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特許7332217溶媒除去装置およびこれを用いた微小球体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】溶媒除去装置およびこれを用いた微小球体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/12 20060101AFI20230816BHJP
   A61K 9/14 20060101ALN20230816BHJP
   A61K 9/51 20060101ALN20230816BHJP
   B01D 1/30 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
B01J13/12
A61K9/14
A61K9/51
B01D1/30 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022205996
(22)【出願日】2022-12-22
(65)【公開番号】P2023093413
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184474
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519140246
【氏名又は名称】インベンテージ ラボ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INVENTAGE LAB INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リ,サンフン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チャン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュ ヒ
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第92/008743(WO,A1)
【文献】特開平11-189730(JP,A)
【文献】特開2018-086630(JP,A)
【文献】中国実用新案第208742331(CN,U)
【文献】中国実用新案第207828290(CN,U)
【文献】特表2001-505284(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0130887(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02- 13/22
A61K 9/00- 9/72;
47/00- 47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相の第1原料と分散相の第2原料を含むエマルジョンを収容する容器と、
前記容器内で回転して前記エマルジョンを撹拌するインペラーと、
前記インペラーの上部に前記インペラーから離隔し、前記エマルジョンの停止表面の下に位置して前記エマルジョンに浸されるように位置し、回転して前記エマルジョンの撹拌時に発生する泡(foam)を減少させるフォームブレーカーと、を含む溶媒除去装置であって、
前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをH fb と定義し、前記停止表面から前記容器の底面までの深さをH liquid と定義するとき、
fb /H liquid は、0.2~0.5を満たすことを特徴とする溶媒除去装置。
【請求項2】
前記インペラーに連結され、前記インペラーに回転力を提供する回転軸をさらに含み、
前記回転軸に前記フォームブレーカーが連結され、前記回転軸の回転によって、前記インペラーと前記フォームブレーカーが同時に回転することを特徴とする請求項1に記載の溶媒除去装置。
【請求項3】
前記インペラーの直径をDmainと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、
fb/Dmainは、0.3~1を満たすことを特徴とする請求項1に記載の溶媒除去装置。
【請求項4】
前記容器の内部は、円柱状であり、前記容器の直径をDtankと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、
fb/Dtankは、0.3~0.6を満たすことを特徴とする請求項1に記載の溶媒除去装置。
【請求項5】
前記容器内の前記エマルジョンの表面に圧縮空気を提供する圧縮空気供給部と、前記容器内の空気を前記容器の外部に排出する空気排出部と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の溶媒除去装置。
【請求項6】
前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、
fb/Dfbの値が0.5 2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の溶媒除去装置。
【請求項7】
前記容器は、内壁に前記容器の中心方向に突出形成される少なくとも1つ以上のバッフル(baffle)を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶媒除去装置。
【請求項8】
前記バッフルの下端から前記エマルジョンの停止表面までの高さをHbaffleと定義し、前記容器の底面から前記エマルジョンの停止表面までの高さをHliquidと定義するとき、
baffle/Hliquidは、0.6~0.8を満たすことを特徴とする請求項に記載の溶媒除去装置。
【請求項9】
前記容器の内部は、円柱状であり、前記バッフルが前記容器の前記内壁から突出した高さをWbaffleと定義し、前記容器の直径をDtankと定義するとき、
baffle/Dtankは、0.06~0.10を満たすことを特徴とする請求項に記載の溶媒除去装置。
【請求項10】
