手可能である。水性アトロピンの非酵素的自発加水分解は、非毒性であるが眼科用途において生物学的活性を有さないトロピンおよびトロパ酸を生じる。例えば、ある種の注射可能な製剤については安定性が試験されており、新しいおよび古くなった製剤について経時的な分解が観察された(非特許文献1(Acad Emerg Med April 2004, Vol. 11, No. 4:329-334))。注目すべきことに、アトロピンの損失は、ほとんどの場合顕著であったが、出発濃度の25%未満であった。しかし、これらの製剤は0.4mg/ml~2mg/mlの高濃度でアトロピンを含み非常に低いpH(典型的にはpH4またはそれ未満)を有していたが、それは、ほとんどの場合、眼科用途には適していない。
【0006】
眼科用途では、アトロピンは、弱視治療のための1%薬剤溶液として調製されたAtropine Care(Akorn製)として市販されており、さらに0.01%w/wの防腐剤の塩化ベンザルコニウムを含有する。別の適応では、近視の進行を遅らせるために、いくつかの小児科の研究でもアトロピンが使用されてきた。より具体的には、アトロピンを局所的に滴下された小児は、同じ研究において対照群よりも遅い疾患進行を示した。有利なことに、低いアトロピン濃度(例えば、0.01~0.05%w/v(0.01%w/w)の範囲)を含む点眼剤を受けている小児は、光恐怖症および他の副作用が有意に少なかった(例えば、非特許文献2(Ophthalmology,2015:1-9)を参照)。実際、低用量(すなわち、0.01%)のアトロピンの使用は、近視の進行を遅くするのに好ましい治療選択肢となっている。残念なことに、塩化ベンザルコニウムの毒性作用が実験室および臨床で証明されており、涙液不安定性、杯細胞喪失、結膜扁平上皮化生およびアポトーシス、角膜上皮障壁の破壊、およびより深部の眼組織への損傷が挙げられる(例えば、非特許文献3(Prog Retin Eye Res. 2010 Jul 29(4):312-34)を参照)。
【0007】
さらなる既知の組成物および方法では、種々の緩衝成分および水溶性ポリマーを含むアトロピン製剤がWO2017/204262(特許文献1)に記載されており、その製剤の大部分が約4.3、4.5または5.0のpHを有し、アトロピン濃度が0.01%w/wである。このような製剤は、アトロピンの散瞳作用を悪化させることなく近視の進行を減少させることが示されているが、トロパ酸の増加によって測定されるアトロピンの安定性は、わずか4週間以内で望ましいものではなかった。
【0008】
正常な涙は約7.4のpHを有するので、眼科用溶液は涙液と同じpHを有するべきである。しかし、硫酸アトロピンは中性および塩基性pHに近い溶液中でより高い程度の加水分解を受けるため、硫酸アトロピンを含む眼科用溶液にとって、それは課題である。従って、アトロピンは、より酸性のpHを有する眼科用液においてより安定である。例えば、1%w/w濃度のアトロピンを含むアトロピン・ケアは、pH5.5に維持されるが、貯蔵寿命は15ヶ月に制限される。さらに、水溶液中におけるアトロピンからトロパ酸への分解は、アトロピン濃度の低下により著しく促進され(例えば、特許文献2(米国特許第9421199号))、特に低用量のアトロピン製剤において、さらなる化合物の安定性の問題である。
【0009】
加水分解を減少させるために、低用量アトロピン製剤中の水は、特許文献2(米国特許第9421199号)に記載されているように、少なくとも部分的に重水素水(重水)で置き換えることができる。安定性において動的同位体効果を使用することは概念的に魅力的であるが、それにもかかわらず、様々な欠点が残る。とりわけ、特許文献2(米国特許第9421199号)の製剤の少なくともいくつかは、依然として防腐剤を含んでいた。さらに、重水素水はH/D交換の対象であることが知られており、それ自体そのような製剤を受けている被験者に重水素を送達する。
【0010】
あるいは、アトロピンは、特許文献3(米国特許第2016/0338947号)に記載されているように、架橋された非分解性ポリマーマトリックスから低い濃度で送達されてもよい。残念なことに、ポリマーを角膜から離して維持するためには、典型的には十分に耐えられないか、または不快感を生じさせ得る成形されたインプラントを強膜上に着用しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2017/204262号
【文献】米国特許第9421199号
【文献】米国特許第2016/0338947号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Acad Emerg Med April 2004, Vol. 11, No. 4:329-334
【文献】Ophthalmology,2015:1-9
【文献】Prog Retin Eye Res. 2010 Jul 29(4):312-34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
すなわち、低濃度でアトロピンを含有し、生理学的に望ましいpHを有し、好ましくは防腐剤を含有しない、改良された貯蔵安定性の使用準備済み(ready-to-use)の組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明の主題は、改善された安定性および生理学的に許容されるpHを有する使用準備済みのアトロピン組成物に関する。最も好ましくは、そのような組成物は、実質的に防腐剤をも含まない。
【0015】
本発明の主題の1つの態様において、本発明者らは、緩衝液、等張化剤、粘度調整剤、およびアトロピンまたは薬学的に許容されるその塩を含む水溶液を含む液体貯蔵安定性低用量眼科用アトロピン組成物を企図しており、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、眼科用アトロピン組成物中に0.05重量%またはそれ未満の量で存在し、緩衝液は75mMまたはそれ未満の濃度を有し、眼科用アトロピン組成物は5.0~6.0のpHを有し、その眼科用アトロピン組成物は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後に、アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製される。
【0016】
好ましくは、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、硫酸アトロピンであり、眼科用アトロピン組成物中に、0.02重量%またはそれ未満の量で、または0.01重量%またはそれ未満の量で、0.01重量%~0.05重量%の量で、または0.001重量%~0.01重量%の量で存在する。最も典型的には、緩衝液は、60mMまたはそれ未満、または50mMまたはそれ未満の濃度を有する。緩衝剤は一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含むことがさらに企図される。さらなる実施形態では、組成物は、キレート剤、典型的には、ビカルボン酸、トリカルボン酸またはアミノポリカルボン酸をさらに含み、キレート剤は、眼科用アトロピン組成物中に0.01w%またはそれ未満の量で存在する。
【0017】
さらに、眼科用アトロピン組成物は、pHが5.0(+/-0.2)、またはpHが5.5(+/-0.2)、またはpHが6.0(+/-0.2)であることが企図される。等張化剤は、眼科用アトロピン組成物中に0.2重量%~0.8重量%の量で存在する薬学的に許容される塩であることが好ましい。さらに別の実施形態では、粘度調整剤は、変性セルロース、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。さらに、眼科用アトロピン組成物が防腐剤を実質的に含まないことが一般に好ましい。
【0018】
