(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】抗菌タイルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 41/86 20060101AFI20230816BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230816BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20230816BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230816BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230816BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20230816BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20230816BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20230816BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C04B41/86 A
B01J35/02 J
B01J35/02 H
C09D1/00
C09D5/00 Z
C09D7/61
C09C3/06
C09D11/037
C09D11/322
A61L9/01 B
(21)【出願番号】P 2021172030
(22)【出願日】2021-10-20
【審査請求日】2021-10-20
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521458993
【氏名又は名称】張 志生
【氏名又は名称原語表記】CHANG, Chih-Sheng
【住所又は居所原語表記】NO. 3, Ln, 200, Jilin Rd., Zhongshan Dist., Taipei City 104, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】張 志生
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-211992(JP,A)
【文献】特開昭60-096565(JP,A)
【文献】特許第3285035(JP,B2)
【文献】国際公開第2013/041751(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B
E04F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌タイルを製造する方法であって、
タイル本体を製造するステップは、
土壌材料を粉砕してスラリーにし、熱風でスラリーを粉末に乾燥させ、成形機により粉末を基体とする基体を形成するステップと、
前記基体の表面に化粧用の釉薬を点在させるか、噴霧するか、または、注ぐことで化粧土層を形成するステップと、
前記化粧土層に釉薬を点在させるか、噴霧するか、注ぐか、インクジェット印刷するか、スクリーン印刷するか、ローラー印刷するか、のいずれかによってベース釉薬層を形成するステップと、を含み、さらに、
抗菌釉薬層を形成するステップにおいて、
表面釉薬と抗菌材料を100:5-10の重量比で混合して、抗菌釉薬を形成し、
次に、水と抗菌釉薬を5-6:4-5の重量比で混合し、粉砕し、前記ベース釉薬層に抗菌釉薬を点在させるか、噴霧するか、注ぎ、
さらに、
焼成するステップにおいて、
焼成温度1000~1600℃で前記タイル本体と前記抗菌釉薬と抗菌タイルに焼成し、
前記抗菌材料は、シリカでコーティングされた酸化亜鉛粉末を含む
ことを特徴とする抗菌タイル製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の抗菌タイル製造方法において、
コーティングされた酸化亜鉛粉末の製造ステップは、
85°Cの水100mlに酸化亜鉛粉末6-10gを加え、マグネチックスターラーに入れて完全に攪拌し、混合して酸化亜鉛懸濁液を形成し、