前記容器内の前記エマルジョン上部の空間に圧縮空気を提供する圧縮空気供給部と、
前記空間の空気を前記容器の外部に排出させる空気排出ポンプと、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の溶媒除去装置。
【請求項11】
エマルジョンを収容する容器と、前記容器内で回転して前記エマルジョンを撹拌するインペラーと、前記インペラーの上部に前記インペラーから離隔して、前記エマルジョンの停止表面の下に位置して前記エマルジョンに浸されるように位置し、回転して前記エマルジョンの撹拌時に発生する泡(foam)を減少させるフォームブレーカーと、を含む溶媒除去装置を用いた微小球体の製造方法であって、
第1原料を準備し、生分解性ポリマー、薬物および溶媒を含む第2原料を準備する段階と、
前記第1原料および前記第2原料を用いて、連続相の前記第1原料と分散相の前記第2原料を含む前記エマルジョンを形成する段階と、
前記エマルジョンを溶媒除去装置に提供する段階と、
前記溶媒除去装置のインペラーおよびフォームブレーカーを回転させて、前記エマルジョンの前記分散相の溶媒を抽出除去する溶媒抽出除去段階と、を含む微小球体の製造方法であって、
前記溶媒抽出除去段階で、
前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをH fb と定義し、前記停止表面から前記容器の底面までの深さをH liquid と定義するとき、
fb /H liquid は、0.5~0.2を満たすことを特徴とする微小球体の製造方法。
【請求項12】
前記溶媒抽出除去段階で、
前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、
fb/Dfbの値が0.5 2であることを特徴とする請求項11に記載の微小球体の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒抽出除去段階で、
前記容器は、内壁に前記容器の中心方向に突出形成される少なくとも1つ以上のバッフル(baffle)を含むことを特徴とする請求項11に記載の微小球体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒除去装置および前記溶媒除去装置を用いた微小球体の製造方法に関し、より詳細には、微小球体の製造に使用されるエマルジョンの溶媒を抽出除去するための溶媒除去装置および前記溶媒除去装置を用いた微小球体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在活発に研究開発および活用されている薬物伝達システムの1つは、いわゆるポリマー薬物伝達システム(Polymeric Drug-Delivery System、「PDDS」)と称されるものであり、これは、生分解性、生体適合性および非毒性ポリマー、例えば、ポリ乳酸(PLA)/ポリグリコール酸(PGA)ポリマーを用いて一定量の治療剤を長期間にわたって循環投与量で親水性または疎水性治療剤の両方に対して調節可能に放出することを可能にする。
【0003】
このような生分解性ポリマーは、多様な公知の技術によって微小球体(microsphere)の形態で製造することができる。これらの生分解性ポリマー微小球体の製造時に最も頻繁に使用される方法として生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーと封入しようとする物質(薬剤またはその他活性薬剤)を公知の方法を用いて溶媒に溶解させ、界面活性剤を含有する水溶液に分散させたりまたはエマルジョン化させる。次に、溶媒を微小球体から除去した後、乾燥し、微小球体生成物を得る。公知の技術による微小球体の製造工程で生分解性ポリマーおよび活性薬剤を溶解させるのにジクロロメタンまたはクロロホルムなどのような毒性溶媒が主に使用されるので、最終製品としての微小球体生成物にこれらの溶媒が残留しないように、溶媒の除去に十分な時間と努力をかけなければならず、これによって、微小球体生成物を収得するまでの時間が増加し、大量生産の阻害要素として作用している。これより、高品質の微小球体を低コストで大量生産するための努力がなされてきた。
【0004】
特に、溶媒の除去のための多様な溶媒除去装置と関連した技術が開発されているが、一般的に、モーターを用いて回転する回転軸に結合するインペラー(impeller)または撹拌器(stirrer)を用いて、エマルジョンの撹拌を通じて溶媒を抽出除去しているが、これに関するより効果的な方案を提示してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0084276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これより、本発明の技術的課題は、前述のような点に着目したものであって、本発明の目的は、微小球体の製造に使用されるエマルジョンの溶媒を抽出除去するための溶媒除去装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、前記溶媒除去装置を用いた微小球体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した本発明の目的を実現するための一実施形態による溶媒除去装置は、連続相の第1原料と分散相の第2原料を含むエマルジョンを収容する容器と、前記容器内で回転して前記エマルジョンを撹拌するインペラーと、前記インペラーの上部に前記インペラーから離隔して位置し、回転して前記エマルジョンの撹拌時に発生する泡(foam)を減少させるフォームブレーカーと、を含む。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記溶媒除去装置は、前記インペラーに連結され、前記インペラーに回転力を提供する回転軸をさらに含んでもよい。