従って、本発明者らは、緩衝液、等張化剤、キレート剤、粘度調整剤、およびアトロピンまたは薬学的に許容されるその塩を含む水溶液から実質的になる液体貯蔵安定性低用量眼科用アトロピン組成物も企図する。このような組成物では、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が眼科用アトロピン組成物中に0.05重量%またはそれ未満の量で存在し、緩衝液の濃度が75mMまたはそれ未満であり、眼科用アトロピン組成物が、5.0~6.0のpHを有することが好ましい。さらに、そのような眼科用アトロピン組成物は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後に、アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製される。
【0019】
最も典型的には、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は硫酸アトロピンであり、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、眼科用アトロピン組成物中に、0.02重量%またはそれ未満の量で、0.01重量%またはそれ未満の量で、または0.001重量%~0.01重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝液は60mMまたはそれ未満の濃度を有するか、または50mMまたはそれ未満の濃度を有する。緩衝剤は一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含むことがさらに企図される。キレート剤は、典型的には、ビカルボン酸、トリカルボン酸またはアミノポリカルボン酸である。例えば、適切なキレート剤には、典型的には眼科用アトロピン組成物中に0.01重量%またはそれ未満の量で存在するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が含まれる。
【0020】
他の実施形態では、眼科用アトロピン組成物は、5.0(+/-0.2)~5.5(+/-0.2)のpHを有するか、または5.5(+/-0.2)~6.0(+/-0.2)のpHを有し、および/または、等張化剤は、0.2重量%~0.8重量%の量で眼科用アトロピン組成物中に存在する薬学的に許容される塩である。適切な粘度調整剤には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースがある。最も典型的には、眼科用アトロピン組成物は、防腐剤を実質的に含まない。
【0021】
例えば、企図される組成物は、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が眼科用アトロピン組成物中に0.001重量%~0.01重量%の量で存在し、緩衝剤が一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含み濃度が50mMまたはそれ未満であり、粘度調整剤がヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、眼科用アトロピン組成物が実質的に防腐剤を含まないものである。他の例において、企図される組成物は、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が眼科用アトロピン組成物中に0.01重量%~0.05重量%の間の量で存在し、緩衝剤が一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含み濃度が50mMまたはそれ未満であり、粘度調整剤がヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、眼科用アトロピン組成物が防腐剤を実質的に含まないものである。
【0022】
異なる観点から見ると、本発明者らは、低用量のアトロピンまたはその薬学的に許容される塩、低強度の緩衝液、薬学的に許容される塩、およびセルロース系粘度調整剤を含む
水溶液を含む貯蔵安定性の防腐剤を含まない眼科用アトロピン組成物も企図し、その低強度緩衝液は50mMまたはそれ未満の濃度を有し、低用量アトロピンは0.05重量%またはそれ未満の濃度で存在し、眼科用アトロピン組成物は実質的に防腐剤を含まない。
【0023】
例えば、このような組成物中の低用量アトロピンは、0.01重量%またはそれ未満の濃度で存在するか、または眼科用アトロピン組成物中に0.01重量%~0.02重量%の量で存在するか、または眼科用アトロピン組成物中に0.001重量%~0.01重量%の量で存在する。最も典型的には、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は硫酸アトロピンであり、および/または、低強度緩衝液は第1および第2緩衝成分(例えば一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウム)を含む。最も典型的には、眼科用アトロピン組成物は、5.0~6.0のpH、または5.5(+/-0.2)~6.0(+/-0.2)のpHを有する。企図される組成物は、典型的には、好ましくは0.01重量%(+/-20% 理論値)の量で存在するキレート剤(例えば、ビカルボン酸、トリカルボン酸、アミノポリカルボン酸)も含む。薬学的に許容される塩が、眼科用アトロピン組成物中に0.2重量%~0.8重量%の量で、または0.5重量%(+/-0.2重量%)の量で存在することがさらに企図される。
【0024】
好ましいセルロース系粘度調整剤には、典型的には眼科用アトロピン組成物の0.5重量%(+/-0.1重量%)の量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースがある。好ましい実施形態では、眼科用アトロピン組成物は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後に、アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製される。
【0025】
例えば、企図される組成物において、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、眼科用アトロピン組成物中に0.001重量%~0.01重量%の量で存在し、低強度緩衝液は一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含み、眼科用アトロピン組成物は、5.5(+/-0.2)~6.0(+/-0.2)のpHを有する。別の例では、企図される組成物において、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が眼科用アトロピン組成物中に、0.001重量%~0.01重量%の量で存在し、眼科用アトロピン組成物は、眼科用アトロピン組成物の0.01重量%(+/-20%:理論値)の量でさらにキレート剤を含み、眼科用アトロピン組成物は、5.5(+/-0.2)~6.0(+/-0.2)のpHを有する。あるいは、企図される組成物中の低強度緩衝液は、一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含み、組成物は、眼科用アトロピン組成物の0.01重量%(+/-20%:理論値)の量のキレート剤をさらに含み、眼科用アトロピン組成物は、5.5(+/-0.2)~6.0(+/-0.2)のpHを有し、塩は、眼科用アトロピン組成物中に0.5重量%(+/-0.2重量%)の量で存在し、セルロース系粘度調整剤は、眼科用アトロピン組成物中に0.5重量%(+/-0.1重量%)の量で存在する。
【0026】