酸化亜鉛懸濁液を90~95℃に加熱し、同時に飽和純二酸化炭素ガスを酸化亜鉛懸濁液に通し、設定温度90~95℃に達したら3-5時間保持して完全に反応させ、
二酸化炭素ガスの導入を停止し、酸化亜鉛懸濁液に8gのシリカゾルを加え、0.5時間保持し、
3gの凝固促進剤を加え、1-2時間沈殿させた後、酸化亜鉛懸濁液をろ過し、
酸化亜鉛懸濁液を200~250℃で乾燥させ、
そして、粉砕機を使用して、乾燥した酸化亜鉛を粉砕し、250~400℃でか焼してコーティングされた酸化亜鉛粉末を得る
ことを特徴とする抗菌タイル製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の抗菌タイル
製造方法において、
前記コーティングされた酸化亜鉛粉末の平均粒子サイズは個数平均径で8~12ナノメートルであり、その比表面積は70~130平方メートル/gである
ことを特徴とする抗菌タイル
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌タイルとその製造方法に関し、例えば、抗菌性と遠赤外線放射のような特性を有する抗菌タイルとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人々が良好な生活環境を望んでいるのであれば、まず周囲の環境でのバクテリア(細菌)の増殖を防ぎ、効果的に抑制する必要がある。この点、ナノマテリアルの開発により、例えば、抗菌性を備えたナノ光触媒粒子が日用品に広く使用されるようになってきている。すなわち、光触媒に光を照射してヒドロキシルラジカルを生成し、ヒドロキシルラジカルの高酸化能力により、バクテリアやウイルスのタンパク質を変性させて殺菌効果を発揮する。
【0003】
タイルは長い間踏まれたり、触れられたり、さまざまなほこりで汚染されたりするため、家の内外のタイルにはかなりの量のバクテリアやウイルスが付着している。そこで、タイルに光触媒を使った抗菌作用が付加されるようになるなど、ナノマテリアルとタイルを組み合わせることで、環境の消毒と浄化に役立つ。今日にように種々のウイルスが出現する環境にあって、環境衛生の要件が高い場所には安全で衛生的な空間が必要になってきている。
【0004】
現在使用されているナノマテリアルは、製造プロセス中に生成された不純物を除去するために、複数回のろ過、洗浄、蒸発、分解、およびその他のステップを必要とする。また、製造工程が複雑であるため、設備および設置スペースが大きく、コストが高く、製造サイクル全体が長く、品質管理の安定性が悪い。また、発生する廃棄物は環境を汚染し、処理コストやエネルギー消費量を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を鑑み、本実用新案の創作者らは、研究開発に多くのエネルギーと精神を投資し、革新的な思考で従来のプロセスフレームワークをブレークスルーして従来の欠点を解決することを希求し、この分野で絶えずブレークスルーとイノベーションを行いました。そして、新しい技術的手段を使用し、社会により多くをもたらすだけでなく、安全で優れた製品は産業の発展も促進します。
【0006】
本発明の主な目的は、抗菌タイルおよびその製造方法を提供することである。
抗菌タイルに使用されている抗菌材料は、セラミック釉薬であって、1000~1600°Cで焼成した後、優れた抗菌能力と遠赤外線放射のような特性を保持している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、
本発明は、基体と、前記基体を覆う化粧土層と、前記化粧土層を覆うベース釉薬層と、前記ベース釉薬層を覆う抗菌釉薬層と、を有する抗菌タイルである。
そして、表面釉薬と抗菌材料とを100:5-10の重量比で混合して抗菌性の釉薬を作る。次に、水と前記抗菌性の釉薬とを5-6:4-5の重量比で混合し、さらに粉砕する。このとき、抗菌釉薬の比重は1.30~1.50に調整される。抗菌釉薬がベース釉薬層に点在、噴霧または注ぎ掛けられることでベース釉薬層の上に抗菌釉薬層が設けられる。
【0008】
本発明の抗菌タイルにおいて、抗菌材料は、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末、コーティングされたナノ酸化銅粉末、またはコーティングされたナノ酸化亜鉛粉末とコーティングされたナノ銅酸化物粉末の混合物である。