前記回転軸に前記フォームブレーカーが連結され、前記回転軸の回転によって、前記インペラーと前記フォームブレーカーが同時に回転することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記停止表面から前記容器の底面までの深さをHliquidと定義するとき、Hfb/Hliquidは、0.2~0.5を満たすことができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記インペラーの直径をDmainと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、Dfb/Dmainは、0.3~1を満たすことができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記容器の内部は、円柱状であり、前記容器の直径をDtankと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、Dfb/Dtankは、0.3~0.6を満たすことができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記容器内の前記エマルジョンの表面に圧縮空気を提供する圧縮空気供給部と、前記容器内の空気を前記容器の外部に排出する空気排出部と、をさらに含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、Hfb/Dfbの値が0.5~2を満たすことができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記容器は、内壁に前記容器の中心方向に突出形成される少なくとも1つ以上のバッフル(baffle)を含んでもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記バッフルの下端から前記エマルジョンの停止表面までの高さをHbaffleと定義し、前記容器の底面から前記エマルジョンの停止表面までの高さをHliquidと定義するとき、Hbaffle/Hliquidは、0.6~0.8を満たすことができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記容器の内部は、円柱状であり、前記バッフルが前記容器の前記内壁から突出した高さをWbaffleと定義し、前記容器の直径をDtankと定義するとき、Wbaffle/Dtankは、0.06~0.10を満たすことができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記溶媒除去装置は、前記容器内の前記エマルジョン上部の空間に圧縮空気を提供する圧縮空気供給部と、前記空間の空気を前記容器の外部に排出させる空気排出ポンプと、をさらに含んでもよい。
【0019】
上記した本発明の目的を実現するための一実施形態による微小球体の製造方法は、エマルジョンを収容する容器と、前記容器内で回転して前記エマルジョンを撹拌するインペラーと、前記インペラーの上部に前記インペラーから離隔して位置し、回転して前記エマルジョンの撹拌時に発生するバブル(foam)を減少させるフォームブレーカーと、を含む溶媒除去装置を用いることができる。前記微小球体の製造方法は、第1原料を準備し、生分解性ポリマー、薬物および溶媒を含む第2原料を準備する段階と、前記第1原料および前記第2原料を用いて、連続相の前記第1原料と分散相の前記第2原料を含む前記エマルジョンを形成する段階と、前記エマルジョンを溶媒除去装置に提供する段階と、前記溶媒除去装置のインペラーおよびフォームブレーカーを回転させて前記エマルジョンの前記分散相の溶媒を抽出除去する溶媒抽出除去段階と、を含む。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記溶媒抽出除去段階で、前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記停止表面から前記容器の底面までの深さをHliquidと定義するとき、Hfb/Hliquidは、0.5~0.2を満たすことができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記溶媒抽出除去段階で、前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、Hfb/Dfbの値が0.5~2であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記溶媒抽出除去段階で、前記容器は、内壁に前記容器の中心方向に突出形成される少なくとも1つ以上のバッフル(baffle)を含んでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によれば、フォームブレーカーがインペラー上に配置され、回転することによって、溶媒除去中にエマルジョンの表面に生成される泡を破砕することができ、これを通じて、エマルジョンと空気の境界面で泡によって溶媒の蒸発が妨害され、溶媒の蒸発が阻害される現象を効率的に防止することができる。また、前記フォームブレーカーの回転を通じて、前記エマルジョンの上下方向への流動性が向上し、溶液循環が増大する効果とともに、前記エマルジョンの内部に破砕された小さい泡が伝達され、これを通じて、前記エマルジョン内でエアレーション効果が発生し、溶媒の抽出、蒸発を加速化することができる。
【0024】
また、バッフルの適用を通じて、前記エマルジョンの流動に乱流を発生させて、撹拌力を向上させるので、前記エマルジョン全体体積区間で溶媒の濃度を均一に維持することができる。
【0025】
また、圧縮空気供給部が提供する圧縮空気の影響によって、エマルジョンと空気の境界面での溶液循環を増大させて、エマルジョン内の溶媒の空気中への拡散を加速させることができる。また、前記圧縮空気の影響によって、容器内の気体に乱流を発生させ、エマルジョンの表面上の気体の溶媒濃度を急速に低下させて、空気中の拡散層の厚さを薄く維持することができ、これによって、溶媒蒸発効果が向上することができる。
【0026】
また、前記空気排出部が前記容器内の溶媒濃度が高くなった空気を前記容器から除去して、溶媒蒸発効率を向上させることができる。
【0027】