本発明の主題のさらに別の態様では、本発明者らは、液体低用量眼科用製剤中のアトロピンの貯蔵安定性を増加させる方法も企図している。典型的な低用量は、眼科用製剤の0.01重量%~0.02重量%、または0.001重量%~0.01重量%、または0.01重量%またはそれ未満である。好ましい方法は、第1および第2の緩衝成分を含む低強度緩衝系を用いて水溶液を調製する工程を含み、低強度緩衝系は75mMまたはそれ未満の緩衝液の濃度を有し、および、水溶液中に医薬的に許容される塩、粘度調整剤およびキレート剤を含めるさらなる工程を含む。さらに別の工程において、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、低用量(例えば、眼科用製剤の0.05重量%またはそれ未満)で製剤に含まれ、眼科用製剤のpHは、5~6のpHに調整される。好ましくは、眼科用製剤は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後、アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製される。
【0027】
例えば、第1および第2の緩衝成分は、それぞれ一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムであり、低強度緩衝系は、50mMまたはそれ未満の緩衝液濃度を有する。さらに、薬学的に許容される塩は、眼科用製剤の0.5重量%(+/-0.2重量%)の量で眼科用アトロピン組成物中に典型的に存在する塩化ナトリウムであることが企図される。さらに、キレート剤は、好ましくは、眼科用製剤の0.01重量%(+/-20%:理論値)の量の、ビカルボン酸、トリカルボン酸またはアミノポリカルボン酸(例えば、EDTA)であることが好ましい。
【0028】
他の実施形態では、粘度調整剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース系粘度調整剤である。最も典型的には、セルロース系粘度調整剤は、眼科用製剤の0.5重量%(+/-0.1重量%)の量で存在する。さらに別の実施形態では、セルロース系粘度調整剤は、個別の溶液として調製され、緩衝系、薬学的に許容される塩、粘度調整剤、キレート剤およびアトロピンまたは薬学的に許容されるその塩を含む水溶液と組み合わされる。所望であれば、水溶液は脱酸素水を用いて調製される。最も典型的には、製剤のpHは5.5(+/-0.2)~6.0(+/-0.2)であり、アトロピンまたは薬学的に許容されるその塩は硫酸アトロピンである。好ましくは、企図される方法は、眼科用製剤を滅菌する工程、特に滅菌濾過も含む。所望により、眼科用製剤は、次いで、一回使用または複数回投与容器に充填される。
【0029】
さらに、本発明者らは、第1の容器内に低強度緩衝液低用量アトロピン溶液を調製する工程と、低強度緩衝液低用量アトロピン溶液を滅菌濾過に付して滅菌低強度緩衝液低用量アトロピン溶液を得る工程を含む、貯蔵安定性液体低用量アトロピン眼科用製剤を調製する方法も企図しており、ここで、低強度緩衝液は、眼科用製剤中に75mMまたはそれ未満の濃度を有する低強度緩衝系を形成する第1および第2緩衝成分を有し、アトロピンは、眼科用製剤の0.05重量%またはそれ未満の量で存在し、低強度緩衝液低用量アトロピン溶液は、等張化剤およびキレート剤をさらに含む。別のステップでは、ポリマー溶液を第2の容器内で調製し、ポリマー溶液を滅菌濾過以外のプロセス(例えばオートクレーブ処理)で滅菌して滅菌ポリマー溶液を得る。最も典型的には、ポリマー溶液は、組み合わせた時に低強度緩衝液低用量アトロピン溶液の粘度を改変するためのポリマーを含む。さらに別の工程で、滅菌低強度緩衝液低用量アトロピン溶液と滅菌ポリマー溶液を組み合わせて、滅菌液体低用量眼科用製剤を得る。
【0030】
典型的には、第1および第2の緩衝成分は、それぞれ一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムであり、および/または、低強度緩衝系は、眼科用製剤中に50mMまたはそれ未満の緩衝液濃度を有する。アトロピンは、典型的には、眼科用製剤の0.01重量%~0.02重量%、または0.001重量%~0.01重量%、または0.01重量%またはそれ未満の量で存在する。最も好ましくは、等張化剤は、眼科用製剤の0.5重量%(+/-0.2重量%)の量の薬学的に許容される塩、典型的には塩化ナトリウムである。さらに、キレート剤は、典型的には、ビカルボン酸、トリカルボン酸またはアミノポリカルボン酸(例えば、EDTA)であり、好ましくは、眼科用製剤の0.01重量%(+/-20%:理論値)の量である。
【0031】
ポリマーは、セルロース系ポリマー、特にヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースであることがさらに企図される。好ましくは、セルロース系ポリマーは、眼科用製剤の0.5重量%(±0.1重量%)の量で存在し、および/または、低強度緩衝液低用量アトロピン溶液のpHは、5~6、または5.5(±0.2)~6.0(±0.2)のpHに調節される。
【0032】
さらなる実施形態では、組み合わせ工程は、滅菌低強度緩衝液低用量アトロピン溶液と滅菌ポリマー溶液とを少なくとも30分間混合する工程を含み、そして任意に、眼科用製剤を複数回投与容器に充填する工程をさらに含む。好ましくは、眼科用製剤は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後、アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製される。
【0033】
結果として、本発明者らは、液体貯蔵安定性低用量アトロピン眼科用製剤を含有する第1の容器を含み、その第1の容器は、使い捨ての1回使用の容器または複数回投与容器として構成され、第1の容器を囲む第2の容器を含み、その液体貯蔵安定低用量アトロピン眼科用製剤は、緩衝液、等張化剤、粘度調整剤、およびアトロピンまたは薬学的に許容されるその塩を含む水溶液を含み、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、眼科用アトロピン組成物中に0.05重量%またはそれ未満の量で存在し、緩衝液の濃度は75mMまたはそれ未満であり、眼科用アトロピン組成物はpHが5.0~6.0であり、眼科用アトロピン組成物は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後、アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製されるものである、近視の治療用キットも企図する。
【0034】
例えば、いくつかの実施形態では、第1の容器は、ブロー・フィル・シール(BSF)容器であり、および/または、第2の容器は、積層金属化ポーチである。他の実施形態では、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、眼科用アトロピン組成物中に、0.01重量%またはそれ未満の量、または0.01重量%~0.05重量%の量、または0.001重量%~0.01重量%の量で存在する。最も好ましくは、緩衝液は、75mMまたはそれ未満または50mMまたはそれ未満の濃度を有する。例えば、好ましい緩衝液は、一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含み、さらに、眼科用アトロピン組成物中に0.01重量%またはそれ未満の量で存在するキレート剤(例えば、ビカルボン酸、トリカルボン酸、またはEDTAなどのアミノポリカルボン酸)を含んでよい。
【0035】
最も典型的には、眼科用アトロピン組成物は、pHが5.0(+/-0.2)、またはpHが5.5(+/-0.2)、またはpHが6.0(+/-0.2)であり、さらに、等張化剤が、眼科用アトロピン組成物中に0.2重量%~0.8重量%の量で存在する薬学的に許容される塩であることが企図される。好ましい粘度調整剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースのような変性セルロースである。さらに、眼科用アトロピン組成物は、防腐剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0036】