【0009】
本発明の抗菌タイルにおいて、抗菌材料のコーティングされたナノ酸化亜鉛粉末は、ナノ酸化亜鉛粉末をシリカゾルでコーティングすることによって形成される。また、コーティングされたナノ酸化銅粉末は、ナノ酸化銅粉末を例えば砂でコーティングすることによって形成される。
なお、例えば砂というのは、極めて微細な、あるいは微細に粉砕された石の集合のことであり、天然の岩石等でもよいし、組成を特段限定しないが、一般論として、砂としては、ケイ素に富む珪質の岩石やケイ素およびアルミニウムに富む珪長質の岩石由来のものが例として挙げられる。ただし、苦鉄質や石灰質の岩石由来の砂を排除しない。酸化銅懸濁液に細粒砂のゾルを加えて、沈殿、濾過、乾燥、粉砕、か焼などの工程で砂でコーティングするようにしてもよい。あるいはナノ酸化亜鉛粉末と同じようにシリカ(シリカゾル)でコーティングしてもよい。
【0010】
前記抗菌材料の前記コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末の平均粒子サイズは8~12ナノメートルであり、その比表面積は70~130平方メートル/gであり、前記コーティングされたナノ酸化銅粉末の平均粒子サイズは30~35nmであり、その比表面積は150~180平方メートル/gである。そして、シリカゾルの粒子の細かさ(粒径)は4nm~5nmである。
粒径(平均粒径、平均粒子サイズ)は、数回サンプリングしたものを顕微鏡で確認し、統計的処理により粒径(平均粒径、平均粒子サイズ)を求めるようにしてもよいし、光散乱法(レーザー回折・散乱法)で求めるようにしてもよいだろう。
【0011】
本発明の抗菌タイルにおいて、大腸菌に対する抗菌タイルの抗菌率は99.9%以上である。
【0012】
本発明の抗菌タイルにおいて、黄色ブドウ球菌に対する抗菌タイルの抗菌率は99.9%以上である。
【0013】
上記目的を達成するため本発明は抗菌タイルの製造方法を提供する。
本発明の抗菌タイルの製造方法は、タイル本体を提供し、抗菌釉薬を形成し、そして焼成する工程を含む。
タイル本体を提供するステップには以下が含まれる。
土壌材料を粉砕してスラリーにし、熱風でスラリーを粉末に乾燥させ、成形機により粉末を基体とする。化粧土層を形成するために、基体の表面に化粧用の釉薬(化粧土)を点在させるか、噴霧するか、または、注ぐ(かける)。そして、釉薬スラリーを化粧土層に点在させたり、噴霧したり、注いだり(かけたり)して、ベース釉薬を形成する。次に、表面釉薬と抗菌材料を100:5-10の重量比で混合して、抗菌釉薬を形成する。次に、水と抗菌釉薬を5-6:4-5の重量比で混合し、粉砕し、ベース釉薬層に抗菌釉薬を点在させるか、噴霧するか、注ぐ(かける)。さらに、タイルと抗菌釉薬は、焼成温度で抗菌タイルに素早く焼成される。
【0014】
抗菌材料は、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末か、コーティングされたナノ酸化銅粉末か、あるいは、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末とコーティングされたナノ酸化銅粉末を100:3~8の重量比で混合したの混合物である。
【0015】
本発明の抗菌タイルの製造方法において、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末の製造ステップは、85°Cの水100mlに酸化亜鉛粉末6-10gを加え、マグネチックスターラーに入れて完全に攪拌し、混合して酸化亜鉛懸濁液を形成し、酸化亜鉛懸濁液を90~95℃に加熱し、同時に飽和純二酸化炭素ガスを酸化亜鉛懸濁液に通し、設定温度90~95℃に達したら3-5時間保持して完全に反応させ、二酸化炭素ガスの導入を停止し、酸化亜鉛懸濁液に8gのシリカゾルを加え、0.5時間保持し、3gの凝固促進剤を加え、1-2時間沈殿させた後、酸化亜鉛懸濁液をろ過し、酸化亜鉛懸濁液を200~250℃で乾燥させ、そして、粉砕機を使用して、乾燥した酸化亜鉛を粉砕し、250~400℃でか焼してコーティングされた酸化亜鉛粉末を得る。
【0016】