ただし、本発明の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本発明の思想および領域を逸脱しない範囲で多様に拡張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態による溶媒除去装置を含む微小球体の製造システムを示す図である。
図2】本発明の一実施形態による溶媒除去装置を示す分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による溶媒除去装置を示す断面図である。
図4】フォームブレーカーの位置による撹拌効果を比較した実験例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による溶媒除去装置において圧縮空気の適用の有無による残留溶媒、封入率、パーティクルサイズおよび形状の顕微鏡写真を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による溶媒除去装置において真空ポンプの適用の有無による残留溶媒、封入率、パーティクルサイズおよび形状の顕微鏡写真を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による溶媒除去装置においてフォームブレーカーの位置による残留溶媒、封入率、パーティクルサイズおよび形状の顕微鏡写真を示す図である。
図8】本発明の一実施形態による溶媒除去装置においてバッフルの適用の有無による流動性を比較するための図である。
図9】本発明の一実施形態による溶媒除去装置の実験例に関する繰り返し実験結果である。
図10】本発明の一実施形態による微小球体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明することとする。
【0030】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解すべきである。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置を含む微小球体の製造システムを示す図である。
【0032】
図1を参照すると、前記微小球体の製造システムは、原料貯蔵部、エマルジョン形成部30、溶媒抽出除去部40、洗浄部50および乾燥部60を含む。前記原料貯蔵部は、第1原料貯蔵部10および第2原料貯蔵部20を含んでもよい。
【0033】
前記第1原料貯蔵部10は、第1原料を貯蔵することができる。前記第1原料は、純水(Purified Water)および界面活性剤(surfactant)を含んでもよい。例えば、前記第1原料は、純水にポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol、「PVA」)が界面活性剤として溶解した水相溶液でありうる。
【0034】
前記界面活性剤の種類は、特に限定されず、生分解性ポリマー溶液が連続相の水溶液相内で安定した液滴の分散相形成を助けることができるものであれば、いずれも使用することができる。前記界面活性剤は、好ましくは、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンひまし油誘導体およびこれらの混合物からなる群から選ばれ得る。
【0035】
前記第2原料貯蔵部20は、第2原料を貯蔵することができる。前記第2原料は、油相(oil-phase)溶液であり、有機溶媒、これに溶解した生分解性ポリマー(biodegradable polymer)および薬物を含んでもよい。前記有機溶媒は、前記生分解性ポリマーを溶解させるのに使用される溶媒であり、水と混和しない性質を有することができる。このような生分解性ポリマーを溶解させる有機溶媒の種類は、特に限定されないが、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、エチルアセテート、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、酢酸、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ベンジルアルコールまたはこれらの混合溶媒からなる群から1種以上が選ばれ得る。
【0036】
前記生分解性ポリマーの種類は、特に限定されないが、好ましくは、ポリエステルが使用されてもよく、特にポリラクチド、ポリグリコライド、ポリ(ラクチド-コ-グリコライド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコライド)グルコース、ポリカプロラクトンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれ得る。
【0037】
前記薬物の種類は、特に限定されず、例えば、認知症治療剤;パーキンソン病治療剤;抗がん剤;抗不安剤、抗うつ剤、神経安定剤および精神神経用剤などのような抗精神病薬物;高脂血症治療剤、高血圧治療剤、低血圧治療剤、抗血栓剤、血管弛緩剤および不整脈治療剤などのような心血管系治療剤;てんかん治療剤;抗潰瘍剤などのような消化管系治療剤;リウマチ治療剤;鎮痙剤;結核治療剤;筋弛緩剤;骨粗しょう症治療剤;勃起不全治療剤;止血剤;性ホルモン剤などのようなホルモン剤;糖尿病治療剤;抗生剤;抗真菌剤;抗ウイルス剤;解熱鎮痛消炎剤;自律神経調節剤;コルチコステロイド;利尿剤;抗利尿剤;鎮痛剤;麻酔剤;抗ヒスタミン剤;抗原虫剤;抗貧血剤;抗喘息剤;けいれん防止剤;解毒剤;抗偏頭痛剤;抗嘔吐剤;抗パーキンソン剤;抗てんかん剤;抗血小板剤;鎭咳去痰剤;気管支拡張剤;強心剤;免疫調節剤;タンパク質薬物;遺伝子薬物;およびこれらの混合物から選ばれ得る。
【0038】
前述した薬物の種類のうち、特に限定されないが、好ましくは、ドネペジル、メマンチン、リバスチグミン、エンテカビル、ラミブジン、ロチゴチン、ロピニロール、ブピバカイン、ロピバカイン、メロキシカム、ブプレノルフィン、フェンタニル、ニモジピン、グラニセトロン、トリアムシノロン、シタラビン、カルムスチン、タムスロシン、ポルマコキシブ、テストステロン、エストラジオール、リスペリドン、パリペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、ゴセレリン、ロイプロリド、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、オクトレオチド、パシレオチド、ランレオチド、バプレオチド、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、セマグルチドおよびこれらの塩およびこれらの混合物からなる群から選ばれ得る。