本発明の実施態様は、緩衝液、等張化剤、粘度調整剤、およびアトロピンまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液を含む液体貯蔵安定性低用量の眼科用アトロピン組成物であって、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が前記眼科用アトロピン組成物中に0.05重量%またはそれ未満の量で存在し、前記緩衝液は75mMまたはそれ未満の濃度を有し、前記眼科用アトロピン組成物は5.0~6.0のpHを有し、 前記眼科用アトロピン組成物は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後に、前記アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製される、組成物である。さらに、前記アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.02重量%またはそれ未満の量で存在するか、または前記アトロピンまたはその薬学的に許容される塩が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.01%~0.05重量%の量で存在する、また、前記眼科用アトロピン組成物が実質的に防腐剤を含まない、また、前記緩衝液が60mMまたはそれ未満の濃度を有する、また、前記緩衝液が、一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムを含む、また、さらに、ビカルボン酸、トリカルボン酸およびアミノポリカルボン酸からなる群から選択されるキレート剤を含む、また、前記キレート剤が、前記眼科用アトロピン組成物中に0.01重量%またはそれ未満の量で存在する、また、前記眼科用アトロピン組成物のpHが5.5(+/-0.2)である、また、前記等張化剤が薬学的に許容される塩であり、前記塩が前記眼科用アトロピン組成物中に0.2重量%~0.8重量%の量で存在する、また、前記粘度調整剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択される変性セルロースである。
【0037】
本発明の実施態様は、液体低用量眼科用製剤中のアトロピンの貯蔵安定性を増加させる方法であって、第1および第2の緩衝成分を含む低強度緩衝系を用いて水溶液を調製する工程であって、前記低強度緩衝系は75mMまたはそれ未満の緩衝液の濃度を有する、工程、前記水溶液中に、薬学的に許容される塩、粘度調整剤およびキレート剤を含ませる工程 、前記水溶液中に、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩を低用量で含ませる工程であって、前記低用量が眼科用製剤の0.05重量%またはそれ未満である、工程、前記眼科用製剤のpHを5~6のpHに調整する工程、を含み、ここで、前記眼科用製剤は、25℃、相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵した後に、アトロピンの分解により、0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように調製される、方法であり、さらに、前記低用量が、前記眼科用製剤の0.01重量%~0.02重量%である、また、前記pHが5.5(+/-0.2)~6.0(+/-0.2)である、また、前記第1および第2の緩衝成分が、それぞれ、一塩基性および二塩基性リン酸ナトリウムである、また、前記低強度緩衝系が、50mM緩衝液またはそれ未満の濃度を有する、また、前記薬学的に許容される塩が塩化ナトリウムであり、前記塩が、前記眼科用製剤の0. 5重量%(+/-0.2重量%)の量で前記眼科用アトロピン組成物中に存在する、また、前記キレート剤が、ビカルボン酸、トリカルボン酸およびアミノポリカルボン酸からなる群から選択され、前記キレート剤が前記眼科用製剤の0.01重量%(+/-20%理論値)の量で存在する、前記粘度調整剤が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択されるセルロース系粘度調整剤である、また、前記粘度調整剤が別個の溶液として調製され、緩衝系、薬学的に許容される塩、キレート剤、およびアトロピンまたはその薬学的に許容される塩を含有する水溶液と組み合わされる、また、前記セルロース系粘度調整剤を含有する前記別個の溶液がオートクレーブ処理によって滅菌され、前記水溶液が滅菌濾過によって滅菌される。
【0038】
本発明の主題の様々な目的、特徴、局面および利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、貯蔵安定で低用量のアトロピン眼科用製剤のための例示的な製造プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の主題は、滅菌されており、好ましくは実質的に防腐剤を含まない、使用準備済みの形態のアトロピン(およびその薬学的に許容される塩)の安定した水性眼科用組成物に関する。企図された組成物の安定性は、低いアトロピン濃度でのアトロピンのトロパ酸への低分解ならびに生理学的に望ましいpHによって特徴付けられる。例えば、液体の貯蔵安定性低用量眼科用アトロピン組成物は、典型的には、製剤中のアトロピンの分解により0.35%またはそれ未満のトロパ酸が形成されるように、25℃および相対湿度60%で少なくとも2ヶ月間貯蔵したときの安定性を有する。最も好ましくは、組成物はまた防腐剤を含まず、特に防腐剤として一般的に使用されている塩化ベンザルコニウムを含まない。アトロピンの安定性は、濃度が低下するおよびpHが上昇すると低下することが一般的に知られているので、このような安定性は、眼科用組成物中のアトロピン濃度が比較的低く(例えば、0.02重量%)、組成物が比較的高いpH(例えば、5.0~6.0)を有する場合に特に予想外である。
【0041】
いかなる特定の理論または仮説にも拘束されることを望まないが、本発明者らは、中性pHに近いpH(例えば、pH5.0~6.0)での二成分緩衝系を使用する低緩衝強度が、アトロピン濃度が比較的低い(例えば、0.05重量%またはそれ未満、0.02重量%またはそれ未満、または0.01重量%またはそれ未満)場合、アトロピンからトロパ酸への加水分解を減少させると考えている。特記しない限り、百分率はすべて重量パーセント(重量%)または体積に対する重量(w/v)として表される。さらに、本明細書において提供される硫酸アトロピンの重量パーセントは、硫酸アトロピン一水和物に基づくことに留意されたい。
【0042】
より具体的には、および以下により詳細に記載されるように、本発明者らは、生理的pHに近いpHを有し、好ましくは製剤中に防腐剤を欠いている使用準備済みの濃厚物(例えば、近視の治療用)中のアトロピンを用いて低用量眼科用アトロピン組成物を調製できることを発見した。驚くべきことに、本明細書に記載の眼科用組成物の25℃および相対湿度60%での2ヶ月の貯蔵安定性は著しく高く、アトロピン加水分解によるトロパ酸形成は大部分の場合、0.35%またはそれ未満、0.30%またはそれ未満、または0.28%またはそれ未満である。同様に、40℃および相対湿度75%で2ヶ月間の促進された貯蔵条件下での企図製剤は、ほとんどの場合、1.7%またはそれ未満、1.5%またはそれ未満、1.3%またはそれ未満、または1.2%またはそれ未満のトロパ酸を形成する同様に好ましいプロフィールも示した。
【0043】