本発明の抗菌タイルの製造方法において、コーティングされたナノ酸化銅粉末の製造ステップは、モル濃度比が1:2の硫酸銅溶液と水酸化ナトリウム溶液を混合し、1:1の流量に従って、硫酸銅溶液と水酸化ナトリウム溶液を反応器に投入し、均一に攪拌および混合して、反応物溶液と水色の水酸化銅の沈殿を生成し、反応液をゆっくりと50℃に加熱し、反応液が水色から赤褐色に変化し、最終的にそれは黒くなり、反応物溶液を濾過してフィルター残留物を得て、フィルター残留物をきれいな水で洗い、フィルター残留物を乾燥および粉砕して、コーティングされたナノ酸化銅粉末を得る。
【0017】
本発明の抗菌セラミックタイル製造方法において、焼成温度は1000~1600℃である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の抗菌タイルの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下は、本発明の実施を説明するための具体例である。
この技術に精通している当業者は、本明細書に開示されている内容から本発明の他の利点および効果を容易に理解することができるだろう。また、本発明は、他の異なる特定の実施形態によって実施または適用することができ、本考案の趣旨から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができる。
【0020】
図1を参照されたい。
図1は、本発明の抗菌タイルの製造方法のフローチャートである。
【0021】
図1に示されるように、本発明の抗菌タイルの製造方法は、タイル本体を提供し、抗菌釉薬を形成し、そして焼成する工程を含む。
ここで、タイル本体を提供するステップには、以下が含まれる。すなわち、タイル本体を提供するステップは、基体を形成するステップと、化粧土を形成するステップと、ベース釉薬を形成するステップと、を含む。土壌材料を粉砕してスラリーにし、熱風でスラリーを粉末に乾燥させ、成形機により粉末を基体とする。化粧土層を形成するために、基体の表面に化粧用の釉薬(化粧土)を点在させるか、噴霧するか、または、注ぐ(かける)。そして、釉薬スラリーを化粧土層に点在させたり、噴霧したり、注いだり(かけたり)して、ベース釉薬を形成する。具体的にいうと、20-30wt%の粘土を入れ、60~70wt%の長石と5~10wt%の砂を粉砕してスラリーにし、中および高アルミナボールで10~11時間、研磨ボール(例えばスチール製)で18~19時間粉砕する。試験標準比重は1.72±0.02、残留物は1.0g±0.3g、粘度は300cps±100cps、とする。テストが不適格である場合、スラリーを排出する前に合格するように調整する。次に、スラリーはスプレー塔に汲み上げられ、高圧によってミスト(霧)状にされ、塔内の温度は570~650°Cの範囲である。スラリーの液体含水率は32~35%で、高温で瞬時に5.5~6.5%まで乾燥して粒状粒子を生成し、粉末を容器(タンク、バケツ)に輸送して保管する。粉末は高圧300~400kgf/cm
2で成形され、焼くの前の曲げ抵抗は12-20kgf/cm
2に調整される。そして、釉薬を塗るために垂直乾燥室に運ばれる。例として、20×20cmサイズのタイルを例とする。まず、比重1.50~1.60、重量18g~21gの釉薬(化粧土としての釉薬)を敷く。さらに、比重1.55~1.65、重量18g~21gの釉薬を先の化粧土の上に塗布する。
【0022】
抗菌釉薬を形成するステップにおいて、表面釉薬と抗菌材料を100:5-10の重量比で混合して、抗菌釉薬を形成する。次に、水と抗菌釉薬を5-6:4-5の重量比で混合し、粉砕し、比重を1.30-1.50に調整する。ベース釉薬層に抗菌釉薬を点在させるか、噴霧するか、注ぐ(かける)。一実施形態において、20×20cmサイズのタイルに対し、重量8g~12gの釉薬を噴霧して抗菌効果を与え、その後、窯で焼成するために台車等に載せて保管する。ここで、抗菌材料は、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末、または、コーティングされたナノ酸化銅粉末、または、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末とコーティングされたナノ酸化銅粉末との混合物である。コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末の製造ステップは次のとおりである。85°Cの水100mlに酸化亜鉛粉末8gを加え、マグネチックスターラーに入れて完全に攪拌し、混合して酸化亜鉛懸濁液を形成する。