【0039】
前記エマルジョン形成部30は、前記第1原料と第2原料を前記第1原料貯蔵部10および前記第2燃料貯蔵部20から供給を受け、前記第1原料および前記第2原料を用いて、連続相の前記第1原料と分散相の前記第2原料を含むエマルジョンを連続的に形成することができる。前記エマルジョン形成部30は、微小球体の製造装置を含んでもよい。前記微小球体の製造装置は、微小流体法(micro fluidics)を用いて前記エマルジョンを形成するマイクロチップでありうる(マイクロチップを用いた微小球体形成の具体的な原理については図10と関連して後述する)。
【0040】
前記溶媒抽出除去部40は、前記エマルジョン形成部30から形成された前記エマルジョンの供給を受けて収容し、前記エマルジョンの前記分散相から前記溶媒を抽出、除去して、薬物を含む微小球体を形成することができる。前記溶媒抽出除去部40は、前記エマルジョンを収容するためのタンクと、前記エマルジョンを撹拌するための撹拌器(stirrer)と、前記エマルジョンを加熱するための加熱器と、を含んでもよい。
【0041】
具体的には、前記溶媒抽出除去部40で、前記エマルジョンを、前記有機溶媒の沸騰点未満の温度で一定時間、例えば、2時間~48時間維持または撹拌する場合、分散相の液滴形状の生分解性ポリマー溶液から連続相で有機溶媒を抽出することができる。連続相で抽出した有機溶媒の一部は、表面から蒸発することができる。液滴形状の生分解性ポリマー溶液から有機溶媒が抽出および蒸発し、前記液滴形状の分散相が固形化されて、微小球体を形成することができる。この際、前記エマルジョンに流動を起こしたり加熱して、抽出および蒸発を加速化することができる。例えば、前記エマルジョンに流体流動を形成して、前記第2原料の前記溶媒を抽出し、抽出した前記溶媒を蒸発させて除去することができる。前記エマルジョンを前記溶媒の沸点(boiling point)以上に加熱して、前記溶媒を気化させて除去することができる。分散相から抽出した有機溶媒が含まれた連続相の一部を除去し、この除去した連続相を代替できる新しい水溶液を供給することによって、分散相に存在する有機溶媒を連続相で十分に抽出および蒸発させることができる。この際、新しい水溶液には、選択的に、界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0042】
前記洗浄部50は、前記溶媒抽出除去部40から形成された前記微小球体を回収し、洗浄することができる。前記溶媒抽出除去部40から形成された前記微小球体を含む連続相から前記微小球体を回収し、洗浄する方法は、特に限定されず、ろ過または遠心分離などの方法を用いて回収した後、水を用いた洗浄などが行われ得る。これを通じて、残存する有機溶媒および界面活性剤(例えば、ポリビニルアルコール)を除去することができる。洗浄段階は、通常、水を用いて行うことができ、前記洗浄段階は、数回にわたって繰り返すことができる。
【0043】
前記乾燥部60は、洗浄した前記微小球体を乾燥させて、微小球体粉末を収得することができる。ろ過および洗浄段階後、収得した微小球体を通常の乾燥方法を用いて乾燥させて、最終的に乾燥した微小球体粉末を得ることができる。前記微小球体を乾燥する方法は限定されない。しかしながら、使用される乾燥方法は、特に限定されるものではなく、凍結乾燥、真空乾燥または減圧乾燥方式を用いて行われ得る。
【0044】
前記微小球体の乾燥過程を経て最終的に目的とする単分散生分解性ポリマーベースの微小球体粉末が製造され、その後、収得した微小球体粉末を懸濁液に懸濁させて、適切な容器、例えば、使い捨て注射器などに充填し、最終製品を得ることができる。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置を示す分解斜視図である。
【0046】
図3は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置を示す断面図である。
【0047】
図2および図3を参照すると、前記溶媒除去装置は、容器100、カバー110、空気排出部112、圧縮空気供給部114、インペラーIM、フォームブレーカーFB、回転軸AX、およびバッフルBFを含んでもよい。
【0048】
前記容器100は、連続相の第1原料と分散相の第2原料を含むエマルジョンを収容する。前記容器は、内部に前記エマルジョンを収容するための空間を形成する底面と壁面を含む。前記容器は、円筒形の形状を有していてもよいが、これに限定されない。
【0049】
前記カバー110は、前記容器100の気密を維持するために、前記容器100の上部に結合し、前記空気排出部112、前記圧縮空気供給部114が前記容器100の内部に連通するための構成を含んでもよい。また、前記カバー110には、前記インペラーIMおよび前記フォームブレーカーFBを回転させるための前記回転軸AXに回転力を発生させるための駆動部(不図示)が位置していてもよい。
【0050】
前記空気排出部112は、前記容器100の内部の気体を吸入して、前記容器100の内部を減圧する役割をすることができる。これを通じて、有機溶媒の沸点が低くなり、連続相に抽出した有機溶媒が低温でも気化するようにすることができる。また、前記空気排出部112を通じて前記エマルジョンEMの分散相から抽出、蒸発した有機溶媒気体が前記タンク胴体100の外部に排出されることができる。これを通じて、前記タンク胴体100内の前記有機溶媒の分圧が低くなり、持続的な溶媒の抽出、蒸発が行われ得る。
【0051】