従って、本発明の主題の企図されたアトロピン製剤は、投与前に濃縮アトロピン製剤を希釈剤に希釈することに伴う不都合を回避する、使用準備済みの形態で有利に提供することができる。従って、この使用準備済みの製剤は、微生物汚染リスクおよび/または希釈に伴う計算エラーも排除する。最も典型的には、企図製剤は、近視、特に小児の近視の治療のために医師によって一般に要求される濃度の範囲で利用可能となる。その結果、アトロピンは、典型的には、0.05重量%またはそれ未満の量、0.02重量%またはそれ未満の量、または0.01重量%またはそれ未満の量で製剤中に存在する。例えば、アトロピンまたはその薬学的に許容される塩は、0.01重量%~0.05重量%、0.001重量%~0.02重量%、または0.001重量%~0.01重量%の量で眼科用組成物中に存在し得る。容易に理解されるように、企図された製剤の調製のためのアトロピンは、無機塩(例えば、HCl塩)および有機塩(例えば、硫酸塩)を含む、アトロピンまたはその任意の適切な薬学的に許容される塩であり得る。同様に、所望であれば、アトロピンはまた、任意の適切なプロドラッグ形態で使用することができる。
【0044】
例えば、1つの例示的な実施形態において、企図されるアトロピン製剤中のアトロピンの濃度は、約0.001%~約0.05%(w/w)、または約0.005%~約0.045%(w/w)、または約0.006%~約0.035%(w/w)、または約0.007%~約0.030%(w/w)、または約0.008%~約0.025%(w/w)、または約0.009%~約0.022%(w/w)、または約0.01%~約0.021%(w/w)、または約0.01%~約0.02%(w/w)である。
【0045】
他の例示的な実施形態において、企図されるアトロピン製剤におけるアトロピンの濃度は、約0.001%~約0.05%(w/w)、または約0.005%~約0.045%(w/w)、または約0.006%~約0.035%(w/w)、または約0.007%~約0.030%(w/w)、または約0.008%~約0.025%(w/w)、または約0.009%~約0.022%(w/w)、または約0.01%~約0.021%(w/w)、または約0.01%~約0.02%である。
【0046】
さらに例示的な実施形態において、企図されるアトロピン製剤中のアトロピンの濃度は、約0.001%、または約0.002%、または約0.003%、または約0.004%、または約0.005%、または約0.006%、または約0.007%、または約0.008%、または約0.009%、または約0.01%、または約0.011%、または約0.012%、または約0.013%、または約0.014%、または約0.015%、または約0.016%、または約0.017%、または約0.018%、または約0.019%、または約0.02%、または約0.021%、または約0.022%、または約0.023%、または約0.024%、または約0.025%、または約0.026%、または約0.027%、または約0.028%、または約0.029%、または約0.030%、または約0.031%、または約0.032%、または約0.033%、または約0.034%、または約0.035%、または約0.036%、または約0.037%、または約0.038%、または約0.039%、または約0.040%、または約0.041%、または約0.042%、または約0.043%、または約0.044%、または約0.045%、または約0.046%、または約0.047%、または約0.048%、または約0.049%、または約0.0499%(w/w)である。
【0047】
さらに例示的な実施形態において、企図されるアトロピン製剤中のアトロピンの濃度は、約0.001%、または0.002%、または0.003%、または0.004%、または0.005%、または0.006%、または0.007%、または0.008%、または0.009%、または0.01%、または0.011%、または0.012%、または0.013%、または0.014%、または0.015%、または0.016%、または0.017%、または0.018%、または0.019%、または0.02%、または0.021%、または0.022%、または0.023%、または0.024%、または0.025%、または0.026%、または0.027%、または0.028%、または0.029%、または0.030%、または0.031%、または0.032%、または0.033%、または0.034%、または0.035%、または0.036%、または0.037%、または0.038%、または0.039%、または0.040%、または0.041%、または0.042%、または0.043%、または0.044%、または0.045%、または0.046%、または0.047%、または0.048%、または0.049%、または0.0499%(w/w)である。
【0048】
さらなる例示的な実施形態において、企図されるアトロピン製剤中のアトロピンの濃度は、約0.005%~約0.015%(w/w)、または約0.015%~約0.025%(w/w)、または約0.01%(w/w)、または約0.02%(w/w)、または0.005%~0.015%(w/w)、または0.015%~0.025%(w/w)、または0.01%(w/w)、または0.02%(w/w)、または約0.001%(w/w)~約0.01%(w/w)、または約0.005%(w/w)~約0.02%(w/w)、または約0.008%(w/w)~約0.012%(w/w)である。
【0049】
適切な緩衝液は、一般に、中性付近のpH範囲、例えばpH4.0~7.5、またはpH4.5~6.5、より好ましくはpH5.0~6.0において、企図される液体製剤のpHを安定化する緩衝液である。従って、最も典型的には、企図された製剤のpHは、6.5またはそれ未満、より典型的には6.0またはそれ未満、最も典型的には5.8未満であるが、4.5超、より典型的には5.0超、最も典型的には5.2超である。例えば、適切なアトロピン組成物は、pHが5.0(+/-0.2)、pHが5.5(+/-0.2)、またはpHが6.0(+/-0.2)であってよい。
【0050】
本発明の主題のさらなる局面において、本発明者らは、緩衝系および/または緩衝液が、以下により詳細に考察されるように、アトロピン安定性に対する予期しない影響を有し得ることを発見した。最も顕著なことに、緩衝液濃度をpH5.0~6.0で75mMまたはそれ未満に調整すると、アトロピン加水分解の副産物であるトロパ酸のHPLC定量によって決定されるように、正常および加速貯蔵条件においてアトロピンの安定性が劇的に高まった。本発明の主題に限定されるものではないが、緩衝液強度は、典型的には比較的低く、例えば、100mMまたはそれ未満、75mMまたはそれ未満、60mMまたはそれ未満、50mMまたはそれ未満、または5mM~50mM(例えば、10mM、20mM、30mM、40mM)である。
【0051】
従って、例示的な実施形態では、医薬組成物中の緩衝系の濃度は、約10mM~約75mM、または約10mM~約60mM、または約0.1mM~約60mM、または約0.1mM~約55mM、または約0.1mM~約50mM、または約5mM~約60mM、または約0.1mM~約10mM、または約1mM~約10mM、または約9mM~約20mM、または約15mM~約25mM、または約19mM~約29mM、または約24mM~約34mM、または約29mM~約39mM、または約34mM~約44mM、または約39mM~約49mM、または約44mM~約54mM、または約19mM~約54mM、または約25mM~約54mMである。
【0052】
当然のことながら、当該分野で公知の多くの種類の緩衝系および緩衝液があり、それらの全てが本明細書での使用に適しているようであり、酸および酸の塩、第1および第2の塩(例えば、一塩基性および二塩基性塩)および両性緩衝分子を含む緩衝系が挙げられると解すべきである。例えば、酸および酸の塩を含む適切な緩衝系として、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液、エタン酸/エタン酸ナトリウム緩衝液およびホウ酸/ホウ酸ナトリウムが挙げられ、第1および第2塩を有する適切な緩衝液として、一塩基性リン酸ナトリウム/二塩基性リン酸ナトリウム、または一塩基性リン酸ナトリウム/クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。同様に、適切な両性緩衝分子としては、HEPES、MOPS、PIPES、MESなどが挙げられる。