酸化亜鉛懸濁液を90~95℃に加熱し、同時に飽和純二酸化炭素ガスを酸化亜鉛懸濁液に通し、設定温度に達したら5時間保持して完全に反応させる。酸化亜鉛懸濁液に8gのシリカゾルを加え、0.5時間保持する。少量(8g)の凝固促進剤を加え、2時間沈殿させた後、酸化亜鉛懸濁液をろ過する。酸化亜鉛懸濁液を200~250℃で乾燥させ、そして、粉砕機を使用して、乾燥した酸化亜鉛(懸濁液)を粉砕し、250~400℃でか焼して抗菌性物質を得る。次に、コーティングされたナノ酸化銅粉末の製造ステップには、次の工程が含まれる。まず、20gの硫酸銅と20gの水酸化ナトリウムをそれぞれ60mlの水に加え、そして、モル濃度比が1:2の硫酸銅溶液と水酸化ナトリウム溶液を混合する。これは、1:1の流量に従って、硫酸銅溶液と水酸化ナトリウム溶液を反応器に投入する。均一に攪拌および混合して、反応物溶液と水色の水酸化銅の沈殿を生成する。反応液をゆっくりと50℃に加熱し、反応液が水色から赤褐色に変化し、最終的にそれは黒くなり、反応物溶液を濾過してフィルター残留物を得る。フィルター残留物をきれいな水で洗い、フィルター残留物を乾燥および粉砕して、コーティングされたナノ酸化銅粉末を得る。一実施形態では、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末とコーティングされたナノ酸化銅粉末の重量比100:3~8の混合物を抗菌材料として使用する。このとき、抗菌剤を反応炉に入れて均一に攪拌し、コーティングされたナノ酸化亜鉛が負の電荷を生成し、コーティングされたナノ酸化銅が正の電荷を生成するようにする。2つを均一に攪拌した後、コーティングされたナノ酸化亜鉛銅イオン材料が作成される。さらに、タイルと抗菌釉薬を組み合わせて、1000~1600℃の焼成温度で抗菌タイルを焼成する。
【0023】
好ましい実施形態では、焼成温度は1180~1195℃であり、窯の速度は32~45分で、焼成曲線は室温から1180~1195℃となり、その後、急冷が完了し、最終温度で完成品を滑らかに焼結させる。
【0024】
図2を参照されたい。
図2は、本発明の抗菌タイルの概略断面図である。
【0025】
図2に示すように、本発明は、上記の方法によって作製された抗菌タイル1を提供するものである。抗菌タイル1は、基部11、化粧土層12、ベース釉薬層13および抗菌釉薬層14を有する。化粧土層12は、基部11の表面を覆い、ベース釉薬層13は、化粧土層12を覆い、そして、抗菌釉薬層14は、ベース釉薬層13を覆う。表面釉薬と抗菌材料とを100:5-10の重量比で混合して抗菌性の釉薬を作る。次に、水と前記抗菌性の釉薬とを5-6:4-5の重量比で混合し、さらに粉砕する。このとき、抗菌釉薬の比重は1.30~1.50に調整される。抗菌釉薬をベース釉薬層に点在、噴霧または注ぐ(かける)ことでベース釉薬層の上に抗菌釉薬層を設ける。一実施形態では、20×20cmのタイルに対し、釉薬を重量8~12g噴霧し、窯で焼成し、抗菌効果を発揮させる。抗菌材料は、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末、コーティングされたナノ酸化銅粉末、またはコーティングされたナノ酸化亜鉛粉末とコーティングされたナノ酸化銅粉末の混合物である。そして、コーティングされたナノ酸化亜鉛粉末は、ナノ酸化亜鉛粉末をシリカゾルでコーティングすることによって形成される。また、コーティングされたナノ酸化銅粉末は、ナノ酸化銅粉末を砂でコーティングすることによって形成される。コーティングされたナノ酸化銅粉末のコーティング技術により、2つの効果を達成できる。1つは酸化を起こしにくいこと、もう1つはナノ酸化銅は金属であるが、コーティング後の危険性が低く、比較的安全となることである。なお、コーティング後ナノ酸化銅は、銅イオンの放出に影響がない。これは、銅イオンのもともとの酸化特性に由来し、独自の電子親和力や結合力を持っているためである。また、コーティング技術で使用される砂には2つの利点がある。1つ目は、砂コーティング技術を使用してナノ酸化銅の特性を保護することである。一般に、コーティングされていないナノ銅酸化物は、約1100°Cの高温で亜酸化銅になってしまう。そして、2つ目の利点は、酸化の継続を防ぎ、原材料をより安定させることができることである。
【0026】