前記圧縮空気供給部114は、前記容器100内の前記エマルジョンの表面に圧縮空気を提供することができる。前記エマルジョンの表面では、エマルジョン内の溶媒の空気中への拡散と対流現象によって溶媒の蒸発が起こる。この際、前記エマルジョンの表面に圧縮空気を提供する場合、前記圧縮空気による空気流によって、前記エマルジョンと空気の間の相対速度の差が上昇し、これによって、溶媒の拡散、対流現象による蒸発を加速化することができる。
【0052】
前記インペラーIMは、前記容器100内に配置され、前記容器100内で回転して前記エマルジョンを撹拌することができる。前記インペラーIMの回転によって、前記エマルジョンに回転流動が形成され、これによって、前記エマルジョン内の溶媒の蒸発を加速化することができる。前記インペラーIMは、複数の翼を有するプロペラ形状であってもよいが、これに限定されない。
【0053】
前記フォームブレーカーFBは、前記インペラーIMの上部に前記インペラーIMから離隔して位置していてもよい。前記フォームブレーカーFBは、回転して、前記エマルジョンの撹拌時に発生する泡(foam)を減少させる役割をすることができる。これによって、前記エマルジョンの撹拌効率を向上させ、前記エマルジョン内の回転流動だけでなく、上下流動を向上させて、全体として、前記エマルジョン内の溶媒の蒸発を加速化させることができる。前記フォームブレーカーFBは、複数の翼を有するプロペラ形状であってもよいが、これに限定されない。
【0054】
前記回転軸AXは、前記カバー110を通じて前記容器100内部の中心軸に位置していてもよい。前記回転軸AXに前記フォームブレーカーFBおよび前記インペラーIMが連結され、前記回転軸AXの回転によって、前記インペラーIMと前記フォームブレーカーFBが同時に回転することができる。
【0055】
前記バッフルBFは、前記容器100の内壁上に前記容器100の中心方向に突出形成される構造物でありうる。前記バッフルBFは、前記容器100内に1つ以上形成されてもよく、第1方向D1および第2方向D2に垂直な第3方向D3に沿って延設されてもよい。本実施形態では、前記容器100の内壁を円周方向に沿って4個のバッフルが形成された場合を例示しているが、これに限定されない。
【0056】
前記バッフルBFの影響によって前記容器100内の前記エマルジョンが前記インペラーIMの回転によって回転流動するとき、上下左右方向に撹拌がスムーズに進行され、前記インペラーIMが同じ回転速度で回転する場合にも、より多くの泡(撹拌力優秀)を発生させる役割をすることができる。
【0057】
本実施形態によれば、前記フォームブレーカーFBが前記インペラーIM上に配置され、回転することによって、溶媒除去中にエマルジョンの表面に生成される泡を破砕することができ、これを通じて、エマルジョンと空気の境界面で泡によって溶媒の蒸発が妨害(block)され、溶媒の蒸発が阻害される現象を効率的に防止することができる。また、前記フォームブレーカーFBの回転を通じて、前記エマルジョンの上下方向(第3方向D3)への流動性が向上して、溶液循環(Surface Renewal)が増大する効果とともに、前記エマルジョンの内部に破砕された小さい泡が伝達され、これを通じて、前記エマルジョン内でエアレーション(Aeration)効果が発生し、溶媒の抽出、蒸発を加速化することができる。
【0058】
また、前記バッフルBFの適用を通じて、前記エマルジョンの流動に乱流(Turbulent Flow)を発生させて、撹拌力を向上させるので、前記エマルジョン全体体積区間で溶媒の濃度を均一に維持することができる。
【0059】
また、前記圧縮空気供給部114が提供する前記圧縮空気の影響によって、エマルジョンと空気の境界面での溶液循環(Surface Renewal)を増大させて、エマルジョン内の溶媒の空気中への拡散を加速させることができる。また、前記圧縮空気の影響によって、前記容器100内の気体に乱流(Turbulent Flow)を発生させ、エマルジョンの表面上の気体の溶媒濃度を急速に低下させて、空気中の拡散層(Diffusive Sublayer(δ_a))の厚さを薄く維持することができ、これによって、溶媒蒸発効果が向上することができる。
【0060】
また、前記空気排出部112が前記容器100内の溶媒濃度が高くなった空気を前記容器100から除去して、溶媒蒸発効率を向上させることができる。
【0061】
図4は、フォームブレーカーの位置による撹拌効果を比較した実験例を示す図である。
【0062】
図3および図4を参照すると、フォームブレーカーFBが設置された位置を変更し、これによって発生および減少する泡の量を比較した。容器100内のエマルジョンの停止表面LSから前記フォームブレーカーFBの中心までの深さをHfbと定義し、前記停止表面LSから前記容器の底面までの深さをHliquidと定義するとき、Hfb/Hliquidの値によって、前記フォームブレーカーFBの効果に差異が発生することを確認した。
【0063】
実験では、溶液(エマルジョン)は、PVA0.25重量%を含む超純水4Lを10L体積の容器100に収容し、フォームブレーカーFBがインペラーIMの上部に配置され、回転軸AXによって回転するように構成した。回転軸AXの回転速度は、250RMPで、15分間適用した後、表面の泡状態を観察した。
【0064】
(a)は、Hfb/Hliquidの値が0.54の場合、(b)は、Hfb/Hliquidの値が0.46の場合、(c)は、Hfb/Hliquidの値が0.38の場合、(d)は、Hfb/Hliquidの値が0.31の場合、(e)は、Hfb/Dfbの値が0.23の場合、(f)は、Hfb/Hliquidの値が0.15の場合、(g)は、Hfb/Hliquidの値が0.08の場合、エマルジョン表面での泡の量を比較した実験例の写真である。
【0065】
実験で、Hfb/Hliquid値が0に近いほど、前記フォームブレーカーFBが溶液(エマルジョン)の表面に近い場合である。Hfb/Hliquid値が0.54で多量の泡が表面に発生することを確認することができる。Hfb/Hliquid値が0.46で少量の泡が溶液の表面に停滞するが、溶液の表面に定期的にボルテックス(vortex)が形成され、これによって、表面の大きい泡を破砕し、小さい泡を溶液の内部に伝達して、フォームブレーカーが効果的に作動することを確認することができる。Hfb/Hliquid値が0.38から0.23までフォームブレーカーが効果的に作動することを確認することができ、Hfb/Hliquid値が0.15または0.08の場合には、表面に多量の泡が発生し、フォームブレーカーが効果的に作動しないことを確認した。