【0053】
加えて、さらに企図される局面において、製剤は、1つ以上のキレート剤、特に金属イオンキレート剤も含む。例えば、適切なキレート剤としては、種々のビカルボン酸、トリカルボン酸、およびアミノポリカルボン酸、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)およびペンタ(カルボキシメチル)ジエチレントリアミン(DTPA)、およびそれらの塩および水和物が挙げられる。本発明の主題に限定されるものではないが、金属イオンキレート剤は、アトロピンのベースラインおよび金属イオン刺激加水分解の両方を遅くすると考えられる。注目すべきことに、本発明者らは、キレート剤の望ましい効果が比較的低濃度のキレート剤で観察可能であることを予想外にも観察した。例えば、10μg/ml~50μg/ml、50μg/ml~250μg/ml、および100μg/ml~500μg/mlのキレート剤濃度において、アトロピンのベースラインおよび金属イオン刺激加水分解の減少が観察された。異なる観点から見ると、0.03重量%またはそれ未満、0.02重量%またはそれ未満、または0.01重量%またはそれ未満のキレート剤濃度が特に有利である。興味深いことに、キレート剤、特にアミノポリカルボン酸は、キレート剤のプロトン化形を好む比較的低いpHにも拘わらず低濃度で安定化効果を保持した。
【0054】
従って、適切なキレート剤としては、単量体ポリ酸、例えば、EDTA、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジメルカプトプロパンスルホン酸(DMPS)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、アミノトリメチレンホスホン酸(ATPA)、クエン酸、それらの眼科的に許容される塩、および上記のいずれかの組み合わせが挙げられる。さらに適切なキレート剤としては、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、およびヘキサメタリン酸塩、クロロキンおよびテトラサイクリンなどのキレート化抗生物質、イミノ基または芳香環に2つ以上のキレート化窒素原子を含む窒素含有キレート剤(例えば、ジイミン、2,2'-ビピリジン等)、および種々のポリアミン、例えば、シクラム(1,4,7,11-テトラアザシクロテトラデカン)、N-(C1-C30アルキル)置換シクラム類(例えば、ヘキサデシクラム、テトラメチルヘキサデシルシクラム)、ジエチレントリアミン(DETA)、スペルミン、ジエチルノルスペルミン(DENSPM)、ジエチルホモスペルミン(DEHOP)、およびデフェロキサミン(N'-[5-[[4-[[5-(アセチルヒドロキシアミノ)ペンチル]アミノ]-1,4-ジオキソブチル]ヒドロキシ-アミノ]ペンチル]-N'-(5-アミノペンチル)-N-ヒドロキシブタンジアミド(デスフェリオキサミンBおよびDFOとしても知られている)が挙げられる。
【0055】
適切な塩に関して、塩は、浸透性(tonicity)を増大させるために使用することができる薬学的に許容される塩であると考えられる。従って、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、または少なくとも0.7重量%の濃度の薬学的に許容される塩、特にNaClが考えられる。例えば、適切な塩濃度は0.2重量%~1.1重量%、0.4重量%~0.9重量%、または0.3重量%~0.7重量%である。特定の塩濃度に応じて、追加の等張化剤(tonicity agent)を添加することができ、適切な等張化剤としては、グリセロール、チオグリセロール、マンニトール、ラクトースおよびデキストロースが挙げられる。使用される等張化剤(tonicity adjusting agent)の量は、260~340mOsm/kgの範囲の製剤のオスモル濃度を得るように調整することができる。浸透圧計を使用して、所望のオスモル濃度を得るために加えられる等張化剤(tonicity adjusting agent)の量を確認し調整することができる。
【0056】
企図されている製剤は、眼科用製剤として使用される。製剤は、製剤の粘度を5~50cP(センチポアズ)、より好ましくは10~40cP、最も好ましくは10~30cPの動粘度に調整するための粘度調整剤も含むことが一般に好ましい。種々のポリマー、グリセロールおよび多糖類ポリマー(これらはすべて本明細書に含まれる)のような当技術分野で公知の粘度調整剤が数多く存在するが、特に好ましい粘度調整剤にはセルロース系粘度調整剤が含まれる。例えば、特に好ましいセルロース系粘度調整剤としては、変性および未変性のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0057】
容易に理解されるように、粘度調整剤の正確な量は、使用される調整剤のタイプおよび所望の最終粘度に依存して変化し得る。例えば、粘度調整剤がセルロース系調整剤であって最終粘度を1~30cPとすべき場合、調整剤の適切な量は、典型的には、眼科用アトロピン組成物の0.5重量%(+/-0.1重量%)の範囲内となる。当業者であれば、当技術分野で周知の粘度計(例えば、回転型、振動型など)を使用して粘度を所望の測定値に容易に調整することができる。
【0058】
例示的な実施形態で、企図される眼科用製剤中の粘度調整剤の適切な濃度は、5%(w/w)未満の任意の値であり得る。例えば、粘度調整剤の適切な濃度として、0.01%~4.99%(w/w)、または0.05%~4.50%(w/w)、0.10%~3.50%(w/w)、0.15%~3.00%(w/w)、0.20%~2.50%(w/w)、0.21%~2.20%(w/w)、0.22%~2.10%(w/w)、0.23%~2.00%(w/w)、0.24%~1.90%(w/w)、0.25%~1.80%(w/w)、0.26%~1.70%(w/w)、0.27%~1.60%(w/w)、0.28%~1.50%(w/w)、0.29%~1.40%(w/w)、0.30%~1.30%(w/w)、0.31%~1.2%(w/w)、0.32%~1.10%(w/w)、0.33%~1.00%(w/w)、0.34%~0.90%(w/w)、0.35%~0.80%(w/w)、0.36%~0.75%(w/w)、0.37%~0.70%(w/w)、0.38%~0.69%(w/w)、0.39%~0.68%(w/w)、0.40%~0.67%(w/w)、0.41%~0.66%(w/w)、0.42%~0.65%(w/w)、0.43%~0.64%(w/w)、0.44%~0.63%(w/w)、0.45%~0.62%(w/w)、0.45%~0.61%(w/w)、0.45%~0.60%(w/w)、0.45%~0.59%(w/w)、0.45%~0.58%(w/w)、0.45%~0.57%(w/w)、0.45%~0.56%(w/w)、0.45%~0.55%(w/w)、0.46%~0.54%(w/w)、0.47%~0.53%(w/w)、0.48%~0.52%(w/w)、または0.49%~0.51%(w/w)が挙げられる。
【0059】