酸化亜鉛の水への溶解度が低いため、Znイオンは飽和二酸化炭素溶液とゆっくりと反応して、溶解度の低い塩基性炭酸亜鉛の沈殿物を形成する。プロセス全体は動的な過程であり、Znイオンが連続的にイオン化され、塩基性炭酸亜鉛が連続的に沈殿する。塩基性炭酸亜鉛の粒子サイズは、酸化亜鉛の量、二酸化炭素ガスの単位量、水の割合、および温度制御によって調整される。シリカゾルコーティングを追加し、乾燥および焼成して過剰な水と炭酸塩を分解する。このようにして活性がいきた状態でコーティングされたナノ酸化亜鉛を取得する。
製造工程では、ナノ酸化亜鉛が蓄積して緻密な六方最密格子を形成する。各六方最密格子は負の電荷を帯びており、六方最密格子同士の衝突や高速回転により熱エネルギーが発生する。次に、水酸化物と過酸素イオンを生成し、これらは直接滅菌力がある。さらに、コーティングされたナノ酸化亜鉛は、88~92マイクロメートルの波長の遠赤外線放出の機能を持っており、例えば人間の血液循環を助ける。また、コーティングされたナノ銅酸化物に含まれる正に帯電した銅イオンは、より強い殺菌力を持ち、細菌細胞やウイルスのタンパク質膜に直接付着し、それらの構造を直接破壊して、滅菌と無害化の効果を達成する。コーティング技術の導入により、1000~1600°Cで焼成したナノ酸化亜鉛銅の滅菌率は、24時間で99.9%を超え、また、放射率は0.92で遠赤外線放射のような機能も備えている。
【0027】
本考案の抗菌タイルは、JIS試験方法(JIS Z 2801:210 Antimicrobial products-Test for antimicrobial activity and efficacy)で試験された。24時間の作用時間の試験結果を表1に示す。
【0028】
【0029】
表1において、
抗菌値(R)=[抗菌物質を含まないサンプル中の細菌数の平均対数値]-[抗菌物質を含むサンプル中の細菌数の平均対数値]
である。
抗菌値(R)≧2.0の場合、抗菌効果があることを意味する。
【0030】
本考案の抗菌タイルは、ISO検査方法(ISO 22196:2011 Plastic-Measurement of antibacterial activity on plastics surfaces)でテストされ、その試験結果を表2および表3に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
表2および表3において、
U0:抗菌剤を含まないサンプルの接種直後にテストされる細菌の数であり、それは、6.2×103~2.5×104(CFU/cm2)の間である。
Ut:24時間のインキュベーション後における抗菌物質を含まないサンプル中の細菌の数である。
At:24時間のインキュベーション後における抗菌物質を含むサンプル中の細菌の数である。
抗菌値(R)=Ut-At
なお、上記の試験は、SGS-食品研究所-高雄およびSGS-UTIS-台北に委託されたものである。
また、次の式により、抗菌値をパーセンテージ値に変換する。
[(Ut-At)/Ut]×100[%]、
大腸菌の抗菌率は次のようになる。
[(6.9×105-8.10)/6.9×105]×100=99.99[%]
黄色ブドウ球菌の抗菌率は次のようになる。
[(2.1×103-1.90)/2.1×103]×100=99.91[%]
【0034】
上記のように、本発明の抗菌タイルにはコーティング技術を導入し、ナノ酸化亜鉛とナノ酸化銅の釉薬を1000~1600℃で焼成した場合でも、24時間で99.9%以上の殺菌率が得られ、さらに、遠赤外線の放射というような機能も持ち、その放射率は最大0.92が得られる。また、新規の抗菌タイルの製造方法は、シンプル、低コスト、無公害であり、工業化が可能であり、継続的に自動生産でき、安定した製品品質を保つという利点もある。
【0035】
ここまで詳細な説明のために特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、上記実施形態は、本発明の特許請求の範囲を制限することを意図するものではなく、上記実施形態の開示説明および図面の内容から得られる種々の同等の変形例は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 抗菌タイル
11 基体
12 化粧土層
13 ベース釉薬層
14 抗菌釉薬層