【0066】
これを通じて、Hfb/Hliquidの値は、0.2~0.5を満たす場合、表面の大きい泡を破砕し、小さい泡を溶液の内部に伝達して、効果的な溶媒蒸発が可能であることを確認することができた。
【0067】
図5は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置において圧縮空気の適用の有無による残留溶媒、封入率、パーティクルサイズおよび形状の顕微鏡写真を示す図である。
【0068】
図5を参照すると、第1原料としての水相液は、PVA0.25%重量および超純水を含み、第2原料としての油相液は、PLGA7504 Polymer(11.8%重量)、Finasteride(5.9%重量)およびDCM(82.3%重量)の場合、圧縮空気の適用の有無によって、残留溶媒、封入率、パーティクルサイズ(製造された微小球体のサイズ)および形状の顕微鏡写真を確認した。
【0069】
圧縮空気供給部114を用いた圧縮空気を適用した場合、適用しない場合と比較して、封入率が大幅向上し、残留溶媒、パーティクルサイズおよびC.V.%が大きな変化がないことを確認することができた。
【0070】
これは、圧縮空気(Compressed Air)の供給によって、撹拌によって発生する界面活性剤(PVA Surfactant)による泡が溶液と空気の境界面(Liquid-Air Interface)を覆う現象を防止するためであると確認される。
【0071】
溶液と空気の境界面の上に空気に比べて重くて残留する溶媒蒸気(DCM solvent gas)を効率的に表面から押し出して上部に移動させ、これによって、溶液の表面近くの溶媒(solvent)の濃度を低下させる効果が発生する。これを通じて、拡散層(Diffusive Boundary Layer(δ_a))が薄くなって、円滑な溶媒の蒸発(Evaporation)がなされる。
【0072】
また、溶液と空気の境界面の上部の空気の乱流(Turbulent Flow)を誘導して対流現象を活発にし、これによって、溶媒(solvent)のMass Transferが増加し、液体と流体間(Liquid,Air)の速度差が増大し、また、容器内部の溶液内の溶媒(solvent)のMass transfer coefficient値を増加させて、円滑な溶媒の蒸発(Evaporation)がなされる。
【0073】
図6は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置において真空ポンプの適用の有無による残留溶媒、封入率、パーティクルサイズおよび形状の顕微鏡写真を示す図である。
【0074】
図6を参照すると、空気排出部112を用いて、空気を排出させた場合、そうでない場合と比較して、封入率において大きな差がないが、残留溶媒が大幅減少し、パーティクルサイズおよびC.V.%が大きな変化がないことを確認することができた。
【0075】
図7は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置においてフォームブレーカーの位置による残留溶媒、封入率、パーティクルサイズおよび形状の顕微鏡写真を示す図である。
【0076】
図7を参照すると、フォームブレーカーFBが溶液の表面に適用された場合と溶液に深く適用される場合に封入率と残留溶媒で若干の差異が発生したが、溶液に深く適用される場合には、フォームブレーカーが泡を破砕し伝達する役割を十分に行わないため、差異が多少発生したことが検討される。
【0077】
実験に使用されたフォームブレーカーFBは、直径7cmのプロペラブレード形状の構造物が使用され、インペラーIMは、直径11cmのプロペラブレード形状の構造物が使用された。また、前記フォームブレーカーFBを溶液の表面近くに適用した場合は、フォームブレーカーの直径Dfbを基準として溶液表面からの深さHfbがDfb/2となるように適用し、フォームブレーカーが溶液に深く適用された場合、Hfbが1.5Dfbとなるように適用して実験を進めた。
【0078】
図8は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置においてバッフルの適用の有無による流動性を比較するための図である。
【0079】
図8の(a)は、容器内インペラーのみが適用された場合、溶液に形成されるボルテックス(Vortex)とソリッドボディ回転(Solid body rotation)の概念を説明した図である。図8の(b)は、バッフルBFが適用されていない場合、溶液の回転流動の発生時に、形成されるボルテックスとソリッドボディ回転(Solid body rotation)によって、溶液の上下方向に流動が活発でない状態を確認した。図8の(c)は、バッフルBFが適用された場合、同じ回転速度でボルテックスの形成が減少し、溶液の上下方向には流動が活発であることを確認した。
【0080】
Solid Body Rotationが起こる場合、溶液(エマルジョン)の分散相の溶媒が連続相で抽出されるに際して、局部的な溶媒の高濃度状態が現れ、これによって、溶媒の抽出が低下すると同時に、固形化される微小球体に影響を与えたり、微小球体内の薬物の析出などの問題を発生させる。
【0081】
一方、ボルテックス(Vortex)の発生は、溶液と空気の境界面(Liquid-Air Interface)の面積増加効果を発生させ、溶媒の蒸発を増加させる利点があり得る。しかしながら、ボルテックスによって、境界面近くで溶液が表面に留まる時間が長くなり、溶液の上下流動性が悪くなり、結論的に、溶媒の蒸発を阻害する。特に溶液内部では、溶媒の拡散係数(Diffusion Coefficient)が1.2×10-5cm/sレベルで、空気中(Air)でのDiffusion(In Air Diffusion Coefficient 0.101cm/s)に比べて10,000倍程度低いため、境界面増加の効果より、溶液内の循環が阻害されることが、溶媒蒸発において不利であることが分かる。特に、微小球体の大量生産のために、容器のサイズを大きくする場合(Scale up)、このような問題は、さらに大きい影響を及ぼすことができる。