従って、企図される眼科用製剤中の粘度調整剤の適切な濃度としては、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.20%、0.21%、0.22%、0.23%、0.24%、0.25%、0.26%、0.27%、0.28%、0.29%、0.30%、0.31%、0.32%、0.33%、0.34%、0.35%、0.36%、0.37%、0.38%、0.39%、0.40%、0.41%、0.42%、0.43%、0.44%、0.45%、0.46%、0.47%、0.48%、0.49%、0.50%、0.51%、0.52%、0.53%、0.54%、0.55%、0.56%、0.57%、0.58%、0.59%、0.60%、0.61%、0.62%、0.63%、0.64%、0.65%、0.66%、0.67%、0.68%、0.69%、0.70%、0.71%、0.72%、0.73%、0.74%、0.75%、0.76%、0.77%、0.78%、0.79%、0.80%、0.81%、0.82%、0.83%、0.84%、0.85%、0.86%、0.87%、0.88%、0.89%、0.90%、0.91%、0.92%、0.93%、0.94%、0.95%、0.96%、0.97%、0.98%、0.99%、1.00%、1.10%、1.20%、1.30%、1.40%、1.50%、1.60%、1.70%、1.80%、1.90%、2.00%、2.10%、2.20%、2.30%、2.40%、2.50%、2.60%、2.70%、2.80%、2.90%、3.00%、3.10%、3.20%、3.30%、3.40%、3.50%、3.60%、3.70%、3.80%、3.90%、4.00%、4.10%、4.20%、4.30%、4.40%、4.50%、4.60%、4.70%、4.80%、4.90%および4.99%(w/w)が挙げられる。
【0060】
企図される組成物が実質的に防腐剤を含まない(すなわち、防腐剤が0.01重量%以下、より典型的には0.005重量%以下)ことをさらに認識すべきである。例えば、典型的には含まれない防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、セトリミドまたは塩化もしくは臭化セトリモニウム、臭化ベンゾドデシニウム、ミラミン、塩化セチルピリジニウム、塩化ポリドロニウムまたはポリクオータニウム-1、ポリクオータニウム-42(ポリキセトニウムとしても知られている)、塩化セパゾニウム、フェニルマーキュリー塩(酢酸塩、ホウ酸塩または硝酸塩)、メルキュリオチオレートナトリウム(別名はチオメルサールまたはチオメロサール)およびメルキュロブトールのような水銀誘導体、ジグルコン酸クロルヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)のようなアミジン、クロロブタノール、フェニルエタノール、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾールまたはフェノキシエタノールのようなアルコール類、パラベンまたはエステル、例えばパラヒドロキシ安息香酸、メチルパラベンおよびプロピルパラベンである。
【0061】
実際、本発明者らは、防腐剤を含まない製剤が防腐剤を含む製剤と同じ安定性を有することを予想外に見出した。
【0062】
企図される製剤の滅菌に関して、企図される製剤は、0.22ミクロンフィルターを通す濾過、加熱滅菌、オートクレーブ処理および照射(例えば、ガンマ線、電子線、マイクロ波)を含む全ての既知の滅菌方法を使用して滅菌され得ることを理解すべきである。有利には、また以下により詳細に示すように、本発明者らは、独立して濾過滅菌したアトロピン、緩衝液および塩溶液から121℃の高圧飽和蒸気を用いて(少なくとも5分間、少なくとも10分間、または少なくとも15分間)別々に粘性剤を滅菌した2つのバッチから企図製剤を作ることができることも見出した。
【0063】
例えば、図に示される本発明の主題の1つの好ましい態様において、眼科用溶液の製造は、粘度調整剤溶液が別々に薬剤液から調製され滅菌される2つの異なる製造経路を用いて行われる。最も注目すべきことに、このようなプロセスは、アトロピン、等張化剤、緩衝成分およびキレート剤を迅速かつ完全に溶解させる共に、アトロピンの熱加水分解を減少させまたは完全に排除する滅菌プロセスも可能にする。滅菌したアトロピン溶液が調製されると、次いで、その溶液を、これも滅菌された粘度調整剤溶液と組み合わせることができる。概念的には、アトロピン溶液の場合のように濾過滅菌を用いて滅菌することができるが、オートクレーブを用いた加熱滅菌は、粘度調整剤を完全に溶解させ、粘性溶液を薬剤溶液と容易に混合できるようにする。従って、別の観点から見ると、個別の調製および滅菌プロセスは、そうでない場合に単一バッチ調製に伴う種々の困難、例えば、緩衝液、等張化剤およびキレート剤を強く攪拌しながら溶解させるための化合物混合時間の増加、より高い粘度による無菌濾過時間の増加などを回避したと理解すべきである。
【0064】
このようにして達成された安定性に基づいて、本明細書で企図される組み合わせ溶液は、粒子フィルター(例えば、40ミクロンのポリプロピレンフィルター)を介してさらに濾過され、1回使用または複数回投与方式の予備成形容器を用いて、またはブロー・フィル・シール(BFS)プロセスを用いてポリエチレン、ポリプロピレンまたは低密度ポリエチレン容器に充填することができる。BFSは、人間の介入を必要としない1つの連続した自動化されたシステムにおいて容器が形成され、充填され、シールされる、高度な無菌作成形態である。このプロセスは、パリソンと呼ばれる溶融プラスチックの熱い中空パイプ状のプラスチック顆粒を押し出すことから始まる。次のステップは、プラスチックが熱く溶融状態のときに、そこを通して容器が充填される上部開口部を有する容器のブロー成形である。充填されると、容器は密閉され、冷却される。ブロー・フィル・シールプロセスは数秒で行われ、企図された即時注入組成物が、アトロピンが実質的に分解されずに(例えば、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満の分解)、温度および圧力要件を耐えるように調製されるのが有利である。
【0065】
アトロピン製剤が大容積のポリマー製半透性注入容器(例えば、BFS容器、典型的には1.0mLのBFSアンプル)に充填されると、その容器を、任意に、アルミニウムパウチを含む二次包装システムで積層または被覆することができる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供され、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0067】
実施例
以下の実施例は、本発明の主題による製剤をもたらすいくつかの実験を説明するが、決して特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0068】
定量的分析
Ultra Performance Liquid Chromatography(UPLC)に基づく複合試験法を開発し、関連する化合物の同定、検査および決定を1回の操作で実行した。これは、UV吸収スペクトルのオンライン取得を含むUV検出を伴う逆相勾配UPLCを使用することによって達成された。2μm未満の粒子を有するオクタデシルシリル官能化シリカをクロマトグラフィー分析用の固定相として使用した。移動相は、酸性pHの水性緩衝溶液をアセトニトリル-水混合物と混合することによって調製される。活性成分および関連化合物の定量は、試料溶液からの対応するピーク応答を、標準溶液からのアトロピンピーク応答と比較することによって行う。応答に対する化学構造の影響を補正するために、相対的応答係数が使用される。この試験方法には2つの識別方法が組み込まれる。アトロピンは、試料溶液クロマトグラムにおける主要なピークの保持時間およびこのピーク内に取得されたUV吸収スペクトルに基づいて同定される。
【0069】
例示的な製剤および安定性試験
すぐに使える低用量の眼科用アトロピン製剤を、実質的に
図1に示すような2段階プロセスを用いて調製した。
【0070】
ステップ1:ポリマー溶液相の調製:WFIの約60%に、必要量のHPMCをゆっくりと加え、透明な溶液が観察されるまで混合した。次いで、溶液を121℃で約30分間オートクレーブ処理した。