【0082】
前記バッフルBFが適用された場合、容器内部溶液の流動が方向性なしで上下にもスムーズに循環し、 溶液と空気の境界面(Liquid-Air Interface)の表面積は、ボルテックスが形成される場合と比較して、小さくなるが、境界面近くに溶液が迅速に交替され、結果的に、溶媒蒸発において有利であることを確認した。
【0083】
図9は、本発明の一実施形態による溶媒除去装置の実験例に関する繰り返し実験結果である。
【0084】
図9を参照すると、容器内にPVA0.8Lを収容し、バッフル構造、フォームブレーカーとインペラーを適用した後、繰り返し実験を行った結果、外部条件が多少変化しても、残留溶媒、封入率、パーティクルサイズC.V.%が所望のレベルで大きな変動なしに繰り返し可能であることを確認した。
【0085】
本発明者は、多様な実験を通じて、前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記停止表面から前記容器の底面までの深さをHliquidと定義するとき、Hfb/Hliquidは、0.2~0.5を満たす場合、溶媒蒸発効果に優れていることを確認した。
【0086】
前記インペラーの直径をDmainと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、Dfb/Dmainは、0.3~1を満たす場合、溶媒蒸発効果に優れていることを確認した。
【0087】
前記容器の直径をDtankと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、Dfb/Dtankは、0.3~0.6を満たす場合、溶媒蒸発効果に優れていることを確認した。
【0088】
前記エマルジョンの停止表面から前記フォームブレーカーの中心までの深さをHfbと定義し、前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義するとき、Hfb/Dfbの値が0.5 2を満たす場合、溶媒蒸発効果に優れていることを確認した。
【0089】
前記バッフルの下端から前記エマルジョンの停止表面までの高さをHbaffleと定義し、前記容器の底面から前記エマルジョンの停止表面までの高さをHliquidと定義するとき、Hbaffle/Hliquidは、0.6~0.8を満たす場合、溶媒蒸発効果に優れていることを確認した。
【0090】
前記フォームブレーカーの直径をDfbと定義し、前記フォームブレーカーの高さをWfbと定義するとき、Dfb/Wfbは、5~9を満たす場合、溶媒蒸発効果に優れていることを確認した。
【0091】
前記バッフルが前記容器の前記内壁から突出した高さをWbaffleと定義し、前記容器の直径をDtankと定義するとき、Wbaffle/Dtankは、0.06~0.10を満たす場合、溶媒蒸発効果に優れていることを確認した。
【0092】
図10は、本発明の一実施形態による微小球体の製造方法を示すフローチャートである。
【0093】
図10を参照すると、前記微小球体の製造方法は、第1および第2原料準備段階S100、エマルジョン形成段階S200、溶媒抽出除去段階S300および後処理段階S400を含んでもよい。
【0094】
前記第1および第2原料準備段階S100では、第1原料を準備し、生分解性ポリマー、薬物および溶媒を含む第2原料を準備することができる。
【0095】
この際、前記第1原料は、純水(Purified Water)および界面活性剤(surfactant)を含んでもよい。前記第2原料は、油相(oil-phase)溶液であり、有機溶媒、これに溶解した生分解性ポリマー(biodegradable polymer)および薬物を含んでもよい。
【0096】
前記エマルジョン形成段階S200では、前記第1原料および前記第2原料を用いて、連続相の前記第1原料と分散相の前記第2原料を含むエマルジョンを形成することができる。例えば、前記第1原料と前記第2原料を混合して撹拌する方式、マイクロ流路の流動を通じて微小球体液滴を形成する微小流体方式などが使用されてもよい。前記エマルジョンは、連続相の前記第1原料と分散相の前記第2原料を含む。
【0097】
前記溶媒抽出除去段階S300では、前記エマルジョンの前記分散相の前記溶媒を抽出および蒸発させて除去することができる。例えば、連続相の第1原料と分散相の第2原料を含むエマルジョンを収容する容器と、前記容器内で回転して前記エマルジョンを撹拌するインペラーと、前記インペラーの上部に前記インペラーから離隔して位置し、回転して前記エマルジョンの撹拌時、発生する泡(foam)を減少させるフォームブレーカーと、を含む溶媒除去装置を用いて、前記エマルジョンの前記分散相から前記連続相に前記溶媒の抽出および抽出した前記溶媒の蒸発を加速化することができる。これを通じて、固形化微小球体を形成することができる。
【0098】
前記後処理段階S400では、前記固形化微小球体を洗浄および乾燥し、最終的に目的とする単分散生分解性ポリマーベースの微小球体粉末を製造し、その後、収得した微小球体粉末を懸濁液に懸濁させて適切な容器、例えば、使い捨て注射器などに充填して、最終製品を得るための後処理工程を行うことができる。
【0099】
以上、実施形態を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域を逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることを理解することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 容器
110 カバー
FB フォームブレーカー
BF バッフル
IM インペラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10