【0071】
ステップ2:薬物溶液相の調製:WFIの約30%に、必要量のエデト酸二ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを各成分の完全溶解時に順次添加した。溶液のpHを測定し、塩酸/水酸化ナトリウムを用いて約5.5×0.1に調整した。上記の溶液に、硫酸アトロピンを加え、完全に溶解するまで混合した。
【0072】
次いで、ステップ2の薬物溶液をステップ1のポリマー溶液と混合した。バッチ容量はWFIを用いて調製し、医薬組成物を得た。表1~3は、等張化剤を含むおよび含まず、EDTAおよび低EDTAを含む、様々な緩衝液強度の、例示的な製剤を提供する。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
特記しない限り、表3の医薬組成物(NaClを含む50mM緩衝組成物)を、長期安定性試験に付した。硫酸アトロピン眼科用溶液のラボスケールバッチを製造し、1mLのBlow-Fill-Seal(BFS)アンプルに充填し(約0.4mL)、さらにアルミニウムパウチに包装した。多くの袋詰めサンプルを、国際調和安定性条件(URL:ich.org参照)に従って25℃±2℃/60%±5%RHでの長期間の安定性試験に付した。これらの長期安定性試験に付された袋詰めアンプルを、安定貯蔵の1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月後に収集し、開放し、硫酸アトロピン、トロパ酸、pH(適用可能な場合)および粘度(適用可能な場合)の水準について試験した。アトロピンおよびトロパ酸の水準を、UPLC法を用いて測定し、その結果を表4~8に示す。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
上記の結果から容易に分かるように、緩衝系の濃度が減少(75mM、特に50mMまたはそれ未満)したアトロピン溶液は、既に1ヶ月後には、トロパ酸(アトロピン分解生成物)の水準が非常に低かった。24ヶ月の終わりに回帰分析を使用して分解水準を外挿した。当技術分野で一般的に使用されている外挿法に基づくと、50mMおよび緩衝化されていない濃厚物は、18~24ヶ月の貯蔵可能期間を有し、それは、100mM組成物の外挿貯蔵可能期間15ヶ月を3~9ヶ月超えている。
【0083】
上記組成物は、加速安定性試験にも供した。硫酸アトロピン眼科用溶液のラボスケールバッチを製造し、1mLのBlow-Fill-Seal(BFS)アンプルに充填し(約0.4mL)、さらにアルミニウムパウチ内に包装した。多数の袋詰めアンプルを、国際調和安定性条件に従って、40℃±2℃/75%±5%RHでの加速安定性試験に付した。これらの加速安定性試験に付された袋詰アンプルを、安定貯蔵の1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月後に収集し、開放し、硫酸アトロピンおよびトロパ酸の粘度(適用可能な場合)の水準について試験した。アトロピンおよびトロパ酸の水準は、UPLC法を用いて測定し、結果を表9~13に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
再度、緩衝系の濃度が減少(75mM、特に50mMまたはそれ未満)したアトロピン溶液が、既に1ヶ月後には、トロパ酸(アトロピン分解生成物)の水準がかなり低かった
ことが、データから容易に理解できる。24ヶ月の終わりに回帰分析を利用して分解水準を外挿した。当技術分野で一般的に使用されている外挿法に基づくと、50mMおよび緩衝されていない濃厚物は18~24ヶ月の貯蔵可能期間を有し、それは100mM組成物の外挿貯蔵可能期間15ヶ月を3~9ヶ月超えている。
【0090】
組成物の更なる変化を用いた追加の安定性試験は、低い緩衝液強度、特に2成分緩衝系が、以下の正常および加速貯蔵条件の両方において、表14~15に示す組成を有する眼科用低用量アトロピン製剤の安定性の増加をもたらすことを再び確立した(結果は表16~19に示す)。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
表20の組成物のpHおよび安定性の効果を試験し、pH3.5およびpH6.0での例示的な試験結果を下記表21~22(pH3.5)および表23~24(pH6.0)に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
硫酸アトロピン眼科用溶液は、眼への局所投与のための1回または複数回投与製品として提供されることが企図されており、有利なことに、一次容器閉鎖システムとしてのBlow/Fill/Seal(BFS)アンプルとして提供することができる。例えば、適切なアンプル材料として、Lyondellbasell Purell PE 3020 D樹脂が挙げられ、以下のように試験した。
【0104】
BFSアンプルに充填された表3に示す組成物(NaCl、低EDTAを含む50mM緩衝組成物)を、加速(40℃/75℃RH)および長期(25℃/60%RH)貯蔵条件下に0.01%(w/v)および0.02%(w/v)の濃度で試験した。次に、充填されたBFSアンプルは、適応があれば貯蔵するために二次包装(ここでは積層パウチ)内に包装した。この研究の結果を表25~28に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
本明細書の記述および特許請求の範囲を通して使用される場合、「a」、「an」および「the」の意味は、文脈が他の点を明確に指示しない限り、複数の言及を含む。また、本明細書の記載で使用されているように、「in」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、「in」および「on」を含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を記載および請求するために使用される、成分の量、濃度、反応条件などの特性を表す数字は、場合によっては「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、いくつかの実施形態では、記載された説明および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効数字の数と、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の広範な範囲の数値範囲およびパラメータ設定は近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は、可能な限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示される数値は、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含むことができる。
【0111】
しかし、本明細書の発明概念から逸脱することなく、既に説明した以外の多くの変更が可能であることは、当業者には明らかであるはずである。従って、本発明の主題は、本開示の精神を除いて限定されるものではない。当業者は、本発明の実施において使用することができる、本明細書に記載された方法および材料と類似または同等の多くの方法および材料を認識するであろう。実際、本発明は、記載された方法および材料に決して限定されない。
【0112】
さらに、本開示を解釈する上で、全ての用語は、文脈と一致する最も広い可能な方法で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、要素、構成要素またはステップを非排他的な方法で参照するものと解釈され、参照された要素、構成要素またはステップが存在することができるか、利用することができるか、明示的に参照されていない他の要素、構成要素またはステップと組み合わせることができることを示している。